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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064145
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】車両用制振装置および鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/24 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
B61F5/24 C
B61F5/24 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172515
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保坂 栄寿
(57)【要約】
【課題】第1加速度センサまたは第2加速度センサに異常が発生しても、第1減衰力可変ダンパと第2減衰力可変ダンパの制御を継続できる車両用制振装置を提供する。
【解決手段】制御装置21は、台車側加速度センサ14A-14Dと車体側加速度センサ15A-15Dとに接続されている。制御装置21は、台車側加速度センサ14A-14Dと車体側加速度センサ15A-15Dとからの加速度情報に基づいて、第1ダンパ9A-9Hと第2ダンパ12A-12Dとの減衰力を可変する。また、制御装置21は、台車側加速度センサ14A-14Dと車体側加速度センサ15A-15Dの異常を検出する。制御装置21は、台車側加速度センサ14A-14Dと車体側加速度センサ15A-15Dの一方の加速度センサに異常を検出したとき、他方の加速度センサからの加速度情報により、一方の加速度センサの加速度情報を補完する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車軸と台車との間に設けられる第1減衰力可変ダンパと、
前記台車と車体との間に設けられる第2減衰力可変ダンパと、
前記台車に設けられ、前記台車の加速度を検出する第1加速度センサと、
前記車体に設けられ、前記車体の加速度を検出する第2加速度センサと、
前記第1加速度センサと前記第2加速度センサとに接続され、該第1加速度センサと該第2加速度センサとからの加速度情報に基づいて前記第1減衰力可変ダンパと前記第2減衰力可変ダンパとの減衰力を可変するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記第1加速度センサまたは前記第2加速度センサの異常検出手段を有し、該第1加速度センサまたは該第2加速度センサの一方の加速度センサに異常を検出したとき、他方の加速度センサからの加速度情報により、一方の加速度センサの加速度情報を補完することを特徴とする車両用制振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用制振装置であって、
前記車両の走行区間に応じた前記第1加速度センサと前記第2加速度センサとの加速度情報の差分値を記録するメモリを備え、
前記コントローラは、異常を検出した前記一方の加速度センサの加速度情報を、前記他方の加速度センサの加速度情報と前記メモリに記録された前記加速度情報の差分値とから求めることを特徴とする車両用制振装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用制振装置であって、
前記メモリに記録される前記加速度情報の差分値は、前記第1加速度センサと前記第2加速度センサとが正常に動作している状態で自動的に蓄積されることを特徴とする車両用制振装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用制振装置であって、
前記第1加速度センサは、前記台車の進行方向前側に配置される前側第1加速度センサと、前記台車の進行方向後側に配置される後側第1加速度センサと、を有し、
前記第2加速度センサは、前記車体の進行方向前側に配置される前側第2加速度センサと、前記車体の進行方向後側に配置される後側第2加速度センサと、を有することを特徴とする車両用制振装置。
【請求項5】
請求項2に記載の車両用制振装置であって、
前記第1加速度センサは、前記台車の進行方向前側に配置される前側第1加速度センサと、前記台車の進行方向後側に配置される後側第1加速度センサと、を有し、
前記第2加速度センサは、前記車体の進行方向前側に配置される前側第2加速度センサと、前記車体の進行方向後側に配置される後側第2加速度センサと、を有することを特徴とする車両用制振装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用制振装置であって、
前記メモリに記録される前記加速度情報の差分値は、前記前側第1加速度センサの加速度情報と前記前側第2加速度センサの加速度情報との差分値と、前記後側第1加速度センサの加速度情報と前記後側第2加速度センサの加速度情報との差分値と、であることを特徴とする車両用制振装置。
【請求項7】
車両の車軸と台車との間に設けられる第1減衰力可変ダンパと、
前記台車と車体との間に設けられる第2減衰力可変ダンパと、
前記台車に設けられ、前記台車の加速度を検出する第1加速度センサと、
前記車体に設けられ、前記車体の加速度を検出する第2加速度センサと、
前記第1加速度センサと前記第2加速度センサとに接続され、該第1加速度センサと該第2加速度センサとからの加速度情報に基づいて前記第1減衰力可変ダンパと前記第2減衰力可変ダンパとの減衰力を可変すると共に、前記第1加速度センサまたは前記第2加速度センサの異常検出手段を有し、該第1加速度センサまたは該第2加速度センサの一方の加速度センサに異常を検出したとき、他方の加速度センサからの加速度情報により、一方の加速度センサの加速度情報を補完するコントローラと、を備える鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、車両の振動を低減する車両用制振装置および鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の乗り心地向上のため、車軸と台車との間または台車と車体との間に減衰力調整式緩衝器を配置した車両(鉄道車両)が知られている。例えば、特許文献1には、車軸と台車との間に減衰力調整式緩衝器(可変減衰ダンパ)を配置した制振装置が記載されている。特許文献2には、台車と車体との間に減衰力調整式緩衝器(減衰力調整式ダンパ)を配置した鉄道車両用振動制御装置が記載されている。減衰力調整式緩衝器は、車両に搭載された加速度センサの検出値(計測値)に基づいて制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-145312号公報
【特許文献2】特開2000-071982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車軸と台車との間に減衰力調整式緩衝器(例えば、第1減衰力可変ダンパ)を設けると共に、台車と車体との間に減衰力調整式緩衝器(例えば、第2減衰力可変ダンパ)を設け、これら両緩衝器、即ち、第1減衰力可変ダンパと第2減衰力可変ダンパとの両方を制御する場合を考える。この場合、例えば、台車の加速度を検出する第1加速度センサに異常が発生したときに、第1減衰力可変ダンパの制御を停止すると、乗り心地が低下する可能性がある。また、例えば、車体の加速度を検出する第2加速度センサに異常が発生したときに、第2減衰力可変ダンパの制御を停止すると、乗り心地が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の目的の一つは、第1加速度センサまたは第2加速度センサに異常が発生しても、第1減衰力可変ダンパと第2減衰力可変ダンパの制御を継続できる車両用制振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、好ましくは、車両の車軸と台車との間に設けられる第1減衰力可変ダンパと、前記台車と車体との間に設けられる第2減衰力可変ダンパと、前記台車に設けられ、前記台車の加速度を検出する第1加速度センサと、前記車体に設けられ、前記車体の加速度を検出する第2加速度センサと、前記第1加速度センサと前記第2加速度センサとに接続され、該第1加速度センサと該第2加速度センサとからの加速度情報に基づいて前記第1減衰力可変ダンパと前記第2減衰力可変ダンパとの減衰力を可変するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記第1加速度センサまたは前記第2加速度センサの異常検出手段を有し、該第1加速度センサまたは該第2加速度センサの一方の加速度センサに異常を検出したとき、他方の加速度センサからの加速度情報により、一方の加速度センサの加速度情報を補完する車両用制振装置である。
【0007】
また、本発明は、好ましくは、車両の車軸と台車との間に設けられる第1減衰力可変ダンパと、前記台車と車体との間に設けられる第2減衰力可変ダンパと、前記台車に設けられ、前記台車の加速度を検出する第1加速度センサと、前記車体に設けられ、前記車体の加速度を検出する第2加速度センサと、前記第1加速度センサと前記第2加速度センサとに接続され、該第1加速度センサと該第2加速度センサとからの加速度情報に基づいて前記第1減衰力可変ダンパと前記第2減衰力可変ダンパとの減衰力を可変すると共に、前記第1加速度センサまたは前記第2加速度センサの異常検出手段を有し、該第1加速度センサまたは該第2加速度センサの一方の加速度センサに異常を検出したとき、他方の加速度センサからの加速度情報により、一方の加速度センサの加速度情報を補完するコントローラと、を備える鉄道車両である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、台車に設けられる第1加速度センサまたは車体に設けられる第2加速度センサの異常が検出されても、第1減衰力可変ダンパと第2減衰力可変ダンパの制御を継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態による車両用制振装置が搭載された鉄道車両を概略的に示す側面図である。
図2図1中の台車、車輪、第1減衰力可変ダンパ、第1加速度センサ等の位置関係を概略的に示す平面図である。
図3図1中の車体、空気ばね、第2減衰力可変ダンパ、第2加速度センサ等の位置関係を概略的に示す平面図である。
図4図1中の制御装置による加速度情報の処理を示すブロック図である。
図5】第2加速度センサの異常が検出されたときの加速度情報の処理を示す図4と同様のブロック図である。
図6】(A)第2加速度センサの検出値、(B)第1加速度センサの検出値、および、(C)補完された第2加速度センサの推定値(補完値)の時間変化の一例を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態による車両用制振装置を、電車、気動車、客車等の鉄道車両に搭載した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ説明する。なお、図1-3では、図面の左側(車両の長さ方向の一側)を鉄道車両の進行方向の前側とし、図面の右側(車両の長さ方向の他側)を鉄道車両の進行方向の後側として説明するが、図面の右側を前側とし、図面の左側を後側としてもよい。
【0011】
図1において、鉄道車両1(以下、車両1という)は、例えば乗客、乗務員等の乗員が乗車する車体2と、車体2の下側に設けられた前側の台車3Aおよび後側の台車3Bとを備えている。これら2つの台車3A,3Bは、車体2の前側(車体2の長さ方向の一側で図1ないし図3の左側)と後側(車体2の長さ方向の他側で図1ないし図3の右側)とに離間して配置されている。これにより、車両1の車体2は、一対の台車3A,3B上に設置されている。なお、図1ないし図3では、図面が複雑になることを避けるため、1両の車両1、即ち、1両編成の列車を示している。しかし、実際に運行される列車は、複数の車両1を連結した列車、即ち、複数の車両1により編成された列車が多い。
【0012】
台車3A,3Bは、台車枠4A,4Bと、複数の車輪5A-5Hと、複数の軸ばね8,8(図1)と、複数の第1減衰力調整式油圧緩衝器9A-9H(以下、第1ダンパ9A-9Hという)と、を備えている。各車輪5A-5Hは、台車3A,3Bの支持構造体となる台車枠4A,4Bに回転可能に支持されることにより、台車3A,3Bに取り付けられている。即ち、各台車3A,3B(台車枠4A,4B)には、車軸6A-6D(図2)の長さ方向の両端側(即ち、車体2の幅方向の両端側)にそれぞれ車輪5A-5Hを設けてなる輪軸7A-7Dが、前後方向に離間してそれぞれ2個ずつ取付けられている。
【0013】
これにより、各台車3A,3Bには、それぞれ4個の車輪5A-5D,5E-5Hが設けられている。即ち、車輪5A-5Hは、1台車につき4個、1車両につき8個設けられている。車両1は、各車輪5A-5Hが左右のレールR(図1に一方のみ図示)上を回転することにより、レールRに沿って走行する。なお、車体2の幅方向となる左右方向は、進行方向に対面した状態を基準としている。即ち、左右方向は、車体2の幅方向(車軸6A-6Dの軸方向)に対応し、例えば、図1では紙面に直交する表裏方向の表側を左とし、裏側を右としている。
【0014】
台車3A,3Bの台車枠4A,4Bと各車軸6A-6D(より具体的には、車軸6A-6Dを回転可能に支持する軸受箱)との間には、複数の軸ばね8,8と、複数の第1ダンパ9A-9Hと、が設けられている。軸ばね8,8は、車輪5A-5Hからの振動や衝撃を緩和する。軸ばね8,8は、「ばね下質量」となる車輪5A-5H等と「ばね間質量」となる台車枠4A,4B等との間に設けられる「1次ばね」に対応する。軸ばね8,8は、例えば、コイルばねにより構成されており、車軸6A-6Dの両側にそれぞれ2個ずつ設けられている。即ち、軸ばね8,8は、1台車につき8個、1車両につき16個設けられている。
【0015】
第1減衰力可変ダンパとしての第1ダンパ9A-9Hは、軸ばね8,8に対して並列に配置されている。第1ダンパ9A-9Hは、例えば、各台車3A,3Bの左右両側にそれぞれ2個ずつ(車軸6A-6Dの軸方向両側にそれぞれ1個ずつ)設けられている。即ち、第1ダンパ9A-9Hは、1台車につき4個、1車両につき8個設けられている。第1ダンパ9A-9Hは、台車3A,3B(より具体的には、台車枠4A,4B)と各車輪5A-5H(より具体的には、軸受箱)との間に設けられている。即ち、第1ダンパ9A-9Hは、「ばね間質量」となる台車枠4A,4B等と「ばね下質量」となる車輪5A-5H等との間に介装(配置)されている。
【0016】
第1ダンパ9A-9Hは、台車3A,3Bの振動を低減させる力を発生する。即ち、第1ダンパ9A-9Hは、車輪5A-5H(より具体的には、車軸6A-6D)に対する台車枠4A,4Bの上下方向の振動(車輪5A-5Hと台車枠4A,4Bとの相対変位)に対して、振動(相対変位)を低減させるような力(即ち、減衰力)を発生する。これにより、第1ダンパ9A-9Hは、台車3A,3Bの上下方向の振動を抑制(低減)する。この場合、第1ダンパ9A-9Hは、減衰力の調整が可能なダンパ、例えば、減衰力を調整可能な減衰力調整式油圧緩衝器により構成されている。即ち、第1ダンパ9A-9Hは、それぞれの減衰力を個別に調整可能な減衰力調整式緩衝器(減衰力を可変に制御可能な減衰力可変ダンパ)として構成されている。
【0017】
第1ダンパ9A-9Hは、後述の制御装置21等と共に車両用制振装置(鉄道車両用振動制御装置)を構成している。第1ダンパ9A-9Hは、セミアクティブダンパとも呼ばれており、軸ばね8,8と共に、車輪5A-5Hと台車3A,3Bとの間で上下方向の振動を緩衝(減衰)するサスペンション(セミアクティブサスペンション)を構成している。第1ダンパ9A-9Hは、例えば、制御装置21から電力(駆動電流)が供給されることにより、ソレノイドバルブ等の制御バルブ10A-10Hの開弁圧が調整される。これにより、第1ダンパ9A-9Hは、減衰特性をハードな特性(硬特性)からソフトな特性(軟特性)へと連続的に調整することができる。
【0018】
なお、第1ダンパ9A-9Hは、減衰特性を連続的に調整するものに限らず、2段階または複数段階に調整可能なものであってもよい。また、第1ダンパ9A-9Hは、電圧や電流に応じて減衰力を調整する減衰力調整式緩衝器であってもよい。さらに、第1ダンパ9A-9Hは、外部動力により能動的に力(減衰力)を発生するアクチュエータ等のアクティブダンパでもよい。アクチュエータ(アクティブダンパ)は、例えば、三相リニアモータ等の電力の供給により伸長、縮小する電動リニアモータ(電動アクチュエータ)、または、圧油の供給により伸長、縮小する油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)により構成することができる。
【0019】
いずれにしても、第1ダンパ9A-9Hは、車両電力源(例えば、架線、発電機等からの電力を貯えるバッテリ)から供給される電力により、発生する力(減衰力)を制御可能な台車車輪間アクチュエータとなるものである。この場合、第1ダンパ9A-9H(制御バルブ10A-10H)は、制御装置21に接続されており、制御装置21を介して電力が供給されることにより、発生減衰力が可変に調整される。
【0020】
一方、車両1の車体2と各台車3A,3Bとの間には、複数の空気ばね11A-11Dと、複数の第2減衰力調整式油圧緩衝器12A-12D(以下、第2ダンパ12A-12Dという)と、が設けられている。空気ばね11A-11Dは、それぞれの台車3A,3B上で車体2を弾性的に支持する。空気ばね11A-11Dは、「枕ばね」または「懸架ばね」とも呼ばれ、「ばね上質量」となる車体2等と「ばね間質量」となる台車枠4A,4B等との間に設けられる「2次ばね」に対応する。空気ばね11A-11Dは、各台車3A,3Bの左右両側にそれぞれ1個ずつ設けられている。即ち、空気ばね11A-11Dは、1台車につき2個、1車両につき4個設けられている。
【0021】
第2減衰力可変ダンパとしての第2ダンパ12A-12Dは、空気ばね11A-11Dに対して並列に配置されている。第2ダンパ12A-12Dは、例えば、1つの台車3A,3B毎に左右方向に離間して2個ずつ設けられている。即ち、第2ダンパ12A-12Dは、1台車につき2個、1車両につき4個設けられている。第2ダンパ12A-12Dは、車体2と台車3A,3B(より具体的には、台車枠4A,4B)との間に設けられている。即ち、第2ダンパ12A-12Dは、「ばね上質量」となる車体2等と「ばね間質量」となる台車枠4A,4B等との間に介装(配置)されている。
【0022】
第2ダンパ12A-12Dは、車体2の振動を低減させる力を発生する。即ち、第2ダンパ12A-12Dは、台車3A,3B(より具体的には、台車枠4A,4B)に対する車体2の上下方向の振動(台車枠4A,4Bと車体2との相対変位)に対して、振動(相対変位)を低減させるような力(即ち、減衰力)を発生する。これにより、第2ダンパ12A-12Dは、車体2の上下方向の振動を抑制(低減)する。この場合、第2ダンパ12A-12Dは、第1ダンパ9A-9Hと同様に、減衰力の調整が可能なダンパ、例えば、減衰力を調整可能な減衰力調整式油圧緩衝器により構成されている。即ち、第2ダンパ12A-12Dも、それぞれの減衰力を個別に調整可能な減衰力調整式緩衝器(減衰力を可変に制御可能な減衰力可変ダンパ)として構成されている。
【0023】
第2ダンパ12A-12Dは、後述の制御装置21等と共に車両用制振装置(鉄道車両用振動制御装置)を構成している。第2ダンパ12A-12Dは、セミアクティブダンパとも呼ばれており、空気ばね11A-11Dと共に、台車3A,3Bと車体2との間で上下方向の振動を緩衝(減衰)するサスペンション(セミアクティブサスペンション)を構成している。第2ダンパ12A-12Dは、例えば、制御装置21から電力(駆動電流)が供給されることにより、ソレノイドバルブ等の制御バルブ13A-13Dの開弁圧が調整される。これにより、第2ダンパ12A-12Dは、減衰特性をハードな特性(硬特性)からソフトな特性(軟特性)へと連続的に調整することができる。
【0024】
なお、第2ダンパ12A-12Dも、減衰特性を連続的に調整するものに限らず、2段階または複数段階に調整可能なものであってもよい。また、第2ダンパ12A-12Dは、電圧や電流に応じて減衰力を調整する減衰力調整式緩衝器であってもよい。さらに、第2ダンパ12A-12Dは、外部動力により能動的に力(減衰力)を発生するアクチュエータ等のアクティブダンパでもよい。アクチュエータ(アクティブダンパ)は、三相リニアモータ等の電力の供給により伸長、縮小する電動リニアモータ(電動アクチュエータ)、または、圧油の供給により伸長、縮小する油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)により構成することができる。
【0025】
いずれにしても、第2ダンパ12A-12Dは、車両電力源(例えば、架線、発電機等からの電力を貯えるバッテリ)から供給される電力により、発生する力(減衰力)を制御可能な車体台車間アクチュエータとなるものである。この場合、第2ダンパ12A-12D(制御バルブ13A-13D)は、制御装置21に接続されており、制御装置21を介して電力が供給されることにより、発生減衰力が可変に調整される。
【0026】
図2に示すように、台車3A,3Bには、前後方向に離間した2個所位置に、それぞれの位置で台車3A,3Bの上下方向の加速度を検出する合計2個(1車両につき4個)の台車側加速度センサ14A-14Dが設けられている。第1加速度センサとしての台車側加速度センサ14A-14Dは、車両1の異なる複数個所にそれぞれ搭載されて車両1の挙動(より具体的には、台車3A,3Bの振動状態)を検出するセンサ(挙動センサ)である。台車側加速度センサ14A-14Dとしては、例えば圧電式、サーボ式、ピエゾ抵抗式等のアナログ式加速度センサ等、各種の加速度センサを用いることができ、特に、耐水性、耐熱性に優れた加速度センサを用いることが好ましい。
【0027】
ここで、第1台車側加速度センサ14Aと第2台車側加速度センサ14Bは、前側の台車3Aに配置されている。この場合、第1台車側加速度センサ14Aは、前側の車軸6Aに近い位置に配置されており、第2台車側加速度センサ14Bは、後側の車軸6Bに近い位置に配置されている。第1台車側加速度センサ14Aは、進行方向前側の台車3Aの前側に配置される前側第1加速度センサに対応する。第3台車側加速度センサ14Cと第4台車側加速度センサ14Dは、後側の台車3Bに配置されている。この場合、第3台車側加速度センサ14Cは、前側の車軸6Cに近い位置に配置されており、第4台車側加速度センサ14Dは、後側の車軸6Dに近い位置に配置されている。第4台車側加速度センサ14Dは、進行方向後側の台車3Bの後側に配置される後側第1加速度センサに対応する。
【0028】
台車側加速度センサ14A-14Dは、制御装置21に接続されている。台車側加速度センサ14A-14Dは、それぞれの位置で検出した台車3A,3Bの上下方向の加速度の検出信号(車両挙動である台車3A,3Bの振動の検出信号)を制御装置21に出力する。なお、台車側加速度センサ14A-14Dは、台車3A,3Bの前側と後側とに限らず、例えば台車3A,3Bの左側と右側とに配置する等、台車3A,3B上のセンサ配置はいかなる形をとってもよい。また、台車側加速度センサ14A-14Dの個数も1台車毎に2個に限らず、測定・制御の目的に合わせて自由に選んでよい。例えば、台車3A,3B毎に1個ずつ設けてもよいし、3個以上ずつ設けてもよい。さらに、前側の台車3Aと後側の台車3Bとでセンサの数を異ならせてもよい。
【0029】
図3に示すように、車体2には、前後方向に離間した2個所位置と左右方向に離間した2個所位置との4個所位置に、それぞれの位置で車体2の上下方向の加速度を検出する合計4個の車体側加速度センサ15A-15Dが設けられている。第2加速度センサとしての車体側加速度センサ15A-15Dは、車両1の異なる複数個所にそれぞれ搭載されて車両1の挙動(より具体的には、車体2の振動状態)を検出するセンサ(挙動センサ)である。車体側加速度センサ15A-15Dも、台車側加速度センサ14A-14Dと同様に、例えば圧電式、サーボ式、ピエゾ抵抗式等のアナログ式加速度センサ等、各種の加速度センサを用いることができる。
【0030】
ここで、第1車体側加速度センサ15Aは、車体2の前側、より具体的には、前側の台車3Aよりも前側となる最前側に配置されている。第1車体側加速度センサ15Aは、車体2の進行方向前側に配置される前側第2加速度センサに対応する。第2車体側加速度センサ15Bは、車体2の後側、より具体的には、後側の台車3Bよりも後側となる最後側に配置されている。第2車体側加速度センサ15Bは、車体2の進行方向後側に配置される後側第2加速度センサに対応する。第3車体側加速度センサ15Cは、車体2の前後方向の中央の左側に配置されている。第4車体側加速度センサ15Dは、車体2の前後方向の中央の右側に配置されている。
【0031】
車体側加速度センサ15A-15Dは、制御装置21に接続されている。車体側加速度センサ15A-15Dは、それぞれの位置で検出した車体2の上下方向の加速度の検出信号(車両挙動である車体2の振動の検出信号)を制御装置21に出力する。なお、車体側加速度センサ15A-15Dは、車体2の前部中央、後部中央、中央左側、中央右側に限らず、例えば車体2の前部左側、前部右側、後部左側、後部右側に配置する等、車体2上のセンサ配置はいかなる形をとってもよい。また、車体側加速度センサ15A-15Dの個数も1車両(1車体)毎に4個に限らず、測定・制御の目的に合わせて自由に選んでよい。例えば、車体2に2個、3個、または5個以上設けてもよい。
【0032】
制御装置21は、第1ダンパ9A-9H(制御バルブ10A-10H)および第2ダンパ12A-12D(制御バルブ13A-13D)を制御するコントローラである。制御装置21は、車両1の予め決められた位置(例えば、車体2のほぼ中央となる位置等)に設置されている。制御装置21は、例えばマイクロコンピュータ、駆動回路等を含んで構成されている。制御装置21は、加速度センサ14A-14D,15A-15Dと接続されている。また、制御装置21は、ダンパ9A-9H,12A-12Dの制御バルブ10A-10H,13A-13Dと接続されている。
【0033】
制御装置21は、例えばROM、RAM、不揮発性メモリ等からなる記憶部としてのメモリ21Aを有している。メモリ21Aには、例えば、ダンパ9A-9H,12A-12Dの制御処理を行うためのプログラム、加速度センサ14A,14B,15A,15Bの故障(異常)を判定するプログラム、加速度センサ14A,14B,15A,15Bが故障したときの加速度を推定するプログラム等が記憶されている。また、メモリ21Aには、加速度センサ14A-14D,15A-15Dの加速度情報が記憶(記録)される。また、後述するように、メモリ21Aには、加速度センサ14A-14D,15A-15Dの加速度情報の差分値、例えば、台車側加速度センサ14A-14Dと車体側加速度センサ15A-15Dとの加速度情報の差分値(位相差Δμs、波高値Δ比率等)が記憶(記録)される。メモリ21Aに記憶される「加速度情報」および/または「加速度情報の差分値」は、例えば、いずれかの加速度センサ14A-14D,15A-15Dが故障したときに、この故障した加速度センサで検出されると想定される加速度の推定(算出)に用いられる。
【0034】
なお、「加速度情報」および/または「加速度情報の差分値」が記憶(記録)されるメモリは、制御装置21のメモリ21Aとは別のメモリとしてもよい。即ち、加速度センサ14A-14D,15A-15Dの加速度情報および/またはその差分値が記憶(記録)されるメモリは、例えばSSD(ソリッドステートドライブ)、HDD(ハードディスクドライブ)等の記憶装置としてもよい。換言すれば、ダンパ9A-9H,12A-12Dを制御するコントローラと加速度センサ14A-14D,15A-15Dの加速度情報および/またはその差分値が記憶(記録)されるメモリは、制御装置21として一体に構成してもよいし、制御装置(コントローラ)と記憶装置(メモリ)とによりそれぞれ別々に構成してもよい。
【0035】
制御装置21は、例えば通信回線31を介して別の制御装置、例えば、上位の制御装置(図示せず)と接続されている。制御装置21には、上位の制御装置から通信回線31を介して車両1の車両情報(例えば、車両の走行位置、走行区間、走行速度等)が上位信号として入力される。制御装置21からは、例えば、車両1の挙動情報(車体2の振動情報、台車3A,3Bの振動情報)が上位の制御装置に出力される。制御装置21は、例えば、1台の車体2に1個配置されている。
【0036】
制御装置21は、例えば、加速度センサ14A-14D,15A-15Dから得られるセンサ信号(加速度)と通信回線31を介して得られる信号(車両情報)とに基づいて内部で演算を行い、ダンパ9A-9H,12A-12Dに指令信号(駆動電流)を出力する。制御装置21は、第1ダンパ9A-9Hおよび第2ダンパ12A-12Dの減衰力を制御する減衰力制御手段としての減衰力制御部を備えている。減衰力制御部は、車体2の振動を低減し乗り心地を向上すべく、例えば、サンプリング時間毎に加速度センサ14A-14D,15A-15Dからの検出信号、通信回線31からの上位信号等を読み込みつつ、所定の制御則に従ってそれぞれのダンパ9A-9H,12A-12Dで発生すべき減衰力に対応する駆動電流を演算する。
【0037】
例えば、減衰力制御部は、台車側加速度センサ14A-14Dの検出信号に基づいて、第1ダンパ9A-9Hで発生すべき減衰力に対応する駆動電流を演算する。また、例えば、減衰力制御部は、車体側加速度センサ15A-15Dの検出信号に基づいて、第2ダンパ12A-12Dで発生すべき減衰力に対応する駆動電流を演算する。この上で、減衰力制御部は、駆動電流をダンパ9A-9H,12A-12Dの制御バルブ10A-10H,13A-13D(ソレノイド)に個別に出力し、ダンパ9A-9H,12A-12D毎の発生力(減衰力)を可変に制御する。ダンパ9A-9H,12A-12Dの制御則としては、例えば、スカイフック制御則、LQG制御則またはH∞制御則等を用いることができる。
【0038】
ところで、鉄道車両用の制御サスペンションシステムとして、鉄道車両の車軸―台車間の1次ばね(軸ばね8,8)と並列に減衰力可変ダンパ(第1ダンパ9A-9H)を設置する軸セミアクティブシステムと、鉄道車両の車体―台車間の2次ばね(空気ばね11A-11D)と並列に減衰力可変ダンパ(第2ダンパ12A-12D)を設置する上下セミアクティブシステムがある。各システムには、上下振動を検出するための加速度センサ(加速度センサ14A-14D,15A-15D)が台車の前後と車体の前後とに設置されている。このシステムを同時に使用する場合を考える。この場合に、例えば、軸セミアクティブシステムの加速度センサ(例えば、台車の加速度センサ)が故障したときに、軸セミアクティブシステムの制御を停止すると、乗り心地が低下する可能性がある。また、例えば、上下セミアクティブシステムの加速度センサ(例えば、車体の加速度センサ)が故障したときに、上下セミアクティブシステムの制御を停止すると、乗り心地が低下する可能性がある。
【0039】
そこで、実施形態では、加速度センサが故障しても、制御を停止せずに乗り心地を持続できるように、次の構成を採用している。即ち、実施形態では、軸セミアクティブシステムを構成する第1ダンパ9A-9H(第1減衰力可変ダンパ)、および、上下セミアクティブシステムを構成する第2ダンパ12A-12D(第2減衰力可変ダンパ)を、同一の制御装置21(コントローラ)で協調制御するシステムとしている。この場合に、制御装置21は、「第1ダンパ9A-9Hの制御に使用する台車側加速度センサ14A-14D(第1加速度センサ)の加速度情報」と「第2ダンパ12A-12Dの制御で使用する車体側加速度センサ15A-15D(第2加速度センサ)の加速度情報」との差分(差分値)を、メモリ21Aに記憶(記録、保存)する。差分(差分値)は、車両1の走行区間と対応させて連続して記憶する。これにより、メモリ21Aに差分(差分値)を蓄積する。
【0040】
そして、制御装置21は、台車側加速度センサ14A-14Dと車体側加速度センサ15A-15Dとのうちのいずれかの加速度センサが故障した場合に、「メモリ21Aに記憶(蓄積)した差分値」と「故障してない加速度センサの検出値」とに基づいて、故障した加速度センサの検出値を推定(算出)し、この推定(算出)された値を「故障した加速度センサ」の出力値として補完(補間)する。これにより、実施形態では、加速度センサが故障しても、制御が停止することを抑制でき、乗り心地を維持することができる。以下、これらの点について、詳しく説明する。
【0041】
図1ないし図3に示すように、実施形態では、第1ダンパ9A-9Hと第2ダンパ12A-12Dの協調制御を行う仕様とすることにより、コントローラとなる制御装置21の共有化を図っている。即ち、実施形態では、1つの制御装置21に「台車側加速度センサ14A-14Dの検出信号(加速度信号)」と「車体側加速度センサ15A-15Dの検出信号(加速度信号)」とが入力される構成(システム)としている。4つの台車側加速度センサ14A-14Dは、第1ダンパ9A-9Hの制御用センサに対応する。4つの車体側加速度センサ15A-15Dは、第2ダンパ12A-12Dの制御用センサに対応する。
【0042】
そして、4つの車体側加速度センサ15A-15Dのうち前側のセンサとなる第1車体側加速度センサ15Aまたは後側のセンサとなる第2車体側加速度センサ15Bが故障した場合は、代わりとして、4つの台車側加速度センサ14A-14Dのうち、前側のセンサとなる第1台車側加速度センサ14Aまたは後側のセンサとなる第4台車側加速度センサ14Dを用いて制御を継続する。例えば、第1車体側加速度センサ15Aが故障した場合は、第1台車側加速度センサ14Aを用いて制御を継続する。第2車体側加速度センサ15Bが故障した場合は、第4台車側加速度センサ14Dを用いて制御を継続する。
【0043】
ここで、第1ダンパ9A-9Hは、「第1減衰力可変ダンパ9A-9H」とする。第1台車側加速度センサ14Aまたは第4台車側加速度センサ14Dは、第1減衰力可変ダンパ9A-9H用の加速度センサ、即ち、「第1加速度センサ14A,14D」とする。また、第2ダンパ12A-12Dは、「第2減衰力可変ダンパ12A-12D」とする。第1車体側加速度センサ15Aまたは第2車体側加速度センサ15Bは、第2減衰力可変ダンパ12A-12D用の加速度センサ、即ち、「第2加速度センサ15A,15B」とする。図4は、第1加速度センサ14A,14Dおよび第2加速度センサ15A,15Bが正常なときの制御装置21の加速度情報の処理を示すブロック図である。図5は、第2加速度センサ15A,15Bの異常(故障)が検出されたときの制御装置21の加速度情報の処理を示すブロック図である。
【0044】
図4に示すように、制御装置21は、ローパスフィルタ部22と、FFT位相差確認部23と、信号比較部24と、データ蓄積部25と、出力部26と、を備えている。ローパスフィルタ部22には、第1加速度センサ14A,14Dから加速度情報(第1加速度情報)が入力される。第1加速度情報は、第1加速度センサ14A,14Dから制御装置21に入力される加速度信号(第1加速度信号)に対応する。ローパスフィルタ部22は、入力された第1加速度信号をローパスフィルタ処理し、高周波成分を除去する。例えば、第1加速度信号に対して、7~9Hzの周波数帯をカットオフ周波数として3Hz以下の周波数成分を通過させるローパスフィルタ処理をする。これにより、第1加速度信号から第1減衰力可変ダンパ9A-9Hの制御帯の信号をカットし、第2減衰力可変ダンパ12A-12Dの制御帯付近の信号を抽出する。ローパスフィルタ部22は、「ローパスフィルタ処理した第1加速度信号」をFFT位相差確認部23および信号比較部24に出力する。
【0045】
FFT位相差確認部23には、ローパスフィルタ部22から「ローパスフィルタ処理した第1加速度信号(第1加速度情報)」が入力される。また、FFT位相差確認部23には、第2加速度センサ15A,15Bから加速度情報(第2加速度情報)が入力される。第2加速度情報は、第2加速度センサ15A,15Bから制御装置21に入力される加速度信号(第2加速度信号)に対応する。FFT位相差確認部23では、「ローパスフィルタ処理した第1加速度信号(第1加速度情報)」をFFT処理する。また、FFT位相差確認部23では、第2加速度信号(第2加速度情報)をFFT処理する。そして、FFT位相差確認部23では、FFT処理した両者の結果から各周波数のピーク値の位相差Δμsを確認する。例えば、FFT位相差確認部23では、「第1台車側加速度センサ14Aのローパスフィルタ処理後の加速度情報(第1加速度情報)」と「第1車体側加速度センサ15Aの加速度情報(第2加速度情報)」とのFFT処理後の位相差Δμs、および、「第4台車側加速度センサ14Dのローパスフィルタ処理後の加速度情報(第1加速度情報)」と「第2車体側加速度センサ15Bの加速度情報(第2加速度情報)」とのFFT処理後の位相差Δμs、を確認(算出)する。FFT位相差確認部23は、確認(算出)した位相差Δμs、即ち、「ローパスフィルタ処理後の第1加速度情報のFFT処理結果」と「第2加速度情報のFFT処理結果」とから得られる両者の各周波数のピーク値の位相差Δμsを、信号比較部24に出力する。
【0046】
信号比較部24には、第2加速度センサ15A,15Bから「第2加速度情報」が入力される。また、信号比較部24には、ローパスフィルタ部22から「ローパスフィルタ処理後の第1加速度情報」が入力される。さらに、信号比較部24には、FFT位相差確認部23から「位相差Δμs」が入力される。信号比較部24は、第2加速度情報を出力部26に出力する。また、信号比較部24は、「ローパスフィルタ処理後の第1加速度情報」と「第2加速度情報」とから、これらの波高値Δ比率を算出する。例えば、信号比較部24は、「第1台車側加速度センサ14Aのローパスフィルタ処理後の加速度情報(第1加速度情報)」と「第1車体側加速度センサ15Aの加速度情報(第2加速度情報)」との波高値Δ比率、および、「第4台車側加速度センサ14Dのローパスフィルタ処理後の加速度情報(第1加速度情報)」と「第2車体側加速度センサ15Bの加速度情報(第2加速度情報)」との波高値Δ比率、を算出する。
【0047】
そして、信号比較部24は、位相差Δμsと波高値Δ比率とを所定間隔で移動平均させ平滑化させる。即ち、信号比較部24は、第1台車側加速度センサ14Aと第1車体側加速度センサ15Aとに関する位相差Δμsと波高値Δ比率とを移動平均させる。これと共に、信号比較部24は、第4台車側加速度センサ14Dと第2車体側加速度センサ15Bとに関する位相差Δμsと波高値Δ比率とを移動平均させる。信号比較部24は、「位相差Δμsと波高値Δ比率とを移動平均させたデータ」をデータ蓄積部25に出力する。
【0048】
データ蓄積部25には、信号比較部24から「位相差Δμsと波高値Δ比率とを移動平均させたデータ」が入力される。データ蓄積部25は、例えばメモリ21Aに対応する。データ蓄積部25は、「位相差Δμsと波高値Δ比率とを移動平均させたデータ」を蓄積(記録、記憶、保存)する。この場合、これらの情報は、車両1の走行区間と対応させて蓄積させる。走行区間は、例えば、通信回線31を介して上位の制御装置から取得することができる。このように、データ蓄積部25には、車両1の走行区間に応じた第1加速度センサ14A,14Dと第2加速度センサ15A,15Bの加速度情報の差分値(位相差Δμs、波高値Δ比率)が蓄積される。この場合、データ蓄積部25には、第1台車側加速度センサ14Aの加速度情報と第1車体側加速度センサ15Aの加速度情報との差分値(位相差Δμs、波高値Δ比率)と、第4台車側加速度センサ14Dの加速度情報と第2車体側加速度センサ15Bとの差分値(位相差Δμs、波高値Δ比率)とが蓄積される。
【0049】
出力部26には、信号比較部24から第2加速度情報が入力される。出力部26は、信号比較部24から入力された第2加速度情報を出力する。即ち、第2加速度センサ15A,15Bが正常の場合、出力部26は、正常な第2加速度センサ15A,15Bの第2加速度情報を出力する。制御装置21は、正常な第2加速度センサ15A,15Bの第2加速度情報を用いて第2減衰力可変ダンパ12A-12Dを制御する。
【0050】
次に、第2加速度センサ15A,15Bの異常(故障)が検出されたときの制御装置21の加速度情報の処理について、図5を参照しつつ説明する。図5では、第2加速度センサ15A,15Bの異常(故障)によって機能しなくなった部分に「×」を付している。制御装置21は、第2加速度センサ15A,15Bの異常を検出する異常検出手段(異常検出部)を有している。異常検出手段(異常検出部)は、例えば、第2加速度センサ15A,15Bからの信号が通常の出力範囲から外れたか否かを判定することにより、第2加速度センサ15A,15Bの異常を検出する。制御装置21は、第2加速度センサ15A,15Bからの信号が通常の出力範囲から外れたことにより、第2加速度センサ15A,15Bの異常を検出すると、「第1加速度センサ14A,14Dの第1加速度情報」と「メモリ21A(データ蓄積部25)に蓄積された情報(差分値)」とから、「第2加速度センサ15A,15Bの第2加速度情報」を推定する。
【0051】
即ち、メモリ21A(データ蓄積部25)には、第1加速度センサ14A,14Dの第1加速度情報から第2加速度情報を推定する情報(差分値)として、「位相差Δμs」と「波高値Δ比率」とが蓄積(記録、記憶、保存)されている。制御装置21は、第2加速度センサ15A,15Bが故障した場合、「第1加速度センサ14A,14Dの第1加速度情報」と「メモリ21A(データ蓄積部25)に蓄積されている情報(差分値)」とから、そのときの第1加速度情報に応じた第2加速度情報を推定する。図5に示すように、第2加速度センサ15A,15Bが故障した場合、制御装置21は、データ蓄積部25から推定された第2加速度情報(仮想第2加速度情報)を出力部26に出力する。出力部26は、データ蓄積部25から入力された仮想第2加速度情報を出力する。即ち、第2加速度センサ15A,15Bが故障している場合は、出力部26は、仮想第2加速度情報を出力する。制御装置21は、仮想第2加速度情報を用いて第2減衰力可変ダンパ12A-12Dを制御する。
【0052】
図6は、「第2加速度センサ15A,15Bの検出値(第2加速度情報)」と「第1加速度センサ14A,14Dの検出値(第1加速度情報)」と「第1加速度センサ14A,14Dの検出値から推定された第2加速度情報(仮想第2加速度情報)」との関係の一例を示すタイムチャートである。即ち、図6の(A)は、第2加速度センサ15A,15Bの検出値(第2加速度情報)の時間変化の一例を示している。図6の(B)は、図6の(A)と同じ時間の第1加速度センサ14A,14Dの検出値(第1加速度情報)の時間変化の一例を示している。図6の(C)は、図6の(A)および(B)と同じ時間の第1加速度センサ14A,14Dの検出値から推定された第2加速度情報(推定第2加速度検出値、仮想第2加速度情報)の時間変化の一例を示している。図6(C)に示すように、制御装置21は、第2加速度センサ15A,15Bが故障しても、第1加速度センサ14A,14Dの第1加速度情報から第2加速度センサ15A,15Bの第2加速度情報を補完することができる。
【0053】
このように、制御装置21は、図4に示すように、第1減衰力可変ダンパ9A-9H用の第1加速度センサ14A,14Dの加速度情報(第1加速度情報)を、第2減衰力可変ダンパ12A-12D用の第2加速度センサ15A,15Bの加速度情報(第2加速度情報)に換算し、この換算した加速度情報(換算第2加速度情報)を換算データとしてメモリ21A(データ蓄積部25)に蓄積(記録、記憶、保存)する。換算データ(換算第2加速度情報)は、第1加速度センサ14A,14Dと第2加速度センサ15A,15Bの加速度情報の差分値(位相差Δμs、波高値Δ比率)に対応する。制御装置21は、換算データ(換算第2加速度情報)の蓄積を、加速度センサ15A,15B,14A,14Dが正常に動作しているときに、手動ではなく、自動的に行う。換算データ(換算第2加速度情報)の蓄積は、常時行ってもよいし、定期的に行ってもよい。メモリ21A(データ蓄積部25)には、例えば、「車両1の走行区間」と「第1加速度センサ14A,14Dの加速度情報」と「換算データ(換算第2加速度情報)」とを対応させて蓄積させることができる。
【0054】
ここで、加速度情報の換算は、例えば、第1加速度情報の7~9Hz周波数帯をカットオフする3Hzのローパスフィルタ処理を行い、この処理後のデータをさらに正常な第2加速度情報と比較し、PEAK値は比率から、位相差はFFTを用いて時差を算出することにより行う。即ち、制御装置21は、加速度情報の換算の処理として、第1加速度センサ14A,14Dと第2加速度センサ15A,15Bとが正常に動作しているときに、次の(1)~(5)の処理を行い、その結果をメモリ21A(データ蓄積部25)に蓄積(記録、記憶、保存)する。
(1)第1加速度センサ14A,14Dの第1加速度情報をローパスフィルタ処理する。例えば、ローパスフィルタ処理により、7~9Hzの周波数帯を除去して3Hz以下の周波数帯を通過させる。これにより、第1加速度情報から第1減衰力可変ダンパ9A-9Hの制御帯の信号をカットし、第2減衰力可変ダンパ12A-12Dの制御帯付近の信号を抽出する。
(2)ローパスフィルタ処理後の第1加速度情報をFFT処理する。また、第2加速度センサ15A,15Bの第2加速度情報をFFT処理する。そして、各周波数のピーク値の位相差を確認(算出)する。
(3)FFT結果の第1加速度情報と第2加速度情報との位相差Δμsを格納する。
(4)ローパスフィルタ処理後の第1加速度情報と第2加速度情報との波高値Δ比率を格納する。
(5)上記(1)から(4)を所定間隔で移動平均させ平滑化させる。
【0055】
そして、制御装置21は、図5に示すように、第2減衰力可変ダンパ12A-12D用の第2加速度センサ15A,15Bが故障した場合、第1減衰力可変ダンパ9A-9H用の第1加速度センサ14A,14Dの加速度情報(第1加速度情報)とメモリ21A(データ蓄積部25)に蓄積された換算データ(換算第2加速度情報)とから、第2減衰力可変ダンパ12A-12D用の第2加速度センサ15A,15Bの加速度情報(第2加速度情報)を推定する。このとき、制御装置21は、車両1が現在走行している走行区間に対応した換算データ(換算第2加速度情報)を用いて第2加速度センサ15A,15Bの加速度情報(第2加速度情報)を推定する。制御装置21は、推定した加速度情報(仮想第2加速度情報)を用いて、第2減衰力可変ダンパ12A-12Dの制振制御を継続する。即ち、制御装置21は、第2加速度センサ15A,15Bが故障した場合、第1加速度センサ14A,14Dの「第1加速度情報」とメモリ21A(データ蓄積部25)の「換算データ(換算第2加速度情報)」とから推定される加速度情報(仮想第2加速度情報)を用いて、第2減衰力可変ダンパ12A-12Dを制御する。
【0056】
このように、実施形態では、「第2減衰力可変ダンパ12A-12D用の第2加速度センサ15A,15B」が故障したときに、「第1加速度センサ14A,14Dの加速度情報」から「第2加速度センサ15A,15Bの仮想加速度情報」を生成する。このため、第2加速度センサ15A,15Bが故障しても、「第2加速度センサ15A,15Bの仮想加速度情報」を用いて第2減衰力可変ダンパ12A-12Dの制御を継続することができる。これにより、第2減衰力可変ダンパ12A-12Dの制御が停止することを抑制できる。また、実施形態では、車両1の走行区間に応じた第1加速度センサ14A,14Dと第2加速度センサ15A,15Bの加速度情報の差分値(位相差Δμs、波高値Δ比率)をメモリ21A(データ蓄積部25)に蓄積する。このため、特別なチューニングを必要とすることなく、故障した第2加速度センサ15A,15Bの仮想加速度情報(仮想第2加速度情報)を生成することができる。
【0057】
以上のように、実施形態では、鉄道車両としての車両1は、車両1の振動を抑制するための車両用制振装置を備えている。車両用制振装置は、第1減衰力可変ダンパとしての第1ダンパ9A-9Hと、第2減衰力可変ダンパとしての第2ダンパ12A-12Dと、第1加速度センサとしての台車側加速度センサ14A-14Dと、第2加速度センサとしての車体側加速度センサ15A-15Dと、コントローラとしての制御装置21と、を備えている。また、車両用制振装置は、メモリ21A(データ蓄積部25)を備えている。第1ダンパ9A-9Hは、車両1の車軸6A-6Dと台車3A,3B(より具体的には、台車枠4A,4B)との間に設けられている。第2ダンパ12A-12Dは、台車3A,3B(より具体的には、台車枠4A,4B)と車体2との間に設けられている。
【0058】
台車側加速度センサ14A-14Dは、台車3A,3Bに設けられている。台車側加速度センサ14A-14Dは、台車3A,3Bの加速度(例えば、上下加速度)を検出する。車体側加速度センサ15A-15Dは、車体2に設けられている。車体側加速度センサ15A-15Dは、車体2の加速度(例えば、上下加速度)を検出する。メモリ21A(データ蓄積部25)は、台車側加速度センサ14A-14D、車体側加速度センサ15A-15Dの加速度情報を記録する。制御装置21は、台車側加速度センサ14A-14Dと車体側加速度センサ15A-15Dとに接続されている。制御装置21は、台車側加速度センサ14A-14Dと車体側加速度センサ15A-15Dとからの加速度情報に基づいて、第1ダンパ9A-9Hと第2ダンパ12A-12Dとの減衰力を可変する減衰力制御手段(減衰力制御部)を有している。これと共に、制御装置21は、台車側加速度センサ14A-14Dと車体側加速度センサ15A-15Dの異常(故障)を検出する異常検出手段(異常検出部)を有している。
【0059】
異常検出手段(異常検出部)は、例えば、台車側加速度センサ14A-14Dおよび車体側加速度センサ15A-15Dからの信号が通常の出力範囲から外れたか否かを判定することにより構成することができる。即ち、異常検出手段(異常検出部)は、台車側加速度センサ14A-14Dまたは車体側加速度センサ15A-15Dのいずれかの信号が通常の出力範囲から外れたときに、当該加速度センサに異常が発生したと判定する。これにより、異常検出手段(異常検出部)は、台車側加速度センサ14A-14Dおよび車体側加速度センサ15A-15Dの異常を検出する。
【0060】
この上で、制御装置21は、図4および図5に示すように、台車側加速度センサ14A-14Dと車体側加速度センサ15A-15Dの一方の加速度センサ(例えば、第2加速度センサ:第1車体側加速度センサ15Aまたは第2車体側加速度センサ15B)に異常を検出したとき、この一方の加速度センサの加速度情報を補完する。この場合、制御装置21は、他方の加速度センサ(例えば、第1加速度センサ:第1台車側加速度センサ14Aまたは第4台車側加速度センサ14D)からの加速度情報により、一方の加速度センサの加速度情報を補完する。
【0061】
ここで、制御装置21のメモリ21A(データ蓄積部25)は、車両1の走行区間に応じた台車側加速度センサ14A-14Dと車体側加速度センサ15A-15Dとの加速度情報の差分値(例えば、位相差Δμs、波高値Δ比率)を記録する。即ち、メモリ21A(データ蓄積部25)は、台車側加速度センサ14A-14Dおよび車体側加速度センサ15A-15Dが正常なときに、これらの加速度情報の差分値(例えば、位相差Δμs、波高値Δ比率)を記録する。また、制御装置21には、上位の制御装置から通信回線31を介して車両1の車両情報となる走行区間が入力される。メモリ21A(データ蓄積部25)は、台車側加速度センサ14A-14Dと車体側加速度センサ15A-15Dとの加速度情報の差分値(例えば、位相差Δμs、波高値Δ比率)を、車両1の走行区間と対応して記録する。メモリ21A(データ蓄積部25)に記録される加速度情報の差分値(例えば、位相差Δμs、波高値Δ比率)は、台車側加速度センサ14A-14Dと車体側加速度センサ15A-15Dとが正常に動作している状態で、運転士による手動の操作を必要とすることなく、自動的に蓄積(記録、記憶、保存)される。
【0062】
制御装置21は、異常を検出した一方の加速度センサ(例えば、第2加速度センサ:第1車体側加速度センサ15Aまたは第2車体側加速度センサ15B)の加速度情報を、次の(A)と(B)とから求める。
(A)他方の加速度センサ(例えば、第1加速度センサ:第1台車側加速度センサ14Aまたは第4台車側加速度センサ14D)の加速度情報。
(B)メモリ21A(データ蓄積部25)に記録された加速度情報の差分値(例えば、位相差Δμs、波高値Δ比率)。
【0063】
ここで、実施形態では、第1加速度センサとしての台車側加速度センサ14A-14Dは、台車3Aの進行方向前側に配置される前側第1加速度センサとしての第1台車側加速度センサ14Aと、台車3Bの進行方向後側に配置される後側第1加速度センサとしての第4台車側加速度センサ14Dと、を有している。また、第2加速度センサとしての車体側加速度センサ15A-15Dは、車体2の進行方向前側に配置される前側第2加速度センサとしての第1車体側加速度センサ15Aと、車体の進行方向後側に配置される後側第2加速度センサとしての第2車体側加速度センサ15Bと、を有している。そして、メモリ21A(データ蓄積部25)に記録される加速度情報の差分値は、「第1台車側加速度センサ14Aの加速度情報と第1車体側加速度センサ15Aの加速度情報との差分値(例えば、位相差Δμs、波高値Δ比率)」と、「第4台車側加速度センサ14Dの加速度情報と第2車体側加速度センサ15Bの加速度情報との差分値(例えば、位相差Δμs、波高値Δ比率)」と、である。
【0064】
実施形態による車両用制振装置および鉄道車両は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0065】
車両1は、レールRに沿って、例えば図1ないし図3中の左側に向けて走行する。車両1が走行しているときに、車両1(車体2、台車3A,3B)が振動すると、このときの上下方向の振動が各加速度センサ14A-14D,15A-15Dによって検出される。制御装置21は、加速度センサ14A-14D,15A-15Dで検出されたそれぞれの加速度の信号に基づいて、車両1の振動を抑えるために、それぞれのダンパ9A-9H,12A-12Dで発生すべき目標減衰力を演算する。そして、ダンパ9A-9H,12A-12Dは、制御装置21から出力される指令信号(駆動電流)に従って、それぞれの発生減衰力が目標減衰力に沿った特性となるように可変に制御される。
【0066】
ここで、実施形態によれば、制御装置21は、図4および図5に示すように、第2加速度センサ15A,15Bに異常を検出したとき、第1加速度センサ14A,14Dからの加速度情報により、第2加速度センサ15A,15Bの加速度情報を補完する。このため、第2加速度センサ15A,15Bに異常が発生しても、ダンパ9A-9H,12A-12Dの制御を継続できる。
【0067】
実施形態によれば、メモリ21A(データ蓄積部25)には、車両1の走行区間に応じた第1加速度センサ14A,14Dと第2加速度センサ15A,15Bとの加速度情報の差分値(例えば、位相差Δμs、波高値Δ比率)が記録される。この上で、制御装置21は、異常を検出した第2加速度センサ15A,15Bの加速度情報を、「第1加速度センサ14A,14Dの加速度情報」と「車両1の走行区間に応じた第1加速度センサ14A,14Dと第2加速度センサ15A,15Bとの加速度情報の差分値(例えば、位相差Δμs、波高値Δ比率)」とから求める。このため、異常を検出した第2加速度センサ15A,15Bの加速度情報を、「第1加速度センサ14A,14Dの加速度情報」と「メモリ21A(データ蓄積部25)に記録された加速度情報の差分値(例えば、位相差Δμs、波高値Δ比率)」とに基づいて求めることができる。
【0068】
実施形態によれば、メモリ21A(データ蓄積部25)に記録される走行区間に応じた加速度情報の差分値(例えば、位相差Δμs、波高値Δ比率)は、第1加速度センサ14A,14Dと第2加速度センサ15A,15Bとが正常に動作している状態で自動的に蓄積される。このため、異常を検出した第2加速度センサ15A,15Bの加速度情報を、「第1加速度センサ14A,14Dの加速度情報」と「自動的に蓄積される走行区間に応じた加速度情報の差分値(例えば、位相差Δμs、波高値Δ比率)」とに基づいて求めることができる。
【0069】
実施形態によれば、台車側加速度センサ14A-14Dは、第1台車側加速度センサ14Aと第4台車側加速度センサ14Dとを有し、車体側加速度センサ15A-15Dは、第1車体側加速度センサ15Aと第2車体側加速度センサ15Bとを有している。このため、第1車体側加速度センサ15Aまたは第2車体側加速度センサ15Bに異常を検出したとき、第1台車側加速度センサ14Aまたは第4台車側加速度センサ14Dからの加速度情報により、第1車体側加速度センサ15Aまたは第2車体側加速度センサ15Bの加速度情報を補完できる。また、図示は省略するが、これとは逆に、第1台車側加速度センサ14Aまたは第4台車側加速度センサ14Dに異常を検出したとき、第1車体側加速度センサ15Aまたは第2車体側加速度センサ15Bからの加速度情報により、第1台車側加速度センサ14Aまたは第4台車側加速度センサ14Dの加速度情報を補完できる。
【0070】
実施形態によれば、メモリ21A(データ蓄積部25)に記録される加速度情報の差分値(例えば、位相差Δμs、波高値Δ比率)は、「第1台車側加速度センサ14Aの加速度情報と第1車体側加速度センサ15Aの加速度情報との差分値(例えば、位相差Δμs、波高値Δ比率)」、および、「第4台車側加速度センサ14Dの加速度情報と第2車体側加速度センサ15Bとの差分値(例えば、位相差Δμs、波高値Δ比率)」である。このため、メモリ21A(データ蓄積部25)に記録される加速度情報の差分値(例えば、位相差Δμs、波高値Δ比率)を用いて、異常を検出した第1車体側加速度センサ15A、第2車体側加速度センサ15B、第1台車側加速度センサ14Aまたは第4台車側加速度センサ14Dの加速度情報を補完できる。
【0071】
なお、実施形態では、制御装置21は、第2加速度センサ15A,15Bの異常を検出する異常検出手段(異常検出部)を備える構成とした場合を例に挙げて説明した。即ち、実施形態では、制御装置21は、第2加速度センサ15A,15Bの異常を検出したときに、第1加速度センサ14A,14Dの加速度情報とメモリ21A(データ蓄積部25)に蓄積(記録、記憶、保存)された差分値(例えば、位相差Δμs、波高値Δ比率)とにより第2加速度センサ15A,15Bの加速度情報を補完する。しかし、これに限らず、例えば、制御装置は、第1加速度センサの異常を検出する異常検出手段(異常検出部)を備える構成としてもよい。即ち、制御装置は、第1加速度センサの異常を検出したときに、第2加速度センサの加速度情報とメモリに蓄積(記録、記憶、保存)された差分値とにより第1加速度センサの加速度情報を補完してもよい。
【0072】
実施形態では、第2減衰力可変ダンパである第2ダンパ12A-12Dを、車体2と台車3A,3Bとの間に上下方向に延びて配置した場合、即ち、第2ダンパ12A-12Dにより車体2と台車3A,3Bとの間で上下方向の振動を抑制する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、第2減衰力可変ダンパは、車体と台車との間に左右方向に延びて配置し、車体と台車との間で左右方向の振動を抑制するように構成してもよい。
【0073】
実施形態では、減衰力制御手段(減衰力制御部)と異常検出手段(異常検出部)とを1つの制御装置21に備える構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、減衰力制御手段(減衰力制御部)と異常検出手段(異常検出部)とをそれぞれ別々の制御装置に備える構成としてもよい。さらに、制御装置は、減衰力可変ダンパを制御するコントローラと加速度情報を記録するメモリとの両方を備える構成としてもよいし、コントローラに対応する制御装置とは別にメモリに対応する記憶装置を備える構成としてもよい。
【0074】
実施形態では、異常検出手段(異常検出部)は、加速度センサ14A-14D,15A-15Dからの信号が通常の出力範囲から外れたか否かを判定することにより、加速度センサ14A-14D,15A-15Dの異常を検出する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、異常検出手段による異常の検出は、センサ値が通常の出力範囲から外れたか否かの判定の他、例えば、第1加速度センサのセンサ値と第2加速度センサのセンサ値とに整合性があるか否かの判定等、センサの異常を検出する各種の方法(異常判定方法、異常検出方法)を用いることができる。
【0075】
実施形態では、第1減衰力可変ダンパである第1ダンパ9A-9Hおよび第2減衰力可変ダンパである第2ダンパ12A-12Dを、減衰力特性を連続的(無段的)に変化させることが可能な減衰力調整式油圧緩衝器により構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、減衰力可変ダンパは、2段階(例えば、ONとOFF)または3段階、さらには、それ以上(4段階以上)で断続的(多段的)に減衰力特性を変化させることが可能な減衰力調整式油圧緩衝器により構成してもよい。さらに、減衰力可変ダンパは、油圧式に限らず、各種の減衰力調整式ダンパを用いることができる。また、減衰力可変ダンパは、セミアクティブ制御が可能なダンパに限らず、フルアクティブ制御が可能なダンパとしてもよい。
【0076】
以上説明した実施形態によれば、コントローラは、第1加速度センサまたは第2加速度センサの一方の加速度センサに異常を検出したとき、他方の加速度センサからの加速度情報により、一方の加速度センサの加速度情報を補完する。このため、第1加速度センサまたは第2加速度センサの一方の加速度センサに異常が発生しても、第1減衰力可変ダンパの制御と第2減衰力可変ダンパの制御とを継続できる。
【0077】
実施形態によれば、メモリには、車両の走行区間に応じた第1加速度センサと第2加速度センサとの加速度情報の差分値が記録される。この上で、コントローラは、異常を検出した一方の加速度センサの加速度情報を、「他方の加速度センサの加速度情報」と「車両の走行区間に応じた第1加速度センサと第2加速度センサとの加速度情報の差分値」とから求める。このため、異常を検出した一方の加速度センサの加速度情報を、「他方の加速度センサの加速度情報」と「メモリに記録された加速度情報の差分値」とに基づいて求めることができる。
【0078】
実施形態によれば、メモリに記録される走行区間に応じた加速度情報の差分値は、第1加速度センサと第2加速度センサとが正常に動作している状態で自動的に蓄積される。このため、異常を検出した一方の加速度センサの加速度情報を、「他方の加速度センサの加速度情報」と「自動的に蓄積される走行区間に応じた加速度情報の差分値」とに基づいて求めることができる。
【0079】
実施形態によれば、第1加速度センサは、前側第1加速度センサと後側第1加速度センサとを有し、第2加速度センサは、前側第2加速度センサと後側第2加速度センサとを有している。このため、前側第1加速度センサまたは後側第1加速度センサに異常を検出したとき、前側第2加速度センサまたは後側第2加速度センサからの加速度情報により、前側第1加速度センサまたは後側第1加速度センサの加速度情報を補完できる。また、前側第2加速度センサまたは後側第2加速度センサに異常を検出したとき、前側第1加速度センサまたは後側第1加速度センサからの加速度情報により、前側第2加速度センサまたは後側第2加速度センサの加速度情報を補完できる。
【0080】
実施形態によれば、メモリに記録される加速度情報の差分値は、前側第1加速度センサの加速度情報と前側第2加速度センサの加速度情報との差分値と、後側第1加速度センサの加速度情報と後側第2加速度センサの加速度情報との差分値と、である。このため、メモリに記録される加速度情報の差分値を用いて、異常を検出した前側第1加速度センサ、前側第2加速度センサ、後側第1加速度センサ、または、後側第2加速度センサの加速度情報を補完できる。
【符号の説明】
【0081】
1 車両(鉄道車両)
2 車体
3A,3B 台車
5A-5H 車輪
6A-6D 車軸
9A-9H 第1ダンパ(第1減衰力可変ダンパ)
12A-12D 第2ダンパ(第2減衰力可変ダンパ)
14A-14D 台車側加速度センサ(第1加速度センサ)
14A 第1台車側加速度センサ(前側第1加速度センサ)
14D 第4台車側加速度センサ(後側第1加速度センサ)
15A-15D 車体側加速度センサ(第2加速度センサ)
15A 第1車体側加速度センサ(前側第2加速度センサ)
15B 第2車体側加速度センサ(後側第2加速度センサ)
21 制御装置(コントローラ)
21A メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6