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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006419
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】シート用送風装置
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/74 20060101AFI20240110BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20240110BHJP
   B60N 2/02 20060101ALI20240110BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20240110BHJP
   A47C 7/46 20060101ALI20240110BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20240110BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A47C7/74 C
B60N2/22
B60N2/02
A47C7/02
A47C7/46
A47C7/38
B60N2/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107253
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久野 江梨子
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084BA01
3B084HA05
3B084HA11
3B084JG01
3B084JG05
3B084JG06
3B087BD04
3B087BD14
(57)【要約】
【課題】送風時の騒音及びシートにおける配置の制約を低減できるシート用送風装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、シートに設置された圧縮ポンプと、シートの内部からシートの着席領域に向けて、圧縮ポンプから送られる気体を排出するように構成されたノズルと、を備えるシート用送風装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに設置された圧縮ポンプと、
前記シートの内部から前記シートの着席領域に向けて、前記圧縮ポンプから送られる気体を排出するように構成されたノズルと、
を備える、シート用送風装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート用送風装置であって、
前記ノズルは、前記シートのヘッドレストに配置される、シート用送風装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシート用送風装置であって、
前記圧縮ポンプから送られる気体の供給によって膨張することで前記シートを変動させるように構成された気体袋をさらに備える、シート用送風装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のシート用送風装置であって、
前記ノズルから排出される気体の量を調整するように構成された風量調整機構をさらに備える、シート用送風装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシート用送風装置であって、
前記風量調整機構は、
前記圧縮ポンプから送られる気体を貯留するように構成されたタンクと、
前記タンクから前記ノズルへ送られる気体の圧力を調整するように構成された圧力調整部と、
を有する、シート用送風装置。
【請求項6】
請求項4に記載のシート用送風装置であって、
前記風量調整機構は、前記ノズルから排出される気体の圧力を受けて、前記ノズルの排出口に近づくことで前記排出口の開口面積を減少させるように構成された開口調整部を有する、シート用送風装置。
【請求項7】
請求項4に記載のシート用送風装置であって、
前記風量調整機構は、前記ノズルから排出される気体の圧力を受けて、前記ノズルにおいて前記圧縮ポンプから送られる気体が排出される排出口の数を増加させるように構成された排出口数調整部を有する、シート用送風装置。
【請求項8】
請求項4に記載のシート用送風装置であって、
前記風量調整機構は、互いに開口面積の異なる複数の貫通孔を有すると共に、前記複数の貫通孔のうち任意の貫通孔が前記ノズルの排出口と重なるように変位可能な蓋部を有する、シート用送風装置。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載のシート用送風装置であって、
前記ノズルから排出される気体に霧状の液粒を供給するように構成された液粒供給機構をさらに備える、シート用送風装置。
【請求項10】
請求項9に記載のシート用送風装置であって、
前記液粒供給機構は、前記液粒を断続的に供給するように構成される、シート用送風装置。
【請求項11】
請求項1又は請求項2に記載のシート用送風装置であって、
前記シートは、乗物に設置される、シート用送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シート用送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートの内部から着席者に向けて空気を送る送風装置が公知である(特許文献1参照)。この送風装置は、シート内部に配置されたファンによってシート外部から空気を吸引し、送風を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4678514号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シート内部にファンを設ける場合、シートにおいてファンによる騒音(つまり風切り音)が発生する。また、シート内部にファンを配置するスペースが必要となる。さらに、シートの意匠を考慮してファンの給気口を配置すると、ダクト等の内部構造が複雑となる。そのため、送風装置の配置における制約が大きい。
【0005】
本開示の一局面は、送風時の騒音及びシートにおける配置の制約を低減できるシート用送風装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、シート(100)に設置された圧縮ポンプ(2)と、シート(100)の内部からシート(100)の着席領域に向けて、圧縮ポンプ(2)から送られる気体を排出するように構成されたノズル(3)とを備えるシート用送風装置(1)である。
【0007】
このような構成によれば、圧縮ポンプ(2)によって圧縮された気体が供給されるため、送風時の騒音が低減される。また、シート用送風装置(1)の省スペース化が図れると共に、吸気口、排気口及び気体の供給路を柔軟に配置できる。その結果、シート(100)におけるシート送風装置(1)の配置の制約が低減される。
【0008】
本開示の一態様では、ノズル(3)は、シート(100)のヘッドレスト(103)に配置されてもよい。このような構成によれば、ヘッドレスト(103)を大型化することなく、着席者の耳元における騒音の発生を抑制しながら着席者の首元を冷却することができる。
【0009】
本開示の一態様は、圧縮ポンプ(2)から送られる気体の供給によって膨張することでシート(100)を変動させるように構成された気体袋(4)をさらに備えてもよい。このような構成によれば、1つのシート用送風装置(1)によって、ノズル(3)からの送風と気体袋(4)によるマッサージとを行うことができる。そのため、シート(100)の内部構造の複雑化を抑制しつつ、シート(100)の付加価値を高めることができる。
【0010】
本開示の一態様は、ノズル(3)から排出される気体の量を調整するように構成された風量調整機構(6)をさらに備えてもよい。このような構成によれば、着席者に快適な風量で送風を行うことができる。
【0011】
本開示の一態様では、風量調整機構(6)は、圧縮ポンプ(2)から送られる気体を貯留するように構成されたタンク(61)と、タンク(61)からノズル(3)へ送られる気体の圧力を調整するように構成された圧力調整部(62)と、を有してもよい。このような構成によれば、圧縮ポンプ(2)を小型化できる。また、タンク(61)からの排出時に気体が断熱膨張するため、ノズル(3)から排出される気体の温度を下げることができる。
【0012】
本開示の一態様では、風量調整機構(6)は、ノズル(3)から排出される気体の圧力を受けて、ノズル(3)の排出口(31)に近づくことで排出口(31)の開口面積を減少させるように構成された開口調整部(63)を有してもよい。このような構成によれば、送風開始時のノズル(3)における風速を小さくしつつ、徐々に風速を高めることができる。
【0013】
本開示の一態様では、風量調整機構(6)は、ノズル(3)から排出される気体の圧力を受けて、ノズル(3)において圧縮ポンプ(2)から送られる気体が排出される排出口の数を増加させるように構成された排出口数調整部(64)を有してもよい。このような構成によれば、風圧の大きさに応じてノズル(3)における風量を増加させることができる。
【0014】
本開示の一態様では、風量調整機構(6)は、互いに開口面積の異なる複数の貫通孔(65A-65D)を有すると共に、複数の貫通孔(65A-65D)のうち任意の貫通孔がノズル(3)の排出口(31)と重なるように変位可能な蓋部(65)を有してもよい。このような構成によれば、比較的簡潔な構成で、ノズル(3)における風量を調整することができる。
【0015】
本開示の一態様は、ノズル(3)から排出される気体に霧状の液粒を供給するように構成された液粒供給機構(7)をさらに備えてもよい。このような構成によれば、送風による冷却効果を液粒によって高めることができる。
【0016】
本開示の一態様では、液粒供給機構(7)は、液粒を断続的に供給するように構成されてもよい。このような構成によれば、着席者の液粒に対する馴化を抑制できる。その結果、着席者が体感する冷却効果を高めることができる。
【0017】
本開示の一態様では、シート(100)は、乗物に設置されてもよい。このような構成によれば、スペースの制約が比較的大きい乗物用のシート(100)に対し、配置の制約を低減しつつ送風機能を付与することができる。
【0018】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態における乗物用シートの模式的な分解図である。
図2図2は、図1の送風装置の模式的な構成図である。
図3図3は、図2の風量調整機構におけるタンク及び圧力調整部の模式図である。
図4図4A及び図4Bは、図2の風量調整機構における気体の圧力が低い状態での開口調整部の模式図であり、図4C及び図4Dは、気体の圧力が高い状態での開口調整部の模式図である。
図5図5Aは、図2の風量調整機構における気体の圧力が低い状態での排出口数調整部の模式図であり、図5Bは、気体の圧力が高い状態での排出口数調整部の模式図である。
図6図6A及び図6Bは、図2の風量調整機構における蓋部の模式図である。
図7図7A及び図7Bは、図2の液粒供給機構の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す乗物用シート100は、シートクッション101と、シートバック102と、ヘッドレスト103と、クッションフレーム104と、バックフレーム105と、サポート106と、送風装置1とを備える。
【0021】
シートクッション101は、着席者の臀部を支持する。シートバック102は、着席者の背部を支持する。ヘッドレスト103は、着席者の頭部を支持する。クッションフレーム104は、シートクッション101を支持する。バックフレーム105は、シートバック102を支持する。サポート106は、バックフレーム105を背後からさらに支持する。本実施形態の乗物用シート100は、乗用車の座席シートとして使用される。
【0022】
<送風装置>
送風装置1は、圧縮ポンプ2と、ノズル3と、気体袋4と、切替機構5と、チューブ10とを備える。さらに、図2に示すように、送風装置1は、風量調整機構6と、液粒供給機構7と、制御部8と、入力部9とを備える。
【0023】
<圧縮ポンプ>
図1に示す圧縮ポンプ2は、乗物用シート100に設置されている。具体的には、圧縮ポンプ2は、シートクッション101又はシートバック102の内部に配置されている。
【0024】
圧縮ポンプ2は、乗物内の空気を圧縮し、チューブ10を介してノズル3及び気体袋4に圧縮空気を送るように構成されている。圧縮ポンプ2は、モータによってスクリュー、ピストン等を駆動させて気体を圧縮する公知のポンプである。圧縮ポンプ2のモータは、回転数が可変である。
【0025】
チューブ10は、気体の供給路を構成し、圧縮ポンプ2、ノズル3、気体袋4、及び切替機構5を互いに連結している。チューブ10は、可撓性を有する。チューブ10は、シートクッション101、シートバック102及びヘッドレスト103の内部に配置されている。チューブ10は、分岐によって複数の機器へ気体を供給する。
【0026】
<ノズル>
ノズル3は、乗物用シート100の内部から乗物用シート100の着席領域に向けて、圧縮ポンプ2から送られる気体を排出するように構成されている。
【0027】
具体的には、ノズル3は、乗物用シート100のヘッドレスト103の下部(つまり、シートバック102に近接する部位)に設けられている。ノズル3は、シート前方に気体を排出することで、乗物用シート100の着席者の首元への送風を行う。ノズル3は、1つの排出口のみを有してもよいし、複数の排出口を有してもよい。
【0028】
<気体袋>
気体袋4は、チューブ10を介して圧縮ポンプ2から送られる気体の供給によって膨張することで乗物用シート100の一部を変動させるように構成されている。
【0029】
具体的には、気体袋4は、クッションマッサージ部41とバックマッサージ部42とを有する。クッションマッサージ部41及びバックマッサージ部42は、それぞれ、空気の供給及び排出によって膨張及び収縮を繰り返すことで着席者のマッサージを行うブラダである。
【0030】
クッションマッサージ部41は、乗物用シート100のクッションフレーム104とシートクッション101との間に配置され、着席者の臀部等をマッサージする。バックマッサージ部42は、乗物用シート100のバックフレーム105とシートバック102との間に配置され、着席者の背部等をマッサージする。
【0031】
<切替機構>
切替機構5は、圧縮ポンプ2から供給される気体の供給先を切り替えるように構成されている。切替機構5は、サポート106に保持されている。
【0032】
具体的には、切替機構5は、チューブ10が連結された複数の電磁バルブを有する。切替機構5は、複数の電磁バルブの開閉によって、ノズル3、気体袋4、及びその他の気体を利用する機器への気体の供給を切り替える。送風装置1は、ノズル3及び気体袋4の一方のみに気体を供給することも、ノズル3及び気体袋4の双方に同時に気体を供給することも可能である。
【0033】
<風量調整機構>
図2に示す風量調整機構6は、ノズル3から排出される気体の量を調整するように構成されている。風量調整機構6は、制御部8からの電気的な指令によって風量を調整してもよいし、物理的な力を利用して風量を調整してもよい。
【0034】
図3に示すように、風量調整機構6は、タンク61と、圧力調整部62とを有してもよい。タンク61は、チューブ10を介して圧縮ポンプ2から送られる気体を貯留するように構成されている。タンク61に貯留された気体は、膨張しながらノズル3へ向かって供給される。そのため、断熱膨張によって温度の低下した気体がノズル3から排出される。
【0035】
圧力調整部62は、チューブ10を介してタンク61からノズル3へ送られる気体の圧力を調整するように構成されている。具体的には、圧力調整部62は、複数のスイッチ62Aと、複数の圧力計62Bとを有する。複数のスイッチ62A及び複数の圧力計62Bは、気体の供給系統ごとに設けられている。
【0036】
スイッチ62Aは、供給系統のオンオフを切り替える。スイッチ62Aがオンになることで、この供給系統に接続された供給先(例えばノズル3)に気体が供給される。スイッチ62Aは、制御部8によってオンオフが切り替えられる。圧力計62Bは、気体の圧力を計測する。圧力計62Bが計測した圧力は、制御部8に送信される。
【0037】
風量調整機構6は、タンク61及び圧力調整部62と共に、又はこれらに替えて、図4Aに示す開口調整部63を有してもよい。開口調整部63は、ノズル3から排出される気体Gの圧力を受けて、ノズル3の排出口31に近づくことで排出口31の開口面積を減少させるように構成されている。
【0038】
具体的には、開口調整部63は、閉塞部63Aと、受圧部63Bと、付勢部63Cとを有する。閉塞部63Aは、ノズル3の内部に配置された円柱状の部材である。閉塞部63Aの外径は、排出口31の内径よりも小さい。
【0039】
受圧部63Bは、閉塞部63Aに固定され、気体Gの圧力を受ける板状の部位である。受圧部63Bの気体Gの流れ方向から視た面積(つまり受圧面積)は、閉塞部63Aの気体Gの流れ方向から視た面積よりも大きい。
【0040】
付勢部63Cは、閉塞部63Aを排出口31から離れる方向に付勢する弾性体(具体的にはバネ)である。図4Cに示すように、付勢部63Cは、気体Gの圧力を受けて閉塞部63A及び受圧部63Bが排出口31に向かって移動する際に伸張する。気体Gの圧力が小さくなるか又は無くなると、図4Aに示すように、付勢部63Cが収縮することで閉塞部63A及び受圧部63Bは排出口31から離れる。
【0041】
気体Gの圧力が小さい場合は、閉塞部63Aが排出口31から離れるため、図4Bのように排出口31の開口面積は最大となる。一方、気体Gの圧力が大きい場合は、閉塞部63Aの一部が排出口31内に進入するため、図4Dに示すように、排出口31の開口面積が小さくなる。なお、図4B及び図4Dは、排出口31を正面(つまり気体Gの排出方向と平行な方向)から視た図である。
【0042】
このように、開口調整部63は、ノズル3に供給される気体Gの圧力、流量、速度等に応じて、力学的に排出口31の開口面積を変化させる。排出口31の開口面積は、気体Gの圧力、流量、速度等が大きくなるほど小さくなる。
【0043】
風量調整機構6は、タンク61、圧力調整部62及び開口調整部63と共に、又はこれらに替えて、図5Aに示す排出口数調整部64を有してもよい。排出口数調整部64は、ノズル3から排出される気体の圧力を受けて、ノズル3において圧縮ポンプ2から送られる気体が排出される排出口の数を増加させるように構成されている。
【0044】
具体的には、排出口数調整部64は、栓64Aと、付勢部64Bとを有する。また、ノズル3には、2つの排出口(つまり第1排出口31A及び第2排出口31B)が設けられている。
【0045】
栓64Aは、第1排出口31A及び第2排出口31Bへ気体Gを供給する供給路10A内において移動可能に配置されている。第1排出口31Aは、第2排出口31Bよりも上流において供給路10Aに接続されている。付勢部64Bは、栓64Aを上流に向けて付勢する弾性体(具体的にはバネ)である。
【0046】
栓64Aは、供給路10Aを完全に閉塞させる形状を有する。図5Aに示すように、気体Gの圧力が小さいとき(つまり、圧力が付勢部64Bによる栓64Aへの付勢力よりも小さいとき)、栓64Aは、供給路10Aにおける第1排出口31Aへの分岐点と、第2排出口31Bへの分岐点との間に位置する。そのため、第2排出口31Bには気体Gは供給されず、第1排出口31Aのみに気体Gが供給される。
【0047】
図5Bに示すように、気体Gの圧力が大きいとき、栓64Aは、第2排出口31Bへの分岐点よりも下流に押し込まれる。そのため、第1排出口31Aと第2排出口31Bとの双方に気体Gが供給される。このとき、付勢部64Bは収縮する。
【0048】
図5Bの状態から、気体Gの圧力が小さくなるか又は無くなると、付勢部64Bが伸張することで栓64Aが上流に移動する。その結果、第2排出口31Bへの気体Gの供給が停止される。
【0049】
風量調整機構6は、タンク61、圧力調整部62、開口調整部63及び排出口数調整部64と共に、又はこれらに替えて、図6Aに示す蓋部65を有してもよい。蓋部65は、互いに開口面積の異なる第1貫通孔65A、第2貫通孔65B、第3貫通孔65C及び第4貫通孔65Dを有する。第1貫通孔65A、第2貫通孔65B、第3貫通孔65C及び第4貫通孔65Dは、この順に、開口面積が大きい。
【0050】
蓋部65は、複数の貫通孔65A-65Dのうち任意の貫通孔がノズル3の排出口31と重なるように変位可能である。具体的には、蓋部65は、貫通孔65A-65Dの軸方向(つまり排出口31からの気体の排出方向)と平行な回転軸Pを中心に回転可能である。蓋部65の貫通孔65A-65Dの周囲の部位は、排出口31と重なることで排出口31を塞ぐ。
【0051】
図6Aでは、第1貫通孔65Aが排出口31と重なっている。この状態から、反時計回りに蓋部65が回転することで、図6Bに示すように、第2貫通孔65Bが排出口31と重なる。
【0052】
第2貫通孔65Bが排出口31と重なっているときの蓋部65による排出口31の閉塞面積は、第1貫通孔65Aが排出口31と重なっているときの蓋部65による排出口31の閉塞面積よりも大きい。したがって、排出口31と重なる(つまり連通する)貫通孔が、第1貫通孔65Aから第2貫通孔65Bに切り替わることで、排出口31から排出される風量が低減される。
【0053】
このように蓋部65は、回転によって排出口31と重なる貫通孔を切り替えることで、ノズル3の風量を調整する。なお、蓋部65は、着席者の手動操作によって変位してもよいし、制御部8の指令を受けて運転するアクチュエータによって変位してもよい。また、蓋部65が有する貫通孔の数は4に限定されない。
【0054】
<液粒供給機構>
図7Aに示すように、液粒供給機構7は、ノズル3から排出される気体Gに霧状の液粒を供給するように構成されている。
【0055】
液粒供給機構7は、液体保持部71と、振動子72とを有する。液体保持部71は、内部に、例えば、水、アルマオイル等の液体Rを保持する容器である。液体保持部71が保持する水として、例えば、水素自動車における水素の化学変化時に発生する排水を利用することができる。
【0056】
振動子72は、超音波によって液体保持部71内の液体Rを微細化し、ノズル3又はチューブ10の内部に噴霧するように構成されている。また、振動子72は、間欠的に運転するように構成されている。これにより、液粒供給機構7は液粒を気体Gに断続的に供給する。
【0057】
図7Bに示すように、液粒供給機構7は、ノズル3の外側において、気体Gに液粒を供給してもよい。この場合、液粒供給機構7は、ノズル3の排出口31の近傍に液体Rを噴霧する。
【0058】
また、液粒供給機構7は、振動子72に代えて、スロートによってノズル3又はチューブ10の内部に液体Rを滴下してもよい。滴下された液体Rは、気体Gの圧力によって液粒化する。また、この場合、滴下間隔の調整によって気体Gに液粒を断続的に供給することができる。
【0059】
<制御部>
図2に示す制御部8は、圧縮ポンプ2、切替機構5、風量調整機構6及び液粒供給機構7を制御する装置である。
【0060】
制御部8は、例えば、プロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、入出力部とを備えるコンピュータにより構成される。制御部8は、乗物用シート100に内蔵されてもよいし、乗物に搭載されるエレクトロニックコントロールユニット(ECU)に組み込まれてもよい。
【0061】
制御部8は、圧縮ポンプ2に対し、駆動及び停止の制御に加えて、圧縮ポンプ2のモータ回転数の調整によるノズル3の風量調整を行ってもよい。さらに、制御部8は、切替機構5に対し、ノズル3及び気体袋4への気体供給の切り替え制御に加えて、切替機構5の電磁バルブの開閉によるノズル3の風量調整を行ってもよい。
【0062】
また、制御部8は、風量調整機構6に対して、圧力調整部62及び蓋部65それぞれの制御を行ってもよい。さらに、制御部8は、液粒供給機構7の駆動(つまり液粒の供給)及び停止の制御を行ってもよい。
【0063】
<入力部>
入力部9は、乗物又は乗物用シート100に取り付けられた物理的又は電子的なスイッチ、レバー等で構成される。
【0064】
入力部9に入力された操作は、制御部8に伝達される。着席者は、入力部9に対する操作によって、ノズル3における送風のオンオフ、風量、及び液粒供給の有無、並びに気体袋4によるマッサージのオンオフを選択する。また、着席者は、マッサージの対象部位、強度、時間等を入力部9によって選択することができる。
【0065】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)圧縮ポンプ2によって圧縮された気体が供給されるため、送風時の騒音が低減される。また、送風装置1の省スペース化が図れると共に、吸気口、排気口及び気体の供給路を柔軟に配置できる。その結果、乗物用シート100における送風装置1の配置の制約が低減される。
【0066】
(1b)ノズル3がヘッドレスト103に配置されることで、ヘッドレスト103を大型化することなく、着席者の耳元における騒音の発生を抑制しながら着席者の首元を冷却することができる。
【0067】
(1c)1つの送風装置1によって、ノズル3からの送風と気体袋4によるマッサージとを行うことができる。そのため、乗物用シート100の内部構造の複雑化を抑制しつつ、乗物用シート100の付加価値を高めることができる。
【0068】
(1d)風量調整機構6を備えることによって、着席者に快適な風量で送風を行うことができる。
【0069】
(1e)タンク61及び圧力調整部62によって、圧縮ポンプ2を小型化できる。また、タンク61からの排出時に気体が断熱膨張するため、ノズル3から排出される気体の温度を下げることができる。
【0070】
(1f)開口調整部63によって、送風開始時のノズル3における風速を小さくしつつ、徐々に風速を高めることができる。
(1g)排出口数調整部64によって、風圧の大きさに応じてノズル3における風量を増加させることができる。
【0071】
(1h)蓋部65によって、比較的簡潔な構成で、ノズル3における風量を調整することができる。
(1i)液粒供給機構7を備えることによって、送風による冷却効果を液粒によって高めることができる。
【0072】
(1j)液粒供給機構7が液粒を断続的に供給することで、着席者の液粒に対する馴化を抑制できる。その結果、着席者が体感する冷却効果を高めることができる。
(1k)スペースの制約が比較的大きい乗物用シート100に対し、配置の制約を低減しつつ送風機能を付与することができる。
【0073】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0074】
(2a)上記実施形態の送風装置において、乗物用シートの着席領域に気体を排出するノズルは、必ずしもヘッドレストに配置されなくてもよい。ノズルは、シートクッション又はシートバックに配置されてもよい。
【0075】
(2b)上記実施形態の送風装置は、必ずしも気体袋を備えなくてもよい。つまり、圧縮ポンプは、ノズルのみに空気を供給してもよい。
(2c)上記実施形態の送風装置において、液粒供給機構は、必ずしも液粒を断続的に供給しなくてもよい。
【0076】
(2d)上記実施形態の乗物用シートは、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用することができる。また、上記実施形態の送風装置は、乗物以外の施設(例えば、映画館、劇場など)に設置されるシートに用いることもできる。
【0077】
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0078】
1…送風装置、2…圧縮ポンプ、3…ノズル、4…気体袋、5…切替機構、
6…風量調整機構、7…液粒供給機構、8…制御部、9…入力部、10…チューブ、
10A…供給路、31,31A,31B…排出口、41…クッションマッサージ部、
42…バックマッサージ部、61…タンク、62…圧力調整部、62A…スイッチ、
62B…圧力計、63…開口調整部、63A…閉塞部、63B…受圧部、
63C…付勢部、64…排出口数調整部、64A…栓、64B…付勢部、
65…蓋部、65A-65D…貫通孔、71…液体保持部、72…振動子、
100…乗物用シート、101…シートクッション、102…シートバック、
103…ヘッドレスト、104…クッションフレーム、105…バックフレーム、
106…サポート。
図1
図2
図3
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図5
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図7