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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064104
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】タイヤメンテナンス支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20240507BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172453
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】栗谷 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】土本 壮至
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】タイヤのメンテナンスに関わる情報が知得し易く、メンテナンス計画立案の作業効率を高めることができるタイヤメンテナンス支援方法を提供する。
【解決手段】タイヤメンテナンス支援方法は、運行管理されている複数の車両から選択した一つの車両に対応する車軸配列情報と、前記車両に装着されたタイヤのメンテナンス情報とを表示部14に表示させる。メンテナンス情報は、タイヤの残溝量の予測データ、タイヤの空気圧データの時間変遷、タイヤの空気圧および温度の少なくとも一方に基づくタイヤ負荷データの履歴、のうち1つを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運行管理されている複数の車両から選択した一つの車両に対応する車軸配列情報と、前記車両に装着されたタイヤのメンテナンス情報とを表示部に表示させるタイヤメンテナンス支援方法において、
前記メンテナンス情報は、タイヤの残溝量の予測データ、タイヤの空気圧データの時間変遷、タイヤの空気圧および温度の少なくとも一方に基づくタイヤ負荷データの履歴、のうち1つを含むことを特徴とするタイヤメンテナンス支援方法。
【請求項2】
メンテナンスに関するアラート表示を前記車軸配列情報に付加して表示することを特徴とする請求項1に記載のタイヤメンテナンス支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装着されるタイヤのメンテナンスを支援するタイヤメンテナンス支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤは走行状態や走行距離等に応じて摩耗し、タイヤが装着されている車軸位置によっても摩耗量が変わり、タイヤに設けられた溝の深さである残溝量が所定量以下になると交換などのメンテナンスが必要になる。
【0003】
特許文献1には従来のタイヤ管理方法が記載されている。このタイヤ管理方法で使用されるタイヤ管理サーバは、車両端末、車両管理端末、ディーラ端末と通信網を介して接続されている。タイヤ管理サーバは、車両端末またはディーラ端末からタイヤの状態を示すデータを受信し、このデータに基づいて、タイヤの状態について判定をし、緊急にタイヤの対処をする必要があると判定した場合は、該当の車両端末及びその状態に対処可能なディーラのディーラ端末にタイヤの状態を連絡する。タイヤに何らかの対処をする必要があるが緊急性はないと判定した場合は、該当の車輌の車両管理端末及び所定のディーラのディーラ端末に対してスケジューリング処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-132994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のタイヤ管理方法は、個々の車両に搭載される車両端末に対してタイヤの状態を表示する。ところで、トラックなどの輸送用の車両を複数保有して運行管理する運送事業者などでは、管理する複数の車両に対するタイヤ交換などのメンテナンス計画の立案が煩雑となり、メンテナンスのタイミングがずれてしまうようなケースもあった。本発明者は、運行管理する複数の車両におけるタイヤのメンテナンス計画を立てる上で、各車両に装着されたタイヤのメンテナンス情報を知得し易くすることによって、メンテナンス計画を立案する作業の改善を図ることができると考えた。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タイヤのメンテナンスに関わる情報が知得し易く、メンテナンス計画立案の作業効率を高めることができるタイヤメンテナンス支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様のタイヤメンテナンス支援方法は、運行管理されている複数の車両から選択した一つの車両に対応する車軸配列情報と、前記車両に装着されたタイヤのメンテナンス情報とを表示部に表示させるタイヤメンテナンス支援方法において、前記メンテナンス情報は、タイヤの残溝量の予測データ、タイヤの空気圧データの時間変遷、タイヤの空気圧および温度の少なくとも一方に基づくタイヤ負荷データの履歴、のうち1つを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タイヤのメンテナンスに関わる情報が知得し易く、メンテナンス計画立案の作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るタイヤメンテナンス支援装置を含むメンテナンス支援システムの構成を示すブロック図である。
図2】タイヤ管理サーバ装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】演算モデルの摩耗量推定および学習について説明するための模式図である。
図4】タイヤメンテナンス支援装置の機能構成を示すブロック図である。
図5】タイヤメンテナンス支援装置によるメンテナンス情報の表示処理の手順を示すフローチャートである。
図6】表示部にタイヤ残溝量データを表示する例を示す模式図である。
図7】表示部にタイヤ空気圧データを表示する例を示す模式図である。
図8】表示部にタイヤ負荷データを表示する例を示す模式図である。
図9】車軸配列情報にアラート表示を付加して表示する例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図1から図9を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
図1は、実施形態に係るタイヤメンテナンス支援装置100を含むメンテナンス支援システム110の構成を示すブロック図である。メンテナンス支援システム110は、タイヤ摩耗量計測装置60、車載計測装置70、タイヤ管理サーバ装置80およびタイヤメンテナンス支援装置100を備える。タイヤメンテナンス支援装置100は、運行管理されている複数の車両から選択された車両における車軸配列情報、およびタイヤ7のメンテナンスに関する情報(以下、メンテナンス情報と表記する。)を提供する。
【0012】
タイヤ7は、例えば運送事業者などで運行管理されている輸送用のトラック等の複数の車両に装着されている。運送事業者は、各車両に装着された複数のタイヤ7について、タイヤメンテナンス支援装置100が提供するタイヤ7のメンテナンス情報を知得することができる。タイヤ7のメンテナンス情報は、例えばタイヤ7の残溝量の予測データ、タイヤ7の空気圧データの時間変遷、並びにタイヤ7の空気圧および温度の少なくとも一方に基づくタイヤ負荷データなどである。
【0013】
タイヤ摩耗量計測装置60は、所定期間(数ヶ月から数年)において複数回に亘って、タイヤ7のトレッドに設けられた溝の深さを直接計測し、タイヤ7の摩耗量を取得する。タイヤ摩耗量計測装置60は、計測されたタイヤ7の摩耗量のデータを通信ネットワーク9を介してタイヤ管理サーバ装置80へ送信する。タイヤ作業者が計測器具やカメラ、目視等によって各溝の深さを計測し、タイヤ摩耗量計測装置60は、作業者が入力する計測データを記憶するものであってもよい。また、タイヤ摩耗量計測装置60は、機械的あるいは光学的な方法によって溝の深さを計測して摩耗量を記憶する専用の装置であってもよい。
【0014】
具体的には、タイヤ摩耗量計測装置60は、例えば、タイヤの溝が4本あった場合に、幅方向の4か所で計測し、さらに同一溝の周方向、例えば120°間隔で、3か所計測する。これにより、タイヤの幅方向または周方向での偏摩耗データもタイヤ摩耗量計測装置60に記憶される。なお、タイヤ摩耗量計測装置60は、タイヤの摩耗で直径が変わるため、走行距離とタイヤの回転数・速度の情報から計算によって溝の深さを間接的に計測してもよい。加えて、溝の深さを直接計測するものに、走行距離とタイヤの回転数・速度から計算によって予測するもの、とを併用してもよい。
【0015】
車載計測装置70は、車両に搭載されており、タイヤ7に設けた圧力センサおよび温度センサなどを有し、タイヤ7の空気圧および温度などを計測する。温度センサおよび圧力センサは、車両に装着されたタイヤ7のエアバルブ等に配設されていたり、あるいはベルト等でホイールに強固に巻き付け固定されている。また温度センサは、タイヤ7のインナーライナー等に配設されていてもよい。車載計測装置70は、通信ネットワーク9を介して、タイヤ7の空気圧および温度などのデータをタイヤ管理サーバ装置80へ送信する。
【0016】
また車載計測装置70は、車両に搭載された速度メータ、GPS受信機および加速度センサ等によって、車両の速度、車両の現在の位置情報(緯度、経度および高度)、および車両の3軸方向の加速度等を計測する。車載計測装置70は、通信ネットワーク9を介して、車両の速度、車両の位置情報、および車両の加速度などのデータをタイヤ管理サーバ装置80へ送信する。
【0017】
図2は、タイヤ管理サーバ装置80の機能構成を示すブロック図である。タイヤ管理サーバ装置80は、通信部81、車両情報取得部82、タイヤ摩耗量算出部83、タイヤ負荷算出部84および記憶部85を有する。タイヤ管理サーバ装置80における各部は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0018】
通信部81は、無線または有線通信によって通信ネットワーク9に通信接続し、タイヤ摩耗量計測装置60、車載計測装置70およびタイヤメンテナンス支援装置100との間で通信する。
【0019】
車両情報取得部82は、通信部81を介して、車載計測装置70から車両の速度および位置情報等の車両計測情報、並びにタイヤ7で計測される空気圧および温度等のタイヤ計測情報を取得する。また車両情報取得部82は、通信部81を介して、タイヤ摩耗量計測装置60で計測されたタイヤ7の摩耗量の計測データを取得する。
【0020】
車両情報取得部82は、車両計測情報の位置情報に基づいて走行距離を算出して取得することができる。また、車両の走行距離は、車両計測情報における速度のデータと、当該データに対応付けられた時刻のデータに基づいて算出してもよい。即ち、時系列的に並んだ速度データに、次の時点までの時間差分を乗算することによって車両の走行距離を算出することができる。車両情報取得部82は、車両の走行距離に関する情報が、車両または車両管理用の外部装置等から提供されていれば、自ら走行距離を算出する必要はなく、車両または外部装置から走行距離に関する情報を取得してもよい。
【0021】
車両情報取得部82は、取得した車両の走行距離、タイヤ計測情報(タイヤの温度および空気圧等)をタイヤ摩耗量算出部83へ出力する。車両情報取得部82は、タイヤ摩耗量算出部83において車両の加速度を入力要素として用いる演算モデルに基づくタイヤの摩耗量推定を行う場合、車両計測情報における加速度のデータをタイヤ摩耗量算出部83へ出力する。
【0022】
記憶部85は、例えばSSD(Solid State Drive)、ハードディスク、CD-ROM、DVD等によって構成される記憶装置である。記憶部85は、運行管理情報85a、車軸配列情報85b、タイヤ識別情報85c、タイヤ残溝量データ85d、タイヤ空気圧データ85e、タイヤ負荷データ85f、および予め各種車両およびタイヤ7の仕様に関して提供されているデータ等を記憶している。
【0023】
運行管理情報85aは、運送事業者などによって運行管理されている複数の車両に関する情報であり、車両の名称、車両ごとに付された車両の識別情報などを含む。記憶部85には、複数の運送事業者ごとにグループ化して運行管理情報85aを記憶させておくものとする。車軸配列情報85bは、車両ごとの車軸および装着するタイヤ7の位置を示す情報である。
【0024】
タイヤ識別情報85cは、タイヤ7毎に付与された一連番号などによる情報であり、例えばタイヤ7に内蔵させたRFIDにタイヤ識別情報を読み取り可能に記憶させておくものとする。タイヤ識別情報は、タイヤ7が装着された車両、および当該車両において装着された車軸位置に対応付けて、記憶部85に記憶するようにしてもよい。
【0025】
タイヤ残溝量データ85dは、タイヤ摩耗量算出部83によって推定されるタイヤ摩耗量を差し引いたタイヤ溝深さの残量、およびタイヤ摩耗量計測装置60によって定期的に計測されるタイヤ7の摩耗量を差し引いたタイヤ溝深さの残量のデータである。タイヤ残溝量データ85dは、タイヤ摩耗量算出部83によって過去に算出されたデータと、走行距離やタイヤ7の空気圧および温度の平均的な値を用いて将来における予測値として算出されるデータを含む。なお、将来の走行距離は、過去数年間の平均走行距離を基準にしたり、繁忙期、閑散期なども考慮した過去の走行距離データから月毎の予測走行距離を算出してもよい。
【0026】
タイヤ空気圧データ85eは、車載計測装置70によって計測された過去のタイヤ7の空気圧データの時間変遷を含んでいる。タイヤ負荷データ85fは、後述するように、タイヤ7の空気圧および温度の少なくとも一方に基づいてタイヤ負荷算出部84によって算出され、記憶部85に記憶される。
【0027】
タイヤ摩耗量算出部83は、タイヤ7の摩耗量の推定に適宜用いるデータ、例えば車両およびタイヤの仕様データなどを記憶部85から読み出して取得する。またタイヤ摩耗量算出部83は、記憶部85に記憶された車軸配列情報85bおよびタイヤ識別情報85cなどの情報を取得する。
【0028】
タイヤ摩耗量算出部83は、演算モデル83aを有し、タイヤ7の摩耗量を推定する。演算モデル83aは、入力された情報に基づいてタイヤ7の摩耗量を算出する学習型モデルである。図3は、演算モデル83aの摩耗量推定および学習について説明するための模式図である。演算モデル83aへの入力データは、概ね車両計測情報、タイヤ計測情報およびその他情報の各系統に分類される。
【0029】
車両計測情報関連の入力データは、車両の加速度および走行距離を含む。走行距離は、上述のように車両情報取得部82において取得される。タイヤ計測情報関連の入力データは、タイヤ7の空気圧および温度を含む。尚、車両の加速度は、適宜、演算モデル83aへの入力データとして用いられるものとする。
【0030】
その他情報による入力データは、気象情報に基づいて推定される路面状態、車両仕様データに含まれる車両の最大積載荷重、タイヤ仕様データに含まれるタイヤ7の耐摩耗性能等である。タイヤ7の耐摩耗性能は、例えばランボーン摩耗試験に基づき標準配合を100として各種トレッド配合の耐摩耗性能を指標化したタイヤ摩耗指標値等を用いる。
【0031】
演算モデル83aは、例えばニューラルネットワーク等の学習型モデルを用いる。演算モデル83aは、例えばDNN(Deep Neural Network)や、決定木などの手法を用いて構築される。また演算モデル83aは、例えば入力情報に対する多重線形回帰モデルとし、学習によってモデル生成されるものであってもよい。
【0032】
タイヤ摩耗量計測装置60によって計測されたタイヤ7の摩耗量のデータは、演算モデル83aの学習に用いる教師データとする。演算モデル83aの学習過程では、入力情報に基づいて演算モデル83aによって出力データとしてのタイヤ7の摩耗量を推定し、教師データと比較する。演算モデル83aは、推定したタイヤ7の摩耗量と教師データとを比較して重みづけ等の演算過程における各種係数を演算モデル83aに新たに設定し、モデルの更新を繰り返すことで学習が実行される。
【0033】
タイヤ摩耗量算出部83は、学習済みの演算モデル83aを用いて、タイヤ7の摩耗量を推定し、タイヤ7の摩耗量を差し引いたタイヤ溝深さの残量を記憶部85にタイヤ残溝量データ85dとして蓄積していく。
【0034】
タイヤ負荷算出部84は、タイヤ7の空気圧が所定閾値よりも低い場合、およびタイヤ7の温度が所定閾値よりも高い場合に、空気圧および温度のそれぞれに対して、車両の走行距離を乗算して積算することによってタイヤ負荷量を算出し、記憶部85にタイヤ負荷データ85fとして記憶させる。タイヤ負荷算出部84は、タイヤ7の空気圧および温度のうち少なくとも一方を用いてタイヤ負荷量を算出するようにしてもよい。
【0035】
図4は、タイヤメンテナンス支援装置100の機能構成を示すブロック図である。タイヤメンテナンス支援装置100は、通信部10、操作部12、表示部14、記憶部20および制御部30を備え、タイヤ7の交換やローテーション等のメンテナンス作業において用いられる。
【0036】
タイヤメンテナンス支援装置100における各部は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0037】
通信部10は、無線または有線通信によって通信ネットワーク9に通信接続し、タイヤ管理サーバ装置80との間で通信する。操作部12は、例えばタッチパネル、スイッチ、キーボードおよびマウスなどの操作可能な入力装置である。作業者は、操作部12を操作することによって、車両を選択し、車軸配列情報およびタイヤ7のメンテナンス情報などを表示部14に表示させることができる。
【0038】
表示部14は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置であり、作業者の操作に基づいて車軸配列情報およびタイヤ7のメンテナンス情報などを表示する。作業者は、表示部14に表示された画面表示を見ながら、タイヤ7の車軸配列を把握し、メンテナンス情報に基づいてタイヤ7のメンテナンス計画を立案することができる。
【0039】
記憶部20は、例えばSSD(Solid State Drive)、ハードディスク、CD-ROM、DVD等によって構成される記憶装置である。記憶部20は、制御部30で実行するコンピュータプログラム、タイヤ管理サーバ装置80から取得した車両の車軸配列情報およびタイヤ7のメンテナンス情報などを記憶する。車両の車軸配列情報は、例えば車名および車両型式などに対応して決まっており、記憶部20に記憶させておくようにしてもよい。
【0040】
制御部30は、車両選択部31、車軸情報取得部32、タイヤ情報取得部33および表示処理部34を備える。車両選択部31は、運行管理されている複数の車両から作業者の操作部12における操作に基づいて一つの車両を選択し、通信部10を介して、タイヤ管理サーバ装置80へ当該車両の識別情報を通知する。タイヤ管理サーバ装置80は、通知に含まれる車両の識別情報に対応する車軸配列情報85b、当該車両に装着されたタイヤ7のメンテナンス情報をタイヤメンテナンス支援装置100へ送信する。
【0041】
車軸情報取得部32は、車両選択部31によって選択した車両の車軸配列情報をタイヤ管理サーバ装置80から取得する。タイヤ情報取得部33は、車両選択部31によって選択した車両に装着されたタイヤ7のメンテナンス情報をタイヤ管理サーバ装置80から取得する。タイヤ情報取得部33は、タイヤ7のメンテナンス情報として、車両に装着された各タイヤ7のタイヤ残溝量データ85d、タイヤ空気圧データ85eおよびタイヤ負荷データ85fを取得する。
【0042】
表示処理部34は、車軸情報取得部32によって取得された車軸配列情報85b、タイヤ情報取得部33によって取得されたタイヤ7のメンテナンス情報を表示部14に表示する。この際、表示処理部34は、表示するメンテナンス情報を選択する作業者の操作を操作部12で受け付け、選択されたメンテナンス情報を表示部14に表示するようにしてもよい。
【0043】
次にタイヤメンテナンス支援装置100の動作について説明する。図5は、タイヤメンテナンス支援装置100によるメンテナンス情報の表示処理の手順を示すフローチャートである。タイヤメンテナンス支援装置100の車両選択部31は、作業者の操作部12における操作に基づいて、運行管理されている複数の車両から一つの車両を選択する(S1)。車両選択部31は、通信部10を介して、選択された車両の識別情報をタイヤ管理サーバ装置80へ通知する。通知された車両の識別情報に対応する車軸配列情報85b、および当該車両に装着されたタイヤ7のメンテナンス情報がタイヤ管理サーバ装置80から送信され、タイヤメンテナンス支援装置100の通信部10で受信する。
【0044】
車軸情報取得部32は、通信部10によって受信した車軸配列情報を取得する(S2)。また、タイヤ情報取得部33は、通信部10によって受信したタイヤ7のメンテナンス情報を取得する(S3)。ステップS3において、タイヤ情報取得部33は、タイヤ7のメンテナンス情報として、車両に装着された各タイヤ7のタイヤ残溝量データ85d、タイヤ空気圧データ85eおよびタイヤ負荷データ85fを取得する。
【0045】
表示処理部34は、車軸情報取得部32によって取得された車軸配列情報85b、タイヤ情報取得部33によって取得されたタイヤ7のメンテナンス情報を表示部14に表示する(S4)。更に表示処理部34は、表示部14に表示された車軸配列情報85bに対して、交換等のメンテナンスに関するアラート表示を付加して表示し(S5)、処理を終了する。
【0046】
図6は、表示部14にタイヤ残溝量データ85dを表示する例を示す模式図である。図6に示す表示画面では、選択された車両の識別情報、車軸配列情報85b、およびタイヤ残溝量データ85dが表示されている。車軸配列情報85bは、車両の前後方向における3つの車軸A1、A2およびA3、並びに各車軸に装着されるタイヤ位置B11、B12等を示している。図6に示す車軸配列情報85bには、各タイヤの複数の溝における残溝量のうち最小値を数値で表示している。例えばタイヤ位置B11のタイヤは、現在の残溝量の最小値が12.7mmとなっている。
【0047】
タイヤ7の残溝量は溝ごとに算出または計測されてタイヤ管理サーバ装置80の記憶部85に記憶することができるので、表示部14は、車軸配列情報85bの表示に、各タイヤの全ての溝の残溝量の数値を付加して表示するようにしてもよい。
【0048】
また、各タイヤの全ての溝の残溝量に基づいて、各タイヤにおける偏摩耗の状況を表示するようにしてもよい。偏摩耗の状況は、センター摩耗、ショルダー摩耗、外減りおよび内減りなどに区分することができ、状況が判るように例えば各表記(センター摩耗など)を車軸配列情報85bにおける各タイヤに付加して表示するとよい。
【0049】
タイヤ残溝量データ85dは、車軸配列情報85bの全てのタイヤについて表示してもよいし、一部のタイヤについて表示してもよい。図6に示す例では、タイヤ位置B11、B32およびB33のタイヤについて、タイヤ残溝量データ85dを表示している。タイヤ残溝量データ85dは、現在の時点を境に過去のデータと、将来における予測データとを含んでいる。また図6に示す例では、タイヤ交換が必要となる残溝量の閾値を破線で表示している。
【0050】
タイヤメンテナンス支援装置100は、車軸配列情報85bおよびタイヤ7のメンテナンス情報を表示することによって、選択された車両に応じて、作業者がタイヤ7のメンテナンスに関わる情報を知得し易く、メンテナンス計画立案の作業効率を高めることができる。またタイヤメンテナンス支援装置100は、表示部14に車両の走行距離の情報を表示するようにしてもよい。
【0051】
タイヤメンテナンス支援装置100は、タイヤ7のメンテナンス情報として、予測データを含むタイヤ残溝量データ85dを表示することによって、将来のどの時点でタイヤ交換が必要となるかを作業者に容易に知得させることができる。図6に示す例では、位置B11のタイヤの交換時期は未だ遠く、位置B33のタイヤは1月後には交換が必要となり、位置B32のタイヤはすぐに交換すべき状況であることが判る。
【0052】
図7は、表示部14にタイヤ空気圧データ85eを表示する例を示す模式図である。タイヤ空気圧データ85eは、現在までのタイヤ空気圧の時間変遷を示しており、車軸配列情報85bの全てのタイヤについて表示してもよいし、一部のタイヤについて表示してもよい。図7に示す例では、タイヤ位置B11およびB31のタイヤについて空気圧データを表示している。また図7に示す例では、各タイヤの設定空気圧を車軸配列情報85bに付加して表示している。この設定空気圧は、タイヤ別に初期値としてタイヤメーカー推奨値が登録されていてもよいが、適正空気圧の範囲で運送事業者の管理者が設定画面で変更してもよい。
【0053】
タイヤメンテナンス支援装置100は、タイヤ7のメンテナンス情報として、タイヤ空気圧データ85eの時間変遷を表示することによって、選択された車両におけるタイヤ7の空気圧の点検および補充のメンテナンスが必要となっているか否かを作業者に容易に知得させることができる。図7に示す例では、位置B11およびB31のタイヤについて空気圧が減っており、タイヤの空気圧の点検および補充のメンテナンスが必要になっていることが判る。またタイヤ空気圧データ85eについて、予測データを算出して現在および将来におけるメンテナンス要否を判断する場合には、現在までのタイヤ空気圧の自然減少の傾きを算出して将来におけるタイヤ空気圧を予測すればよい。
【0054】
図8は、表示部14にタイヤ負荷データ85fを表示する例を示す模式図である。タイヤ負荷データ85fは、現在までのタイヤ負荷量の履歴を示しており、車軸配列情報85bの全てのタイヤについて表示してもよいし、一部のタイヤについて表示してもよい。図8に示す例では、タイヤ位置B23およびB32のタイヤについてタイヤ負荷データを表示している。また図8に示す例では、タイヤの交換が必要となるタイヤ負荷量の閾値を破線で示している。例えばタイヤ負荷量が閾値に達した場合には、タイヤ摩耗によるタイヤ残溝量が閾値に達していなくてもタイヤ交換を行うようにする。例えば中古タイヤやリトレッド処理済みのタイヤ等においてタイヤ負荷量が累積している。また、タイヤ摩耗によるタイヤ残溝量が閾値に達した場合も、タイヤ負荷量が閾値に達していなくてもタイヤ交換を行うタイヤ交換を行うようにする。総合的には、タイヤ負荷量およびタイヤ残溝量のうちいずれか一方が閾値に達した場合に、タイヤ交換を行うようにするとよい。
【0055】
タイヤメンテナンス支援装置100は、タイヤ7のメンテナンス情報として、タイヤ負荷データ85fの履歴を表示することによって、選択された車両におけるタイヤ7の交換メンテナンスが必要となっているか否かを作業者に容易に知得させることができる。図8に示す例では、位置B32のタイヤについて交換が必要であり、位置B23のタイヤについては未だ交換が必要でないことが判る。
【0056】
図9は、車軸配列情報85bにアラート表示を付加して表示する例を示す模式図である。図9に示す例では、位置B11のタイヤの交換時期は未だ遠いためタイヤを青色で囲む表示を付加し、位置B33のタイヤは1月後には交換が必要となるためタイヤを黄色で囲む表示を付加し、位置B32のタイヤは直ぐに交換が必要であるためタイヤを赤色で囲む表示を付加している。尚、その他のタイヤ位置におけるタイヤにも同等のアラート表示を付加することができる。また、交換時期に基づくアラート表示に限らず、簡易的にタイヤ溝深さを基準にしてアラート表示するようにしてもよい。例えば、タイヤ残溝量が5mm以下の場合にタイヤを黄色で囲んで表示し、3mm以下の場合にタイヤを赤色で囲んで表示するようにしてもよい。
【0057】
タイヤメンテナンス支援装置100は、車軸配列情報85bにアラート表示を付加して表示することによって、選択された車両におけるタイヤ7の交換の必要性を作業者に容易に知得させることができる。
【0058】
次に実施形態に係るタイヤメンテナンス支援方法の特徴について説明する。タイヤメンテナンス支援方法は、運行管理されている複数の車両から選択した一つの車両に対応する車軸配列情報と、選択した一つの車両に装着されたタイヤのメンテナンス情報とを表示部14に表示させる。メンテナンス情報は、タイヤの残溝量の予測データ、タイヤの空気圧データの時間変遷、並びに、タイヤの空気圧および温度の少なくとも一方に基づくタイヤ負荷データの履歴、のうち少なくとも1つを含んでいる。このタイヤメンテナンス支援方法によれば、選択された車両に応じて、作業者がタイヤ7のメンテナンスに関わる情報を知得し易く、メンテナンス計画立案の作業効率を高めることができる。
【0059】
またタイヤメンテナンス支援方法は、メンテナンスに関するアラート表示を車軸配列情報に付加して表示する。このタイヤメンテナンス支援方法によれば、選択された車両におけるタイヤ7の交換の必要性を作業者に容易に知得させることができる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0061】
31 車両選択部、 32 車軸情報取得部、 33 タイヤ情報取得部、
34 表示処理部、 100 タイヤメンテナンス支援装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9