(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064191
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】洗掘防止工および洗掘防止工の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/52 20060101AFI20240507BHJP
E02B 3/06 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
E02D27/52 Z
E02B3/06 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172601
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】山本 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 栄治
(72)【発明者】
【氏名】荒川 研佑
【テーマコード(参考)】
2D046
2D118
【Fターム(参考)】
2D046DA61
2D046DA63
2D118AA05
2D118BA01
2D118BA14
2D118CA04
2D118GA51
(57)【要約】
【課題】施工が容易で、長期に亘って洗掘防止機能を維持できる洗掘防止工および洗掘防止工の施工方法を提供する。
【解決手段】水底の地盤2上に洗掘防止マット4を敷設した後、洗掘防止マット4の略中央にモノパイル3を打設する。そして、モノパイル3の外周に、砕石充填網体6が配置された受枠5を設置する。受枠5は、洗掘防止マット4とモノパイル3との隙間12に配置される。砕石充填網体6は、網体に充填材が充填されたものであり、受枠5の内部に配置されて受枠5によって保持される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底に設置された基礎の周囲に形成される洗掘防止工であって、
前記基礎の周囲の水底に配置される洗掘防止マットと、
前記洗掘防止マットと前記基礎との隙間に配置される受枠と、
前記受枠の内部に配置され、網体に充填材が充填された砕石充填網体と、
を具備し、
前記砕石充填網体が、前記受枠によって保持されることを特徴とする洗掘防止工。
【請求項2】
前記砕石充填網体を前記受枠の周囲から保持する位置保持部材が配置されることを特徴とする請求項1記載の洗掘防止工。
【請求項3】
前記位置保持部材は、前記受枠の外周部に配置された合成繊維補強シートであることを特徴とする請求項2記載の洗掘防止工。
【請求項4】
前記位置保持部材は、前記砕石充填網体を包み込むように配置される合成繊維補強シートであることを特徴とする請求項2記載の洗掘防止工。
【請求項5】
前記砕石充填網体は、複数のフィルターユニットからなり、
前記フィルターユニットは、袋状の前記網体に前記充填材が充填されて構成され、
前記受枠の内部に、隣り合う前記フィルターユニット同士が重なり合うように配置されることを特徴とする請求項1記載の洗掘防止工。
【請求項6】
前記受枠は、環状に一体で構成されることを特徴とする請求項1記載の洗掘防止工。
【請求項7】
請求項1記載の洗掘防止工の施工方法であって、
前記洗掘防止マットを敷設する工程と、
前記洗掘防止マットの略中央に前記基礎を打設する工程と、
前記基礎の外周に、前記砕石充填網体が配置された前記受枠を設置する工程と、
を具備することを特徴とする洗掘防止工の施工方法。
【請求項8】
請求項5記載の洗掘防止工の施工方法であって、
前記洗掘防止マットを敷設する工程と、
前記洗掘防止マットの略中央に前記基礎を打設する工程と、
前記基礎の外周に、前記受枠を設置する工程と、
前記受枠の内部に、複数の前記フィルターユニットを配置する工程と、
を具備することを特徴とする洗掘防止工の施工方法。
【請求項9】
環状の前記受枠は、前記基礎が挿入される孔を有し、
前記孔の下部には、下方に行くにつれて拡径するテーパ部が設けられ、
前記基礎の上方から、前記受枠の前記孔に前記基礎を挿入する際に、前記テーパ部がガイドとして機能することを特徴とする請求項7又は請求項8記載の洗掘防止工の施工方法。
【請求項10】
環状の前記受枠は、前記基礎が挿入される孔を有し、
前記基礎の上方から、前記受枠の前記孔に前記基礎を挿入する際に、前記基礎の上方に、上方に行くにつれて縮径されるテーパ部材を設置して、前記テーパ部材をガイドとして機能させることを特徴とする請求項7又は請求項8記載の洗掘防止工の施工方法。
【請求項11】
前記受枠は、少なくとも1か所が周方向に開口し、開口部を周方向に閉じることで環状に形成することが可能であり、
前記受枠を前記基礎の外周から前記基礎に巻き付けるようにして前記受枠を設置することを特徴とする請求項7又は請求項8記載の洗掘防止工の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗掘防止工および洗掘防止工の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洋上風力発電施設の基礎の周辺において水の流れによる水底地盤の洗掘を防止するために、様々な洗掘防止工法が提案されている。その一つに、合成繊維の袋体に砕石類を詰めた袋型根固め材と呼ばれるものを基礎の周辺に隙間なく多数配置する工法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多数の袋型根固め材を基礎の周辺に配置する工法では、施工に手間がかかる。また、長期に亘る使用中に、水流によって一部の袋型根固め材が移動したり破損したりする可能性がある。
【0005】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、施工が容易で、長期に亘って洗掘防止機能を維持できる洗掘防止工および洗掘防止工の施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために第1の発明は、水底に設置された基礎の周囲に形成される洗掘防止工であって、前記基礎の周囲の水底に配置される洗掘防止マットと、前記洗掘防止マットと前記基礎との隙間に配置される受枠と、前記受枠の内部に配置され、網体に充填材が充填された砕石充填網体と、を具備し、前記砕石充填網体が、前記受枠によって保持されることを特徴とする洗掘防止工である。
【0007】
第1の発明では、基礎の周囲の水底に配置された洗掘防止マットと、洗掘防止マットと基礎との隙間に配置された受枠の内部に配置された砕石充填網体とによって、基礎の周囲の地盤を覆い、洗掘を防止することができる。また、受枠で砕石充填網体が保持されるので、水流による砕石充填網体の移動や破損が防止され、長期に亘って洗掘防止機能を維持できる。
【0008】
前記砕石充填網体を前記受枠の周囲から保持する位置保持部材が配置されてもよい。
これにより、受枠を補強できる。また受枠が破損した場合に受枠の機能を位置保持部材で代替できる。
【0009】
前記位置保持部材は、例えば前記受枠の外周部に配置された合成繊維補強シートである。前記位置保持部材は、前記砕石充填網体を包み込むように配置される合成繊維補強シートであってもよい。
合成繊維補強シートを用いることにより、位置保持部材の耐久性を高めることができる。
【0010】
前記砕石充填網体は、複数のフィルターユニットからなり、前記フィルターユニットは、袋状の前記網体に前記充填材が充填されて構成され、前記受枠の内部に、隣り合う前記フィルターユニット同士が重なり合うように配置されることが望ましい。
これにより、洗掘防止マットと基礎との隙間を砕石充填網体で確実に塞ぐことができる。
【0011】
前記受枠は、環状に一体で構成されることが望ましい。
これにより、水流による受枠の移動を抑制することができる。
【0012】
第2の発明は、請求項1記載の洗掘防止工の施工方法であって、前記洗掘防止マットを敷設する工程と、前記洗掘防止マットの略中央に前記基礎を打設する工程と、前記基礎の外周に、前記砕石充填網体が配置された前記受枠を設置する工程と、を具備することを特徴とする洗掘防止工の施工方法である。
【0013】
第2の発明では、洗掘防止マットを目印用のガイドとして基礎杭を打設することができ、砕石充填網体と受枠とを一括して、かつ打設した基礎杭をガイドに受枠を滑らせながら設置できるので、施工が容易である。
【0014】
第3の発明は、請求項5記載の洗掘防止工の施工方法であって、前記洗掘防止マットを敷設する工程と、前記洗掘防止マットの略中央に前記基礎を打設する工程と、前記基礎の外周に、前記受枠を設置する工程と、前記受枠の内部に、複数の前記フィルターユニットを配置する工程と、を具備することを特徴とする洗掘防止工の施工方法である。
【0015】
第3の発明では、洗掘防止マットをガイドとして基礎を打設することができるので、施工が容易である。また、受枠を設置した後に受枠の内部にフィルターユニットを配置するので、大規模な揚重装置が不要である。
【0016】
第2、第3の発明では、環状の前記受枠は、前記基礎が挿入される孔を有し、前記孔の下部には、下方に行くにつれて拡径するテーパ部が設けられ、前記基礎の上方から、前記受枠の前記孔に前記基礎を挿入する際に、前記テーパ部がガイドとして機能してもよい。また、環状の前記受枠は、前記基礎が挿入される孔を有し、前記基礎の上方から、前記受枠の前記孔に前記基礎を挿入する際に、前記基礎の上方に、上方に行くにつれて縮径されるテーパ部材を設置して、前記テーパ部材をガイドとして機能させてもよい。
これにより、基礎を受枠の孔に容易に挿入して受枠を設置できる。
【0017】
第2、第3の発明では、前記受枠は、少なくとも1か所が周方向に開口し、開口部を周方向に閉じることで環状に形成することが可能であり、前記受枠を前記基礎の外周から前記基礎に巻き付けるようにして前記受枠を設置してもよい。
これにより、基礎にトランジションピースを設置した後に大がかりな揚重設備が無くとも容易に受枠を設置することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、施工が容易で、長期に亘って洗掘防止機能を維持できる洗掘防止工および洗掘防止工の施工方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】(a)は
図1の矢印A-Aによる断面図、(b)は(a)の矢印B-Bによる断面図。
【
図3】(a)は受枠5の平面図で、左右で受枠底の補強材形状の異なる例を示している。(b)は(a)の矢印C-Cによる断面図、(c)は網体71の一部を省略したフィルターユニット7を示す図。
【
図4】(a)はモノパイル3を打設した状態を示す図、(b)は砕石充填網体6が配置された受枠5を設置している状態を示す図。
【
図6】受枠5aおよび合成繊維補強シート9を示す図。
【
図7】(a)は受枠5aを設置している状態を示す図、(b)フィルターユニット7を設置用治具8aに取り付けた状態を示す図、(c)はフィルターユニット7を設置している状態を示す図。
【
図9】受枠5aおよび合成繊維補強シート9aを示す図。
【
図10】(a)は受枠5bを仮架台11に設置している状態を示す図、(b)は砕石充填網体6を設置した状態を示す図、(c)は受枠5bおよび砕石充填網体6を吊り下げた状態を示す図。
【
図12】(a)は受枠5bを設置している状態を示す図、(b)は(a)の矢印D-Dによる断面図。
【
図13】(a)は受枠5dを示す図、(b)は内部に砕石充填網体6が配置された受枠5dを示す図。
【
図14】(a)は受枠5eの鉛直方向の断面図、(b)(c)(d)は受枠5eの内部への砕石充填網体6aの配置方法を示す平面図。
【
図15】(a)はモノパイル3を打設した状態を示す図、(b)は砕石充填網体6aが配置された受枠5eを設置している状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
[第1の実施形態]
図1、
図2は本発明の第1の実施形態における洗掘防止工1を示す図、
図3は受枠5とフィルターユニット7を示す図である。
【0022】
図1、
図2に示すように、洗掘防止工1は、洗掘防止マット4、受枠5、砕石充填網体6等からなる。洗掘防止工1は、水底の地盤2に設置された基礎であるモノパイル3の周囲に形成される。
【0023】
洗掘防止マット4は、モノパイル3の周囲の地盤2上に配置される。洗掘防止マット4は、平面視で環状の不透水性のマットであり、略中央にモノパイル3を通すための孔を有し、孔をモノパイル3の外径よりも大きくすることで、モノパイル3の打設時の位置合わせを容易にする。洗掘防止マット4は、例えばアスファルトマットや、その他のシート状の部材である。
【0024】
受枠5は、洗掘防止マット4とモノパイル3との隙間12を覆うように配置される。受枠5は、
図1、
図3(a)、
図3(b)に示すように、環状に一体で構成される。受枠5は、外周枠51と内周枠52とを有し、外周枠51と内周枠52とが底部材55で連結される。
図1に示すように、外周枠51は必要に応じて鉛直方向の補強材53と斜め方向の補強材54で補強される。また、
図3(a)に示すように、底部材55は、例えば左右で受枠底の補強材形状の異なる例を示しているが、補強材55aや補強材55bのような水平方向の補強材で補強される。また、
図3(b)に示すように、受枠5はモノパイル3が挿入される孔56を有し、孔56の下部には爪部57が設けられる。爪部57の内周側は、下方に行くにつれて拡径するテーパ部であり、ガイドとしてモノパイル3上端からの受枠5の挿入を容易にする。
【0025】
受枠5は、例えば、L形鋼や角鋼などを溶接して組み立てられる。この場合、受枠5を構成する鋼材に、耐用年数に応じた腐食代としての鋼材厚さをもたせたり、塗装や重防食を行ったりすることが望ましい。
【0026】
砕石充填網体6は、
図2(a)に示すように、受枠5の内部に配置された複数のフィルターユニット7からなる。フィルターユニット7は、
図3(c)に示すように、袋状の網体71に充填材72が充填されて構成される。網体71は合成繊維製であり、充填材72は砕石類やコンクリートブロック等である。フィルターユニット7には、網体71内での充填材72の移動による網体71の摩耗を抑制するため、底部側の略中央に線材73が設けられて吊り下げられる。受枠5の内部には、周方向に所定の間隔で配置されたフィルターユニット7-1同士の間にフィルターユニット7-2が配置されることにより、隣り合うフィルターユニット7同士が重なり合うように配置される。砕石充填網体6(フィルターユニット7)は、受枠5により保持される。
【0027】
図4は、洗掘防止工1の施工方法を示す図である。
図1、
図2に示す洗掘防止工1を施工するには、まず、
図4(a)に示すように水底の地盤2上に洗掘防止マット4を敷設する。そして、洗掘防止マット4の略中央にモノパイル3を打設する。
【0028】
モノパイル3を打設したら、
図4(b)に示すように、モノパイル3の上方から、砕石充填網体6が配置された受枠5を設置用治具8で吊り下ろし、受枠5の爪部57の内周側のテーパ部をガイドとして機能させて、受枠5の孔56(
図3(b))にモノパイル3を挿入する。そして、モノパイル3と洗掘防止マット4との隙間12を塞ぐように砕石充填網体6が配置された受枠5を設置して、
図1、
図2に示す洗掘防止工1を完成する。
【0029】
第1の実施形態の洗掘防止工1によれば、モノパイル3の周囲の水底に配置された洗掘防止マット4と、洗掘防止マット4とモノパイル3との隙間12に配置された受枠5の内部に配置された砕石充填網体6とによって、モノパイル3の周囲の地盤2を覆い、洗掘を防止することができる。洗掘防止工1では、受枠5で砕石充填網体6が保持されるので、水流による砕石充填網体6の移動や破損が防止され、長期に亘って洗掘防止機能を維持できる。
【0030】
洗掘防止工1では、砕石充填網体6が受枠5の内部において重なり合うように配置された複数のフィルターユニット7からなることにより、洗掘防止マット4とモノパイル3との隙間12を砕石充填網体6で確実に塞ぐことができる。また、受枠5が環状に一体で構成されることにより、水流による受枠5の移動を抑制することができる。
【0031】
第1の実施形態では、水底に洗掘防止マット4を敷設した後、洗掘防止マット4をガイドとしてモノパイル3を打設することができる。また、砕石充填網体6と受枠5とを一括して設置することで、洗掘防止工1を容易に施工できるとともに、設置前にフィルターユニット7同士の重なり状況に問題が無いか予め確認できる。さらに、爪部57の内周側のテーパ部をガイドとして用いることで、モノパイル3を受枠5の孔56に容易に挿入できる。
【0032】
なお、洗掘防止マット4や受枠5の外周枠51の外形は、
図1から
図3に示すように円形状に限らず、多角形状でもよい。また、受枠5を構成する補強材は、洗掘防止工1の施工時や供用中に受枠5で砕石充填網体6の位置を保持できるように配置されればよい。受枠5の外周枠51は、フィルターユニット7を投入しやすいように漏斗状に斜めに開いていてもよい。
【0033】
以下、本発明の別の例について、第2から第5の実施形態として説明する。第2から第5の実施形態はそれまでに説明した実施形態と異なる点について説明し、同様の構成については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。また、各実施形態で説明する構成は必要に応じて組み合わせることができる。
【0034】
[第2の実施形態]
図5は本発明の第2の実施形態に係る洗掘防止工1aを示す図、
図6は受枠5aおよび合成繊維補強シート9を示す図である。
第2の実施形態は、洗掘防止工1aに合成繊維補強シート9が設けられる点と、受枠5aの沈設後に砕石充填網体6を配置する点で第1の実施形態と主に異なる。
【0035】
洗掘防止工1aでは、
図5、
図6に示すように、受枠5aの外周部に合成繊維補強シート9が配置される。なお、
図6では、受枠5aと合成繊維補強シート9との間に隙間を設けて図示しているが、実際には合成繊維補強シート9を受枠5aの外周部に密着させ、平面的に円または多角形として連結閉合していることが望ましい。
【0036】
合成繊維補強シート9は、砕石充填網体6を受枠5aの周囲から保持する位置保持部材であり、受枠5aに巻き付けるように配置される。合成繊維補強シート9は、例えばGFRP(ガラス繊維補強プラスチック)、CFRP(炭素繊維補強プラスチック)などの繊維と樹脂の合成樹脂製や高分子樹脂製のシートまたはネット状の補強材であり、受枠5aよりも水中での耐久性が高い。
【0037】
受枠5aは、第1の実施形態の受枠5と略同様の構成であるが、
図6に示すように内周枠52の代わりに内周枠52aを有する。内周枠52aは、下部に隅切り部57aが設けられる。隅切り部57aの内周側は、下方に行くにつれて孔56が拡径するテーパ部である。
【0038】
図7は、洗掘防止工1aの施工方法を示す図である。
図5に示す洗掘防止工1aを施工するには、まず、
図7(a)に示すように水底の地盤2上に洗掘防止マット4を敷設する。そして、洗掘防止マット4の略中央にモノパイル3を打設する。次に、外周部に合成繊維補強シート9が配置された受枠5aをモノパイル3の上方から吊り下ろし、受枠5aの隅切り部57aの内周側のテーパ部をガイドとして機能させて受枠5aの孔56(
図6)にモノパイル3を挿入し、モノパイル3の外周に受枠5aを設置する。また、上記の作業と並行して、
図7(b)に示すように船上等の作業デッキ10にて、設置用治具8aに複数のフィルターユニット7-1、7-2を取り付ける。
【0039】
受枠5aを沈設し、フィルターユニット7を設置用治具8aに取り付けたら、
図7(c)に示すように設置用治具8aを用いてフィルターユニット7-1とフィルターユニット7-2をモノパイル3の周囲に吊り下ろす。この際、フィルターユニット7-1とフィルターユニット7-2は吊り長さを変えて、平面視で互いに重なるように配置する。そして、
図5に示すように受枠5aの内部に複数のフィルターユニット7からなる砕石充填網体6を配置して、洗掘防止工1aを完成する。
【0040】
第2の実施形態の洗掘防止工1aにおいても、第1の実施形態の洗掘防止工1と同様の効果が得られる。また、洗掘防止工1aでは、受枠5aの外周部に合成繊維補強シート9を配置することにより、受枠5aを補強できる。また、受枠5aによって、砕石充填網体6の位置決めがなされ、確実に所定の位置に砕石充填網体6を設置することができる。また、仮に受枠5aが腐食した場合にも、受枠5aの代わりに合成繊維補強シート9で砕石充填網体6の位置を保持できるので、第1の実施形態よりもさらに長期に亘って洗掘防止機能を維持できる。
【0041】
第2の実施形態では、水底に洗掘防止マット4を敷設した後、洗掘防止マット4をガイドとしてモノパイル3を打設することができる。また、受枠5aを設置した後に受枠5aの内部にフィルターユニット7を配置するので、第1の実施形態の施工方法と比較して、揚重装置等の規模を縮小できる。さらに、隅切り部57aの内周側のテーパ部を目印用のガイドとして用いることで、モノパイル3を受枠5aの孔56に容易に挿入できる。
【0042】
なお、受枠5aの外周部に配置される位置保持部材は、合成繊維補強シート9に限らず、合成繊維補強ロープ等であってもよい。合成樹脂製で所定以上の幅を有するロープやスリングを用いた場合も、合成繊維補強シート9を用いた場合と同様の効果が得られる。また、受枠5aの外周部に配置した合成繊維補強シート9が下方に撓んでずり落ちるのを防ぐため、砕石充填網体6の上に掛け渡すように配置した合成繊維ロープで合成繊維補強シート9の上端同士を繋いでもよい。
【0043】
第2の実施形態において、受枠5aの外周枠51の外形を多角形状とすれば、合成繊維補強シート9等の位置保持部材がずり落ちにくい。
【0044】
第1の実施形態の洗掘防止工1では、受枠5の代わりに第2の実施形態で用いた受枠5aを用いてもよく、第2の実施形態の施工方法を適用してモノパイル3の外周に受枠を設置してから受枠内にフィルターユニット7を配置してもよい。また、第2の実施形態の洗掘防止工1aでは、受枠5aの代わりに第1の実施形態で用いた受枠5を用いてもよく、第1の実施形態の施工方法を適用してモノパイル3の外周に内部に砕石充填網体6を配置した受枠を設置してもよい。
【0045】
[第3の実施形態]
図8は本発明の第3の実施形態に係る洗掘防止工1bを示す図、
図9は受枠5aおよび合成繊維補強シート9aを示す図である。
第3の実施形態は、洗掘防止工1bに砕石充填網体6を包み込むような合成繊維補強シート9aが設けられる点で第2の実施形態と主に異なる。
【0046】
洗掘防止工1bでは、
図8に示すように、砕石充填網体6を包み込むように合成繊維補強シート9aが配置される。合成繊維補強シート9aは、砕石充填網体6を受枠5aの周囲から保持する位置保持部材であり、少なくとも受枠5aの外周面と上面を覆うように配置される。合成繊維補強シート9aは、例えばGFRP、CFRPなどの繊維と樹脂の合成樹脂製や高分子樹脂製のシートまたはネット状の補強材である。
【0047】
合成繊維補強シート9aは、例えば、
図9に示すように下方の端部92が受枠5aの底部材55に固定される。合成繊維補強シート9aは、上方の端部の複数の箇所に環状部93が間隔をおいて取り付けられ、1箇所に緩み止め金具94が設けられる。環状部93および緩み止め金具94には、締め上げロープ91が通される。
【0048】
図8に示す洗掘防止工1bを施工するには、第2の実施形態の洗掘防止工1aと同様に、まず、水底の地盤2上に洗掘防止マット4を敷設して、洗掘防止マット4の略中央にモノパイル3を打設する。モノパイル3を打設したら、合成繊維補強シート9aが取り付けられた受枠5aをモノパイル3の上方から吊り下ろし、モノパイル3の外周に設置する。その後、例えば
図7に示す設置用治具8aを用いて、受枠5aの内部に砕石充填網体6を設置する。
【0049】
受枠5a内に砕石充填網体6を設置したら、締め上げロープ91を緩み止め金具94の位置から上方に向けて巻き上げることにより、合成繊維補強シート9aの環状部93をモノパイル3の外周付近に寄せ集めて合成繊維補強シート9aで砕石充填網体6および受枠5aを包み込み、洗掘防止工1bを完成する。緩み止め金具94は、巻き上げ後の締め上げロープ91の緩みを防止する。
【0050】
第3の実施形態の洗掘防止工1bにおいても、第1の実施形態の洗掘防止工1と同様の効果が得られる。また、洗掘防止工1bでは、受枠5aを包み込むように合成繊維補強シート9aを配置することにより、第2の実施形態の洗掘防止工1aと同様に受枠5aを補強できる。仮に受枠5aが腐食した場合にも、受枠5aの代わりに合成繊維補強シート9aで砕石充填網体6の位置を保持できるので、第1の実施形態よりもさらに長期に亘って洗掘防止機能を維持できる。
【0051】
なお、第3の実施形態では外周枠51と内周枠52aを有する受枠5aを用いたが、受枠の構成はこれに限らない。また、施工方法は第2の実施形態の方法に限らず、第1の実施形態と同様に、内部に砕石充填網体を配置した受枠を水底に設置してもよい。
【0052】
図10は、受枠5bを用いた例を示す図である。受枠5bは、受枠5aと同様の底部材55および内周枠52aを有するが、外周枠51が設けられない。受枠5bを用いる場合は第1の実施形態と同様の方法で施工することが望ましく、水底に洗掘防止マット4を敷設してモノパイル3を打設する工程と並行して、
図10(a)に示すように作業デッキ10に設置した仮架台11上に合成繊維補強シート9aを取り付けた受枠5bを配置する。仮架台11は、環状に位置決めが可能な部材であって、内外周部にテーパ状の立ち上がり部を有する。次に、
図10(b)に示すように受枠5bの内部に砕石充填網体6を配置し、
図10(c)に示すように合成繊維補強シート9aで砕石充填網体6および受枠5bを包み込んで図示しない設置用治具で吊り下げる。そして、合成繊維補強シート9aで包み込まれた砕石充填網体6および受枠5bを、洗掘防止マット4の略中央に打設したモノパイル3の外周に設置する。
【0053】
なお、
図10に示す例では、受枠5bの外側に合成繊維補強シート9aを取り付けたが、受枠5bの内側にも合成繊維補強シート9aを配置して両者を一体化してもよい。
【0054】
[第4の実施形態]
図11は本発明の第4の実施形態に係る受枠5cを示す図、
図12は受枠5cを用いた洗掘防止工の施工方法を示す図である。
第4の実施形態は、1ヶ所が周方向に開口した受枠5cを用いる点で第1の実施形態と主に異なる。
【0055】
図11に示すように、受枠5cは、複数の分割受枠60をヒンジ部59で繋いだものであり、1か所が周方向に開口している。分割受枠60は、外周枠51cと内周枠52cとを有し、外周枠51cと内周枠52cとが側部枠58および図示しない底部材で連結される。ヒンジ部59は、隣り合う分割受枠60の外周枠51cの端部付近同士を繋ぎ、隣り合う分割受枠60の側部枠58同士の間には開口部61が形成される。受枠5cは、開口部61を周方向に閉じることで環状に形成することが可能である。受枠5cは、外周枠51cの外周部に合成繊維補強シート9bが取り付けられる。
【0056】
受枠5cを用いて洗掘防止工を施工するには、まず、
図12(a)に示すように水底の地盤2上に洗掘防止マット4を敷設する。そして、洗掘防止マット4の略中央にモノパイル3を打設する。
【0057】
モノパイル3を打設したら、図示しない補助フロートを用いてモノパイル3の外側の水面付近に受枠5cを配置し、補助フロートから巻き出したロープや補助船舶等を用いて、
図12(a)、
図12(b)に示すように受枠5cをモノパイル3の外側からモノパイル3に巻き付けるようにして環状に形成し、閉合する。砕石充填網体6はあらかじめ受枠5cの内部に配置しておくことが望ましい。受枠5cを閉合したら、補助フロートを取り外し、受枠5cをクレーンや補助フロートから巻き出したロープ等で水中に吊り降ろしてモノパイル3の外周の水底に設置する。
【0058】
第4の実施形態では、受枠5cをモノパイル3に巻き付けるようにして環状に形成するので、モノパイル3にトランジションピースを設置した後に受枠5cを設置することができる。
【0059】
なお、水面付近に受枠5cを配置してモノパイル3に巻き付ける工程は、洋上での補助船舶である曳舟やクレーン船によって実施してもよい。また、第4の実施形態の受枠は、開口部を閉じて環状に形成できればよく、必ずしも分割受枠同士をヒンジ部で繋ぐ必要はない。
【0060】
図13は、受枠5dを示す図である。
図13(a)に示すように、受枠5dは、2つの分割受枠60dからなるが、外周枠51d同士が繋がっていない。受枠5dは、分割受枠60d同士の間の2ヶ所の開口部61dにおいて周方向に開口しており、開口部61dを周方向に閉じることで環状に形成することが可能である。
【0061】
受枠5dを用いて洗掘防止工を施工するには、洗掘防止マットの敷設やモノパイルの打設と並行して、作業デッキ上で
図13(b)に示すように分割受枠60dの内部に砕石充填網体6を配置する。そして、砕石充填網体6が配置された複数の分割受枠60dを、順次モノパイル3の上方から吊り下ろして設置する。受枠5dは、水底において、モノパイル3の外側からモノパイル3に巻き付けるようにして環状に形成される。なお、砕石充填網体6が配置された複数の分割受枠60dは水底設置後に突出した凹凸かつテーパを有する嵌合構造等にて連結してもよい。これにより、より堅固な環状体が形成される。
【0062】
[第5の実施形態]
図14は本発明の第5の実施形態に係る受枠5eと砕石充填網体6aを示す図、
図15はガイドキャップ31を用いた洗掘防止工の施工方法を示す図である。
第5の実施形態は、洗掘防止工に砕石充填網体6aを用いる点、施工時にガイドキャップ31を用いる点で第1の実施形態と主に異なる。
【0063】
図14に示すように、受枠5eは、環状に一体に構成される。受枠5eは、外周枠51と内周枠52とを有し、外周枠51と内周枠52とが底部材55および上部材62で連結される。
【0064】
受枠5eを用いて洗掘防止工を施工するには、まず、
図15(a)に示すように水底の地盤2上に洗掘防止マット4を敷設する。そして、洗掘防止マット4の略中央にモノパイル3を打設する。モノパイル3の上には、ガイドキャップ31が設置される。ガイドキャップ31は、上方に行くにつれて外径が縮径されるテーパ部材である。
【0065】
また、洗掘防止マット4の敷設やモノパイル3の打設と並行して、作業デッキ上で受枠5eを配置する。受枠5eは上部材62の位置で複数の区画に区切られている。まず、
図14(b)に示すように受枠5eの区画に1つおきに網体63を配置する。網体63は、袋状ではなくてもよく、例えばシート状である。次に、網体63に充填材64を投入し、
図14(c)に示すように網体63を閉合して砕石充填網体6a-1とする。すなわち、受枠5eの内部に砕石充填網体6aを配置する。次に、受枠5eの残りの区画にも同様に網体63を配置して充填材64を投入し、
図14(d)に示すように網体63を閉合して砕石充填網体6a-2とする。砕石充填網体6aは、隙間なく配置された砕石充填網体6a-1と砕石充填網体6a-2からなる。
【0066】
次に、
図15(b)に示すように、砕石充填網体6aが配置された受枠5eを設置用治具8に吊下げてモノパイル3の上方から吊り下ろし、ガイドキャップ31の外周側のテーパ部をガイドとして機能させて、受枠5eの孔56(
図14(a))にモノパイル3を挿入する。そして、モノパイル3と洗掘防止マット4との隙間12に砕石充填網体6aが配置された受枠5eを設置して、洗掘防止工を完成する。
【0067】
第5の実施形態の洗掘防止工では、受枠5eに網体63を配置して充填材64を投入することにより、袋体に砕石等が充填されたフィルターユニットを用いずに砕石充填網体6aを製作できる。また、第5の実施形態の洗掘防止工の施工方法では、モノパイル3に設置したガイドキャップ31の外周側のテーパ部をガイドとして用いることで、モノパイル3を受枠5eの孔56に容易に挿入できる。
【0068】
ガイドキャップ31は、第1から第3の実施形態において用いてもよく、これにより受枠の下方のテーパ部(受枠5の内周枠52の下方の爪部57や、受枠5aの内周枠52aの下方の隅切り部57a)を省略することが可能となる。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0070】
例えば、上記の各実施形態では、洗掘防止マット4を敷設した後にモノパイル3を打設して洗掘防止工を施工したが、施工方法はこれに限らない。各実施形態の洗掘防止工を、水底の地盤2にモノパイル3等の基礎を設置した後、基礎の周囲の水底に洗掘防止マット4やフィルターユニット7を有する受枠5を敷設して施工してもよい。また、洗掘防止マット4の設置後に、内部に砕石充填網体6を配置した受枠5を設置し、モノパイル3を打設してもよい。第1から第3の実施形態の洗掘防止工をこの施工方法で施工する場合、受枠の内周枠の構造を堅固にし、且つ、受枠の内周枠の上方にモノパイル3の挿入ガイド用として上方に行くにつれて拡径するテーパを設けておくことが望ましい。
【0071】
本発明の洗掘防止工や洗掘防止工の施工方法は、トランジションピースと一体化されてテーパ部を有しないモノパイルにも適用できる。また、基礎はモノパイルに限らず、ジャケット構造の杭等でもよい。
【符号の説明】
【0072】
1、1a、1b………洗掘防止工
2………地盤
3………モノパイル
4………洗掘防止マット
5、5a、5b、5c、5d、5e………受枠
6、6a、6a-1、6a-2………砕石充填網体
7、7-1、7-2………フィルターユニット
8、8a………設置用治具
9、9a、9b………合成繊維補強シート
10………作業デッキ
11………仮架台
31………ガイドキャップ
51、51c、51d………外周枠
52、52a、52c………内周枠
53、54、55a、55b………補強材
55………底部材
56………孔
57………爪部
57a………隅切り部
58………側部枠
59………ヒンジ部
60、60d………分割型枠
61、61d………開口部
62………上部材
63、71………網体
64、72………充填材
73………線材
91………締め上げロープ
92………端部
93………環状部
94………緩み止め金具