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  • 特開-橋梁および外ケーブルの交換方法 図1
  • 特開-橋梁および外ケーブルの交換方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064120
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】橋梁および外ケーブルの交換方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 1/00 20060101AFI20240507BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
E01D1/00 D
E01D21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172477
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】波田 匡司
(72)【発明者】
【氏名】織田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】川原 崇洋
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA08
2D059AA41
2D059BB39
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】予備孔の数が少なくて済む橋梁等を提供する。
【解決手段】PC箱桁橋では、横桁3の橋軸方向の両側に配置された外ケーブルによって橋軸方向のプレストレスが導入される。横桁3には、PC箱桁橋に橋軸方向のプレストレスを導入するための予備ケーブルの定着に用いられる予備孔11が、横桁3を橋軸方向に貫通するように設けられる。予備孔11の両端部には、予備ケーブルを定着するための定着体の受け材であるリブキャストアンカ14が設けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋桁にコンクリート部材を有する橋梁であって、
前記コンクリート部材の橋軸方向の両側に配置された外ケーブルによって前記橋桁に橋軸方向のプレストレスが導入され、
前記橋桁に橋軸方向のプレストレスを導入するための予備ケーブルの定着に用いられる予備孔が、前記コンクリート部材を橋軸方向に貫通するように設けられ、
予備ケーブルを定着するための定着体を受ける受け材が、前記予備孔の両端部に設けられたことを特徴とする橋梁。
【請求項2】
前記橋桁は箱桁であり、
前記コンクリート部材は前記箱桁の内部に設けられた横桁であることを特徴とする請求項1記載の橋梁。
【請求項3】
前記予備孔の一方の端部において、前記予備ケーブルが前記定着体により定着され、
前記予備孔の他方の端部では、前記受け材と前記予備ケーブルとの間に擦れ防止スペーサが設置されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の橋梁。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の橋梁における外ケーブルの交換方法であって、
前記コンクリート部材の橋軸方向の一方に配置した予備ケーブルの端部を前記予備孔に通し、当該端部を緊張して前記コンクリート部材の橋軸方向の他方の側面に定着する工程と、
前記コンクリート部材の橋軸方向の一方に配置された外ケーブルを新たな外ケーブルと交換する工程と、
予備ケーブルの緊張を解除し、前記予備孔から取り外す工程と、
前記コンクリート部材の橋軸方向の他方に配置した予備ケーブルの端部を、同じ前記予備孔に通し、当該端部を緊張して前記コンクリート部材の橋軸方向の一方の側面に定着する工程と、
前記コンクリート部材の橋軸方向の他方に配置された外ケーブルを新たな外ケーブルと交換する工程と、
を具備することを特徴とする外ケーブルの交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁および外ケーブルの交換方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
PC(プレストレストコンクリート)箱桁橋では橋軸方向のケーブルが緊張材として設けられ、これにより箱桁に橋軸方向のプレストレスが導入される。箱桁は主にコンクリートにより形成され、ケーブルにはPC鋼材が用いられる。PC鋼材はその位置に応じて外ケーブルと内ケーブルに区別される。外ケーブルは箱桁のコンクリート部材の外部に配置され、内ケーブルは箱桁のコンクリート部材の内部に埋設される。
【0003】
図5(a)はPC箱桁橋の橋軸方向の断面を簡単に示したものであり、図5(b)は図5(a)の範囲aを示す図である。図に示すように、外ケーブル5は箱桁100の内空で橋軸方向に設置される。橋軸方向は図5(a)(b)の左右方向に対応する。
【0004】
PC箱桁橋では箱桁100が橋軸方向の複数の橋脚2により支持されており、各橋脚2上では橋軸直角方向のコンクリート部材である横桁3が箱桁100の内部に設けられる。橋軸直角方向は橋軸方向と平面において直角を成す方向であり、図5(a)(b)の紙面法線方向に対応する。
【0005】
外ケーブル5は横桁3の間に配置されており、外ケーブル5の両端部がこれらの横桁3に定着される。図5(b)に示すように、外ケーブル5の端部は横桁3を橋軸方向に貫通し、定着具7により横桁3の側面31に定着される(例えば、特許文献1、2等)。
【0006】
図5(b)に示す横桁3には、横桁3の左右両側の外ケーブル5(5a、5b)の端部が定着されている。横桁3の右側の外ケーブル5aは定着具7aによって横桁3の左側の側面31aに定着され、上下2段に配置される。横桁3の左側の外ケーブル5bは定着具7bによって横桁3の右側の側面31bに定着され、外ケーブル5aの下方に配置される。
【0007】
図5(c)は図5(b)の線A-Aによる橋軸直角方向の断面を示したものである。図5(c)に示すように、横桁3にはマンホール9と予備孔110が設けられる。マンホール9と予備孔110は横桁3を橋軸方向に貫通するように設けられる。マンホール9は作業者が移動するための通路であり、予備孔110は将来的な外ケーブル5の交換のために設けられる。図5(c)の例ではマンホール9が横桁3の橋軸直角方向の中央部に設けられ、予備孔110がマンホール9の両隣で上下2段に設けられる。
【0008】
図6は外ケーブル5の交換について説明する図であり、箱桁100の橋軸方向の断面斜視図を示したものである。横桁3の右側の外ケーブル5aを交換する際は、まず図6(a)に示すように、横桁3の右側に予備ケーブル6を配置してその端部を横桁3の上段の予備孔110に通し、当該端部を緊張して横桁3の左側の側面31aに定着する。
【0009】
これにより箱桁100に橋軸方向のプレストレスを一時的に導入したうえで、外ケーブル5aの緊張を解除して新たな外ケーブル5aと取り換え、当該新たな外ケーブル5aの緊張によって箱桁100に橋軸方向のプレストレスを再導入する。
【0010】
予備ケーブル6によるプレストレスを導入した状態で、上記した外ケーブル5aの交換作業を外ケーブル5a一本ずつ行うことで、交換対象の全ての外ケーブル5aを新たな外ケーブル5aに交換する。
【0011】
これに対し、横桁3の左側の外ケーブル5bを交換する際は、図6(b)に示すように横桁3の左側に予備ケーブル6を配置してその端部を横桁3の下段の予備孔110に通し、当該端部を緊張して横桁3の右側の側面31bに定着する。これにより箱桁100に橋軸方向のプレストレスを一時的に導入したうえで、上記と同様に外ケーブル5bの交換作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第5405889号公報
【特許文献2】特許第5014236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図6(a)(b)に示すように、従来は、横桁3の左右の外ケーブル5(5a、5b)を交換する際に異なる予備孔110を用いている。そして、各予備孔110は、横桁3の左右の外ケーブル5(5a、5b)のどちらかの交換時のみの使用を意図した造りになっている。
【0014】
すなわち、予備孔110の端部では、予備ケーブル6を定着するための定着体を受けるリブキャストアンカなどの受け材が設けられるが、受け材は、予備孔110を横桁3の左右どちらの外ケーブル5(5a、5b)の交換時に用いるか(すなわち予備ケーブル6が横桁3の左右どちらに配置されるか)に応じて、予備孔110の片方の端部のみに設けられている。
【0015】
例えば横桁3の右側の外ケーブル5aを交換する際に用いる予備孔110の場合、予備ケーブル6が横桁3の右側に配置されるので、受け材は予備孔110の左側の端部のみに設けられる。一方、横桁3の左側の外ケーブル5bを交換する際に用いる予備孔110の場合、予備ケーブル6が横桁3の左側に配置されるので、受け材は予備孔11の右側の端部のみに設けられる。
【0016】
そのため、各予備孔110は横桁3の左右の外ケーブル5(5a、5b)のどちらかの交換時しか使用できず、両方の外ケーブル5(5a、5b)の交換が将来的に想定される環境下では、横桁3に設ける予備孔110の数が必然的に多くなる。結果、多くの外ケーブル5が配置される場合や、横桁3に大きなマンホール9が設置される場合、箱桁100の桁高が低い場合などでは、外ケーブル5、マンホール9、予備孔110を設置するためのスペースの確保が困難となり、設計の自由度が低くなる。
【0017】
本発明は前述した問題点に鑑みてなされたものであり、予備孔の数が少なくて済む橋梁等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述した目的を達成するための第1の発明は、橋桁にコンクリート部材を有する橋梁であって、前記コンクリート部材の橋軸方向の両側に配置された外ケーブルによって前記橋桁に橋軸方向のプレストレスが導入され、前記橋桁に橋軸方向のプレストレスを導入するための予備ケーブルの定着に用いられる予備孔が、前記コンクリート部材を橋軸方向に貫通するように設けられ、予備ケーブルを定着するための定着体を受ける受け材が、前記予備孔の両端部に設けられたことを特徴とする橋梁である。
【0019】
第1の発明では、予備孔の両端部に定着体の受け材が設けられるので、外ケーブルの交換時等で予備ケーブルをコンクリート部材のどちらに配置する場合であっても、同一の予備孔を用いて当該予備ケーブルをコンクリート部材に定着することができる。そのため、予備孔の設置数を従来よりも減らすことができる。
【0020】
前記橋桁は例えば箱桁であり、前記コンクリート部材は例えば前記箱桁の内部に設けられた横桁である。
これにより、箱桁橋の横桁において予備孔の数を減らすことができ、横桁の設計の自由度が高くなる。
【0021】
前記予備孔の一方の端部において、前記予備ケーブルが前記定着体により定着され、前記予備孔の他方の端部では、前記受け材と前記予備ケーブルとの間に擦れ防止スペーサが設置されることが望ましい。
上記の擦れ防止スペーサにより、予備ケーブルの定着時の予備ケーブルの損傷を防ぐことができる。
【0022】
第2の発明は、第1の発明の橋梁における外ケーブルの交換方法であって、前記コンクリート部材の橋軸方向の一方に配置した予備ケーブルの端部を前記予備孔に通し、当該端部を緊張して前記コンクリート部材の橋軸方向の他方の側面に定着する工程と、前記コンクリート部材の橋軸方向の一方に配置された外ケーブルを新たな外ケーブルと交換する工程と、予備ケーブルの緊張を解除し、前記予備孔から取り外す工程と、前記コンクリート部材の橋軸方向の他方に配置した予備ケーブルの端部を、同じ前記予備孔に通し、当該端部を緊張して前記コンクリート部材の橋軸方向の一方の側面に定着する工程と、前記コンクリート部材の橋軸方向の他方に配置された外ケーブルを新たな外ケーブルと交換する工程と、を具備することを特徴とする外ケーブルの交換方法である。
第2の発明は、第1の発明の橋梁における外ケーブルの交換方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、予備孔の数が少なくて済む橋梁等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】PC箱桁橋の箱桁1を示す図。
図2】予備孔11を示す図。
図3】外ケーブル5の交換について説明する図。
図4】予備ケーブル6の定着について説明する図。
図5】PC箱桁橋の箱桁100を示す図。
図6】外ケーブル5の交換について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明は図5等で説明した従来の構造と異なる点について行い、同様の点については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。
【0026】
(1.PC箱桁橋)
図1は本発明の橋梁の実施形態に係るPC箱桁橋を示す図であり、図1(a)(b)はそれぞれPC箱桁橋の箱桁1(橋桁)の橋軸方向の断面と橋軸直角方向の断面を前記の図5(b)(c)と同様に示す図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態のPC箱桁橋の箱桁1は、図5等で説明した箱桁100と同様、コンクリート部材である横桁3を有しているが、その予備孔11の数が前記の箱桁100よりも少なくなっている。これは、横桁3の右側に配置された外ケーブル5aを交換する際と、横桁3の左側に配置された外ケーブル5bを交換する際の双方で同じ予備孔11を利用できるためである。以下、その予備孔11の詳細について説明する。
【0028】
(2.予備孔11)
図2は予備孔11の橋軸方向の部分断面図である。図2に示すように、予備孔11は、横桁3のコンクリートに埋設されたリセスチューブ12、外トランペット13、リブキャストアンカ14等から構成される。
【0029】
リセスチューブ12は予備孔11の橋軸方向の中央部に配置される筒状部材である。リセスチューブ12は例えば金属により形成されるが、これに限ることはない。リセスチューブ12の橋軸方向の両端のそれぞれには、外トランペット13の橋軸方向の一端が被せられて嵌合される。外トランペット13とリセスチューブ12との境界部には止水用テープ17が巻き付けられる。
【0030】
外トランペット13の橋軸方向の他端には雄ねじが設けられ、当該他端にリブキャストアンカ14の橋軸方向の一端に設けた雌ねじが螺合される。リブキャストアンカ14の橋軸方向の他端は横桁3の側面31と同一面となるよう配置される。
【0031】
外トランペット13とリブキャストアンカ14は、横桁3の側面31に近付くにつれて徐々に拡径する筒状部材である。リブキャストアンカ14は、予備ケーブル6の端部の定着時に定着体からの圧力を支える受け材としての機能を有する。定着体については後述する。外トランペット13は例えば樹脂により形成され、リブキャストアンカ14は金属により形成されるが、これに限ることはない。
【0032】
なお図中符号16はスパイラル筋であり、外トランペット13およびリブキャストアンカ14の周囲のコンクリートに補強のため埋設される。また予備孔11を使用していない時、予備孔11の両端部は蓋(不図示)によって塞がれている。
【0033】
(3.外ケーブル5の交換方法)
本実施形態では、図1(a)に示す横桁3の右側(橋軸方向の一方)の外ケーブル5aの交換時、まず図3(a)に示すように横桁3の右側に予備ケーブル6を配置してその端部を横桁3の予備孔11に通し、当該端部を緊張して横桁3の左側(橋軸方向の他方)の側面31aに定着する。
【0034】
予備ケーブル6の端部を側面31aに定着する際は、前記した蓋を取り外した後、図4(a)に示すように予備孔11に内トランペット18を設置する。
【0035】
内トランペット18は、長尺の筒状部材である本体181の端面に外側へと突出するフランジ182を設けたものである。内トランペット18は例えば樹脂により形成されるが、これに限ることはない。内トランペット18の本体181は予備孔11の左側の端部(一方の端部)のリブキャストアンカ14aから挿入され、内トランペット18のフランジ182がリブキャストアンカ14aの前記した他端上に位置する。
【0036】
内トランペット18の本体181は、擦れ防止スペーサ19の内側を通って予備孔11から右側に突出する。擦れ防止スペーサ19は、予備孔11の右側の端部(他方の端部)のリブキャストアンカ14bの内部に設置されたものであり、筒状の本体191の端面に外側へと突出するフランジ192を設けた構成を有する。本体191の橋軸方向の長さはリブキャストアンカ14bよりも短い。擦れ防止スペーサ19は例えば樹脂により形成されるが、これに限ることはない。
【0037】
擦れ防止スペーサ19は、本体191をリブキャストアンカ14bの内部に挿入して設置され、フランジ192がリブキャストアンカ14bの前記した他端上に位置する。円環状の押さえ金具20をフランジ192に重ねて配置し、押さえ金具20をリブキャストアンカ14bの上記他端にボルト締めすることで、擦れ防止スペーサ19がリブキャストアンカ14bに固定される。
【0038】
内トランペット18と擦れ防止スペーサ19を上記のように設置したら、図4(b)に示すように、予備ケーブル6の端部を横桁3の右側から内トランペット18内に挿入する。そして、当該端部を緊張し、アンカーディスク22を用いて横桁3の左側の側面31a(予備孔11の左側の端部)に定着する。この時、アンカーディスク22からの圧力がリブキャストアンカ14aによって支えられる。擦れ防止スペーサ19は、内トランペット18が破けた場合に予備ケーブル6とリブキャストアンカ14bが擦れることによる予備ケーブル6の損傷を防止する。
【0039】
上記のアンカーディスク22は予備ケーブル6の端部を横桁3の側面31aに定着するための定着体であり、リブキャストアンカ14aの前記した他端上に、内トランペット18のフランジ182やパッキン(不図示)を挟んで配置され、ボルトによりリブキャストアンカ14aに固定される。
【0040】
予備ケーブル6は例えば複数のPC鋼材を束ねて構成され、予備孔11の断面における各PC鋼材の端部の位置が、内トランペット18内のスペーサ21によって位置決めされる。各PC鋼材の端部は、対応する位置にあるアンカーディスク22の貫通孔にそれぞれ挿入され、本実施形態ではこれらのPC鋼材の端部を図示しないジャッキ等を用いて緊張し、ウェッジ23によりアンカーディスク22に固定する。なお、内トランペット18の内部には、予備ケーブル6の定着後グラウト材が充填される。
【0041】
こうして予備ケーブル6を緊張し、箱桁1に橋軸方向のプレストレスを一時的に導入したうえで、外ケーブル5aの緊張を解除して新たな外ケーブル5aと取り換える。そして、当該外ケーブル5aの緊張によって箱桁1に橋軸方向のプレストレスを再導入する。この作業を外ケーブル5a一本ずつ行うことで、交換対象の全ての外ケーブル5aを新たな外ケーブル5aに交換する。その後、予備ケーブル6の緊張を解除して予備孔11から取り外し、図2に示す状態に戻す。
【0042】
この後、図1(a)の横桁3の左側の外ケーブル5bを交換する際は、まず図3(b)に示すように横桁3の左側に配置した予備ケーブル6の端部を横桁3の予備孔11に通し、当該端部を緊張して横桁3の右側の側面31bに定着する。その方法は図4等で説明したものと同様である。
【0043】
これにより箱桁1に橋軸方向のプレストレスを一時的に導入したうえで、上記と同様に外ケーブル5bの交換作業を行う。交換対象の全ての外ケーブル5bを新たな外ケーブル5aに交換した後、予備ケーブル6の緊張を解除して予備孔11から取り外す。
【0044】
図3(a)、(b)からわかるように、本実施形態では、従来の方法とは異なり、横桁3の右側に配置された外ケーブル5aを交換する際と、横桁3の左側に配置された外ケーブル5bを交換する際とで同じ予備孔11を用いている。そのため、横桁3に設ける予備孔11の数を従来よりも減らすことができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、予備ケーブル6を定着するためのアンカーディスク22を受ける受け材として、横桁3の予備孔11の両端部にリブキャストアンカ14が設けられる。そのため、横桁3の左右の外ケーブル5(5a、5b)のどちらを交換する場合であっても、すなわち予備ケーブル6が横桁3の左右どちらに配置される場合であっても、予備ケーブル6を同一の予備孔11を用いて横桁3に定着できる。そのため、従来のように横桁3の左右の外ケーブル5(5a、5b)を交換する際に別々の予備孔11を用いる場合に比べ、必要な予備孔11の数を減らすことができ、外ケーブル5やマンホール9、予備孔11のスペース確保が容易になり、横桁3の設計の自由度が高まる。
【0046】
また本実施形態では、予備孔11の一方の端部において予備ケーブル6の端部を定着する際に、予備孔11の他方の端部では予備ケーブル6とリブキャストアンカ14の間に擦れ防止スペーサ19が配置され、これにより予備ケーブル6とリブキャストアンカ14の擦れによる予備ケーブル6の損傷が防止される。
【0047】
しかしながら、本発明は以上の実施形態に限らない。例えば外ケーブル5の配置は図1等で示したものに限らない。また、予備ケーブル6は複数のPC鋼材を束ねたもので無くてもよく、緊張により箱桁1にプレストレスが導入できるものであれば特に限定されない。定着体としてのアンカーディスク22の構成、受け材としてのリブキャストアンカ14の構成も前記に限らない。さらに、箱桁1はコンクリートとその他の材料による複合形式により構成される場合もある。
【0048】
また本実施形態では、予備孔11がPC箱桁橋の横桁3に設けられる場合について説明した。これによりPC箱桁橋の横桁3において予備孔11の数を減らすことができ、横桁3の設計の自由度が高くなるが、予備孔11の位置はこれに限らず、箱桁1が有するコンクリート部材に設けられれば良い。例えば外ケーブル5の定着用に箱桁1の内部あるいは外部で横桁3とは別に設けた部材であってもよい。また本発明の適用対象もPC箱桁橋に限ることはなく、各種の橋梁の橋桁に適用することが可能である。
【0049】
さらに、本実施形態では予備ケーブル6によるプレストレスを外ケーブル5の交換時に一時的に導入しているが、予備ケーブル6によるプレストレスは、箱桁1の追加補強を目的として外ケーブル5の交換とは関係なく導入される場合もあり、この場合にも前記の予備孔11を予備ケーブル6の定着に利用することが可能である。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0051】
1、100:箱桁
2:橋脚
3:横桁
5、5a、5b:外ケーブル
6:予備ケーブル
7、7a、7b:定着具
9:マンホール
11、110:予備孔
12:リセスチューブ
13:外トランペット
14、14a、14b:リブキャストアンカ
17:止水用テープ
18:内トランペット
19:擦れ防止スペーサ
20:押さえ金具
21:スペーサ
22:アンカーディスク
23:ウェッジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6