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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064173
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】エアゾール容器およびエアゾール製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/14 20060101AFI20240507BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B65D83/14 200
B05B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172562
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 明人
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 美希
(72)【発明者】
【氏名】金森 進一郎
【テーマコード(参考)】
3E014
4F033
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB01
3E014PC02
3E014PD01
3E014PE17
3E014PE24
3E014PF10
4F033RA02
4F033RB08
4F033RC01
4F033RC15
4F033RC16
(57)【要約】
【課題】静音化と噴射距離の抑制とを両立できるエアゾール容器およびエアゾール製品を提供する。
【解決手段】噴射するべき内容物を加圧状態で収容する本体部分の上端部に、本体部分2に向けて押し下げられることにより内容物を流出させるステム4が設けられるとともに、ステム4に連通していてステム4から流出した内容物を外部に向けて噴射するノズルピース6を有するエアゾール容器もしくは製品であって、ノズルピース6は、ステム4から流出した内容物が流通する導出路12と、その導出路12の流路断面積より広い断面積であってその導出路12を流通した内容物を拡散させるヘッダ室14と、一端部をヘッダ室14に開口させかつ他端部である噴射口15をノズルピース6の外表面に開口させた複数のノズル孔13とを有し、噴射口15の開口径が、0.2mm以上かつ1.0mm以下であり、ノズル孔の長さLが、10mm以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射するべき内容物を加圧状態で収容する本体部分の上端部に、前記本体部分に向けて押し下げられることにより前記内容物を流出させるステムが設けられるとともに、前記ステムに連通していて前記ステムから流出した前記内容物を外部に向けて噴射するノズルピースを有するエアゾール容器であって、
前記ノズルピースは、
前記ステムから流出した前記内容物が流通する導出路と、
前記導出路の流路断面積より広い断面積であって前記導出路を流通した前記内容物を拡散させるヘッダ室と、
一端部を前記ヘッダ室に開口させかつ他端部である噴射口を前記ノズルピースの外表面に開口させた複数のノズル孔とを有し、
前記噴射口の開口径が、0.2mm以上かつ1.0mm以下であり、
前記ノズル孔の長さが、10mm以上である
ことを特徴とするエアゾール容器。
【請求項2】
請求項1に記載のエアゾール容器であって、
複数の前記ノズル孔のそれぞれは、前記噴射口側の先端側流路と、前記先端側流路から前記ヘッダ室までの基端側流路とによって構成され、
前記先端側流路の内径が、0.2mm以上かつ1.0mm以下であり、前記先端側流路の長さが、0.5mm以上かつ1.5mm未満であり、
前記基端側流路の前記先端側流路側の端部の内径が前記先端側流路の内径より大きい
ことを特徴とするエアゾール容器。
【請求項3】
請求項2に記載のエアゾール容器であって、
前記基端側流路の前記ヘッダ室側の端部の内径が、前記先端側流路側の前記端部の内径より大きいことを特徴とするエアゾール容器。
【請求項4】
請求項3に記載のエアゾール容器であって、
前記基端側流路は、前記ヘッダ室側から前記噴射口側に向けて次第に内径が小さくなるテーパ孔によって構成され、
前記先端側流路は、前記テーパ孔の最小内径より小さくかつ一定の内径のストレート孔によって構成されている
ことを特徴とするエアゾール容器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のエアゾール容器であって、
前記噴射口から噴射されて霧化もしくは粒化した前記内容物が到達する距離である噴射距離が45cm以下となるように構成されていることを特徴とするエアゾール容器。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のエアゾール容器であって、
前記内容物が前記噴射口から噴射された際の、前記噴射口から150cm離れた位置で計測される噴射音が、A特性で3150Hzの騒音レベルで43dB以下となることを特徴とするエアゾール容器。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のエアゾール容器であって、
前記ノズルピースは、
複数の前記ノズル孔が形成された内筒部材と、
前記内筒部材が内部に密着嵌合させられる、底部のある外筒部材とによって構成され、
前記ヘッダ室は、前記内筒部材と前記外筒部材との少なくともいずれか一方に形成されている
ことを特徴とするエアゾール容器。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のエアゾール容器であって、
前記内容物は、前記噴射口から噴射された後に蒸発する溶媒を含んでいることを特徴とするエアゾール容器。
【請求項9】
内容物を霧化もしくは粒化させて噴射するエアゾール製品であって、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のエアゾール容器における前記本体部分に、前記内容物が充填されていることを特徴とするエアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内容物を加圧することにより、霧化もしくは粒化して噴射するように構成したエアゾール容器およびその容器に内容物を充填したエアゾール製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の容器あるいは製品では、使用する際に噴射音などの騒音が不可避的に生じる。その騒音は、使用者にとっては内容物が噴射されていることを知るきっかけになるが、過度に大きいと周囲への影響が生じる要因になり、さらに周囲の他人にとっては他の騒音と同様に違和感となることがある。さらに、内容物を噴射するのは、対象箇所への塗布を、手などを使わずに離れた箇所から行うことができ、また分散ならびに塗布を容器の移動によって容易に行うことができるなどの利点があるからである。その反面、霧化もしくは粒化(以下、これらをまとめて霧化と記すことがある。)した内容物が対象箇所に衝突するので、皮膚などに向けて噴射する場合には、内容物の大きさや速度などによっては痛みを生じさせたり、また内容物もしくは噴射気体などの蒸発による過度な冷感を生じさせる可能性がある。
【0003】
このようなメリットおよびデメリットのあるエアゾール容器あるいは製品の商品価値を高めるために、従来、ノズルの構造に種々の工夫が凝らされている。その一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された噴射装置は、単一の噴射口および噴射路を有しており、容器からステムを介して送り出された内容物を、噴射間隔の中に一旦噴出させ、その噴射間隔から一本の噴射路を通って、その開口端である噴射口から噴出させるように構成されている。その噴射間隔は、噴射路よりも大きい内径の空間部分あるいは滞留部分であり、その噴射間隔と、ステムが開口している流路とは、複数の連通路によって繋がっている。すなわち、ステムから噴出させた内容物を複数の連通路に分けて噴射間隔に導き、その噴射間隔で合流させた内容物を一本の噴射路およびその開口端である噴射口から外部に向けて噴射するようになっている。この特許文献1に記載された噴射装置によれば、エアゾール内容物を内部で気化させ、その後に噴射することになるので、噴射音を抑制することができる、とされている。併せて、特許文献1に記載の装置では、噴射圧を抑制することにより、使用者が過度の痛みや冷感を感じることを防止できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-274949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアゾール容器あるいは製品の内容物は、特許文献1に記載されているような噴射装置の内部で気化する物質に限られないのであり、化粧用品や整髪料などのように溶媒に溶かして噴射するものも存在する。溶媒に溶かして噴射する内容物の場合、内容物は微細ないわゆる粒となって噴射されるから、すなわち噴射装置の内部で気化しないから、特許文献1に記載の装置では、噴射音が大きくなってしまう可能性がある。
【0006】
一方、噴射した内容物は、予め決めた所定の噴射距離を飛翔すればよいのであって、それ以上に飛翔するとすれば、内容物が無駄になったり、不必要な箇所に内容物を付着させてしまったりし、さらには皮膚に向けて噴射した場合の痛感が大きくなるなどの不都合が生じる。特許文献1に記載された装置では、圧力を低くして痛感あるいは冷感を抑制することとしているが、噴射のための圧力を低くすると、噴射装置の内部での内容物の流速や噴射口から噴き出る噴射速度が遅くなり、それに伴って霧化した内容物の粒の大きさ(以下、仮に粒径と記す)が大きくなる。粒径が大きいと、溶媒が気化するのに要する時間が長くなるので、噴射距離が長くなってしまう。
【0007】
このように、噴射音を小さくするいわゆる静音性と噴射距離とは両立しにくく、従来では、例えば上記の特許文献1に記載されているように、静音性に優れるとしても噴射距離が長くなってしまう可能性があった。
【0008】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、エアゾール容器あるいは製品の静音性と噴射距離の抑制とを両立させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は、噴射するべき内容物を加圧状態で収容する本体部分の上端部に、前記本体部分に向けて押し下げられることにより前記内容物を流出させるステムが設けられるとともに、前記ステムに連通していて前記ステムから流出した前記内容物を外部に向けて噴射するノズルピースを有するエアゾール容器であって、前記ノズルピースは、前記ステムから流出した前記内容物が流通する導出路と、前記導出路の流路断面積より広い断面積であって前記導出路を流通した前記内容物を拡散させるヘッダ室と、一端部を前記ヘッダ室に開口させかつ他端部である噴射口を前記ノズルピースの外表面に開口させた複数のノズル孔とを有し、前記噴射口の開口径が、0.2mm以上かつ1.0mm以下であり、前記ノズル孔の長さが、10mm以上であることを特徴とするものである。
【0010】
この発明においては、複数の前記ノズル孔のそれぞれは、前記噴射口側の先端側流路と、前記先端側流路から前記ヘッダ室までの基端側流路とによって構成され、前記先端側流路の内径が、0.2mm以上かつ1.0mm以下であり、前記先端側流路の長さが、0.5mm以上かつ1.5mm未満であり、前記基端側流路の前記先端側流路側の端部の内径が前記先端側流路の内径より大きくてよい。
【0011】
この発明では、前記基端側流路の前記ヘッダ室側の端部の内径が、前記先端側流路側の前記端部の内径より大きくてよい。
【0012】
この発明では、前記基端側流路は、前記ヘッダ室側から前記噴射口側に向けて次第に内径が小さくなるテーパ孔によって構成され、前記先端側流路は、前記テーパ孔の最小内径より小さくかつ一定の内径のストレート孔によって構成されていてよい。
【0013】
この発明では、前記噴射口から噴射されて霧化もしくは粒化した前記内容物が到達する距離である噴射距離が45cm以下となるように構成されていてよい。
【0014】
この発明では、前記内容物が前記噴射口から噴射された際の、前記噴射口から150cm離れた位置で計測される噴射音が、A特性で3150Hzの騒音レベルで43dB以下となるように構成されていてよい。
【0015】
この発明では、前記ノズルピースは、複数の前記ノズル孔が形成された内筒部材と、前記内筒部材が内部に密着嵌合させられる、底部のある外筒部材とによって構成され、前記ヘッダ室は、前記内筒部材と前記外筒部材との少なくともいずれか一方に形成されていてよい。
【0016】
この発明では、前記内容物は、前記噴射口から噴射された後に蒸発する溶媒を含んでいてよい。
【0017】
この発明は、内容物を霧化もしくは粒化させて噴射するエアゾール製品であって、上述したエアゾール容器における前記本体部分に、前記内容物が充填されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明では、ステムから流出させられた内容物は、ヘッダ室に入った後、複数のノズル孔に分けられて、それぞれの開口端である噴射口から外部に噴射される。その結果、全体としての噴射音が小さくなる。これは、予め定めた所定量の内容物を噴射する場合、一本のノズル孔および一つの噴射口を流れる内容物の量が、ノズル孔および噴射口の数の分、少なくなることによるものと考えられる。また、各噴射口の開口径(直径)が0.2mm以上かつ1.0mm以下であることにより、霧化あるいは粒化する内容物が微細化される。そのため、霧状もしくは粒状を維持して到達する飛翔距離である噴射距離が短くなる。これは、微細化されている内容物のそれぞれの質量が小さくなって短時間の内に蒸発もしくは気化してしまい、その結果、蒸発もしくは気化するまでの飛翔距離が短いことによるものと考えられる。なお、開口径を0.2mm以上としているのは、実用上、製造できる限界による。また、上限値を1.0mmとしているのは、それより大きい内径では、噴射音が予め決めた許容値を超える可能性があるからである。さらに、ノズル孔の長さを10mm以上としているのは、噴射音を所定値以下に抑えるために必要とする長さおよび内容物を複数のノズル孔に分岐させるためのスペースを確保するためである。
【0019】
また、この発明では、ノズル孔は、先端側(噴射口側)で細くなる構成としてよく、内径が0.2mm以上かつ1.0mm以下で長さが0.5mm以上かつ1.5mm未満の先端側流路と、これよりも内径の大きい基端側流路とによってノズル孔を構成してもよい。このように構成すれば、ノズル孔の内部で内容物の流速を増大させて噴射口から噴射することが可能になり、それに伴って内容物を確実に微細化して噴射距離を抑制することができる。その場合、先端側流路の長さを1.5mm未満としたので、噴射音が大きくなることがなく、静音性を維持できる。
【0020】
基端側流路の内径を、ヘッダ室側の開口端で大きく、先端側流路側での端部が小さくすることにより、内容物の流速を基端側流路の内部で増速することができる。
【0021】
噴射距離が45cm以下であることにより、不必要な箇所に内容物を吹き付けたり、あるいは付着させたりすることを回避もしくは抑制できるとともに、内容物がアルコール分などを含む場合には、噴射距離がいわゆる着火距離以下のエアゾール容器ならびにエアゾール製品とすることができる。
【0022】
さらに、噴射口から150cm離れた箇所での騒音レベルが43dB以下であることにより、噴射音が環境騒音に紛れてしまい、静音性に優れたエアゾール容器ならびにエアゾール製品とすることができる。
【0023】
ノズルピースが、ノズル孔を有する内筒部材と、これを密着嵌合させた外筒部材とによって構成されているので、製造性に優れたエアゾール容器あるいはエアゾール製品とすることができる。
【0024】
そして、この発明では、内容物が大気中で蒸発する溶媒を含んでいる場合、噴射直後から溶媒の蒸発が進行するので、内容物が噴射されることにより微細化することと相まって、いわゆる粒状を維持して飛翔する距離が短くなって、静音性と併せて、噴射距離を抑制したエアゾール容器あるいはエアゾール製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明に係るエアゾール容器ならびにエアゾール製品における噴射ノズルの一例を示す断面図である。
図2】その噴射口の配列の一例を示す斜視図である。
図3】テーパ孔とストレート孔とによって構成したノズル孔の一例を示す部分的な断面図である。
図4】この発明の実施例と比較例とをまとめて示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
【0027】
図1に、この発明の実施形態で対象にするエアゾール容器あるいはエアゾール製品の噴射ノズルの部分を示してある。ここに示すエアゾール容器あるいはエアゾール製品(以下、これらをまとめてエアゾール容器と記す。)1は、内容物(図示せず)を加圧状態(例えば25℃で0.38~0.45MPa)で充填(収容)する金属缶などからなる本体部分2の上端部に噴射ノズル3を取り付けて構成されている。なお、噴射ノズル3は合成樹脂製であってよい。
【0028】
本体部分2は、内容物が充填される容器部分であり、例えば、スチールやアルミニウム等の金属を材料にして形成されている。あるいは、ガラス製や樹脂製の耐圧ボトルであってもよい。
【0029】
一方、内容物は、液相部および気相部からなる物質であってよい。液相部は、目的物質と噴射剤との混合物における液相の部分である。気相部は、目的物質と噴射剤との混合物における気相の部分である。目的物質とは、エアゾール製品(スプレー製品)の有効成分となる物質である。エアゾール製品の用途としては、例えば、使用者が人体に直接吹き付けて使用される人体用、使用者が周囲の空間(空間中の所定の対象物も含む)に向けて噴射して使用される日用(家庭用)、および、工業製品の製造工場や建築・建設現場等で使用される工業用などに大別できる。人体用のエアゾール製品の目的物質としては、例えば、冷感剤、制汗消臭剤、消炎鎮痛剤、化粧品、整髪剤、育毛剤、虫除けスプレーなどが挙げられる。日用のエアゾール製品の目的物質としては、例えば、消臭剤、芳香剤、防水・撥水剤、衣類静電防止剤、殺虫剤、害虫忌避剤、除菌スプレーなどが挙げられる。工業用のエアゾール製品の目的物質としては、例えば、塗料、防錆剤、潤滑剤、離型剤、接着剤、洗浄剤などが挙げられる。
【0030】
内容物に含まれる噴射剤は、上記のような目的物質を本体部分2から噴射させるための媒体であり、目的物質と共に内容物として本体部分2内に充填される。噴射剤としては、液化ガス、または、圧縮ガスが用いられる。液化ガスは、常温で加圧されることにより液化する性質のものであり、その加圧された液相の液化ガス(すなわち、噴射剤)と目的物質との混合物が、内容物として本体部分2内に充填される。液化ガスとしては、例えば、ジメチルエーテル(DME)、液化天然ガス(LPG)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)などが用いられる。液化ガスは、上記のような各種のガスのいずれかを単独で使用してもよい。または、液化ガスは、上記のような各種のガスを複数組み合わせて使用してもよい。また、圧縮ガスは、常温では加圧されても液化しにくい性質のものであり、気相の圧縮ガス(すなわち、噴射剤)が、目的物質と共に内容物として本体部分2内に加圧充填される。圧縮ガスとしては、例えば、炭酸ガス(CO)、窒素ガス(N)、亜酸化窒素ガス(NO)、圧縮空気などが用いられる。さらに、目的物質はアルコールなどの常温で蒸発し易い溶媒を含んでいてよい。
【0031】
上記のような目的物質と噴射剤との混合比率は、目的物質の有効成分が適切に噴射されるように調整される。例えば、目的物質と噴射剤との体積比が、“5:95”から“95:5”の範囲で、適宜調整されて設定される。
【0032】
なお、この発明の実施形態におけるエアゾール容器およびエアゾール製品は、噴射音の静音化および噴射距離の抑制を両立させることを目的としている。そのような噴射音の静音化および噴射距離の抑制が求められる状況としては、例えば、オフィス内、学校や病院の構内など、比較的に静かな室内において、使用者以外に人が居て、使用者がエアゾール製品の噴射音の発生や内容物の飛散を心配してしまうような状況を想定している。あるいは、例えば、電車内、公園、球技・競技場など、屋外であっても、周囲に比較的に大勢の人が居て、使用者がエアゾール製品の噴射音の発生や内容物の飛散を心配してしまうような状況を想定している。そのような状況で使用されるエアゾール容器およびエアゾール製品としては、例えば、使用者が、かばんや衣服のポケットなどに入れて持ち運んで使用することが可能な大きさを想定している。例えば、製造工場や建築・建設現場などで使用されるような、比較的に大きな、あるいは、比較的に重量のあるエアゾール製品は対象から外してもよい。したがって、この発明の実施形態におけるエアゾール容器およびエアゾール製品は、使用者が手に持って使用することが可能な大きさ、例えば、使用者が片手で操作することが可能な大きさのものを対象にすることができる。
【0033】
上述した本体部分2の上端部にはステム4が設けられている。ステム4は、一般的なエアゾール容器に設けられているステムと同様の細いチューブ状の部品であり、弾性力によって押し上げられることによりその内部の流路を閉じ、その弾性力に抗して押し下げられることにより、流路を開く図示しないバルブ機構を備えている。噴射ノズル3は、そのステム4を押し下げる機能を主たる機能とした噴射ボタン5と、その噴射ボタン5に一体となるように組み付けられたノズルピース6とによって構成されている。
【0034】
噴射ボタン5は、ステム4に被せられて、使用者が指を載せて押し下げる部分である。したがって、その内部にはステム4に連通し、ステム4から流出した内容物を導く流路7が形成されている。流路7は、図1に示すようにほぼ直角に曲がっている流路であり、ステム4の上端部に連通する上下方向を向いた部分と、そこから直角に曲がって水平方向に延びている部分とから構成されている。その水平方向に延びている部分の先端部は、噴射ボタン5に形成した取付孔8の内部に開口している。その取付孔8にノズルピース6が差し込まれて噴射ボタン5に取り付けられている。
【0035】
ノズルピース6は、ステム4から繰り出された内容物を外部に向けて噴射する部分であり、図1に示す例では、外筒部材9とその内部に密着して嵌合している内筒部材10とによって構成されている。外筒部材9は、図1に示すように、底部のある円筒状の部材であって、その底部の中央部から図1の右方向に突出した突起部11が設けられている。その突起部11の中心部には、中心軸線に沿って貫通した導出路12が形成されている。突起部11は、上記の噴射ボタン5に設けられている取付孔8に挿入されて、取付孔8に対して抜け止めされた状態に密着嵌合するように構成されている。したがって、突起部11を取付孔8に差し込むことにより、ノズルピース6が噴射ボタン5に一体化されるとともに、噴射ボタン5における上記の流路7が導出路12に連通する。
【0036】
一方、内筒部材10は、外筒部材9における筒状部分の内周形状と一致する外周形状の部材であり、その中心軸線とほぼ平行に複数のノズル孔13が軸線方向に貫通して形成されている。なお、内筒部材10における図1での右側の端部(外筒部材9における底部に対向する端部)は、軸線方向に窪んでおり、したがって外筒部材9の底部との間にヘッダ室14が形成されている。このヘッダ室14の内径は、複数のノズル孔13の最外周部分を結んだ円の直径程度もしくはその直径より僅かに大きい径であり、したがって各ノズル孔13と外筒部材9における導出路12とがヘッダ室14に開口している。すなわち、導出路12によって導かれた内容物をヘッダ室14の内部に一旦分散させ、ここから各ノズル孔13に分岐させて外部に噴出させるようになっている。
【0037】
ノズル孔13の数は複数であればよく、図2に四本のノズル孔13を設けた例を示してある。ノズル孔13は、内径(直径)が一定のいわゆるストレート孔であってよく、あるいは内径がその軸線方向での位置で変化する孔であってもよい。内筒部材10における先端部(図1での左端部)での開口端が噴射口15であり、その開口径(直径)Dは、噴射する内容物の微細化やそれに伴う噴射距離の抑制のために、0.2mm以上でかつ1.0mm以下に設定されている。また、ノズル孔13およびその開口部である噴射口15は、噴射音の抑制のために、内筒部材10の中心を中心とした円周上に等間隔に配置されており、それらの間隔Pは、2mm以上でかつ5mm以下に設定されている。ここで、間隔Pとは、内筒部材10の円周方向に見た場合に隣接するノズル孔13および噴射口15の中心同士の間隔である。さらに、ノズル孔13の長さLは、10mm以上になっている。なおここで、「ノズル孔13の長さL」とは、上述したヘッダ室14の導通路12側の端部から噴射口15までの長さである。したがって、「ノズル孔13の長さL」には、上記のヘッダ室14の長さを含んでいる。そのノズル孔13を内容物が流れることによる噴射音への影響を考慮してその部分の長さは6.1mmより大きいことが好ましく、その長さにヘッダ室14の長さを加えると、「ノズル孔13の長さL」は10mm以上となる。
【0038】
内容物をエアゾール容器1に充填してあるエアゾール製品の噴射ボタン5を押し下げると、ステム4が本体部分2内に押し下げられるので、図示しないバルブ機構が開く。本体部分2の内圧が高くなっているので、内容物はステム4から噴射ノズル3に向けて押し出される。噴射ノズル3の内部に設けてある流路7がステム4に連通しているので、内容物はその流路7を通ってノズルピース6の内部に導かれる。流路7には導出路12が繋がっているので、内容物はその導出路12を通ってヘッダ室14に流れ、その内部に拡散する。なお、導出路12はノズルピース6の中心軸線上に設けられており、これに対して複数のノズル孔13はノズルピース6の中心軸線を中心とした円周上に等間隔に配置されているので、導出路12の開口端は、前述した内筒部材10の壁面に対向している。このような構成の場合、導出路12から吹き出した内容物は内筒部材10の壁面に衝突し、それに伴って液滴となっている内容物が更に微細化される。
【0039】
ヘッダ室14は狭い空間部分であるため、その内部に吹き込まれた内容物の圧力が未だ高く、したがって内容物はヘッダ室14に開口している複数のノズル孔13に分配され、各ノズル孔13を通ってその開口端である各噴射口15から外部に噴射される。このように、内容物は、ヘッダ室14から分岐している複数のノズル孔13に分配されるので、ノズル孔13の一本当たりの内容物の流量や流速あるいはその圧力は、ヘッダ室14に連通しているノズル孔13が1本の場合より低下する。そのため、噴射口15から内容物が噴出することに伴う噴射音は、ノズル孔13が1本の場合よりも小さく、いわゆる静音性が良好になる。なお、各ノズル孔13には、ヘッダ室14内に拡散させた内容物を流すことにより、静音性が向上する。したがって、ヘッダ室14の底壁面(図1での左側の壁面)のうち、上記の導出路12が対向する部分14aは、導出路12から噴出した内容物を衝突させて分散させるために、導出路12の開口面積以上の面積とすることが好ましく、より正確には、導出路12から噴出した後に広がった内容物の噴射面積以上の面積であることが好ましい。
【0040】
また、各噴射口15の開口径は、1.0mm以下の小さい径になっているので、噴出する内容物が微細化され、この点でも噴射音が小さくなって静音性が良好になる。これに加えて、内容物に含まれるアルコールなどの溶媒すなわち蒸発する成分が、微細であることにより早期に蒸発する。その結果、内容物が液滴あるいは粒の形態を維持して到達する距離が短くなる。すなわち噴射距離を抑えることができ、あるいは噴射距離の短いエアゾール容器あるいはエアゾール製品とすることができる。
【0041】
さらに、各ノズル孔13の長さLが10mm以上になっていることにより、この点でも、静音化が図られている。ノズル孔13の長さLは、前述したように、ヘッダ室14の導出路12側の端部から噴射口15までの長さであるから、これを10mm以上とすることにより、内容物の圧力が変化する箇所の間隔、あるいは内容物が内筒部材10の壁面に衝突する箇所とノズル孔13が外部に向けて開いている箇所との間隔を広く取ることができ、それに伴って噴射音が小さくなるものと考えられる。
【0042】
結局、この発明によれば、静音性と噴射距離の抑制とを両立させたエアゾール容器あるいはエアゾール製品を得ることができる。
【0043】
なお、この発明におけるノズル孔13や噴射口15の数は複数であればよいのであって、上述した4本あるいは4つに限られず、またノズル孔13はいわゆるストレート孔に限らず、内径が変化する貫通孔であってもよい。内径が変化するノズル孔13は、噴射口15側の内径に対してヘッダ室14側の内径が大きく、それらの間の部分での内径の大小もしくは変化は任意であってよい。
【0044】
図3にはノズル孔13を先端側流路であるストレート孔13Aと基端側流路であるテーパ孔13Bとによって構成した例を1本のノズル孔13の断面図で示してある。ここに示す例では、ストレート孔13Aは、噴射口15側の孔であり、したがってその内径(直径)は、噴射口15と同じであって、0.2mm以上かつ1.0mm以下になっている。また、その長さLaは、1.5mm未満になっており、一例として0.5mmである。静音性を良好にするためである。一方、テーパ孔13Bは、上記のストレート孔13A側の端部からヘッダ室14側の端部に向けて次第に内径(直径)が増大する貫通孔の部分である。その最小内径(ストレート孔13A側の端部での内径)Dbは、ストレート孔13Aとの間に段差が生じるように構成されている。実施例では、最小内径Dbは1.2mmであり、内筒部材10の径を導出路12の径より大きくする場合、テーパ角は2.0°以下にすればよい(吐出孔15の対角線上の間隔は3.6mmで、ノズル孔13の長さLを10mmとした場合)。
【0045】
つぎにこの発明の実施形態による作用・効果を確認するために行った実施例と比較例とについて説明する。各実施例および比較例で使用した本体部分2は、高さ20cmおよび直径5cmのスチール缶であり、上述した構成の合成樹脂製の噴射ノズル3を取り付けた。その噴射ノズル3におけるノズルピース6を以下に説明する実施例1~7および比較例1~8の構成とした。内容物はアルコールを溶媒とした液状品である。充填完了時の内圧は約0.4MPaとした。
【0046】
噴射距離は、噴射口に正対させて感熱紙を立てて内容物を噴射させ、その感熱紙までの距離を次第に遠くして、内容物の斑点が感熱紙に付着する最大距離を求めて噴射距離とした。これは、従来、着火距離と称される距離でもある。噴射距離の許容値は、45cm以下とした。これは、エアゾール製品を使用する場合、周囲の人や設備もしくは備品から離れて使用するのが一般的であり、噴射距離が45cm以下であれば、周囲の人や設備などにまで内容物が粒の形態で到達することがないと考えられるからである。また、静音性を確認するための騒音は、常温、常湿、常圧の雰囲気内で、噴射口15から150cmの位置におけるA特性で3150Hzにおける音圧レベル(騒音レベル)を測定して求めた。騒音の許容値は43dB以下とした。日常の生活環境では、43dB以下であれば、噴射音が環境騒音に紛れ込んで、噴射音として認識されることが少ないと考えられるからである。
【0047】
実施例1
ノズル孔およびその開口端である噴射口の数を「2」とし、ノズル孔の開口径は「0.6mm」、ノズル孔の長さは「12.2mm」とした。噴射距離は「30cm」、騒音は「42.7dB」であった。
【0048】
実施例2
ノズル孔およびその開口端である噴射口の数を「2」とし、ノズル孔の開口径は「0.9mm」、ノズル孔の長さは「12.2mm」とした。噴射距離は「40cm」、騒音は「42.9dB」であった。
【0049】
実施例3
ノズル孔およびその開口端である噴射口の数を「3」とし、ノズル孔の開口径は「0.6mm」、ノズル孔の長さは「12.2mm」とした。噴射距離は「40cm」、騒音は「40.8dB」であった。
【0050】
実施例4
ノズル孔およびその開口端である噴射口の数を「4」とし、ノズル孔の開口径は「0.6mm」、ノズル孔の長さは「12.2mm」とした。噴射距離は「25cm」、騒音は「40.9dB」であった。
【0051】
実施例5
ノズル孔およびその開口端である噴射口の数を「4」とし、ノズル孔は全長を12.2mmとし、ストレート孔とテーパ孔とによって構成した。噴射口の開口径(ストレート孔の内径)は「0.6mm」でその長さは「0.5mm」、またテーパ孔の最小内径は「1.2mm」でその勾配は「0.25°」とした。噴射距離は「30cm」、騒音は「42.6dB」であった。
【0052】
実施例6
ノズル孔およびその開口端である噴射口の数を「4」とし、ノズル孔は全長を12.2mmとし、ストレート孔とテーパ孔とによって構成した。噴射口の開口径(ストレート孔の内径)は「0.6mm」でその長さは「0.5mm」、またテーパ孔の最小内径は「1.2mm」でその勾配は「0.5°」とした。噴射距離は「35cm」、騒音は「42.3dB」であった。
【0053】
実施例7
ノズル孔およびその開口端である噴射口の数を「4」とし、ノズル孔は全長を12.2mmとし、ストレート孔とテーパ孔とによって構成した。噴射口の開口径(ストレート孔の内径)は「0.6mm」でその長さは「1.0mm」、またテーパ孔の最小内径は「1.2mm」でその勾配は0.5°」とした。噴射距離は「30cm」、騒音は「42.6dB」であった。
【0054】
比較例1
ノズル孔およびその開口端である噴射口の数を「1」とし、ノズル孔の開口径は「1.2mm」、ノズル孔の長さは「6.1mm」とした。噴射距離は「25cm」、騒音は「47.2dB」であった。
【0055】
比較例2
ノズル孔およびその開口端である噴射口の数を「1」とし、ノズル孔の開口径は「0.6mm」、ノズル孔の長さは「6.1mm」とした。噴射距離は「15cm」、騒音は「49.0dB」であった。
【0056】
比較例3
ノズル孔およびその開口端である噴射口の数を「1」とし、ノズル孔の開口径は「1.2mm」、ノズル孔の長さは「12.2mm」とした。噴射距離は「45cm」、騒音は「47.7dB」であった。
【0057】
比較例4
ノズル孔およびその開口端である噴射口の数を「1」とし、ノズル孔の開口径は「0.6mm」、ノズル孔の長さは「12.2mm」とした。噴射距離は「15cm」、騒音は「47.7dB」であった。
【0058】
比較例5
ノズル孔およびその開口端である噴射口の数を「2」とし、ノズル孔の開口径は「1.2mm」、ノズル孔の長さは「12.2mm」とした。噴射距離は「90cm」、騒音は「39.7dB」であった。
【0059】
比較例6
ノズル孔およびその開口端である噴射口の数を「4」とし、ノズル孔の開口径は「1.2mm」、ノズル孔の長さは「12.2mm」とした。噴射距離は「100cm」、騒音は「44.8dB」であった。
【0060】
比較例7
ノズル孔およびその開口端である噴射口の数を「4」とし、ノズル孔は全長を12.2mmとし、ストレート孔とテーパ孔とによって構成した。噴射口の開口径(ストレート孔の内径)は「0.6mm」でその長さは「1.5mm」、またテーパ孔の最小内径は「1.2mm」でその勾配は「0.5°」とした。噴射距離は「35cm」、騒音は「43.1dB」であった。
【0061】
比較例8
ノズル孔およびその開口端である噴射口の数を「4」とし、ノズル孔は全長を12.2mmとし、ストレート孔とテーパ孔とによって構成した。噴射口の開口径(ストレート孔の内径)は「0.6mm」でその長さは「2.0mm」、またテーパ孔の最小内径は「1.2mm」でその勾配は0.5°」とした。噴射距離は「35cm」、騒音は「43.8dB」であった。
【0062】
以上の実施例1~7および比較例1~8の各データを図4にまとめて示してある。図4に挙げてある実施例1~7および比較例1~8についての結果を検討すると、先ず、ノズル孔およびその開口端である噴射口について、実施例1~7ではその数が複数であって、騒音がいずれも許容範囲である「43dB以下」に入っている。これに対して比較例1~4では、ノズル孔および噴射口が1つのみであり、騒音が許容範囲「43dB以下」を超えていた。この結果から、ノズル孔およびその開口端である噴射口を複数にすることにより、静音性に優れたエアゾール容器およびエアゾール製品を得ることができることが判明し、この発明ではそのような構成を採用している。
【0063】
つぎに噴射口の開口径について検討すると、実施例1~7および比較例2,4,7,8では、1.0mmより小さい「0.6mm」であり、その噴射距離はいずれも許容距離である「45cm以下」になっている。また、実施例1,2および比較例5を対比して知られるように、噴射口の開口径が大きくなるのに従って噴射距離が延びており、比較例5のように1.0mmを超えていると噴射距離が許容限界値を大きく超えてしまう。したがって、この発明では、噴射距離を抑制するために、噴射口の開口径を0.2mm以上かつ1.0mm以下の範囲に特定している。なお、開口径の下限値を「0.2mm」としているのは、製造できる限界がこの程度の寸法であることによる。
【0064】
図4に示す実施例5,6,7ならびに比較例7,8は、ノズル孔13をストレート孔とテーパ孔とによって構成した例であり、これらの例では、ヘッダ室14から各ノズル孔13に分岐した内容物は、各ノズル孔13の流路断面積が噴射口15側で次第に小さくなることにより、流速を次第に増大させて噴射口15から噴射させる。したがって、内容物は流速の増大によって微細化されるので、これら3つのいずれの例でも噴射距離が許容範囲内になっている。しかしながら、ストレート孔の長さを0.5mmにした実施例5,6では、150cm離れた位置での騒音が許容値(43dB)以下に収まっており、またストレート孔の長さを1.0mmとした実施例7では、150cm離れた位置での騒音が幾分増大するものの許容値(43dB)以下に収まっているのに対して、ストレート孔の長さを実施例5,6,7よりも長く(1.5mmと2.0mm)した比較例7,8では、150cm離れた位置での騒音が許容値(43dB)を超えている。その理由は定かではないが、テーパ孔とストレート孔との境界部分に、内径が変化する段差があり、この部分での内容物の流速の変化ならびにそれに伴う乱流が関係しているものと思われ、そのような流速変化や乱流をストレート孔で維持することにより騒音が大きくなるものと考えられる。したがって、内径を噴射口側で絞った形状のノズル孔とする場合には、噴射口側のストレート孔の長さを可及的に短くし、特に1.5mm未満程度にすることが好ましく、1.0mm以下がより好ましい。
【0065】
なお、この発明は上述した実施形態に限定されないのであって、ノズル孔13およびその開口端である噴射口15の数は複数であればよいのであり、5つ以上のノズル孔13および噴射口15を設けてもよい。また、それらの配列は、ノズルピース6を中心とした円周上の等間隔の配列に限らず、相互の間隔を維持していれば適宜の配列であってもよい。さらに、ノズル孔13および噴射口15の断面形状(流路断面形状)は、真円形に限られないのであって、楕円や角形など必要に応じて適宜の形状とすることができる。また、複数のノズル孔13は互いに平行であってもよく、あるいはそれらの中心軸線が平行になっていなくてもよい。一方、ノズルピース6は、前述した内筒部材と外筒部材とによって構成する以外に、全体と一つの部材とした構成であってもよく、あるいは3つ以上に分割した構成としてもよい。そして、ヘッダ室14はノズル孔13の基端部(噴射口15とは反対側の端部)に設けられていればよいのであって、内筒部材や外胴部材などのノズルピース6を構成するいずれかの部材に形成してあればよい。そのヘッダ室14に内容物を導く導出路は複数設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 エアゾール容器
2 容器本体
3 噴射ノズル
4 ステム
5 噴射ボタン
6 ノズルピース
7 流路
8 取付孔
9 外筒部材
10 内筒部材
11 突起部
12 導出路
13 ノズル孔
13A ストレート孔
13B テーパ孔
14 ヘッダ室
14a (導出路が対向する)部分
15 噴射口
図1
図2
図3
図4