(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064169
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】屋根改修構造およびその構築方法
(51)【国際特許分類】
E04D 3/00 20060101AFI20240507BHJP
E04D 3/40 20060101ALI20240507BHJP
E04D 13/14 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
E04D3/00 V
E04D3/40 P
E04D13/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172557
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000217365
【氏名又は名称】田島ルーフィング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧田 均
(72)【発明者】
【氏名】根元 央希
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108AZ04
2E108DD18
2E108FG01
2E108FG03
2E108GG09
2E108GG18
2E108GG20
(57)【要約】
【課題】側壁内部の通気性能および排水性能を確保できる屋根改修構造およびその構築方法を提供することを課題とする。
【解決手段】既存屋根材10の上に設置される新設屋根材30と、側壁14に隣り合う新設屋根材30の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁14との取り合いにおいて、既存屋根材10の上に設置される新設の止水材付水切部材20を備えており、止水材付水切部材20は、水切板21と、水切板21の側壁14側に固定された止水材22とを有し、水切板21の基端部は、側壁14の表面板材14bの下端部と既存屋根材10との隙間を通過して側壁14の下地部14a側に入り込んでおり、止水材22は、側壁14の下地部14aに押し付けられていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存屋根材の上に設置される新設屋根材と、
側壁に隣り合う前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁との取り合いにおいて、
前記既存屋根材の上に設置される新設の止水材付水切部材を備えており、
前記止水材付水切部材は、水切板と、当該水切板の前記側壁側に固定された止水材とを有し、
前記水切板の基端部は、前記側壁の表面板材の下端部と前記既存屋根材との隙間を通過して前記側壁の下地部側に入り込んでおり、
前記止水材は、前記側壁の前記下地部に押し付けられている
ことを特徴とする屋根改修構造。
【請求項2】
前記止水材付水切部材の前記水切板には、前記新設屋根材側からの水を堰き止める段差部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の屋根改修構造。
【請求項3】
前記止水材付水切部材の上に設置される通気部材と、
前記通気部材を覆うように設置される新設壁水切板と、をさらに備えており、
前記通気部材は、前記表面板材の下端部に開口する側壁通気層に連通して配置されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の屋根改修構造。
【請求項4】
前記既存屋根材の上縁部および側縁部には、既存壁水切板が設けられており、
前記既存壁水切板の先端部の上に設置された受桟をさらに備え、
前記止水材付水切部材は、前記受桟に支持され、前記止水材付水切部材の先端部は、前記新設屋根材の縁部の上に敷設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の屋根改修構造。
【請求項5】
側壁に隣り合う既存屋根材の上に水切板と止水材とを備えた止水材付水切部材を設置する止水材付水切部材設置工程と、
前記既存屋根材および前記止水材付水切部材の先端部の上に新設屋根材を設置する新設屋根設置工程と、
前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁部との取り合いにおいて前記止水材付水切部材の上に、空気が通過可能な通気部材と、新設壁水切板を支持する支持部材とを設置する通気部材設置工程と、
前記通気部材および前記支持部材を覆うように前記新設壁水切板を設置し、前記新設壁水切板を前記支持部材に固定する新設壁水切板設置工程と、を備え、
前記止水材付水切部材設置工程では、前記水切板の基端部を、前記側壁の表面板材の下端部と前記既存屋根材との隙間を通して前記側壁の下地部側に挿入し、前記水切板の基端部に固定された前記止水材を前記下地部に押し付ける
ことを特徴とする屋根改修構造の構築方法。
【請求項6】
側壁に隣り合う既存屋根材の上に新設屋根材を設置する新設屋根設置工程と、
前記既存屋根材の上縁部および側縁部に設けられた既存壁水切板の先端部の上に受桟を設置する受桟設置工程と、
前記受桟および前記新設屋根材の縁部を覆うように水切板と止水材とを備えた止水材付水切部材を設置する止水材付水切部材設置工程と、を備え、
前記止水材付水切部材設置工程では、前記水切板の基端部を、前記側壁の表面板材の下端部と前記既存屋根材との隙間を通して前記側壁の下地部側に挿入し、前記水切板の基端部に固定された前記止水材を前記下地部に押し付ける
ことを特徴とする屋根改修構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存屋根を改修して形成される屋根改修構造およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧スレート屋根を用いた既存屋根の改修工法としては、既存の化粧スレート屋根を残し、その上に新しい屋根を葺く「カバー工法」が知られている(例えば非特許文献1および特許文献1参照)。カバー工法では、既存の屋根材の上に下葺材を敷設し、新設の屋根材を設置している。勾配屋根の水上や側部における外壁(側壁)との取り合い部分では、既存の壁水切板の上に下地板を新設し、この下地板を覆うように新たな壁水切板を設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「鋼板製屋根構法標準 SSR2007」社団法人日本金属屋根協会、社団法人日本鋼構造協会、2008年1月、p308-316
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1の改修工法では、防水性能は確保されているものの、側壁の通気性能が確保されていない。新設の屋根構造において確保されていた側壁の通気性能が、改修後に失われるのは好ましくない。
【0006】
そこで、本発明は、側壁内部の通気性能および排水性能を確保できる屋根改修構造およびその構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための第一の本発明は、既存屋根材の上に設置される新設屋根材と、側壁に隣り合う前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁との取り合いにおいて、前記既存屋根材の上に設置される新設の止水材付水切部材を備えており、前記止水材付水切部材は、水切板と、当該水切板の前記側壁側に固定された止水材とを有し、前記水切板の基端部は、前記側壁の表面板材の下端部と前記既存屋根材との隙間を通過して前記側壁の下地部側に入り込んでおり、前記止水材は、前記側壁の前記下地部に押し付けられていることを特徴とする屋根改修構造である。
【0008】
本発明の屋根改修構造によれば、止水材付水切部材と側壁の表面板材との間には隙間が存在するので、側壁内部の通気性能を確保することができる。なお、本明細書中において「通気性能」とは、側壁内部の一定量の空気を外部に排出できること、および側壁内部と外部との空気の吸入・排出(吸排出)をできることを言う。また、万一側壁内部に水が浸入しても止水材付水切部材を介して外部に排水することができる。さらに、止水材によって止水材付水切部材の下側への水の浸入を阻止できる。
【0009】
本発明の屋根改修構造においては、前記止水材付水切部材の前記水切板には、前記新設屋根材側からの水を堰き止める段差部が形成されているものが好ましい。このような構成によれば、新設屋根材側から側壁側に強風が吹いても、段差部によって水が堰き止められるので、防水性能が高くなる。
【0010】
また、本発明の屋根改修構造においては、前記止水材付水切部材の上に設置される通気部材と、前記通気部材を覆うように設置される新設壁水切板と、をさらに備えており、前記通気部材は、前記表面板材の下端部に開口する側壁通気層に連通して配置されているものが好ましい。このような構成によれば、新設壁水切板を設けたことで、防水性能がより一層高くなる。さらに、通気部材を通して側壁内部の通気性能(側壁内部の一定量の空気を外部に排出できること、および側壁内部と外部との空気の吸入・排出(吸排出)をできることの両方の性能)を確保することができる。また、通気部材を通して側壁内に浸入した水を排水する排水性能も確保できる。
【0011】
さらに、本発明の屋根改修構造においては、前記既存屋根材の上縁部および側縁部には、既存壁水切板が設けられており、前記既存壁水切板の先端部の上に設置された受桟をさらに備え、前記止水材付水切部材は、前記受桟に支持され、前記止水材付水切部材の先端部は、前記新設屋根材の縁部の上に敷設されているものが好ましい。このような構成によれば、受桟を設けたことで止水材付水切部材を安定した状態で支持できる。また、止水材付水切部材の先端部を新設屋根材の縁部の上に敷設することで、新設壁水切板を省略しつつ防水性能を確保できる。
【0012】
前記課題を解決するための第二の本発明は、側壁に隣り合う既存屋根材の上に水切板と止水材とを備えた止水材付水切部材を設置する止水材付水切部材設置工程と、前記既存屋根材および前記止水材付水切部材の先端部の上に新設屋根材を設置する新設屋根設置工程と、前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁部との取り合いにおいて前記止水材付水切部材の上に、空気が通過可能な通気部材と、新設壁水切板を支持する支持部材とを設置する通気部材設置工程と、前記通気部材および前記支持部材を覆うように前記新設壁水切板を設置し、前記新設壁水切板を前記支持部材に固定する新設壁水切板設置工程と、を備え、前記止水材付水切部材設置工程では、前記水切板の基端部を、前記側壁の表面板材の下端部と前記既存屋根材との隙間を通して前記側壁の下地部側に挿入し、前記水切板の基端部に固定された前記止水材を前記下地部に押し付けることを特徴とする屋根改修構造の構築方法である。
【0013】
本発明の屋根改修構造の構築方法によれば、側壁の表面板材と既存屋根材との隙間が小さい場合でも、止水材付水切部材を挿入して、止水材を側壁の下地部に容易に押し付けることができる。つまり、簡単な施工で、通気性能および排水性能を備えた屋根改修構造を容易に構築できる。また、新設壁水切板を設けたことで、防水性能がより一層高くなる。さらに、通気部材を通して側壁内部の通気性能を確保することができる。
【0014】
前記課題を解決するための第三の本発明は、本発明の屋根改修構造の構築方法においては、側壁に隣り合う既存屋根材の上に新設屋根材を設置する新設屋根設置工程と、前記既存屋根材の上縁部および側縁部に設けられた既存壁水切板の先端部の上に受桟を設置する受桟設置工程と、前記受桟および前記新設屋根材の縁部を覆うように水切板と止水材とを備えた止水材付水切部材を設置する止水材付水切部材設置工程と、を備え、前記止水材付水切部材設置工程では、前記水切板の基端部を、前記側壁の表面板材の下端部と前記既存屋根材との隙間を通して前記側壁の下地部側に挿入し、前記水切板の基端部に固定された前記止水材を前記下地部に押し付けることを特徴とする屋根改修構造の構築方法である。
【0015】
本発明の屋根改修構造の構築方法によれば、側壁の表面板材と既存屋根材との隙間が小さい場合でも、止水材付水切部材を挿入して、止水材を側壁の下地部に容易に押し付けることができる。つまり、簡単な施工で、通気性能および排水性能を備えた屋根改修構造を容易に構築できる。また、受桟を設けたことで止水材付水切部材を安定した状態で支持できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る屋根改修構造およびその構築方法によれば、側壁内部の通気性能および排水性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造を示した一部破断斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造を流れ方向から見た断面図である。
【
図3】改修前の屋根構造を流れ方向から見た断面図である。
【
図4】本発明の第二実施形態に係る屋根改修構造を示した一部破断斜視図である。
【
図5】本発明の第二実施形態に係る屋根改修構造を流れ方向から見た断面図である。
【
図6】本発明の第三実施形態に係る屋根改修構造を桁方向から見た断面図である。
【
図7】本発明の第三実施形態に係る屋根改修構造を流れ方向から見た断面図である。
【
図8】改修前の屋根構造を桁方向から見た断面図である。
【
図9】改修前の屋根構造を流れ方向から見た断面図である。
【
図10】止水材付水切部材の変形例の形状を示した図であって、(a)は第一変形例の止水材付水切部材を示した断面図、(b)は第二の変形例の止水材付水切部材を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第一の実施形態に係る屋根改修構造およびその構築方法について、図面を参照しながら詳細を説明する。まず、屋根改修構造の構成を説明する。本実施形態に係る屋根改修構造は、既存屋根材を残した状態で新設屋根材を設置する改修構造である。
図1および
図2に示すように、屋根改修構造1は、既存屋根材10の上に設置される止水材付水切部材20と、新設屋根材30と、通気部材40と、支持部材41と、新設壁水切板50と、取合水切板60とを備えている。
【0019】
既存屋根材10は、改修前に構築されている板材であり、既存屋根材10の側部には側壁14が立設されている。既存屋根材10は、垂木(図示せず)上に設置された野地板11の上に、下葺材12を介して複数枚敷設されている。既存屋根材10は、野地板11に釘を用いて固定されている。下葺材12は、側壁14の下地部14aの表面まで延在し、下地部14aに沿って所定高さ立ち上がっている。具体的には、下葺材12の立上り寸法は250mm程度であり、後記する既存L型捨水切15の立上り部15aの上端より50mm程度高く立ち上がっている。既存屋根材10の水勾配方向の側縁部において、側壁14との取り合い部分には、既存L型捨水切15が設置されている。既存L型捨水切15は、断面L字形状を呈しており、立上り部15aを備えている。立上り部15aは、下地部14aの表面に沿って立ち上がった下葺材12に当接している。立上り部15aの上方には、外壁下張材16が敷設されている。外壁下張材16は、下地部14aの表面から立上り部15aの上端縁部に亘って敷設され、立上り部15aの上端を覆っている。
【0020】
側壁14の表面板材14bは、下地縦材14cに固定されている。下地縦材14cは、所定間隔をあけて表面板材14bの裏面側に配設されている。隣り合う下地縦材14cの間は、側壁14の内部で上下方向に広がる側壁通気層17(
図1参照)となっている。側壁通気層17は、側壁14の下端部で、下方に向かって開口している。
【0021】
止水材付水切部材20は、既存屋根材10の上に設置される新設の水切部材であって、水切板21と止水材22とを有している。水切板21は、断面L字形状を呈しており、立上り部21aと平面部21bとを備えている。立上り部21aは、平面部21bの側壁14の下地部14a側の端部に連続して屈曲し、側壁14の下地部14aに沿って上方に立ち上がっている。平面部21bの先端部は、既存L型捨水切15の先端よりも屋根の中心寄りに張り出している。
【0022】
止水材22は、例えば、弾性部材からなるパッキンにて構成されており、下地部14aに対向する立上り部21aの表面に貼り付けられている。止水材22は、下地部14aに対して押し付けられ、圧縮状態となっている。
【0023】
新設屋根材30は、止水材付水切部材20と、撤去されず残置した既存屋根材10の上に新設される板材である。新設屋根材30は、既存屋根材10の上に、改修粘着下葺材31を介して複数枚敷設されている。改修粘着下葺材31は、下葺材の裏面に粘着層と剥離紙を備えて構成されており、施工時に剥離紙を剥がして既存屋根材10に貼りつけられる。改修粘着下葺材31は、既存屋根材10の表面の側縁部まで敷設されている。新設屋根材30は、改修粘着下葺材31の上に敷設され、釘を用いて固定されている。釘は、新設屋根材30の上から改修粘着下葺材31を貫通して下方まで延在している。なお、改修粘着下葺材31に代えて、粘着層を有しない下葺材を敷設してもよい。新設屋根材30の側縁部は、止水材付水切部材20の平面部21bの先端部の上まで延在して敷設されている。新設屋根材30の側縁端面には、シーリング材32が設けられている。シーリング材32は、新設屋根材30の側縁部と、通気部材40および支持部材41の下端部(新設屋根材30の高さに相当する部分)との間を覆う不定形のシール材であって、通気部材40および支持部材41の長手方向に沿って設けられている。
【0024】
通気部材40は、側壁14の内部の空気を外部に通気させる部材である。通気部材40は、樹脂製の三次元網目構造の板状部材にて構成されており、中空部が連続して上下前後左右に通気可能となっている。通気部材40は、例えば、可撓性を備えており、ロール状に保管された状態から展開されて敷設される。通気部材40は、新設屋根材30の水勾配方向の上縁部(図示せず)および側縁部と、側壁14との取り合いにおいて、既存L型捨水切15および止水材付水切部材20の上に設置されている。通気部材40は、既存L型捨水切15の長手方向に延在する直方体形状を呈しており(
図1参照)、既存L型捨水切15の長手方向に沿って所定の間隔をあけて複数敷設されている。通気部材40は、止水材付水切部材20の平面部21bの上であって、側壁14の表面板材14bよりも外側に突出している部分の上面に敷設されており、側壁14の下端部に開口する側壁通気層17に連通して配置されている。
【0025】
支持部材41は、
図1に示すように、新設壁水切板50を支持する部材であって、例えばブロック状の木材にて構成されている。支持部材41は、木材に限定されるものではなく、樹脂等の他の部材で形成されていてもよい。また、新設壁水切板50を支持可能な強度を備えていれば、通気部材が新設壁水切板50を支持する役目を果たしてもよい。支持部材41の断面形状は、通気部材40の断面形状と同等であり、間隔をあけて配置された通気部材40,40の間に配置されている。つまり、通気部材40と支持部材41とは、新設屋根材30の側縁部に沿って設けられた止水材付水切部材20の上に交互に配置されている。なお、通気部材40と支持部材41との配置は、一個ずつ交互に限定されるものではない。同じ部材を複数個ずつ並べて配置してもよいし、一方の部材を複数個並べ、その間に他方の部材を単数並べてもよい。また、本実施形態では、支持部材41の断面形状は、通気部材40の断面形状と同等であるが、これに限定されるものではなく、支持部材41の断面形状と通気部材40の断面形状とが異なった形状であってもよい。例えば、通気部材40の断面形状を支持部材41の断面形状よりも小さくしてもよい。通気部材40と支持部材41とは、止水材付水切部材20の平面部21bの上に敷設された防水性両面テープ33を介して止水材付水切部材20に仮固定されている。支持部材41は、上面から下方に向かって打たれた釘(またはビス)によって固定されている。釘は、防水性両面テープ33を貫通して下方まで延在している。釘の先端部は、止水材付水切部材20の平面部21bを貫通するが、平面部21bの表面に防水性両面テープ33が敷設されていることで、平面部21bに形成された釘孔と釘との隙間が防水性両面テープ33で塞がれて、防水性を確保することができる。新設屋根材30の側縁部で水勾配に沿って延在する支持部材41は、水勾配の上側となる側面が、側壁14から離れるに連れて水勾配の下流側になるように傾斜していることが好ましい。これによって、通気部材40に流れ込んだ水が側壁14側に流れるのを抑制している。なお、水勾配の上側となる支持部材41の側面は傾斜していないものであってもよい。
【0026】
新設壁水切板50は、既存L型捨水切15および止水材付水切部材20の上方で、通気部材40および支持部材41を覆う水切材であって、側壁14の表面を流れた水を新設屋根材30上に流す。新設壁水切板50は、金属製の板材を折曲げ加工して形成されており、立上板部51と上面板部52と端面板部53とを有している。
【0027】
立上板部51は、新設壁水切板50を側壁14に固定する部位であって、側壁14の表面板材14bに沿って立ち上がって、表面板材14bの下端部に当接して固定されている。立上板部51の上端部には、側壁14から離間する方向に突出するリップ部54が形成されている。リップ部の上面にはシール部材が敷設されている。なお、新設壁水切板50は、立上板部51の上端部にリップ部54が無い形状であってもよい。
【0028】
上面板部52は、通気部材40および支持部材41の上面を覆う部位である。上面板部52は、立上板部51の下端部に連続して形成され、立上板部51に対して新設屋根材30側に向かって屈曲している。新設屋根材30の上縁部に設けられた新設壁水切板50の上面板部52は、立上板部51に対して鈍角で屈曲し、先端側が斜め下方に傾斜している(
図2参照)。新設屋根材30の側縁部に設けられた新設壁水切板50の上面板部52は、立上板部51に対して直角で屈曲している。
【0029】
端面板部53は、通気部材40および支持部材41の新設屋根材30側の端面を覆う部位である。端面板部53は、上面板部52の先端部に連続して形成され、下方に向かって直角に屈曲している。端面板部53は、通気部材40および支持部材41の端面に当接または近接している。端面板部53は、支持部材41に向けて横向きに打たれた釘(またはビス)によって固定されている。端面板部53には、通気孔55が形成されている。通気孔55は、側壁14の側壁通気層17の空気を外部に通気させるための孔であって、通気部材40に対向して繋がるように配置されている。通気孔55は、側壁14内に浸入した水を排水する機能も備えている。通気孔55は、横長のスリット形状を呈しており、新設壁水切板50の長手方向に沿って所定の間隔をあけて複数形成されている。通気孔55は、端面板部53の下端部に形成されており、端面板部53の下端から上方に一定間隔の間隔(通気孔55の高さ寸法と同等の間隔)をあけて配置されている。なお、通気孔55の形状は横長のスリット形状に限定されるものではなく、縦長のスリット形状、円形状あるいは矩形形状等の他の形状であってもよい。端面板部53の下端部には、スカート部56が形成されている。スカート部56は、端面板部53の下端部に連続して形成され、端面板部53に対して鈍角で屈曲し、先端側が斜め下方に傾斜している。スカート部56の先端部は、内側に折り返されており、新設屋根材30の表面に当接または近接している。スカート部56によって、雨水等が通気部材40や支持部材41側に逆流するのを抑制している。また、通気孔55が端面板部53の下端から一定間隔の高さに形成したことで、下流側から吹き込んだ雨水等の浸入を阻止するとともに、剛性の低下を抑制している。
【0030】
取合水切板60は、新設壁水切板50の上端部を覆う水切りであって、新設壁水切板50の上方の側壁14の表面板材14bに取り付けられている。取合水切板60は、新設壁水切板50の上端部に水が流れるのを抑制する部材である。取合水切板60は、当接板部61と張出板部62と垂下板部63とを備えている。当接板部61は、取合水切板60を側壁14に固定する部位であって、新設壁水切板50の上方で側壁14の表面板材14bに沿って立ち上がって、表面板材14bに当接して固定されている。張出板部62は、新設壁水切板50の立上板部51の上端部を上方から覆う部位である。張出板部62は、当接板部61の下端部に連続して形成され、側壁14から離間する方向に屈曲して張り出している。垂下板部63は、新設壁水切板50の立上板部51の上端部を側方から覆う部位である。垂下板部63は、張出板部62の先端部に連続して形成され、下方に向かって直角に屈曲している。垂下板部63の下端部は、立上板部51の上端より低い位置に配置されている。
【0031】
次に、本実施形態に係る屋根改修構造1の構築方法を
図1および
図2を参照しながら説明する。かかる屋根改修構造1の構築方法は、止水材付水切部材設置工程と、新設屋根設置工程と、両面テープ敷設工程と、通気部材設置工程と、新設壁水切板設置工程と、取合水切板設置工程とを備えている。
【0032】
止水材付水切部材設置工程は、側壁14に隣り合う既存屋根材10(
図3参照)の上に止水材付水切部材20を設置する工程である。止水材付水切部材設置工程では、予め止水材22を水切板21の立上り部21aに固定して止水材付水切部材20を形成しておく。
図1および
図2に示すように、施工現場では、既存屋根材10の上に、改修粘着下葺材31を敷設する。改修粘着下葺材31の先端部は、既存屋根材10の側縁部まで延在するように敷設する。止水材付水切部材20の平面部21bの先端部側から作業員が平面部21bを把持する。そして、水切板21の基端部(立上り部21a、平面部21bの基端部および止水材22)を、側壁14の表面板材14bの下端部と既存屋根材10との隙間を通して側壁14の下地部14a側に挿入し、水切板21の基端部に固定された止水材22を下地部14aに押し付ける。そして、水切板21の平面部21bを改修粘着下葺材31の上に敷設して、釘またはビスによって固定する。
【0033】
新設屋根設置工程は、既存屋根材10および止水材付水切部材20の先端部の上に新設屋根材30を設置する工程である。新設屋根設置工程では、止水材付水切部材設置工程で敷設した改修粘着下葺材31の上に新設屋根材30を敷設する。
【0034】
両面テープ敷設工程は、新設屋根材30の側縁部と、側壁14との取り合いにおいて、止水材付水切部材20の上に防水性両面テープ33を敷設する工程である。防水性両面テープ33は、通気部材40および支持部材41を止水材付水切部材20に接着するためのものであって、水切板21の平面部21bの上面に貼り付ける。防水性両面テープ33は、通気部材40および支持部材41の設置位置に敷設する。なお、防水性両面テープ33は、平面部21bの上面ではなく、支持部材41の下面に貼り付けていてもよい。また、防水性両面テープ33に代えて、シーリング材を敷設してもよい。
【0035】
通気部材設置工程は、防水性両面テープ33の上に、通気部材40と支持部材41とを設置する工程である。通気部材設置工程では、交互に接続され所定長さで一体化された通気部材40と支持部材41(
図1参照)とを、防水性両面テープ33の上に設置する。支持部材41を、釘またはビスによって、止水材付水切部材20の上に固定する。新設屋根材30の上縁部と側縁部との取り合い部分では、角部に支持部材41を配置し、支持部材41から通気部材40がL字状に延在するように配置する。
【0036】
その後、新設屋根材30の側縁部と、通気部材40および支持部材41の下端部(新設屋根材30の高さに相当する部分)との間にシーリング材32を塗布する。シーリング材32は、新設屋根材30の端縁部と、通気部材40および支持部材41の下端部との隙間を覆うように塗布する。
【0037】
新設壁水切板設置工程は、通気部材40および支持部材41を覆うように新設壁水切板50を設置し、新設壁水切板50を支持部材41と側壁14に固定する工程である。新設壁水切板設置工程では、新設壁水切板50の立上板部51を側壁14の表面板材14bに当接してビス止めするとともに、上面板部52を支持部材41に載置して、端面板部53を、支持部材41に向けて横向きに打たれた釘(またはビス)によって固定する。側壁14とリップ部54とで構成される入隅部には、シール材を設ける。なお、リップ部54が無い場合は、立上板部51の裏面にシーリング材を塗布して、ビスで押さえる。
新設壁水切板50の端面板部53は、通気部材40および支持部材41の新設屋根材30側の端面に近接して、この端面を覆う。端面板部53には通気孔55が形成されているので、側壁14の側壁通気層17は、通気部材40と通気孔55を介して外気に繋がるので、側壁14内と外部との通気性を確保できる。
【0038】
取合水切板設置工程は、新設壁水切板50の上方に取合水切板60を設置する工程である。取合水切板設置工程では、新設壁水切板50の上方の側壁14の表面板材14bに取合水切板60の当接板部61を接着する。当接板部61の上端部の接着面にはシール材を敷設しておく。これによって、取合水切板60の張出板部62と垂下板部63とが新設壁水切板50の上端部を覆って、新設壁水切板50の上端部に水が流れるのが抑制される。取合水切板60を設置すると、屋根改修構造1の構築が完了する。
【0039】
本実施形態の屋根改修構造1およびその構築方法によれば、止水材付水切部材20を設けたことで止水性能が向上する。この止水材付水切部材20と側壁14の表面板材14bの下端部との間には隙間が存在するので、側壁14の内部の側壁通気層17を表面板材14bの外側と連通させることができる。本実施形態では、通気部材40および通気孔55を介して、側壁通気層17を外部と連通させることができる。したがって、屋根改修構造1は、新設壁水切板50を設けていても側壁内部の通気性能を確保することができる。また、万一側壁内部に水が浸入しても止水材付水切部材20,通気部材40および通気孔55を介して外部に排水することができる。また、止水材22によって止水材付水切部材20の下側への水の浸入を阻止できる。さらに、止水材22は、下地部14aに押し付けられているので、止水性能が向上する。
【0040】
また、止水材付水切部材20は、断面L型形状を呈しており、立上り部21aの外側面に止水材22が固定されているので、設置が容易となる。具体的には、水切板21の平面部21bを把持して、水切板21の基端部を、側壁14の表面板材14bの下端部と既存屋根材10との隙間を通して下地部14a側に挿入すればよい。これによって、表面板材14bと既存屋根材10との隙間が一定ではなく、その距離が小さくなっている場合でも、容易に水切板21の基端部を挿入して止水材22を下地部14aに押し付けることができる。つまり、簡単な施工で、通気性能および排水性能を備えた屋根改修構造1を容易に構築できる。
【0041】
さらに、本実施形態の屋根改修構造1では、止水材付水切部材20の上に新設壁水切板50を設けているが、新設壁水切板50の下部に通気部材40を設けているので、側壁14の内部と外部との通気性能を確保することができる(側壁14内の一定量の空気を排水できるとともに、側壁14の内部と外部とで空気の吸入および排出が行える)。また、新設壁水切板50の端面板部53に通気孔55が形成されていることによって、通気部材40を外気につなげることができるので、側壁14内の空気を通気部材40と通気孔55から外部に効率的に排出できるとともに、外部の空気を内部に吸入することができる。したがって、通気性能をより一層高めることができる。さらに、通気部材40と支持部材41とが交互に配置されているので、新設壁水切板50を安定した状態でビス止めすることができる。また、本実施形態の屋根改修構造1によれば、通気部材40を通して側壁14の内部に浸入した水を通気孔55から外部に排水できる。つまり、本実施形態の屋根改修構造1によれば、通気性能に加えて排水性能も確保することができる。
【0042】
また、既存屋根材10を残置し、その上に止水材付水切部材20、新設屋根材30および新設壁水切板50を設置しているので、防水構造が三重になり、防水性能も高めることができる。さらに、止水材付水切部材20の表面に、防水性両面テープ33が敷設されているので、止水材付水切部材20の表面に通気部材40と支持部材41を容易に接着できる。また、新設壁水切板50を支持部材41と止水材付水切部材20にビス止め固定する際に、防水性両面テープ33が止水材付水切部材20のビス穴に入り込むので、止水性を確保できる。
【0043】
次に、
図4および
図5を参照しながら、第二の実施形態に係る屋根改修構造1bの構成を説明する。第二実施形態に係る屋根改修構造1bは、止水材付水切部材25の形状が第一実施形態の止水材付水切部材20と異なる。
【0044】
図4および
図5に示すように、第二実施形態の止水材付水切部材25は、第一実施形態と同様に、既存屋根材10の上に設置される新設の水切部材であって、水切板26と止水材27とを有している。水切板26の形状が第一実施形態と異なる。水切板26は、立上り部26aと第一平面部26bと段差部26cと第二平面部26dとを備えている。立上り部21aは、第一平面部26bの側壁14の下地部14a側の端部に連続して屈曲し、下地部14aに沿って上方に立ち上がっている。
【0045】
第一平面部26bは、水切板26の基端側(下地部14a側)に位置する横板部であり、下葺材31の上に載置されている。第一平面部26bは、側壁14の表面板材14bと下地縦材14cの下方に配置されている。
【0046】
段差部26cは、新設屋根材30側からの水を堰き止めるように、第一平面部26bおよび第二平面部26dから上方に突出している。段差部26cは、断面門型に形成されており、第一平面部26bの先端部に連続して形成されている。段差部26cの突出高さ寸法は、新設屋根材30の厚さ(2枚分の厚さ)寸法と同等となっている。段差部26cの上面には、通気部材40および支持部材41を固定するための防水性両面テープ33が敷設されている。段差部26cの内側には、受桟28が設けられている。受桟28は、断面矩形の長尺木材であって、下葺材31の上に載置され、段差部26cの上側平面部に下側から当接している。
【0047】
第二平面部26dは、段差部26cの先端部に連続して形成されており、第一平面部26bと同一平面状となっている。第二平面部26dは、下葺材31の上に載置され、上面に新設屋根材30の側縁部が敷設されている。第二平面部26dの基端部には、シーリング材32が設けられている。シーリング材32は、新設屋根材30の側縁部と、段差部26cの先端側縦板部との間に塗布され、新設屋根材30の下側に水が浸入するのを防止する。
【0048】
止水材27は、第一実施形態の止水材22と同様には、例えば、弾性部材からなるパッキンにて構成されており、下地部14aに対向する立上り部26aの表面に貼り付けられている。
【0049】
本実施形態では、通気部材40および支持部材41は、段差部26cの上に固定され、通気部材40および支持部材41の先端部は、新設屋根材30の側縁部の上に配置されている。なお、その他の構成については、第一実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0050】
このような構成の屋根改修構造1bの止水材付水切部材25を設置するに際しては、先に改修粘着下葺材31の上に受桟28を固定しておく。そして、第一実施形態と同様に、止水材付水切部材25の第二平面部26dの先端部側から作業員が第二平面部26dを把持し、水切板26の基端部(立上り部26a、第一平面部26bの基端部および止水材27)を、側壁14の表面板材14bの下端部と既存屋根材10との隙間を通して側壁14の下地部14a側に挿入する。水切板26の基端部に固定された止水材27を下地部14aに押し付けて、水切板26の第一平面部26bおよび第二平面部26dを改修粘着下葺材31の上に敷設し、釘またはビスによって固定する。
【0051】
第二実施形態の屋根改修構造1bによれば、第一実施形態と同様の作用効果の他に、以下の作用効果を得ることができる。つまり、止水材付水切部材25が段差部26cを備えているので、新設屋根材30側から側壁14側に強風が吹いても、段差部26cによって水を堰き止めることができる。したがって、防水性能をより一層高くすることができる。
【0052】
次に、
図6乃至
図9を参照しながら、第三の実施形態に係る屋根改修構造1cの構成を説明する。第三実施形態に係る屋根改修構造1cは、通気部材40、支持部材41や新設壁水切板50(以下、「新設壁水切板50等」という場合がある)が設けられていない点で、第一実施形態の止水材付水切部材20と異なる。
【0053】
図8および
図9に示すように、既存屋根材10の上端縁部および側縁部に既存雨押え18がある場合に、新設壁水切板50等を省略することができる。第三実施形態の屋根改修構造1cは、既存屋根材10の上の既存雨押え18の上に設置される止水板付水切部材70と、新設屋根材30とを備えている。
【0054】
既存屋根材10の水勾配の上端縁部では、
図8に示すように、野地板11の上に下葺材12を介して固定された既存屋根材10は、側壁14の下地部14aの近傍まで延在している。既存雨押え18は、既存屋根材10の上端部表面に設置された既存笠木17aの上に設置されている。既存雨押え18は、立上り部18aと、平面部18bと、立下り部18cと、張出部18dとを備えている。立上り部18aは、既存雨押え18の基端部に位置し、下地部14aに沿って立ち上がっている。平面部18bは、既存屋根材10に沿って斜め下方に延在し、既存笠木17aの上に載置されている。平面部18bの先端部は、側壁14の下地縦材14cおよび表面板材14bよりも屋根の中心寄りに延在している。立下り部18cは、平面部18bの先端に連続して下方に屈曲し、既存笠木17aの先端面を覆っている。張出部18dは、立下り部18cの先端に連続して前方に屈曲し、既存屋根材10に沿って張り出している。
【0055】
図6に示すように、止水材付水切部材70は、既存屋根材10の上の既存雨押え18の上に設置される新設の水切部材であって、水切板71と止水材72とを有している。水切板71は、断面クランク形状を呈しており、立上り部71aと平面部71bと、立下り部71cと、張出部71dとを備えている。立上り部71aは、平面部71bの側壁14の下地部14a側の端部に連続して屈曲し、側壁14の下地部14aに沿って上方に立ち上がっている。平面部71bは、既存雨押え18の平面部18bに沿って斜め下方に延在している。平面部71bの先端部は、既存雨押え18の平面部18bの先端よりも屋根の中心寄りに延在しており、既存雨押え18の張出部18dの上に設置された受桟73の上に載置されている。立下り部71cは、平面部71bの先端に連続して下方に屈曲し、受桟73の先端面上部を覆っている。張出部71dは、立下り部71cの先端に連続して前方に屈曲し、新設屋根材30に沿って張り出している。
【0056】
止水材72は、第一実施形態の止水材22と同様に、例えば、弾性部材からなるパッキンにて構成されており、下地部14aに対向する立上り部71aの表面に貼り付けられている。
【0057】
新設屋根材30は、撤去されず残置した既存屋根材10の上に新設される板材である。新設屋根材30は、既存屋根材10の上に、複数枚敷設されている。改修粘着下葺材31は、下葺材の裏面に粘着層と剥離紙を備えて構成されており、施工時に剥離紙を剥がして既存屋根材10に貼りつけられる。改修粘着下葺材31の上端部は、既存屋根材10の表面から、受桟73に沿って立ち上り、既存屋根材10の平面部18bの表面まで敷設されている。新設屋根材30は、改修粘着下葺材31の上に敷設され、釘(図示せず)を用いて既存屋根材10に固定されている。釘は、新設屋根材30の上から改修粘着下葺材31を貫通して下方の野地板11まで延在している。なお、新設屋根材30は、粘着性の改修粘着下葺材31を用いず、粘着層を有しない下葺材を介して敷設してもよい。新設屋根材30の側縁部は、既存雨押え18の張出部18dの近傍まで延在して敷設されている。
【0058】
受桟73は、既存雨押え18および既存屋根材10にビス止めされている。改修粘着下葺材31の上端部には、シーリング材74が敷設されており、止水材付水切部材70の平面部71bと既存雨押え18の平面部18bとの接着および止水の役目を果たす。これによって、止水材付水切部材70と既存雨押え18とは、止水材72とシーリング材74とで二重の止水効果が得られる。
【0059】
既存屋根材10の側縁部では、
図9に示すように、既存雨押え18の下に受桟17bと既存捨水切19が設けられている。受桟17bは、野地板11および下葺材12の側縁部の上に設置されている。既存捨水切19は、断面クランク形状を呈しており、立上り部19aと平面部19bと、立下り部19cと、張出部19dとを備えている。立上り部19aは、下地部14aに沿って立ち上がっている。平面部19bと立下り部19cで受桟17bを覆うように、既存捨水切19が配置されている。張出部18dは、下葺材12に沿って張り出しており、既存屋根材10の下側に入り込んでいる。既存雨押え18の既存笠木17aは、既存捨水切19の平面部19bと既存屋根材10の側縁部に跨って載置され、この既存笠木17aを覆うように既存雨押え18が設置されている。このように、既存捨水切19の上に、既存雨押え18を設けたことで、止水性が高くなっている。
【0060】
図7に示すように、既存屋根材10の側縁部の止水材付水切部材70は、水切板71の立上り部71aと平面部71bとが直交しており、平面部71bおよび張出部71dが水平方向に延在している。その他の構成については、上端縁部の止水材付水切部材70と同等であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0061】
第三実施形態に係る屋根改修構造1cの構築方法を
図6および
図7を参照しながら説明する。かかる屋根改修構造1cの構築方法は、新設屋根設置工程と、止水材付水切部材設置工程とを備えている。
【0062】
新設屋根設置工程は、既存屋根材10の上に新設屋根材30を設置する工程である。新設屋根設置工程では、まず、既存屋根材10から既存雨押え18の上に、受桟73を、ビスまたは釘によって固定した後に、改修粘着下葺材31を敷設する。そして、改修粘着下葺材31の上に新設屋根材30を敷設する。
【0063】
止水材付水切部材設置工程は、側壁14に隣り合う既存屋根材10および既存雨押え18の上に止水材付水切部材70を設置する工程である。止水材付水切部材設置工程では、予め止水材72を水切板71の立上り部71aに固定して止水材付水切部材70を形成しておく。施工現場では、改修粘着下葺材31の先端部(既存雨押え18の平面部18bの上)に、シーリング材74を敷設する。止水材付水切部材70の張出部71dの先端部側から作業員が平面部71bを把持する。そして、水切板71の基端部を、側壁14の表面板材14bの下端部と既存雨押え18との隙間を通して側壁14の下地部14a側に挿入し、水切板71の基端部に固定された止水材72を下地部14aに押し付ける。そして、水切板71の平面部71bをシーリング材74に貼り付け、ビスまたは釘によって、止水材付水切部材70を固定する。以上の工程で、屋根改修構造1cの構築が完了する。
【0064】
第三実施形態の屋根改修構造1cおよびその構築方法によれば、止水材付水切部材70を設けたことで止水性能が向上する。この止水材付水切部材70と側壁14の表面板材14bの下端部との間には隙間が存在するので、側壁14の内部の側壁通気層17を表面板材14bの外側と連通させることができる。本実施形態では、新設壁水切板50等を省略できるので、第一実施形態と比較して屋根改修構造1cの構成を簡略化でき、施工手間を省略できる。
【0065】
また、止水材付水切部材70は、第一実施形態と同様に、設置が容易となる。具体的には、水切板71の平面部71bを把持して、水切板71の基端部を、側壁14の表面板材14bの下端部と既存雨押え18との隙間を通して下地部14a側に挿入すればよい。これによって、表面板材14bと既存雨押え18との隙間が小さい場合でも、容易に水切板71の基端部を挿入して止水材72を下地部14aに押し付けることができる。つまり、簡単な施工で、通気性能および排水性能を備えた屋根改修構造1cを容易に構築できる。
【0066】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。前記実施形態では、止水材付水切部材20の止水材22として、パッキンが用いされているが、これに限定されるものではない。例えば、止水材に、防水テープやシーリング材等、他のものを用いてもよい。
【0067】
また、第二実施形態の止水材付水切部材25の形状は前記形状に限定されるものではない。
図10の(a)に示すように、第一変形例に係る止水材付水切部材25の水切板26は、第二実施形態と同様に、立上り部26aと第一平面部26bと段差部26cと第二平面部26dとを備えている。かかる水切板26は、立上り部26aが、側壁14の下地部14a側に傾斜しており、立上り部26aと第一平面部26bとで成す角度が鈍角となっている。そして、止水材27は、下地部14aに対向する立上り部26aの表面の全面に亘って貼り付けられている。なお、その他の構成については、第二実施形態と同様であるので同じ符号を付して説明を省略する。
【0068】
このような構成によれば、止水材付水切部材25を、側壁14の表面板材14bの下端部と既存雨押え18との隙間を通して下地部14a側に挿入する際に、作業を行い易い。具体的には、立上り部26aが鈍角で交差しているため、装着時に、止水材付水切部材25は、第一平面部26bから段差部26c、第二平面部26dと向かうに連れて、表面板材14bから離れるように傾斜する。したがって、止水材付水切部材25は、表面板材14bと干渉し難く、傷をつけずに装着することができる。また、立上り部26aは上部が下地部14aに近接することになるため、止水材27の上端部が局所的に下地部14a側に押し付けられ、必要な止水性を確保できる。
なお、立下り部が傾斜する構成は、第一実施形態の止水材付水切部材20にも適用可能であり、同様の作用効果を得られる。
【0069】
図10の(b)には、第二変形例に係る止水材付水切部材25が示されている。かかる止水材付水切部材25の水切板26は、立上り部26aの立上り寸法が大きくなっている。
具体的には、立上り部26aの立上り寸法は、側壁14の表面板材14bの表面と、下地部14aの表面との距離に、段差部26cの高さ寸法を加え、さらにクリアランス寸法を加えた値となっている。そして、止水材27は、下地部14aに対向する立上り部26aの表面の全面に亘って貼り付けられている。なお、その他の構成については、第二実施形態と同様であるので同じ符号を付して説明を省略する。
【0070】
このような構成によれば、止水材付水切部材25の装着時に、立上り部26aを横向きにして、側壁14の表面板材14bの下端部と既存雨押え18との隙間を通して下地部14a側に挿入するが、立上り部26aの先端部が下地部14a側に当接した状態で、段差部26cが表面板材14bに干渉しない。これによって、止水材付水切部材25は、表面板材14bと干渉し難く、傷をつけずに装着することができる。また、立上り部26立上り寸法が大きくなるため、止水材27と下地部14a側との接触面積が大きくなり、止水性が向上する。
【符号の説明】
【0071】
1 屋根改修構造
1b 屋根改修構造
1c 屋根改修構造
10 既存屋根材
14 側壁
14a 下地部
14b 表面板材
20 止水材付水切部材
21 水切板
22 止水材
25 止水材付水切部材
26 水切板
26c 段差部
27 止水材
30 新設屋根材
40 通気部材
41 支持部材
50 新設壁水切板
55 通気孔
70 止水材付水切部材
71 水切板
72 止水材