(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064118
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】パネル構造体の加工方法、パネル構造体の加工装置及びパネル構造体
(51)【国際特許分類】
B29C 53/04 20060101AFI20240507BHJP
B29C 65/02 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B29C53/04
B29C65/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172472
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富▲崎▼ 帆乃花
(72)【発明者】
【氏名】宮本 明啓
(72)【発明者】
【氏名】岩本 智行
(72)【発明者】
【氏名】新井 啓司
【テーマコード(参考)】
4F209
4F211
【Fターム(参考)】
4F209AC03
4F209AD12
4F209AD16
4F209AD18
4F209AD20
4F209AG03
4F209AG05
4F209AG06
4F209AH56
4F209AK09
4F209AR07
4F209AR19
4F209NA01
4F209NB01
4F209NG04
4F209NG05
4F211TA01
(57)【要約】
【課題】折り曲げ部における強度低下を抑制する。
【解決手段】パネル構造体の加工方法は、熱可塑性樹脂を用いて形成され一方向に延びる複数の凸部が両面に設けられたコア部材と、熱可塑性樹脂を用いて板状に形成されコア部材を凸部の高さ方向の両側から挟むように配置されるフェイスプレートと、を備えるパネル構造体の加工方法であって、パネル構造体のフェイスプレートとコア部材との間に形成される空間に棒状部材を一方向に沿って挿入する挿入工程と、棒状部材が挿入された状態のパネル構造体のうち棒状部材に沿った対象部分を加熱して軟化させ、棒状部材に沿ってパネル構造体を折り曲げることで対象部分に折り曲げ部を形成する折り曲げ工程とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を用いて形成され一方向に延びる複数の凸部が両面に設けられたコア部材と、熱可塑性樹脂を用いて板状に形成され前記コア部材を前記凸部の高さ方向の両側から挟むように配置されるフェイスプレートと、を備えるパネル構造体の加工方法であって、
前記パネル構造体の前記フェイスプレートと前記コア部材との間に形成される空間に棒状部材を前記一方向に沿って挿入する挿入工程と、
前記棒状部材が挿入された状態の前記パネル構造体のうち前記棒状部材に沿った対象部分を加熱して軟化させ、前記棒状部材に沿って前記パネル構造体を折り曲げることで前記対象部分に折り曲げ部を形成する折り曲げ工程と
を含むパネル構造体の加工方法。
【請求項2】
前記パネル構造体は、前記熱可塑性樹脂として、熱可塑性の複合材が用いられる
請求項1に記載のパネル構造体の加工方法。
【請求項3】
前記棒状部材として、棒状の加熱部材が用いられ、
前記折り曲げ工程では、前記加熱部材により前記パネル構造体の内部から前記対象部分を加熱する
請求項1に記載のパネル構造体の加工方法。
【請求項4】
前記加熱部材は、棒状の芯部材と、前記芯部材に巻かれた面状発熱体とを有する
請求項3に記載のパネル構造体の加工方法。
【請求項5】
前記棒状部材は、前記加熱部材に巻かれたコミングル材を有し、
前記折り曲げ工程では、前記加熱部材により前記コミングル材の一部を溶解させて前記パネル構造体に付着させる
請求項3又は請求項4に記載のパネル構造体の加工方法。
【請求項6】
前記折り曲げ工程で形成された前記折り曲げ部を冷却する冷却工程と、
前記折り曲げ部を冷却した後、前記棒状部材の少なくとも一部を取り出す取り出し工程と
を更に含み、
前記加熱部材には、前記コミングル材が巻かれる部分を覆うように保護層が分離可能に設けられ、
前記コミングル材は、前記保護層上に巻かれた状態で設けられ、
前記折り曲げ工程では、溶解させた前記コミングル材の一部に前記保護層を付着させた状態とし、
前記取り出し工程では、前記保護層から前記加熱部材を分離して取り出す
請求項5に記載のパネル構造体の加工方法。
【請求項7】
前記折り曲げ工程では、前記凸部が前記棒状部材に対して折り曲げ方向の内側に位置するように折り曲げる
請求項1に記載のパネル構造体の加工方法。
【請求項8】
前記折り曲げ工程では、前記凸部が前記棒状部材に対して折り曲げ方向の外側に位置するように折り曲げる
請求項1に記載のパネル構造体の加工方法。
【請求項9】
前記挿入工程では、前記凸部によって隔てられる隣り合う3つの前記空間に前記棒状部材を挿入し、
前記折り曲げ工程では、3つの前記空間のうち中央の前記空間に挿入された前記棒状部材に沿って前記パネル構造体を折り曲げる
請求項7又は請求項8に記載のパネル構造体の加工方法。
【請求項10】
前記棒状部材は、棒状の加熱部材と、前記加熱部材に巻かれた線状のコミングル材を有し、
3つの前記空間のうち中央の前記空間に挿入する前記棒状部材よりも、他の2つの前記空間に挿入する前記棒状部材の方が、前記コミングル材の巻き量が多くなるようにし、
前記折り曲げ工程では、前記加熱部材により前記コミングル材の一部を軟化させて前記パネル構造体に付着させる
請求項9に記載のパネル構造体の加工方法。
【請求項11】
前記折り曲げ工程では、前記棒状部材を前記パネル構造体の折り曲げ方向の外側に押し付けるように折り曲げる
請求項1に記載のパネル構造体の加工方法。
【請求項12】
熱可塑性樹脂を用いて形成され一方向に延びる複数の凸部が両面に設けられたコア部材と、熱可塑性樹脂を用いて板状に形成され前記コア部材を前記凸部の高さ方向の両側から挟むように配置されるフェイスプレートと、を備えるパネル構造体の加工装置であって、
前記フェイスプレートと前記コア部材との間に形成される空間に棒状部材を前記一方向に沿って挿入した前記パネル構造体を保持する保持部と、
前記パネル構造体のうち前記棒状部材に沿った対象部分を加熱して軟化させる加熱部と、
前記パネル構造体の軟化された前記対象部分を前記棒状部材に沿って折り曲げる際に前記対象部分の折り曲げ方向の内側に当該対象部分に沿って配置される曲げ補助部と
を備えるパネル構造体の加工装置。
【請求項13】
熱可塑性樹脂を用いて形成され一方向に延びる複数の凸部が両面に設けられたコア部材と、
熱可塑性樹脂を用いて板状に形成され前記コア部材を前記凸部の高さ方向の両側から挟むように配置されるフェイスプレートと
を備え、
前記一方向に沿って折り曲げられた折り曲げ部を有し、
前記折り曲げ部では、前記フェイスプレート及び前記コア部材が前記一方向に沿った柱状の空間を囲うように形成される
パネル構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パネル構造体の加工方法、パネル構造体の加工装置及びパネル構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック段ボールのパネル構造体を折り曲げる場合に、加熱されたブレードをパネル構造体の表面に押し当てて溝を形成し、溝に沿って折り曲げる加工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の加工方法のようにパネル構造体に熱と圧力をかけて折り曲げる場合、折り曲げ部分に剥離等が形成されたり、折り曲げ部分のパネル構造が潰れたりする可能性がある。この場合、折り曲げ部においてパネル構造体の強度が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、折り曲げ部における強度低下を抑制することが可能なパネル構造体の加工方法、パネル構造体の加工装置及びパネル構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るパネル構造体の加工方法は、熱可塑性樹脂を用いて形成され一方向に延びる複数の凸部が両面に設けられたコア部材と、熱可塑性樹脂を用いて板状に形成され前記コア部材を前記凸部の高さ方向の両側から挟むように配置されるフェイスプレートと、を備えるパネル構造体の加工方法であって、前記パネル構造体の前記フェイスプレートと前記コア部材との間に形成される空間に棒状部材を前記一方向に沿って挿入する挿入工程と、前記棒状部材が挿入された状態の前記パネル構造体のうち前記棒状部材に沿った対象部分を加熱して軟化させ、前記棒状部材に沿って前記パネル構造体を折り曲げることで前記対象部分に折り曲げ部を形成する折り曲げ工程とを含む。
【0007】
本開示に係るパネル構造体の加工装置は、熱可塑性樹脂を用いて形成され一方向に延びる複数の凸部が両面に設けられたコア部材と、熱可塑性樹脂を用いて板状に形成され前記コア部材を前記凸部の高さ方向の両側から挟むように配置されるフェイスプレートと、を備えるパネル構造体の加工装置であって、前記フェイスプレートと前記コア部材との間に形成される空間に棒状部材を前記一方向に沿って挿入した前記パネル構造体を保持する保持部と、前記パネル構造体のうち前記棒状部材に沿った対象部分を加熱して軟化させる加熱部と、前記棒状部材に沿って前記パネル構造体を折り曲げる際に前記対象部分の折り曲げ方向の内側に当該対象部分に沿って配置される曲げ補助部とを備える。
【0008】
本開示に係るパネル構造体は、熱可塑性樹脂を用いて形成され一方向に延びる複数の凸部が両面に設けられたコア部材と、熱可塑性樹脂を用いて板状に形成され前記コア部材を前記凸部の高さ方向の両側から挟むように配置されるフェイスプレートとを備え、前記一方向に沿って折り曲げられた折り曲げ部を有し、前記折り曲げ部では、前記フェイスプレート及び前記コア部材が前記一方向に沿った柱状の空間を囲うように形成される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、折り曲げ部における強度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態において加工対象となるパネル構造体の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るパネル構造体の加工方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、挿入工程で用いられる棒状部材の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、折り曲げ工程における加熱の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、折り曲げ工程におけるパネル構造体の折り曲げの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、取り出し工程を行った後のパネル構造体の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、折り曲げ工程におけるパネル構造体の折り曲げの他の例を示す図である。
【
図10】
図10は、挿入工程で用いられる棒状部材の他の例を示す図である。
【
図12】
図12は、折り曲げ工程におけるパネル構造体の折り曲げの他の例を示す図である。
【
図13】
図13は、折り曲げ工程におけるパネル構造体の折り曲げの他の例を示す図である。
【
図15】
図15は、折り曲げ工程におけるパネル構造体の折り曲げの他の例を示す図である。
【
図16】
図16は、折り曲げ工程におけるパネル構造体の折り曲げの他の例を示す図である。
【
図17】
図17は、本実施形態に係る加工装置の一例を示す図である。
【
図18】
図18は、加工装置を用いて折り曲げ工程を行う場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係るパネル構造体の加工方法、パネル構造体の加工装置及びパネル構造体の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
図1は、本実施形態において加工対象となるパネル構造体10の一例を示す図である。
図1に示すように、パネル構造体10は、コア部材12と、フェイスプレート14と、接合部16とを備える。
【0013】
コア部材12及びフェイスプレート14は、熱可塑性樹脂を用いて形成される。熱可塑性樹脂としては、例えば複合材、ポリプロピレン等が挙げられる。複合材としては、強化繊維を含んだ熱可塑性の強化繊維プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)が挙げられる。強化繊維プラスチックとしては、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)、および炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)等が挙げられる。なお、強化繊維プラスチックは、上記に限定されない。コア部材12と、フェイスプレート14とは、同じ材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。
【0014】
コア部材12は、例えば波形状に形成される。コア部材12は、両方の面に複数の凸部18を有する。各凸部18は、直線方向である延在方向(一方向)D1に延びている。コア部材12は、凸部18の突出方向とは反対側の面において、凸部18に対応する位置に凹部を有する。このようなコア部材12は、コルゲート形状とも呼ばれ得る。なお、コア部材12は、凸部18がコア部材12のそれぞれの面に沿って延在方向D1に交差する方向に同一形状で繰り返し設けられる構成であればよい。したがって、コア部材12は、波形状又はコルゲート形状に限定されず、他の形状であってもよい。他の形状としては、例えばプラスチック製段ボールの断面形状等に用いられるいわゆるハーモニカ形状(又はハーモニカ構造)等が挙げられる。
【0015】
フェイスプレート14は、コア部材12を凸部18の高さ方向の両側から挟むように配置される。フェイスプレート14は、コア部材12の凸部18上に配置される。本実施形態において、フェイスプレート14は、例えば矩形状である。フェイスプレート14の形状は、矩形状とは異なる形状であってもよい。フェイスプレート14が配置されることにより、フェイスプレート14と凸部18との間に一方向に沿った空間K1が形成される。
【0016】
接合部16は、コア部材12と、フェイスプレート14とを結合する。接合部16は、凸部18の頂部と、フェイスプレート14との間に形成される。接合部16は、例えば複数の凸部18の頂部と、フェイスプレート14との間に選択的に形成される。接合部16は、例えば、パネル構造体10に求められる剛性および耐衝撃性特性に応じて形成される。接合部16は、凸部18の頂部およびフェイスプレート14の接合箇所を加熱して溶融させた後、フェイスプレート14を配置して冷却することで形成することができる。加熱は、例えば、ヒータおよび電熱線などの熱源、超音波振動、磁場による電磁誘導、およびレーザーを用いることが挙げられるが、これらの方法に限定されない。なお、接合部16は、凸部18とフェイスプレート14とが不図示の接着剤を用いて接合された構成であってもよい。
【0017】
図2は、本実施形態に係るパネル構造体10の加工方法の一例を示すフローチャートである。
図2に示すように、本実施形態に係るパネル構造体10の加工方法は、挿入工程S10と、折り曲げ工程S20と、冷却工程S30と、取り出し工程S40とを含む。
【0018】
挿入工程S10は、パネル構造体10のフェイスプレート14と凸部18との間に形成される空間K1に棒状部材30を延在方向D1に沿って挿入する。
【0019】
図3は、挿入工程S10で用いられる棒状部材30の一例を示す図である。
図3に示すように、棒状部材30は、加熱部材32と、保護層34と、コミングル材36とを有する。
【0020】
加熱部材32は、例えば金属等の導電材料を用いて円柱状に形成される。加熱部材32は、例えば電流を流すことで発熱する。加熱部材32は、例えばパネル構造体10の空間K1に挿入された状態で両端部が空間K1から突出する長さに形成される。加熱部材32から突出する両端部には、例えば電極等を接続可能である。
【0021】
保護層34は、例えばポリイミドの樹脂材料を用いて形成される。保護層34は、加熱部材32のうちパネル構造体10の空間K1内に収容される部分を覆うように配置される。保護層34は、加熱部材32に対して分離可能となるように設けられる。本実施形態において、保護層34としては、例えばフィルム部材が用いられる。保護層34は、フィルム部材に限定されず、テープ部材であってもよい。
【0022】
コミングル材36は、例えば強化繊維と熱可塑性樹脂繊維との混合部材を用いて例えば線状に形成される。なお、コミングル材の形状については、洗浄に限定されず、テープ状(帯状)、シート状等、他の形状であってもよい。コミングル材36は、加熱部材32のうち保護層34で覆われる部分に巻かれた状態で配置される。コミングル材36に熱を加えることにより、熱可塑性樹脂繊維が溶解するようになっている。
【0023】
棒状部材30は、加熱部材32、保護層34、コミングル材36が設けられた状態において、例えば円柱状である。棒状部材30の形状については、角柱等、他の種類の柱状であってもよい。棒状部材30は、空間K1に挿入される場合、当該空間K1を囲うフェイスプレート14と、凸部18のうち延在方向D1の両側方に延びる部分とに接するように径を設定することができる。
【0024】
図4は、挿入工程S10の一例を示す図である。
図4に示すように、挿入工程S10では、加熱部材32、保護層34、コミングル材36を有する棒状部材30を、パネル構造体10のフェイスプレート14と凸部18との間の空間K1に、延在方向D1に沿って挿入する。棒状部材30は、加熱部材32の長手方向の両端部が空間K1から延在方向D1に突出するように挿入される。また、棒状部材30は、加熱部材32のうちコミングル材36が巻かれた部分の全体が空間K1に収容されるように挿入される。
【0025】
棒状部材30を空間K1に挿入した後、折り曲げ工程S20を行う。折り曲げ工程S20は、棒状部材30が挿入された状態のパネル構造体10のうち、棒状部材30に沿った対象部分を加熱して軟化させ、棒状部材30に沿ってパネル構造体10を折り曲げることで対象部分に折り曲げ部を形成する。
【0026】
図5は、折り曲げ工程S20における加熱の一例を示す図である。
図5に示すように、折り曲げ工程S20では、パネル構造体10の空間K1に挿入された加熱部材32により、パネル構造体10の内部から対象部分20を加熱する。対象部分20は、棒状部材30が挿入される空間K1を囲うフェイスプレート14及び凸部18を含む部分である。
【0027】
加熱部材32に電流を流すことにより、加熱部材32が発熱する。加熱部材32から生じる熱により、対象部分20が加熱されて軟化する。また、加熱部材32から生じる熱により、コミングル材36の熱可塑性樹脂繊維36aが溶解して、パネル構造体10のフェイスプレート14及び凸部18に付着する。溶解した熱可塑性樹脂繊維36aは、保護層34にも付着する。
【0028】
対象部分20を軟化させた後、棒状部材30に沿ってパネル構造体10を折り曲げることで対象部分20に折り曲げ部を形成する。
図6は、折り曲げ工程におけるパネル構造体10の折り曲げの一例を示す図である。
図6では、凸部18が棒状部材30に対して折り曲げ方向D2の内側に位置するように折り曲げる場合の例を示している。
【0029】
図6に示すように、凸部18が棒状部材30に対して折り曲げ方向D2の内側に位置するようにパネル構造体10を折り曲げる場合、折り曲げ方向D2の内側に配置される凸部18及びフェイスプレート14Bには圧縮力が発生する。凸部18及びフェイスプレート14Bに発生する圧縮力により、棒状部材30が折り曲げ方向D2の外側のフェイスプレート14Aに押し付けられる。空間K1に棒状部材30が配置されるため、圧縮力による凸部18及びフェイスプレート14Bの空間K1の内側への変形が抑制される。このため、折り曲げによる空間K1の潰れ及び接合部16の剥離が抑制される。なお、この圧縮力により、凸部18の突出方向の先端側が延在方向D1に対して側方に広がるように変形する。
【0030】
また、パネル構造体10を折り曲げる場合、折り曲げ方向D2の外側に配置されるフェイスプレート14Aには引っ張り力が発生する。折り曲げ方向D2の外側のフェイスプレート14Aは、棒状部材30により効率的に加熱されて軟化し、引っ張り力により破断することなく、延在方向D1の側方に伸長するように変形する。
【0031】
また、棒状部材30に設けられるコミングル材36の熱可塑性樹脂繊維36aが加熱により溶融し、フェイスプレート14A及び凸部18に付着する。
【0032】
パネル構造体10に折り曲げ部22を形成した後、冷却工程S30を行う。冷却工程S30では、折り曲げ部22を冷却する。
図7は、冷却工程S30の一例を示す図である。冷却工程S30では、例えば加熱部材32の加熱を停止し、自然冷却により折り曲げ部22を含むパネル構造体10を冷却する。なお、冷却装置等を用いてパネル構造体10を冷却してもよい。
【0033】
冷却工程S30により、軟化又は溶融した熱可塑性樹脂が硬化する。例えば、加熱部材32により加熱されて軟化したフェイスプレート14及び凸部18が硬化する。これにより、パネル構造体10は、折り曲げ部22が形成された形状が維持される。また、加熱部材32により加熱されて溶融し、フェイスプレート14及び凸部18に付着したコミングル材36の熱可塑性樹脂繊維36aが硬化する。熱可塑性樹脂繊維36aが硬化することにより、フェイスプレート14及び凸部18が補強される。例えば、折り曲げ方向D2の外側のフェイスプレート14Aは、折り曲げ工程S20において折り曲げられることで伸長し、板厚が小さくなる場合がある。本実施形態では、熱可塑性樹脂繊維36aがフェイスプレート14Aに付着した状態で硬化することにより、フェイスプレート14Aが補強されることになる。
【0034】
折り曲げ部22を冷却した後、取り出し工程S40を行う。取り出し工程S40では、折り曲げ部22を冷却した状態のパネル構造体10から棒状部材30の少なくとも一部を取り出す。
【0035】
本実施形態において、コミングル材36の熱可塑性樹脂繊維36aは、保護層34に付着した状態で硬化する。つまり、保護層34は、熱可塑性樹脂繊維36aを介してフェイスプレート14及び凸部18に接着された状態となる。したがって、取り出し工程S40では、保護層34から加熱部材32を分離して取り出すことで、棒状部材30の一部を容易に取り出すことができる。なお、熱可塑性樹脂繊維36aと保護層34との付着状態によっては、折り曲げ部22の形状を崩すことなく保護層34を熱可塑性樹脂繊維36aから取り外し可能な場合がある。この場合には、保護層34を熱可塑性樹脂繊維36aから取り外して、保護層34ごと加熱部材32を取り出してもよい。
【0036】
図8は、取り出し工程S40を行った後のパネル構造体10の一例を示す図である。
図9に示すように、取り出し工程S40を行うことにより、パネル構造体10は、延在方向D1に沿って折り曲げ方向D2に折り曲げられた折り曲げ部22を有する構成となっている。また、パネル構造体10は、折り曲げ部22において、フェイスプレート14及び凸部18が延在方向D1に沿った柱状の空間K2を囲うように形成される。
【0037】
空間K2は、取り出し工程S40において取り出した棒状部材30の形状に対応する形状を有する。空間K2の形状は、パネル構造体10の折り曲げ部22以外の部分の空間K1とは異なる形状である。空間K2は、例えば延在方向D1に垂直な平面による断面視において、延在方向D1のどの部分においてもほぼ同一の形状である。延在方向D1に垂直な平面による断面視において、空間K2の寸法は、取り出し工程S40において取り出した棒状部材30の寸法に対応する。空間形成部24は、フェイスプレート14及び凸部18が熱により軟化し、棒状部材30に沿った形状で硬化することで形成される。
【0038】
また、本実施形態において、パネル構造体10の折り曲げ部22には、コミングル材36の熱可塑性樹脂繊維36aが硬化した状態で設けられる。この場合、熱可塑性樹脂繊維36aは、空間K2を囲う空間形成部24の一部を構成する。また、取り出し工程S40において、保護層34から加熱部材32を分離して取り出す場合、パネル構造体10の折り曲げ部22には、保護層34が残った状態となる。この場合、保護層34は、空間K2を囲う空間形成部24の一部を構成する。
【0039】
このように、上記のパネル構造体10の加工方法によれば、空間K1に棒状部材30が配置された状態でパネル構造体10を折り曲げるため、凸部18及びフェイスプレート14Bの空間K1の内側への変形が抑制される。したがって、折り曲げによる空間K1の潰れ及び接合部16の剥離が抑制される。これにより、折り曲げ部における強度低下を抑制することができる。
【0040】
また、上記のパネル構造体10においては、一方向に沿って折り曲げられた折り曲げ部22を有し、折り曲げ部22では、フェイスプレート14及び凸部18が一方向に沿った柱状の空間K1を囲うように形成される。したがって、折り曲げ部22における強度低下が抑制されたパネル構造体10を提供することができる。
【0041】
図9は、折り曲げ工程S20におけるパネル構造体10の折り曲げの他の例を示す図である。
図9では、凸部18が棒状部材30に対して折り曲げ方向D2の外側に位置するように折り曲げる場合を示している。
図9に示すように、凸部18が棒状部材30に対して折り曲げ方向D2の外側に位置するようにパネル構造体10を折り曲げる場合、折り曲げ方向D2の内側に配置されるフェイスプレート14Bには圧縮力が発生する。フェイスプレート14Bに発生する圧縮力により、棒状部材30は、折り曲げ方向D2の外側の凸部18及びフェイスプレート14Aに押し付けられる。この押し付けにより、凸部18の突出方向の先端側が延在方向D1に対して側方に広がるように変形する。また、空間K1に棒状部材30が配置されるため、圧縮力によるフェイスプレート14Bの空間K1の内側への変形が抑制される。このため、折り曲げによる空間K1の潰れ及び接合部16の剥離が抑制される。
図9に示す例では、接合部16に向けて棒状部材30が押し付けられるため、接合部16の剥離がより確実に抑制される。
【0042】
また、パネル構造体10を折り曲げる場合、折り曲げ方向D2の外側に配置されるフェイスプレート14A及び凸部18には引っ張り力が発生する。折り曲げ方向D2の外側のフェイスプレート14A及び凸部18は、棒状部材30により効率的に加熱されて軟化し、引っ張り力により破断することなく、延在方向D1の側方に伸長するように変形する。
【0043】
また、棒状部材30に設けられるコミングル材36の熱可塑性樹脂繊維36aが加熱により溶融し、フェイスプレート14A及び凸部18に付着する。
【0044】
図10は、挿入工程S10で用いられる棒状部材の他の例を示す図である。
図10に示すように、棒状部材40は、加熱部材42と、保護層44と、コミングル材46とを有する。
【0045】
加熱部材42は、例えば棒状の芯部材42aと、当該芯部材42aに巻かれた面状発熱体42bとを有する。芯部材42aは、熱を受けた場合でも剛性を維持可能な材料を用いて形成される。面状発熱体42bは、例えば樹脂等で構成されるフィルム部材42cに金属等により配線層42dが形成された構成である。配線層42dに電流を流すことにより発熱する。保護層44及びコミングル材46については、上記した保護層34及びコミングル材36と同様の構成とすることができる。なお、フィルム部材42cが保護層34と同様の機能を有する構成であってもよい。この場合、保護層44を設けない構成とすることができる。
【0046】
図11は、挿入工程S10の他の例を示す図である。
図11では、挿入工程S10において複数の棒状部材30が用いられる場合の例を示している。
図11に示すように、挿入工程S10では、パネル構造体10のうち凸部18によって隔てられる隣り合う3つの空間K1に棒状部材30を挿入することができる。各空間K1に挿入する棒状部材30は、同一の構成であってもよいし、少なくとも1つが異なる構成であってもよい。
【0047】
図12は、折り曲げ工程S20におけるパネル構造体10の折り曲げの他の例を示す図である。
図12では、複数の棒状部材30が挿入されたパネル構造体10を折り曲げる例を示している。
図12に示すように、折り曲げ工程S20では、3つの空間K1のうち隣り合う方向の中央の空間K1の凸部18において折り曲げるようにする。
図13では、凸部18が棒状部材30に対して折り曲げ方向D2の内側に位置するように折り曲げる場合の例を示している。
図12に示すように、3つの空間K1にそれぞれ棒状部材30が配置されるため、圧縮力によるフェイスプレート14及び凸部18が空間K1の内側へ変形することを抑制できる。このため、折り曲げによる空間K1の潰れ及び接合部16の剥離をより確実に抑制することができる。
【0048】
図13は、折り曲げ工程S20におけるパネル構造体10の折り曲げの他の例を示す図である。
図13では、複数の棒状部材30が挿入されたパネル構造体10を折り曲げる場合の他の例であって、凸部18が棒状部材30に対して折り曲げ方向D2の外側に位置するように折り曲げる場合の例を示している。
図13に示すように、3つの空間K1にそれぞれ棒状部材30が配置されるため、圧縮力によるフェイスプレート14及び凸部18が空間K1の内側へ変形することを抑制できる。このため、折り曲げによる空間K1の潰れ及び接合部16の剥離をより確実に抑制することができる。
【0049】
図14は、挿入工程S10の他の例を示す図である。
図14では、挿入工程S10において複数の棒状部材30が用いられる場合の他の例を示す図である。
図14に示すように、挿入工程S10では、パネル構造体10のうち凸部18によって隔てられる隣り合う3つの空間K1に棒状部材30を挿入することができる。この場合、3つの空間K1のそれぞれに挿入される棒状部材30には、コミングル材36が径方向に重ねるように巻き付けられた状態で設けられる。また、3つの空間K1のうち隣り合う方向の中央の空間K1に挿入する棒状部材30よりも、隣り合う方向の両側の空間K1に挿入する棒状部材30の方が、コミングル材36の巻き量が多くなっている。
【0050】
図15は、折り曲げ工程S20におけるパネル構造体10の折り曲げの他の例を示す図である。
図15では、複数の棒状部材30が挿入されたパネル構造体10を折り曲げる場合の他の例をしている。具体的には、3つの空間K1のうち隣り合う方向の中央の空間K1の凸部18において、当該凸部18が棒状部材30に対して折り曲げ方向D2の内側に位置するように折り曲げる場合の例を示している。
図15に示すように、3つの空間K1にそれぞれ棒状部材30が配置されるため、圧縮力によるフェイスプレート14及び凸部18が空間K1の内側へ変形することを抑制できる。このため、折り曲げによる空間K1の潰れ及び接合部16の剥離をより確実に抑制することができる。
【0051】
また、各空間K1に挿入される棒状部材30において、コミングル材36を径方向に重ねるように巻き付けることにより、棒状部材30の表層が柔らかくなり、変形しやすくなる。したがって、パネル構造体10を折り曲げる際、フェイスプレート14及び凸部18の変形に対応しやすくなるため、当該フェイスプレート14及び凸部18の追従性が向上する。
【0052】
また、両側の空間K1に挿入された棒状部材30のコミングル材36により、凸部18とフェイスプレート14との接合部16及びその周辺部を補強することができる。これにより、折り曲げによる空間K1の潰れ及び接合部16の剥離を抑制できる。また、中央の空間K1にのみ棒状部材30を挿入する場合と比べて、コミングル材36による補強部分の重量が大きくなるため、補強強度が向上する。
【0053】
また、両側の空間K1に挿入された棒状部材30のコミングル材36の巻き量を中央の空間K1に挿入された棒状部材30のコミングル材36の巻き量よりも多くすることにより、両側の空間K1において凸部18とフェイスプレート14との接合部16及びその周辺を十分に補強できるため、折り曲げによる空間K1の潰れ及び接合部16の剥離を抑制できる。また、中央の空間K1に挿入される棒状部材30は、折り曲げ工程S20において折り曲げ方向D2の外側に押し付けられる。このため、折り曲げ方向D2の外側部分の補強に比べて内側部分(フェイスプレート14と凸部18との接合部16及びその周辺部)の補強が少なくなる。これに対して、両側の空間K1に挿入された棒状部材30のコミングル材36の巻き量を中央の空間K1に挿入された棒状部材30のコミングル材36の巻き量よりも多くすることにより、中央の空間K1における折り曲げ方向D2の内側部分、すなわち接合部16及びその周辺部を両側から補強することができる。
【0054】
図16は、折り曲げ工程S20におけるパネル構造体10の折り曲げの他の例を示す図である。
図16では、複数の棒状部材30が挿入されたパネル構造体10を折り曲げる場合の他の例を示している。具体的には、3つの空間K1のうち隣り合う方向の中央の空間K1の凸部18において、当該凸部18が棒状部材30に対して折り曲げ方向D2の外側に位置するように折り曲げる場合の例を示している。
図16に示すように、3つの空間K1にそれぞれ棒状部材30が配置されるため、圧縮力によるフェイスプレート14及び凸部18が空間K1の内側へ変形することを抑制できる。このため、折り曲げによる空間K1の潰れ及び接合部16の剥離をより確実に抑制することができる。
【0055】
また、凸部18が棒状部材30に対して折り曲げ方向D2の内側に位置するように折り曲げる場合と同様に、各空間K1に挿入される棒状部材30において、コミングル材36を径方向に重ねるように巻き付けることにより、棒状部材30の表層が柔らかくなり、変形しやすくなる。したがって、パネル構造体10を折り曲げる際、フェイスプレート14及び凸部18の変形に対応しやすくなるため、当該フェイスプレート14及び凸部18の追従性が向上する。
【0056】
また、両側の空間K1に挿入された棒状部材30のコミングル材36により、凸部18とフェイスプレート14との接合部16及びその周辺部を補強することができる。これにより、折り曲げによる空間K1の潰れ及び接合部16の剥離を抑制できる。また、中央の空間K1にのみ棒状部材30を挿入する場合と比べて、コミングル材36による補強部分の重量が大きくなるため、補強強度が向上する。
【0057】
また、両側の空間K1に挿入された棒状部材30のコミングル材36の巻き量を中央の空間K1に挿入された棒状部材30のコミングル材36の巻き量よりも多くすることにより、両側の空間K1において凸部18とフェイスプレート14との接合部16及びその周辺を十分に補強できるため、折り曲げによる空間K1の潰れ及び接合部16の剥離を抑制できる。
【0058】
また、中央の空間K1に挿入される棒状部材30は、折り曲げ工程S20において折り曲げ方向D2の外側に押し付けられる。このため、凸部18とフェイスプレート14の接合部16を補強することができる。一方、凸部18が棒状部材30に対して折り曲げ方向D2の外側に位置するように折り曲げる場合には、折り曲げ方向D2の外側に発生する引っ張り力により、接合部16の両側のフェイスプレート14が延びて板厚が小さくなることがある。これに対して、これに対して、両側の空間K1に挿入された棒状部材30のコミングル材36の巻き量を中央の空間K1に挿入された棒状部材30のコミングル材36の巻き量よりも多くすることにより、当該両側の空間K1に配置される棒状部材30のコミングル材36によって接合部16の両側のフェイスプレート14を十分補強することができる。
【0059】
図17は、本実施形態に係る加工装置50の一例を示す図である。加工装置50は、上記の折り曲げ工程S20を行う場合に用いられる。
図17に示すように、加工装置50は、保持部52と、加熱部54と、曲げ補助部56とを備える。
【0060】
保持部52は、パネル構造体10のフェイスプレート14と凸部18との間に形成される空間K1に棒状部材30を延在方向D1に沿って挿入したパネル構造体10を保持する。保持部52は、基端部52aが固定される。保持部52は、例えば片持ち状態となるようにパネル構造体10を保持する。
【0061】
加熱部54は、パネル構造体10のうち棒状部材30に沿った対象部分20を加熱して軟化させる。加熱部54は、例えば棒状部材30に電流を流すための電源等である。加熱部54により棒状部材30に電流を流すことにより、棒状部材30が発熱し、対象部分20を加熱することができる。なお、加熱部54は、パネル構造体10の外部に設けられたヒータ等であってもよい。この場合、ヒータによりパネル構造体10の外部から対象部分20を加熱することができる。
【0062】
曲げ補助部56は、対象部分20が軟化されたパネル構造体10を棒状部材30に沿って折り曲げる際に、対象部分20の折り曲げ方向D2の内側に当該対象部分20に沿って配置される。曲げ補助部56は、例えば円柱、四角柱、三角柱等、各種の形状を有する柱状部材を採用することができる。曲げ補助部56は、パネル構造体10の折り曲げ角度、折り曲げ部の形状等により適切な形状を選択することができる。曲げ補助部56は、長手方向の少なくとも一方の端部が固定される。
【0063】
図18は、加工装置50を用いて折り曲げ工程S20を行う場合の例を示す図である。
図18に示すように、まず、パネル構造体10のうち折り曲げ方向D2の内側となる面を下側に向けた状態で、当該パネル構造体10のうち凸部18が並ぶ方向の一方の端部を保持部52で保持する。そして、加熱部54により対象部分20を加熱して軟化させる。
【0064】
対象部分20が軟化した後、対象部分20の上に延在方向D1に沿って曲げ補助部56を配置し、曲げ補助部56を固定して上下方向に移動しないようにする。この状態から、パネル構造体10のうち凸部18が並ぶ方向の他方の端部、つまり保持部52で保持されていない側の端部を把持して上方に持ち上げる。これにより、パネル構造体10を適切に折り曲げることができる。
【0065】
以上のように、本開示の第1態様に係るパネル構造体の加工方法は、熱可塑性樹脂を用いて形成され一方向に延びる複数の凸部18が両面に設けられたコア部材12と、熱可塑性樹脂を用いて板状に形成されコア部材12を凸部18の高さ方向の両側から挟むように配置されるフェイスプレート14と、を備えるパネル構造体10の加工方法であって、パネル構造体10のフェイスプレート14とコア部材12との間に形成される空間K1に棒状部材30を一方向に沿って挿入する挿入工程S10と、棒状部材30が挿入された状態のパネル構造体10のうち棒状部材30に沿った対象部分20を加熱して軟化させ、棒状部材30に沿ってパネル構造体10を折り曲げることで対象部分20に折り曲げ部22を形成する折り曲げ工程S20とを含む。
【0066】
この構成によれば、空間K1に棒状部材30が配置された状態でパネル構造体10を折り曲げるため、凸部18及びフェイスプレート14Bの空間K1の内側への変形が抑制される。したがって、折り曲げによる空間K1の潰れ及び接合部16の剥離が抑制される。これにより、折り曲げ部における強度低下を抑制することができる。
【0067】
本開示の第2態様に係るパネル構造体の加工方法は、第1態様に係るパネル構造体の加工方法において、パネル構造体10は、熱可塑性樹脂として、熱可塑性の複合材が用いられる。したがって、複合材を用いたパネル構造体10において、折り曲げ部における強度低下を抑制することができる。
【0068】
本開示の第3態様に係るパネル構造体の加工方法は、第1態様又は第2態様に係るパネル構造体の加工方法において、棒状部材30として、棒状の加熱部材32が用いられ、折り曲げ工程S20では、加熱部材32によりパネル構造体10の内部から対象部分20を加熱する。したがって、パネル構造体10の対象部分20を効率的に加熱することができる。
【0069】
本開示の第4態様に係るパネル構造体の加工方法は、第3態様に係るパネル構造体の加工方法において、加熱部材42は、棒状の芯部材42aと、芯部材42aに巻かれた面状発熱体42bとを有する。したがって、パネル構造体10の対象部分20を効率的に加熱することができる。
【0070】
本開示の第5態様に係るパネル構造体の加工方法は、第3態様又は第4態様に係るパネル構造体の加工方法において、棒状部材30は、加熱部材32に巻かれたコミングル材36を有し、折り曲げ工程S20では、加熱部材32によりコミングル材36の一部を溶解させてパネル構造体10に付着させる。したがって、溶解させたコミングル材36の一部によりパネル構造体10を補強することができる。
【0071】
本開示の第6態様に係るパネル構造体の加工方法は、第5態様に係るパネル構造体の加工方法において、折り曲げ部22を冷却する冷却工程S30と、折り曲げ部22を冷却した後、棒状部材30の少なくとも一部を取り出す取り出し工程S40とを更に含み、加熱部材32には、コミングル材36が巻かれる部分を覆うように保護層34が分離可能に設けられ、コミングル材36は、保護層34上に巻かれた状態で設けられ、折り曲げ工程S20では、溶解させたコミングル材36の一部に保護層34を付着させた状態とし、取り出し工程S40では、保護層34から加熱部材32を分離して取り出す。したがって、コミングル材36の一部を溶解させた場合に保護層34に付着した状態となり、加熱部材32には直接付着しないため、取り出し工程S40において加熱部材32を容易に取り出すことができる。また、保護層34によりパネル構造体10を補強することができる。
【0072】
本開示の第7態様に係るパネル構造体の加工方法は、第1態様から第6態様のいずれかに係るパネル構造体の加工方法において、折り曲げ工程S20では、凸部18が棒状部材30に対して折り曲げ方向D2の内側に位置するように折り曲げる。したがって、空間K1の潰れ及び接合部16の剥離等を抑制しつつ、効率的にパネル構造体10を折り曲げることができる。
【0073】
本開示の第8態様に係るパネル構造体の加工方法は、第1態様から第6態様のいずれかに係るパネル構造体の加工方法において、折り曲げ工程S20では、凸部18が棒状部材30に対して折り曲げ方向D2の外側に位置するように折り曲げる。したがって、空間K1の潰れ及び接合部16の剥離等を抑制しつつ、効率的にパネル構造体10を折り曲げることができる。
【0074】
本開示の第9態様に係るパネル構造体の加工方法は、第7態様又は第8態様に係るパネル構造体の加工方法において、挿入工程S10では、凸部18によって隔てられる隣り合う3つの空間K1に棒状部材30を挿入し、折り曲げ工程S20では、3つの空間K1のうち中央の空間K1に挿入された棒状部材30に沿ってパネル構造体10を折り曲げる。したがって、中央の空間K1及び両側の空間K1において、折り曲げによる空間K1の潰れ及び接合部16の剥離が抑制される。これにより、折り曲げ部における強度低下をより確実に抑制することができる。
【0075】
本開示の第10態様に係るパネル構造体の加工方法は、第9態様に係るパネル構造体の加工方法において、棒状部材30は、棒状の加熱部材32と、加熱部材32に巻かれた線状のコミングル材36を有し、3つの空間K1のうち中央の空間K1に挿入する棒状部材30よりも、他の2つの空間K1に挿入する棒状部材30の方が、コミングル材36の巻き量が多くなるようにし、折り曲げ工程S20では、加熱部材32によりコミングル材36の一部を軟化させてパネル構造体10に付着させる。したがって、中央の空間K1及び両側の空間K1において、コミングル材36の一部によりパネル構造体10を補強することができる。また、両側の空間K1において中央の空間K1よりも補強強度を高めることができるため、折り曲げ部における強度低下をより確実に抑制することができる。
【0076】
本開示の第11態様に係るパネル構造体の加工方法は、第1態様から第10態様のいずれかに係るパネル構造体の加工方法において、折り曲げ工程S20では、棒状部材30をパネル構造体10の折り曲げ方向D2の外側に押し付けるように折り曲げる。したがって、パネル構造体10の折り曲げ方向D2の外側の部材を効率的に加熱することができ、確実に軟化させて変形させることができる。
【0077】
本開示の第12態様に係るパネル構造体10の加工装置50は、熱可塑性樹脂を用いて形成され一方向に延びる複数の凸部18が両面に設けられたコア部材12と、熱可塑性樹脂を用いて板状に形成されコア部材12を凸部18の高さ方向の両側から挟むように配置されるフェイスプレート14と、を備えるパネル構造体10の加工装置50であって、フェイスプレート14とコア部材12との間に形成される空間K1に棒状部材30を一方向に沿って挿入したパネル構造体10を保持する保持部52と、パネル構造体10のうち棒状部材30に沿った対象部分20を加熱して軟化させる加熱部54と、パネル構造体10の軟化された対象部分20を棒状部材30に沿って折り曲げる際に対象部分20の折り曲げ方向D2の内側に当該対象部分20に沿って配置される曲げ補助部56とを備える。
【0078】
したがって、折り曲げ部における強度低下を抑制するようにパネル構造体10を効率的に折り曲げることができる。
【0079】
本開示の第13態様に係るパネル構造体は、熱可塑性樹脂を用いて形成され一方向に延びる複数の凸部18が両面に設けられたコア部材12と、熱可塑性樹脂を用いて板状に形成されコア部材12を凸部18の高さ方向の両側から挟むように配置されるフェイスプレート14とを備え、一方向に沿って折り曲げられた折り曲げ部22を有し、折り曲げ部22では、フェイスプレート14及びコア部材12が一方向に沿った柱状の空間K1を囲うように形成される。
【0080】
したがって、折り曲げ部22における強度低下が抑制されたパネル構造体10を提供することができる。
【0081】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではない、また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0082】
例えば、上記実施形態においては、棒状部材30、40が加熱部材32、42、保護層34、44、コミングル材36、46を有する構成を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。例えば、棒状部材30、40は、保護層34、44は、設けられなくてもよい。また、棒状部材30、40は、保護層34、44及びコミングル材36、46の両方が設けられない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 パネル構造体
12 コア部材
14,14A,14B フェイスプレート
16 接合部
18 凸部
20 対象部分
22 折り曲げ部
24 空間形成部
30,40 棒状部材
32,42 加熱部材
34,44 保護層
36,46 コミングル材
36a 熱可塑性樹脂繊維
42a 芯部材
42b 面状発熱体
42c フィルム部材
42d 配線層
50 加工装置
52 保持部
52a 基端部
54 加熱部
56 曲げ補助部
D1 延在方向
D2 折り曲げ方向
K1,K2 空間
S10 挿入工程
S20 折り曲げ工程
S30 冷却工程
S40 取り出し工程