(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064180
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】ビーコン信号通信装置及び該装置を備えた監視システム
(51)【国際特許分類】
H04W 4/029 20180101AFI20240507BHJP
H04W 88/04 20090101ALI20240507BHJP
H04W 52/38 20090101ALI20240507BHJP
【FI】
H04W4/029
H04W88/04
H04W52/38
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172585
(22)【出願日】2022-10-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】518236605
【氏名又は名称】株式会社Social Area Networks
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】森田 高明
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 忠昭
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA34
(57)【要約】
【課題】小型化及び軽量化により携行性の向上を図ることが可能なビーコン通信装置を提供する。
【解決手段】ビーコン通信装置10は、ビーコン発振器が出力するビーコン信号を受信し、中継用ビーコン信号を生成して中継装置に送信する。ビーコン通信装置10は、ビーコン発振器との距離が第一の距離以内に近接したときにビーコン信号を受信してビーコンIDを取得するBLE受信ユニット141と、ビーコンIDの誤り訂正符号を生成する符号化ユニット142と、誤り訂正符号に基づいて生成される中継用ビーコン信号を、第一の距離より離れた第二の距離に位置する中継装置に対して送信するBLE送信ユニット143と、受信モードと中継モードとの間で遷移させる通信制御ユニット144と、を備え、BLE受信ユニット141、符号化ユニット142、BLE送信ユニット143、及び通信制御ユニット144は、単一の半導体集積回路に実装されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーコン発振器が出力するビーコン信号を受信し、該ビーコン信号に基づいて中継用ビーコン信号を生成して中継先通信装置に送信するビーコン信号通信装置であって、
前記ビーコン発振器との距離が第一の距離以内に近接したときに前記ビーコン発振器から前記ビーコン信号を受信して前記ビーコン発振器を識別可能なビーコン識別情報を取得するビーコン信号受信ユニットと、
前記ビーコン識別情報の誤り訂正符号を生成し、該誤り訂正符号に基づいて生成される前記中継用ビーコン信号を、前記第一の距離より離れた第二の距離に位置する前記中継先通信装置に対して送信することにより前記ビーコン識別情報を中継する中継用ビーコン信号送信ユニットと、
前記ビーコン信号受信ユニットと、前記中継用ビーコン信号送信ユニットとを切替制御することにより、前記ビーコン信号を受信する受信モードと、前記中継用ビーコン信号を送信する中継モードとの間で遷移させる通信制御ユニットと、を備え、
前記ビーコン信号受信ユニットと、前記中継用ビーコン信号送信ユニットと、前記通信制御ユニットは、単一の半導体集積回路に実装されていることを特徴とするビーコン信号通信装置。
【請求項2】
前記中継用ビーコン信号送信ユニットは、互いに同一の符号からなる複数の冗長符号を生成し、該冗長符号に基づいて生成される前記中継用ビーコン信号を、前記第二の距離に位置する前記中継先通信装置に対して送信することにより前記ビーコン識別情報を中継することを特徴とする請求項1に記載のビーコン信号通信装置。
【請求項3】
前記ビーコン信号受信ユニットと、前記中継用ビーコン信号送信ユニットは、共通の空中線を介して無線通信を行うことを特徴とする請求項1に記載のビーコン信号通信装置。
【請求項4】
前記通信制御ユニットは、前記受信モードと、前記中継モードと、前記ビーコン信号通信装置が前記受信モード及び前記中継モードよりも低消費電力で動作する低消費電力モードと、の間で予め定められた所定の順序で遷移するように制御することを特徴とする請求項1に記載のビーコン信号通信装置。
【請求項5】
前記ビーコン信号通信装置は、可搬型のカード形状を有していることを特徴とする請求項1に記載のビーコン信号通信装置。
【請求項6】
前記ビーコン信号通信装置は、ISO/IEC 7810のID-1に規定される寸法を有していることを特徴とする請求項5に記載のビーコン信号通信装置。
【請求項7】
前記ビーコン信号通信装置は、基材層と、該基材層の少なくとも一部を覆う太陽光発電シートと、前記基材層及び前記太陽光発電シートを覆う表面層と、からなる積層構造を有し、
該太陽光発電シートは、前記半導体集積回路の駆動電力を供給可能であることを特徴とする請求項5に記載のビーコン信号通信装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の前記ビーコン信号通信装置と、中継装置と、監視サーバと、からなる監視システムであって、
前記ビーコン信号通信装置は、前記中継装置に前記中継用ビーコン信号を送信し、
前記中継装置は、前記ビーコン信号通信装置が送信する前記中継用ビーコン信号を受信し、前記監視サーバに対して、前記ビーコン識別情報を送信し、
前記監視サーバは、前記ビーコン識別情報を受信して、時刻情報と対応付けて記憶することを特徴とする監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーコン信号通信装置及び該装置を備えた監視システムに係り、特に、中継機能を有するビーコン信号通信装置及び該装置を備えた監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビーコン信号を送受信するビーコン通信機の普及が進んでいる。ビーコン通信機は、比較的狭い空間における移動物体の位置を追跡するために用いられる。特に、GPS信号を受信することが困難な電波環境や、GPSシステムより高い位置標定精度が必要な場合に、ビーコン通信機の利用機会が増加している。
【0003】
特許文献1には、ビーコン信号を利用して、工場内の作業員の作業位置を監視する作業監視システムが開示されている。より具体的には、工場等の建屋内に複数のビーコン発振器を設置するとともに、作業員には、ビーコン信号を受信可能なビーコン通信機を携帯させる。ビーコン通信機は、ビーコン信号を受信すると、ビーコン信号に含まれるビーコンIDと受信時刻とを監視サーバに対して送信する。これにより、工場内の作業位置を特定可能なビーコンIDと時刻情報とに基づいて、工場内の作業員の作業位置を監視することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された作業監視システムによれば、工場内で作業する作業員の作業位置を追跡し、監視することが可能となる。しかしながら、作業員は、ビーコン通信機を携行しながら作業を行わなければならず、ビーコン通信機の携行性の向上という観点から、更なる改善が求められていた。
また、ビーコン通信機が受信したビーコンIDは、LPWA通信によって中継装置、又は遠隔の作業実績監視サーバに対して送信されていたため、大きな送信出力が必要となり、省エネルギー性の向上が求められていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、小型化及び軽量化により携行性の向上を図ることが可能なビーコン通信装置及び該装置を備えた監視システムを提供することにある。
本発明の他の目的は、送信電力を抑制することにより省エネルギー性の向上を図ることが可能なビーコン通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明のビーコン信号通信装置によれば、ビーコン発振器が出力するビーコン信号を受信し、該ビーコン信号に基づいて中継用ビーコン信号を生成して中継先通信装置に送信するビーコン信号通信装置であって、前記ビーコン発振器との距離が第一の距離以内に近接したときに前記ビーコン発振器から前記ビーコン信号を受信して前記ビーコン発振器を識別可能なビーコン識別情報を取得するビーコン信号受信ユニットと、前記ビーコン識別情報の誤り訂正符号を生成し、該誤り訂正符号に基づいて生成される前記中継用ビーコン信号を、前記第一の距離より離れた第二の距離に位置する前記中継先通信装置に対して送信することにより前記ビーコン識別情報を中継する中継用ビーコン信号送信ユニットと、前記ビーコン信号受信ユニットと、前記中継用ビーコン信号送信ユニットとを切替制御することにより、前記ビーコン信号を受信する受信モードと、前記中継用ビーコン信号を送信する中継モードとの間で遷移させる通信制御ユニットと、を備え、前記ビーコン信号受信ユニットと、前記中継用ビーコン信号送信ユニットと、前記通信制御ユニットは、単一の半導体集積回路に実装されていることにより解決される。
【0008】
上記構成によれば、ビーコン信号通信装置は、受信したビーコン信号を、中継用ビーコン信号を用いて中継するため、LPWA等の他の無線通信インターフェース回路を搭載する必要がない。また、ビーコン信号受信ユニットとビーコン信号送信ユニットと、通信制御回路を単一の半導体集積回路に実装することができる。そのため、ビーコン信号通信装置を小型化及び軽量化することができ、携行性の向上を図ることが可能となる。
また、ビーコン信号送信ユニットは、誤り訂正符号を生成し、該誤り訂正符号に基づいて中継用ビーコン信号を生成するため、ビット誤り率を低減することができる。そのため、送信電力を増大させることなく、実質的な通信距離を延長することができ、省エネルギー性の向上を図ることが可能となる。
【0009】
また、前記中継用ビーコン信号送信ユニットは、互いに同一の符号からなる複数の冗長符号を生成し、該冗長符号に基づいて生成される前記中継用ビーコン信号を、前記第二の距離に位置する前記中継先通信装置に対して送信することにより前記ビーコン識別情報を中継するとよい。
上記構成によれば、冗長符号によってビット誤り率を低減することができる。そのため、送信電力を増大させることなく、実質的な通信距離を延長することができ、省エネルギー性の向上を図ることが可能となる。
【0010】
また、前記ビーコン信号受信ユニットと、前記中継用ビーコン信号送信ユニットは、共通の空中線を介して無線通信を行うとよい。
上記構成によれば、ビーコン信号受信用空中線とビーコン信号中継用の空中線を共通の空中線とすることができるため、ビーコン信号通信装置を小型化することができ、携行性の向上を図ることが可能となる。
【0011】
また、前記通信制御ユニットは、前記受信モードと、前記中継モードと、前記ビーコン信号通信装置が前記受信モード及び前記中継モードよりも低消費電力で動作する低消費電力モードと、の間で予め定められた所定の順序で遷移するように制御するとよい。
上記構成によれば、予め定められた所定の順序で受信モードと中継モードと低消費電力モードとの間を遷移するため、受信モード及び中継モードにおいてビーコン信号を受信して中継しつつ、低消費電力モードにおいて電力消費を抑制するため、省エネルギー性の向上を図ることが可能となる。
【0012】
また、前記ビーコン信号通信装置は、可搬型のカード形状を有しているとよい。
上記構成によれば、カード形状を有するビーコン通信装置を、カードホルダに入れて首にかけるか、又は作業ポケットに収納することができるため、携行性が向上するとともに、作業者の作業性の向上を図ることが可能となる。
【0013】
また、前記ビーコン信号通信装置は、ISO/IEC 7810のID-1に規定される寸法を有しているとよい。
上記構成によれば、ビーコン通信装置は、国際的な標準化団体であるISO(国際標準化機構)及びIEC(国際電気標準会議)によって定められたISO/IEC 7810のID-1に規定される寸法を有しているため、ビーコン信号通信装置の汎用性の向上を図ることが可能となる。
【0014】
また、前記ビーコン信号通信装置は、基材層と、該基材層の少なくとも一部を覆う太陽光発電シートと、前記基材層及び前記太陽光発電シートを覆う表面層と、からなる積層構造を有し、該太陽光発電シートは、前記半導体集積回路の駆動電力を供給可能であるとよい。
上記構成によれば、シート状の太陽光発電シートによって、半導体集積回路の消費電力を供給することが可能となるため、ビーコン信号通信装置のサイズを大型化させることなく省エネルギー性の向上を図ることが可能となる。
【0015】
また、前記ビーコン信号通信装置と、中継装置と、監視サーバと、からなる監視システムであって、前記ビーコン信号通信装置は、前記中継装置に前記中継用ビーコン信号を送信し、前記中継器は、前記ビーコン信号通信装置が送信する前記中継用ビーコン信号を受信し、前記監視サーバに対して、前記ビーコン識別情報を送信し、前記監視サーバは、前記ビーコン識別情報を受信して、時刻情報と対応付けて記憶するとよい。
上記構成によれば、ビーコン信号通信装置が取得したしたビーコン識別情報を、中継装置を介して監視サーバに蓄積することができる。そのため、ビーコン信号通信装置を携行する作業者の位置を、遠隔地から追跡し、監視することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るビーコン信号通信装置によれば、小型化及び軽量化によって携行性の向上を図ることが可能となる。また、本発明に係るビーコン信号通信装置によれば、省エネルギー性の向上を図ることが可能となる。
ことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】作業監視システムの全体構成を示す図である。
【
図2】作業エリア内の配置を模擬的に示す図である。
【
図4】ビーコン通信装置の機能構成を示す図である。
【
図5】誤り訂正符号と通信品質(ビット誤り率)の関係を説明するための図である。
【
図6】ビーコン通信装置の状態制御タイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1乃至
図7を参照しながら、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る作業監視システム1及びビーコン通信装置10について説明する。
本実施形態に係る作業監視システム1は、工場で作業する作業者の作業位置を追跡することにより、作業実績を監視するために用いられる。また、本実施形態におけるビーコン通信装置10は、作業者によって携行されるとともに、工場の作業設備Eに設置されたビーコン発振器Bが出力するビーコン信号を受信して、ビーコン信号に基づいて生成される中継用ビーコン信号を中継装置30に対して送信するために用いられる。
【0019】
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。つまり、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0020】
<<作業監視システム1の概要>>
図1は、作業監視システム1の全体構成を示している。
作業監視システム1は、ビーコン通信装置10と、作業監視サーバ20と、中継装置30と、を主な構成として有している。
【0021】
ビーコン通信装置10は、可搬型のカード形状を有しており、作業者によって携行される通信装置である。
図1において、ビーコン通信装置10は、カードホルダに収容された状態で作業者に携行されているが、これに限定されない。ビーコン通信装置10は、作業者が着用する作業着のポケットに収容されて携行されることとしてもよい。
ビーコン通信装置10は、作業設備Eごとに配設されたビーコン発振器Bが出力するビーコン信号を受信する。また、ビーコン通信装置10は、受信したビーコン信号に基づいて中継用ビーコン信号を生成し、中継装置30を介して作業監視サーバ20に向けて送信する。ビーコン信号を中継する際の無線通信信号としてビーコン信号を利用することにより、ビーコン通信装置10の小型化及び軽量化を図ることが可能となり、ビーコン通信装置10の携行性の向上を図ることが可能となる。ビーコン通信装置10の詳細については後述する。ビーコン通信装置10は、ビーコン信号通信装置に相当する。
【0022】
中継装置30は、工場内に設置されて、ビーコン通信装置10と作業監視サーバ20の間の通信信号を中継する。中継装置30は、ビーコン通信装置10が送信する中継用ビーコン信号を受信するとともに、作業監視サーバ20に対してLPWA(Low Power Wide Range)通信信号を送信する。LPWA通信では、ビーコン信号と比べて、長距離通信が可能な無線通信方式が採用されている。これにより、作業監視サーバ20又は作業監視端末40を操作する作業管理者は、工場から離れた位置において作業者の位置を追跡し、作業監視を行うことが可能となる。中継装置30は、中継先通信装置に相当する。
【0023】
作業監視サーバ20は、中継装置30を介してビーコン通信装置10が出力する中継用ビーコン信号を受信する。次に作業監視サーバ20は、中継用ビーコン信号に含まれるビーコンID(ビーコン発振器Bを特定可能な識別情報)とカードID(ビーコン通信装置10を特定可能な識別情報)を、時刻情報と対応付けた作業実績情報として記憶する。作業監視サーバ20は、作業実績情報に基づいて作業監視情報を生成して、作業監視端末40に出力することができる。
【0024】
図1に示される作業監視端末40は、ネットワークNWを介して作業監視サーバ20と接続されている。作業管理者は、作業監視端末40を操作することによって作業監視情報を取得することができる。ここで作業監視情報とは、作業実績情報から抽出される情報であって、特定の作業設備Eに関する作業実績、特定の作業者による作業実績、又は特定の作業日時における作業実績を把握可能な情報である。
【0025】
図2は、作業エリアA内の配置を模擬的に示す図である。
図2に示すように、作業エリアAには、複数の作業設備Eが歩行レーンRに沿って設置されている。作業設備Eには、ビーコン発振器Bが取り付けられている。作業者は、歩行レーンRを歩行して作業設備Eの前まで移動した後に、作業設備Eを操作して作業を開始する。
【0026】
作業者が作業設備Eの前に移動した際に、ビーコン通信装置10は、作業設備Eに取り付けられたビーコン発振器Bが出力するビーコン信号を受信することができる。そしてビーコン通信装置10は、受信したビーコン信号に含まれるビーコンIDを取得し、ビーコン通信装置10を識別可能なカードIDとともに作業監視サーバ20に送信する。ビーコンIDは、ビーコン発振器Bが取り付けられた作業設備Eを識別可能な識別情報である。このとき、ビーコン通信装置10は、上述した中継用ビーコン信号を生成してビーコンID及びカードIDを中継装置30に送信する。
【0027】
ビーコン通信装置10は、複数のビーコン発振器Bが送信するビーコン信号を受信した場合、各々のビーコン信号に含まれるビーコンIDを、カードIDとともに作業監視サーバ20に送信することができるが、これに限定されない。ビーコン通信装置10は、受信したビーコン信号の受信電力を比較することによって、最も受信電力が大きいビーコン信号のビーコンIDを、カードIDとともに作業監視サーバ20に送信することとしてもよい。これにより、作業管理者は、作業者が実際に操作している作業設備Eを特定する必要がなくなるため、作業監視に係る負担を軽減することが可能となる。
【0028】
<ビーコン通信装置10>
次に、ビーコン通信装置10について説明する。ビーコン通信装置10は、一般的に普及しているクレジット・カードと同一の寸法を有するカード形状を有した無線通信器である。換言すると、ビーコン通信装置10は、国際的な標準化団体であるISO(国際標準化機構)及びIEC(国際電気標準会議)によって定められたISO/IEC 7810のID-1に規定される寸法を有している。具体的には、ビーコン通信装置10は、幅53.98mm、長さ85.60mm、厚み0.76mmの寸法を有している。これにより、ビーコン通信装置10を一般的なカードホルダに収容するか、又は作業着のポケット等に収容して容易に携行することが可能となる。
【0029】
図3は、ビーコン通信装置10の分解斜視図を示している。
図3に示すようにビーコン通信装置10は、基材11と、基材11の両面を覆うとともに、基材11を保護する保護シート12と、から主に構成されている。保護シート12は、図示しない接着剤層を介して基材11の表面及び裏面を覆っている。
【0030】
基材11は、基板本体11aと、基板本体11aに実装された空中線13と、通信回路14と、太陽光発電シート151及び二次電池152からなる電源ユニット15と、から主に構成されている。
基板本体11aは、ガラスエポキシ樹脂等の硬質性樹脂からなるプリント配線基板である。基板本体11aは基材層に相当し、保護シート12は、表面層に相当する。
【0031】
空中線13は、ビーコン発振器Bが出力するビーコン信号を受信するとともに、中継装置30に中継用ビーコン信号を送信する。換言すると、空中線13は、送受信用アンテナである。
図3において、空中線13はダイポールアンテナとして図示されているが、これに限定されない。空中線13は、ループアンテナ、又はパッチアンテナであってもよい。
【0032】
通信回路14は、空中線13を介してビーコン信号を送受信可能な無線通信回路である。より詳細には、通信回路14は、BLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))の通信規格に準拠したビーコン信号送受信機である。後述するように、通信回路14は、BLE受信ユニット141と、符号化ユニット142と、BLE送信ユニット143と、通信制御ユニット144と、が実装された単一の半導体集積回路である(
図4を参照)。
【0033】
電源ユニット15は、通信回路14に対して、駆動電力を供給する。電源ユニット15は、太陽光発電シート151と、二次電池152と、から主に構成されている。太陽光発電シート151は、基板本体11aの一部を覆うように配設されている。換言すると、ビーコン通信装置10は、基板本体11aと、太陽光発電シート151と、保護シート12と、からなる積層構造を有している。太陽光発電シート151は、有機薄膜太陽電池であるが、これに限定されない。太陽光発電シート151は、薄膜シリコン太陽電池であってもよい。
二次電池152は、太陽光発電シート151が出力する電気エネルギーを蓄積し、通信回路14に対して駆動電力を供給する。二次電池152は、薄型のリチウムイオン電池である。
【0034】
<通信回路14>
次に、通信回路14の機能構成について説明する。
図4は、通信回路14の機能構成を示している。
図4に示すように、通信回路14は、BLE受信ユニット141と、符号化ユニット142と、BLE送信ユニット143と、通信制御ユニット144と、を有している。
【0035】
BLE受信ユニット141は、ビーコン通信装置10とビーコン発振器Bの間の距離が所定の受信距離以内に接近したときにビーコン発振器Bからビーコン信号を受信して、ビーコン識別情報を取得する。また、BLE受信ユニット141は、受信したビーコン信号の受信電力に基づいて、ビーコン通信装置10とビーコン発振器Bの間の距離を推定し、推定結果が所定の受信距離以内であると判定した場合にビーコン識別情報を取得することとしてもよい。所定の受信距離(第一の距離に相当)は、例えば10mであるが、これに限定されない。
BLE受信ユニット141は、低ノイズ増幅器、周波数変換器、復調器等を含み、2.4GHz帯の高周波信号であるビーコン信号から、ビーコン発振器Bを特定可能なビーコンID、及びビーコン信号の送信電力を特定可能な情報を取得する。BLE受信ユニット141は、ビーコン信号受信ユニットに相当する。
【0036】
符号化ユニット142は、ビーコンID及びカードIDの誤り訂正符号を生成する。符号化ユニット142は、ビタビアルゴリズムに基づく畳込み符号を生成するが、これに限定されない。符号化ユニット142は、公知の方式によって誤り訂正符号を生成することができる。符号化ユニット142は、ブロック符号を生成することとしてもよい。
【0037】
ここで符号化ユニット142によって生成される誤り訂正符号と通信品質の関係について説明する。
図5は、搬送波電力対雑音電力比(CNR)とビット誤り率(BER)の関係を示すBER曲線を示している。詳細には、
図5は、誤り訂正符号を用いない場合のBER曲線C1と、誤り訂正符号を用いる場合のBER曲線C2を示している。BER曲線C1及びBER曲線C2が示すように、通信品質の指標となるビット誤り率(BER)は、搬送波電力対雑音電力比(CNR)が高くなると低下する(ビット誤り率を抑制することができる)。
【0038】
BER曲線C1とBER曲線C2を比較すると、BER曲線C2は、BER曲線C1を下方に変位させた曲線となっている。換言すると、誤り訂正符号を用いることによって、ビット誤り率が抑制される。
また、誤り訂正符号を用いない場合、所望のビット誤り率R0を得るためには、CNR1以上の搬送波電力対雑音電力比が必要となる。一方、誤り訂正符号を用いる場合、所望のビット誤り率R0を得るためには、CNR2以上の搬送波電力対雑音電力比を有していればよい。
図5に示すように、CNR2はCNR1よりも小さい。換言すると、誤り訂正符号を用いることによって、CNR1とCNR2の差分に対応する距離だけ、より遠方に位置する通信装置に対して、情報を伝達することが可能となる。
【0039】
図4に戻って、符号化ユニット142は、ビーコンID及びカードIDの誤り訂正符号を生成する。誤り訂正符号に基づいて生成される中継用ビーコン信号は、上述した所定の受信距離より離れた所定の送信距離に位置する中継装置30に対して送信される。中継装置30が誤り訂正処理を実行することにより、中継用ビーコン信号の送信電力を増大させることなく実質的な通信距離の延長が可能となる。所定の送信距離(第二の距離に相当する)は、例えば40mであるが、これに限定されない。
【0040】
また、符号化ユニット142は、誤り訂正符号に加えて、互いに同一の符号からなる複数の冗長符号を生成することとしてもよい。中継装置30が冗長符号に基づいて誤り訂正処理を実行することにより、ビット誤り率を抑制することができる。そのため、誤り訂正符号の場合と同様に、実質的な通信距離の延長が可能となる。
【0041】
図4に戻って、BLE送信ユニット143は、空中線13を介して中継装置30に対して中継用ビーコン信号を送信する。BLE送信ユニット143は、上述した符号化ユニット142によって生成された誤り訂正符号に基づいて中継用ビーコン信号を生成し、中継装置30に送信する。
BLE送信ユニット143は、変調器、周波数変換器、送信用増幅器等を含み、2.4GHz帯の高周波信号である中継用ビーコン信号を出力することができる。符号化ユニット142は、BLE規格において符号化処理を行う「BLE Coded Phy」の役割を担っている。符号化ユニット142及びBLE送信ユニット143は、中継用ビーコン信号送信ユニットに相当する。
【0042】
受信したビーコン信号を、ビーコン信号を用いて中継することにより、LPWA通信信号を用いて中継する場合と比べて、回路構成を単純化することができ、ビーコン通信装置10の小型化、及び軽量化を図ることが可能となる。
具体的には、ビーコン信号を受信するために用いる空中線と、中継用ビーコン信号を送信するために用いる空中線を共通の空中線とすることができ、ビーコン通信装置10を小型化することが可能となる。また、上述した通信回路14に実装されるBLE受信ユニット141及びBLE送信ユニット143を構成する電子部品を共通部品とすることができ、通信回路14を小型化することが可能となる。
【0043】
次に、通信制御ユニット144は、プロセッサと、揮発性メモリと、不揮発性メモリを有し、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを実行することによって通信回路14全体の制御を司る。
通信制御ユニット144は、BLE受信ユニット141と、符号化ユニット142及びBLE送信ユニット143と、を切り替え制御することにより、ビーコン信号を受信する受信モードと、中継用ビーコン信号を送信する中継モードとの間でビーコン通信装置10を遷移させる。より詳細には、通信制御ユニット144は、受信モードと、中継モードと、ビーコン信号の受信及び中継用ビーコン信号の送信を行わないスリープモードと、の間で予め定められた所定の順序でビーコン通信装置10が遷移するように制御する。なお、ビーコン通信装置10は、スリープモードにおいて、受信モード及び中継モードと比べて低消費電力で動作することができる。スリープモードは、低消費電力モードに相当する。
【0044】
図6は、ビーコン通信装置10の状態制御のタイミングを示している。
図6に示すように、ビーコン通信装置10は、受信モードと、中継モードと、スリープモードと、の間を、所定の周期で繰り返し遷移する。繰り返し周期T0は、16秒である。すなわち、ビーコン通信装置10は、16秒間隔でビーコン発振器Bが送信するビーコン信号を受信するとともに、中継装置30に対して中継用ビーコン信号を送信する。ただし、T0は16秒に限定されない。作業エリアAにおける作業を適切に監視することができればよく、繰り返し周期T0は16秒よりも短くてもよいし、長くてもよい。
【0045】
受信モードにおいて、ビーコン通信装置10は、ビーコン発振器Bが送信するビーコン信号を受信する。通信制御ユニット144は、BLE受信ユニット141が、空中線13及び電源ユニット15と接続されるように制御する。
受信モードの継続時間T1は5秒であるが、これに限定されない。受信モードの継続時間T1は、5秒より短くてもよいし、長くてもよい。
【0046】
ビーコン通信装置10は、受信モードの次に中継モードに遷移する。中継モードにおいて、ビーコン通信装置10は、中継装置30に対して中継用ビーコン信号を送信する。通信制御ユニット144は、符号化ユニット142が電源ユニット15と接続されるように制御するとともに、BLE送信ユニット143が空中線13及び電源ユニット15と接続されるように制御する。
中継モードの継続時間T2は1秒であるが、これに限定されない。中継モードの継続時間T2は、1秒より短くてもよいし、長くてもよい。
【0047】
ビーコン通信装置10は、中継モードの次にスリープモードに遷移する。スリープモードにおいて、ビーコン通信装置10は、ビーコン信号を受信しない。また、スリープモードにおいて、ビーコン通信装置10は、中継用ビーコン信号を送信しない。通信制御ユニット144は、電源ユニット15によるBLE受信ユニット141、符号化ユニット142、及びBLE送信ユニット143に対する電源供給を停止又は制限する。
スリープモードの継続時間T3は10秒であるが、これに限定されない。スリープモードを設けることによって、ビーコン通信装置10の省エネルギー性を向上させ、もって電源ユニット15の電源容量を抑制することができ、ビーコン通信装置10の小型化及び軽量化を図ることが可能となる。
【0048】
上述したように、BLE受信ユニット141と、符号化ユニット142と、BLE送信ユニット143と、通信制御ユニット144は、単一の半導体集積回路である通信回路14に実装されている。これにより、ビーコン通信装置10の小型化及び軽量化を図ることが可能となる。また、ビーコン通信装置10の製造コストを抑制することが可能となる。
【0049】
<<作業監視サーバ20>>
次に、作業監視サーバ20の機能構成について説明する。
図7は、作業監視サーバ20の機能構成を示している。
図7に示すように、作業監視サーバ20は、作業監視サーバ20全体の制御を司る制御部21と、入力部22と、表示部23と、通信部24と、記憶部25と、を有している。
入力部22は、作業管理者の入力を受け付ける入力装置であって、例えばキーボード及びマウスである。作業管理者は、後述する表示部23に後述する作業監視情報を表示するために入力部22に対する操作入力を行う。
【0050】
表示部23は、LCD(液晶ディスプレイ)からなる表示デバイスであって、作業監視情報を表示出力する。表示部23は、タッチパネル式の液晶表示装置であってもよい。この場合、表示部23を介してユーザの操作入力を受け付けることができる。
通信部24は、インターネット等のネットワークNWを介して中継装置30と通信するための通信インターフェースであって、中継装置30を介してビーコン通信装置10からビーコンID及びカードIDを受信する。
【0051】
記憶部25は、HDD(Hard Disk Drive)、あるいはSSD(Solid State Drive)等からなる不揮発性の補助記憶装置である。記憶部25には、作業者の作業実績情報が記憶される。作業実績情報とは、中継装置30を介してビーコン通信装置10から受信したビーコンIDと、カードIDと、時刻情報(例えば、作業監視サーバ20が中継装置30を介してビーコンID及びカードIDを受信した際の受信時刻)と、が互いに対応付けられた情報である。作業管理者は、作業実績情報を記憶部25から読み出すことにより、作業エリアAにおける作業状況を監視することができる。
【0052】
制御部21は、CPU、不揮発性メモリ及び揮発性メモリ(不図示)を有し、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを揮発性メモリにロードして実行することにより、作業実績情報取得部211及び作業監視情報出力部212として機能する。
【0053】
作業実績情報取得部211は、通信部24を介して作業実績情報を取得する。上述したように、作業実績情報は、ビーコンIDと、カードIDと、時刻情報から構成され、誰が(どのビーコン通信装置10を携行する作業者が)、いつ、どこにいるか(どの作業設備Eを操作して作業しているか)を特定可能な情報である。
作業監視情報出力部212は、作業実績情報から作業監視情報を抽出し、表示部23又は通信部24を介して作業監視端末40に出力する。作業監視情報とは、作業実績情報のうち、特定の作業者、又は特定の作業設備Eに関する情報を抽出することによって生成される情報であるが、これに限定されない。作業監視情報とは、作業管理者によって有用な情報であればよく、特定の作業日時に関する作業実績情報を抽出することによって作業監視情報を生成することとしてもよい。
【0054】
以上、本発明の一実施形態に係るビーコン通信装置10及びビーコン通信装置10を備えた作業監視システム1について説明したが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
上述した実施形態において、ビーコン通信装置10は、カード形状を有する通信装置であるとしてして説明したが、これに限定されない。ビーコン通信装置10は、PC等に接続可能なドングルに搭載されていてもよい。
【0055】
また、上述した実施形態では、ビーコン通信装置10は、BLE受信ユニット141と、符号化ユニット142と、BLE送信ユニット143と、通信制御ユニット144と、が実装された通信回路14を備えていることとして説明したが、これに限定されない。ビーコン通信装置10は、さらに、RFID通信回路を備えていてもよい。これにより、ビーコン通信装置10は、RFID通信回路を介して近距離無線通信を行うことが可能となる。そのため、ビーコン通信装置10を作業エリアAの入退室用カードキーとして併用することが可能となる。
【0056】
また、上述した実施形態では、電源ユニット15は、太陽光発電シート151と、二次電池152と、を有していることとして説明したが、これに限定されない。電源ユニット15は、交換可能な一次電池を備えていてもよい。これにより、太陽光発電シート151による発電量が不十分な場合であっても通信回路14に対して駆動電力を供給することが可能となる。
【0057】
また、上述した実施形態では、ビーコン通信装置10は、工場において作業員の作業実績を監視するために用いられることとして説明したが、これに限定されない。ビーコン通信装置10は、ビーコン通信装置10を携行する人物、又はビーコン通信装置10を搭載した商品又は物体の位置を追跡し、監視するために用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 作業監視システム(監視システム)
10 ビーコン通信装置(ビーコン信号通信装置)
11 基材
11a 基板本体(基材層)
12 保護シート(表面層)
13 空中線
14 通信回路
141 BLE受信ユニット(ビーコン信号受信ユニット)
142 符号化ユニット(中継用ビーコン信号送信ユニット)
143 BLE送信ユニット(中継用ビーコン信号送信ユニット)
144 通信制御ユニット
15 電源ユニット
151 太陽光発電シート
152 二次電池
20 作業監視サーバ
21 制御部
211 作業実績情報取得部
212 作業監視情報出力部
22 入力部
23 表示部
24 通信部
25 記憶部
30 中継装置
40 作業監視端末
NW ネットワーク
E 作業設備
A 作業エリア
R 歩行レーン
B ビーコン発振器