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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064153
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】繊維製品用液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20240507BHJP
   C11D 3/386 20060101ALI20240507BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20240507BHJP
   C11D 1/83 20060101ALI20240507BHJP
   C11D 3/26 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D3/386
C11D3/20
C11D1/83
C11D3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172531
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】伏谷 将典
(72)【発明者】
【氏名】鴻渡 千亜季
(72)【発明者】
【氏名】杉本 沙織
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英明
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB03
4H003AB19
4H003AB31
4H003AC08
4H003AC09
4H003AC12
4H003BA12
4H003DA01
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA21
4H003EB04
4H003EB07
4H003EB08
4H003EB14
4H003EB22
4H003EC01
4H003EC02
4H003EC03
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA10
4H003FA12
4H003FA16
4H003FA26
(57)【要約】
【課題】酵素を含み、少ない使用量で高い洗浄力を発揮できるとともに、酵素安定性、高温での色調安定性、及び低温安定性が良好な繊維製品用液体洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】(A)ノニオン界面活性剤、(B)非石鹸系アニオン界面活性剤、(C)下記式1(式中、R、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はメトキシ基である。)で表される化合物、(D)酵素、及び(E)水、を含有し、(E)成分の含有量が40質量%以下であり、(B)成分の含有量に対する、(A)成分の含有量の質量比を表す(A)/(B)が1以上である、繊維製品用液体洗浄剤組成物。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ノニオン界面活性剤、(B)非石鹸系アニオン界面活性剤、(C)下記式1で表される化合物、(D)酵素、及び(E)水、を含有し、
前記(E)成分の含有量が40質量%以下であり、
前記(B)成分の含有量に対する、前記(A)成分の含有量の質量比を表す(A)/(B)が1以上である、繊維製品用液体洗浄剤組成物。
【化1】
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はメトキシ基である。)
【請求項2】
さらに(F)モノエタノールアミンを含む、請求項1に記載の繊維製品用液体洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品用液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維製品用の液体洗浄剤では、環境負荷に対する意識が高まっている。例えば、液体洗浄剤を収容する容器を小型化することで、物流におけるエネルギー削減やゴミの減量を図っている。容器の小型化に伴い、洗浄力が高いことに加えて、洗濯1回当たりの使用量が少ない液体洗浄剤が求められている。こうした要求に対して、水分量を少なくして界面活性剤の濃度を高めた濃縮型の液体洗浄剤が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-229387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
濃縮型の液体洗浄剤は、少ない使用量で高い洗浄力を実現するために酵素が使用されることがある。
しかしながら、一般的に酵素は、液体洗浄剤中の水分量が少なくなると失活しやすいという問題がある。
【0005】
また近年は、環境対応及び意匠性等の点から、液体洗浄剤の容器として透明プラスチック容器が採用されることがあるため、色調が変化し難いことも重要である。特に、液体洗浄剤が高温状態に置かれた場合に色調変化が生じることがあり、かかる色調変化を抑制できることが求められる。
さらに濃縮型の液体洗浄剤は、冬場の低温環境(例えば5℃)でゲル化や固化が起き易いという問題もある。
【0006】
本発明は、酵素を含み、少ない使用量で高い洗浄力を発揮できるとともに、酵素安定性、高温での色調安定性、及び低温安定性が良好な繊維製品用液体洗浄剤組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
[1](A)ノニオン界面活性剤、(B)非石鹸系アニオン界面活性剤、(C)下記式1で表される化合物、(D)酵素、及び(E)水、を含有し、
前記(E)成分の含有量が40質量%以下であり、
前記(B)成分の含有量に対する、前記(A)成分の含有量の質量比を表す(A)/(B)が1以上である、繊維製品用液体洗浄剤組成物。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はメトキシ基である。)
[2]さらに(F)モノエタノールアミンを含む、[1]に記載の繊維製品用液体洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酵素を含み、少ない使用量で高い洗浄力を発揮でき、酵素安定性が良好であり、高温での色調変化が小さく、低温安定性も良好な繊維製品用液体洗浄剤組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の繊維製品用液体洗浄剤組成物(以下、単に液体洗浄剤ともいう)は、後述する(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び(E)成分を含有する組成物である。さらに(F)成分を含有することが好ましい。
以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
<(A)成分>
(A)成分は、ノニオン界面活性剤である。
(A)成分は1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0013】
ノニオン界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤、アルキルフェノール、炭素数8~22の脂肪酸又は炭素数8~22のアミン等のアルキレンオキサイド付加体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、脂肪酸アルカノールアミン、脂肪酸アルカノールアミド、多価アルコール脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキサイド付加体、多価アルコール脂肪酸エーテル、アルキル(又はアルケニル)アミンオキサイド、硬化ヒマシ油のアルキレンオキサイド付加体、糖脂肪酸エステル、N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミド、アルキルグリコシドなどが挙げられる。
【0014】
ノニオン界面活性剤が、ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤を含むことが好ましい。
ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤としては、下記一般式(a1)で表される化合物(以下、「化合物(a1)」ともいう。)、下記一般式(a2)で表される化合物(以下、「化合物(a2)」ともいう。)、下記一般式(a3)で表される化合物(以下、「化合物(a3)」ともいう。)が挙げられる。
【0015】
[化合物(a1)]
化合物(a1)は、直鎖の炭化水素基を有するポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤である。
11-O-[(EO)/(A11O)]-(EO)-R12 ・・・(a1)
(一般式(a1)中、R11は炭素数8~22の直鎖の炭化水素基である。R12は水素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基である。EOはオキシエチレン基である。sはEO平均繰り返し数を示す3~25の数である。A11OはPO(オキシプロピレン基)及びBO(オキシブチレン基)の少なくとも一方を表す。tはA11Oの平均繰り返し数を示す0~6の数である。uはEOの平均繰り返し数を表す0~20の数である。)
【0016】
一般式(a1)中、R11の炭化水素基の炭素数は、8~22であり、10~18が好ましく、12~18がより好ましい。R11の炭化水素基は直鎖である。また、R11の炭化水素基は不飽和結合を有していてもよいし、有していなくてもよい。
-O-に結合するR11の炭素原子は、第一級炭素原子でも第二級炭素原子でもよい。
【0017】
12がアルキル基の場合、炭素数は1~6であり、1~3が好ましい。
12がアルケニル基の場合、炭素数は2~6であり、2~3が好ましい。
12は水素原子が特に好ましい。
【0018】
sは3~25であり、酵素安定性の向上効果に優れる点で、5~25が好ましく、7~20がより好ましく、7~18がさらに好ましく、7~15が特に好ましい。
tは0~6であり、0~3が好ましい。
uは0~20であり、0~15が好ましく、0~10がより好ましい。
酵素安定性の向上効果に優れる点で、s+uは3~30が好ましく、5~25がより好ましく、5~20がさらに好ましく、7~20が特に好ましく、7~15が最も好ましい。
【0019】
tが0でない場合、つまり化合物(a1)が、EOとPO、EOとBO、又はEOとPOとBOを有する場合、[(EO)s/(A11O)t]においてEOとPO、EOとBO、又はEOとPOとBOの分布(配列順)に特に限定はなく、これらはブロック状に配列していてもよく、ランダム状に配列していてもよい。また、EOが「R11-O-」に結合してもよいし、PO又はBOが「R11-O-」に結合してもよい。
tが0でない場合、化合物(a1)は、EOとPO、又はEOとBOを有することが好ましい。
【0020】
[化合物(a2)]
化合物(a2)は、分岐鎖の炭化水素基を有するポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤である。
13-O-[(EO)/(A12O)]-(EO)-R14 ・・・(a2)
(一般式(a2)中、R13は炭素数8~22の分岐鎖の炭化水素基である。R14は水素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基である。EOはオキシエチレン基である。vはEO平均繰り返し数を示す3~25の数である。A12OはPO(オキシプロピレン基)及びBO(オキシブチレン基)の少なくとも一方を表す。wはA12Oの平均繰り返し数を示す0~6の数である。xはEOの平均繰り返し数を表す0~20の数である。)
【0021】
一般式(a2)中、R13の炭化水素基の炭素数は、8~22であり、10~18が好ましく、12~18がより好ましい。R13の炭化水素基は分岐鎖である。また、R13の炭化水素基は不飽和結合を有していてもよいし、有していなくてもよい。
-O-に結合するR13の炭素原子は、第一級炭素原子でも第二級炭素原子でもよい。
【0022】
14がアルキル基の場合、炭素数は1~6であり、1~3が好ましい。
14がアルケニル基の場合、炭素数は2~6であり、2~3が好ましい。
14は水素原子が特に好ましい。
【0023】
vは3~25であり、酵素安定性の向上効果に優れる点で、5~18が好ましく、7~15がより好ましく、7~12がさらに好ましい。
wは0~6であり、0~3が好ましい。
xは0~20であり、0~15が好ましく、0~10がより好ましい。
酵素安定性の向上効果に優れる点で、v+xは3~30が好ましく、5~25がより好ましく、5~20がさらに好ましく、7~15が特に好ましく、7~12が最も好ましい。
【0024】
wが0でない場合、つまり化合物(a2)が、EOとPO、EOとBO、又はEOとPOとBOを有する場合、[(EO)/(A12O)]においてEOとPO、EOとBO、又はEOとPOとBOの分布(配列順)に特に限定はなく、これらはブロック状に配列していてもよく、ランダム状に配列していてもよい。また、EOが「R13-O-」に結合してもよいし、PO又はBOが「R13-O-」に結合してもよい。
wが0でない場合、化合物(a2)は、EOとPO、又はEOとBOを有することが好ましい。
【0025】
化合物(a2)の市販品としては、例えば、三菱化学社製のダイヤドール(登録商標)(C13、Cの次の数字は、アルコールの炭素数を示す。以下同様。)、Shell社製のNeodol(登録商標)(C12とC13との混合物)、Sasol社製のSafol(登録商標)23(C12とC13との混合物)、EXXAL(登録商標)13(C13)等のアルコールに対して、3~10モル相当のエチレンオキシドを付加したもの;
ブテンを3量化して得られる炭素数12のアルケンをオキソ法に供して得られるC13のアルコールに対して、3又は5モル相当、もしくは7モル相当のエチレンオキシドを付加したもの(Lutensol(登録商標) TO3、Lutensol TO5、Lutensol TO7、BASF社製);
ブテンを3量化して得られる炭素数12のアルケンをオキソ法に供して得られるC13のアルコールに対して、12モル相当又は15モル相当のエチレンオキシドを付加したもの(Lutensol(登録商標) TO12、Lutensol TO15等、BASF社製);
ペンタノールをガーベット反応に供して得られるC10のアルコールに対して、9モル相当のエチレンオキシドを付加したもの(Lutensol XP90、BASF社製);
ペンタノールをガーベット反応に供して得られるC10のアルコールに対して、7モル相当のエチレンオキシドを付加したもの(Lutensol XL70、BASF社製);
ペンタノールをガーベット反応に供して得られるC10のアルコールに対して、6モル相当のエチレンオキシドを付加したもの(Lutensol XA60、BASF社製)などが挙げられる。
これらの中で、Sasol社製の商品名Safol23(分岐率:50質量%)(石炭のガス化から得られるオレフィンをオキソ法によりアルコールを得て、更に水素化したもの)や、シェルケミカルズ社製の商品名ネオドール23(分岐率:20質量%)(n-オレフィンから改良オキソ法により生成し、精留したもの)のように、一般式(a2)中でR13の炭化水素基が分岐鎖である化合物と、一般式(a1)中でR11の炭化水素基が直鎖である化合物の「混合物」の場合は、分岐鎖を有するものを化合物(a2)とし、一方、直鎖を有するものを化合物(a1)と区別して定義する。なお、「分岐率」とは、全高級アルコールに対する、分岐鎖をもつ高級アルコールの割合(質量%)を示す。
【0026】
[化合物(a3)]
化合物(a3)は、-COO-又は-CONH-を有するポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤である。
15-X-[(EO)/(A13O)]-(EO)-R16 ・・・(a3)
(一般式(a3)中、R15は炭素数7~21の炭化水素基である。-X-は、-COO-又は-CONH-である。R16は水素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基である。EOはオキシエチレン基である。pはEO平均繰り返し数を示す3~25の数である。A13はPO(オキシプロピレン基)及びBO(オキシブチレン基)の少なくとも一方を表す。qはA13Oの平均繰り返し数を示す0~6の数である。rはEOの平均繰り返し数を表す0~20の数である。)
【0027】
一般式(a3)中、R15の炭化水素基の炭素数は、7~21であり、9~19が好ましく、11~19がより好ましい。R15の炭化水素基は直鎖であってもよいし、分岐鎖であってもよい。また、R15の炭化水素基は不飽和結合を有していてもよいし、有していなくてもよい。
-X-に結合するR15の炭素原子は、第一級炭素原子でも第二級炭素原子でもよい。
【0028】
16がアルキル基の場合、炭素数は1~6であり、1~3が好ましい。
16がアルケニル基の場合、炭素数は2~6であり、2~3が好ましい。
16はアルキル基が特に好ましい。
【0029】
pは3~25であり、酵素安定性の向上効果に優れる点で、5~20が好ましく、10~18がより好ましく、12~18がさらに好ましい。
qは0~6であり、0~3が好ましい。
rは0~20であり、0~15が好ましく、0~10がより好ましい。
酵素安定性の向上効果に優れる点で、p+rは5~30が好ましく、5~25がより好ましく、5~20がさらに好ましく、10~20が特に好ましい。
【0030】
qが0でない場合、つまり化合物(a3)が、EOとPO、EOとBO、又はEOとPOとBOを有する場合、[(EO)/(A13O)]においてEOとPO、EOとBO、又はEOとPOとBOの分布(配列順)に特に限定はなく、これらはブロック状に配列していてもよく、ランダム状に配列していてもよい。また、EOが「R15-X-」に結合してもよいし、PO又はBOが「R15-X-」に結合してもよい。
qが0でない場合、化合物(a3)は、EOとPO、又はEOとBOを有することが好ましい。
【0031】
(A)成分は、低温安定性に優れる観点から、化合物(a1)及び化合物(a3)の一方又は両方と、化合物(a2)とを含むことが好ましく、化合物(a1)と、化合物(a2)とを含むことがより好ましい。
【0032】
<(B)成分>
(B)成分は、非石鹸系アニオン界面活性剤である。「非石鹸系アニオン界面活性剤」とは、高級脂肪酸又はその塩(いわゆる石鹸)を除くアニオン界面活性剤である。
(B)成分は1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0033】
(B)成分としては、例えば直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩(LAS)、α-オレフィンスルホン酸又はその塩(AOS)、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル硫酸エステル又はその塩(AS)、ポリオキシアルキレンアルキル(アルケニル)エーテル硫酸エステル又はその塩(AES)、アルキル基を有するアルカンスルホン酸又はその塩、α-スルホ脂肪酸エステル又はその塩、内部オレフィンスルホン酸又はその塩(IOS)、ヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(HAS)、アルキルエーテルカルボン酸又はその塩、ポリオキシアルキレンエーテルカルボン酸又はその塩、アルキルアミドエーテルカルボン酸又はその塩、アルケニルアミドエーテルカルボン酸又はその塩、アシルアミノカルボン酸又はその塩等のカルボン酸型アニオン界面活性剤;アルキルリン酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルリン酸エステル又はその塩、グリセリン脂肪酸エステルモノリン酸エステル又はその塩等のリン酸エステル型アニオン界面活性剤などが挙げられる。
アニオン界面活性剤の塩の形態としては、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩等)、アルカノールアミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等)などが挙げられる。
【0034】
アニオン界面活性剤としては、LAS、AOS、AS、AESが好ましく、なかでも、洗浄力がより高まる観点から、LAS、AESがより好ましい。液体洗浄剤は少なくともAESを含むことが好ましく、LASとAESの両方を含むことがより好ましい。
【0035】
ポリオキシアルキレンアルキル(アルケニル)エーテル硫酸エステル又はその塩(AES)は、下記一般式(b1)で表される。
17-O-[(EO)/(PO)]-SO ・・・(b1)
(一般式(b1)中、R17は、炭素数8~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は炭素数8~20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基である。EOはオキシエチレン基である。POはオキシプロピレン基である。mはEOの平均繰り返し数を表す0.1以上の数である。nはPOの平均繰り返し数を表す0~6の数である。[(EO)/(PO)]は、EOとPOの配列順に限定がないことを示し、Mは対カチオンである。)
【0036】
AESとしては、炭素数10~20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有し、平均1~5モルのアルキレンオキシドが付加されたものが好ましい。上記アルキル基又はアルケニル基の炭素数としては、10~20が好ましく、12~14がより好ましい。特に、炭素数10~20の直鎖のアルキル基が好ましく、炭素数12~14の直鎖のアルキル基がより好ましい。具体的には、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。
【0037】
mは0.1~5が好ましく、0.1~3がより好ましく、0.5~2がさらに好ましく、0.5~1.5が特に好ましい。
nは0~6であり、0~3が好ましく、0がより好ましい。
m+nは0超が好ましく、1~5がより好ましい。
【0038】
nが0でない場合、つまりAESが、EOとPOを有する場合、[(EO)/(PO)]においてEOとPOの分布(配列順)に特に限定はなく、これらはブロック状に配列していてもよく、ランダム状に配列していてもよい。また、EOが「R17-O-」に結合してもよいし、POが「R17-O-」に結合してもよい。
EOとPOとをブロック状に配列させる方法としては、例えば、エチレンオキシドを導入した後にプロピレンオキシドを導入する方法、プロピレンオキシドを導入した後にエチレンオキシドを導入する方法、エチレンオキシドを導入した後にプロピレンオキシドを導入し、さらに、エチレンオキシドを導入する方法等が挙げられる。
なお、上記式(b1)におけるm=0、n=0の化合物は、式(b1)で表される化合物の総質量に対して35~55質量%含有することが好ましい。
【0039】
<(C)成分>
(C)成分は、下記式1で表される化合物であり、フェニルボロン酸、又はフェニルボロン酸の誘導体である。式1中のR、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はメトキシ基である。
(C)成分は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0040】
【化2】
【0041】
(C)成分としては、フェニルボロン酸、2-メチルフェニルボロン酸、3-メチルフェニルボロン酸、4-メチルフェニルボロン酸、2-エチルフェニルボロン酸、3-エチルフェニルボロン酸、4-エチルフェニルボロン酸、2-プロピルフェニルボロン酸、3-プロピルフェニルボロン酸、4-プロピルフェニルボロン酸、2-イソプロピルフェニルボロン酸、3-イソプロピルフェニルボロン酸、4-イソプロピルフェニルボロン酸、2-ブチルフェニルボロン酸、3-ブチルフェニルボロン酸、4-ブチルフェニルボロン酸、2-ペンチルフェニルボロン酸、3-ペンチルフェニルボロン酸、4-ペンチルフェニルボロン酸、2-ヘキシルフェニルボロン酸、3-ヘキシルフェニルボロン酸、4-ヘキシルフェニルボロン酸、1,2-ジメチルフェニルボロン酸、1,3-ジメチルフェニルボロン酸、2,3-ジメチルフェニルボロン酸、2-メトキシフェニルボロン酸、3-メトキシフェニルボロン酸、4-メトキシフェニルボロン酸等が挙げられる。
これらの中で、フェニルボロン酸、2-メチルフェニルボロン酸、3-メチルフェニルボロン酸、4-メチルフェニルボロン酸、2-エチルフェニルボロン酸、3-エチルフェニルボロン酸、4-エチルフェニルボロン酸、2-メトキシフェニルボロン酸、3-メトキシフェニルボロン酸、4-メトキシフェニルボロン酸が好ましい。
さらに、2-メチルフェニルボロン酸、3-メチルフェニルボロン酸、4-メチルフェニルボロン酸、2-メトキシフェニルボロン酸、3-メトキシフェニルボロン酸、4-メトキシフェニルボロン酸がより好ましく、2-メチルフェニルボロン酸、3-メチルフェニルボロン酸、4-メチルフェニルボロン酸が最も好ましい。
【0042】
<(D)成分>
(D)成分は酵素である。
酵素としては、例えばプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼなどが挙げられる。酵素は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
これらの酵素は、一般に、酵素を含有する製剤(酵素製剤)として市販されている。液体洗浄剤を調製する際、通常、酵素製剤の形態で配合される。
【0043】
プロテアーゼとしては、セリンプロテアーゼのように、分子内にセリン、ヒスチジン、及びアスパラギン酸を有するプロテアーゼが好ましい。
プロテアーゼを含有する製剤(プロテアーゼ製剤)としては、例えばノボザイムズ社から入手できる商品名Savinase16L、Savinase Ultra 16L、Savinase Ultra 16XL、Everlase 16L TypeEX、Everlase Ultra 16L、Esperase 8L、Alcalase 2.5L、Alcalase Ultra 2.5L、Liquanase 2.5L、Liquanase Ultra 2.5L、Liquanase Ultra 2.5XL、Coronase 48L、Coronase Evity 48L、Progress Uno101L;ジェネンコア社から入手できる商品名Purafect L、Purafect OX、Properase Lなどが挙げられる。
【0044】
アミラーゼを含有する製剤(アミラーゼ製剤)としては、例えばノボザイムズ社から入手できる商品名Termamyl 300L、Termamyl Ultra 300L、Duramyl 300L、Stainzyme 12L、Stainzyme Plus 12L、Amplify Prime;ジェネンコア社から入手できる商品名Maxamyl;天野エンザイム社から入手できる商品名プルラナーゼアマノ;生化学工業社から入手できる商品名DB-250などが挙げられる。
【0045】
リパーゼを含有する製剤(リパーゼ製剤)としては、例えばノボザイムズ社から入手できる商品名Lipex 100L、Lipolase 100Lなどが挙げられる。
【0046】
セルラーゼを含有する製剤(セルラーゼ製剤)としては、例えばノボザイムズ社から入手できる商品名ケアザイム4500L、ケアザイムプレミアム4500L、エンドラーゼ5000L、セルクリーン4500Tなどが挙げられる。
【0047】
マンナナーゼを含有する製剤(マンナナーゼ製剤)としては、例えばノボザイムズ社から入手できる商品名Mannaway 4L、Mannaway 200Lなどが挙げられる。
【0048】
ペクチナーゼを含有する製剤(ペクチナーゼ製剤)としては、例えばノボザイムズ社から入手できるPectawash、Pectaway、XPectなどが挙げられる。
これらの酵素製剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上が組み合わされて用いてもよい。
【0049】
<(E)成分>
(E)成分は、水である。
水としては特に制限されず、精製水、蒸留水、イオン交換水、水道水などが挙げられる。これらの水は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0050】
<(F)成分>
(F)成分は、モノエタノールアミン(別名:2-アミノエタノール)である。モノエタノールアミンは低温安定性の向上に寄与する。
【0051】
<その他の任意成分>
液体洗浄剤は、上記(A)~(F)成分以外の任意成分として、繊維製品用液体洗浄剤の分野で公知の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。
任意成分としては、例えば、高級脂肪酸又はその塩(いわゆる石鹸)、(A)成分及び(B)成分以外のその他の界面活性剤(高級脂肪酸又はその塩を除く)、(C)成分以外の酵素安定化剤(例えば、乳酸ナトリウムなど)、ハイドロトロープ剤(例えば、芳香族スルホン酸又はその塩など)、キレート剤、洗浄性ビルダー、安定化剤、モノエタノールアミン以外のアルカリ剤(例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン等)、金属イオン捕捉剤、シリコーン等の風合い向上剤、防腐剤、蛍光剤、移染防止剤、パール剤、酸化防止剤、抗菌剤、着色剤として汎用の色素又は顔料、乳濁化剤、香料、pH調整剤などが挙げられる。
【0052】
(A)成分、(B)成分以外のその他の界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、半極性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン以外のアルカノールアミン、アンモニア等が挙げられる。
【0053】
<含有量>
(A)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して、20~60質量%が好ましく、30~50質量%がより好ましく、35~45質量%が最も好ましい。
上記範囲の下限値以上であると酵素安定性に優れ、上限値以下であると低温安定性に優れる。
【0054】
化合物(a1)の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して、1~55質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、20~45質量%が最も好ましい。上記範囲の下限値以上であると酵素安定性に優れ、上限値以下であると低温安定性に優れる。
化合物(a2)の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して、1~40質量%が好ましく、10~35質量%がより好ましく、15~30質量%が最も好ましい。上記範囲の下限値以上であると酵素安定性に優れ、上限値以下であると低温安定性に優れる。
化合物(a3)の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して、1~55質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、20~45質量%が最も好ましい。上記範囲の下限値以上であると酵素安定性に優れ、上限値以下であると低温安定性に優れる。
【0055】
液体洗浄剤において、化合物(a2)の含有量に対する、化合物(a1)と化合物(a3)の合計の含有量の質量比を表す、(a1+a3)/(a2)は、0.1以上であることが好ましく、0.1~10がより好ましく、1~10がさらに好ましく、1~5が最も好ましい。上記範囲の下限値以上であると酵素安定性に優れる。上限値以下であると皮脂洗浄力に優れ、少ない使用量で高い洗浄力を発揮できる。
【0056】
(B)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して、2~31質量%が好ましく、4~26質量%がより好ましく、6~21質量%が最も好ましい。
上記範囲の下限値以上であると酵素安定性に優れ、上限値以下であると高温での色調安定性に優れる。
【0057】
LASの含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して、1~30質量%が好ましく、5~25質量%がより好ましく、10~20質量%が最も好ましい。上記範囲の下限値以上であると酵素安定性に優れ、上限値以下であると高温での色調安定性に優れる。
AESの含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して、1~30質量%が好ましく、5~25質量%がより好ましく、10~20質量%が最も好ましい。上記範囲の下限値以上であると酵素安定性に優れ、上限値以下であると低温安定性に優れる。
【0058】
液体洗浄剤において、AESの含有量に対するLASの含有量質量比を表す、LAS/AESは0.1以上であることが好ましく、0.1~20がより好ましく、0.5~20がさらに好ましく、0.5~10が最も好ましい。上記範囲の下限値以上であると低温安定性に優れる。上限値以下であると高温での色調安定性に優れる。
【0059】
液体洗浄剤において、(B)成分の含有量に対する、(A)成分の含有量の質量比を表す(A)/(B)は1以上であることが好ましく、1~40がより好ましく、2.5~25がさらに好ましく、3.5~15が最も好ましい。上記範囲の下限値以上であると酵素安定性に優れる。上限値以下であると低温安定性に優れる。
【0060】
(A)成分、(B)成分及びその他の界面活性剤の総含有量(以下、「界面活性剤総量」ともいう)は、液体洗浄剤の総質量に対して、40質量%以上であることが好ましく、40~70質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることが最も好ましい。上記範囲の下限値以上であると皮脂洗浄力に優れ、少ない使用量で高い洗浄力を発揮できる。上限値以下であると高温での色調安定性に優れる。
【0061】
(C)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して0.01~1質量%であることが好ましく、0.05~0.7質量%がより好ましく、0.1~0.5質量%が最も好ましい。上記範囲の下限値以上であると酵素安定性の向上効果に優れ、上限値以下であると低温安定性が低下し難い。
【0062】
液体洗浄剤において、(C)成分の含有量に対する、(A)成分の含有量の質量比を表す(A)/(C)は、70以上であることが好ましく、70~120がより好ましく、80~100が最も好ましい。上記範囲の下限値以上であると酵素安定性に優れる。上限値以下であると高温での色調安定性に優れる。
【0063】
液体洗浄剤において、(C)成分の含有量に対する、(B)成分の含有量の質量比を表す(B)/(C)は、10以上であることが好ましく、10~100がより好ましく、15~50がさらに好ましく、15~40が最も好ましい。上記範囲の下限値以上であると酵素安定性に優れる。上限値以下であると高温での色調安定性に優れる。
【0064】
液体洗浄剤において、(C)成分の含有量に対する、(E)成分の含有量の質量比を表す(E)/(C)は20~70であることが好ましく、25~60がより好ましく、40~60が最も好ましい。上記範囲の下限値以上であると、液体洗浄剤の色調変化が生じにくく、上限値以下であると洗浄性能が低下し難い。
【0065】
液体洗浄剤の色調変化が生じにくい点で、液体洗浄剤は(C)成分以外のフェニルボロン酸誘導体(例えば、4-ホルミルフェニルボロン酸など)を含まないか、又は含む場合は少量であることが好ましい。
例えば、液体洗浄剤の総質量に対して、(C)成分以外のフェニルボロン酸誘導体の含有量は、0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。ゼロでもよい。
【0066】
(D)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して0.1~7質量%であることが好ましく、0.3~6質量%がより好ましく、0.5~5質量%が最も好ましい。上記範囲の下限値以上であると洗浄力に優れ、上限値以下であると低温安定性に優れる。
【0067】
(E)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して40質量%以下であり、33質量%以下が好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。また、(E)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。すなわち、(E)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して10~40質量%が好ましく、15~33質量%がより好ましく、20~30質量%がより好ましい。
(E)成分の含有量が上記上限値以下であれば、液体洗浄剤の容器を小型化しやすい。
【0068】
液体洗浄剤に(F)成分を配合する場合、(F)成分の含有量は、低温安定性の向上効果に優れる点で、液体洗浄剤の総質量に対して10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。一方、液体洗浄剤の色調変化を生じ難い点で、(F)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。すなわち、F)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して10~40質量%が好ましく、15~35質量%がより好ましく、20~30質量%がより好ましい。
【0069】
<物性>
液体洗浄剤の25℃におけるpHは、6~9が好ましく、6.5~8.5がより好ましく、7~8がさらに好ましい。
液体洗浄剤のpHは、必要に応じて、pH調整剤を添加することにより調整できる。
pHは、測定対象を25℃とし、pHメーター(製品名:HM-30G、東亜ディーケーケー社製)により測定される値である。
【0070】
<製造方法>
本発明の液体洗浄剤は、従来公知の液体洗浄剤の製造方法に準じて製造することができる。例えば、水の一部に、pH調整剤を除く各成分を加えて混合した後、必要に応じてpH調整剤を添加してpHを調整した後、水の残部を加えて全体量を100質量%とすることにより製造できる。得られた液体洗浄剤は、ボトル容器、スクイズ容器、パウチ容器等の容器に収容して容器入り液体洗浄剤製品とすることが好ましい。
【0071】
容器入り液体洗浄剤製品の容器の一態様として、プラスチック製の容器本体とプラスチック製のキャップを備えるプラスチック製容器を用いることができる。容器本体は口部を有し、キャップは口部に着脱自在に装着されるように構成されている。
容器本体の材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの透明性または半透明性を有する合成樹脂が好ましい。容器本体の成形法は、例えば2軸延伸ブロー成形法が挙げられる。
キャップは、液体洗浄剤を計量できる計量筒部を有する形状のキャップ(以下、計量キャップともいう)が好ましい。キャップの材質はポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの透明性または半透明性を有する合成樹脂が好ましい。キャップの成形法は、射出成形法が挙げられる。
計量キャップの形状は、公知の形状とすることができる。例えば特開2020-200095号公報に記載されているような、軸線方向に延びる計量筒部と、前記計量筒部の前記軸線方向の先端に前記軸線を中心とする周方向の一部に設けられ、前記軸線方向に突出する舌状部とを有する形状とすることができる。
【0072】
<使用方法>
液体洗浄剤の使用方法としては、例えば液体洗浄剤を洗濯機の液体洗浄剤の投入口に入れてから洗濯機を稼働させる方法、液体洗浄剤を洗濯時に被洗物と一緒に水に投入する方法、液体洗浄剤を予め水に溶解して調製される洗浄液に被洗物を浸漬する方法、液体洗浄剤を被洗物に直接塗布して、例えば3分~24時間放置し、その後、通常の洗濯を行う方法等が挙げられる。
【0073】
また、近年実用化された洗剤自動投入機能を備えた洗濯機を使用することも好ましい。
洗剤自動投入機能は、洗剤を収納したタンクから、投入用配管を経由して、自動的に洗濯槽に洗剤を投入する機能である。投入用配管の途中には、シリンジポンプ等の計量手段が設けられており、洗濯物の量等に応じて設定された一定量を、タンクから洗濯槽へと移送できるようになっている。
【0074】
洗剤自動投入機能を利用すれば、計量の手間が省けるだけでなく、計量時に液体洗浄剤が手に付着したり、こぼれて洗濯機や周囲を汚してしまったりすることを回避できる。
また、本発明の液体洗浄剤は濃縮型であるため、洗濯1回当たりの使用量が、10mL前後と非常に少ない場合がある。このような少量の液体洗浄剤は、キャップ等で正確に計量することが難しく、液量が不足したり過剰となったりしやすい。洗剤自動投入機能を利用すれば、少量の液体洗浄剤でも正確に計量することができるので、充分な洗浄力を発揮しやすく、使いすぎによる無駄も回避できるので好ましい。
【0075】
また、自動で所定の量の液体を吐出できる自動ディスペンサーを使用することも好ましい。自動ディスペンサーを使用する場合も、少量の液体洗浄剤でも正確に計量することができるため、充分な洗浄力を発揮しやすく、使いすぎによる無駄も回避できるので好ましい。
自動ディスペンサーの中には、赤外線センサなどを利用して、スイッチ等に触れなくとも自動的に吐出するものも市販されている。このような自動ディスペンサーを使用すれば、片手に保持した容器を差し出すだけで液体洗浄剤を計量することができ、使用者の負担軽減効果が大きい。
【0076】
また、自動ディスペンサーを使用する場合、軟質容器に吐出された液体洗浄剤を受け、その軟質容器をそのまま洗濯機に投入することも好ましい。これにより、吐出された液体洗浄剤の全量を、確実に洗浄液中に溶解させることができる。
そのまま洗濯機に投入可能な軟質容器の材質としては、例えば、シリコ-ン樹脂、ポリ塩化ビニル、エラストマー、軟質ポリエステル、軟質ポリプロピレン、ポリウレタン等が挙げられる。
【0077】
被洗物の例としては、例えば衣類(衣料)、布巾、タオル類、シーツ、カーテン等の繊維製品などが挙げられる。繊維製品の素材は特に限定されず、綿、絹、羊毛等の天然繊維、ポリエステル、ポリアミド等の化学繊維などのいずれでもよい。
液体洗浄剤を水に溶解して使用する場合、例えば5~5000倍(体積基準)に希釈することが好ましい。
衣類量あたりの水量である浴比(洗濯時の洗浄液の質量/衣類の質量)は、ドラム型洗濯機であれば5以上、縦型洗濯機であれば10以上が好ましい。
洗浄処理において使用される液体洗浄剤の量は、被洗物の合計質量(布量)/液体洗浄剤の合計質量の比が、10~500が好ましく、10~300がさらに好ましく、10~100がさらに好ましい。
液体洗浄剤は、繊維製品用の洗浄剤として好適である。
【0078】
本発明の液体洗浄剤は、酵素を配合した濃縮型の液体洗浄剤であり、少ない使用量で高い洗浄力を発揮できる。また、界面活性剤濃度が高く、高度に濃縮化されているにもかかわらず、酵素安定性、低温安定性、及び高温での色調安定性に優れる。
特に、アミラーゼは失活しやすいため、アミラーゼを含む濃縮型の液体洗浄剤に本発明を適用すると効果が大きい。
また、後述の実施例に示されるように、酵素を配合した濃縮型の液体洗浄剤に4-ホルミルフェニルボロン酸を配合すると、酵素安定性は得られるものの、液体洗浄剤が高温状態に置かれたときに黄変を生じやすい。これに対して、本発明の液体洗浄剤は、特定の分子構造を有する(C)成分を配合するとともに、(A)/(B)を特定のバランスとすることにより、酵素安定性と、高温での色調安定性と、低温安定性を同時に達成できる。
【0079】
洗剤自動投入機能を備えた洗濯機は、衣類乾燥時に、洗剤を収容するタンク内の温度も上昇しやすい。またシリンジポンプ等でタンク内の洗剤を吸引して移送するために、洗剤をタンクは完全に密閉されていない。後述の実施例に示されるように、洗剤自動投入機能を備えた洗濯機のタンク内で液体洗浄剤を保存すると、酵素残存率が低下しやすい傾向がある。
本発明の液体洗浄剤は、高温での色調安定性、及び酵素安定性に優れるので、洗剤自動投入機能を備えた洗濯機のタンク内に収容して用いられる、洗剤自動投入用液体洗浄剤として好適である。加えて、少ない使用量で高い洗浄力を発揮できる濃縮型の液体洗浄剤であるため、洗濯機のタンクの容量で洗濯できる回数が多い点でも洗剤自動投入用液体洗浄剤として好適である。
【0080】
本発明の液体洗浄剤の好ましい態様として、例えば以下の態様Iが挙げられる。
(態様I)
液体洗浄剤が(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、及び(F)成分を含み、
(A)成分が、EOを有するポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤(A1)を1種以上含み、前記(A1)成分の1モル当たりのEOの平均付加モル数が7~15モルであり、
(B)成分が、LAS及びAESの一方又は両方を含み、
(C)成分が、2-メチルフェニルボロン酸、3-メチルフェニルボロン酸、及び4-メチルフェニルボロン酸から選ばれる1種以上である(C1)を含み、
(D)成分がプロテアーゼ及びアミラーゼの一方又は両方である(D1)を含み、
(E)成分の含有量が液体洗浄剤の総質量に対して30質量%以下であり、
(F)成分の含有量が液体洗浄剤の総質量に対して1質量%以上であり、
(A)/(B)が1以上である態様。
なお本発明において、液体洗浄剤の各成分の含有量の合計は100質量%を超えない。
【0081】
態様Iにおいて、(A)成分の総質量に対する、(A1)成分の合計の割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。100質量%でもよい。
態様Iにおいて、(B)成分の総質量に対する、LAS及びAESの合計の割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。100質量%でもよい。
態様Iにおいて、(C)成分の総質量に対する、(C1)成分の合計の割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。100質量%でもよい。
態様Iにおいて、(D)成分の総質量に対する、(D1)成分の合計の割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。100質量%でもよい。
態様Iにおいて、液体洗浄剤は、洗剤自動投入機能を備えた洗濯機のタンク内に収容して用いられる、洗剤自動投入用液体洗浄剤が好ましい。
【実施例0082】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
本実施例において使用した原料は、下記の<使用原料>に示す通りである。
【0083】
<使用原料>
[(A)成分]
・直鎖AE(20EO):第一級アルコール(質量比で炭素数12アルコール/炭素数14アルコール=7/3)1モルに、20モル相当のエチレンオキシドを付加したもの。式(a1)において、R11が炭素数12のアルキル基(C12)及び炭素数14のアルキル基(C14)(質量比でC12:C14=70:30)、R12が水素原子、-O-に結合するR11の炭素原子が第一級炭素原子、sが20、tが0、uが0である化合物。
・直鎖AE(15EO):前記「直鎖AE(20EO)」において、前記第一級アルコール1モルに付加するエチレンオキシドを15モル相当に変更し、前記式(a1)におけるsを15に変更したもの。
・直鎖AE(12EO):前記「直鎖AE(20EO)」において、前記第一級アルコール1モルに付加するエチレンオキシドを12モル相当に変更し、前記式(a1)におけるsを12に変更したもの。
・直鎖AE(9EO):前記「直鎖AE(20EO)」において、前記第一級アルコール1モルに付加するエチレンオキシドを9モル相当に変更し、前記式(a1)におけるsを9に変更したもの。
・直鎖AE(7EO):前記「直鎖AE(20EO)」において、前記第一級アルコール1モルに付加するエチレンオキシドを7モル相当に変更し、前記式(a1)におけるsを7に変更したもの。
・直鎖AE(5EO):前記「直鎖AE(20EO)」において、前記第一級アルコール1モルに付加するエチレンオキシドを5モル相当に変更し、前記式(a1)におけるsを5に変更したもの。
【0084】
・MEE(15EO):ポリオキシエチレン脂肪酸メチルエステル。式(a3)において、R15が炭素数11~13のアルキル基、R16がメチル基、-X-が-COO-、Xが結合するR15の炭素原子が第二級炭素原子、pが15、qが0、rが0である化合物。
・1級分岐AE(7EO):ポリオキシエチレンアルキルエーテル(炭素数13のアルコールに7モル相当のエチレンオキシドを付加したもの。一般式(a2)中、R13が炭素数13の分岐鎖状のアルキル基であり、酸素原子に結合するR13の炭素原子は第一級炭素原子であり、R14が水素原子であり、vが7であり、wが0であり、xが0である化合物(a2)。下記合成方法により合成されたもの。
・1級分岐AE(10EO):ペンタノールをガーベット反応に供して得られるC10のアルコールに対して、10モル相当のエチレンオキシドを付加したもの。
・2級分岐(7EO):第二級アルコール1モルに、7モル相当のエチレンオキシドを付加したもの。式(a2)において、R13が炭素数12~14のアルキル基、R14が水素原子、-O-に結合するR13の炭素原子が第二級炭素原子、vが7、wが0、xが0である化合物。
・2級分岐(12EO):第二級アルコール1モルに、12モル相当のエチレンオキシドを付加したもの。式(a2)において、R13が炭素数12~14のアルキル基、R14が水素原子、-O-に結合するR13の炭素原子が第二級炭素原子、vが7、wが0、xが0である化合物。
【0085】
[(B)成分]
・LAS:炭素数10~14のアルキル基を有する直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ライオン社製、商品名「ライポン(登録商標)LH-200」。
・AES:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムとポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウムとの混合物、EOの平均付加モル数1)。式(b1)におけるR17が炭素数12及び14の直鎖状のアルキル基、mが1、nが0、Mがナトリウムであり、AES全体に対するmが0かつnが0である化合物の割合が43質量%である。下記調製例1の方法で合成したもの。
[(C)成分]
・C-1:4-メチルフェニルボロン酸:
・C-2:4-メトキシフェニルボロン酸:
・比較成分1:4-ホルミルフェニルボロン酸
[(D)成分]
・プロテアーゼ1:商品名「ProgressUno」、ノボザイムズジャパン社製。
・アミラーゼ1:商品名「Amplify Prime100L」、ノボザイムズジャパン社製。
・マンナナーゼ1:商品名「Mannaway200L」、ノボザイムズジャパン社製。
・セルラーゼ1:商品名「Carezyme Premium4500L」、ノボザイムズジャパン社製。
・ペクチナーゼ1:商品名「Xpect1000L」、ノボザイムズジャパン社製。
[(E)成分]:
・水:商品名「精製水」、関東化学社製。
[(F)成分]
・モノエタノールアミン:商品名「モノエタノールアミン」、日本触媒社製。
【0086】
[任意成分]
・ポリエチレングリコール:純正化学社製、商品名「PEG#1000」、質量平均分子量1000。
・ソルフィット:3-メトキシ-3-メチルブタノール(クラレ社製、商品名「ソルフィット」)。
・椰子脂肪酸:石鹸(日油社製、商品名「椰子脂肪酸」)。
・乳酸ナトリウム:酵素安定化剤(武蔵野化学研究所社製、商品名「乳酸ソーダ60E」)。
・パラトルエンスルホン酸:ハイドロトロープ剤(協和発酵キリン社製、商品名「PTS酸」)。
・クエン酸:(一方社油脂工業株式会社製、商品名「液体クエン酸」)。
・ダイクロサン:4,4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル(BASF社製、商品名「TINOSAN HP100」)。
・BIT:1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(クラリアントジャパン社製、商品名「NIPACIDE BIT20」)。
・BHT:酸化防止剤、ジブチルヒドロキシトルエン(住友化学社製、商品名「SUMILZER BHT-R」)。
・香料:特開2002-146399号公報の表11~18に記載の香料組成物A。
・色素:癸巳化成株式会社製、商品名「緑色3号」。
・NaOH:水酸化ナトリウム、pH調整剤(東亞合成社製、商品名「水酸化ナトリウム」)。
【0087】
[調製例1:AESの合成]
容量4Lのオートクレーブ中に、原料アルコールとしてプロクター・アンド・ギャンブル社製の商品名CO1270アルコール(炭素数12のアルコールと炭素数14のアルコールとの質量比75/25の混合物)400gと、反応用触媒として水酸化カリウム触媒0.8gとを仕込み、該オートクレーブ内を窒素で置換した後、攪拌しながら昇温した。
続いて、温度を180℃、圧力を0.3MPa以下に維持しながらエチレンオキシド91gを導入し、反応させることによりアルコールエトキシレートを得た。
ガスクロマトグラフ:Hewlett-Packard社製のGC-5890と、検出器:水素炎イオン化型検出器(FID)と、カラム:Ultra-1(HP社製、L25m×φ0.2mm×T0.11μm)と、を用いて分析した結果、得られたアルコールエトキシレートは、エチレンオキシドの平均付加モル数が1.0であった。また、エチレンオキシドが付加していない化合物(最終的に成分(a-0)となるもの)の量が得られたアルコールエトキシレート全体に対して43質量%であった。
次に、上記で得たアルコールエトキシレート237gを、攪拌装置付の500mLフラスコに採り、窒素で置換した後、液体無水硫酸(サルファン)96gを、反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間攪拌を続け(硫酸化反応)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。次いで、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することによりAESを得た。
【0088】
<保存容器>
液体洗浄剤を保存する容器は、下記容器A又は容器Bを使用した。
容器A:ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を2軸延伸ブロー成形した透明プラスチック製の容器本体(容量500mL、肉厚0.05~1.2mm、肉厚の最大値1.2mm)と、ポリプロピレン(PP)を主成分とする樹脂組成物を射出成形した透明プラスチック製の計量キャップを備える、容器入り液体洗浄剤製品の容器。
容器B:洗剤自動投入機能を備えた洗濯機のタンク。日立社製ドラム式洗濯機(BD-SX110E)に付属の自動投入洗剤用タンク(部品番号BD-SX110CL―002、容量:約1000mL、非密閉容器)を使用した。
【0089】
<実施例1~24、比較例1~7>
表1~6の配合量に従い液体洗浄剤を製造した。任意成分の配合を表7に示す。表7に示す含有量は、液体洗浄剤の総質量に対する百分率(質量%)である。
具体的には、500mLのビーカーに、(A)成分と(B)成分、(E)成分を投入し、マグネットスターラー(MITAMURA KOGYO INC.製)で充分に攪拌し、さらに(C)成分を添加して溶解させた。その後、(F)成分、及び(D)成分を添加し、さらによく攪拌した。
次いで、25℃でのpHが7.7になるように、NaOHを適量添加した後、全体量が100質量%になるように水を加えて、液体洗浄剤を得た。
【0090】
得られた液体洗浄剤について下記評価法により、洗浄力(皮脂洗浄力)、高温での色調安定性、酵素安定性、及び低温安定性を評価した。評価結果を表1~6に併記する。
各安定性の評価では表に示す保存容器A又はBを用いた。保存容器Aには液体洗浄剤を400mL収容して密封し、保存容器Bには液体洗浄剤を400mL収容して蓋を閉じた。
なお、表中の配合量の単位は「質量%」であり、純分換算量を示す。また、配合量の空欄は、その成分が配合されていないこと(配合量0質量%)を意味する。
NaOHの適量とは、液体洗浄剤のpHを7.7とするために必要充分な量であることを示す。
また、水の配合量は、NaOHの量をゼロと見做して計算した配合量であり、実際の水の配合量は、NaOHも含めた全配合成分の合計の配合量(質量%)が100質量%となる量である。
【0091】
<評価方法>
[酵素(アミラーゼ)安定性の評価方法]
アミラーゼは特に失活しやすいため、アミラーゼを含む液体洗浄剤の酵素安定性として、アミラーゼの安定性を評価した。
すなわち、各例の液体洗浄剤を製造後、保存容器に収容し、40℃及び5℃でそれぞれ2週間保存した。40℃で2週間保存した液体洗浄剤(40℃保存品)および5℃で2週間保存した液体洗浄剤(5℃保存品)について、以下に示すアミラーゼ活性の測定を行った。
【0092】
アミラーゼ基質としては、「ファデバスアミラーゼテスト50T」(Magle Life Sciences社製)を用いた。これは基質である青色澱粉ポリマーに、一定量の牛血清アルブミンを含有させた錠剤であり、α-アミラーゼが作用すると加水分解を受けて青色の溶液となるので、その吸光度(620nm)を測定することにより、アミラーゼ活性を求められるものである。
【0093】
(緩衝液の調製)
亜硫酸ナトリウム(純正化学社製、試薬特級等)20.0g、リン酸二水素カリウム(林純薬工業社製、特級等)6.15g、リン酸水素二ナトリウム・12水和物(関東化学社製、特級等)10.86g、塩化カルシウム・2水和物(関東化学社製、鹿1級等)0.015g及びBrij35(30%水溶液、MERCK社製)0.75mLを精秤し、イオン交換水に溶解し、1Lに定容することで緩衝液とした。
各例の40℃保存品と5℃保存品の各々0.1gを、上記緩衝液で希釈した溶液をサンプル溶液とした。
【0094】
サンプル溶液1gに、上記緩衝液5mL及び上記「ファデバスアミラーゼテスト50T」1錠を添加し、ボルテックスミキサーで10秒間攪拌した後、40℃にて5分間静置して酵素反応を進めた。その後、前記溶液に酵素反応停止剤である1mol/L(1N)水酸化ナトリウム溶液(関東化学社製)1mLを添加し、ボルテックスミキサーで10秒間攪拌して反応を停止した。その後、この溶液中に残った未反応基質を濾紙で除去し、ろ液を回収した。
回収したろ液の波長620nmにおける吸光度(吸光度A)を、島津製作所社製紫外可視分光光度計UV-160を用いて測定した。
【0095】
目的成分以外の吸収の影響を除くため、別途、各サンプル溶液1gに、酵素反応停止剤である1mol/L(1N)水酸化ナトリウム溶液を1mL添加し、ボルテックスミキサーで10秒間攪拌した後、上記「ファデバスアミラーゼテスト50T」1錠を添加し、ボルテックスミキサーで10秒間攪拌し、40℃にて15分間静置した。その後、不溶成分を0.45μmフィルターで除去し、ろ液を回収した。その後、前記ろ液の波長620nmの吸光度(吸光度B)を、UV-160を用いて測定した。
吸光度Aと吸光度Bの差が大きいほど、ろ液中に存在する基質の分解物の量が多かったことを意味する。
【0096】
上記のアミラーゼ活性の測定結果から、下式(i)により、アミラーゼ活性残存率(%)を求めた。
アミラーゼ活性残存率=(40℃保存品の吸光度A-40℃保存品の吸光度B)/(5℃保存品の吸光度A-5℃保存品の吸光度B)×100・・・(i)
【0097】
かかるアミラーゼ活性残存率(%)を指標として、下記基準に基づいて酵素安定性を評価し「◎」及び「○」を合格とした。
<評価基準>
◎:酵素残存率80%以上100%以下。
〇:酵素残存率60%以上80%未満。
△:酵素残存率40%以上60%未満。
×:酵素残存率0%以上40%未満。
【0098】
[高温での色調安定性の評価方法]
保存容器A又はBに液体洗浄剤を収容し、50℃の恒温槽内に7日間静置して保存した。
保存の前後での色調変化を評価するために、島津製作所社製紫外可視分光光度計UV-160を用いて波長420nmにおける液体洗浄剤の吸光度を測定した。保存の前後での吸光度の差の絶対値に基づき、下記評価基準で色調変化を評価し「◎」及び「○」を合格とした。
<評価基準>
◎:吸光度の差の絶対値が0.10以下。
〇:吸光度の差の絶対値が0.10を超え0.30以下。
△:吸光度の差の絶対値が0.30を超え0.50以下。
×:吸光度の差の絶対値が0.50を超える。
【0099】
[低温安定性の評価方法]
保存容器A又はBに液体洗浄剤を収容し、5℃の恒温槽内に7日間静置して保存した。
保存後、保存容器内の液の外観を目視で観察し、下記評価基準に従って低温安定性評価し「◎」及び「○」を合格とした。
<評価基準>
◎:液が透明で沈殿物質等が認められず、液の流動性が高い。
〇:液が透明で沈殿物質等が認められず、液の流動性が低い。
△:液に濁りが認められるが、液の流動性がある。
×:液に濁りが認められ、液の流動性がない。
【0100】
[洗浄力の評価方法]
油化協布(未汚れ布)に人工汚垢を含浸して作製した人工汚垢布(一般財団法人洗濯科学協会製)を、5cm×5cmに裁断したものを汚染布とした。
洗浄試験器として、Terg-O-tometer(UNITED STATES TESTING社製)を用いた。
洗浄液として、水(25℃、5゜DH)900mLに対して、液体洗浄剤を濃度が200ppmになるように加え、30秒間撹拌して調製したものを用いた。
洗浄試験器に、洗浄液と、上記の汚染布10枚と、洗浄メリヤス布とを投入し、浴比20倍に合わせて、120rpm、25℃で10分間洗浄した。その後、二槽式洗濯機(三菱電機社製、製品名「CW-C30A1-H1」)に移し、1分間脱水した後、水(25℃、5゜DH)30L中で3分間濯ぎ、風乾した。
未汚れ布及び洗浄前後の汚染布について、それぞれ反射率を色差計(日本電色工業社製、製品名「SE7700型」)で測定し、下記式(i)より洗浄率(%)を算出した。
洗浄率(%)=(洗浄前の汚染布のK/S-洗浄後の汚染布のK/S)/(洗浄前の汚染布のK/S-未汚れ布のK/S)×100 ・・・(i)
(式(i)中、K/S=(1-R/100)/(2R/100)。Rは反射率(%)。)
汚染布10枚について洗浄率(%)を算出してその平均値を求め、洗浄率の平均値(%)を指標として、下記基準に基づいて皮脂洗浄力を評価し「◎」及び「○」を合格とした。
<評価基準>
◎:洗浄率の平均値が80%以上100%以下。
〇:洗浄率の平均値が60%以上80%未満。
△:洗浄率の平均値が40%以上60%未満。
×:洗浄率の平均値が0%以上40%未満。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
【表5】
【0106】
【表6】
【0107】
【表7】
【0108】
表1~6の結果に示されるように、実施例1~24の液体洗浄剤は、少ない使用量で高い洗浄力を発揮できるとともに、酵素安定性、高温での色調安定性及び低温安定性がいずれも良好であった。
【0109】
実施例1と実施例20とは、液体洗浄剤の組成が同じであり保存容器が異なる例である。洗剤自動投入機能を備えた洗濯機のタンク(保存容器B)内で液体洗浄剤を保存した実施例20は、密閉容器である保存容器Aで保存した実施例1に比べて、酵素残存率が低下した。
【0110】
実施例1と比較例1を比べると、(C)成分を含まない比較例1は、高温での色調安定性及び低温安定性は実施例1と同等であったが、酵素安定性が著しく劣った。
比較例2は、界面活性剤の種類及び界面活性剤総量は実施例1と同じであるが、(A)/(B)の質量比が小さい例である。実施例1に比べて、高温での色調安定性及び低温安定性が劣った。
比較例3は、配合成分の種類は実施例1と同じであるが、水の割合が多く、ノニオン界面活性剤の割合が小さいため、洗浄力が劣った。つまり、比較例3は濃縮型でないため、少ない使用量で充分な洗浄力を発揮することはできなかった。
比較例4は、比較例3の(C)成分に代えて、比較成分1である4-ホルミルフェニルボロン酸を配合した例であるが、濃縮型でないため、高温状態に置かれても黄変は生じなかった。
【0111】
実施例1と比較例5を比べると、(C)成分に代えて、比較成分1である4-ホルミルフェニルボロン酸を配合した比較例5は、実施例1と同程度の酵素安定性は得られるものの、液体洗浄剤が高温状態に置かれたときに黄変を生じた。
実施例20と、比較例6、7を比べると、(C)成分を含まない比較例6は、高温での色調安定性及び低温安定性は実施例20と同等であったが、酵素安定性が著しく劣った。また、(C)成分に代えて、比較成分1である4-ホルミルフェニルボロン酸を配合した比較例7は、実施例20と同程度の酵素安定性は得られるものの、液体洗浄剤が高温状態に置かれたときに黄変を生じた。