(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064142
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】スロットル装置及び吸気システム
(51)【国際特許分類】
F02D 9/02 20060101AFI20240507BHJP
F02B 31/04 20060101ALI20240507BHJP
F02B 31/06 20060101ALI20240507BHJP
F02D 37/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
F02D9/02 T
F02B31/04 500A
F02B31/06 540A
F02D37/00 301U
F02B31/06 500B
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172509
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】田中 直記
(72)【発明者】
【氏名】岩間 和茂
【テーマコード(参考)】
3G065
【Fターム(参考)】
3G065CA23
3G065HA05
3G065HA06
(57)【要約】
【課題】部品点数の削減、構造の簡素化、低コスト化、通路抵抗の低減等を図り、燃焼室で旋回流を生じさせ得るスロットル装置及び吸気システムを提供する。
【解決手段】主吸気通路の一部をなす主通路12及び主通路から分岐して副吸気通路の一部をなす副通路17を画定するスロットルボディ10と、主通路を開閉するべく所定の軸線S回りに回動するバタフライ弁30を備え、バタフライ弁は、開弁時に上流側に移動する第1半体部31a及び下流側に移動する第2半体部31bを有し主通路を開閉する開閉板31と、閉弁状態において第1半体部から下流側に突出する突出部32を含み、副通路の分岐口17aは、閉弁状態にある開閉板よりも下流側に位置し、バタフライ弁が開弁する際に第2半体部に臨む位置でバタフライ弁が所定開度に至るまで開閉板よりも上流側の主通路と連通する開口面積がバタフライ弁の開度に応じて増加する位置に形成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気を燃焼室に導くと共に前記燃焼室に臨む位置において吸気弁により開閉される主吸気通路、前記主吸気通路の途中から分岐して前記吸気弁よりも上流側の前記主吸気通路に合流する副吸気通路を含む内燃エンジンの吸気システムに適用されるスロットル装置であって、前記主吸気通路の一部をなす主通路及び前記主通路から分岐して前記副吸気通路の一部をなす副通路を画定するスロットルボディと、前記主通路を開閉するべく所定の軸線回りに回動するバタフライ弁と、を備え、
前記バタフライ弁は、開弁時に上流側に移動する第1半体部及び下流側に移動する第2半体部を有し前記主通路を開閉する開閉板と、閉弁状態において前記第1半体部から下流側に突出する突出部を含み、
前記副通路の分岐口は、閉弁状態にある前記開閉板よりも下流側に位置し、前記バタフライ弁が開弁する際に前記第2半体部に臨む位置で、前記バタフライ弁が所定開度に至るまで前記開閉板よりも上流側の前記主通路と連通する開口面積が前記バタフライ弁の開度に応じて増加する位置に形成されている、
ことを特徴とするスロットル装置。
【請求項2】
前記突出部は、前記開閉板と所定隙間をおいて固定された平板状の背面板である、
ことを特徴とする請求項1に記載のスロットル装置。
【請求項3】
前記バタフライ弁は、全開状態にあるとき、前記開閉板と前記背面板の間を吸気が通過し得るように形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のスロットル装置。
【請求項4】
前記背面板は、前記開閉板の第1半体部に対応する外輪郭をなす、
ことを特徴とする請求項2に記載のスロットル装置。
【請求項5】
前記副通路の分岐口は、前記主通路において、前記軸線よりも下流側に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載のスロットル装置。
【請求項6】
前記主通路は、円形断面をなし、
前記副通路は、円形断面をなし、
前記副通路の分岐口は、円形又は楕円形をなす、
ことを特徴とする請求項1に記載のスロットル装置。
【請求項7】
前記副通路の分岐口は、その中心が前記主通路の中心線及び前記軸線に垂直な前記開閉板の中心線を含む平面上に位置するように配置されている、
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか一つに記載のスロットル装置。
【請求項8】
前記副通路は、前記分岐口から所定の長さに亘って、前記主通路の中心線に対して所定の傾斜角度で下流側に伸長するように形成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか一つに記載のスロットル装置。
【請求項9】
前記スロットルボディは、前記副吸気通路を画定する通路部材を連結するコネクタ部を有する、
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか一つに記載のスロットル装置。
【請求項10】
前記スロットルボディは、前記バタフライ弁を迂回するバイパス通路を含み、
前記副通路の分岐口は、前記バイパス通路の合流口から外れた位置に配置されている、
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか一つに記載のスロットル装置。
【請求項11】
前記スロットルボディは、前記バタフライ弁よりも下流側において前記主通路内の圧力を検出する検出口を含み、
前記副通路の分岐口は、前記検出口から外れた位置に配置されている、
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか一つに記載のスロットル装置。
【請求項12】
吸気を燃焼室に導くと共に前記燃焼室に臨む位置において吸気弁により開閉される主吸気通路と、
前記主吸気通路を開閉するべく所定の軸線回りに回動するバタフライ弁と、
前記主吸気通路の途中から分岐して前記吸気弁よりも上流側の前記主吸気通路に合流する副吸気通路と、
前記主吸気通路の途中に又は前記燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射弁と、を備え、
前記バタフライ弁は、開弁時に上流側に移動する第1半体部及び下流側に移動する第2半体部を有し前記主通路を開閉する開閉板と、閉弁状態において前記第1半体部から下流側に突出する突出部を含み、
前記副吸気通路の分岐口は、閉弁状態にある前記開閉板よりも下流側に位置し、前記バタフライ弁が開弁する際に前記第2半体部に臨む位置で、前記バタフライ弁が所定開度に至るまで前記開閉板よりも上流側の前記主吸気通路と連通する開口面積が前記バタフライ弁の開度に応じて増加する位置に形成されている、
ことを特徴とする吸気システム。
【請求項13】
前記突出部は、前記開閉板と所定隙間をおいて固定された平板状の背面板である、
ことを特徴とする請求項12に記載の吸気システム。
【請求項14】
前記バタフライ弁は、全開状態にあるとき、前記開閉板と前記背面板の間を吸気が通過し得るように形成されている、
ことを特徴とする請求項13に記載の吸気システム。
【請求項15】
前記背面板は、前記開閉板の第1半体部に対応する外輪郭をなす、
ことを特徴とする請求項13に記載の吸気システム。
【請求項16】
前記副吸気通路の分岐口は、前記主吸気通路において、前記軸線よりも下流側に位置する、
ことを特徴とする請求項12に記載の吸気システム。
【請求項17】
前記主吸気通路は、円形断面をなし、
前記副吸気通路は、円形断面をなし、
前記副吸気通路の分岐口は、円形又は楕円形をなす、
ことを特徴とする請求項12に記載の吸気システム。
【請求項18】
前記副吸気通路の分岐口は、その中心が前記主吸気通路の中心線及び前記軸線に垂直な前記開閉板の中心線を含む平面上に位置するように配置されている、
ことを特徴とする請求項12ないし17いずれか一つに記載の吸気システム。
【請求項19】
前記副吸気通路は、前記分岐口から所定の長さに亘って、前記主吸気通路の中心線に対して所定の傾斜角度で下流側に伸長するように形成されている、
ことを特徴とする請求項12ないし17いずれか一つに記載の吸気システム。
【請求項20】
前記副吸気通路の合流口は、前記吸気弁よりも上流側において、前記燃焼室内にスワール流を生じさせる向きに方向付けられている、
ことを特徴とする請求項12ないし17いずれか一つに記載の吸気システム。
【請求項21】
前記副吸気通路の合流口は、前記吸気弁よりも上流側において、前記燃焼室内にタンブル流を生じさせる向きに方向付けられている、
ことを特徴とする請求項12ないし17いずれか一つに記載の吸気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、例えば自動二輪車等に搭載される内燃エンジンのスロットル装置及び吸気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃エンジンにおける吸気システムとしては、外部から導入された空気(吸気)を内燃エンジンの燃焼室に導く吸気通路と、吸気通路の一部をなす吸気ポートを開閉する吸気バルブと、吸気ポートの近傍に配置されて燃料を噴射するインジェクタと、吸気通路の途中に配置されて吸気通路を開閉する第1スロットルバルブと、第1スロットルバルブよりも下流側に配置されて吸気通路を開閉する第2スロットルバルブと、第1スロットルバルブと第2スロットルバルブの間において吸気通路から分岐しインジェクタの下流側に合流する副通路を備えたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この吸気システムでは、部分負荷時において、下流側の第2スロットルバルブを閉弁した状態で上流側の第1スロットルバルブのみを開弁して、外部から導入された空気を、副通路に流してインジェクタの下流側の通路に導き、噴射された燃料と混合させることで、燃料の微粒化を促進するものである。
【0004】
しかしながら、上記吸気システムでは、二つのスロットルバルブ(第1スロットルバルブ、第2スロットルバルブ)を、吸気通路を画定するボディに回動自在に設けると共にそれぞれに開閉動作を行わせる構造であるため、二つのスロットルバルブが必要であり、又、各々のスロットルバルブを開閉駆動するための機構等が必要であり、部品点数の増加、高コスト化、構造の複雑化を招く。また、全開時においては、通路内に二つのスロットルバルブを配置するため、一つのスロットルバルブの場合に比べて通路抵抗が増加する。
【0005】
他の吸気システムとしては、外部から導入された吸気を内燃エンジンの燃焼室に導く吸気通路を画定するインレットパイプと、燃焼室に臨む位置において吸気通路を開閉する吸気弁と、吸気通路の途中に燃料を噴射するべくインレットパイプに設けられたインジェクタと、吸気通路を開閉するべくインレットパイプに設けられたスロットル弁と、スロットル弁よりも下流側において吸気通路を上側吸気通路と下側吸気通路に仕切る仕切板と、スロットル弁よりも下流側でかつ仕切板の上流端縁に隣接する位置においてインレットパイプに設けられた吸気振分け弁を備え、吸気振分け弁を適宜回転させて、上流側吸気通路と下流側吸気通路を流れる空気の割合を変更するようにした吸気装置が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
しかしながら、上記吸気装置では、吸気振分け弁が必要であり、又、スロットル弁と吸気振分け弁をそれぞれ駆動するための機構が必要でなり、高コスト化、構造の複雑化を招く。また、スロットル弁の全開時においては、吸気振分け弁と吸気振分け弁を支持するシャフトが吸気流れの邪魔になり、通路抵抗が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-327665号公報
【特許文献2】特許第5925878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、部品点数の削減、構造の簡素化、低コスト化、通路抵抗の低減等を図り、副吸気通路を流れる吸気の流量を増加させることができ、燃焼室でスワール流やタンブル流等の旋回流を生じさせ得る、スロットル装置及び吸気システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスロットル装置は、吸気を燃焼室に導くと共に燃焼室に臨む位置において吸気弁により開閉される主吸気通路、主吸気通路の途中から分岐して吸気弁よりも上流側の主吸気通路に合流する副吸気通路を含む内燃エンジンの吸気システムに適用されるスロットル装置であって、主吸気通路の一部をなす主通路及び主通路から分岐して副吸気通路の一部をなす副通路を画定するスロットルボディと、主通路を開閉するべく所定の軸線回りに回動するバタフライ弁とを備え、バタフライ弁は、開弁時に上流側に移動する第1半体部及び下流側に移動する第2半体部を有し主通路を開閉する開閉板と、閉弁状態において第1半体部から下流側に突出する突出部を含み、副通路の分岐口は、閉弁状態にある開閉板よりも下流側に位置し、バタフライ弁が開弁する際に第2半体部に臨む位置で、バタフライ弁が所定開度に至るまで開閉板よりも上流側の主通路と連通する開口面積がバタフライ弁の開度に応じて増加する位置に形成されている、構成となっている。
【0010】
上記スロットル装置において、突出部は、開閉板と所定隙間をおいて固定された平板状の背面板である、構成を採用してもよい。
【0011】
上記スロットル装置において、バタフライ弁は、全開状態にあるとき、開閉板と背面板の間を吸気が通過し得るように形成されている、構成を採用してもよい。
【0012】
上記スロットル装置において、背面板は、開閉板の第1半体部に対応する外輪郭をなす、構成を採用してもよい。
【0013】
上記スロットル装置において、副通路の分岐口は、主通路において、上記軸線よりも下流側に位置する、構成を採用してもよい。
【0014】
上記スロットル装置において、主通路は円形断面をなし、副通路は円形断面をなし、副通路の分岐口は円形又は楕円形をなす、構成を採用してもよい。
【0015】
上記スロットル装置において、副通路の分岐口は、その中心が主通路の中心線及び上記軸線に垂直な開閉板の中心線を含む平面上に位置するように配置されている、構成を採用してもよい。
【0016】
上記スロットル装置において、副通路は、分岐口から所定の長さに亘って、主通路の中心線に対して所定の傾斜角度で下流側に伸長するように形成されている、構成を採用してもよい。
【0017】
上記スロットル装置において、スロットルボディは、副吸気通路を画定する通路部材を連結するコネクタ部を有する、構成を採用してもよい。
【0018】
上記スロットル装置において、スロットルボディは、バタフライ弁を迂回するバイパス通路を含み、副通路の分岐口は、バイパス通路の合流口から外れた位置に配置されている、構成を採用してもよい。
【0019】
上記スロットル装置において、スロットルボディは、バタフライ弁よりも下流側において主通路内の圧力を検出する検出口を含み、副通路の分岐口は、検出口から外れた位置に配置されている、構成を採用してもよい。
【0020】
本発明の吸気システムは、吸気を燃焼室に導くと共に燃焼室に臨む位置において吸気弁により開閉される主吸気通路と、主吸気通路を開閉するべく所定の軸線回りに回動するバタフライ弁と、主吸気通路の途中から分岐して吸気弁よりも上流側の主吸気通路に合流する副吸気通路と、主吸気通路の途中に又は燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射弁とを備え、バタフライ弁は、開弁時に上流側に移動する第1半体部及び下流側に移動する第2半体部を有し主通路を開閉する開閉板と、閉弁状態において第1半体部から下流側に突出する突出部を含み、副吸気通路の分岐口は、閉弁状態にある開閉板よりも下流側に位置し、バタフライ弁が開弁する際に第2半体部に臨む位置で、バタフライ弁が所定開度に至るまで開閉板よりも上流側の主吸気通路と連通する開口面積がバタフライ弁の開度に応じて増加する位置に形成されている、構成となっている。
【0021】
上記吸気システムにおいて、突出部は、開閉板と所定隙間をおいて固定された平板状の背面板である、構成を採用してもよい。
【0022】
上記吸気システムにおいて、バタフライ弁は、全開状態にあるとき、開閉板と背面板の間を吸気が通過し得るように形成されている、構成を採用してもよい。
【0023】
上記吸気システムにおいて、背面板は、開閉板の第1半体部に対応する外輪郭をなす、構成を採用してもよい。
【0024】
上記吸気システムにおいて、副吸気通路の分岐口は、主吸気通路において、上記軸線よりも下流側に位置する、構成を採用してもよい。
【0025】
上記吸気システムにおいて、主吸気通路は円形断面をなし、副吸気通路は円形断面をなし、副吸気通路の分岐口は円形又は楕円形をなす、構成を採用してもよい。
【0026】
上記吸気システムにおいて、副吸気通路の分岐口は、その中心が主吸気通路の中心線及び上記軸線に垂直な開閉板の中心線を含む平面上に位置するように配置されている、構成を採用してもよい。
【0027】
上記吸気システムにおいて、副吸気通路は、分岐口から所定の長さに亘って、主吸気通路の中心線に対して所定の傾斜角度で下流側に伸長するように形成されている、構成を採用してもよい。
【0028】
上記吸気システムにおいて、副吸気通路の合流口は、吸気弁よりも上流側において、燃焼室内にスワール流を生じさせる向きに方向付けられている、構成を採用してもよい。
【0029】
上記吸気システムにおいて、副吸気通路の合流口は、吸気弁よりも上流側において、燃焼室内にタンブル流を生じさせる向きに方向付けられている、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0030】
上記構成をなすスロットル装置及び吸気システムによれば、部品点数の削減、構造の簡素化、低コスト化、通路抵抗の低減等を達成しつつ、副吸気通路を流れる吸気の流量を増加させることができ、燃焼室でスワール流やタンブル流等の旋回流を生じさせ得ることができ、よって燃焼効率の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスロットル装置を備えた内燃エンジンの吸気システムを模式的に示す断面図である。
【
図2】一実施形態に係るスロットル装置を含む吸気システムの部分斜視図である。
【
図3】一実施形態に係るスロットル装置を上流側斜め方向から視た斜視図である。
【
図4】一実施形態に係るスロットル装置を下流側斜め方向から視た斜視図である。
【
図5】一実施形態に係るスロットル装置において、主吸気通路の一部をなす主通路の中心線及び回転軸の軸線に垂直なバタフライ弁の中心線を含む平面で切断した断面図である。
【
図6】一実施形態に係るスロットル装置において、主吸気通路の一部をなす主通路の中心線及び回転軸の軸線に垂直なバタフライ弁の中心線を含む平面で切断した斜視断面図である。
【
図7】一実施形態に係るスロットル装置において、主吸気通路の一部をなす主通路の中心線及び回転軸の軸線を含む平面で切断した斜視断面図である。
【
図8】一実施形態に係るスロットル装置に含まれる回転軸及びバタフライ弁を軸線に垂直な面で切断した斜視断面図である。
【
図9】一実施形態に係るスロットル装置に含まれるバタフライ弁の斜視図である。
【
図10】一実施形態に係るスロットル装置において、主通路、副通路、及びバタフライ弁の位置関係と、バタフライ弁の動作を模式的に示す断面図である。
【
図11】一実施形態に係るスロットル装置において、バタフライ弁が開弁した所定の角度位置にあるときの吸気の流れを模式的に示す断面図である。
【
図12】一実施形態に係るスロットル装置において、バタフライ弁が全開位置にあるときの吸気の流れを模式的に示す断面図である。
【
図13】一実施形態に係るスロットル装置において、主通路の内径、副通路の内径、回転軸の軸線からの副通路の位置、及び副通路の傾斜角度の関係を示す断面図である。
【
図14】一実施形態に係るスロットル装置において、バタフライ弁が全閉位置から僅かに(10度程度)開弁したときの主吸気通路(主通路)及び副吸気通路(副通路)の吸気流れをシミュレーションした結果を示すものであり、回転軸の軸線に垂直な面でかつ主吸気通路(主通路)及び副吸気通路(副通路)の中心線を含む面で切断した断面における吸気流れ線図である。
【
図15】一実施形態に係るスロットル装置において、主吸気通路及び副吸気通路から燃焼室に流れ込む吸気の流れをシミュレーションした結果を示すものであり、ピストンの上面に垂直な方向から視た吸気流れ線図である。
【
図16】本発明のスロットル装置を含む吸気システムにおいて、バタフライ弁の開度と、主吸気通路及び副吸気通路を流れる全体通路の流量及び副吸気通路の流量の関係を示すグラフである。
【
図17】本発明の他の実施形態に係るスロットル装置において、主吸気通路の一部をなす主通路の中心線及び回転軸の軸線に垂直なバタフライ弁の中心線を含む平面で切断した断面図である。
【
図18】本発明の他の実施形態に係る内燃エンジンの吸気システムを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
本発明のスロットル装置は、一例として自動二輪車に搭載される内燃エンジンの吸気システムにおいて、エアクリーナより下流側で吸気管の途中に組み付けられるものである。
【0033】
一実施形態に係るスロットル装置Mは、
図1に示すように、内燃エンジンEの燃焼室Cに吸気を導く吸気システムに適用されるものである。
内燃エンジンEは、シリンダブロック1、ピストン2、シリンダヘッド3、吸気弁4a、排気弁4b、排気管5、吸気システムIS等を備えている。
そして、シリンダヘッド3は、ピストン2の上面と協働して燃焼室Cを画定すると共に、主吸気通路の一部をなす吸気ポート3a、副吸気通路の一部をなす副ポート3b、排気ポート3cを有し、又、吸気弁4a及び排気弁4bを開閉駆動する駆動機構(不図示)、点火プラグ(不図示)等を収容している。
【0034】
副ポート3bは、吸気弁4aの直近上流側において吸気ポート3aに合流するように形成されている。すなわち、副吸気通路(副ポート3b)は、吸気弁4aよりも上流側の主吸気通路(吸気ポート3a)に合流する合流口3b
1を備えている。
副ポート3bの合流口3b
1は、燃焼室C内にスワール流(横渦)を生じさせる向きに方向付けられている。具体的には、副ポート3bの合流口3b
1は、
図15に示すように、吸気ポート3aに対して斜め方向から合流して、燃焼室Cの内壁面の接線方向に吸気が流れ込むように形成されている。
【0035】
吸気システムISは、シリンダヘッド3の吸気ポート3a及び副ポート3b、外気を吸い込むエアクリーナ6、通路部材としての吸気管7、通路部材としての副吸気管8、吸気管7の途中に配置された燃料噴射弁9、燃料噴射弁9よりも上流側において吸気管7の途中に配置されたスロットル装置Mを備えている。
【0036】
吸気管7は、金属又は樹脂材料等により形成され、エアクリーナ6により吸い込まれた吸気を通すべく円形断面をなす主吸気通路7aを画定するものであり、エアクリーナ6とシリンダヘッド3の吸気ポート3aの間に介在するように配置される。
副吸気管8は、金属、樹脂、又はゴム材料等により形成され、吸気を通すべく円形断面をなす副吸気通路8aを画定するものであり、スロットル装置Mとシリンダヘッド3の副ポート3bの間に介在するように配置される。
燃料噴射弁9は、吸気管7に配置されており、吸気ポート3a側寄りにおいて主吸気通路7a内に燃料を噴射するものである。
【0037】
スロットル装置Mは、
図2ないし
図7に示すように、スロットルボディ10、軸線Sを中心とする回転軸20、バタフライ弁30、バタフライ弁30を開閉駆動する駆動ユニット40、調整弁50、センサユニットUを備えている。ここで、センサユニットUは、角度位置センサ60、圧力センサ70、温度センサ80を備えている。
【0038】
スロットルボディ10は、アルミニウム等の金属材料又は樹脂材料により形成され、上流側接続部11a、下流側接続部11b、主通路12、回転軸20を通す軸孔13、バイパス通路14、調整弁50を収容する収容部15、検出口16、副通路17、コネクタ部18を備えている。
【0039】
上流側接続部11aは、エアクリーナ6に接続された上流側の吸気管7と連結される。
下流側接続部11bは、内燃エンジンEのシリンダヘッド3の吸気ポート3aに接続された下流側の吸気管7と接続される。
【0040】
主通路12は、吸気を燃焼室Cに導く主吸気通路の一部として機能するものであり、軸線Sに垂直な中心線Lを中心とする円形断面をなすと共に中心線L方向に伸長する円筒状に形成されている。また、主通路12は、
図5に示すように、バタフライ弁30が回動自在に配置される所定領域から上流側接続部11aと下流側接続部11bに向けてそれぞれ通路面積が拡大する円錐面状に形成されている。
軸孔13は、
図7に示すように、回転軸20が軸線S回りに回転自在に通されるように円形孔に形成され、軸線S方向の外側には、リップ型シールRsを嵌め込む環状凹部13aが形成されている。
【0041】
バイパス通路14は、
図5ないし
図7に示すように、バタフライ弁30よりも上流側の主通路12から分岐する上流側通路14a、バタフライ弁30よりも下流側の主通路12に合流する下流側通路14b、上流側通路14aと下流側通路14bの間に介在すると共に調整弁50により通路面積が調整される連通路(不図示)により構成されている。
すなわち、バイパス通路14は、バタフライ弁30よりも上流側に位置する分岐口14a
1において主通路12から分岐して吸気を導入し、バタフライ弁30を迂回して、バタフライ弁30よりも下流側に位置する合流口14b
1において主通路12に吸気を導出するようになっている。
【0042】
収容部15は、
図5及び
図6に示すように、調整弁50の弁体51を往復動自在に収容する領域であり、上流側通路14aと下流側通路14bを連通させる連通路としても機能する。
検出口16は、
図7に示すように、バタフライ弁30よりも下流側において、主通路12に開口し、センサユニットUに設けられた圧力センサ70が主通路12内の吸気に曝されるように形成されている。
【0043】
副通路17は、副吸気通路の一部をなすものであり、
図5及び
図6に示すように、バタフライ弁30よりも下流側の主通路12から分岐し、副通路17の起点となる分岐口17aから所定の長さに亘って、主通路12の中心線Lに対して所定の傾斜角度で下流側に伸長するように形成されている。具体的には、副通路17は、主通路12の中心線Lと角度βをなす中心線L2を中心とする円形断面をなすと共に中心線L2方向に伸長する円筒孔として形成されている。したがって、副通路17の分岐口17aは、主通路12の中心線L方向に長尺な楕円形をなす。
【0044】
また、副通路17の分岐口17aは、
図10に示すように、主通路12において、回転軸20の軸線Sよりも距離ΔLだけ下流側に位置するように配置され、その中心(中心線L2)が主通路12の中心線L及び回転軸20の軸線Sに垂直なバタフライ弁30の中心線L3を含む平面(
図5及び
図10に示す断面)上に位置するように配置されている。
このように、分岐口17aが、軸線S方向において主通路12及びバタフライ弁30の中央に配置されるため、吸気を副通路17に向けて効率良く導くことができる。
また、副通路17の分岐口17aは、
図7に示すように、バイパス通路14の合流口14b
1から外れた位置に配置されると共に、検出口16から外れた位置に配置されている。
このように、分岐口17aが、合流口14b
1及び検出口16から外れた位置に配置されているため、相互間での影響を防止でき、それぞれの機能を果たさせることができる。
【0045】
さらに、副通路17の分岐口17aは、
図10に示すように、閉弁状態にあるバタフライ弁30よりも下流側に位置し、バタフライ弁30が所定開度θに至るまで、バタフライ弁30よりも上流側の主通路12と連通する開口面積Aがバタフライ弁30の開度に応じて増加する位置に形成されている。
【0046】
具体的には、バタフライ弁30が、
図10において、全閉位置から時計回りに回転すると、バタフライ弁30の開閉板31の第2半体部31bよりも上流側の主通路12と連通する分岐口17aの開口面積Aが、
図10及び
図11に示すように、バタフライ弁30の回転に伴って徐々に増加し、所定開度θまで回転したところで分岐口17aの開口面積Aが最大になる。
【0047】
この回転領域において、
図11に示すように、バタフライ弁30よりも上流側の主通路12から流れ込む吸気は、バタフライ弁30の開閉板31に沿って、特に下流側に向けて傾斜する第2半体部31bに案内されて、積極的に分岐口17aに方向付けられて副通路17に流れ込む。
一方、バタフライ弁30よりも上流側の主通路12から流れ込む吸気のうち第1半体部31aの周りを流れる吸気は、背面板32の背後に流れ込んで掻き乱され、主通路12を流れる吸気の流れが弱まる。したがって、背面板32が無い場合に比べて、相対的に副通路17に流れ込む吸気の流量が増加する。
【0048】
そして、バタフライ弁30が所定開度θから全開位置まで回転する領域では、分岐口17の開口面積に変化はなく、バタフライ弁30は、主通路12の中心線Lと平行(
図12において水平)になる。したがって、主通路12を流れる吸気は、
図12に示すように、バタフライ弁30(開閉板31)により副通路17に向けて方向付けられる作用がなくなり、主通路12内を下流側に向けて流れる。
特に、バタフライ弁30は、開閉板31と背面板32の間に隙間を設けられており、両者の間を吸気が流れるようになっている。したがって、背面板32を設けても、吸気はスムーズに流れるようになっている。
【0049】
このように、副通路17の分岐口17aは、バタフライ弁30が開弁する際に、下流側に移動する(下流側に向けて傾斜する)第2半体部31bに臨むように配置され、所定開度θに至るまでのバタフライ弁30の案内作用により、主通路12内の吸気が、副通路17に流れ込むように積極的に案内される。特に、第1半体部31aの背後において突出する突出部としての背面板32が、第1半体部31aの下流側に流れ込んだ主通路121内の吸気の流れを乱して、主通路12の吸気流れを弱めるため、相対的に副通路17へ流れ込む吸気の流量を増加させることができる。
【0050】
コネクタ部18は、金属製の円筒パイプにより形成されており、副通路17に連通するようにスロットルボディ10に圧入されている。そして、コネクタ部18には、通路部材としての副吸気管8の上流端部が連結される。
ここでは、コネクタ部18が別部材として形成された例を示したが、スロットルボディ10に一体的に形成されてもよい。
【0051】
回転軸20は、金属材料等により円形断面で軸線S方向に伸長するように形成され、
図7に示すように、中央領域においてバタフライ弁30を嵌め込むスリット21及び二つのネジ孔22、一端側において駆動ユニット40を連結する連結部23、他端側において有底円筒部24を備えている。また、スリット21の領域の外周には、主通路12における通路抵抗の低減を図るべく二面幅部21aが形成されている。
連結部23は、駆動ユニット40のドラム41を一体的に回転するように嵌め込むべく二面幅部を備えている。
有底円筒部24は、内周面に永久磁石24aを備え、センサユニットUの円柱状をなす角度位置センサ60を非接触にて内側に収容するように形成されている。
【0052】
そして、回転軸20は、スロットルボディ10の軸孔13に通された状態で、スリット21に嵌め込まれたバタフライ弁30がネジb2により締結されることにより、バタフライ弁30を開閉自在に保持する。また、回転軸20は、軸孔13よりも軸線S方向の外側において、リップ型シールRsにより外周面がシールされている。
【0053】
バタフライ弁30は、
図5ないし
図9に示すように、開閉板31、突出部としての背面板32、二つの連結部33を備えている。
開閉板31は、主通路12を開閉するものであり、略円板状に形成され、開弁時に上流側に移動する第1半体部31a、開弁時に下流側に移動する第2半体部31b、ネジb2を通す二つの円孔31cを備えている。
背面板32は、開閉板31と所定の隙間をおいて配置され、二つの連結部33により開閉板31に固定されている。背面板32は、開閉板31の第1半体部31aに対応する外輪郭をなす、すなわち、半円状に形成されている。
二つの連結部33は、開閉板31と背面板32との間において、全開状態で吸気が通過し得るように、かつ、通路抵抗が増加しないように流れ方向の投影面積ができるだけ小さくなるように形成されている。
ここで、バタフライ弁30は、開閉板21、背面板32、及び連結部33が、樹脂材料等により一体的に形成されてもよく、又、それぞれ金属材料等により形成されて互いにネジ等で締結固定されてもよい。
【0054】
上記構成をなすバタフライ弁30は、回転軸20が軸孔13に通された後に、開閉板31がスリット21に通され、閉弁状態において背面板32が第1半体部31aよりも下流側に位置する(すなわち、第1半体部31aから下流側に突出する)ように、ネジb2により回転軸20に固定されて主通路12を開閉するように配置される。
そして、バタフライ弁30は、駆動ユニット40により駆動されて開弁する際に、すなわち、全閉位置から全開位置に移動する際に、
図10に示すように、第1半体部31aが主通路12の上流側に向けて傾斜しつつ水平となり、第2半体部31bが主通路12の下流側に向けて傾斜しつつ水平となるように姿勢を変化させる。
【0055】
駆動ユニット40は、
図3、
図4、
図7に示すように、回転軸20を軸線S回りに回転駆動するものであり、回転軸20の連結部23に連結されて固定されたドラム41、回転軸20の周りにおいてドラム41とスロットルボディ10の間に配置されたコイルバネ42を備えている。
ドラム41は、スロットルグリップに接続されたワイヤーが係止される係止孔41a、コイルバネ42を係止する係止部41b、当接レバー41cを備えている。
コイルバネ42は、
図3に示すように、一端部42aがドラム41の係止部41bに係止され、他端部がスロットルボディ10の係止部(不図示)に係止されて、バタフライ弁30が閉弁する方向に回転付勢力を及ぼす。
当接レバー41cは、コイルバネ42の回転付勢力により、
図3に示すように、スロットルボディ10に設けられた調整ネジ11cに当接するようになっている。したがって、調整ネジ11cの繰出し量を適宜調整して、停止位置におけるバタフライ弁30の弁開度が所望される位置に設定され得る。
【0056】
調整弁50は、
図3ないし
図6に示すように、弁体51、弁体51を軸線Sと平行な方向に往復動自在に駆動するリードスクリューを備えた電磁アクチュエータ52、電磁アクチュエータ52をスロットルボディ10に固定する押え部材53を備えている。
そして、調整弁50は、エンジンのアイドル運転領域において、バイパス通路14(連通路)の通路面積を増減させて、バイパス通路14を流れる吸気の流量を調整するようになっている。
【0057】
角度位置センサ60は、
図7に示すように、センサユニットUに設けられ、ホール素子を埋設して円柱状に形成されており、回転軸20に結合された有底円筒部24に配置された永久磁石24aと協働して、回転軸20の回転角度を検出する。
圧力センサ70は、
図7に示すように、センサユニットUに設けられ、例えば半導体歪みゲージを備えたダイヤフラム等の受圧部、保護カバー等を備えている。そして、圧力センサ70は、主通路12に通じる検出口16を通して吸気の圧力を検出する。
ここで、検出口16は、副通路17の分岐口17aから中心線L方向及び中心線L周りの周方向に離れた位置に形成されているため、分岐口17aの近傍における吸気流れの影響を受けることなく、吸気の圧力を検出することができる。
温度センサ80は、主通路12を流れる吸気の温度を検出するものであり、
図7に示すように、センサユニットUに設けられ、例えばサーミスタ等の感温素子81を含むリード型センサである。そして、温度センサ80は、センサユニットUの本体から突出する筒状部82に収容されて、バタフライ弁30よりも上流側において主通路12内に突出するように配置され、吸気の温度を検出する。
【0058】
上記構成において、
図13に示すように、主通路12の内径φD1、副通路17の内径φD2、回転軸20の軸線Sから分岐口17a(の上流側縁部)までの中心線L方向における距離H、中心線Lに対する副通路17の中心線L2の傾斜角度(角度β)の値については、以下のような傾向がある。
(1)主通路12の内径φD1は、副通路17の流量割合に及ぼす影響は小さい。
(2)副通路17の内径φD2は、大きくなるにつれて副通路17の流量割合が大きくなる傾向にある。
(3)距離Hは、小さくなるにつれて副通路17の流量割合が大きくなる傾向にある。
(4)角度βは、小さくなるにつれて、すなわち、主通路12の中心線Lに対して垂直であるよりも傾斜して下流側に伸長する方が副通路17の流量割合が大きくなる傾向にある。
【0059】
以上のことから、副通路17の分岐口17aは、回転軸20の軸線Sよりも下流側に位置すると共に軸線Sの直近下流の位置に配置されるのが好ましい。また、副通路17は、主通路12の中心線Lに対して小さい傾斜角度(角度β)で下流側に伸長するように形成されるのが好ましい。さらに、バタフライ弁30の開度が小さい領域で副通路17を流れる流量割合を大きくしたい場合は、副通路17の内径φD2を大きく設定することが好ましい。したがって、上記特性に基づき、内燃エンジンEの仕様に応じて副通路17を流れる吸気流量が設定されるように、種々のパラメータ(φD1、φD2、H、β)を設定するのが好ましい。
【0060】
上記構成をなす吸気システムISにおいては、エアクリーナ6とスロットル装置Mの間の吸気管7により画定される主吸気通路7a、スロットル装置Mにより画定される主通路12、スロットル装置Mと吸気ポート3aの間の吸気管7により画定される主吸気通路7a、及びシリンダヘッド3により画定される吸気ポート3aにより、吸気を燃焼室Cに導くと共に燃焼室Cに臨む位置において吸気弁4aにより開閉される主吸気通路が形成されている。
また、スロットル装置Mにより画定される副通路17、スロットル装置Mと副ポート3bの間の副吸気管8により画定される副吸気通路8a、及びシリンダヘッド3により画定される副ポート3bにより、主吸気通路(主通路12)の途中から分岐して吸気弁4aよりも上流側の主吸気通路(吸気ポート3a)に合流する副吸気通路が形成されている。
【0061】
次に、上記吸気システムISを備えた内燃エンジンEの動作について説明する。
先ず、内燃エンジンEがアイドル運転領域にあるとき、バタフライ弁30は主通路12を閉じた閉弁状態にあり、エアクリーナ6から吸い込まれた吸気は、主吸気通路7a、主通路(主吸気通路)12を流れ、バタフライ弁30を迂回するようにバイパス通路14を流れて再び下流側の主通路(主吸気通路)12に流れ込み、主吸気通路7aにおいて燃料噴射弁9により噴射された燃料と一緒に混合気として、主吸気通路7a及び吸気ポート(主吸気通路)3aを経て燃焼室Cに流入する。
この状態において、調整弁50は、バイパス通路14(連通路)の通路面積を調整して、内燃エンジンEのアイドル運転を安定した状態に維持する。
【0062】
一方、内燃エンジンEがアイドル運転領域以外の運転領域(低負荷~中負荷~高負荷)にあるとき、バタフライ弁30は開弁して主通路12を開放する。
したがって、主通路12を流れる吸気は、バイパス通路14を経ることなく、主通路12又は副通路17を流れて燃焼室Cに吸い込まれる。
【0063】
すなわち、バタフライ弁30が全閉位置から所定開度θまで開弁する低負荷~中負荷の運転領域において、バタフライ弁30の第2半体部31bよりも上流側の主通路12と連通する分岐口17aの開口面積Aが、バタフライ弁30の回転に伴って徐々に増加する。
したがって、バタフライ弁30よりも上流側の主通路12から流れ込む吸気は、
図11及び
図14に示すように、バタフライ弁30の下流側に向けて傾斜する第2半体部31bに案内されて、積極的に分岐口17aに方向付けられて副通路17に流れ込む。
ここで、バタフライ弁30よりも上流側の主通路12から流れ込む吸気のうち第1半体部31aの周りを流れる吸気は、背面板32の背後に流れ込んで掻き乱され、主通路12を流れる吸気の流れが弱まる。したがって、背面板32が無い場合に比べて、相対的に副通路17に流れ込む吸気の流量が増加する。
その結果、副吸気通路(副通路17、副吸気通路8a、副ポート13b)を流れる吸気量が増加して、
図15に示すように、燃焼室Cに流れ込む混合気にスワール流(横渦)が生じる。このスワール流により、燃料の微粒化及び吸気と燃料の混合気の均一化が促進されて、燃焼効率が向上する。
【0064】
そして、バタフライ弁30が所定開度θから全開位置まで回転する高負荷の運転領域では、分岐口17の開口面積に変化はなく、バタフライ弁30は、主通路12の中心線Lと平行になる。したがって、主通路12を流れる吸気は、
図12に示すように、バタフライ弁30により副通路17に向けて方向付けられる作用がほぼなくなり、主通路12内を下流側に向けて流れる。特に、バタフライ弁30の開閉板31と背面板32の間には隙間が形成されているため、吸気はバタフライ弁30の周りだけでなく隙間を通しても下流側に流れる。その結果、高負荷の運転領域では、主吸気通路(主吸気通路7a、主通路12、主吸気通路7a、吸気ポート3a)を流れる吸気量が増加して、燃焼速度が高まり、効率の良い燃焼が促進される。
【0065】
すなわち、
図16に示すように、バタフライ弁30が全閉位置から全開位置に向けて開弁する際に、低負荷から中負荷の運転領域においては、副吸気通路(副通路17、副吸気通路8a、副ポート13b)を流れる吸気の割合が増加する。また、中負荷から高負荷の運転領域においては、副吸気通路(副通路17、副吸気通路8a、副ポート13b)を流れる吸気の割合が減少し、主吸気通路(主吸気通路7a、主通路12、主吸気通路7a、吸気ポート3a)を流れる吸気量の割合が増加する。
よって、低負荷から中負荷の運転領域において、燃焼室C内でスワール流を発生させて、燃焼効率を向上させることができ、又、高負荷の運転領域において、主通路12を主として流れる高速の吸気流量が増加し、燃焼速度が高まり、効率の良い燃焼が促進される。
【0066】
上記一実施形態のスロットル装置Mにおいては、副通路17が主通路12に対して傾斜角度(角度β)をなす方向に伸長する形態を示したが、
図17に示すように、主通路12に対して垂直に分岐した後に下流側に向けて伸長する副通路117を採用してもよい。
この実施形態において、副通路117の分岐口117aは、前述同様に、閉弁状態にある開閉板31よりも下流側に位置し、バタフライ弁30が開弁する際に第2半体部31bに臨む位置で、バタフライ弁30が所定開度θに至るまで開閉板31よりも上流側の主通路12と連通する開口面積Aがバタフライ弁30の開度に応じて増加する位置に形成されている。副通路117の分岐口117aは、主通路12に対して円形にて開口する。
【0067】
上記一実施形態に係るスロットル装置Mを備えた吸気システムISにおいては、副吸気通路(副ポート3b)の合流口3b
1が、吸気弁4aよりも上流側において、燃焼室C内にスワール流を生じさせる向きに方向付けられた構成を示したが、
図18に示すように、燃料噴射弁9が燃焼室Cに直接燃料を噴射するように配置され、副吸気通路(副ポート113b)の合流口113b
1が、吸気弁4aよりも上流側において、燃焼室C内にタンブル流(縦渦)を生じさせる向きに方向付けられた構成を採用してもよい。
【0068】
以上述べたように、本発明のスロットル装置Mによれば、吸気を燃焼室Cに導くと共に燃焼室Cに臨む位置において吸気弁4aにより開閉される主吸気通路(7a,3a)、主吸気通路の途中から分岐して吸気弁4aよりも上流側の主吸気通路(3a)に合流する副吸気通路(8a,3b)を含む内燃エンジンEの吸気システムISに適用されるスロットル装置Mであって、主吸気通路の一部をなす主通路12及び主通路12から分岐して副吸気通路の一部をなす副通路17を画定するスロットルボディ10と、主通路12を開閉するべく所定の軸線S回りに回動するバタフライ弁30を備え、バタフライ弁30は、開弁時に上流側に移動する第1半体部31a及び下流側に移動する第2半体部31bを有し主通路12を開閉する開閉板31と、閉弁状態において第1半体部31aから下流側に突出する突出部(実施形態では背面板32)を含み、副通路17の分岐口17aは、閉弁状態にある開閉板31よりも下流側に位置し、バタフライ弁30が開弁する際に第2半体部31bに臨む位置で、バタフライ弁30が所定開度θに至るまで開閉板31よりも上流側の主通路12と連通する開口面積Aがバタフライ弁30の開度に応じて増加する位置に形成されている。
これによれば、部品点数の削減、構造の簡素化、低コスト化、通路抵抗の低減等を達成しつつ、所定開度θに至るまでに対応する低負荷~中負荷の運転領域において、主通路12を流れる吸気をバタフライ弁30の第2半体部31bで案内して、積極的に副通路17に流れ込ませることができる。これにより、副吸気通路(17,8a,3b)を流れる吸気の流量を増加させて、燃焼室C内に積極的に旋回流(スワール流やタンブル流)を生じさせることができる。特に、第1半体部31aから下流側に突出する突出部が設けられているため、第1半体部31aの背後に流れ込んだ吸気の流れは突出部により乱され、主通路12を流れる吸気の流れが弱まる。したがって、相対的に副通路17に流れ込む吸気の流量を増加させることができる。
【0069】
また、第1半体部31aから下流側に突出する突出部は、開閉板31と所定隙間をおいて固定された平板状の背面板32である。
これによれば、突出部が突条部や隆起部等の中実状の形態である場合に比べて、バタフライ弁30を軽量化でき、又、成形性や製造性が向上する。
【0070】
また、バタフライ弁30は、全開状態にあるとき、開閉板31と背面板32の間を吸気が通過し得るように形成されている。
これによれば、全開状態において、吸気が開閉板31と背面板32の間を通過し得るため、両者の間が閉塞された中実部材として形成された場合に比べて通路抵抗を低減することができる。
【0071】
また、背面板32は、開閉板31の第1半体部31aに対応する外輪郭をなすように形成されている。
これによれば、バタフライ弁30が全閉状態から開弁する際に、所定開度の範囲まで下流側の吸気の流れを乱す作用を得ることができ、相対的に副通路17に流れ込む吸気の流量を増加させることができる。
【0072】
また、副通路17の分岐口17aは、主通路12において、軸線Sよりも下流側に位置するように配置されている。
これによれば、バタフライ弁30が軸線S回りに回転して、開閉板31が開弁する際に、分岐口17aが下流側に移動する第2半体部31bに対向して臨むように、分岐口17aを容易に配置することができ、又、下流側に向けて傾斜する開閉板31の第2半体部31bを吸気のガイド部材として有効に利用して、吸気を副通路17に導くことができる。
【0073】
また、主通路12は円形断面をなし、副通路17は円形断面をなし、副通路17の分岐口17aは円形又は楕円形をなすように形成されている。
これによれば、加工し易い形状の通路を採用することで、低コスト化を達成しつつ、吸気が流れる通路の通路抵抗を低減することができる。
【0074】
また、副通路17の分岐口17aは、その中心L2が主通路12の中心線L及び回転軸20の軸線Sに垂直なバタフライ弁30の中心線L3を含む平面上に位置するように配置されている。
これによれば、分岐口17aが、軸線S方向において主通路12及びバタフライ弁30の中央に配置されるため、吸気を副通路17に向けて効率良く導くことができる。
【0075】
また、副通路17は、分岐口17aから所定の長さに亘って、主通路12の中心線Lに対して所定の傾斜角度(角度β)で下流側に伸長するように形成されている。
これによれば、曲り損失による通路抵抗を低減しつつ、主通路12を流れる吸気を副通路17に導くことができる。
【0076】
また、スロットルボディ10は、副吸気通路8aを画定する通路部材(副吸気管8)を連結するコネクタ部18を有する。
これによれば、スロットル装置Mを吸気システムISの途中に配置する際に、副吸気通路8aを画定する通路部材(副吸気管8)を容易に組付けることができ、作業性が向上する。
【0077】
また、スロットルボディ10は、バタフライ弁30を迂回するバイパス通路14を含み、副通路17の分岐口17aは、バイパス通路14の合流口14b1から外れた位置に配置されている。また、スロットルボディ10は、バタフライ弁30よりも下流側において主通路12内の圧力を検出する検出口16を含み、副通路17の分岐口17aは、検出口16から外れた位置に配置されている。
これによれば、分岐口17aが、合流口14b1及び検出口16から外れた位置に配置されているため、相互間での影響を防止でき、それぞれの機能を果たさせることができる。
【0078】
上記一実施形態に係る吸気システムISにおいては、吸気管7の途中においてスロットルボディ10を備えたスロットル装置Mを配置する構成を示したが、専用のスロットルボディを設けるのではなく、主吸気通路を画定する通路部材に対してバタフライ弁を配置し、燃料噴射弁を主吸気通路の途中に噴射するように又は燃焼室に直接噴射するように配置した構成を採用した吸気システムとしてもよい。
すなわち、主吸気通路、バタフライ弁、副吸気通路、燃料噴射弁を備え、バタフライ弁が、開弁時に上流側に移動する第1半体部及び下流側に移動する第2半体部を有し主通路を開閉する開閉板と、閉弁状態において第1半体部から下流側に突出する突出部を含み、副吸気通路の分岐口が、閉弁状態にある開閉板よりも下流側に位置し、バタフライ弁が開弁する際に第2半体部に臨む位置で、バタフライ弁が所定開度に至るまで開閉板よりも上流側の主吸気通路と連通する開口面積がバタフライ弁の開度に応じて増加する位置に形成されている、吸気システムとしてもよい。
【0079】
上記実施形態においては、閉弁状態において第1半体部31aから下流側に突出する突出部として背面板32を採用したバタフライ弁30を示したが、これに限定されるものではなく、第1半体31aの背後に流れ込む吸気を掻き乱す作用をなすものであれば、第1半体の下流側に突出する中実状の突条部や隆起部、あるいは、その他の形態をなす突出部を採用してもよい。
【0080】
上記実施形態においては、主吸気通路(主通路)及び副吸気通路(副通路)が円形断面をなし、副吸気通路(副通路)の分岐口が円形又は楕円形をなす場合を示したが、これに限定されるものではなく、その他の形態をなす主吸気通路(主通路)、副吸気通路(副通路)及び分岐口を採用してもよい。
【0081】
上記実施形態においては、本発明のスロットル装置及び吸気システムが適用される内燃エンジンを搭載する車両が自動二輪車の場合を示したが、これに限定されるものではなく、自動車等に搭載される内燃エンジンに適用されてもよい。
【0082】
以上述べたように、本発明のスロットル装置及び吸気システムは、部品点数の削減、構造の簡素化、低コスト化、通路抵抗の低減等を達成しつつ、副吸気通路を流れる吸気の流量を増加させることができ、それ故に、燃焼室でスワール流やタンブル流等の旋回流を生じさせることができ、燃焼効率の向上に寄与するため、自動二輪車等に搭載の内燃エンジンに適用できるのは勿論のこと、自動車に搭載の内燃エンジン又はその他の車両に搭載の内燃エンジンにおいても有用である。
【符号の説明】
【0083】
E 内燃エンジン
IS 吸気システム
3a 吸気ポート(主吸気通路)
3b、113b 副ポート(副吸気通路)
3b1,113b1 副吸気通路の合流口
4a 吸気弁
7 吸気管
7a 主吸気通路
8 副吸気管(通路部材)
8a 副吸気通路
9 燃料噴射弁
M スロットル装置
10 スロットルボディ
12 主通路(主吸気通路)
L 主通路の中心線
14 バイパス通路
14b1 バイパス通路の合流口
16 検出口
17,117 副通路(副吸気通路)
17a,117a 副通路の分岐口
β 角度(傾斜角度)
L2 副通路の中心線
18 コネクタ部
20 回転軸
S 軸線
θ 所定開度
30 バタフライ弁
31 開閉板
31a 第1半体部
31b 第2半体部
32 背面板(突出部)
33 連結部
L3 バタフライ弁の中心線