(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064199
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】バット
(51)【国際特許分類】
A63B 59/58 20150101AFI20240507BHJP
A63B 102/18 20150101ALN20240507BHJP
【FI】
A63B59/58
A63B102:18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172613
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀雅
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 千紘
(72)【発明者】
【氏名】金澤 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】村上 謙二
(72)【発明者】
【氏名】吉塚 泰丈
(57)【要約】
【課題】打撃エネルギーがボールの変形エネルギーとして消費されることを抑制することが可能なバットを提供する。
【解決手段】軸方向の先端にヘッド部17が設けられた棒状の芯材3と、芯材3の径方向の外側に隙間27を持って配置された外管5と、外管5と芯材3との間に軸方向で部分的に配置され外管5を芯材3に対して変位可能に弾性支持する支持部材7と、支持部材7に対して芯材3の先端側に配置され外管5と芯材3との間を閉止する支持部材7よりも剛性が低いシール部材9とを備え、シール部材9及び外管5の先端部5aの内のヘッド部17に軸方向で最も近い部分とヘッド部17との間に軸方向でクリアランス29を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の芯材と、
前記芯材の径方向の外側に隙間を持って配置された外管と、
前記外管と前記芯材との間に軸方向で部分的に配置され前記外管を前記芯材に対して変位可能に弾性支持する支持部材とを備えた、
バット。
【請求項2】
請求項1のバットであって、
前記支持部材に対して前記芯材の先端側に配置され前記支持部材よりも剛性が低い前記外管と前記芯材との間のシール部材を備えた、
バット。
【請求項3】
請求項2のバットであって、
前記芯材は、軸方向の先端にヘッド部が設けられ、
前記シール部材及び前記外管の先端部の内の前記ヘッド部に軸方向で最も近い部分と前記ヘッド部との間に前記軸方向でクリアランスを有する、
バット。
【請求項4】
請求項2のバットであって、
前記シール部材は、前記支持部材に対して前記軸方向で間隔をもって配置された、
バット。
【請求項5】
請求項1のバットであって、
前記支持部材は、周回形状である、
バット。
【請求項6】
請求項1のバットであって、
前記支持部材は、周方向に連続するリング状である、
バット。
【請求項7】
請求項1のバットであって、
前記支持部材は、前記外管の軸方向の二カ所に設けられた第1支持部材と第2支持部材とを含む、
バット。
【請求項8】
請求項2~4の何れか一項のバットであって、
前記シール部材は、前記外管の前記先端部の内周に位置する、
バット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球やソフトボール等の球技用のバットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバットとしては、特許文献1及び2のように、バット本体の外側に第二の管を隙間を持って固定した金属製のバットがある。
【0003】
このバットは、ボールを打撃した際に、第二の管が内部側に撓んで打撃エネルギーがボールの変形エネルギーとして消費されることを抑制できるとされている。
【0004】
しかし、実際は、ボールの打撃時に第二の管が殆ど変形せず、打撃エネルギーのボールの変形エネルギーとしての消費を抑制することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-29620号公報
【特許文献2】特開2010-119462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、打撃エネルギーのボールの変形エネルギーとしての消費を抑制することができなかった点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、棒状の芯材と、前記芯材の径方向の外側に隙間を持って配置された外管と、前記外管と前記芯材との間に軸方向で部分的に配置され前記外管を前記芯材に対して変位可能に弾性支持する支持部材とを備えた、バットを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ボールの打撃時に支持部材の弾性によって外管が芯材に対して変位することで、バットによる打撃エネルギーがボールの変形エネルギーとして消費されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1に係るバットを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のバットを示す一部を省略した縦断面図である。
【
図3】
図3(A)は、
図2のIIIA-IIIA線に係る横断面図、
図3(B)は、
図2のIIIB-IIIB線に係る横断面図である。
【
図4】
図4は、ボールの打撃時におけるバットを示す一部を省略した縦断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例2に係るバットを示す一部を省略した縦断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施例3に係るバットを示す一部を省略した縦断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施例4に係るバットを示す一部を省略した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
打撃エネルギーがボールの変形エネルギーとして消費されることを抑制するという目的を、芯材の径方向外側に隙間を持って外管を変位可能に支持することにより実現した。
【0011】
図のように、本発明の球技用のバット1は、芯材3と、外管5と、支持部材7とを備える。
【0012】
芯材3は、棒状である。外管5は、芯材3の径方向の外側に隙間27を持って配置されている。支持部材7は、外管5と芯材3との間に軸方向で部分的に配置され、外管5を芯材3に対して変位可能に弾性支持する。
【0013】
バット1は、支持部材7に対して芯材3の先端側に配置され、支持部材7よりも剛性が低い外管5と芯材3との間のシール部材9を備えてもよい。
【0014】
かかるバット1は、芯3材の軸方向の先端にヘッド部17が設けられ、シール部材9及び外管5の先端部5aの内のヘッド部17に軸方向で最も近い部分とヘッド部17との間に軸方向でクリアランス29を有してもよい。
【0015】
別の実施形態として、シール部材9を備えなくてもよい。この場合、ヘッド部17を外管5に一体に設け、或いは芯材3のヘッド部17と外管5との間を弾性体35によって結合してもよい。
【0016】
支持部材7は、芯材3と外管5との間において、軸方向で部分的に配置されていればよく、任意の形状、数、位置とすることが可能である。
【0017】
一実施形態として、支持部材7は、シール部材9に対して軸方向で間隔をもって配置されてもよい。
【0018】
また、一実施形態として、支持部材7は、周回形状、特にリング状としてもよい。
【0019】
また、一実施形態として、支持部材7は、外管5の軸方向の二カ所に設けられた第1支持部材31と第2支持部材33とを含む構成としてもよい。
【0020】
シール部材9は、芯材3と外管5との間を閉止するものであれば、任意の形状、位置とすることが可能である。
【0021】
一実施形態として、シール部材9は、外管5の先端部5aの内周に位置してもよい。
【実施例0022】
[バットの構造]
図1は、本発明の実施例1に係るバットを示す斜視図である。
図2は、
図1のバットを示す一部を省略した縦断面図である。
図3(A)は、
図2のIIIA-IIIA線に係る横断面図、
図3(B)は、
図2のIIIB-IIIB線に係る横断面図である。
【0023】
本実施例のバット1は、野球やソフトボール等の球技に用いられるものであり、芯材3と、外管5と、支持部材7と、シール部材9とを備える。
【0024】
本実施例の芯材3は、中空の棒状に形成されている。ただし、芯材3は、棒状であれば、中実でもよい。芯材3の材質は、繊維強化プラスチック(FRP)、本実施例において炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が用いられるが、他のFRP等の樹脂、金属或いは木等を用いてもよい。
【0025】
この芯材3は、軸方向の基端側から先端側にかけて、グリップ部領域11、遷移部13、打球部領域15、及びヘッド部17を備えている。なお、軸方向は、バット1の軸心に沿った方向である。以下において、周方向は、バット1の外周に沿った方向、径方向は、バットの外径に沿った方向をいう。
【0026】
グリップ部領域11、遷移部13、及び打球部領域15を含めた芯材3は、全体として横断面形状が円環状(円形)で肉厚が一定に構成されている。
【0027】
グリップ部領域11は、基端側から先端側へ向けて横断面形状が一定に遷移し、グリップテープ19が巻かれて打者が把持するグリップ21を構成する。グリップ部領域11の基端には、径方向に張り出したグリップエンド23が一体に設けられている。
【0028】
グリップ部領域11の先端には、遷移部13を介して打球部領域15が一体に設けられている。遷移部13は、基端側から先端側へ横断面形状が漸次大きくなり、打球部領域15に至る。
【0029】
打球部領域15は、グリップ部領域11よりも大きい外径を有し、基端側から先端側へ向けて横断面形状が一定に遷移する。この打球部領域15は、後述する外管5と共に打球部25を構成する。打球部25は、バット1のボールBの打撃をするための部分である。打球部領域15の先端には、ヘッド部17が取り付けられている。
【0030】
ヘッド部17は、本実施例において、板状、例えば円板状のキャップとして構成され、打球部領域15に結合されている。このヘッド部17は、打球部領域15に対して径方向に膨出し、打球部25の外径である外管5の外径とほぼ一致している。ただし、ヘッド部17の外径は、打球部25の外径よりも大きく又は小さくしてもよい。ヘッド部17の材質は、打球部領域15と同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
なお、芯材3の形状は、一例であり、バット1に要求される特性に応じて適宜変更することが可能である。例えば、ヘッド部17は、打球部領域15に一体に設けられてもよい。また、芯材3は、グリップ部領域11、遷移部13、打球部領域15、及びヘッド部17の何れか一つ、或いは複数を別体の部材として構成し、それら別体の部材を相互に一体的に結合したものでもよい。
【0032】
また、芯材3の横断面形状は、円形ではなく、楕円等とすることも可能である。芯材3の肉厚は、周方向及び軸方向の一方又は双方において変動させてもよい。また、芯材3の横断面形状は、グリップ部領域11から打球部領域15に至るまで一定に遷移してもよい。グリップ部領域11と打球部領域15とを横断面において偏心させることも可能である。
【0033】
外管5は、芯材3の打球部領域15の径方向の外側に隙間27を介して配置された管状の部材である。すなわち、外管5は、横断面形状において、芯材3と同心上の円環状(円形)であり、芯材3の径方向で対応する部分の外径よりも大きい内径を有する。
【0034】
この外管5の横断面形状は、基端側から先端側へ一定の肉厚で漸次径方向に大きくなった後、ほぼ一定となって遷移する。この外管5の横断面形状がほぼ一定に遷移する部分に、打球部25の衝撃中心、いわゆるスイートスポットが位置する。
【0035】
なお、外管5の形状も、一例であり、バット1に要求される特性に応じて適宜変更することが可能である。例えば、外管5の横断面形状は、円形に限らず、楕円形状等とすることも可能であり、また基端側から先端側へ一定に遷移してもよい。
【0036】
外管5と芯材3との間の隙間27は、芯材3及び外管5の形状に応じた周回形状となっている。本実施例の隙間27は、軸方向において基端側から先端側へ漸次径方向に大きくなった後、ほぼ一定となって遷移する。周方向では、径方向の寸法が一定の筒状となっている。ただし、隙間27は、周方向で径方向の寸法が変動するものでもよい。例えば芯材3と外管5とが横断面において偏心した場合等がある。
【0037】
外管5の先端部5aは、軸方向においてヘッド部17にクリアランス29をもって対向している。外管5の基端部5bは、カラー30によって軸方向に支持されている。なお、外管5は、内径をヘッド部17の外径よりも大きくして、先端部5aがヘッド部17に対向しない構成であってもよい。
【0038】
クリアランス29は、ヘッド部17と外管5とが接触しない程度であればよく、例えば5mm等とすることが可能である。このクリアランス29は、軸方向の寸法が可能な限り小さい方が好ましい。ただし、クリアランス29は、ボールBの打撃時にボールBがヘッド部17と外管5との間に挟まらない程度であれば拡げることも可能である。
【0039】
外管5の材質は、芯材3と同様、CFRP等のFRPであるが、他のFRP等の樹脂、金属、或いは木等とすることも可能である。
【0040】
この外管5は、支持部材7によって芯材3に対して支持されて、クリアランス29及び隙間27が設定されている。
【0041】
支持部材7は、外管5と芯材3との間に軸方向で部分的に配置され、外管5を芯材3に対して変位可能に弾性支持する。外管5の変位は、隙間27の範囲で許容される。このため、隙間27は、空気で満たされた空間であるが、他のガス等で満たされてもよい。また、隙間27には、支持部材7よりも剛性が低い部材を充填してもよい。
【0042】
本実施例の支持部材7は、外管5の軸方向の二カ所に設けられた第1支持部材31と第2支持部材33とを含む。なお、支持部材7は、一つ又は三つ以上の複数備えてもよい。
【0043】
軸方向において、第1支持部材31は先端側に配置され、第2支持部材33は基端側に配置されている。本実施例では、第1支持部材31が、軸方向において打球部25のスイートスポット周辺に配置されている。第2支持部材33は、軸方向において外管5の基端部に配置されている。ただし、第1支持部材31及び第2支持部材33の軸方向の位置は、外管5を芯材3に対して隙間27を有して支持できる限り限定されるものではない。
【0044】
これら第1及び第2支持部材31及び33は、外管5及び芯材3の形状に応じた周回形状に形成されている。本実施例において、第1及び第2支持部材31及び33の周回形状は、周方向に連続したリング状である。ただし、第1及び第2支持部材31及び33は、周方向に断続的に設けた周回形状又は周方向で部分的に設けた非周回形状であってもよい。第1及び第2支持部材31及び33は、螺旋状等であってもよい。
【0045】
第1支持部材31は、内周及び外周が円形であり、内径及び外径が軸方向にわたって一定となっている。これにより、第1支持部材31は、内外径の差の1/2である径方向の寸法も軸方向にわたって一定となっている。第1支持部材31の軸方向の寸法は、第1支持部材31の径方向の寸法よりも大きい。
【0046】
第2支持部材33は、内径が軸方向にわたって一定であり、外径が基端側から先端側へ漸次大きくなる。第2支持部材33の軸方向の寸法は、第2支持部材33の径方向の寸法よりも小さい。この第2支持部材33の径方向の寸法は、第1支持部材31の径方向の寸法よりも大きい。なお、第2支持部材33の径方向の寸法は、本実施例において最も大きい部分でのものをいう。
【0047】
これら第1及び第2支持部材31及び33は、外周及び内周が外管5及び芯材3にそれぞれ接着されている。この接着により、第1及び第2支持部材31及び33は、外管5と芯材3との間を周方向で結合する。なお、結合方法は、接着に限られるものではない。
【0048】
これら第1及び第2支持部材31及び33は、それぞれ熱硬化性ないし熱可塑性である発泡ポリウレタンエラストマー、発泡ポリスチレンエラストマー、発泡オレフィンエラストマー、発泡シリコーンエラストマー等の粘弾性体で構成できる。
【0049】
なお、第1支持部材31及び第2支持部材33の材質、径方向の寸法、軸方向の寸法、軸方向の位置は、バット1に要求される特性等を考慮して適宜設定すればよい。
【0050】
シール部材9は、支持部材7の第1支持部材31に対して芯材3の先端側に配置され、外管5と芯材3との間を閉止するものである。ここでの閉止は、ゴミ等の異物の侵入が抑制できる程度に閉じることをいう。
【0051】
なお、シール部材9は、支持部材7が本実施例のように複数ある場合、最も先端側に位置する支持部材7(第1支持部材31)に対して更に先端側に配置される。シール部材9は、省略することも可能である。
【0052】
本実施例において、シール部材9は、第1支持部材31に対して軸方向の間隔を空けて配置されている。ただし、シール部材9は、第1支持部材31に軸方向の間隔を空けずに隣接して配置してもよい。
【0053】
シール部材9は、本実施例において外管5の先端部5aの内周に位置している。このシール部材9は、外管5の先端部5aに面一に配置されている。従って、シール部材9は、外管5の先端部5aと同様に、軸方向でクリアランス29をもってヘッド部17に対向する。ただし、シール部材9の軸方向の位置は、限定されるものではない。
【0054】
なお、クリアランス29は、シール部材9及び外管5の先端部5aの内のヘッド部17に軸方向で最も近い部分とヘッド部17との間に軸方向で設けられればよい。このため、シール部材9が外管5の先端部5aから先端側へ軸方向に突出するような場合は、シール部材9とヘッド部17との間にクリアランス29が設定される。
【0055】
また、クリアランス29は、省略することも可能である。この場合、外管5の変位を妨げない程度においてシール部材9及び外管5の先端部5aの内のヘッド部17に軸方向で最も近い部分とヘッド部17とが当接する。
【0056】
このシール部材9は、ウレタン、ゴム、シリコン等により形成され、周回形状である周方向に連続したリング状となっている。シール部材9は、軸方向において内径及び外径が一定であり、外周及び内周がそれぞれ外管5及び芯材3に接着されている。シール部材9軸方向の寸法は、支持部材7の第1支持部材31及び第2支持部材33よりも小さい。
【0057】
かかるシール部材9は、材質、軸方向及び径方向の寸法等により、支持部材7よりも剛性が低いものとなっている。これにより、シール部材9は、支持部材7の変形に影響しないようになっている。
【0058】
なお、シール部材9の材質や形状は、支持部材7よりも剛性が低くなるように適宜のものを設定すれば良い。
【0059】
[バットの作用効果]
図4は、ボールの打撃時におけるバットを示す一部を省略した縦断面図である。
【0060】
バット1によりボールBを打撃する際に、
図4のように、打球部25の外管5がボールBに径方向の一側で衝突する。このとき、ボールBにより打球部25の外管5が径方向の他側に押圧される。この押圧により、バット1の外管5を支持する支持部材7、特に第1支持部材31が径方向の一側で圧縮されると共に径方向の他側で伸長する。
【0061】
なお、第2支持部材33は、径方向の一側で圧縮されるが、径方向の寸法が小さく、圧縮量も小さい。このため、本実施例では、第1支持部材31について主として説明する。径方向の一側は、バット1の横断面における中心を通る対称軸を境とした径方向の一側をいい、径方向の他側は、対称軸を境とした径方向の一側に対する反対側をいう。
【0062】
上記第1支持部材31の圧縮により、径方向の一側で外管5が芯材3側に変位する。その後、ボールBは、径方向の一側において変位状態の外管5及び圧縮状態の支持部材7の第1支持部材29を介して芯材3で受けられて変形する。従って、本実施例のバット1は、打球部25に撓りのような作用をさせることができ、打撃時のボールBの変形を抑制することができる。
【0063】
このとき、外管5の先端部5a及びシール部材9とヘッド部17とがクリアランス29により接触しないため、外管5の変位及び支持部材7の変形を円滑に行わせることができる。従って、より確実に打撃時のボールBの変形が抑制される。
【0064】
クリアランス29は、ゴミ等の異物が侵入するおそれがあるが、異物は、外管5の先端部5aの内周に位置するシール部材9によって打球部25内への侵入が抑制される。また、クリアランス29内の異物は、クリアランス29が環状であることより、自然と落下して排出される。クリアランス29内に異物が保持されたとしても、打撃時や強制的な外管5の変位及びシール部材9の変形等を通じて排出することができる。
【0065】
また、支持部材7は、外管5の軸方向の二カ所に設けられた第1支持部材31と第2支持部材33とを含むため、外管5が安定して支持し、外管5の変位を安定して行うことができる。
【0066】
従って、本実施例のバット1は、打撃時のボールBの変形をより確実に抑制することができる。
【0067】
また、支持部材7は、シール部材9と別体に設けられているため、シール部材9と支持部材7とをそれぞれに適した材質を採用することができる。従って、本実施例では、支持部材7よりも剛性を低くし、シール部材9を支持部材7の剛性に寄与しない程まで剛性を更に低くできる。
【0068】
この結果、シール部材9によって支持部材7の変形が妨げられることがなく、外管5の変位を容易に行わせることができる。同時に、シール部材9による確実な閉止を行うこともできる。
【0069】
さらに、支持部材7に剛性の低い材料を使用するため、密度を低減して軽量化を図ることもできる。
【0070】
支持部材7とシール部材9とは、軸方向に間隔を空けて配置されているため、外管5の変位時の圧縮時の変形による相互干渉を抑制できる。従って、外管5の変位をより円滑に安定して行わせることができる。しかも、支持部材7とシール部材9の軸方向の間隔設定により、第1支持部材31をスイートスポット付近に配置でき、性能向上が図られる。
【0071】
このようにして、本実施例では、打撃時のボールBの変形を確実に抑制することができ、バット1による打撃エネルギーの一部が、ボールBの変形エネルギーとして消費されることが抑制される。代わりに、打撃エネルギーの一部は、支持部材7の変形エネルギーとして蓄積される。
【0072】
支持部材7に蓄積された変形エネルギーは、ボールBが跳ね返される際に、支持部材7の伸長により外管5を介してボールBの運動エネルギーに変換される。
【0073】
従って、本実施例のバット1は、打撃時のボールBの変形によるエネルギー損失を少なくすることができ、ボールBの飛距離を向上することができる。
【0074】
このような作用効果は、支持部材7が周回形状であるため、横断面における全方位において奏することができる。また、支持部材7の周回形状は、周方向に連続したリング状であるため、支持部材7を芯材3の基端側からスライドさせて容易に組付けることができる。
本実施例のバット1は、シール部材9を省略すると共に外管5の先端にヘッド部17を設け、ヘッド部15と外管5との間を閉じた構成となっている。なお、ヘッド部17は、外管5とは別体に設けられ、外管5に取り付けられている。ただし、ヘッド部17を外管5と一体に構成してもよい。
芯材3は、実施例1に対してヘッド部17を省略した形状を有し、先端部3aが筒状に構成されている。芯材3の先端部3aは、ヘッド部17を有する外管5に対して軸方向のクリアランス29及び径方向の隙間27を有して配置されている。その他は、実施例1と同一である。