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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064166
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】混練装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/952 20220101AFI20240507BHJP
   B01F 27/17 20220101ALI20240507BHJP
   B01F 27/171 20220101ALI20240507BHJP
   B01F 27/808 20220101ALI20240507BHJP
【FI】
B01F27/952
B01F27/17
B01F27/171
B01F27/808
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172552
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000204114
【氏名又は名称】太洋マシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 兼三
(72)【発明者】
【氏名】井上 晃利
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕晃
【テーマコード(参考)】
4G078
【Fターム(参考)】
4G078AA03
4G078AA30
4G078BA05
4G078CA09
4G078DB05
4G078DC10
4G078EA05
(57)【要約】
【課題】混練物との摩擦により回転する転動ローラを備える混練装置において、混練室内で転動ローラを適正に回転(自転)させて、効率的に混練物を練り混ぜることができるようにする。
【解決手段】本発明の混練装置は、混練物が投入される有底円筒状の混練室1を備えるハウジング2と、混練室1の底壁8の中心を上下方向に貫通し、駆動源32からの駆動力を受けて回転駆動される駆動軸27と、駆動軸27に連結されて、該駆動軸27を回転中心として混練室1内で回転駆動される支持アーム28と、支持アーム28の突端に設けられ、水平方向に伸びるローラ軸42と、ローラ軸42で回転自在に軸支された円筒状の転動ローラ29とを備える。転動ローラ29のローラ端面60に、混練物と接触するアンカー61を突設する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練物が投入される有底円筒状の混練室(1)を備えるハウジング(2)と、
混練室(1)の底壁(8)の中心を上下方向に貫通し、駆動源(32)からの駆動力を受けて回転駆動される駆動軸(27)と、
駆動軸(27)に連結されて、該駆動軸(27)を回転中心として混練室(1)内で回転駆動される支持アーム(28)と、
支持アーム(28)の突端に設けられ、水平方向に伸びるローラ軸(42)と、
ローラ軸(42)で回転自在に軸支された円筒状の転動ローラ(29)と、
を備え、
転動ローラ(29)のローラ端面(60)に、混練物と接触するアンカー(61)が突設されていることを特徴とする混練装置。
【請求項2】
アンカー(61)が、ローラ端面(60)から水平方向に伸びる複数本のピン(63)を含んで構成されている、請求項1記載の混練装置。
【請求項3】
複数本のピン(63)が、ローラ端面(60)上に分散配置されている、請求項2記載の混練装置。
【請求項4】
ローラ軸(42)の軸心を中心とする異なる直径を有する2つの同心円(C1・C2)を規定したとき、
各ピン(63)が、両同心円(C1・C2)のいずれかの円上に配置されている、請求項3記載の混練装置。
【請求項5】
複数本のピン(63)を備えるアンカーベース(64)と、
アンカーベース(64)をローラ端面(60)に締結固定する締結具(65)と、を備え、
複数個のアンカーベース(64)が、ローラ端面(60)の周方向の等間隔位置に配設されている、請求項3記載の混練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転動ローラにより混練室に投入された混練物を練り混ぜる混練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の混練装置は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の混練装置は、有底筒状の混練室(撹拌室)と、混練室の中心軸に沿って設けられる駆動軸と、先端側が上下揺動自在に駆動軸に固定される支持アームと、支持アームの先端に設けられる水平な回転軸で回転自在に軸支される転動ローラ(撹拌ローラ)とを備える。転動ローラは、駆動軸の回転により同軸の中心まわりに回転(公転)し、当該公転に伴う混練物との摩擦によって混練室の底面に沿って回転軸まわりに回転(自転)する。混練物は、転動ローラと混練室の底面との間に入り込み、回転(自転)する転動ローラの自重で押圧されて練り混ぜられる。
【0003】
この種の混練装置では、混練物の水分量が多く流動性が高い場合、或いは装置の適正処理量に対して混練物の量が少ない場合には、転動ローラと混練物との間の摩擦力が不足して、転動ローラが適正に回転(自転)せず、転動ローラが混練物に対してスリップすることがある。このような転動ローラがスリップすることを防止するために、特許文献1の混練装置では、転動ローラの周面に同ローラの周方向に対して交差する突条を設けている。特許文献2の混練装置(ローラミル)では、転動ローラの周面に同ローラの周方向に対して交差する溝を凹み形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平5-8093号公報
【特許文献2】特開昭57-197043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の混練装置によれば、突条が混練物に食い込むことで、転動ローラと混練物との間の摩擦力を高めて、転動ローラがスリップすることを抑えることができる。同様に、特許文献2の混練装置(ローラミル)によれば、溝に混練物が入り込むことにより、転動ローラと混練物との間の摩擦力を高めて、転動ローラがスリップすることを抑えることができる。しかし、これら従来の混練装置では、突条や溝を埋めるように転動ローラの周面に混練物が固着したときに、転動ローラと混練物との間の摩擦力が低下して、転動ローラがスリップするおそれが残る。元より、転動ローラの周面に、同ローラの周方向に対して交差する突条や溝が存在すると、転動ローラの周面と混練室の底面との距離が、突条や溝の形成部分と、これら突条等の非形成部分とで大小に変化するため、混練物に作用する押圧力も大小に変化する。そのため、混練物に対して均等な押圧力を作用させることができず、混練度合いにムラが生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、混練物との摩擦により回転する転動ローラを備える混練装置において、混練室内で転動ローラを適正に回転(自転)させて、効率的に混練物を練り混ぜることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の混練装置は、混練物が投入される有底円筒状の混練室1を備えるハウジング2と、混練室1の底壁8の中心を上下方向に貫通し、駆動源32からの駆動力を受けて回転駆動される駆動軸27と、駆動軸27に連結されて、該駆動軸27を回転中心として混練室1内で回転駆動される支持アーム28と、支持アーム28の突端に設けられ、水平方向に伸びるローラ軸42と、ローラ軸42で回転自在に軸支された円筒状の転動ローラ29とを備える。そして、転動ローラ29のローラ端面60に、混練物と接触するアンカー61が突設されていることを特徴とする。
【0008】
アンカー61は、ローラ端面60から水平方向に伸びる複数本のピン63を含んで構成されている。
【0009】
複数本のピン63は、ローラ端面60上に分散配置されている。
【0010】
ローラ軸42の軸心を中心とする異なる直径を有する2つの同心円C1・C2を規定したとき、各ピン63は、両同心円C1・C2のいずれかの円上に配置されている。
【0011】
複数本のピン63を備えるアンカーベース64と、アンカーベース64をローラ端面60に締結固定する締結具65とを備える。複数個のアンカーベース64は、ローラ端面60の周方向の等間隔位置に配設されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の混練装置のように、転動ローラ29のローラ端面60に、混練物と接触するアンカー61が突設されていると、転動ローラ29の周面と混練物との間で生じる摩擦力に加えて、混練物に接触したアンカー61と混練物との間で生じる摩擦力を転動ローラ29に作用させることができる。このように、転動ローラ29の周面と混練物との間で生じる摩擦力に加えて、アンカー61と混練物との間で生じる摩擦力を転動ローラ29に作用させることができると、前者の摩擦力のみにより転動ローラ29を回転させる形態に比べて、転動ローラ29がスリップすることをより確実に防ぐことができるので、転動ローラ29を適正に回転させて、効率的に混練物を練り混ぜることができる。また、上述のように、転動ローラ29の周面に突条や溝を設ける従来形態では、混練度合いにムラが生じることが避けられないが、本発明によれば、転動ローラ29の周面に突条や溝を設ける必要はなく、混練物に対して均等な押圧力を作用させることができるので、混練物に対する混練度合いにムラが生じることを防いで、より均一に混練物を練り混ぜることができる。
【0013】
アンカー61が、転動ローラ29のローラ端面60から水平方向に伸びる複数本のピン63を含んで構成されていると、簡単な構成でアンカー61を形成することができるので、アンカー61を設けたことに伴う混練装置のコスト上昇を抑えることができる。また、ピン63の長さ寸法やピン63の本数を変更することで、アンカー61と混練物との間で発生する摩擦力を大小に調整することができるので、混練物の性状に対応した摩擦力の調整が容易である点でも優れている。
【0014】
複数のピン63が、ローラ端面60上に分散配置されていると、ピン63とローラ軸42との距離、換言すれば、ピン63と底壁8までの距離を大小に異なるものとすることができる。これによれば、混練動作時において転動ローラ29のローラ端面60に臨む混練物の量が大小に変動する場合でも、底壁8からの距離が異なるいずれかのピン63を混練物に接触させて、アンカー61と混練物との間で摩擦力を発生させることができるので、転動ローラ29がスリップすることをより確実に防ぐことができる。
【0015】
具体的には、例えば、ローラ軸42の軸心を中心とする異なる直径を有する2つの同心円C1・C2を規定したとき、複数本のピン63が、ローラ端面60上の両同心円C1・C2のいずれかの円上に配置されている構成を採ると、ローラ軸42からピン63までの距離を長短の二種とすることができる。これにより、混練動作時において転動ローラ29のローラ端面60に臨む混練物の量が大小に変動する場合でも、底壁8からの距離が異なるいずれかのピン63を混練物に接触させて、アンカー61と混練物との間で摩擦力を発生させることができるので、転動ローラ29がスリップすることをより確実に防ぐことができる。
【0016】
複数本のピン63を備えるアンカーベース64と、アンカーベース64をローラ端面60に締結固定する締結具65とを備えるものとすると、ローラ端面60に対する締結具65の締結状態を構築することで、アンカーベース64と共にピン63を転動ローラ29に取り付けることができ、また、逆の手順でローラ端面60に対する締結具65の締結状態を解除することで、アンカーベース64と共にピン63を転動ローラ29から分離することができる。これによれば、ピン63が折損したときなど、アンカー61の交換が必要となった場合には、アンカーベース64と共にピン63を転動ローラ29から取り外し、新たなアンカーベース64を転動ローラ29に取り付けることで、新規なアンカー61に簡便に交換することができる。また、ピン63の長さが異なるアンカー61に簡便且つ迅速に交換することができる。加えて、複数個のアンカーベース64が、ローラ端面60の周方向の等間隔位置に配設されていると、転動ローラ29の回転方向(自転方向)の上流側に位置するピン63が規則的且つ順々に混練物に接触するため、ピン63と混練物との間には常に摩擦力を発生させることができるので、転動ローラ29がスリップすることをより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る混練装置の縦断正面図である。
図2】混練装置の全体を示す縦断側面図である。
図3】混練装置の平面図である。
図4図1におけるA-A線断面図である。
図5図4におけるB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態) 図1から図5に、本発明に係る混練装置の実施形態を示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、図1から図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図2において混練装置は、混練室1を区画するハウジング2と、ハウジング2を支持するフレーム3と、ハウジング2及びフレーム3に組付けられる混練構造4などを備える。
【0019】
図1に示すようにハウジング2は、中空筒状の周壁7と、周壁7の下側開口を塞ぐ底壁8とを備えており、両壁7・8により混練室1は上方開口を有する有底円筒状に形成されている。周壁7の内周面には周ライナー9が固定されており、底壁8の上面には底ライナー10が固定されている。図示していないが周ライナー9及び底ライナー10は複数個に分割されており、それぞれがハウジング2に対して着脱可能に構成されている。
【0020】
本実施形態の混練装置はバッチ式であり、図2に示すようにハウジング2の上方には、第1ホッパー11、第2ホッパー12、及び散水管13が設置されており、これらホッパー11・12等からハウジング2の上方開口を介して混練室1へ各種資材(混練材料)が投入される。本実施形態の混練装置では、第1ホッパー11から規定量の砂が混練室1へ投入され、第2ホッパー12から規定量のベントナイトが混練室1へ投入され、散水管13から規定量の水が混練室1へ投入される。混練装置は、混練室1に投入されたこれら砂、ベントナイト、および水を練り混ぜて、混練物を生成する。かかる混練物からは、例えば土木工事で用いられる覆土ブロックの原料が製造される。
【0021】
フレーム3は、地面に載置されるフレームベース16と、フレームベース16の上面四隅に立設されてハウジング2を支持する支柱17とを備える。各支柱17は角パイプで構成されており、下端がフレームベース16の上面に溶接固定され、上端がハウジング2を形成する底壁8の下面に溶接固定される。
【0022】
図3に示すように、ハウジング2の底壁8の前部には、混練室1内の混練物をハウジング2外へ排出するための矩形孔(横長長方形の開口)からなる排出口18が開設されている。排出口18は排出蓋19により開閉され、排出蓋19は開閉構造20により操作される。図2に示すように、開閉構造20は、一端が底壁8で回動自在に支持され、他端がフレームベース16で回動自在に支持される3節リンク機構からなるリンク体21と、リンク体21のジョイント部分を変位させる、出退するロッドを有するシリンダ22とを備える。シリンダ22は、図外のエアコンプレッサーから供給される加圧空気で動作される。
【0023】
シリンダ22のロッドが進出位置にあるとき、排出口18は排出蓋19で閉じられている(図2で示す状態)。この状態からシリンダ22のロッドを退入位置とすると、リンク体21のジョイント部分が変位し、図2において2点鎖線で示すように、排出蓋19は下方に揺動操作されて排出口18が開放される。排出口18が開放されている状態で、シリンダ22のロッドを進出位置とすると、再び排出口18は排出蓋19で閉じられる。図2において符号23は、排出口18から排出された混練物を受け止め案内するシューターである。
【0024】
図2に示すように混練構造4は、回転動力を出力する駆動部26と、駆動部26で回転駆動される駆動軸27と、駆動軸27に連結される一対の支持アーム28・28と、各支持アーム28で回転自在に軸支される転動ローラ29などを備える。駆動部26は、電動モーター(駆動源)32と、電動モーター32の回転を減速し出力する減速機33とを備える。減速機33の出力軸は、カップリング34を介して駆動軸27に連結されている。電動モーター32が駆動されると、混練装置の平面視において駆動軸27は反時計方向に回転駆動される。
【0025】
混練室1の底壁8の中心には、駆動軸27を回転自在に軸支する軸受筒35が、該底壁8を上下方向に貫通するように配置されている。したがって、混練室1の中心軸と駆動軸27の中心軸とは一致している。駆動軸27はその上端と下端が軸受筒35から突出しており、軸受筒35から下向きに突出する駆動軸27の下端がカップリング34に連結されている。軸受筒35から上向きに突出する駆動軸27の上端には、支持アーム28を支持するアームブロック36が固定されている。軸受筒35の上端とアームブロック36との間は、任意のシール構造でシールされる。
【0026】
図1に示すように、各支持アーム28は、混練室1の径方向に伸びるクランク状の軸体で形成されており、その基端部は、アームブロック36に設けられたアームブラケット39に水平軸からなるアーム軸40を介して連結されている。アームブラケット39は、アームブロック36の左右にそれぞれ設けられ、支持アーム28は、アームブロック36の径方向左右に伸びるように設けられている(図3参照)。アーム軸40で連結された支持アーム28は、アームブロック36に対してその先端側が上下方向に揺動可能に支持されている。支持アーム28の下側の揺動限界は、支持アーム28の基端側の下面に設けられたストッパー41で規定されており、常態における支持アーム28は、ストッパー41がアームブロック36の側面(周面)に当接することで下側の揺動限界に位置している。
【0027】
転動ローラ29は、その周面の幅方向両端部が大径であり、中央部が小径の扁平な鼓型に形成されている。支持アーム28の先端部(突端)には、混練室1の径方向に伸びる水平軸からなるローラ軸42が設けられており、該ローラ軸42で転動ローラ29が回転自在に軸支されている。ハウジング2の平面視において、ローラ軸42の軸心は、混練室1の中心を通る左右方向の仮想線Vに対して、該仮想線Vに平行な状態で時計方向(後述する転動ローラ29の公転方向下流側)に僅かにオフセットされている(図3参照)。支持アーム28が下側の揺動限界にあるとき、転動ローラ29の周面下側は、ハウジング2の底ライナー10(底壁8)から所定の距離浮き離れている。
【0028】
図3に矢印で示すように駆動軸27が回転すると、両転動ローラ29は、混練装置の平面視において駆動軸27を中心に反時計方向に回転(公転)する。このとき、転動ローラ29はローラ軸42で軸支されているにすぎず、当該ローラ軸42を中心として回転(自転)させる力は転動ローラ29には作用しない。このため、混練室1内に混練物が存在しない状態では、転動ローラ29はローラ軸42を中心には回転(自転)しない。これに対して、混練室1内に混練物が投入され、転動ローラ29と混練物との間に摩擦力が生じると、当該摩擦力と、先の駆動軸27を中心として回転(公転)する力とが相俟って、転動ローラ29はローラ軸42を中心に回転(自転)する。以上のように、転動ローラ29が、混練室1内で駆動軸27を中心に「公転」しながら、ローラ軸42を中心に「自転」することで、混練物を底ライナー10と転動ローラ29との間隙で押圧しながら練り混ぜることができる。
【0029】
底ライナー10と転動ローラ29との間の押圧によって転動ローラ29の周面に固着した混練物を掻き落とすために、転動ローラ29の公転方向下流側の周面に対向してローラスクレイパー43が設けられている。ローラスクレイパー43は、支持アーム28に連結されており、その先端形状は転動ローラ29の鼓型周面に対応して山型に形成されている。転動ローラ29の周面とローラスクレイパー43の先端とは、僅かに隙間を介した状態で配置されている。
【0030】
混練構造4は、混練室1の中央寄りにある混練物を外向きに掻き寄せる内スクレイパー44と、混練室1の外周寄りにある混練物を内向きに掻き寄せる外スクレイパー45と、周ライナー9(周壁7)に付着した混練物を掻き落とすサイドスクレイパー46とを備える。図3において、アームブロック36には、混練室1の径方向前側に伸びる第1アーム49が設けられており、第1アーム49の中途部に内スクレイパー44が設けられ、第1アーム49の先端部にサイドスクレイパー46が設けられている。また、アームブロック36には、混練室1の径方向後側に伸びる第2アーム50が設けられており、第2アーム50の先端に外スクレイパー45が設けられている。これらスクレイパー44・45・46は駆動軸27が回転すると、平面視において駆動軸27を中心に反時計方向に回転(公転)する。内外のスクレイパー44・45は、転動ローラ29の公転軌道上へ向かって混練物を掻き寄せて混練動作の効率向上を図る目的で設けられる。
【0031】
図3に示すように、内スクレイパー44は、混練装置の平面視において外凸円弧状に形成されている。図2に示すように、内スクレイパー44は、第1アーム49の中途部から垂下される第1保持軸51の下端に一体的に固定されている。サイドスクレイパー46は、上下に長いブレード状に形成されており、第1アーム49の先端に一体的に固定されている。第1保持軸51は、同軸51の軸心まわりの姿勢、及び高さ位置を変更するための不図示の調整構造を介して第1アーム49に連結されており、調整構造で第1保持軸51をその軸心まわりに回転、及び上下に変位させることで内スクレイパー44の姿勢を変更することができる。サイドスクレイパー46は、周ライナー9との離間距離を調整するため不図示の調整構造を介して第1アーム49に連結されている。内スクレイパー44と底ライナー10との間、及びサイドスクレイパー46と周ライナー9との間には僅かに間隙が設けられる。
【0032】
図3に示すように、外スクレイパー45は、混練装置の平面視において外凸円弧状に形成されている。図2に示すように、外スクレイパー45は、第2アーム50の先端部から垂下される第2保持軸52の下端に一体的に固定されている。第2保持軸52は、同軸52の軸心まわりの姿勢、及び高さ位置を変更するための不図示の調整構造を介して第2アーム50に連結されており、調整構造で第2保持軸52をその軸心まわりに回転、及び上下に変位させることで外スクレイパー45の姿勢を変更することができる。外スクレイパー45と底ライナー10との間には僅かに間隙が設けられる。
【0033】
図1に示すように、両支持アーム28・28の間には、各支持アーム28の上方への揺動を制限する揺動規制体55が設けられている。揺動規制体55は、各支持アーム28から上方に伸びる作用アーム56・56と、各作用アーム56に回転自在に連結される一対のロッド57・57と、両ロッド57・57の間に配置される圧縮コイルばねからなる付勢ばね58などで構成される。付勢ばね58の復元力は、ロッド57と作用アーム56を介して支持アーム28に作用しており、各支持アーム28は付勢ばね58の復元力によって下向きに付勢されている。
【0034】
各ロッド57は伸縮可能に構成されており、ロッド57の長さを変更することで付勢ばね58の圧縮量に対応する復元力を可変でき、各支持アーム28に作用する付勢力を調整することができる。支持アーム28は、底ライナー10と転動ローラ29との間隙に侵入した混練物によって転動ローラ29を上向きに押上げようとするモーメントが、支持アーム28と転動ローラ29の合計重量による下向きのモーメントと、支持アーム28に作用する揺動規制体55の付勢力による下向きのモーメントとの合計を超えた時点で上方に揺動する。
【0035】
先に述べたように、転動ローラ29は、転動ローラ29と混練物との摩擦、特に底ライナー10と転動ローラ29との間隙に侵入した混練物との摩擦によって回転する。このため、水分量が多く流動性が高い混練物、或いは混練装置の適正処理量に対して混練物の量が少ない場合には、転動ローラ29と混練物との間の摩擦力が不足して、転動ローラ29が適正に回転せず混練物に対してスリップすることがある。このような転動ローラ29のスリップを防止するために、本実施形態の混練装置においては、図1に示すように、転動ローラ29のローラ端面60に、公転する転動ローラ29と同行回転し、混練物に接触して摩擦力の向上を図るアンカー61が突設されている。アンカー61は、外側のローラ端面60(ローラ軸42で支持されている側とは反対側のローラ端面60)に設けられている。
【0036】
図4に示すようにアンカー61は、4つのアンカー体62で構成される。各アンカー体62は、ローラ端面60の外周寄りに90度ずつ位相をずらした状態で4箇所に設けられている。ローラ端面60の中心(ローラ軸42の軸心)から各アンカー体62までの距離は同一寸法に設定されている。各アンカー体62は、ローラ端面60から水平方向に伸びる4本(複数)のピン63を備えており、各転動ローラ29には計16本のピン63が設けられる。各ピン63は断面円形の軸体で構成される。
【0037】
これらピン63は、ローラ軸42の軸心を中心とする、大小の異なる直径寸法を有する同心円のいずれかの円上に配置されている。具体的には、各アンカー体62を構成する転動ローラ29の外周寄りの2本のピン63は、その中心軸が同一直径の同心円C1上に配置されている。また、これらピン63より内側の2本のピン63は、先の同心円C1よりも小径の同心円C2上に配置されている。以上より、ローラ軸42の軸心を中心として直径が大小に異なる同心円C1・C2上に各ピン63が分散状に配置されている。したがって、ピン63が底壁8に最も近づいたときの同心円C1上のピン63から底壁8までの距離と、同心円C2上のピン63から底壁8までの距離とは異なるものとなる。
【0038】
各アンカー体62は、円板状のアンカーベース64と、アンカーベース64に支持される先の4本のピン63と、アンカーベース64のローラ端面60への固定を担う六角穴付きボルトからなる締結具65とを備える。各ピン63の基端部は、アンカーベース64に溶接固定されている。周方向に隣り合うピン63・63の間には、締結具65用の挿通孔66がアンカーベース64の厚み方向に貫通する状態で設けられている。以上のような構成からなるアンカー体62は、挿通孔66を介してローラ端面60に設けられたねじ孔67に締結具65をねじ込むことでローラ端面60に固定することができ、また逆の手順で締結具65のねじ孔67に対する締結状態を解除することでローラ端面60から分離することができる。以上のように、アンカー体62は、転動ローラ29に対して着脱可能に構成されている。
【0039】
ここで、混練装置による混練動作について説明する。混練動作を開始する際、排出口18が開放されている場合には、シリンダ22を進出位置に変更して排出口18を排出蓋19で閉じる。排出口18が排出蓋19で閉じられたことを確認したのち、電動モーター32を起動して駆動軸27を回転させると、アームブロック36に連結された一対の転動ローラ29及び各スクレイパー44・45・46は、駆動軸27を中心に回転(公転)する。この状態では、混練室1内には混練物が存在しないので、転動ローラ29はローラ軸42を中心に回転(自転)せず、駆動軸27を中心に回転(公転)される。
【0040】
次に、両ホッパー11・12から規定量の砂及びベントナイトを混練室1に投入し、併せて散水管13から規定量の水を混練室1へ投入する。このように混練物(混練材料)が混練室1に投入されると、転動ローラ29の周面と混練物との摩擦、およびピン63と混練物との摩擦により、転動ローラ29はローラ軸42を中心に回転(自転)する。つまり、転動ローラ29は、駆動軸27を中心に回転(公転)しながら、ローラ軸42を中心に回転(自転)する。このように、転動ローラ29がローラ軸42を中心に回転(自転)すると、ピン63の混練物に対する進入動作と退出動作とが繰り返され、これより混練物との間の摩擦力が維持される。つまり、転動ローラ29の回転方向(自転方向)の上流側に位置するアンカー体62のピン63が順々に混練物に接触するため、ピン63と混練物との間には常に摩擦力が生じることとなる。
【0041】
混練構造4の駆動を所定時間継続し、混練物が均質に混練されると、一回のバッチの混練動作を終了させる。具体的には、シューター23の下方に容器を載置したうえで、シリンダ22を退入位置へと変更して排出口18を開放する。混練物は公転する内外のスクレイパー44・45で寄せ集められて、徐々に排出口18からシューター23へと排出され、容器内に収容される。次のバッチの混練動作を続行する場合には、排出蓋19で排出口18を再び閉じ、その後に混練物(混練材料)を投入する。混練動作を完全に終了する場合には、電動モーター32を停止させる。
【0042】
以上のように、本実施形態の混練装置においては、転動ローラ29のローラ端面60に、混練物と接触するアンカー61を突設したので、転動ローラ29の周面と混練物との間で生じる摩擦力に加えて、混練物に接触したアンカー61と混練物との間で生じる摩擦力を転動ローラ29に作用させることができる。このように、転動ローラ29の周面と混練物との間で生じる摩擦力に加えて、アンカー61と混練物との間で生じる摩擦力を転動ローラ29に作用させることができると、前者の摩擦力のみにより転動ローラ29を回転させる形態に比べて、転動ローラ29がスリップすることをより確実に防ぐことができるので、転動ローラ29を適正に回転させて、効率的に混練物を練り混ぜることができる。また、転動ローラ29の周面に突条や溝を設ける従来形態では、混練度合いにムラが生じることが避けられないが、本実施形態によれば、転動ローラ29の周面に突条や溝を設ける必要はなく、混練物に対して均等な押圧力を作用させることができるので、混練物に対する混練度合いにムラが生じることを防いで、より均一に混練物を練り混ぜることができる。
【0043】
アンカー61を、転動ローラ29のローラ端面60から水平方向に伸びる複数本のピン63を含んで構成したので、簡単な構成でアンカー61を形成することができる。したがって、アンカー61を設けたことに伴う混練装置のコスト上昇を抑えることができる。また、ピン63の長さ寸法やピン63の本数を変更することで、アンカー61(アンカー体62)と混練物との間で発生する摩擦力を大小に調整することができるので、混練物の性状に対応した摩擦力の調整が容易である点でも優れている。
【0044】
複数のピン63を、ローラ端面60上に分散配置したので、ピン63とローラ軸42との距離、換言すれば、ピン63と底壁8までの距離を大小に異なるものとすることができる。具体的には、ローラ軸42の軸心を中心とする異なる直径を有する2つの同心円C1・C2を規定したとき、複数本のピン63が、ローラ端面60上の両同心円C1・C2のいずれかの円上に配置されるように構成したので、ローラ軸42からピン63までの距離を長短の二種とすることができる。これにより、混練動作時において転動ローラ29のローラ端面60に臨む混練物の量が大小に変動する場合でも、底壁8からの距離が異なるいずれかのピン63を混練物に接触させて、アンカー61(アンカー体62)と混練物との間で摩擦力を発生させることができるので、転動ローラ29がスリップすることをより確実に防ぐことができる。
【0045】
複数本のピン63を備えるアンカーベース64と、アンカーベース64をローラ端面60に締結固定する締結具65とを備えるものとしたので、ローラ端面60に対する締結具65の締結状態を構築することで、アンカーベース64と共にピン63を転動ローラ29に取り付けることができ、また、逆の手順でローラ端面60に対する締結具65の締結状態を解除することで、アンカーベース64と共にピン63を転動ローラ29から分離することができる。これによれば、ピン63が折損したときなど、アンカー体62の交換が必要となった場合には、アンカーベース64と共にピン63を転動ローラ29から取り外し、新たなアンカーベース64を転動ローラ29に取り付けることで、新規なアンカー体62に簡便に交換することができる。また、ピン63の長さが異なるアンカー体62に簡便且つ迅速に交換することができる。加えて、複数個のアンカーベース64を、ローラ端面60の周方向の等間隔位置に配設したので、転動ローラ29の回転方向(自転方向)の上流側に位置するピン63が規則的且つ順々に混練物に接触するため、ピン63と混練物との間には常に摩擦力を発生させることができるので、転動ローラ29がスリップすることをより確実に防ぐことができる。
【0046】
上記では、アンカー体62を構成するピン63の本数や配置形態は、上記実施形態のものに限られない。ピン63は楕円軸或いは多角軸であってもよく、また、平鋼や山形鋼で形成することもできる。混練物は上記実施形態のものに限られない。
【符号の説明】
【0047】
1 混練室
2 ハウジング
8 底壁
27 駆動軸
28 支持アーム
29 転動ローラ
32 駆動源(電動モーター)
42 ローラ軸
60 ローラ端面
61 アンカー
63 ピン
64 アンカーベース
図1
図2
図3
図4
図5