(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064099
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】金属と樹脂との複合ケース
(51)【国際特許分類】
H01M 50/166 20210101AFI20240507BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/16 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/124 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/169 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/179 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/152 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/188 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/159 20210101ALI20240507BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H01M50/166
H01M50/119
H01M50/121
H01M50/16
H01M50/107
H01M50/124
H01M50/169
H01M50/179
H01M50/103
H01M50/152
H01M50/15
H01M50/176
H01M50/184 D
H01M50/184 A
H01M50/188
H01M50/159
H01G2/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172448
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】513045127
【氏名又は名称】株式会社大北製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大北 幸史
(72)【発明者】
【氏名】大北 浩司
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 大輝
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 孝夫
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD13
5H011DD14
(57)【要約】
【課題】気密性についての信頼性が高く、生産性にも優れる、金属と樹脂との複合ケースを提供する。
【解決手段】金属と樹脂との複合ケース1は、底面11、上面12、正面13、背面14及び一対の側面15、16を備えており、内部に蓄電デバイスの電極100を収納するように構成されている。そして、U字状部20の外縁20aには、樹脂材料からなる接合層50が設けられている。一対の側面部31、32は樹脂材料からなるとともに、U字状部20の両側端において、接合層50と一体的に形成されてU字状部20に接合されている。蓋部40は少なくとも外縁40aが樹脂材料により形成されており、蓋部40の外縁40aと、U字状部20の上端に設けられた接合層50及び側面部31、32の上端とが互いに接合されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面、上面、正面、背面及び一対の側面を備える、金属と樹脂との複合ケースであって、
金属板の折り曲げ加工又は金属材料の押し出し成型より断面U字状に成形されて、長方形の上記底面と、上記底面の長辺から立ち上がった上記正面及び上記背面とを形成するU字状部と、
上記一対の側面を形成する板状の一対の側面部と、
上記上面を形成する板状の蓋部と、を備え、
上記U字状部の外縁には、樹脂材料からなる接合層が設けられており、
上記側面部は樹脂材料からなるとともに、上記接合層と一体的に形成されて上記U字状部の両側端に接合されており、
上記蓋部は少なくとも外縁が樹脂材料により形成されており、上記蓋部の外縁と、上記U字状部の上端に設けられた上記接合層及び上記側面部の上端とが互いに接合されている、金属と樹脂との複合ケース。
【請求項2】
上記接合層は、上記U字状部の外縁に形成された第1接合層と、上記U字状部の上端において上記第1接合層に積層された第2接合層とを有しており、
上記第1接合層を形成する第1の樹脂材料は、上記第2接合層を形成する第2の樹脂材料よりも、上記U字状部を形成する金属材料に対して高い密着性を有しており、
上記側面部は、上記第2の樹脂材料からなるとともに、上記第2接合層と一体的に形成されるとともに、上記U字状部の両側端において上記第1接合層を介して上記U字状部と接合されており、
上記蓋部の外縁は、第3の樹脂材料からなるとともに、上記U字状部の上端に設けられた上記第2接合層及び上記一対の側面部の上端に溶着されている、請求項1に記載の金属と樹脂との複合ケース。
【請求項3】
上記第1の樹脂材料は、エポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂であり、
上記第2の樹脂材料及び上記第3の樹脂材料は、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックである、請求項2に記載の金属と樹脂との複合ケース。
【請求項4】
上記第1接合層は電着塗装被膜からなる、請求項2又は3に記載の金属と樹脂との複合ケース。
【請求項5】
上記複合ケースは蓄電デバイスの電極が収納されるように構成されており、
上記側面部には、上記電極に接続される外部端子が貫通された状態で該外部端子を保持している、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属と樹脂との複合ケース。
【請求項6】
上記側面部は、上記外部端子を貫通状態で保持する樹脂製の外部端子保持部と、該外部端子保持部が嵌入するように形成された凹部を有する樹脂製の凹部形成部とを含み、該凹部形成部に上記外部端子保持部が嵌入された状態で両者が互いに溶着されている、請求項5に記載の金属と樹脂との複合ケース。
【請求項7】
上記複合ケースは蓄電デバイスの電極が収納されるように構成されており、
上記蓋部は樹脂材料からなり、上記電極に接続される外部端子が貫通された状態で該外部端子を保持している、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属と樹脂との複合ケース。
【請求項8】
上記蓋部は、金属板からなる金属板部と、該金属板部の外縁に樹脂材料により形成された樹脂外縁部と、上記金属板に形成された貫通孔に上記外部端子が貫通された状態で上記金属板と上記外部端子との間を封止する樹脂材料からなる端子封止部とを備える、請求項7に記載の金属と樹脂との複合ケース。
【請求項9】
上記側面部は、上記複合ケースの外方に突出して外部機器と接続可能に構成された外部接続部を有している、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属と樹脂との複合ケース。
【請求項10】
上記U字状部における上記正面、上記背面及び上記底面の少なくとも一つを形成する領域には、上記U字状部の形成材料により凹凸形状が形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属と樹脂との複合ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属と樹脂との複合ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電デバイスなどを収納するケースとして、プレス機によって金属板を絞り加工して形成されたものが広く用いられている。深さの大きいケースでは、いわゆる深絞り加工を行うが、深絞り加工では、通常、成形深さの異なる複数の金型を用いて複数回に分けて段階的に加工を行う。そのため、複数の金型が必要となるとともに加工作業が煩雑となる。そこで、金属板を折り曲げて、断面コ字状の部材と断面L字状の部材とをそれぞれ成形した後、これらを溶接してなるケースが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電デバイスなどを収納するケースでは、高い気密性が要求されるが、特許文献1の構成では、ケースの角部において金属同士の溶接を行っており、ケースの気密性について高い信頼性を確保するには、接合部に高い溶接精度が求められることとなる。しかしながら、特に溶接の開始位置や終了位置である溶接端部では溶接精度が低くなりやすく気密性を確保することが難しい。また、溶接速度を十分に落とすことにより溶接精度を向上することが考えられるが、ケースが大型化すると作業時間が過度に長くなり、生産性の低下を招く。また、高い溶接精度を得るためには、ケースの形成材料である金属板(ブランク)を厚肉にすることが考えられるが、ケースの重量増加や製造コストの増加などのデメリットが生じる。それゆえ、気密性について高い信頼性を確保しつつ、高い生産性が得られるケースを製造するには、さらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、気密性についての信頼性が高く、生産性にも優れる、金属と樹脂との複合ケースを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、底面、上面、正面、背面及び一対の側面を備える、金属と樹脂との複合ケースであって、
金属板の折り曲げ加工又は金属材料の押し出し成型より断面U字状に成形されて、長方形の上記底面と、上記底面の長辺から立ち上がった上記正面及び上記背面とを形成するU字状部と、
上記一対の側面を形成する板状の一対の側面部と、
上記上面を形成する板状の蓋部と、を備え、
上記U字状部の外縁には、樹脂材料からなる接合層が設けられており、
上記側面部は樹脂材料からなるとともに、上記U字状部の両側端において、上記接合層と一体的に形成されて上記U字状部に接合されており、
上記蓋部は少なくとも外縁が樹脂材料により形成されており、上記蓋部の外縁と、上記U字状部の上端に設けられた上記接合層及び上記側面部の上端とが互いに接合されている、金属と樹脂との複合ケースにある。
【発明の効果】
【0007】
上記複合ケースにおいては、複合ケースの底面、正面及び背面を形成する金属製のU字状部と、樹脂材料からなる一対の側面部と、樹脂材料からなる外縁を有する蓋部とが、樹脂材料からなる接合層を介して互いに接合されている。このようにU字状部と樹脂材料からなる接合層とを積極的に用いることで、金属同士の溶接をすることなく、金属と樹脂との複合ケースを成形することができる。その結果、金属同士の溶接の場合において気密性の確保が困難な溶接端部が当該構成には存在しないため、全体として高い気密性を確保することができる。また、金属同士の溶接の場合に比べて加工時間の短縮を図ることができ、大型のケースにおいても生産性に優れる。また、深絞り加工をする場合に比べると、複数の金型を要しないためコスト面で優れるとともに、段階的に成形する必要がないため、加工時間の短縮を図ることができて生産性に優れる。
【0008】
以上のごとく、本発明によれば、気密性についての信頼性が高く、生産性にも優れる、金属と樹脂との複合ケースを提供しようとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1における、金属と樹脂との複合ケースの斜視図。
【
図2】実施形態1における、複合ケースのU字状部の斜視図。
【
図3】実施形態1における、蓄電デバイスの電極と複合ケースの分解斜視図。
【
図4】実施形態1における、U字状部と側面部との接道部の断面一部拡大図。
【
図5】実施形態1における、(a)蓋部接合前の複合ケースの縦断面部、(b)
図4(b)蓋部の取り付け後の複合ケースの縦断面図。
【
図6】(a)
図5(a)においてBで示す領域の拡大図、(b)
図5(b)においてBで示す領域の拡大図。
【
図7】変形形態1における、蓄電デバイスの電極と複合ケースの分解斜視図。
【
図8】変形形態2における、蓄電デバイスの電極と複合ケースの分解斜視図。
【
図11】実施形態2における、蓄電デバイスの電極と複合ケースの分解斜視図。
【
図12】実施形態3における、蓄電デバイスの電極と複合ケースの分解斜視図。
【
図13】実施形態4における、蓄電デバイスの電極と複合ケースの分解斜視図。
【
図14】実施形態5における、蓄電デバイスの電極と複合ケースの分解斜視図。
【
図15】実施形態6における(a)蓋部の載置前の縦断面図、(b)蓋部の載置後の縦断面図。
【
図16】(a)
図15(a)においてCで示す領域の拡大図、(b)
図15(b)においてCで示す領域の拡大図。
【
図17】変形形態5における、(a)
図15(a)においてCで示す領域の拡大図、(b)
図15(b)においてCで示す領域の拡大図。
【
図18】変形形態6における、
図15(b)においてCで示す領域の拡大図。
【
図19】変形形態7における、(a)
図15(a)においてCで示す領域の拡大図、(b)
図15(b)においてCで示す領域の拡大図。
【
図20】実施形態7における、金属と樹脂との複合ケースの斜視図。
【
図21】(a)実施形態7における、隣り合う複合ケース同士を接続した状態の縦断面図、(b)変形形態8における、隣り合う複合ケース同士を接続した状態の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記接合層は、上記U字状部の外縁に形成された第1接合層と、該第1接合層に積層された第2接合層とを有しており、上記第1接合層を形成する第1の樹脂材料は、上記第2接合層を形成する第2の樹脂材料よりも、上記U字状部を形成する金属材料に対して高い密着性を有しており、上記側面部は、上記第2の樹脂材料からなるとともに、上記U字状部の両側端において、上記第2接合層と一体的に形成されており、上記蓋部の外縁は、第3の樹脂材料からなるとともに、上記U字状部の上端に設けられた上記接合層における上記第2接合層及び上記一対の側面部の上端に溶着されていることが好ましい。この場合には、接合層において、第1接合層によりU字状部との密着性が十分に得られるとともに第1接合層と第2接合層とは互いに樹脂同士の接合であるため高い密着性が得られやすい。また、U字状部の両側においても第2接合層と上記一対の側面部とが一体的に形成されているため樹脂同士の接合であるため高い密着性が得られやすい。また、蓋部の外縁とU字状部の上端の接合層及び側面部の上端との接合も樹脂同士の接合であるため高い密着性が得られやすい。これらの結果、上記U字状部と上記一対の側面部及び上記蓋部との接合部において高い気密性を確保することができる。
【0011】
上記第1の樹脂材料は、エポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂であり、上記第2の樹脂材料及び上記第3の樹脂材料は、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックであることが好ましい。第1の樹脂材料として採用したエポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂は、第2の樹脂材料として採用したエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックが熱溶融されたものに対して濡れ性がよく互いになじみやすく、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックに対して親和性及び相溶性の高い表面特性を有する。また、これらの材料は耐熱性に優れるため、成型時に熱溶融したエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックによる熱劣化も生じにくい。従って、第1の樹脂材料及び第2の樹脂材料を上述のごとく採用することにより、接合層とU字状部との間に十分な密着性が得られる。さらに、一対の側面部の外縁及び蓋部の外縁を形成する第3の樹脂材料も第2の樹脂材料と同様であるため、両者は高い気密性をもって溶着させることができる。その結果、接合層と一対の側面部及び蓋部との間においても十分な密着性が得られる。
【0012】
なお、本明細書では、エンジニアリングプラスチックとは、耐熱温度が100℃以上であって、いわゆる汎用プラスチックよりも引張強度及び弾性率が優れた樹脂材料を指す。また、スーパーエンジニアリングプラスチックとは、エンジニアリングプラスチックのうち耐熱温度が150℃以上の樹脂材料を指す。
【0013】
上記第1接合層は電着塗装被膜からなることが好ましい。電着塗装は、水溶性の電着塗装用塗料を入れた浴中に、導体である被塗物を浸漬し、被塗物と対向電極との間に電圧を印加し、電流を流すことにより被塗物の表面に均一な水不溶性の塗膜を形成し、これを焼付乾燥することにより、被塗物の表面に強固な高分子薄膜を形成する技術である。そして、電着塗装によれば、被塗物が金属などの導電体であれば、複雑な形状であってもその表面に均一な樹脂製の薄膜を形成することができる。従って、上記第1接合層が電着塗装被膜からなることにより、U字状部の外縁が複雑な形状であっても第1接合層を均一な膜厚にすることができる。また、第1接合層を強固な樹脂被膜にして耐熱性に優れたものとすることができる。その結果、第2接合層と上記一対の側面部の外縁及び上記蓋部の外縁とを溶着させる際の溶融熱による第1接合層とU字状部の外縁との接合部における熱劣化を防止することができ、一層気密性に優れる。
【0014】
上記複合ケースは蓄電デバイスの電極が収納されるように構成されており、上記側面部には、上記電極に接続される外部端子が貫通された状態で該外部端子を保持している構成とすることができる。この場合には、蓄電デバイスの電極に接続される外部端子が側面部に保持された状態とすることができ、蓄電デバイスの電極用のケースとして有用となる。
【0015】
上記側面部は、上記外部端子を貫通状態で保持する樹脂製の外部端子保持部と、該外部端子保持部が嵌入するように形成された凹部を有する樹脂製の凹部形成部とを含み、該凹部形成部に上記外部端子保持部が嵌入された状態で両者が互いに溶着されている構成とすることができる。この場合には、外部端子保持部を凹部形成部に嵌入して溶着させることで外部端子が保持された側面部を容易に形成することができる。
【0016】
上記複合ケースは蓄電デバイスの電極が収納されるように構成されており、上記蓋部は樹脂材料からなり、上記電極に接続される外部端子が貫通された状態で該外部端子を保持している構成とすることができる。この場合には、蓄電デバイスの電極に接続される外部端子が蓋部に保持された状態とすることができ、蓄電デバイスの電極用のケースとして有用となる。
【0017】
上記蓋部は、金属板からなる金属板部と、該金属部材の外縁に上記樹脂材料により形成された樹脂外縁部と、上記金属板部に形成された貫通孔であって上記外部端子が貫通された状態で上記金属板部と上記外部端子とが樹脂材料を介して接合された端子接合層とを備える構成とすることができる。この場合には、蓋部を金属板で形成しつつ蓋部と外部端子とを樹脂製の端子接合層により絶縁した状態に維持することができ、蓄電デバイス用のケースとして有用となる。
【0018】
上記側面部は、上記複合ケースの外方に突出して外部機器と接続可能に構成された外部接続部を有している構成とすることができる。この場合には、当該複合ケースを外部機器、例えば、隣り合って配設された金属と樹脂との複合ケースとの接続する際に、別途接続部材を要しないため、部品点数の削減と取付け作業性の向上を図ることができる。
【0019】
上記U字状部における上記正面、上記背面及び上記底面の少なくとも一つを形成する領域には、上記U字状部の形成材料により凹凸形状が形成されている構成とすることができる。この場合には、金属製のU字状部が凹凸形状を有することにより、U字状部を介した放熱を促すことができ、放熱性に優れた金属と樹脂との複合ケースを提供することができる。
【実施例0020】
(実施形態1)
実施形態1の金属と樹脂との複合ケース1(以下、本明細書では、「複合ケース1」ともいう)は、
図1に示すように、底面11、上面12、正面13、背面14及び一対の側面15、16を備えており、
図2に示すように、内部に蓄電デバイスの電極100を収納するように構成されている。
そして、複合ケース1は、U字状部20、一対の側面部31、32、蓋部40を備える。
U字状部20は、金属板の折り曲げ加工又は金属材料の押し出し成型より断面U字状に成形されて、長方形の底面11と、底面11の長辺11aから立ち上がった正面13及び背面14とを形成する。
一対の側面部31、32は板状であって、一対の側面15、16を形成する。
蓋部40は板状であって、上面12を形成する。
そして、U字状部20の外縁20aには、樹脂材料からなる接合層50が設けられている。
一対の側面部31、32は樹脂材料からなるとともに、U字状部20の両側端において、接合層50と一体的に形成されてU字状部20に接合されている。
蓋部40は少なくとも外縁40aが樹脂材料により形成されており、蓋部40の外縁40aと、U字状部20の上端に設けられた接合層50及び側面部31、32の上端とが互いに接合されている。
【0021】
以下、実施形態1の複合ケース1について、詳述する。
図1に示す複合ケース1は、内部に種々の電気部品、電子機器等の構成を収納することができる。本実施形態1では、複合ケース1は、蓄電デバイスの電極100を収納する。蓄電デバイスの電極100は、二次電池やキャパシタなどの電極とすることができる。当該電極100は一対の外部端子101、102を備える。なお、本実施形態1では、複合ケース1は、底面11の長手方向(X方向)に対して短手方向(Y方向)が充分短く、その深さ方向(Z方向)が底面11の短手方向に比べて充分大きい形状である。
【0022】
U字状部20は金属製であって、その形成材料は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、鉄鋼、チタン、チタン合金などとすることができる。本実施形態では、U字状部20の形成材料として、アルミニウムを採用している。
【0023】
U字状部20は、
図2に示すように、長手方向Xに直交する断面がU字状をなしており、平面視で長方形をなす底面11と、底面11の長辺11aから深さ方向Zにおける上方に立ち上がって正面13と背面14とが形成されている。
図1に示すように、本実施形態1では、正面13及び背面14はケース1における上記6面のうち最も面積の広い面となっている。本実施形態1では、U字状部20は、アルミニウム製の板材を折り曲げ加工して成形されている。なお、これに替えて、アルミニウムの押出成形により長手方向Xに平行な方向に所定長さ押し出して、U字状部20を成形してもよい。
【0024】
なお、本実施形態1では、
図2に示すように、U字状部20を形成する板材は、底面11と正面13との間の屈曲部及び底面11と背面14との間の屈曲部が湾曲した形状となっているが、これに限らず、両屈曲部が直角に折れ曲がっていてもよく、この場合もU字状に含むものとする。U字状部20は、長手方向Xの両端が開口しており、一対の側方開口部21、22を備える。また、U字状部20は、深さ方向Zの上方も開口しており、上方開口部23を備える。
【0025】
図2に示すように、U字状部20の外縁には、接合層50として第1接合層51が形成されている。第1接合層51は、U字状部20の外縁全域に形成することができ、さらにU字状部20の外縁全域を含むU字状部20の表面全域に形成してもよい。本実施形態1では、第1接合層51はU字状部20の外縁全域に形成されている。なお、「U字状部20の外縁」とは、U字状部20を形成する板材を平面状に展開した状態において平面視したときの外周部分を指す。
【0026】
第1接合層51を形成する第1の樹脂材料は、U字状部20に対して後述する第2接合層52を形成する第2の樹脂材料よりも高い密着性を有するものを採用している。第1の樹脂材料は、例えば、カチオン電着塗料である熱硬化性のエポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂を採用することができ、本実施形態1では、熱硬化性のエポキシ樹脂を採用している。第1接合層51は、後述するように電着塗装により形成した電着塗装被膜とすることができる。第1接合層51の平均厚さは、5~80μmの範囲内とすることができ、好ましくは20~50μmの範囲内であり、本例では平均厚さを30μmとしている。第1接合層51の平均厚さが5μm未満である場合は、U字状部20の表面の微細な凹凸等に起因して、第1接合層51が薄すぎるなどの塗りむらが生じたり、第1接合層51が形成されない塗り残しが生じたりするため好ましくない。また、第1接合層51の平均厚さが80μmを超える場合は、層形成に過度の時間がかかるおそれがあり現実的でない。
【0027】
図3に示すように、U字状部20の長手方向Xの両端にはそれぞれ側面部31、32の凹部形成部34が第1接合層51を介して接合される。凹部形成部34は第2の樹脂材料からなり、後述するように凹部34aを有する。本実施形態1では、凹部形成部34は、後述するインサート成形により形成する。そして、凹部形成部34とともに、U字状部20の上端における第1接合層51に第2接合層52が形成される。
【0028】
凹部形成部34及び第2接合層52を構成する第2の樹脂材料としては、後述するインサート成形が可能なように熱可塑性の樹脂材料であることが好ましく、インサート成形時に高温に曝されることに鑑みて、耐熱温度が150℃以上であることが好ましい。また、第1の樹脂材料と第2の樹脂材料との相溶性及び接着性を確保する観点から、両者の溶解性パラメータ(SP値)を近い値とすることが好ましい。例えば、第1の樹脂材料としてSP値11程度のエポキシ樹脂や、SP値13.6程度のポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂などを採用する場合を考慮して、第2の樹脂材料として溶解性パラメータ(SP値)が9.5~15の範囲内のものを採用とすることができる。
【0029】
例えば、第2の樹脂材料としては、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂などのエンジニアリングプラスチックや、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリアミド・イミド(PAI)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂などのスーパーエンジニアリングプラスチックを採用することができ、本例では、PPS樹脂を採用している。
【0030】
図4に示すように、凹部形成部34と第1接合層51との間には両者が互いに相溶してなる相溶層53が形成されている。なお、相溶層53と第1接合層51及び側面部31との境界は実際には不明瞭となっている。
【0031】
図3に示すように、凹部形成部34の凹部34aは、外部端子保持部33が嵌入するように外部端子保持部33の外形に沿って形成されている。凹部34aは、側面部31、32の厚さ方向(長手方向X)に貫通しているとともに、深さ方向Zの上方が開口している。外部端子保持部33は電極100の外部端子101、102を貫通状態で保持しており、外部端子保持部33と外部端子101、102とは図示しない電着塗装被膜を介して互いに接合されている。当該電着塗装被膜は、上述の第1接合層51と同様の構成とすることができる。これにより、外部端子保持部33と外部端子101、102との間の気密性が確保されている。
【0032】
そして、外部端子保持部33と凹部形成部34とは、
図3に示す外部端子保持部33が凹部形成部34の凹部34aに嵌入した状態で、外部端子保持部33と凹部形成部34とが溶着される。これにより、
図1に示すように、外部端子保持部33と凹部形成部34とが一体となって側面部31、32が形成される。なお、外部端子保持部33と凹部形成部34とにおける樹脂同士の溶着は、レーザ溶接、超音波溶接、熱溶着、接着剤などにより行うことができる。
【0033】
上述のように、側面部31、32の凹部形成部34とともに形成された第2接合層52は、U字状部20の上端において、第1接合層51に積層されて第1接合層51とともに接合層50を形成している。第2接合層52は上述のように第2の樹脂材料からなっており、
図6(a)に示すように、第1接合層51と第2接合層52との間には、両者の樹脂材料が互いに相溶してなる相溶層53が形成されている。なお、相溶層53と第1接合層51及び第2接合層52との境界は実際には不明瞭となっている。
【0034】
図3に示すように、U字状部20の深さ方向Zの上方には、蓋部40が接合される。蓋部40は板状をなしており、U字状部20の上方開口部23の形状に沿った外形を有している。蓋部40は少なくともその外縁が樹脂材料で形成されており、本実施形態1では、蓋部40の全域が樹脂材料で形成されている。蓋部40を形成する第3の樹脂材料は、上述の第2接合層52を形成する第2の樹脂材料と同一とすることができ、本実施形態1では第2の樹脂材料と同じくPPS樹脂としている。
【0035】
蓋部40は、
図5(a)に示すU字状部20の上方開口部23を覆うように、U字状部20の上端に設けられた接合層50を介して、
図5(b)に示すようにU字状部20に接合される。
図6(b)に示すように、蓋部40は、接合層50の第2接合層52と溶着されており、蓋部40と第2接合層52との間には両者が互いに溶着して一体となった溶着層54が形成されている。なお、溶着層54と蓋部40及び第2接合層52との境界は実際には不明瞭となっている。蓋部40と第2接合層52とにおける樹脂同士の溶着は、レーザ溶接、超音波溶接、熱溶着、接着剤などにより行うことができる。
【0036】
次に、複合ケース1の製造方法について説明する。
複合ケース1の製造方法は、切出工程、折曲工程、電着塗装工程、側面部形成工程、蓋部接合工程を含む。
【0037】
まず、切出工程において所定厚さのアルミニウム材をプレス機で打ち抜き加工することにより、U字状部20の折り曲げ前の状態の板材を切り出す。そして、折曲工程において、切り出した板材を折り曲げ加工により折り曲げてU字状部20を形成する。
【0038】
次いで、電着塗装工程において、U字状部20の外縁に電着塗装を施す。電着塗装の方法は限定されないが、本実施形態1では以下のように行う。まず、U字状部20の外縁の表面に対して洗浄及び脱脂を行う。その後、20%の固形分濃度のカチオン型エポキシ樹脂系電着塗料(株式会社日本ペイント社製、型番インシュリード3030)を満たした電着塗装用の浴槽中に上記洗浄及び脱脂後のU字状部20の外縁を浸漬し、印加電圧200Vで3分間通電させる。その後、U字状部20を浴槽から取り出して水洗いし、130℃の乾燥炉で20分乾燥させる。これにより、平均厚さ50μmの半硬化状態のエポキシ樹脂被膜からなる第1接合層51が形成される。
【0039】
その後、側面部形成工程において、インサート成形により、側面部31、32の凹部形成部34と第2接合層52とを形成する。本例では、半硬化状態のエポキシ樹脂被膜からなる第1接合層51が設けられたU字状部20の外縁を、図示しないインサート成形用金型にセットした後、330℃に加熱して溶融させたPPS樹脂をインサート成形用金型に流し込んで、凹部形成部34と第2接合層52を形成する。
【0040】
これと並行して、蓄電デバイスの電極100の外部端子101、102に第1接合層51と同様に電着塗装を施した後、外部端子101、102を図示しないインサート成形用金型にセットした後、330℃に加熱して溶融させたPPS樹脂をインサート成形用金型に流し込んで、
図3に示す外部端子保持部33を形成する。その後、凹部形成部34の凹部34aに外部端子保持部33を嵌入して両者をレーザ溶接により樹脂同士の溶着を行って、側面部31、32を形成する。これにともなって、蓋部40を取り付ける前の複合ケース1内に蓄電デバイスの電極100が設けられることとなる。
【0041】
そして、蓋部接合工程において、蓋部40の外縁とU字状部20の上方端部及び側面部31、32の上方端部とをレーザ溶接により樹脂同士の溶着を行って、
図2に示すU字状部20の上方開口部23を蓋部40により覆う。これにより、蓄電デバイスの電極100が複合ケース1内に収納されて当該複合ケース1の製造を終了する。
【0042】
本実施形態1による金属と樹脂との複合ケース1の作用効果について、以下に説明する。上記複合ケース1においては、複合ケース1の底面11、正面13及び背面14を形成する金属製のU字状部20と、樹脂材料からなる一対の側面部31、32と、樹脂材料からなる外縁を有する蓋部40とが、樹脂材料からなる接合層50(51)を介して互いに接合されている。このようにU字状部20と樹脂材料からなる接合層50(51)とを積極的に用いてを用いることで、金属同士の溶接をすることなく、金属と樹脂との複合ケース1を成形することができる。その結果、金属同士の溶接の場合において気密性の確保が困難な溶接端部が当該構成には存在しないため、全体として高い気密性を確保することができる。また、金属同士の溶接の場合に比べて加工時間の短縮を図ることができ、大型のケースにおいても生産性に優れる。また、深絞り加工をする場合に比べると、複数の金型を要しないためコスト面で優れるとともに、段階的に成形する必要がないため、加工時間の短縮を図ることができて生産性に優れる。
【0043】
また、本実施形態1では、接合層50は、U字状部20の外縁20aに形成された第1接合層51と、U字状部20の上端の第1接合層51に積層された第2接合層52とを有しており、第1接合層51を形成する第1の樹脂材料は、第2接合層52を形成する第2の樹脂材料よりも、U字状部20を形成する金属材料に対して高い密着性を有している。そして、側面部31、32は、第2の樹脂材料からなるとともに、第2接合層52と一体的に形成されるとともに、U字状部20の両側端において第1接合層51を介してU字状部と接合されている。また、蓋部40の外縁40aは、第3の樹脂材料からなるとともに、U字状部20の上端に設けられた第2接合層52及び一対の側面部31、32の上端に溶着されている。これにより、U字状部20の両側端では、第1接合層51によりU字状部20との密着性が十分に得られるとともに第1接合層51と側面部31、32との接合は互いに樹脂同士の接合であるため高い密着性が得られやすい。また、蓋部40の外縁と第2接合層52及び一対の側面部31、32と接合も樹脂同士の接合であるため高い密着性が得られやすい。その結果、U字状部20と一対の側面部31、32及び蓋部40との接合部において高い気密性を確保することができる。
【0044】
また、本実施形態1では、第1の樹脂材料は、エポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂であり、第2の樹脂材料及び上記第3の樹脂材料は、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックである。第1の樹脂材料として採用したエポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂は、第2の樹脂材料及び第3の樹脂材料として採用したエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックが熱溶融されたものに対して濡れ性がよく互いになじみやすく、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックに対して親和性及び相溶性の高い表面特性を有する。また、これらの材料は耐熱性に優れるため、成型時に熱溶融したエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックによる熱劣化も生じにくい。従って、第1の樹脂材料、第2の樹脂材料及び第3の樹脂材料を上述のごとく採用することにより、接合層50とU字状部20との間に十分な密着性が得られ、U字状部20と一対の側面部31、32及び蓋部40との間に十分な密着性が得られる。
【0045】
また、本実施形態1では、第1接合層51は電着塗装被膜からなる。これにより、第1接合層51を形成するU字状部の外縁が複雑な形状であっても、その表面に均一な樹脂製の薄膜を形成することができる。また、第1接合層51を強固な樹脂被膜にして耐熱性に優れたものとすることができる。その結果、第2接合層52と蓋部40の外縁とを溶着させる際の溶融熱による第1接合層51とU字状部20の外縁との接合部における熱劣化を防止することができ、一層気密性に優れる。
【0046】
また、本実施形態1では、複合ケース1は蓄電デバイスの電極100が収納されるように構成されており、側面部31、32は樹脂材料からなり、蓄電デバイスの電極100に接続される外部端子101が貫通された状態で外部端子101を保持している構成とした。これにより、蓄電デバイスの電極100に接続される外部端子101が側面部31、32に保持された状態とすることができ、蓄電デバイスの電極用のケースとして有用となる。
【0047】
また、本実施形態1では、側面部31、32は、外部端子101を貫通状態で保持する樹脂製の外部端子保持部33と、外部端子保持部33が嵌入するように形成された凹部34aを有する樹脂製の凹部形成部34とを含み、凹部形成部34に外部端子保持部33が嵌入された状態で両者が互いに溶着されている構成とした。これにより、外部端子保持部33を凹部形成部34に嵌入して両者を溶着させることで、外部端子101が保持された側面部31、32を容易に形成することができる。
【0048】
以上のごとく、本実施形態によれば、気密性についての信頼性が高く、生産性にも優れる、金属と樹脂との複合ケース1を提供することができる。
【0049】
なお、本実施形態1では、
図3に示すように、二つの外部端子101、102のうち、一方の外部端子101は一方の側面部31を貫通した状態で保持され、他方の外部端子102は他方の側面部32を貫通した状態で保持されることとしたが、これに替えて、二つの外部端子101、102の両方が一対の側面部31、32のいずれか一方を貫通した状態で保持されることとしてもよい。例えば、
図7に示す変形形態1では、一対の側面部31、32のうち一方の側面部31において、外部端子101、102を保持する外部端子保持部33と、外部端子保持部33が嵌入される凹部34aを有する凹部形成部34とが互いに溶着される構成とし、外部端子101、102が一方の側面部31を貫通した状態で保持されることとした。
【0050】
なお、変形形態1では、
図7に示すように、電極100は、第1の金属製薄板100aと第2の金属製薄板100bとが図示しない活物質を介して交互に複数積層されてなる積層体により構成されている。そして、電極100において、複数の第1の金属製薄板100aの側方からそれぞれタブ103aが突出しており、複数のタブ103a同士は互いに重ね合わされた状態で外部端子101にスポット溶接、超音波溶接、レーザ溶接などにより溶接されている。同様に、電極100において、複数の第2の金属製薄板100bの側方からそれぞれタブ103bが突出しており、複数のタブ103b同士は互いに重ね合わされた状態で外部端子102にスポット溶接、超音波溶接、レーザ溶接などにより溶接されている。そして、外部端子101、102は一つの外部端子保持部33に貫通した状態で保持されている。
【0051】
変形形態1において、その他の構成は実施形態1の場合と同様であり、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。そして、変形形態1においても実施形態1の場合と同様の作用効果を奏する。
【0052】
また、一対の外部端子保持部33は、
図8に示す変形形態2のように、予め蓋部40と一体的に形成されていてもよい。そして、変形形態2では、外部端子保持部33には、外部端子101、102が貫通した状態で保持されている。また、積層型の電極100において、一方のタブ103aは電極100の一方の側面から引き出されてスポット溶接、超音波溶接、レーザ溶接などにより互いに溶接されており、他方のタブ103bは電極100の反対側の側面から引き出されてスポット溶接、超音波溶接、レーザ溶接などにより互いに溶接されている。
【0053】
そして、
図8に示す変形形態2では、電極100を複合ケース1に収納する際には、電極100を蓋部40と一体となっている一対の外部端子保持部33の間に配して、一方のタブ103aと外部端子101とをスポット溶接、超音波溶接、レーザ溶接などにより互いに溶接し、他方のタブ103bと外部端子102とをスポット溶接、超音波溶接、レーザ溶接などにより互いに溶接し、蓋部40と一対の外部端子保持部33、33と電極100とを一体とする。その後、一対の外部端子保持部33を左右の凹部34aにそれぞれ挿入するとともに、蓋部40の外縁40aとU字状部20の上端に設けられた第2接合層52とが重なるように配置して、外部端子保持部33と凹部形成部34とを互いに溶着させ蓋部40の外縁40aと第2接合層52とを溶着させる。これにより、電極100を当該複合ケース1に収納することができる。
【0054】
また、本実施形態1では、
図2に示すように、U字状部20において、底面11、正面13及び背面14はいずれも平面状を呈するものとしたが、これに替えて、U字状部20における底面11、正面13及び背面14の少なくとも一つを形成する領域に、U字状部20の形成材料によって凹凸形状が形成されている構成としてもよい。
【0055】
例えば、
図9に示す変形形態3では、正面13及び背面14に、長手方向Xに平行に延びる複数の凸条部25が設けられて凹凸形状が形成されている。当該複数の凸条部25は、U字状部20の正面13及び背面14にプレス加工を施して形成することができる。そして、一対の側面部31、32の外縁にも凸条部25と連続する凸条部35がそれぞれ形成されている。
【0056】
正面13及び背面14に設ける凸条部25の数は限定されないが、変形形態3では、正面13に4個、背面14に3個としている。そして、正面13における4個の凸条部25と、背面14における3個の凸条部25とは互いに高さ方向Zの位置が異なっている。これにより、複数の複合ケース1を配置する際に一方のケース1の正面13と隣のケース1背面14とが対向するように配置すると、隣り合う複合ケース1における互いの凸条部25が高さ方向Zにおいて互い違いに位置するため、互いの凸条部25が干渉せず、密に配置することができる。これにより、当該複合ケース1を用いた蓄電デバイスを配置するのに要するスペースが小さくすることができる。
【0057】
U字状部20が上述した凹凸形状を有することにより、U字状部20の外縁の少なくとも一部が複雑な形状となるが、上述のように接合層50の第1接合層51は電着塗装により形成されるとともに、樹脂製の第2接合層52と一対の側面部31、32及び蓋部40との接合は樹脂同士の溶着により行われることから、金属同士の溶接を行う場合に比べて、接合が容易となっている。
【0058】
変形形態3によれば、金属製のU字状部20において広い面である正面13及び背面14が凹凸形状を有することにより、U字状部20を介した放熱を促すことができ、放熱性に優れた複合ケース1を提供することができる。
【0059】
また、変形形態3によれば、凹凸形状を形成する凸条部25は長手方向Xに平行に延びているため、U字状部20を押出成形により成形する場合には、U字状部20を長手方向Xに押出する際にU字状部20に凸条部25を形成することができ、作業工程の削減を図ることができる。なお、凸条部25は長手方向Xに限らず任意の方向に延びるように設けることができる。また、凸条部25に替えて、円筒形状や円錐形状の突起を設けてもよい。
【0060】
さらに、
図10に示す変形形態4のように、U字状部20における正面13及び背面14を外方に突出する屈曲部26を複数備える蛇腹形状に成形して、正面13及び背面14が凹凸形状を有するようにしてもよい。屈曲部26は長手方向Xに平行に同形状に延びた形状とすることができる。正面13及び背面14に形成する屈曲部26の数は限定されないが、変形形態4では、正面13に3個、背面14に3個としている。そして、変形形態3の場合の凸条部25と同様に、正面13における3個の屈曲部26と、背面14における2個の屈曲部26とは互いに高さ方向Zの位置が異なっており、これにより、当該複合ケース1を用いた蓄電デバイスを複数配置する際に密に配置することができ、配置に要するスペースが小さくすることができる。当該変形形態4の場合もU字状部20を介した放熱を促すことができ、放熱性に優れた複合ケース1を提供することができる。
【0061】
なお、本実施形態1では、蓋部40を樹脂製としたが、これに限らず、蓋部40の外縁40aが樹脂製であればよく、外縁40aの内側の形成材料は適宜選択することができ、限定されない。例えば、金属製の板の外縁に樹脂材料からなる樹脂層を設けて、蓋部40をとしてもよい。これにより、接合層50の第2接合層52と蓋部40の外縁40aとの接合を樹脂同士の溶着により行うことができる。
【0062】
(実施形態2)
上述した実施形態1の複合ケース1では、一対の側面部31、32を外部端子保持部33と凹部形成部34とからなることとしたが、実施形態2の複合ケース1は、
図11に示すように、一対の側面部31、32は一枚のPPS樹脂製の樹脂板からなる。
【0063】
また、外部端子101、102は、第1外部端子101a、102aと第2外部端子101b、102bとからなる。第1外部端子101a、102aは、蓄電デバイスの電極100に直接接続されており、第2外部端子101b、102bは側面部31、32を貫通した状態で保持されている。なお、第2外部端子101b、102bと側面部31、32とは第2外部端子101b、102bに形成された図示しない電着塗装被膜を介して互いに接合されている。
【0064】
そして、第1外部端子101a(102a)と第2外部端子101b(102b)とが互いに溶接されて、蓄電デバイスの電極100が金属と樹脂との複合ケース1内に収納される。なお、実施形態2において、実施形態1の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。当該実施形態2の金属と樹脂との複合ケース1によっても実施形態1の場合と同等の作用効果を奏する。なお、本実施形態2では、電極100に外部端子101a、102aを設けたが、電極100に外部端子101a、102aを設けずに、第2外部端子101b、102bを電極100に直接接合することとしてもよい。
【0065】
(実施形態3)
上述した実施形態2では、第2外部端子101b、102bを側面部31、32に貫通した状態で保持させたが、本実施形態3では、
図12に示すように、第2外部端子101b、102bを樹脂製の蓋部40に貫通した状態で保持させている。なお、第2外部端子101b、102bと蓋部40とは第2外部端子101b、102bに形成された図示しない電着塗装被膜を介して互いに接合されている。
【0066】
そして、第1外部端子101a(102a)と第2外部端子101b(102b)とが互いに溶接されて、蓄電デバイスの電極100が複合ケース1内に収納される。なお、実施形態3において、実施形態1、2の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。当該実施形態3の複合ケース1によっても実施形態1、2の場合と同等の作用効果を奏する。
【0067】
(実施形態4)
上述した実施形態3では、樹脂製の蓋部40に第2外部端子101b、102bを貫通した状態で保持させたが、実施形態4では、
図13に示すように、蓋部40は、金属板からなる金属板部41と、金属板部41の外縁に樹脂材料により形成された樹脂製の外縁40aと、金属板部41に形成された貫通孔42に第2外部端子101b、102bが貫通された状態で金属板部41と第2外部端子101b、102bとの間を封止する樹脂材料からなる端子封止部43とを備える。
【0068】
金属板部41と端子封止部43とは金属板部41の貫通孔42の壁面に形成された図示しない電着塗装被膜を介して互いに接合されている。また、第2外部端子101b、102bと端子封止部43とは第2外部端子101b、102bに形成された図示しない電着塗装被膜を介して互いに接合されている。なお、実施形態4において、実施形態1~3の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
本実施形態4によれば、蓋部40を金属板部41で形成しつつ蓋部40と外部端子101、102との間を樹脂製の端子封止部43により絶縁した状態で封止することができ、蓄電デバイスの電極用のケースとして有用となる。なお、当該実施形態4の複合ケース1によっても実施形態1~3の場合と同等の作用効果を奏する。
【0070】
(実施形態5)
図14に示す実施形態5では、
図12に示す実施形態3の場合に替えて、積層型の電極100を用いている。当該電極100は、上端から複数のタブ103aが互いに重なる位置で引き出されてスポット溶接、超音波溶接、レーザ溶接などにより互いに溶接されている。そして、互いに溶接された複数のタブ103aは、樹脂製の蓋部40を貫通した状態で蓋部40に保持された外部端子101のケース内側端部とスポット溶接、超音波溶接、レーザ溶接などにより溶接される。また、同様に電極100の上端から複数のタブ103bが互いに重なる位置で引き出されてスポット溶接、超音波溶接、レーザ溶接などにより互いに溶接されており、互いに溶接された複数のタブ103bは、蓋部40を貫通した状態で蓋部40に保持された外部端子102のケース内側端部とスポット溶接、超音波溶接、レーザ溶接などにより溶接される。なお、外部端子101、102と蓋部40とは、外部端子101、102に形成された図示しない電着塗装被膜を介して互いに接合されている。実施形態5においても実施形態3と同様の作用効果を奏する。
【0071】
(実施形態6)
上述した実施形態1では、
図5及び
図6に示すように、断面矩形の第2接合層52の蓋部40が載置された状態で両者溶着させたが、本実施形態6では、
図15(a)及び
図16(a)に示すように、接合層50は、U字状部20の外表面(13、14)の外方に突出するとともに、深さ方向Zの上方に突出したリブ521を備える。これにより、リブ521の内側には、リブ521の上端よりも下方に位置した載置面522が形成される。
図16(a)に示すように、リブ521は第2接合層52を上方に突出させて形成されている。
【0072】
図15(b)及び
図16(b)に示すように、蓋部40は、載置面522に載置される。
図16(b)に示すように、蓋部40の外縁40aはリブ521と当接している。そして、矢印Lで示すように、上方から外縁40aとリブ521と境界部にレーザを照射して外縁40aとリブ521とを溶着することができる。なお、実施形態6において、実施形態1の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0073】
本実施形態6によれば、リブ521により蓋部40の位置決めが容易となるとともに、レーザを上方から照射して溶着することができるため、側方からレーザを照射する場合に比べて作業性に優れる。なお、本実施形態6においても実施形態1の場合と同等の作用効果を奏する。
【0074】
なお、レーザの照射により蓋部40の外縁40aとリブ521とを溶着することに替えて、
図17(a)及び(b)に示す変形形態5のように、蓋部40の外縁40aとリブ521との境界部にV字の溝523を設けて、当該溝523に接着剤Pを充填することにより蓋部40の外縁40aとリブ521とを接合してよい。
【0075】
また、本実施形態6では、リブ521がU字状部20の外周面(正面13、背面14、側面15、16)から膨出するようにしたが、これに替えて、
図18に示す変形形態6のように、リブ521がU字状部20の外周面(正面13、背面14、側面15、16)から膨出せずに面一となるようにしてもよい。
【0076】
なお、
図17(a)及び(b)に示す変形形態5のように、蓋部40の外縁40aとリブ521との境界部にV字の溝523を設けることに替えて、
図19(a)及び(b)に示す変形形態7のように、まず、
図19(a)のように載置面522に接着剤Pを塗布した後、
図19(b)のように、蓋部40を載置面522に載置することにより、蓋部40の下面外縁40bと載置面522との間の接着剤Pを介して蓋部40が接合されるようにしてもよい。
【0077】
(実施形態7)
本実施形態7では、
図20に示すように、接合層50は外部接続部55、56を有している。外部接続部55、56は側面部31、32から複合ケース1の外方に突出して形成されている。第1の外部接続部55は、側面部31、32の背面14側から突出しており、第2の外部接続部56は、側面部31、32の正面13側から突出している。第1の外部接続部55及び第2の外部接続部56は側面部31、32のそれぞれにおける上方領域と下方領域に一つずつ設けられている。第2の外部接続部56の先端はC字状に形成されており、第1の外部接続部55の先端は、第2の外部接続部56の先端に嵌合する形状を有している。
【0078】
図21(a)に示すように、本実施形態7の複合ケース1を隣り合うように2つ配設し、両複合ケース1の間で第1の外部接続部55を第2の外部接続部56に嵌合させることにより、両者を接続することができる。なお、実施形態7において、実施形態1~5の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
本実施形態7では、側面部31、32は、複合ケース1の外方に突出して外部機器と接続可能に構成された外部接続部55、56を有している。これにより、複合ケース1を外部機器、例えば、隣り合って配設された別の複合ケース1と接続する際に、別途接続部材を要しないため、部品点数の削減と取付け作業性の向上を図ることができる。なお、本実施形態7においても実施形態1の場合と同等の作用効果を奏する。
【0080】
なお、第1の外部接続部55と第2の外部接続部56との接続は、嵌合に限らず、
図21(b)に示す変形形態8のように、隣り合う複合ケース1の間で外部接続部55、56同士をビス57で締結することで両者を接続することができる。この場合は、外部接続部55、56の先端はいずれも環状となっている。