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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064175
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20240507BHJP
   B23K 26/16 20060101ALI20240507BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240507BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20240507BHJP
   H01M 50/169 20210101ALI20240507BHJP
   B23K 26/142 20140101ALI20240507BHJP
【FI】
B23K26/21 P
B23K26/16
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/169
B23K26/142
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172566
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 晴彦
【テーマコード(参考)】
4E168
5H011
【Fターム(参考)】
4E168BA30
4E168CB03
4E168EA17
4E168FB05
4E168FC01
4E168FC04
4E168KA06
5H011AA09
5H011AA10
5H011AA17
5H011DD13
(57)【要約】
【課題】第1長辺部及び第2長辺部においてヒュームに起因する溶接不良を低減することができる蓄電デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】溶接工程は、第1長辺部31の第2短辺部34側から第1短辺部33側へレーザビームLBを走査して第1長辺部31を溶接する第1長辺部溶接工程と、第2長辺部32の第1短辺部33側から第2短辺部34側へレーザビームLBを走査して第2長辺部32を溶接する第2長辺部溶接工程と、を含む。第1長辺部溶接工程は、第1長辺部31の上方を第1短辺部33側から第2短辺部34側に流れる第1気流A1を形成しつつ行い、第2長辺部溶接工程は、第2長辺部32の上方を第2短辺部34側から第1短辺部33側に流れる第2気流A3を形成しつつ行う。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の開口を有するケースと、前記開口を閉塞する矩形状の封口板と、を有し、前記ケースの前記開口を囲む開口壁部と前記封口板の外周縁部とが全周にわたって溶接されている蓄電デバイスの製造方法において、
前記ケースの前記開口に前記封口板を挿入して、前記封口板によって前記開口を閉塞する閉塞工程と、
外表面を上方に向けた前記封口板によって前記ケースの前記開口が閉塞された状態で、前記封口板の上方からレーザビームを、前記封口板の前記外周縁部と前記ケースの前記開口壁部との被溶接部に照射して、前記被溶接部を全周にわたって周方向にレーザ溶接する溶接工程と、を備え、
前記被溶接部は、平面視矩形環状で、互いに平行な第1長辺部及び第2長辺部と、互いに平行な第1短辺部及び第2短辺部を有し、
前記溶接工程は、
前記第1長辺部の前記第2短辺部側から前記第1短辺部側へ前記レーザビームを走査して前記第1長辺部を溶接する第1長辺部溶接工程と、
前記第2長辺部の前記第1短辺部側から前記第2短辺部側へ前記レーザビームを走査して前記第2長辺部を溶接する第2長辺部溶接工程と、を含み、
前記第1長辺部溶接工程は、前記第1長辺部の上方を前記第1短辺部側から前記第2短辺部側に流れる第1気流を形成しつつ行い、
前記第2長辺部溶接工程は、前記第2長辺部の上方を前記第2短辺部側から前記第1短辺部側に流れる第2気流を形成しつつ行う
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記第1長辺部溶接工程は、前記第1長辺部から生じた第1ヒュームであって、前記第1気流に乗って前記第1長辺部の上方を通過した前記第1ヒュームを、第1吸入装置によって吸入して除去し、
前記第2長辺部溶接工程は、前記第2長辺部から生じた第2ヒュームであって、前記第2気流に乗って前記第2長辺部の上方を通過した前記第2ヒュームを、第2吸入装置によって吸入して除去する
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蓄電デバイスの製造方法において、
前記溶接工程は、
前記第1短辺部の前記第1長辺部側から前記第2長辺部側へ前記レーザビームを走査して前記第1短辺部を溶接する第1短辺部溶接工程と、
前記第2短辺部の前記第2長辺部側から前記第1長辺部側へ前記レーザビームを走査して前記第2短辺部を溶接する第2短辺部溶接工程と、を含み、
前記第1短辺部溶接工程は、前記第1短辺部の上方を前記第2長辺部側から前記第1長辺部側に流れる第3気流を形成しつつ行い、
前記第2短辺部溶接工程は、前記第2短辺部の上方を前記第1長辺部側から前記第2長辺部側に流れる第4気流を形成しつつ行う
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記第1短辺部溶接工程は、前記第1短辺部から生じた第3ヒュームであって、前記第3気流に乗って前記第1短辺部の上方を通過した前記第3ヒュームを、第3吸入装置によって吸入して除去し、
前記第2短辺部溶接工程は、前記第2短辺部から生じた第4ヒュームであって、前記第4気流に乗って前記第2短辺部の上方を通過した前記第4ヒュームを、第4吸入装置によって吸入して除去する
蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、矩形状の開口を有するケースと、前記開口を閉塞する矩形状の封口板と、を有する蓄電デバイスが開示されている。この蓄電デバイスでは、ケースの開口を囲む開口壁部と封口板の外周縁部とが全周にわたって溶接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-107515号公報
【0004】
前述の蓄電デバイスは、以下のようにして製造される。まず、閉塞工程において、ケースの開口に封口板を挿入して、封口板によってケースの開口を閉塞する。次に、溶接工程において、外表面を上方に向けた封口板によってケースの開口が閉塞された状態で、封口板の上方からレーザビームを、封口板の外周縁部とケースの開口壁部との接触部(被溶接部とする)に照射して、前記被溶接部を全周にわたって周方向にレーザ溶接する。なお、被溶接部は、平面視矩形環状で、互いに平行な第1長辺部及び第2長辺部と、互いに平行な第1短辺部及び第2短辺部を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の溶接工程では、レーザビームを照射した被溶接部からヒュームが発生する。ここで、ヒュームとは、溶接熱によって発生した被溶接部の金属蒸気が冷やされて、微細な金属粒子(金属粉塵)となって空間に浮遊する粉塵である。このヒュームがレーザビームの光路に存在すると、レーザビームがヒュームに衝突することよって拡散し、被溶接部に照射されるレーザビームのエネルギー密度が低下することがあった。これにより、溶接不良が発生することがあった。
【0006】
これに対し、特許文献1の溶接工程では、被溶接部の外側に沿って全周にわたって配置した排気ノズルの吸い込み口から、封口板の平面と垂直な方向から見たときに封口板の中央側から封口板の外側に向けて排気を行う。さらに、排気ノズルの下方に被溶接部の外側に沿って全周にわたって配置した給気ノズルの給気口から、封口板の平面と垂直な方向から見たときに封口板の外側から封口板の中央側に向けて不活性ガスを供給する給気を行う。このようにすることで、発生したヒュームが、封口板の中央側から外側に向かうようにする。
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では、発生したヒュームをレーザビームの光路から除去することが難しかった。このため、レーザビームがヒュームに衝突することによる溶接不良を低減させることが難しかった。このようなことから、ヒュームに起因する溶接不良を低減することで、ケースと封口板との溶接不良を効果的に低減できる方法が求められていた。特に、被溶接部のうち、相対的に溶接距離が長い第1長辺部及び第2長辺部において、ヒュームに起因する溶接不良を低減できる方法が求められていた。
【0008】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、第1長辺部及び第2長辺部においてヒュームに起因する溶接不良を低減することができる蓄電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一態様は、矩形状の開口を有するケースと、前記開口を閉塞する矩形状の封口板と、を有し、前記ケースの前記開口を囲む開口壁部と前記封口板の外周縁部とが全周にわたって溶接されている蓄電デバイスの製造方法において、前記ケースの前記開口に前記封口板を挿入して、前記封口板によって前記開口を閉塞する閉塞工程と、外表面を上方(すなわち、鉛直方向上方)に向けた前記封口板によって前記ケースの前記開口が閉塞された状態で、前記封口板の上方からレーザビームを、前記封口板の前記外周縁部と前記ケースの前記開口壁部との被溶接部に照射して、前記被溶接部を全周にわたって周方向にレーザ溶接する溶接工程と、を備え、前記被溶接部は、平面視矩形環状で、互いに平行な第1長辺部及び第2長辺部と、互いに平行な第1短辺部及び第2短辺部を有し、前記溶接工程は、前記第1長辺部の前記第2短辺部側から前記第1短辺部側へ前記レーザビームを走査して前記第1長辺部を溶接する第1長辺部溶接工程と、前記第2長辺部の前記第1短辺部側から前記第2短辺部側へ前記レーザビームを走査して前記第2長辺部を溶接する第2長辺部溶接工程と、を含み、前記第1長辺部溶接工程は、前記第1長辺部の上方を前記第1短辺部側から前記第2短辺部側に流れる第1気流を形成しつつ行い、前記第2長辺部溶接工程は、前記第2長辺部の上方を前記第2短辺部側から前記第1短辺部側に流れる第2気流を形成しつつ行う蓄電デバイスの製造方法である。
【0010】
上述の製造方法では、第1長辺部溶接工程を、第1長辺部の上方を第1短辺部側から第2短辺部側に(例えば、レーザビームの走査方向とは反対方向に)流れる第1気流を形成しつつ行う。これにより、レーザビームの照射によって生じたヒュームを、第1気流によって、第1長辺部のうちレーザ溶接を終えた側(すなわち、レーザビームを照射し終えた側)へ移動させることができる。これにより、第1長辺部のうちこれからレーザビームを照射する部位の上方空間に存在するヒュームを低減することができる。従って、第1長辺部の上方空間を第1長辺部(具体的には、これからレーザビームを照射する部位)に向かって進むレーザビームが、ヒュームによって拡散するのを低減することができる。これにより、第1長辺部においてレーザビームのエネルギー密度が低下することを抑制することができる。具体的には、第1長辺部に対して、レーザビームを適切に収束させて照射することが可能となる。これにより、第1長辺部における溶接不良を低減することができる。
【0011】
さらに、上述の製造方法では、第2長辺部溶接工程を、第2長辺部の上方を第2短辺部側から第1短辺部側に(例えば、レーザビームの走査方向とは反対方向に)流れる第2気流を形成しつつ行う。これにより、レーザビームの照射によって生じたヒュームを、第2気流によって、第2長辺部のうちレーザ溶接を終えた側(すなわち、レーザビームを照射し終えた側)へ移動させることができる。これにより、第2長辺部溶接工程において、第2長辺部のうちこれからレーザビームを照射する部位の上方空間に存在するヒュームを低減することができる。従って、第2長辺部の上方空間を第2長辺部(具体的には、これからレーザビームを照射する部位)に向かって進むレーザビームが、ヒュームによって拡散するのを低減することができる。これにより、第2長辺部においてレーザビームのエネルギー密度が低下することを抑制することができる。具体的には、第2長辺部に対して、レーザビームを適切に収束させて照射することが可能となる。これにより、第2長辺部における溶接不良を低減することができる。
【0012】
以上説明したように、上述の製造方法では、封口板とケースとの被溶接部のうち、相対的に溶接距離が長い第1長辺部及び第2長辺部において、ヒュームに起因する溶接不良を低減することができる。従って、ケースと封口板との溶接不良を効果的に低減することができる。なお、被溶接部とは、封口板の外周縁部とケースの開口壁部とが溶接される部位であり、平面視矩形環状で、互いに平行な第1長辺部及び第2長辺部と、互いに平行な第1短辺部及び第2短辺部と、を有する部位である。また、ヒュームとは、溶接熱によって被溶接部から発生した金属蒸気が冷やされて、微細な金属粒子となって空間に浮遊する粉塵である。
【0013】
(2)さらに、(1)の蓄電デバイスの製造方法であって、前記第1長辺部溶接工程は、前記第1長辺部から生じた第1ヒュームであって、前記第1気流に乗って前記第1長辺部の上方を通過した前記第1ヒュームを、第1吸入装置によって吸入して除去し、前記第2長辺部溶接工程は、前記第2長辺部から生じた第2ヒュームであって、前記第2気流に乗って前記第2長辺部の上方を通過した前記第2ヒュームを、第2吸入装置によって吸入して除去する蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0014】
上述の製造方法では、第1長辺部溶接工程において、第1長辺部(具体的には、レーザビームを照射した部位)から生じた第1ヒュームであって、第1気流に乗って第1長辺部の上方を通過した第1ヒュームを、第1吸入装置によって吸入して除去する。これにより、第1長辺部において、第1ヒュームに起因した溶接不良を、より一層低減することができる。さらに、第2長辺部溶接工程において、第2長辺部(具体的には、レーザビームを照射した部位)から生じた第2ヒュームであって、第2気流に乗って第2長辺部の上方を通過した第2ヒュームを、第2吸入装置によって吸入して除去する。これにより、第2長辺部において、第2ヒュームに起因した溶接不良を、より一層低減することができる。
【0015】
(3)さらに、(1)または(2)の蓄電デバイスの製造方法において、前記溶接工程は、前記第1短辺部の前記第1長辺部側から前記第2長辺部側へ前記レーザビームを走査して前記第1短辺部を溶接する第1短辺部溶接工程と、前記第2短辺部の前記第2長辺部側から前記第1長辺部側へ前記レーザビームを走査して前記第2短辺部を溶接する第2短辺部溶接工程と、を含み、前記第1短辺部溶接工程は、前記第1短辺部の上方を前記第2長辺部側から前記第1長辺部側に流れる第3気流を形成しつつ行い、前記第2短辺部溶接工程は、前記第2短辺部の上方を前記第1長辺部側から前記第2長辺部側に流れる第4気流を形成しつつ行う蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0016】
上述の製造方法では、第1短辺部溶接工程を、第1短辺部の上方を第2長辺部側から第1長辺部側に流れる第3気流を形成しつつ行う。これにより、レーザビームの照射によって生じたヒュームを、第3気流によって、第1短辺部のうちレーザ溶接を終えた側(すなわち、レーザビームを照射し終えた側)へ移動させることができる。これにより、第1短辺部のうちこれからレーザビームを照射する部位の上方空間に存在するヒュームを低減することができる。従って、第1短辺部の上方空間を第1短辺部(具体的には、これからレーザビームを照射する部位)に向かって進むレーザビームが、ヒュームによって拡散するのを低減することができる。これにより、第1短辺部においてレーザビームのエネルギー密度が低下することを抑制することができる。具体的には、第1短辺部に対して、レーザビームを適切に収束させて照射することが可能となる。これにより、第1短辺部における溶接不良を低減することができる。
【0017】
さらに、上述の製造方法では、第2短辺部溶接工程を、第2短辺部の上方を第1長辺部側から第2長辺部側に流れる第4気流を形成しつつ行う。これにより、レーザビームの照射によって生じたヒュームを、第4気流によって、第2短辺部のうちレーザ溶接を終えた側(すなわち、レーザビームを照射し終えた側)へ移動させることができる。これにより、第2短辺部溶接工程において、第2短辺部のうちこれからレーザビームを照射する部位の上方空間に存在するヒュームを低減することができる。従って、第2短辺部の上方空間を第2短辺部(具体的には、これからレーザビームを照射する部位)に向かって進むレーザビームが、ヒュームによって拡散するのを低減することができる。これにより、第2短辺部においてレーザビームのエネルギー密度が低下することを抑制することができる。具体的には、第2短辺部に対して、レーザビームを適切に収束させて照射することが可能となる。これにより、第2短辺部における溶接不良を低減することができる。
【0018】
以上説明したように、上述の製造方法では、第1長辺部及び第2長辺部のみならず、第1短辺部及び第2短辺部においても、ヒュームに起因する溶接不良を低減することができる。従って、ケースと封口板との溶接不良をより一層低減することができる。
【0019】
(4)さらに、(3)の蓄電デバイスの製造方法であって、前記第1短辺部溶接工程は、前記第1短辺部から生じた第3ヒュームであって、前記第3気流に乗って前記第1短辺部の上方を通過した前記第3ヒュームを、第3吸入装置によって吸入して除去し、前記第2短辺部溶接工程は、前記第2短辺部から生じた第4ヒュームであって、前記第4気流に乗って前記第2短辺部の上方を通過した前記第4ヒュームを、第4吸入装置によって吸入して除去する蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0020】
上述の製造方法では、第1短辺部溶接工程において、第1短辺部(具体的には、レーザビームを照射した部位)から生じた第3ヒュームであって、第3気流に乗って第1短辺部の上方を通過した第3ヒュームを、第3吸入装置によって吸入して除去する。これにより、第1短辺部において、第3ヒュームに起因した溶接不良を、より一層低減することができる。さらに、第2短辺部溶接工程において、第2短辺部(具体的には、レーザビームを照射した部位)から生じた第4ヒュームであって、第4気流に乗って第2短辺部の上方を通過した第4ヒュームを、第4吸入装置によって吸入して除去する。これにより、第2短辺部において、第4ヒュームに起因した溶接不良を、より一層低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態にかかる蓄電デバイスの平面図(上面図)である。
図2図1のB-B断面図である。
図3】実施形態にかかる封口板の平面図である。
図4】実施形態にかかるケースの平面図である。
図5】同ケースの正面図である。
図6】実施形態にかかる閉塞工程を説明する図である。
図7】同閉塞工程を説明する他の図である。
図8図7のC-C断面図である。
図9】実施形態にかかる溶接工程を説明する図である。
図10】同溶接工程を説明する他の図である。
図11】変形形態にかかる溶接工程を説明する図である。
図12】同溶接工程を説明する他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態>
次に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態の蓄電デバイス1は、リチウムイオン二次電池である。この蓄電デバイス1は、電極体50と、電極体50を収容するケース20と、ケース20の開口20bを閉塞する封口板10と、を備える(図1及び図2参照)。ケース20は、直方体箱状をなす金属製のハードケースであり、矩形状の開口20bを有する(図4及び図5参照)。封口板10は、矩形板状をなす金属製であり、ケース20の開口20bに挿入されて開口20bを閉塞している(図1及び図2参照)。
【0023】
ケース20の開口壁部21と封口板10の外周縁部11とは、全周にわたって溶接されて、環状の溶接部Wを形成している(図1及び図2参照)。ここで、ケース20の開口壁部21は、ケース20の開口20bを囲む部位であり、平面視矩形環状をなしている(図4参照)。また、封口板10の外周縁部11は、封口板10の外周面13を含む部位であり、平面視矩形環状をなしている(図3参照)。
【0024】
電極体50は、正極板51と、負極板52と、正極板51と負極板52との間に介在するセパレータ53と、を有する(図2参照)。より具体的には、電極体50は、帯状の正極板51と、帯状の負極板52と、帯状のセパレータ53とを備え、正極板51と負極板52とがセパレータ53を間に挟んで捲回された扁平捲回型の電極体である。なお、電極体50の内部には、図示しない電解液が含まれている。ケース20の内部の底面側にも、図示しない電解液が収容されている。
【0025】
さらに、蓄電デバイス1は、電極体50の正極板51に接続する正極集電部材61、及び、電極体50の負極板52に接続する負極集電部材62を有する(図2参照)。さらに、蓄電デバイス1は、正極集電部材61と接続して、封口板10に形成された第1貫通孔(図示なし)を通じて蓄電デバイス1の外部に露出する正極端子部材(図示なし)を有する。さらに、蓄電デバイス1は、負極集電部材62と接続して、封口板10に形成された第2貫通孔(図示なし)を通じて蓄電デバイス1の外部に露出する負極端子部材(図示なし)を有する。
【0026】
次に、本実施形態の蓄電デバイス1の製造方法について説明する。まず、蓋構造体100を形成する(図6参照)。具体的には、封口板10に、正極集電部材61と負極集電部材62と正極端子部材(図示なし)と負極端子部材(図示なし)とを組み付けて、これらが一体となった蓋構造体100を形成する。次に、電極体50を用意し、この電極体50の正極板51に、蓋構造体100の正極集電部材61を接続すると共に、電極体50の負極板52に、蓋構造体100の負極集電部材62を接続して、蓋構造体100と電極体50とを一体にする(図6参照)。
【0027】
次に、閉塞工程において、蓋構造体100と一体にされた電極体50を、開口20bを通じてケース20の内部に収容すると共に、ケース20の開口20bに封口板10を挿入して、封口板10によってケース20の開口20bを閉塞する(図6図8参照)。なお、図7は、封口板10によって開口20bが閉塞されたケース20の平面図(上面図)である。また、図8は、図7のC-C断面図である。
【0028】
なお、封口板10は、その裏面10c側からケース20の開口20bに挿入される。また、閉塞工程に供されるケース20の開口壁部21は、矩形環状をなし、互いに平行な第1開口長辺部21b及び第2開口長辺部21cと、互いに平行な第1開口短辺部21d及び第2開口短辺部21eと、これらを結ぶ4つの円弧状の開口角部21f~21iと、を有している(図4参照)。なお、開口角部21fは、第1開口長辺部21bと第1開口短辺部21dとを結ぶ部位である。また、開口角部21gは、第2開口長辺部21cと第1開口短辺部21dとを結ぶ部位である。また、開口角部21hは、第2開口長辺部21cと第2開口短辺部21eとを結ぶ部位である。また、開口角部21iは、第1開口長辺部21bと第2開口短辺部21eとを結ぶ部位である。
【0029】
また、閉塞工程に供される封口板10は、以下の形態を有している。具体的には、封口板10の外周縁部11は、矩形環状をなし、互いに平行な第1封口長辺部11b及び第2封口長辺部11cと、互いに平行な第1封口短辺部11d及び第2封口短辺部11eと、これらを結ぶ4つの円弧状の封口角部11f~11iと、を有している(図3参照)。なお、封口角部11fは、第1封口長辺部11bと第1封口短辺部11dとを結ぶ部位である。また、封口角部11gは、第2封口長辺部11cと第1封口短辺部11dとを結ぶ部位である。また、封口角部11hは、第2封口長辺部11cと第2封口短辺部11eとを結ぶ部位である。また、封口角部11iは、第1封口長辺部11bと第2封口短辺部11eとを結ぶ部位である。
【0030】
次に、溶接工程において、封口板10によってケース20の開口20bが閉塞された状態で、封口板10の外周縁部11とケース20の開口壁部21との被溶接部30を全周にわたってレーザ溶接する(図9及び図10参照)。なお、溶接工程は、封口板10の外表面10bを上方に向けた状態で、封口板10の上方からレーザビームLBを被溶接部30に照射して、被溶接部30のレーザ溶接を行う。
【0031】
なお、被溶接部30は、図7に示すように、平面視矩形環状で、互いに平行な第1長辺部31及び第2長辺部32と、互いに平行な第1短辺部33及び第2短辺部34と、これらを結ぶ4つの円弧状の角部35,36,37,38とを有する。第1長辺部31は、第1開口長辺部21bと第1封口長辺部11bとによって構成される。第2長辺部32は、第2開口長辺部21cと第2封口長辺部11cとによって構成される。第1短辺部33は、第1開口短辺部21dと第1封口短辺部11dとによって構成される。第2短辺部34は、第2開口短辺部21eと第2封口短辺部11eとによって構成される。角部35~38は、開口角部21f~21iと封口角部11f~11iとによって構成される。本実施形態では、被溶接部30の周方向にレーザビームLBを走査して、被溶接部30を全周にわたってレーザ溶接する(図9及び図10参照)。
【0032】
また、本実施形態では、溶接装置70を用いて溶接工程を行う(図9及び図10参照)。なお、図9は、溶接装置70の概略正面図であり、第1長辺部31をレーザ溶接しているときの図である。また、図10は、溶接装置70の概略平面図である。溶接装置70は、レーザ照射装置40とガス送出ユニット80と吸入ユニット90とコントローラ75とを備える。レーザ照射装置40は、溶接ヘッド41とレーザ発振器(図示なし)とを有する。溶接ヘッド41は、光ファイバを介してレーザ発振器(図示なし)と接続されており、レーザ発振器から入力されたレーザビームLBを、被溶接部30に向けて出射する。詳細には、溶接ヘッド41は、被溶接部30の周方向にレーザビームLBを走査して、被溶接部30の全周にわたってレーザビームLBを照射する。
【0033】
また、ガス送出ユニット80は、ガス送出本体部85と、第1送出装置81と、第2送出装置82と、第3送出装置83と、第4送出装置84とを有する。ガス送出本体部85は、例えば、公知のエアコンプレッサである。第1送出装置81は、ガス送出口81fを有する第1送出部81dと、第1送出バルブ81bを有する第1送出管81cとを有する。第1送出部81dは、第1送出管81cを通じてガス送出本体部85に接続されている。第2送出装置82は、ガス送出口82fを有する第2送出部82dと、第2送出バルブ82bを有する第2送出管82cとを有する。第2送出部82dは、第2送出管82cを通じてガス送出本体部85に接続されている。
【0034】
第3送出装置83は、ガス送出口83fを有する第3送出部83dと、第3送出バルブ83bを有する第3送出管83cとを有する。第3送出部83dは、第3送出管83cを通じてガス送出本体部85に接続されている。第4送出装置84は、ガス送出口84fを有する第4送出部84dと、第4送出バルブ84bを有する第4送出管84cとを有する。第4送出部84dは、第4送出管84cを通じてガス送出本体部85に接続されている。なお、図9では、ガス送出ユニット80及び吸入ユニット90の図示を一部省略している。また、図10では、溶接ヘッド41の図示を省略している。
【0035】
第1送出部81dのガス送出口81fは、第1長辺部31の上方空間の側方(図10において右側)に配置されており、第1送出管81cを通じてガス送出本体部85から第1送出部81dに供給されたガス(本実施形態では空気)を、第1長辺部31の上方空間に向けて送出する(噴出させる)。これにより、第1長辺部31の上方を、第1短辺部33側から第2短辺部34側に(図9及び図10において右から左に)流れる第1気流A1が形成される。
【0036】
第2送出部82dのガス送出口82fは、第2長辺部32の上方空間の側方(図10において左側)に配置されており、第2送出管82cを通じてガス送出本体部85から第2送出部82dに供給されたガス(本実施形態では空気)を、第2長辺部32の上方空間に向けて送出する(噴出させる)。これにより、第2長辺部32の上方を、第2短辺部34側から第1短辺部33側に(図10において左から右に)流れる第2気流A2が形成される。
【0037】
第3送出部83dのガス送出口83fは、第1短辺部33の上方空間の側方(図10において下側)に配置されており、第3送出管83cを通じてガス送出本体部85から第3送出部83dに供給されたガス(本実施形態では空気)を、第1短辺部33の上方空間に向けてガス送出口83fから送出する(噴出させる)。これにより、第1短辺部33の上方を、第2長辺部32側から第1長辺部31側に(図10において下から上に)流れる第3気流A3が形成される。
【0038】
第4送出部84dのガス送出口84fは、第2短辺部34の上方空間の側方(図10において上側)に配置されており、第4送出管84cを通じてガス送出本体部85から第4送出部84dに供給されたガス(本実施形態では空気)を、第2短辺部34の上方空間に向けてガス送出口84f送出する(噴出させる)。これにより、第2短辺部34の上方を、第1長辺部31側から第2長辺部32側に(図10において上から下に)流れる第4気流A4が形成される。
【0039】
また、吸入ユニット90は、吸入本体部95と、第1吸入装置91と、第2吸入装置92と、第3吸入装置93と、第4吸入装置94とを有する。吸入本体部95は、例えば、公知の集塵機である。第1吸入装置91は、吸入口91fを有する第1吸入部91dと、第1吸入バルブ91bを有する第1吸入管91cとを有する。第1吸入部91dは、第1吸入管91cを通じて吸入本体部95に接続されている。第2吸入装置92は、吸入口92fを有する第2吸入部92dと、第2吸入バルブ92bを有する第2吸入管92cとを有する。第2吸入部92dは、第2吸入管92cを通じて吸入本体部95に接続されている。
【0040】
第3吸入装置93は、吸入口93fを有する第3吸入部93dと、第3吸入バルブ93bを有する第3吸入管93cとを有する。第3吸入部93dは、第3吸入管93cを通じて吸入本体部95に接続されている。第4吸入装置94は、吸入口94fを有する第4吸入部94dと、第4吸入バルブ94bを有する第4吸入管94cとを有する。第4吸入部94dは、第4吸入管94cを通じて吸入本体部95に接続されている。
【0041】
第1吸入部91dの吸入口91fは、第1長辺部31の上方空間の側方(図10において左側)に配置されている。従って、第1送出部81dのガス送出口81fと第1吸入部91dの吸入口91fとは、第1長辺部31の上方空間を挟むようにして、第1長辺部31が延びる方向(図10において左右方向)に向かい合って配置されている。第1吸入部91dは、第1気流A1に含まれる空気と共に、第1気流A1に乗って第1長辺部31の上方を通過した第1ヒュームF1を、吸入口91fから吸入する。第1吸入部91dによって吸入された第1ヒュームF1は、第1吸入管91cを通じて吸入本体部95に集められる。なお、ヒュームとは、溶接熱によって被溶接部30から発生した金属蒸気が冷やされて、微細な金属粒子となって空間に浮遊する粉塵である。第1ヒュームF1は、レーザビームLBの照射によって第1長辺部31から生じるヒュームであり、第1長辺部31の上方空間を浮遊する。
【0042】
第2吸入部92dの吸入口92fは、第2長辺部32の上方空間の側方(図10において右側)に配置されている。従って、第2送出部82dのガス送出口82fと第2吸入部92dの吸入口92fとは、第2長辺部32の上方空間を挟むようにして、第2長辺部32が延びる方向(図10において左右方向)に向かい合って配置されている。第2吸入部92dは、第2気流A2に含まれる空気と共に、第2気流A2に乗って第2長辺部32の上方を通過した第2ヒュームF2を、吸入口92fから吸入する。第2吸入部92dによって吸入された第2ヒュームF2は、第2吸入管92cを通じて吸入本体部95に集められる。なお、第2ヒュームF2は、レーザビームLBの照射によって第2長辺部32から生じるヒュームであり、第2長辺部32の上方空間を浮遊する。
【0043】
第3吸入部93dの吸入口93fは、第1短辺部33の上方空間の側方(図10において上側)に配置されている。従って、第3送出部83dのガス送出口83fと第3吸入部93dの吸入口93fとは、第1短辺部33の上方空間を挟むようにして、第1短辺部33が延びる方向(図10において上下方向)に向かい合って配置されている。第3吸入部93dは、第3気流A3に含まれる空気と共に、第3気流A3に乗って第1短辺部33の上方を通過した第3ヒュームF3を、吸入口93fから吸入する。第3吸入部93dによって吸入された第3ヒュームF3は、第3吸入管93cを通じて吸入本体部95に集められる。なお、第3ヒュームF3は、レーザビームLBの照射によって第1短辺部33から生じるヒュームであり、第1短辺部33の上方空間を浮遊する。
【0044】
第4吸入部94dの吸入口94fは、第2短辺部34の上方空間の側方(図10において下側)に配置されている。従って、第4送出部84dのガス送出口84fと第4吸入部94dの吸入口94fとは、第2短辺部34の上方空間を挟むようにして、第2短辺部34が延びる方向(図10において上下方向)に向かい合って配置されている。第4吸入部94dは、第4気流A4に含まれる空気と共に、第4気流A4に乗って第2短辺部34の上方を通過した第4ヒュームF4を、吸入口94fから吸入する。第4吸入部94dによって吸入された第4ヒュームF4は、第4吸入管94cを通じて吸入本体部95に集められる。なお、第4ヒュームF4は、レーザビームLBの照射によって第2短辺部34から生じるヒュームであり、第2短辺部34の上方空間を浮遊する。
【0045】
コントローラ75は、レーザビームLBの照射位置に応じて、第1送出バルブ81b、第2送出バルブ82b、第3送出バルブ83b、及び第4送出バルブ84bの開閉を制御すると共に、第1吸入バルブ91b、第2吸入バルブ92b、第3吸入バルブ93b、及び第4吸入バルブ94bの開閉を制御する。具体的には、コントローラ75は、第1長辺部31にレーザビームLBが照射されるときは、第1送出バルブ81bと第1吸入バルブ91bを開放して、その他のバルブを閉塞する。また、コントローラ75は、第2長辺部32にレーザビームLBが照射されるときは、第2送出バルブ82bと第2吸入バルブ92bを開放して、その他のバルブを閉塞する。また、コントローラ75は、第1短辺部33にレーザビームLBが照射されるときは、第3送出バルブ83bと第3吸入バルブ93bを開放して、その他のバルブを閉塞する。また、コントローラ75は、第2短辺部34にレーザビームLBが照射されるときは、第4送出バルブ84bと第4吸入バルブ94bを開放して、その他のバルブを閉塞する。
【0046】
なお、第1送出部81dのガス送出口81fと、第2送出部82dのガス送出口82fと、第3送出部83dのガス送出口83fと、第4送出部84dのガス送出口84fと、第1吸入部91dの吸入口91fと、第2吸入部92dの吸入口92fと、第3吸入部93dの吸入口93fと、第4吸入部94dの吸入口94fとは、上下方向の位置が等しくされている(図9参照)。これにより、第1気流A1と第2気流A2と第3気流A3と第4気流A4は、それぞれ、第1長辺部31と第2長辺部32と第1短辺部33と第2短辺部34に沿って真っ直ぐ流れる気流となる。
【0047】
以下、本実施形態の溶接工程について詳細に説明する。本実施形態では、被溶接部30(図7参照)について、第1長辺部31、角部35、第1短辺部33、角部36、第2長辺部32、角部37、第2短辺部34、角部38の順に、レーザビームLBを走査して、被溶接部30を全周にわたってレーザ溶接する。まず、第1長辺部溶接工程において、レーザ照射装置40を用いて、第1長辺部31の第2短辺部34側から第1短辺部33側へ(図10において左から右に)レーザビームLBを走査しつつ、第1長辺部31にレーザビームLBを照射して、第1長辺部31を溶接する。
【0048】
但し、この第1長辺部溶接工程は、第1長辺部31の上方を第1短辺部33側から第2短辺部34側に(図9及び図10において右から左に)流れる第1気流A1を、第1送出装置81によって形成しつつ行われる。具体的には、ガス送出本体部85を駆動させた状態で、コントローラ75の制御によって第1送出バルブ81bを開放することで、第1送出装置81によって第1気流A1が形成される。このとき、第2送出バルブ82b、第3送出バルブ83b、及び第4送出バルブ84bは閉塞されているので、第2気流A2、第3気流A3、及び第4気流A4は形成されない。
【0049】
従って、第1長辺部溶接工程は、レーザビームLBの走査方向とは反対方向に流れる第1気流A1を形成しつつ行われる。これにより、レーザビームLBの照射によって生じた第1ヒュームF1を、第1気流A1によって、第1長辺部31のうちレーザ溶接を終えた側(すなわち、レーザビームLBを照射し終えた側)へ移動させることができる。これにより、第1長辺部31のうちこれからレーザビームLBを照射する部位の上方空間に存在する第1ヒュームF1を低減することができる。従って、溶接ヘッド41から出射されて第1長辺部31に向かって進むレーザビームLBが、第1ヒュームF1に衝突して拡散するのを低減することができる。これにより、第1長辺部31においてレーザビームLBのエネルギー密度が低下することを抑制することができる。具体的には、第1長辺部31に対して、レーザビームLBを適切に収束させて照射することが可能となる。これにより、第1長辺部31における溶接不良を低減することができる。
【0050】
さらに、第1長辺部溶接工程では、第1長辺部31を溶接する期間中、第1長辺部31から生じた第1ヒュームF1であって、第1気流A1に乗って第1長辺部31の上方を通過した第1ヒュームF1を、第1吸入装置91によって吸入して除去する。具体的には、吸入本体部95を駆動させた状態で、コントローラ75の制御によって第1吸入バルブ91bを開放することで、第1吸入装置91によって第1ヒュームF1を吸入することができる。このとき、第2吸入バルブ92b、第3吸入バルブ93b、及び第4吸入バルブ94bは閉塞されている。このように、第1ヒュームF1を第1吸入装置91によって吸入して除去することで、第1長辺部31において、第1ヒュームF1に起因した溶接不良を、より一層低減することができる。
【0051】
引き続き、レーザ照射装置40を用いて、角部35をレーザ溶接した後、第1短辺部溶接工程に進み、第1短辺部33の第1長辺部31側から第2長辺部32側へ(図10において上から下に)レーザビームLBを走査しつつ、第1短辺部33にレーザビームLBを照射して、第1短辺部33を溶接する。
【0052】
但し、この第1短辺部溶接工程は、第1短辺部33の上方を第2長辺部32側から第1長辺部31側に(図10において下から上に)流れる第3気流A3を、第3送出装置83によって形成しつつ行われる。具体的には、ガス送出本体部85を駆動させた状態で、コントローラ75の制御によって第3送出バルブ83bを開放することで、第3送出装置83によって第3気流A3が形成される。このとき、第1送出バルブ81b、第2送出バルブ82b、及び第4送出バルブ84bは閉塞されているので、第1気流A1、第2気流A2、及び第4気流A4は形成されない。
【0053】
従って、第1短辺部溶接工程は、レーザビームLBの走査方向とは反対方向に流れる第3気流A3を形成しつつ行われる。これにより、レーザビームLBの照射によって生じた第3ヒュームF3を、第3気流A3によって、第1短辺部33のうちレーザ溶接を終えた側(すなわち、レーザビームLBを照射し終えた側)へ移動させることができる。これにより、第1短辺部33のうちこれからレーザビームLBを照射する部位の上方空間に存在する第3ヒュームF3を低減することができる。従って、溶接ヘッド41から出射されて第1短辺部33に向かって進むレーザビームLBが、第3ヒュームF3に衝突して拡散するのを低減することができる。これにより、第1短辺部33においてレーザビームLBのエネルギー密度が低下することを抑制することができる。具体的には、第1短辺部33に対して、レーザビームLBを適切に収束させて照射することが可能となる。これにより、第1短辺部33における溶接不良を低減することができる。
【0054】
さらに、第1短辺部溶接工程では、第1短辺部33を溶接する期間中、第1短辺部33から生じた第3ヒュームF3であって、第3気流A3に乗って第1短辺部33の上方を通過した第3ヒュームF3を、第3吸入装置93によって吸入して除去する。具体的には、吸入本体部95を駆動させた状態で、コントローラ75の制御によって第3吸入バルブ93bを開放することで、第3吸入装置93によって第3ヒュームF3を吸入することができる。このとき、第1吸入バルブ91b、第2吸入バルブ92b、及び第4吸入バルブ94bは閉塞されている。このように、第3ヒュームF3を第3吸入装置93によって吸入して除去することで、第1短辺部33において、第3ヒュームF3に起因した溶接不良を、より一層低減することができる。
【0055】
引き続き、レーザ照射装置40を用いて、角部36をレーザ溶接した後、第2長辺部溶接工程に進み、第2長辺部32の第1短辺部33側から第2短辺部34側へ(図10において右から左に)レーザビームLBを走査しつつ、第2長辺部32にレーザビームLBを照射して、第2長辺部32を溶接する。
【0056】
但し、この第2長辺部溶接工程は、第2長辺部32の上方を第2短辺部34側から第1短辺部33側に(図10において左から右に)流れる第2気流A2を、第2送出装置82によって形成しつつ行われる。具体的には、ガス送出本体部85を駆動させた状態で、コントローラ75の制御によって第2送出バルブ82bを開放することで、第2送出装置82によって第2気流A2が形成される。このとき、第1送出バルブ81b、第3送出バルブ83b、及び第4送出バルブ84bは閉塞されているので、第1気流A1、第3気流A3、及び第4気流A4は形成されない。
【0057】
従って、第2長辺部溶接工程は、レーザビームLBの走査方向とは反対方向に流れる第2気流A2を形成しつつ行われる。これにより、レーザビームLBの照射によって生じた第2ヒュームF2を、第2気流A2によって、第2長辺部32のうちレーザ溶接を終えた側(すなわち、レーザビームLBを照射し終えた側)へ移動させることができる。これにより、第2長辺部32のうちこれからレーザビームLBを照射する部位の上方空間に存在する第2ヒュームF2を低減することができる。従って、溶接ヘッド41から出射されて第2長辺部32に向かって進むレーザビームLBが、第2ヒュームF2に衝突して拡散するのを低減することができる。これにより、第2長辺部32においてレーザビームLBのエネルギー密度が低下することを抑制することができる。具体的には、第2長辺部32に対して、レーザビームLBを適切に収束させて照射することが可能となる。これにより、第2長辺部32における溶接不良を低減することができる。
【0058】
さらに、第2長辺部溶接工程では、第2長辺部32を溶接する期間中、第2長辺部32から生じた第2ヒュームF2であって、第2気流A2に乗って第2長辺部32の上方を通過した第2ヒュームF2を、第2吸入装置92によって吸入して除去する。具体的には、吸入本体部95を駆動させた状態で、コントローラ75の制御によって第2吸入バルブ92bを開放することで、第2吸入装置92によって第2ヒュームF2を吸入することができる。このとき、第1吸入バルブ91b、第3吸入バルブ93b、及び第4吸入バルブ94bは閉塞されている。このように、第2ヒュームF2を第2吸入装置92によって吸入して除去することで、第2長辺部32において、第2ヒュームF2に起因した溶接不良を、より一層低減することができる。
【0059】
引き続き、レーザ照射装置40を用いて、角部37をレーザ溶接した後、第2短辺部溶接工程に進み、第2短辺部34の第2長辺部32側から第1長辺部31側へ(図10において下から上に)レーザビームLBを走査しつつ、第2短辺部34にレーザビームLBを照射して、第2短辺部34を溶接する。
【0060】
但し、この第2短辺部溶接工程は、第2短辺部34の上方を第1長辺部31側から第2長辺部32側に(図10において上から下に)流れる第4気流A4を、第4送出装置84によって形成しつつ行われる。具体的には、ガス送出本体部85を駆動させた状態で、コントローラ75の制御によって第4送出バルブ84bを開放することで、第4送出装置84によって第4気流A4が形成される。このとき、第1送出バルブ81b、第2送出バルブ82b、及び第3送出バルブ83bは閉塞されているので、第1気流A1、第2気流A2、及び第3気流A3は形成されない。
【0061】
従って、第2短辺部溶接工程は、レーザビームLBの走査方向とは反対方向に流れる第4気流A4を形成しつつ行われる。これにより、レーザビームLBの照射によって生じた第4ヒュームF4を、第4気流A4によって、第2短辺部34のうちレーザ溶接を終えた側(すなわち、レーザビームLBを照射し終えた側)へ移動させることができる。これにより、第2短辺部34のうちこれからレーザビームLBを照射する部位の上方空間に存在する第4ヒュームF4を低減することができる。従って、溶接ヘッド41から出射されて第2短辺部34に向かって進むレーザビームLBが、第4ヒュームF4に衝突して拡散するのを低減することができる。これにより、第2短辺部34においてレーザビームLBのエネルギー密度が低下することを抑制することができる。具体的には、第2短辺部34に対して、レーザビームLBを適切に収束させて照射することが可能となる。これにより、第2短辺部34における溶接不良を低減することができる。
【0062】
さらに、第2短辺部溶接工程では、第2短辺部34を溶接する期間中、第2短辺部34から生じた第4ヒュームF4であって、第4気流A4に乗って第2短辺部34の上方を通過した第4ヒュームF4を、第4吸入装置94によって吸入して除去する。具体的には、吸入本体部95を駆動させた状態で、コントローラ75の制御によって第4吸入バルブ94bを開放することで、第4吸入装置94によって第4ヒュームF4を吸入することができる。このとき、第1吸入バルブ91b、第2吸入バルブ92b、及び第3吸入バルブ93bは閉塞されている。このように、第4ヒュームF4を第4吸入装置94によって吸入して除去することで、第2短辺部34において、第4ヒュームF4に起因した溶接不良を、より一層低減することができる。
【0063】
引き続き、角部38を溶接することで、被溶接部30を全周にわたってレーザ溶接することができる。これにより、溶接工程が完了すると共に、ケース20と封口板10とが接合されて一体になる。その後、封口板10に形成されている注液孔(図示なし)を通じてケース20の内部に電解液(図示なし)を注入する。その後、注液孔を封止することで、蓄電デバイス1が完成する。
【0064】
<変形形態>
次に、本発明の変形形態について説明する。本変形形態は、ケース120の厚みが薄く、被溶接部130の第1長辺部131と第2長辺部132との間隔(ケース20の厚み方向の距離)が小さいために、溶接装置70の第1送出部81dと第2吸入部92d、及び、第2送出部82dと第1吸入部91dを、ケース120の厚み方向(図12において上下方向)に並べて配置することが困難な場合の形態である。
【0065】
このような場合には、図11に示すように、第1送出部81dと第2吸入部92dを上下方向に重ねて配置すると良い。これにより、第1送出部81dを、第1長辺部131の上方空間の第1側方(図12において右側)に配置することができ、且つ、第2吸入部92dを、第2長辺部132の上方空間の第1側方(図12において右側)に配置することができる。さらには、第2送出部82dと第1吸入部91dを上下方向に重ねて配置すると良い。これにより、第2送出部82dを、第2長辺部132の上方空間の第2側方(図12において左側)に配置することができ、且つ、第1吸入部91dを、第1長辺部131の上方空間の第2側方(図12において左側)に配置することができる。
【0066】
これにより、溶接工程において、第1送出部81dによって、第1長辺部131の上方を第1短辺部133側から第2短辺部134側に流れる第1気流A1を適切に形成することができ、且つ、第2吸入部92dによって、第2気流A2に乗って第2長辺部132の上方を通過した第2ヒュームF2を適切に吸入することができる。さらには、第2送出部82dによって、第2長辺部132の上方を第2短辺部134側から第1短辺部133側に流れる第2気流A2を適切に形成することができ、且つ、第1吸入部91dによって、第1気流A1に乗って第1長辺部131の上方を通過した第1ヒュームF1を適切に吸入することができる。
【0067】
なお、図11に示すように、第1送出部81dのガス送出口81fと第2送出部82dのガス送出口82fの上下方向の位置を等しくし、且つ、第1吸入部91dの吸入口91fと第2吸入部92dの吸入口92fの上下方向の位置を等しくすると良い。これにより、第1長辺部131に対する第1気流A1の上下方向の位置と、第2長辺部132に対する第2気流A2の上下方向位置とを、同等にすることができる。これにより、溶接工程において、第1ヒュームF1が第1気流A1と共に第1吸入部91dによって吸入除去される程度と、第2ヒュームF2が第2気流A2と共に第2吸入部92dによって吸入除去される程度とを、同程度にすることができる。
【0068】
以上において、本発明を実施形態及び変形形態に即して説明したが、本発明は前記実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0069】
1 蓄電デバイス
10 封口板
11 外周縁部
20 ケース
20b 開口
21 開口壁部
30 溶接予定部
31 第1長辺部
32 第2長辺部
33 第1短辺部
34 第2短辺部
40 レーザ照射装置
50 電極体
70 溶接装置
80 ガス送出ユニット
90 吸入ユニット
91 第1吸入装置
92 第2吸入装置
93 第3吸入装置
94 第4吸入装置
A1 第1気流
A2 第2気流
A3 第3気流
A4 第4気流
LB レーザビーム
W 溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12