(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006416
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】軌道材料監視システム
(51)【国際特許分類】
B61K 9/08 20060101AFI20240110BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20240110BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B61K9/08
G01B11/02 Z
G01B11/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107247
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】横内 典博
(72)【発明者】
【氏名】本村 裕基
(72)【発明者】
【氏名】吉川 貴純
(72)【発明者】
【氏名】倉 源太
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA24
2F065AA52
2F065BB11
2F065CC35
2F065FF04
2F065FF09
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065MM07
2F065QQ08
2F065QQ25
(57)【要約】
【課題】軌道材料の監視精度を高められる軌道材料監視システムを提供する。
【解決手段】本開示は、鉄道軌道を走行する移動体と、移動体に配置されると共に、移動体の走行方向に沿って、鉄道軌道の高さを検出するスポットセンサと、移動体に配置されると共に、鉄道軌道に対しレーザ光を照射することで、鉄道軌道におけるレールの延伸方向と直交する断面形状を計測するレーザ計測器と、スポットセンサが検出した高さに基づいて監視対象の軌道材料の存在を判定すると共に、軌道材料が存在すると判定した場合にレーザ光の照射による断面形状の計測をレーザ計測器に実行させる制御装置と、を備える軌道材料監視システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道軌道を走行するように構成された移動体と、
前記移動体に配置されると共に、前記移動体の走行方向に沿って、前記鉄道軌道の高さを検出するように構成されたスポットセンサと、
前記移動体に配置されると共に、前記鉄道軌道に対しレーザ光を照射することで、前記鉄道軌道におけるレールの延伸方向と直交する断面形状を計測するように構成されたレーザ計測器と、
前記スポットセンサが検出した前記高さに基づいて監視対象の軌道材料の存在を判定すると共に、前記軌道材料が存在すると判定した場合に前記レーザ光の照射による前記断面形状の計測を前記レーザ計測器に実行させるように構成された制御装置と、
を備える、軌道材料監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の軌道材料監視システムであって、
前記制御装置は、前記スポットセンサが検出した前記高さが予め定めた閾値を超える場合に、前記軌道材料が存在すると判定する、軌道材料監視システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の軌道材料監視システムであって、
前記制御装置は、前記軌道材料が存在すると判定した場合に、判定に用いられた前記高さが検出されてから前記移動体の走行速度に応じた調整時間が経過した時点で、前記レーザ光を照射させる、軌道材料監視システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の軌道材料監視システムであって、
前記軌道材料は、前記レールの側方に配置されたガード材の固定金具であり、
前記固定金具は、
前記ガード材を保持する金具本体と、
前記金具本体に取り付けられたボルトと、
を有し、
前記金具本体は、前記レールの延伸方向において前記ボルトの頭部を挟む2つの壁を有する、軌道材料監視システム。
【請求項5】
請求項4に記載の軌道材料監視システムであって、
前記制御装置は、前記レーザ光の照射後、予め定めた待機時間が経過するまで前記スポットセンサによる前記高さの検出を停止させる、軌道材料監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軌道材料監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両が走行する鉄道軌道は、レール及び枕木に加えて、締結具等の軌道材料によって構成されている。鉄道車両の安全走行にためには、これらの鉄道軌道を構成する要素の定期的な監視が必要である。
【0003】
このような鉄道軌道の監視手段として、レールに沿って走行するカメラによる撮影画像を用いて軌道材料(具体的にはボルト)を認識する装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の鉄道軌道の監視装置では、上述のような撮影画像に替えて、レーザ光の照射による光切断法を用いることで、レールの幅方向に沿った広範囲での軌道材料の検出を可能としたものも知られている。
【0006】
しかしながら、レーザ光の照射による形状測定の単位時間当たりの回数には限度があり、例えば1秒間に最大で200回程度である。そのため、レール上を走行する装置から無作為にレーザ光の照射を行うと、レーザ光の照射位置に挟まれた測定空白領域に監視対象が含まれるおそれがある。その結果、監視対象の見落としが発生し得る。
【0007】
本開示の一局面は、軌道材料の監視精度を高められる軌道材料監視システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、鉄道軌道を走行するように構成された移動体と、移動体に配置されると共に、移動体の走行方向に沿って、鉄道軌道の高さを検出するように構成されたスポットセンサと、移動体に配置されると共に、鉄道軌道に対しレーザ光を照射することで、鉄道軌道におけるレールの延伸方向と直交する断面形状を計測するように構成されたレーザ計測器と、スポットセンサが検出した高さに基づいて監視対象の軌道材料の存在を判定すると共に、軌道材料が存在すると判定した場合にレーザ光の照射による断面形状の計測をレーザ計測器に実行させるように構成された制御装置と、を備える軌道材料監視システムである。
【0009】
このような構成によれば、スポットセンサの高さの検出によって監視対象の軌道材料を認識した上で、断面形状の計測用のレーザ光の照射が行われる。そのため、監視対象の見落としを抑制しつつ、レールの幅方向に沿った軌道材料の形状測定を行うことができる。その結果、軌道材料の監視精度を高められる。
【0010】
本開示の一態様では、制御装置は、スポットセンサが検出した高さが予め定めた閾値を超える場合に、軌道材料が存在すると判定してもよい。このような構成によれば、容易かつ的確に監視対象の認識を行うことができる。
【0011】
本開示の一態様では、制御装置は、軌道材料が存在すると判定した場合に、判定に用いられた高さが検出されてから移動体の走行速度に応じた調整時間が経過した時点で、レーザ光を照射させてもよい。このような構成によれば、軌道材料に対するレーザ光の照射位置の精度を高めることができる。
【0012】
本開示の一態様では、軌道材料は、レールの側方に配置されたガード材の固定金具であってもよい。固定金具は、ガード材を保持する金具本体と、金具本体に取り付けられたボルトと、を有してもよい。金具本体は、レールの延伸方向においてボルトの頭部を挟む2つの壁を有してもよい。このような構成によれば、金具本体の壁をレーザ光の照射のトリガーとして利用できるため、レールの延伸方向に一定の間隔で配置されるボルトを精度よく監視することができる。
【0013】
本開示の一態様では、制御装置は、レーザ光の照射後、予め定めた待機時間が経過するまでスポットセンサによる高さの検出を停止させてもよい。このような構成によれば、金具本体の2つの壁のうち、ボルトよりも後に移動体が通過する壁の高さがスポットセンサによって検出されない。その結果、ボルトの通過直後にレーザ光の照射が行われることが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1Aは、実施形態における軌道材料監視システムの模式図であり、
図1Bは、
図1Aの軌道材料監視システムにおける計測装置の模式図である。
【
図2】
図2Aは、鉄道軌道の模式的な平面図であり、
図2Bは、
図2AのIIB-IIB線での模式的な断面図である。
【
図3】
図3Aは、
図2Aの鉄道軌道におけるガード材及び固定金具の模式的な斜視図であり、
図3Bは、
図3Aのガード材及び固定金具の模式的な平面図である。
【
図6】
図6A-6Fは、
図5Bのレーザ計測器によって計測される断面形状の一例である。
【
図7】
図7は、
図1の軌道材料監視システムにおける制御装置が実行する処理を概略的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1Aに示す軌道材料監視システム1は、鉄道軌道の構成要素である軌道材料の検査を行う。軌道材料監視システム1は、移動体2と、計測装置3と、制御装置4とを備える。
【0016】
図2A及び
図2Bに示すように、鉄道軌道の構成要素には、レールR1と、枕木R2と、レールR1及び枕木R2以外の軌道材料とが含まれる。本実施形態では、軌道材料のうちガード材R3及び固定金具R4を監視対象とする。
【0017】
ガード材R3は、レールR1の側方(具体的にはレールR1の幅方向の内側)に配置されている。ガード材R3は、レールR1の延伸方向に沿って延伸している。ガード材R3は、レールR1を走行する鉄道車両の脱線を抑制するために設けられる。
【0018】
固定金具R4は、ガード材R3を枕木R2に固定する部材である。
図3A及び
図3Bに示すように、固定金具R4は、金具本体R41と、ボルトR42と、回り止めピンR43とを有する。
【0019】
金具本体R41は、基部R41Aと、可動部R41Bとを有する。基部R41Aは、枕木R2の上面に固定されている。可動部R41Bは、ガード材R3を保持すると共に、基部R41Aの上方に重なるように配置されている。可動部R41Bは、基部R41Aに対し、上下方向に揺動可能に連結されている。
【0020】
ボルトR42は、金具本体R41に取り付けられている。具体的には、ボルトR42は、可動部R41Bを上下方向に貫通すると共に、先端が基部R41Aに螺合されている。つまり、ボルトR42は、可動部R41B及び基部R41Aを上下方向に締結している。
【0021】
ボルトR42は、鉄道軌道の保守、点検等の作業時に取り外される。ボルトR42が取り外されることで、可動部R41Bがガード材R3と共に上方に揺動可能となる。作業終了後、ボルトR42は再び金具本体R41に取り付けられる。
【0022】
ボルトR42の頭部は、上方から視認可能である。つまり、ボルトR42の頭部は、他の部材によって上方から覆われておらず、露出している。また、金具本体R41の可動部R41Bは、レールR1の延伸方向においてボルトR42の頭部を挟む第1壁W1及び第2壁W2を有する。つまり、ボルトR42の頭部は、第1壁W1と第2壁W2とで挟まれた凹部内に配置されている。第1壁W1の高さ及び第2壁W2の高さは同じである。
【0023】
回り止めピンR43は、レール幅方向に沿って可動部R41Bに挿通されている。回り止めピンR43は、ガード材R3の下方に配置され、ガード材R3の固定金具R4に対する回転を規制する。
【0024】
<移動体>
図1Aに示す移動体2は、レールR1に沿って、監視対象の鉄道軌道を走行するように構成されている。
【0025】
<計測装置>
計測装置3は、移動体2に配置されている。計測装置3は、移動体2と共にレールR1に沿って移動しながら、軌道材料の位置及び形状を計測する。
図1Bに示すように、計測装置3は、第1スポットセンサ31Aと、第2スポットセンサ31Bと、レーザ計測器32とを有する。
【0026】
(スポットセンサ)
第1スポットセンサ31A及び第2スポットセンサ31Bは、移動体2の走行方向に沿って、鉄道軌道の高さを検出するように構成されている。
【0027】
第1スポットセンサ31Aは、移動体2が
図1Aにおける左側に進行する際に、レーザ計測器32に対し進行方向前方となる位置に配置されている。第2スポットセンサ31Bは、移動体2が
図1Aにおける右側に進行する際に、レーザ計測器32に対し進行方向前方となる位置に配置されている。
【0028】
軌道材料監視システム1は、第1スポットセンサ31A及び第2スポットセンサ31Bのうち、レーザ計測器32に対し進行方向前方の地点の高さを検出可能なスポットセンサを監視に用いる。
【0029】
なお、
図1A及び
図1Bでは、1つのレーザ計測器32に対し2つのスポットセンサ31A,31Bが組み合わされているが、計測装置3は、1つのレーザ計測器と1つのスポットセンサとの組み合わせを、移動体2の前後に1つずつ有してもよい。また、計測装置3は、左右のレールR1に対応する位置にそれぞれ配置された、少なくとも1つのレーザ計測器と少なくとも2つのスポットセンサとを有する。
【0030】
レーザ計測器及びスポットセンサは、移動体2の車輪に対し進行方向前方に配置されるとよい。これにより、車輪によって巻き上げられる水滴の影響を抑制することができる。この水滴は、雨や移動体2の散水に起因して発生する。
【0031】
以下では第1スポットセンサ31Aについて説明するが、第2スポットセンサ31Bについても同様である。第1スポットセンサ31Aは、公知の距離センサである。
図4に示すように、第1スポットセンサ31Aは、固定金具R4の金具本体R41の上方からレーザ光を照射する。
【0032】
図5Aに示すように、第1スポットセンサ31Aは、レーザ光を照射する発信部311と、反射したレーザ光を受光する受信部312とを有する。レーザ光を反射する物体Oの位置によって、発信部311におけるレーザ光の受光位置が変化する。これにより、第1スポットセンサ31Aは、物体Oの位置(つまり高さ)を検出する。
【0033】
第1スポットセンサ31Aは、移動体2の走行中にレーザ光の照射及び受光を連続的に行うことで、レールR1から幅方向内側に一定距離離れた位置における高さを検出する。具体的には、
図3Bに示すように、第1スポットセンサ31Aは、可動部R41Bの第1壁W1と第2壁W2とを通過する検出ラインLに沿って高さを検出する。第1スポットセンサ31Aは、例えば1秒間に最大3000回の高さ検出(つまり高さ検出用のレーザ光の照射)を行う。
【0034】
(レーザ計測器)
図4に示すように、レーザ計測器32は、鉄道軌道に対しレーザ光を照射することで、鉄道軌道におけるレールR1の延伸方向と直交する断面形状を計測するように構成されている。
【0035】
具体的には、レーザ計測器32は、レールR1の幅方向において、少なくともガード材R3及び固定金具R4を含む範囲に上方からレーザ光を照射する。レーザ計測器32は、光切断法を用いて断面形状を測定する公知の計測機器である。
図5Bに示すように、レーザ計測器32は、レーザ光を照射する発光部321と、レーザ光が反射した散乱光を受光する受光部322とを有する。
【0036】
発光部321は、レールR1の延伸方向(つまり移動体2の走行方向)と直交するシート光(つまりスリット光)を照射する。つまり、発光部321は、レールR1の幅方向にレーザ光を走査させる。受光部322は、撮像素子によって散乱光の画像を取得し、この画像から計測対象の二次元の断面形状のプロファイルデータを取得する。
【0037】
図6A-6Fに、レーザ計測器32が計測したガード材R3及び固定金具R4の断面形状の一例を示す。レーザ計測器32が取得する断面形状には少なくともボルトR42の頭部が含まれる。
【0038】
図6Aは、正常状態のガード材R3及び固定金具R4の断面形状である。
図6Bは、破線で囲った部位において回り止めピンR43が欠落した状態の断面形状である。
図6Cは、ボルトR42の緩み等によってガード材R3が傾斜している状態の断面形状である。
【0039】
図6Dは、ボルトR42の緩み等によってガード材R3及び固定金具R4が浮き上がっている状態の断面形状である。
図6Eは、ガード材R3のみが浮き上がっている状態の断面形状である。
図6Fは、ボルトR42の頭部が傾斜している状態の断面形状である。
【0040】
このように、レーザ計測器32が取得した光切断法による断面形状によって、ガード材R3及び固定金具R4の不具合が検出できる。
【0041】
<制御装置>
図1に示す制御装置4は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、メモリ等の記録媒体と、キーボード、ディスプレイ等の入出力装置とを有するコンピュータによって構成される。
【0042】
制御装置4を構成するコンピュータは、記録媒体に記録された軌道材料監視プログラムによって、計測装置3を制御する機能(具体的には、検出処理、計測処理及び待機処理)を実行する。
【0043】
本実施形態では、制御装置4は、移動体2に設置されている。ただし、制御装置4は、地上設備(例えば基地局)に配置されると共に、移動体2及び計測装置3と無線通信によって接続されてもよい。
【0044】
検出処理では、制御装置4は、スポットセンサ31A,31Bが検出した高さに基づいて監視対象の軌道材料の存在を判定する。詳細には、制御装置4は、スポットセンサ31A,31Bが検出した高さが予め定めた閾値を超える場合に、軌道材料が存在すると判定する。なお、スポットセンサ31A,31Bが検出する高さは、基準面に対する高さの絶対値であってもよいし、隣接する検出ポイント間の高低差(つまり直近の高さに対する相対的な高さ)であってもよい。
【0045】
閾値は、例えば、基準面(例えば枕木R2の表面)からのバラストの平均高さと、同じ基準面からの固定金具R4の第1壁W1の高さとの差によって決定される。つまり、閾値は、バラストの最大高さよりも大きく、かつ、第1壁W1の高さよりも小さい値とされる。また、閾値は、移動体2の振動も考慮して設定される。
【0046】
具体的には、制御装置4は、
図3Bに示すように、第1スポットセンサ31Aによって検出ラインLにおける第1壁W1に起因する高低差が検出された場合に、軌道材料(つまり固定金具R4)が存在すると判定する。
【0047】
なお、第2スポットセンサ31Bがレーザ計測器32よりも前方となる進行方向の場合は、第2スポットセンサ31Bが検出する第2壁W2に起因する高低差によって、制御装置4は軌道材料が存在すると判定する。
【0048】
計測処理では、制御装置4は、軌道材料が存在すると判定した場合に、レーザ光の照射による断面形状の計測をレーザ計測器32に実行させる。詳細には、制御装置4は、軌道材料が存在すると判定した場合に、判定に用いられた高さ(つまり閾値を超える高さ)が検出されてから移動体2の走行速度に応じた調整時間が経過した時点で、レーザ光を照射させる。
【0049】
調整時間Tは、例えば下記式(1)によって決定される。式(1)中、D1は、第1壁W1の外面(つまり高さが閾値を超える位置)からボルトR42の中心軸までの距離であり、D2は、第1スポットセンサ31Aの検出ポイントとレーザ計測器32のレーザ照射位置との距離(
図1B参照)であり、Vは、移動体2の現在の走行速度である。なお、D1は、例えば65mm、D2は例えば80mmである。
T=(D1+D2)/V ・・・(1)
【0050】
この調整時間Tを用いたレーザ光の照射タイミングの制御により、ボルトR42を含む位置でのガード材R3及び固定金具R4の断面形状がレーザ計測器32によって取得される。
【0051】
待機処理では、制御装置4は、レーザ計測器32によるレーザ光の照射後、予め定めた待機時間が経過するまでスポットセンサ31A,31Bによる高さの検出を停止させる。待機時間は、レーザ光の照射後、第1スポットセンサ31Aの高さの検出ポイントが第2壁W2を通過するまでの時間である。
【0052】
つまり、制御装置4は、第1スポットセンサ31Aの停止後、第1スポットセンサ31Aの高さの検出ポイントが第2壁W2を通過した時点で、第1スポットセンサ31Aに高さの検出を再開させる。
【0053】
制御装置4は、移動体2の移動中、検出処理によって第1壁W1又は第2壁W2の存在が検出される(つまり高さが閾値を超える)度に計測処理及び待機処理を繰り返し実行する。
【0054】
[1-2.処理]
以下、
図7のフロー図を参照しつつ、制御装置4が実行する処理の一例について説明する。
【0055】
本処理では、制御装置4は、まず、スポットセンサ31A,31Bに鉄道軌道の高さを検出させる(ステップS110)。次に、制御装置4は、検出された高さが閾値を超えるか否か判定する(ステップS120)。高さが閾値以下の場合(S120:NO)、制御装置4は、スポットセンサ31A,31Bに高さの検出を継続させる。
【0056】
一方、高さが閾値を超える場合(S120:YES)、制御装置4は、スポットセンサ31A,31Bによる高さの検出を停止させる(ステップS130)。続いて、制御装置4は、閾値を超える高さの検出時点から、調整時間が経過したか否か判定する(ステップS140)。
【0057】
調整時間が経過していない場合(S140:NO)、制御装置4は、調整時間が経過するまで待機する。調整時間が経過している場合(S140:YES)、制御装置4は、レーザ計測器32にレーザ光を照射させ、断面形状を計測する(ステップS150)。断面形状の計測後、制御装置4は、レーザ光の照射時点から、待機時間が経過したか否か判定する(ステップS160)。
【0058】
待機時間が経過していない場合(S160:NO)、制御装置4は、待機時間が経過するまで待機する。待機時間が経過している場合(S160:YES)、制御装置4は、軌道材料の監視が終了したか否か判定する(ステップS170)。
【0059】
監視が終了していない場合(S170:NO)、制御装置4は、高さの検出から処理を繰り返す。監視が終了している場合(S170:YES)、制御装置4は、処理を終了する。
【0060】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)スポットセンサ31A,31Bの高さの検出によって監視対象の軌道材料を認識した上で、断面形状の計測用のレーザ光の照射が行われる。そのため、監視対象の見落としを抑制しつつ、レールの幅方向に沿った軌道材料の形状測定を行うことができる。その結果、軌道材料の監視精度を高められる。
【0061】
(1b)高さが閾値を超える場合に軌道材料が存在すると制御装置4が判定することで、容易かつ的確に監視対象の認識を行うことができる。
【0062】
(1c)閾値を超える高さが検出されてから移動体2の走行速度に応じた調整時間が経過した時に制御装置4がレーザ光を照射させることで、軌道材料に対するレーザ光の照射位置の精度を高めることができる。
【0063】
(1d)金具本体がボルトの頭部を挟む2つの壁を有することで、この壁をレーザ光の照射のトリガーとして利用できるため、レールの延伸方向に一定の間隔で配置されるボルトを精度よく監視することができる。
【0064】
(1e)レーザ光の照射後、待機時間が経過するまでスポットセンサ31A,31Bによる高さの検出が停止されることで、金具本体の2つの壁のうち、ボルトよりも後に移動体2が通過する壁の高さがスポットセンサ31A,31Bによって検出されない。その結果、ボルトの通過直後にレーザ光の照射が行われることが抑制される。
【0065】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0066】
(2a)上記実施形態の軌道材料監視システムにおいて、監視対象の軌道材料は、ガード材及び固定金具に限定されない。軌道材料監視システムは、これら以外の軌道材料を監視することも可能である。
【0067】
(2b)上記実施形態の軌道材料監視システムにおいて、制御装置は、スポットセンサが検出した高さが閾値を超えるか否か以外の条件で軌道材料の存在の判定を行ってもよい。例えば、制御装置は、高さが閾値未満か否かの条件で軌道材料の存在の判定を行ってもよい。
【0068】
(2c)上記実施形態の軌道材料監視システムにおいて、制御装置は、レーザ光の照射後、必ずしも待機時間が経過するまでスポットセンサによる高さの検出を停止させなくてもよい。
【0069】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0070】
1…軌道材料監視システム、2…移動体、3…計測装置、4…制御装置、
31A…第1スポットセンサ、31B…第2スポットセンサ、32…レーザ計測器、
311…発信部、312…受信部、321…発光部、322…受光部、
R1…レール、R2…枕木、R3…ガード材、R4…固定金具、R41…金具本体、
R41A…基部、R41B…可動部、R42…ボルト、R43…止めピン、
W1…第1壁、W2…第2壁。