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特開2024-64158作業機械および作業機械の遠隔操作システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064158
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】作業機械および作業機械の遠隔操作システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240507BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
E02F9/00 Z
E02F9/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172537
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】上田 員弘
(72)【発明者】
【氏名】澤田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】藤原 裕介
(72)【発明者】
【氏名】大谷 真輝
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB07
2D003BA04
(57)【要約】
【課題】本発明は、風切りなどのノイズを抑制しつつ作業機械が発する音を確実に取得し、遠隔操作室にいる操作者が作業機械の状況を適切に把握できる作業機械を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の作業機械40は、下部走行体410と、下部走行体410に対して旋回可能に設けられ、上部構造物を支持し、底板および当該底板を少なくとも1つの区に区画する縦板を有する旋回フレーム421と、旋回フレーム421と上部構造物とによって上下に画定された空間に設けられた少なくとも1つの音響入力装置413と、音響入力装置413に入力された音を含む情報を作業機械40の外部に送信する実機通信機器422と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、前記下部走行体に対して旋回可能に設けられ、上部構造物を支持し、底板および前記底板を少なくとも1つの区に区画する縦板を有する旋回フレームと、前記旋回フレームと前記上部構造物とによって上下に画定された空間に設けられた少なくとも1つの音響入力装置と、前記音響入力装置に入力された音を含む情報を作業機械の外部に送信する実機通信機器と、を備えることを特徴とする
作業機械。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械であって、
前記音響入力装置が前記上部構造物としての運転室の床下部材と前記旋回フレームとによって画定された前記空間に設けられていることを特徴とする
作業機械。
【請求項3】
請求項1または2記載の作業機械であって、
前記旋回フレームの前記底板に開閉可能に構成されている開口部が設けられ、
前記音響入力装置が前記開口部の周囲に設けられていることを特徴とする
作業機械。
【請求項4】
請求項3記載の作業機械であって、
前記開口部を基準として、第1方位に設けられている前記上部構造物としてのエンジンと、第2方位に設けられている前記上部構造物としての油圧機器とを備え、
前記音響入力装置が前記開口部を基準として前記第1方位および前記第2方位のうち少なくとも一方に設けられることを特徴とする
作業機械。
【請求項5】
請求項4記載の作業機械であって、
前記縦板が前記底板を前記開口部および前記音響入力装置が配置されている基準区と、前記エンジンが配置されている第1区と、前記油圧機器が配置されている第2区とに区画し、かつ、前記開口部を基準として前記第1方位および前記第2方位のうち少なくとも一方の方位について、前記基準区を前記第1区および前記第2区のうち少なくとも一方の区を連通させるように設けられていることを特徴とする
作業機械。
【請求項6】
請求項1に記載の作業機械と、音響出力装置を有し前記作業機械を遠隔操作する遠隔操作装置と、を備え、
前記音響入力装置に入力された音を前記音響出力装置に出力することを特徴とする、
作業機械の遠隔操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響入力装置を備えた作業機械および作業機械の遠隔操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔操作室にいる操作者が作業機械の状況を把握できるように、作業機械にマイクを取り付け、集音した音を遠隔操作室のスピーカで再生するものが知られている。例えば、特許文献1には、集音装置(マイク)を上部旋回体の外部(キャブ(運転室)の屋根の上)に設けたショベルが開示されている。このようなショベルを遠隔操作する場合、ショベルの周囲で発生する音を遠隔操作する操作者に伝えることができるので、操作者はショベルの周囲の状況を把握しやすくなる。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、集音マイクをキャブ内に設けたパワーショベルが開示されている。集音マイクがキャブ内に設けられているため、このようなパワーショベルを遠隔操作する操作者は、エンジン音の変化による機械の調子や動作状態を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-155936
【特許文献2】特開平6-17444
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されるような、遠隔操作システムでは、集音装置がキャブの屋根の上に設けられているため、風切り音などのノイズが入りやすくなり、油圧音およびエンジンなどの作業時の音が入りにくくなる。このような遠隔操作システムでは、作業時の音量がノイズの音量に比べて相対的に小さくなるため、該作業機械を遠隔操作する操作者は作業機械の状態の把握が困難になるという問題がある。
【0006】
一方で、特許文献2に開示されるような、遠隔操作システムでは、集音マイクがキャブ内に設置されている。このような遠隔操作システムでは、風切り音などのノイズを抑制できる一方で、油圧音およびエンジン音などのキャブの外側で発生する作業機械の作業音が集音マイクに入りにくくなるという問題がある。
【0007】
以上のような問題に鑑みて、本発明は、風切り音などのノイズを抑制しつつ作業機械から生じる音を確実に取得し、遠隔操作室にいる操作者が作業機械の状況を適切に把握できる作業機械および該作業機械を遠隔操作する作業機械の遠隔操作システムを提供することを目的とする。
【0008】
かかる目的を達成するために本発明の作業機械は、以下の事項を有する。
【0009】
(1)本発明の作業機械は、
下部走行体と、前記下部走行体に対して旋回可能に設けられ、上部構造物を支持し、底板および前記底板を少なくとも1つの区に区画する縦板を有する旋回フレームと、前記旋回フレームと前記上部構造物とによって上下に画定された空間に設けられた少なくとも1つの音響入力装置と、前記音響入力装置に入力された音を含む情報を作業機械の外部に送信する通信機器と、を備えることを特徴とする。
【0010】
かかる構成の作業機械によれば、音響入力装置が旋回フレームと上部構造物とによって上下に画定された空間に設けられている。このため、風が該空間に導入されにくくなるため、該空間に存する音響入力装置に風が直達せず、風切り音などのノイズが入りにくい。また、エンジン音および油圧音など(以下作業音)が旋回フレームと上部構造物とによって上下に画定された空間を伝搬するので、該作業音を確実に音響入力装置が取得できる。したがって、音響入力装置は風切り音などのノイズを抑制しつつ外部空間の音源から発せられる環境音および作業機械から生じる作業音を確実に取得することができる。これにより、音響入力装置に入力した音を聞くユーザは、作業機械および外部空間の状況を適切に把握できる。
【0011】
(2)また、本発明の作業機械によれば、
前記音響入力装置が前記上部構造物としての運転室の床下部材と前記旋回フレームとによって画定された前記空間に設けられていることが好ましい。
【0012】
かかる構成の作業機械によれば、音響入力装置が上部構造物としての運転室の床下部材と旋回フレームとによって画定された空間に設けられている。このため、音響入力装置は、外部空間の音源から発せられる環境音について床下部材や旋回フレームを介して確実に取得できる。したがって、音響入力装置は風切り音を抑制しつつ、環境音を取得できる。
【0013】
(3)また、本発明の作業機械によれば、
前記旋回フレームの前記底板に開閉可能に構成されている開口部が設けられ、
前記音響入力装置が前記開口部の周囲に設けられていることが好ましい。
【0014】
かかる構成の作業機械によれば、音響入力装置が開口部の周囲に設けられている。このため、音響入力装置に不具合が生じていることに起因して、音響入力装置に適切に作業音および環境音のいずれか一つの音響が適切に入力されない場合、開口部を通して、容易に音響入力装置を修理することができる。したがって、作業機械の状況を適切に把握しうる音を適切にユーザに知得させることができる。また、開口部は開閉可能に構成されている。このため、音響入力装置を修理する必要のないときには、開口部を閉状態とすることができ、風が音響入力装置に直達することを防ぐことができる。
【0015】
(4)また、本発明の作業機械によれば、
前記開口部を基準として、第1方位に設けられている前記上部構造物としてのエンジンと、第2方位に設けられている前記上部構造物としての油圧機器とを備え、
前記音響入力装置が前記開口部を基準として前記第1方位および前記第2方位のうち少なくとも一方に設けられることが好ましい。
【0016】
かかる構成の作業機械によれば、音響入力装置が開口部を基準として第1方位および第2方位のうち少なくとも一方に設けられている。このため、音響入力装置は、運転室の第1方位に存在するエンジン及び運転室の第2方位に存在する作業機器を動かすための油圧機器の音を的確に取得することができる。
【0017】
(5)また、本発明の作業機械によれば、
前記縦板が前記底板を前記開口部および前記音響入力装置が配置されている基準区と、前記エンジンが配置されている第1区と、前記油圧機器が配置されている第2区とに区画し、かつ、前記開口部を基準として前記第1方位および/または前記第2方位について、前記基準区を前記第1区および/または前記第2区を連通させるように設けられていることが好ましい。
【0018】
かかる構成の作業機械によれば、縦板が底板を開口部および音響入力装置が配置されている基準区と、エンジンが配置されている第1区と、油圧機器が配置されている第2区とに区画する。このため、音響入力装置は外部空間に対して遮断されるので、音響入力装置は外部の風切り音を拾うことなく、環境音を取得できる。また、開口部を基準として第1方位および/または第2方位について、基準区を第1区および/または第2区を連通させるように設けられている。このため、第1方位に存在するエンジンの音および第2方位に存在する油圧機器の音が確実に連通される。以上のことから、音響入力装置は風切り音などのノイズを抑制しつつ作業機械から生じる作業音を確実に取得することができる。
【0019】
(6)本発明の作業機械の遠隔操作システムは、
前記(1)記載の作業機械と、音響出力装置を有し前記作業機械を遠隔操作する遠隔操作装置と、を備え、
前記音響入力装置に入力された音を前記音響出力装置に出力することを特徴とする。
【0020】
かかる構成の遠隔操作システムによれば、作業機械に設けられる音響入力装置が風切りなどのノイズを抑制しつつ環境音および作業音を確実に取得することができる。このため、作業機械を遠隔操作する操作者は提供される環境音および作業音から、作業機械および外部空間の状況を適切に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態にかかる遠隔操作システムに関する説明図である。
図2図1の遠隔操作装置の構成に関する説明図である。
図3図1の作業機械の構成に関する説明図である。
図4図3の上部旋回体の平面図である。
図5図3の旋回フレームの斜視図である。
図6図3の旋回フレームの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(遠隔操作システムの構成)
図1に示されている本発明の一実施形態としての遠隔操作システムは、遠隔支援装置10と、遠隔操作装置20と、作業機械40と、により構成されている。遠隔支援装置10、遠隔操作装置20および作業機械40は相互にネットワーク通信可能に構成されている。遠隔支援装置10および遠隔操作装置20の相互通信ネットワークと、遠隔支援装置10および作業機械40の相互通信ネットワークと、は同一であってもよく相違していてもよい。ネットワークは、無線ネットワークと有線ネットワークの少なくとも一方で構成される。
【0023】
(遠隔操作支援サーバの構成)
遠隔支援装置10は、記録装置102と、演算支援装置121と、を備えている。記録装置102は、音響データ等を記憶保持する。記録装置102は、遠隔支援装置10とは別個の装置により構成されていてもよい。演算支援装置121は、シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコアにより構成され、メモリなどから必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった所定の演算処理を実行する。作業機械40を構成する実機制御装置400や、遠隔操作装置20遠隔制御装置200により、遠隔支援装置10が構成されてもよい。
【0024】
(遠隔操作装置の構成)
遠隔操作装置20は、遠隔制御装置200と、遠隔入力インターフェース210と、遠隔出力インターフェース220と、遠隔通信機器224と、を備えている。遠隔制御装置200は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。
【0025】
遠隔入力インターフェース210は、遠隔操作機構211を備えている。遠隔出力インターフェース220は、画像出力装置221と、音響出力装置222と、を備えている。
【0026】
遠隔操作機構211には、走行用操作装置と、旋回用操作装置と、ブーム用操作装置と、アーム用操作装置と、バケット用操作装置と、が含まれている。各操作装置は、回動操作を受ける操作レバーを有している。走行用操作装置の操作レバー(走行レバー)は、作業機械40の下部走行体410を動かすために操作される。走行レバーは、走行ペダルを兼ねていてもよい。例えば、走行レバーの基部または下端部に固定されている走行ペダルが設けられていてもよい。旋回用操作装置の操作レバー(旋回レバー)は、作業機械40の旋回機構430を構成する油圧式の旋回モータを動かすために操作される。ブーム用操作装置の操作レバー(ブームレバー)は、作業機械40のブームシリンダ442を動かすために操作される。アーム用操作装置の操作レバー(アームレバー)は作業機械40のアームシリンダ444を動かすために操作される。バケット用操作装置の操作レバー(バケットレバー)は作業機械40のバケットシリンダ446を動かすために操作される。
【0027】
遠隔操作機構211を構成する各操作レバーは、例えば、図2に示されているように、オペレータが着座するためのシートStの周囲に配置されている。シートStは、アームレスト付きのハイバックチェアのような形態であるが、ヘッドレストがないローバックチェアのような形態、または、背もたれがないチェアのような形態など、オペレータが着座できる任意の形態の着座部であってもよい。
【0028】
シートStの前方に左右のクローラに応じた左右一対の走行レバー2110が左右横並びに配置されている。一つの操作レバーが複数の操作レバーを兼ねていてもよい。例えば、図2に示されているシートStの左側フレームの前方に設けられている左側操作レバー2111が、前後方向に操作された場合にアームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合に旋回レバーとして機能してもよい。同様に、図2に示されているシートStの右側フレームの前方に設けられている右側操作レバー2112が、前後方向に操作された場合にブームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合にバケットレバーとして機能してもよい。レバーパターンは、オペレータの操作指示によって任意に変更されてもよい。
【0029】
画像出力装置221は、例えば図2に示されているように、シートStの前方、左斜め前方および右斜め前方のそれぞれに配置された略矩形状の画面を有する中央画像出力装置2210、左側画像出力装置2211および右側画像出力装置2212により構成されている。中央画像出力装置2210、左側画像出力装置2211および右側画像出力装置2212のそれぞれの画面(画像表示領域)の形状およびサイズは同じであってもよく相違していてもよい。
【0030】
図2に示されているように、中央画像出力装置2210の画面および左側画像出力装置2211の画面が傾斜角度θ1(例えば、120°≦θ1≦150°)をなすように、左側画像出力装置2211の右縁が、中央画像出力装置2210の左縁に隣接している。図2に示されているように、中央画像出力装置2210の画面および右側画像出力装置2212の画面が傾斜角度θ2(例えば、120°≦θ2≦150°)をなすように、右側画像出力装置2212の左縁が、中央画像出力装置2210の右縁に隣接している。当該傾斜角度θ1およびθ2は同じであっても相違していてもよい。
【0031】
中央画像出力装置2210、左側画像出力装置2211および右側画像出力装置2212のそれぞれの画面は、鉛直方向に対して平行であってもよく、鉛直方向に対して傾斜していてもよい。中央画像出力装置2210、左側画像出力装置2211および右側画像出力装置2212のうち少なくとも1つの画像出力装置が、複数に分割された画像出力装置により構成されていてもよい。例えば、中央画像出力装置2210が、略矩形状の画面を有する上下に隣接する一対の画像出力装置により構成されていてもよい。
【0032】
画像出力装置221を構成する画像出力装置の個数は任意に変更されてもよい。例えば、画像出力装置221がシートStを前方において囲むように湾曲面状または屈曲面状の1個の画像出力装置により構成されていてもよい。画像出力装置221がシートStを前方において囲むように横方向に連続して配置された4枚以上の平面状の画像出力装置により構成されていてもよい。
【0033】
音響出力装置222は、一または複数のスピーカにより構成され、例えば図2に示されているように、シートStの後方、左アームレスト後部および右アームレスト後部のそれぞれに配置された中央音響出力装置2220、左側音響出力装置2221および右側音響出力装置2222により構成されている。中央音響出力装置2220、左側音響出力装置2221および右側音響出力装置2222のそれぞれの仕様は同じであってもよく相違していてもよい。
【0034】
遠隔通信機器224は、遠隔操作装置20のネットワーク通信を可能とする機器であり、ネットワークを介して作業機械40との通信をする。
【0035】
(作業機械の構成)
作業機械40は、実機制御装置400と、実機入力インターフェース41と、実機通信機器422と、作業機構440と、を備えている。実機制御装置400は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。
【0036】
作業機械40は、例えばクローラショベル(建設機械)であり、図3に示されているように、クローラ式の下部走行体410と、下部走行体410に旋回機構430を介して旋回可能に搭載されている上部旋回体420と、を備えている。図4に示されているように、上部旋回体420の後方部には、駆動源としてのエンジン425が設けられている。上部旋回体420の前方左側部には上部構造物としてのキャブ424(運転室)が設けられている。上部旋回体420の前方中央部には上部構造物としての作業機構440、作業機構440を駆動させる油圧機器429および上部旋回体420を下部走行体410に対して旋回させる旋回機構430が設けられている。上部旋回体420の底面には旋回フレーム421が設けられている。旋回フレーム421は、底板4211および縦板4214によって構成され、キャブ424および作業機構440などの上部構造物を支持している。
【0037】
作業機構としての作業機構440は、上部旋回体420に起伏可能に装着されているブーム441と、ブーム441の先端に回動可能に連結されているアーム443と、アーム443の先端に回動可能に連結されているバケット445と、を備えている。作業機構440には、伸縮可能な油圧シリンダにより構成されているブームシリンダ442、アームシリンダ444およびバケットシリンダ446が装着されている。
【0038】
ブームシリンダ442は、作動油の供給を受けることにより伸縮してブーム441を起伏方向に回動させるように当該ブーム441と上部旋回体420との間に介在する。アームシリンダ444は、作動油の供給を受けることにより伸縮してアーム443をブーム441に対して水平軸回りに回動させるように当該アーム443と当該ブーム441との間に介在する。バケットシリンダ446は、作動油の供給を受けることにより伸縮してバケット445をアーム443に対して水平軸回りに回動させるように当該バケット445と当該アーム443との間に介在する。ブームシリンダ442、アームシリンダ444およびバケットシリンダ446のそれぞれは、油圧機器429に駆動される。
【0039】
図5に示されているように旋回フレーム421を構成する縦板4214は、旋回フレーム421を構成する底板4211を少なくとも1つの区に区画する。縦板4214が底板4211を1つの区に区画する場合、縦板4214は底板4211の外周に設けられ、旋回フレーム421と上部構造物との間の空間と当該空間の外部空間とを区画する。このとき、当該縦板4214は区の境の少なくとも一部にわたり連続的または断続的に延在している。また、縦板4214は底板4211を2以上の区に区画することができる。例えば、上部構造物としてのキャブ424が設けられる区を一方の区として上部構造物としての作業機構440が設けられる区を他方の区として区画することができる。
【0040】
縦板4214は、旋回フレーム421を構成する底板4211に対して固設されている。縦板4214が固設している一端部とは逆の他端部は、上部構造物の床下部材と接している。当該縦板4214の他端部には、上記構造物の床下部材との接触を容易にするためにゴムなどの弾性部材または緩衝材が設けられていてもよい。また、当該縦板4214の他端部は上部構造物の床下部材と完全に接していなくてもよく、外部空間の環境音を取得する観点から、風切り音を抑制する範囲で床下部材との間に隙間を設けてもよい。
【0041】
また、旋回フレーム421の底板4211には、開閉可能に構成されている開口部4213が設けられている。開口部4213は旋回フレーム421上に設けられるセンサまたは配線類などを管理するために使用される。開口部4213の形状は、操作または製造の利便性の観点から矩形にすることが好ましいが、円形および楕円形、多角形などその他の任意の形状が選択されてもよい。開口部4213は、旋回フレーム421の底板4211のうち、キャブ424の鉛直方向下方に設けられることが好ましい。この場合、開口部4213を基準として、エンジン425は第1方位である前方向を12時としたときの略5時方向(図6の紙面上方向を12時としたときの略5時方向)に設けられ、油圧機器429は、第2方位である前方向を12時としたときの略4時方向(図6の紙面上方向を12時としたときの略4時方向)に設けられている。すなわち、開口部4213を基準として右後方にエンジン425が位置し、開口部4213を基準として右側であってエンジン425の前方側に油圧機器429が位置するように、開口部4213が設けられている。
【0042】
図5に示されているように、一の縦板としての縦板4214B(基準区―第1区縦板)は、底板4211を開口部4213が配置されている基準区と、エンジン425が配置されている第1区との境界に沿って断続的または連続的に延在している。すなわち、当該縦板4214Bは基準区と第1区とを区画している。他の縦板としての縦板4214R(基準区―第2区縦板)は、底板4211を開口部4213が配置されている基準区と、油圧機器429が配置されている第2区との境界に沿って断続的または連続的に延在している。すなわち、当該縦板4214Rは基準区と第2区とを区画している。基準区はさらに、縦板4214によって外部空間に対して区画されている。縦板4214によって区画される基準区の形状は、略矩形であることが好ましいが、円形および楕円形、多角形などその他の任意の形状が選択されてもよい。また、基準区を区画する場合において、基準区の周の一部または全部が複数の縦板4214によって区画されてもよい。
【0043】
縦板4214Bおよび縦板4214Rのうち少なくとも一方はそれぞれの区を連通させる連通部(切り欠き部、孔、スリット、間欠部など)が設けられている。連通部4215B(基準区―第1区縦板連通部)は、縦板4214Bに設けられ、基準区と第1区とを連通させている。このため、第1区に設けられている機器(エンジン425など)から発せられる音響は、連通部4215Bを通じて基準区に伝達されやすい。連通部4215R(基準区―第2区縦板連通部)は、縦板4214Rに設けられ、基準区と第2区との間を連通させている。このため、第2区に設けられている機器(油圧機器429など)発せられる作業音は、連通部4215Rを通じて基準区に伝達されやすい。連通部4215Rは開口部4213からみて第1方位に設けられることが好ましいが、縦板4214Rのいずれかの部分に設けることができる。連通部4215Bは開口部4213からみて第2方位に設けられることが好ましいが、縦板4214Bのいずれかの部分に設けることができる。基準区には、後述するように音響入力装置413が設けられ、音響入力装置413は、第1区および第2区のそれぞれから発せられる作業音および外部空間の環境音を風切り音を抑制しつつ、集音する。また、連通部4215Bおよび連通部4215Rのそれぞれに後述する音響入力装置413またはその他基準区に配置される機器などに電源を供給あるいは音響入力装置413またはその他基準区に配置される機器などによって取得(入力)された情報を後述する実機通信機器422に伝達する信号線、電力線またはリード線などが設けられていてもよい。
【0044】
また、図5に示されているように、旋回フレーム421の底板4211には、縦板4214Lおよび縦板4214Fが設けられていてもよい。縦板4214Lは、基準区と旋回フレーム421の左側方の外部空間とを区画する。縦板4214Fは基準区と前方側の外部空間とを区画する。縦板4214Fおよび縦板4214Lは複数の縦板4214によって構成されてもよい。例えば、図5に示されるように、2つの縦板4214Fによって、基準区と基準区の前方側の外部空間とが区画されてもよい。外部空間の環境音は、縦板4214Fおよび縦板4214Lによって、風切り音を抑制しつつ、旋回フレームと上部構造物とによって上下に画定された空間を介して基準区に伝達される。
【0045】
実機入力インターフェース41は、実機操作機構411と、実機撮像装置412と、音響入力装置413と、を備えている。実機操作機構411は、キャブ424の内部に配置されたシートの周囲に遠隔操作機構211と同様に配置された複数の操作レバーを備えている。遠隔操作レバーの操作態様に応じた信号を受信し、当該受信信号に基づいて実機操作レバーを動かす駆動機構またはロボットがキャブ424に設けられている。実機撮像装置412は、例えばキャブ424の内部に設置され、フロントウィンドウおよび左右一対のサイドウィンドウ越しに作業機構440の少なくとも一部を含む環境を撮像する。フロントウィンドウおよびサイドウィンドウのうち一部または全部が省略されていてもよい。音響入力装置413は、例えば、一または複数のマイクロフォンにより構成され、作業機械40が発生させる作業音および作業機械40が作業する環境に発生している環境音の少なくとも一つの音を集音(入力)して電気信号に変換する装置である。
【0046】
図5に示されるように、音響入力装置413は、旋回フレーム421と、キャブ424および作業機構440などの上部構造物と、によって上下に画定された空間に設けられている。このとき、音響入力装置413は、基準区であって、開口部4213の外周の外側に設けられることが好ましい。開口部4213の形状が矩形の場合、音響入力装置413は、開口部4213の右方(図6の紙面上方向を12時としたときの略3時方向)に設けられることが好ましい。また、音響入力装置413の一部または全部を囲むようにして、縦板4214が別途設けられていてもよい。
【0047】
また、旋回フレーム421と、キャブ424および作業機構440などの上部構造物と、によって上下に画定された空間において、開口部4213の外周の右方部にセンサおよび入力装置を含む一または複数の装置が設けられるプレート4216を旋回フレーム421に対して固設することができる。音響入力装置413は、プレート4216に対して配設することができる。音響入力装置413の他に、ジャイロセンサ等で構成される慣性計測装置(不図示)または角度センサなどもプレート4216に対して配設することができる。また、プレート4216には、開口部4213の開閉状態を検知する装置またはセンサの異常を検知する装置などが設けられていてもよい。プレート4216は、上面視において少なくとも一部が開口部4213と重なるように配設されることが好ましいい。この場合、開口部4213の一部がプレート4216により覆われるので開口部4213が開口した際にセンサの位置の把握が容易になる。プレート4216の形状は特に限定されないが、矩形板状であることが好ましく、その長手方向の長さが本実施形態としての四角形の開口部4213の長さよりも長いことが好ましい。この場合、プレート4216は、長手方向の一方側の端部と他方側の端部とを、旋回フレーム421上における開口部4213の外側に配置することで、プレート4216が安定的に配設される。また、プレート4216を矩形板状の前後左右の端部の何れかを覆うように配設されることが好ましく、例えば図5図6に示されるように、開口部4213の右側部を覆うことが好ましい。この場合、センサや配線類などを管理するために開口部4213を開口した際に開口部4213の端部にプレート4216が位置することになり、開口が比較的広く確保されるため開口部4213を用いる際の支障にならない。
【0048】
音響入力装置413として、ダイナミックマイクロフォンを用いることが好ましいが、この限りではない。音響入力装置413として、コンデンサマイクロフォンが用いられてもよい。この場合、コンデンサマイクロフォンに電源を供給すべく発電機と同一の電源または発電機とは別の電源を設けてもよい。また、音響入力装置413は、カーボンマイクロフォン、圧電マイクロフォンおよびレーザーマイクロフォンなどその他の任意のマイクロフォンを用いてもよい。
【0049】
音響入力装置413として、全指向性のマイクロフォンを用いることが好ましいが、この限りではない。音響入力装置413として、両指向性および単一指向性のマイクロフォンが用いられてもよい。音響入力装置413が複数のマイクロフォンから構成される場合、一方のマイクロフォンを第1方位に向けるまたは第1方位に指向性を有するように設け、他方のマイクロフォンを第2方位に向けるまたは第2方位に指向性を有するように設けることで、第1方位および第2方位の環境音をそれぞれ取得するように構成してもよい。また、音響入力装置413は連通部4215Bおよび連通部4215Rのそれぞれに向けて指向性を持たせてもよい。
【0050】
実機通信機器422は、作業機械40のネットワーク通信を可能とする機器であり、ネットワークを介して遠隔操作装置20との通信をする。音響入力装置413が集音した環境音に対応する電気信号が実機制御装置400に入力され、実機制御装置400により当該電気信号に対応する音響データ情報が圧縮符号化されて実機通信機器422を介して作業機械40の外部(例えば、遠隔操作装置20)に送信される。
【0051】
前記構成の遠隔操作システムによれば、音響入力装置413が作業機械40の旋回フレーム421とキャブ424の床下部材とによって上下に画定された空間に設けられている。このため、風が当該空間に導入されにくくなるため、当該空間に存する音響入力装置413に風が直達せず、風切り音などのノイズが入りにくい。一方で、エンジン音および油圧音などが旋回フレーム421と上部構造物とによって上下に画定された空間を伝搬するので、当該作業音を確実に音響入力装置413が取得できる。また、音響入力装置413は、外部空間から発せられる環境音について、縦板4214や底板4211を介して調整されつつ確実に取得できる。したがって、当該遠隔操作システムを操作するユーザは、提供される環境音および作業音を聞くことで、作業機械40および外部空間の状況を適切に把握できる。
【0052】
上述した実施形態では、作業機械40は、上部旋回体420の前方左側部に上部構造物としてのキャブ424(運転室)が設けられているものであったが、これに限られない。例えば、作業機械40は、上部旋回体420に対して上下にキャブ(運転室)を昇降させる昇降装置や、回動軸を介して上部旋回体420に対してキャブ(運転室)を回動させるチルト装置を備えていてもよい。この場合、上部旋回体420の前方左側には旋回フレーム421が構成されず、キャブ424(運転室)の下方には、昇降フレームまたは回動フレームが構成される。また、昇降フレームまたは回動フレームは前述した旋回フレーム421のように構造され、キャブ424と昇降フレームまたは回動フレームとによって上下に画定された空間が形成され、当該空間に音響入力装置413が配設されるように構成されればよい。
【符号の説明】
【0053】
10‥遠隔支援装置、20‥遠隔操作装置、40‥作業機械、41‥実機入力インターフェース、42‥実機出力インターフェース、102‥記録装置、121‥演算支援装置、200‥遠隔制御装置、210‥遠隔入力インターフェース、211‥遠隔操作機構、220‥遠隔出力インターフェース、221‥画像出力装置、222‥音響出力装置、224‥遠隔通信機器(通信機器)、400‥実機制御装置、410‥下部走行体、413‥音響入力装置、420‥上部旋回体、421‥旋回フレーム、422‥実機通信機器、424‥キャブ(運転室)、425‥エンジン、426‥カウンタウェイト、429‥油圧機器、430‥旋回機構、440‥作業機構、4211‥底板、4213‥開口部、4214‥縦板、4214B‥縦板(第1区―基準区区画縦板)、4214R‥縦板(第2区―基準区区画縦板)、4215B‥連通部(第1区―基準区区画縦板連通部)、4215R‥連通部(第2区―基準区区画縦板連通部)、4216‥プレート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6