(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064119
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】電解コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/00 20060101AFI20240507BHJP
H01G 9/012 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H01G9/00 290E
H01G9/012 307
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172473
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ジャッキー ムアンカム
(72)【発明者】
【氏名】ワサン ブンルアンガード
(57)【要約】 (修正有)
【課題】端子部分の厚み不良を抑制できる電解コンデンサの製造方法を提供する。
【解決手段】電解コンデンサの製造方法は、封止体110と、電解コンデンサ素子の陽極及び陰極の一方と接続された第1リードフレーム120及び第2リードフレーム130と、を備えるワーク100を準備する工程と、第1リードフレームの第1主面120a及び第2主面120bの少なくとも一方に段差部150を設ける工程と、段差部が設けられた第1リードフレームを上方に、かつ、第2リードフレームを下方にした状態で、上記低融点金属の融点より高く、かつ、Cuの融点より低い温度でワークの熱処理を行う工程と、熱処理後に、封止体と段差部との間で第1リードフレームを切断する工程と、を含む。第1リードフレームは、Cuから構成された基材を有するとともに、Cuより融点が低い低融点金属から構成された低融点金属層を表面に有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解コンデンサ素子が封止された封止体と、前記電解コンデンサ素子の陽極及び陰極の一方と接続された第1リードフレームと、前記陽極及び前記陰極の他方と接続された第2リードフレームと、を備えるワークを準備する工程と、
前記第1リードフレームの第1主面及び第2主面の少なくとも一方に、前記第1リードフレームの幅方向に延在する少なくとも1本の段差部を設ける工程と、
前記ワークの熱処理を行う工程と、
前記熱処理後に前記第1リードフレームを切断する工程と、を含み、
前記第1リードフレームは、Cuから構成された基材を有するとともに、Cuより融点が低い低融点金属から構成された低融点金属層を表面に有し、
前記熱処理は、前記段差部が設けられた前記第1リードフレームを上方に、かつ前記第2リードフレームを下方にした状態で、前記低融点金属の融点より高く、かつCuの融点より低い温度で行い、
前記切断する工程では前記封止体と前記段差部との間で前記第1リードフレームを切断する、電解コンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記段差部として第1溝部を形成する、請求項1に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記低融点金属層にレーザを照射して溶融することにより、前記第1溝部を形成する、請求項2に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記低融点金属層は、前記低融点金属としてのSnから構成されたSn層であり、
前記第1リードフレームは、前記基材と前記Sn層との間にNiから構成されたNi層を有し、
前記Ni層の表面が露出するように前記Sn層を線状に除去することにより、前記第1溝部を形成する、請求項2又は3に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記段差部として突起部を形成する、請求項1又は2に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項6】
前記第1リードフレームの前記第1主面及び前記第2主面に、それぞれ前記段差部を設ける、請求項1又は2に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項7】
前記段差部と前記封止体との間において前記第1リードフレームの前記幅方向に第2溝部を形成し、
前記切断する工程では前記段差部と前記第2溝部との間で前記第1リードフレームを切断し、
切断された前記第1リードフレームを前記第2溝部に沿って折り曲げる工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内部に複数のコンデンサ素子が設けられた絶縁性樹脂体と、各コンデンサ素子の陽極部及び陰極部にそれぞれ電気的に接続された一対の端子(リードフレーム)と、を備えた固体電解コンデンサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された上記固体電解コンデンサは、通常では以下のような工程を経て作製される。まず、複数のコンデンサ素子を作製する。続いて、複数のコンデンサ素子を積層するとともに、各コンデンサ素子の陰極部及び陽極部にそれぞれリードフレームを電気的に接続する。各リードフレームは、例えば、Cuから構成された基材と、基材表面に形成されたNi層と、Ni層表面に形成されたSn層と、を有する。続いて、複数のコンデンサ素子を絶縁性樹脂で封止する。この段階ではまだリードフレームは折り曲げられておらず、絶縁性樹脂体から一方及び他方に向かって真っ直ぐに延在している。その後、一方のリードフレームを上方に、かつ他方のリードフレームを下方にした状態で、Snの融点より高く、かつCuの融点より低い温度で熱処理(エージング処理)を行う。これにより、品質が劣る個体をスクリーニングする。その後、各リードフレームを切断して不要部分を除去する。そして、切断された各リードフレームをそれぞれ折り曲げることによって一対の端子を形成する。
【0005】
このような製法では、熱処理の温度がSnの融点よりも高いため、熱処理中にSnが溶融し、Snが重力に従って下方に流れる。そのため、熱処理後、上方に位置するリードフレームでは、Snが絶縁性樹脂体付近に集まるため、当該リードフレームから形成された端子が厚くなってしまう。特に、当該端子の折り曲げ部周辺に偏ってSnが固化してしまうと最も悪く、折り曲げ時に製品の端子部分の厚み寸法の限度を超えてしまい、不良品になってしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、端子部分の厚み不良を抑制できる電解コンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電解コンデンサの製造方法は、電解コンデンサ素子が封止された封止体と、上記電解コンデンサ素子の陽極及び陰極の一方と接続された第1リードフレームと、上記陽極及び上記陰極の他方と接続された第2リードフレームと、を備えるワークを準備する工程と、上記第1リードフレームの第1主面及び第2主面の少なくとも一方に、上記第1リードフレームの幅方向に延在する少なくとも1本の段差部を設ける工程と、上記ワークの熱処理を行う工程と、上記熱処理後に上記第1リードフレームを切断する工程と、を含み、上記第1リードフレームは、Cuから構成された基材を有するとともに、Cuより融点が低い低融点金属から構成された低融点金属層を表面に有し、上記熱処理は、上記段差部が設けられた上記第1リードフレームを上方に、かつ上記第2リードフレームを下方にした状態で、上記低融点金属の融点より高く、かつCuの融点より低い温度で行い、上記切断する工程では上記封止体と上記段差部との間で上記第1リードフレームを切断する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、端子部分の厚み不良を抑制できる電解コンデンサの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るワークの一例を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る封止体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す固体電解コンデンサ素子のマスク部分を拡大した断面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示すワークのリードフレームに段差部を設ける工程の一例を模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示すワークのリードフレームに段差部を設ける工程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、Sn層にレーザを照射することによって形成された溝部の一例を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図1に示すワークのリードフレームに段差部を設ける工程の別の例を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、
図6に示すワークの熱処理後の一例を模式的に示す平面図である。
【
図11】
図11は、
図7に示すワークの熱処理後の一例を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、
図10に示すワークのリードフレームを切断する工程の一例を模式的に示す平面図である。
【
図13】
図13は、
図11に示すワークのリードフレームを切断する工程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図14】
図14は、
図13に示すワークのリードフレームを折り曲げる工程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図15】
図15は、
図1に示すワークのリードフレームに第2溝部を設ける工程の一例を模式的に示す平面図である。
【
図16】
図16は、
図1に示すワークのリードフレームに第2溝部を設ける工程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図17】
図17は、
図16に示すワークのリードフレームを切断する工程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図18】
図18は、
図17に示すワークのリードフレームを折り曲げる工程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図19】
図19は、
図1に示すワークのリードフレームに段差部を設ける工程のさらに別の例を模式的に示す断面図である。
【
図20】
図20は、本発明の比較形態に係るワークの一例を模式的に示す平面図である。
【
図23】
図23は、
図22に示すワークのリードフレームを折り曲げる工程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図24】
図24は、実施例1、2及び比較例1の熱処理後の陽極端子部の厚みの分布を示すグラフである。
【
図25】
図25は、実施例1、2及び比較例1の陽極端子不良品の不良品率を示すグラフである。
【
図26】
図26は、実施例1の固体電解コンデンサの側面写真である。
【
図27】
図27は、比較例1の固体電解コンデンサの側面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、電解コンデンサの製造方法について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0011】
(ワーク準備工程)
図1は、本発明の実施形態に係るワークの一例を模式的に示す平面図である。
【0012】
図1に示すように、まず、ワーク100を準備する。ワーク100は、複数の封止体110と、第1リードフレームとしてのリードフレーム120と、第2リードフレームとしてのリードフレーム130と、を備えている。
【0013】
図2は、本発明の実施形態に係る封止体の一例を模式的に示す斜視図である。
【0014】
図2に示ように、各封止体110には電解コンデンサ素子としての固体電解コンデンサ素子1が複数封止されている。各固体電解コンデンサ素子1は、封止材111によって覆われている。
【0015】
図3は、
図2に示す封止体のA-A線断面図である。
図2及び
図3には、封止体110の長さ方向(長手方向)をL、幅方向をW、高さ方向をTで示している。ここで、長さ方向Lと幅方向Wと高さ方向Tとは互いに直交している。
【0016】
封止体110は、複数の固体電解コンデンサ素子1が封止材111で封止されることによって形成されている。封止材111は、各固体電解コンデンサ素子1の全体とリードフレーム120の一部とリードフレーム130の一部とを覆うように形成されている。封止材111としては、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂が挙げられる。
【0017】
なお、封止体110に含まれる固体電解コンデンサ素子1の数は、1以上であれば特に限定されず、適宜設定可能である。
【0018】
封止体110は、略直方体状の外形を有している。封止体110は、高さ方向Tにおいて相対する第1主面110a及び第2主面110b、幅方向Wにおいて相対する第1側面110c及び第2側面110d、並びに、長さ方向Lにおいて相対する第1端面110e及び第2端面110fを有している。
【0019】
なお、第1端面110e及び第2端面110fは、
図2及び
図3に示したように断面視V字状に外側に少し突出していてもよい。
【0020】
固体電解コンデンサ素子1は、金属基体層11と金属基体層11上の多孔質層12とを有し、陽極引き出し領域13と陰極形成領域14とを有する弁作用金属基体10と、陰極形成領域14において多孔質層12の表面上に設けられた誘電体層(
図3では図示せず)と、陰極形成領域14において誘電体層を介して多孔質層12上に設けられた固体電解質層30と、固体電解質層30上に形成された導電層40と、陽極引き出し領域13と陰極形成領域14とを区画し、誘電体層を介して多孔質層12上に設けられたマスク50と、を備えている。
【0021】
陽極引き出し領域13側において、各固体電解コンデンサ素子1の弁作用金属基体10がリードフレーム120によってまとめられて、封止材111(封止体110)の外に引き出される。
【0022】
陰極形成領域14側において、各固体電解コンデンサ素子1の導電層40が電気的に接続されて、さらにリードフレーム130と電気的に接続されて、封止材111(封止体110)の外に引き出される。
【0023】
固体電解コンデンサ素子1における各構成について以下に詳しく説明する。
【0024】
弁作用金属基体10は、平面視四角形状の薄膜(箔)であり、好ましくは、一対の長辺及び一対の短辺を有する平面視矩形状(短冊状)である。弁作用金属基体10は、固体電解コンデンサ素子1の陽極60として機能する。
【0025】
図4は、
図3に示す固体電解コンデンサ素子のマスク部分を拡大した断面図である。
【0026】
弁作用金属基体10は、
図4に示したように、金属基体層11と、複数の凹部が設けられた多孔質層12とを有している。そのため、弁作用金属基体10の各主面は、多孔質状になっている。これにより、弁作用金属基体10の表面積が大きくなっている。なお、弁作用金属基体10の両主面が多孔質状(多孔質層12)である場合に限られず、弁作用金属基体10の両主面の一方のみが多孔質状(多孔質層12)であってもよい。
【0027】
金属基体層11は、弁作用金属基体10の芯金部であり、
図3に示したように、その厚みは略一定である。
【0028】
弁作用金属基体10は、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム等の金属単体、又は、これらの金属を含む合金等の弁作用金属によって構成されている。弁作用金属の表面には、酸化被膜を形成することができる。
【0029】
なお、弁作用金属基体10は、金属基体層と当該金属基体層の少なくとも一方の主面に設けられた多孔質層とによって構成されていればよく、金属箔の表面をエッチングしたもの、金属箔の表面に多孔質状の微粉焼結体を形成したもの等を適宜採用することができる。
【0030】
誘電体層20は、ここでは、弁作用金属基体10の多孔質層12の表面上に設けられている(
図4参照)。ただし、誘電体層20は、弁作用金属基体10の両主面の少なくとも一方上に設けられていればよい。
【0031】
誘電体層20は、弁作用金属基体10の多孔質層12の表面に設けられた酸化被膜によって構成されていることが好ましい。例えば、誘電体層20は、アルミニウムの酸化物で構成されている。アルミニウムの酸化物は、弁作用金属基体の表面が陽極酸化処理されることにより形成される。
【0032】
マスク50は、弁作用金属基体10の1つの辺(好ましくは短辺)に沿って設けられた絶縁部材であり、固体電解コンデンサ素子1の陽極60と陰極70とを隔て、固体電解コンデンサ素子1の陽極60及び陰極70間の絶縁を確保している。マスク50によって、弁作用金属基体10は、陽極引き出し領域13と陰極形成領域14とに区画されている。
【0033】
図4に示すように、マスク50は、弁作用金属基体10(多孔質層12)の複数の細孔(凹部)を充填するように設けられていることが好ましい。ただし、マスク50によって誘電体層20の外表面の一部が覆われていればよく、マスク50によって充填されていない多孔質層12の細孔(凹部)が存在していてもよい。
【0034】
マスク50は、絶縁材料から構成されている。マスク50は、例えば、絶縁性樹脂を含む組成物等のマスク材を塗布して形成される。絶縁性樹脂としては、例えば、ポリフェニルスルホン(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、シアン酸エステル樹脂、フッ素樹脂(テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等)、可溶性ポリイミドシロキサンとエポキシ樹脂からなる組成物、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及び、それらの誘導体又は前駆体等が挙げられる。
【0035】
マスク材の塗布は、例えば、スクリーン印刷、ローラー転写、ディスペンサ、インクジェット印刷等により行うことができる。
【0036】
固体電解コンデンサ素子1は、誘電体層20上に設けられた固体電解質層30と、固体電解質層30上に設けられた導電層40と、を有しており、これらは、固体電解コンデンサ素子1の陰極70として機能する。また、陰極70は、マスク50によって区画された弁作用金属基体10の陰極形成領域14において誘電体層20上に設けられている。
【0037】
固体電解質層30は、マスク50によって区画された弁作用金属基体10の陰極形成領域14において誘電体層20上に設けられている。
図4に示すように、固体電解質層30は、弁作用金属基体10(多孔質層12)の複数の細孔(凹部)を充填するように設けられていることが好ましい。ただし、固体電解質層30によって誘電体層20の外表面の一部が覆われていればよく、固体電解質層30によって充填されていない多孔質層12の細孔(凹部)が存在していてもよい。
【0038】
固体電解質層30を構成する材料としては、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類等の導電性高分子等が用いられる。これらの中では、ポリチオフェン類が好ましく、PEDOTと呼ばれるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。また、上記導電性高分子は、ポリスチレンスルホン酸(PSS)等のドーパントを含んでいてもよい。
【0039】
固体電解質層30は、例えば、3,4-エチレンジオキシチオフェン等の重合性モノマーの含有液を用いて、誘電体層20の表面にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等の導電性高分子の重合膜を形成する方法や、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等の導電性高分子の分散液を誘電体層20の表面に塗布して乾燥させる方法等によって形成される。
【0040】
なお、弁作用金属基体10の細孔(凹部)を充填する内層を形成した後、誘電体層20全体を被覆する外層を形成することが好ましい。内層の形成は、例えば、浸漬法、電解重合、スポンジ転写、スクリーン印刷、ディスペンサ、インクジェット印刷等により行うことができる。同様に、外層の形成は、例えば、浸漬法、電解重合、スポンジ転写、スクリーン印刷、ディスペンサ、インクジェット印刷等により行うことができる。
【0041】
導電層40は、固体電解質層30上に設けられている。導電層40は、固体電解質層30の略全域を覆っており、マスク50に接触している。なお、導電層40は、マスク50の少なくとも一部を覆うように配置されてもよいし、マスク50に接触せずにマスク50の手前まで配置されていてもよい。導電層40は、略一定の厚さを有している。
【0042】
導電層40は、例えば、カーボン層又は陰極導体層を含む。また、導電層40は、カーボン層の外表面に陰極導体層が設けられた複合層や、カーボン及び陰極導体層材料を含む混合層であってもよい。
【0043】
カーボン層は、例えば、カーボン粒子と樹脂とを含むカーボンペーストを固体電解質層30の表面に塗布して乾燥させる方法等によって形成される。
【0044】
カーボンペーストの塗布は、例えば、浸漬法、スポンジ転写、スクリーン印刷、スプレー塗布、ディスペンサ、インクジェット印刷等により行うことができる。
【0045】
陰極導体層は、例えば、金、銀、銅、白金等の金属粒子と樹脂とを含む導電性ペーストを固体電解質層又はカーボン層の表面に塗布して乾燥させる方法等によって形成される。陰極導体層は、銀層であることが好ましい。
【0046】
導電性ペーストの塗布は、例えば、浸漬法、スポンジ転写、スクリーン印刷、スプレー塗布、ディスペンサ、インクジェット印刷等により行うことができる。
【0047】
続いて、リードフレーム120及び130について以下に詳しく説明する。
【0048】
リードフレーム120及び130は、複数の封止体110を支持固定する金属薄板であり、各封止体110を実装する際の接続端子となる部品である。リードフレーム120及び130は、封止体110の第1主面110a及び第2主面110bと平行に設けられている。
図3に示すように、リードフレーム120は、封止体110の第1主面110a側に第1主面120aを、封止体110の第2主面110b側に第2主面120bをそれぞれ有している。リードフレーム130も同様に、封止体110の第1主面110a側に第1主面130aを、封止体110の第2主面110b側に第2主面130bをそれぞれ有している。
【0049】
リードフレーム120は、各固体電解コンデンサ素子1の弁作用金属基体10、すなわち陽極60と接続されている。より詳細には、
図1に示すように、リードフレーム120は、複数の封止体110に対応して設けられた複数の陽極端子部121と、複数の陽極端子部121を支持する連結部122と、を有している。各陽極端子部121は、固体電解コンデンサの陽極端子を形成するための部分であり、対応する封止体110に含まれる固体電解コンデンサ素子1の陽極60と接続されている。また、各陽極端子部121は、例えば平面視矩形状に形成されており、対応する封止体110(第1端面110e)から一方に向かって真っ直ぐに延在している。連結部122は、複数の陽極端子部121に接続されており、リードフレーム120の幅方向w1に延在している。リードフレーム120の幅方向w1とは、複数の陽極端子部121の幅方向であり、陽極端子部121の幅方向とは、陽極端子部121の延在方向(封止体110から離れる方向)に直交する方向である。
【0050】
リードフレーム130は、各固体電解コンデンサ素子1の導電層40、すなわち陰極70と接続されている。より詳細には、
図1に示すように、リードフレーム130は、複数の封止体110に対応して設けられた複数の陰極端子部131と、複数の陰極端子部131を支持する連結部132と、を有している。各陰極端子部131は、固体電解コンデンサの陰極端子を形成するための部分であり、対応する封止体110に含まれる固体電解コンデンサ素子1の陰極70と接続されている。また、各陰極端子部131は、例えば平面視矩形状に形成されており、対応する封止体110(第2端面110f)から他方に向かって真っ直ぐに延在している。連結部132は、複数の陰極端子部131に接続されており、リードフレーム130の幅方向w2に延在している。リードフレーム130の幅方向w2とは、複数の陰極端子部131の幅方向であり、陰極端子部131の幅方向とは、陰極端子部131の延在方向(封止体110から離れる方向)に直交する方向である。
【0051】
図5は、
図1に示すワークのA-A線断面図である。なお、
図5では封止体110の内部構造の図示は省略している。また、リードフレーム130は、
図5に示すリードフレーム120の断面構造と同様の断面構造を有しているため、その図面を省略する。
【0052】
図5に示すように、リードフレーム120及び130は、各々、Cu(銅)から構成された基材(以下、Cu基材という)140を有するとともに、低融点金属層としてのSn層141を表面に有している。Sn層141は、Cuより融点が低い低融点金属としてのSn(すず)から構成されている。
【0053】
このように、低融点金属層としては、Sn層141が好適であり、リードフレーム120及び130は、Cu基材140とSn層141との間にNi(ニッケル)から構成されたNi層142を有することが好ましい。すなわち、リードフレーム120及び130は、各々、Cu基材140と、Cu基材140の表面に形成されたNi層142と、Ni層142の表面に形成されたSn層141と、を有することが好ましい。これにより、後述するように、段差部としての機能を効果的に発揮する溝部をレーザ照射によって形成することができる。また、Sn層141は、はんだに対する濡れ性を向上することができる。さらに、Ni層142は、Cu基材140とSn層141との反応を防止するバリアー層として機能する。
【0054】
Cu基材140は、例えば、Cu薄板をレーザ加工又は打ち抜き加工することによって形成することができる。Sn層141及びNi層142は、それぞれ、例えば、めっき法により形成可能である。
【0055】
Cu基材140の厚みは、90μm以上、110μm以下であることが好ましい。
【0056】
Sn層141の厚みは、5.0μm以上、7.0μm以下であることが好ましい。
【0057】
Ni層142の厚みは、0.5μm以上、2.0μm以下であることが好ましい。
【0058】
(段差部形成工程)
図6は、
図1に示すワークのリードフレームに段差部を設ける工程の一例を模式的に示す平面図である。
図7は、
図1に示すワークのリードフレームに段差部を設ける工程の一例を模式的に示す断面図である。なお、
図7は、
図1に示すワークのB-B線断面図に相当する。また、
図7では封止体110の内部構造の図示は省略している。
【0059】
図6及び
図7に示すように、続いて、リードフレーム120の第2主面120bに、リードフレーム120の幅方向w1に延在する段差部150を設ける。より詳細には、各陽極端子部121においてリードフレーム120の第2主面120bに、リードフレーム120の幅方向w1、すなわち陽極端子部121の幅方向に延在する段差部150を設ける。段差部150は、幅方向w1において陽極端子部121の一端から他端まで形成されている。リードフレーム120の幅方向w1は、封止体110の幅方向Wと平行であってもよい。
【0060】
段差部150としては溝部(第1溝部)151を形成することが好ましい。すなわち、リードフレーム120の表面に線状の凹条部を形成することが好ましい。
【0061】
図8は、Sn層にレーザを照射することによって形成された溝部の一例を模式的に示す断面図である。
【0062】
溝部151は、リードフレーム120に形成されたスクラッチ部であってもよい。具体的には、溝部151は、例えば、リードフレーム120の表面を機械的に削ることによって形成してもよいが、
図8に示すように、Sn層141に、すなわち低融点金属層にレーザを照射して溶融することにより形成することが好ましい。これにより、後述する熱処理工程においてSnが溶融して流動してもSnを溝部151にて効果的にせき止めることができる。これは、レーザ照射によって新たに形成されたSn層141及びNi層142の表面が酸化して酸化物層(例えばSnO層とNi
2O
3層)が形成されるが、通常は異なる酸化物同士の濡れ性が小さいためであると考えられる。
【0063】
このような観点から、Ni層142の表面が露出するようにSn層141を線状に除去することにより、溝部151を形成することが好ましい。これにより、
図8に示すように、底面がNi層142から構成され、側面がSn層141から構成された溝部151が形成されることになるため、上述のようにSn層141及びNi層142の酸化物層によってSnの流動を効果的にせき止めることができる。
【0064】
レーザとしては、例えば、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザ等の固体レーザを用いることができる。
レーザの照射条件は、特に限定されず、適宜設定可能であるが、Sn層141のみが溶融し、Ni層142及びCu基材140は溶融しない条件であることが好ましい。ここで、Snの融点は、231℃であり、Niの融点は、1455℃であり、Cuの融点は、1085℃であるため、上記レーザ照射により、リードフレーム120の表面温度を231℃より高く、1085℃より低い温度に加熱することが好ましい。
【0065】
具体的には、レーザの出力は、4.5W以上、6.5W以下であることが好ましい。
【0066】
レーザのスキャン速度は、300mm/sとした。
【0067】
レーザの周波数は、20kHzとした。
【0068】
図9は、
図1に示すワークのリードフレームに段差部を設ける工程の別の例を模式的に示す断面図である。なお、
図9は、
図1に示すワークのB-B線断面図に相当する。また、
図9では封止体110の内部構造の図示は省略している。
【0069】
段差部150が形成される面は、リードフレーム120の第1主面120a及び/又は第2主面120bであれば特に限定されず、例えば、
図9に示すように、リードフレーム120の第1主面120a及び第2主面120bにそれぞれ段差部150を形成してもよい。この場合、第1主面120a側の段差部150と第2主面120b側の段差部150とは、実質的に同じ場所に形成してもよいし、互いに異なる場所に形成してもよい。
【0070】
なお、ここでは、各陽極端子部121の1つの主面当たり1本の段差部150を設ける場合について説明したが、各陽極端子部121の1つの主面当たり2本以上の段差部150を設けてもよい。
【0071】
また、ここでは、段差部150が直線状である場合について説明したが、段差部150の平面形状は特に限定されず、例えば、円弧状や波線状等の曲線状であってもよいし、ジグザグ線状等の折れ線状であってもよい。
【0072】
(熱処理工程)
続いて、ワーク100の熱処理(エージング処理)を行う。詳細には、
図6に示したように、段差部150が設けられたリードフレーム120を上方に、かつリードフレーム130を下方にした状態で、Snの融点、すなわち低融点金属の融点より高く、かつCuの融点より低い温度で、ワーク100の熱処理を行う。すなわち、熱処理中、リードフレーム120、封止体110及びリードフレーム120は、鉛直方向にこの順に配置される。これにより、品質が劣る個体をスクリーニングする。
【0073】
熱処理のピーク温度は、260℃以上、270℃以下であることが好ましい。
【0074】
熱処理の時間は、150℃以上、200℃以下の時間が60秒以上、120秒以下であることが好ましく、217℃以上の時間が60秒以上、150秒以下であることが好ましい。
【0075】
図10は、
図6に示すワークの熱処理後の一例を模式的に示す平面図である。
図11は、
図7に示すワークの熱処理後の一例を模式的に示す断面図である。
【0076】
図10及び
図11に示すように、熱処理工程では、熱処理の温度が低融点金属であるSnの融点よりも高いため、熱処理中にSnが溶融し、Sn層141を構成するSnが重力に従って下方に流れる。しかしながら、リードフレーム120には段差部150が設けられているため、当該段差部150にてSnの流れをせき止めることができる(
図10及び
図11中のSn141a参照)。すなわち、上方に位置するリードフレーム120では、封止体110付近に集まるSn(低融点金属)の量を段差部150がない場合に比べて少なくすることができる(
図10及び
図11中のSn141b参照)。その結果、リードフレーム120から形成される端子、ここでは陽極端子の厚みを低減でき、作製される固体電解コンデンサの陽極端子部分の厚み不良を抑制することができる。
【0077】
なお、リードフレーム130については、熱処理工程において封止体110の下方に位置することから、Sn層141を構成するSnが重力に従って下方に流れても、そのSnが封止体110付近に集まらない。したがって、リードフレーム130にはリードフレーム120のように段差部を設けなくてもよい。
【0078】
(切断工程)
図12は、
図10に示すワークのリードフレームを切断する工程の一例を模式的に示す平面図である。
図13は、
図11に示すワークのリードフレームを切断する工程の一例を模式的に示す断面図である。
【0079】
続いて、
図12及び
図13に示すように、熱処理後にリードフレーム120及び130を切断する。より詳細には、リードフレーム120を、各封止体110と各段差部150との間で切断する。すなわち、各陽極端子部121を、対応する封止体110と、その陽極端子部121に設けられた段差部150との間で切断する。また、各陰極端子部131を、対応する陽極端子部121と同じ長さになるように切断する。これにより、リードフレーム120及び130の連結部122及び連結部132(
図1参照)等の不要部分を除去する。
【0080】
(端子形成工程)
図14は、
図13に示すワークのリードフレームを折り曲げる工程の一例を模式的に示す断面図である。
【0081】
最後に、
図14に示すように、切断されたリードフレーム120及び130をそれぞれ折り曲げる。より詳細には、各封止体110について、陽極端子部121を略中央部にて略90°折り曲げ、その後、陽極端子部121を根元部にて略90°折り曲げる。これにより、封止体110に沿って陽極端子123が形成される。陰極端子部131についても同様に折り曲げることによって陰極端子133が形成される。この結果、固体電解コンデンサ160が完成する。
【0082】
本実施形態では、溶融したSn(低融点金属)に起因する陽極端子123の厚みの増加を抑制できることから、陽極端子123が存在する領域における固体電解コンデンサ160の厚み不良を抑制することができる。
【0083】
以下、本実施形態の他の変形例について説明する。
【0084】
図15は、
図1に示すワークのリードフレームに第2溝部を設ける工程の一例を模式的に示す平面図である。
図16は、
図1に示すワークのリードフレームに第2溝部を設ける工程の一例を模式的に示す断面図である。なお、
図16は、
図1に示すワークのB-B線断面図に相当する。また、
図16では封止体110の内部構造の図示は省略している。
【0085】
図15及び
図16に示すように、段差部形成工程において、段差部150と封止体110との間においてリードフレーム120の幅方向w1に第2溝部152(線状の凹条部)を形成してもよい。より詳細には、各陽極端子部121においてリードフレーム120の第1主面120aに、リードフレーム120の幅方向w1、すなわち陽極端子部121の幅方向に延在する直線状の第2溝部152を設ける。これにより、第2溝部152が、封止体110の幅方向Wと平行に形成される。また、第2溝部152は、幅方向w1において陽極端子部121の一端から他端まで形成されている。第2溝部152は、リードフレーム120を折り曲げたときに封止体110の第2主面110bと第1端面110eとが交わる稜線部に沿う位置に形成されている。
【0086】
第2溝部152は、例えば、リードフレーム120の表面を機械的に削ることによって形成してもよいが、溝部(第1溝部)151と同様にして、Sn層141に、すなわち低融点金属層にレーザを照射して溶融することにより形成することが好ましい。より詳細には、Ni層142の表面が露出するようにSn層141を線状に除去することにより、第2溝部152を形成することが好ましい。
【0087】
図17は、
図16に示すワークのリードフレームを切断する工程の一例を模式的に示す断面図である。
【0088】
その後、
図17に示すように、熱処理工程を経た切断工程において、段差部150と第2溝部152との間でリードフレーム120を切断してもよい。より詳細には、各陽極端子部121を、その陽極端子部121に設けられた段差部150と第2溝部152との間で切断する。
【0089】
なお、第2溝部152は、熱処理工程において、段差部150と同様に、低融点金属であるSnの流れをせき止める作用も有している(
図17中のSn141c参照)。
【0090】
図18は、
図17に示すワークのリードフレームを折り曲げる工程の一例を模式的に示す断面図である。
【0091】
そして、
図18に示すように、端子形成工程において、切断されたリードフレーム120を第2溝部152に沿って折り曲げてもよい。第2溝部152ではリードフレーム120が薄いため、容易に曲げ加工を実施することができる。より詳細には、各封止体110について、陽極端子部121を第2溝部152(通常、陽極端子部121の略中央部)にて略90°折り曲げ、その後、陽極端子部121を根元部にて略90°折り曲げる。
【0092】
なお、ここでは、リードフレーム120の第1主面120aに、すなわちリードフレーム120の折り曲げる方向と反対側に位置する主面に第2溝部152を設ける場合について説明したが、第2溝部152は、リードフレーム120の折り曲げる方の主面、すなわち第2主面120bに設けてもよい。
【0093】
また、リードフレーム130にも同様に折り曲げ用の溝部を設けてもよい。
【0094】
図19は、
図1に示すワークのリードフレームに段差部を設ける工程のさらに別の例を模式的に示す断面図である。なお、
図19は、
図1に示すワークのB-B線断面図に相当する。また、
図19では封止体110の内部構造の図示は省略している。
【0095】
図19に示すように、段差部150として、突起部153を形成してもよい。例えば、リードフレーム120の表面に線状の凸条部を形成してもよい。これによっても、熱処理工程において、突起部153によって、低融点金属であるSnの流れをせき止めることができる。
【0096】
突起部153は、例えば、Cu基材140の厚みを局所的に厚くすることによって形成してもよい。また、は、Cu基材140を一方からプレスして他方に突出させることによって、突起部153とともにその反対側に溝部を同時に形成してもよい。この場合、突起部153と溝部がともに段差部150として機能する。
【0097】
このように、段差部150として、1本以上の溝部と、1本以上の突起部とを併用してもよい。
【0098】
上記実施形態では、固体電解コンデンサ素子1の陽極60に接続されたリードフレーム120に段差部150を設け、リードフレーム120を上方に、かつ固体電解コンデンサ素子1の陰極70に接続されたリードフレーム130を下方にした状態で、ワーク100の熱処理を行う場合について説明したが、ワーク100を上下反転した状態で、すなわち固体電解コンデンサ素子1の陰極70に接続されたリードフレーム130を上方に、かつ固体電解コンデンサ素子1の陽極60に接続されたリードフレーム120を下方にした状態で、ワーク100の熱処理を行ってもよい。この場合は、リードフレーム130に段差部150を設ければよい。
【0099】
また、上記実施形態では、電解コンデンサ素子として、電解質材料として導電性高分子を用いた固体電解コンデンサである場合について説明したが、本発明における電解コンデンサ素子は、電解質材料として電解液を用いる電解コンデンサ素子であってもよいし、電解質材料として、導電性高分子等の固体電解質とともに電解液を用いる、いわゆるハイブリッド型の電解コンデンサ素子であってもよい。
【0100】
(比較形態)
図20は、本発明の比較形態に係るワークの一例を模式的に示す平面図である。
【0101】
図20に示すワーク100Aは、段差部150が設けられていないことを除いて、
図6に示したワーク100と実質的に同じものである。
【0102】
続いて、上記実施形態と同様に、ワーク100Aの熱処理(エージング処理)を行う。
【0103】
図21は、
図20に示すワークの熱処理後の一例を模式的に示す平面図である。
図22は、
図20に示すワークの熱処理後の一例を模式的に示す断面図である。
図23は、
図22に示すワークのリードフレームを折り曲げる工程の一例を模式的に示す断面図である。
【0104】
本比較形態では、段差部150が設けられていないワーク100Aをそのまま熱処理するため、熱処理中にSnが溶融し、Snが重力に従って下方に流れる。そのため、熱処理後、上方に位置するリードフレーム120では、Snが封止体110付近に多く集まる(
図21及び
図22中のSn141d参照)。その結果、
図23に示すように、リードフレーム120から形成される端子、ここでは陽極端子123の厚みが大きくなり、作製される固体電解コンデンサ160Aの陽極端子部分の厚み不良が発生するおそれがある。
【0105】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0106】
<1>
電解コンデンサ素子が封止された封止体と、前記電解コンデンサ素子の陽極及び陰極の一方と接続された第1リードフレームと、前記陽極及び前記陰極の他方と接続された第2リードフレームと、を備えるワークを準備する工程と、
前記第1リードフレームの第1主面及び第2主面の少なくとも一方に、前記第1リードフレームの幅方向に延在する少なくとも1本の段差部を設ける工程と、
前記ワークの熱処理を行う工程と、
前記熱処理後に前記第1リードフレームを切断する工程と、を含み、
前記第1リードフレームは、Cuから構成された基材を有するとともに、Cuより融点が低い低融点金属から構成された低融点金属層を表面に有し、
前記熱処理は、前記段差部が設けられた前記第1リードフレームを上方に、かつ前記第2リードフレームを下方にした状態で、前記低融点金属の融点より高く、かつCuの融点より低い温度で行い、
前記切断する工程では前記封止体と前記段差部との間で前記第1リードフレームを切断する、電解コンデンサの製造方法。
【0107】
<2>
前記段差部として第1溝部を形成する、<1>に記載の電解コンデンサの製造方法。
【0108】
<3>
前記低融点金属層にレーザを照射して溶融することにより、前記第1溝部を形成する、<2>に記載の電解コンデンサの製造方法。
【0109】
<4>
前記低融点金属層は、前記低融点金属としてのSnから構成されたSn層であり、
前記第1リードフレームは、前記基材と前記Sn層との間にNiから構成されたNi層を有し、
前記Ni層の表面が露出するように前記Sn層を線状に除去することにより、前記第1溝部を形成する、<2>又は<3>に記載の電解コンデンサの製造方法。
【0110】
<5>
前記段差部として突起部を形成する、<1>から<4>のいずれか1つに記載の電解コンデンサの製造方法。
【0111】
<6>
前記第1リードフレームの前記第1主面及び前記第2主面に、それぞれ前記段差部を設ける、<1>から<5>のいずれか1つに記載の電解コンデンサの製造方法。
【0112】
<7>
前記段差部と前記封止体との間において前記第1リードフレームの前記幅方向に第2溝部を形成し、
前記切断する工程では前記段差部と前記第2溝部との間で前記第1リードフレームを切断し、
切断された前記第1リードフレームを前記第2溝部に沿って折り曲げる工程をさらに含む、<1>から<6>のいずれか1つに記載の電解コンデンサの製造方法。
【実施例0113】
以下、本発明の電解コンデンサの製造方法をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0114】
(実施例1)
実施例1では、
図1に示した上記実施形態に係るワーク100と同様のワークを準備した。すなわち、このワークは、複数の封止体と、第1リードフレームと、第2リードフレームと、を備え、各封止体には複数の固体電解コンデンサ素子が封止され、各第1リードフレームは、対応する封止体の各固体電解コンデンサ素子の陽極に接続され、各第2リードフレームは、対応する封止体の各固体電解コンデンサ素子の陰極に接続されていた。第1リードフレーム及び第2リードフレームは、各々、Cu基材と、Cu基材の表面に形成されたNi層と、Ni層の表面に形成されたSn層と、を有していた。
【0115】
そして、第1リードフレームの各陽極端子部の一方の主面にレーザを照射して、陽極端子部の幅方向に直線状に溝部を形成した。レーザの照射条件は、出力:5.5±0.1W、スキャン速度:300mm/s、周波数:20kHzとした。この結果、
図8に示したように、Sn層を溶融除去してNi層の表面を露出させ、直線状の溝部を形成した。このとき、Ni層とCu基材とはレーザ照射による影響を受けなかった。
【0116】
続いて、第1リードフレームを上方に、かつ第2リードフレームを下方にした状態で、ピーク温度を260℃以上、270℃以下とし、150℃以上、200℃以下の時間を60秒以上、120秒以下、217℃以上の時間を60秒以上、120秒以下として、ワークの熱処理を行った。
【0117】
その後、第1リードフレーム及び第2リードフレームを切断した。より詳細には、各陽極端子部を、対応する封止体と、その陽極端子部に設けられた段差部との間で切断した。また、各陰極端子部を、対応する陽極端子部と同じ長さになるように切断した。
【0118】
そして、切断された第1リードフレーム及び第2リードフレームをそれぞれ折り曲げることによって陽極端子及び陰極端子を形成し、実施例1の固体電解コンデンサを作製した。
【0119】
(実施例2)
第1リードフレームの各陽極端子部の2つの主面にレーザをそれぞれ照射して、各主面に直線状に溝部を形成したことを除いて、実施例1と同様にして、実施例2の固体電解コンデンサを作製した。溝部は、各主面上の同じ場所に形成した。
【0120】
(比較例1)
第1リードフレームの各陽極端子部に溝部を形成しなかったことを除いて、実施例1と同様にして、比較例1の固体電解コンデンサを作製した。
【0121】
(陽極端子部の厚み測定)
実施例1、2及び比較例1に係る固体電解コンデンサについて、熱処理後の複数(具体的には32個)の陽極端子部について、封止体近傍(
図10中のP点)において、その厚みを測定した。結果を下記表1及び
図24に示す。
【0122】
図24は、実施例1、2及び比較例1の熱処理後の陽極端子部の厚みの分布を示すグラフである。
【0123】
【0124】
ここでの陽極端子部の厚みターゲットは170μm以下であったが、第1リードフレームの片面又は両面に溝部を形成した実施例1、2では、厚みターゲットを達成することができた。一方、溝部を形成しなかった比較例1では、厚みターゲットを達成できなかった。
【0125】
(不良品率の算出)
実施例1、2及び比較例1に係る固体電解コンデンサについて、陽極端子不良品の不良品率を算出した。なお、陽極端子不良品とは、陽極端子部分での固体電解コンデンサの厚み方向の寸法がターゲットを超過した寸法不良となったものである。ここでは、各実施例及び比較例について、160個の固体電解コンデンサを作製し、そのうちの陽極端子不良品の割合を算出した。
【0126】
図25は、実施例1、2及び比較例1の陽極端子不良品の不良品率を示すグラフである。
【0127】
図25に示すように、実施例1、2では、不良品率を低くでき、特に第1リードフレームの両面に溝部を形成した実施例2では、不良品率を0%とすることができた。一方、溝部を形成しなかった比較例1では、30%を超える大きな不良品率となった。
【0128】
(固体電解コンデンサの側面観察)
図26は、実施例1の固体電解コンデンサの側面写真である。
図27は、比較例1の固体電解コンデンサの側面写真である。
【0129】
図26に示すように、実施例1では、陽極端子の厚みが薄く、その結果、陽極端子部分で固体電解コンデンサの厚みが増加するのを防止することができている。対して、比較例1では、
図27に示すように、陽極端子の厚みが厚く、その結果、陽極端子部分で固体電解コンデンサの厚みが増加していることが分かる。