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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064200
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】バット
(51)【国際特許分類】
   A63B 59/58 20150101AFI20240507BHJP
   A63B 102/18 20150101ALN20240507BHJP
【FI】
A63B59/58
A63B102:18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172614
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀雅
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 千紘
(72)【発明者】
【氏名】金澤 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】村上 謙二
(72)【発明者】
【氏名】吉塚 泰丈
(57)【要約】
【課題】打撃エネルギーがボールの変形エネルギーとして消費されることを抑制することが可能なバットを提供する。
【解決手段】棒状の芯材3と、芯材3の径方向の外側に隙間25を持って配置された外管5と、外管5と芯材3との間に軸方向で部分的に配置され、外管5を芯材3に対して変位可能に弾性支持する支持部材7と、を備え、支持部材7は、周方向で部分的に外管5と芯材3との間を結合する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の芯材と、
前記芯材の径方向の外側に隙間を持って配置された外管と、
前記外管と前記芯材との間に軸方向で部分的に配置され前記外管を前記芯材に対して変位可能に弾性支持する支持部材と、を備え、
前記支持部材は、周方向で部分的に前記外管と前記芯材との少なくとも一方に結合される、
バット。
【請求項2】
請求項1のバットであって、
前記支持部材は、前記周方向に連続するリング状であり、前記リング状の周方向の一部が前記外管と前記芯材と少なくとも一方に結合される、
バット。
【請求項3】
請求項1のバットであって、
前記支持部材は、前記周方向で部分的に設けられた弧状であり、前記弧状の周方向の一部又は全部が前記外管と前記芯材との少なくとも一方に結合される、
バット。
【請求項4】
請求項3のバットであって、
前記周方向で前記支持部材と異なる位相で前記外管と前記芯材との間に保持され前記支持部材よりも剛性が低い並設部材を備えた、
バット。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項のバットであって、
前記外管は、横断面における径方向の一側に打球面を有し、
前記支持部材は、前記横断面における前記径方向の一側で前記外管と前記芯材との少なくとも一方に結合された、
バット。
【請求項6】
請求項5のバットであって、
前記支持部材は、前記横断面における前記径方向の一側で前記外管と前記芯材との双方に結合された、
バット。
【請求項7】
請求項6のバットであって、
前記支持部材は、前記横断面における前記径方向の他側で前記芯材に結合された、
バット。
【請求項8】
請求項1~4の何れか一項のバットであって、
前記支持部材は、前記外管の軸方向の二カ所に設けられた第1支持部材と第2支持部材とを含む、
バット。
【請求項9】
棒状の芯材と、
前記芯材の径方向の外側に隙間を持って配置された外管と、
前記外管と前記芯材との間に軸方向で部分的に配置され前記外管を前記芯材に対して変位可能に弾性支持する支持部材と、を備え、
前記支持部材は、前記外管と前記芯材との間に非結合状態で介在する、
バット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球やソフトボール等の球技用のバットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバットとしては、特許文献1及び2のように、バット本体の外側に第二の管を隙間を持って固定した金属製のバットがある。
【0003】
このバットは、ボールを打撃した際に、第二の管が内部側に撓んで打撃エネルギーがボールの変形エネルギーとして消費されることを抑制できるとされている。
【0004】
しかし、実際は、ボールの打撃時に第二の管が殆ど変形せず、打撃エネルギーのボールの変形エネルギーとしての消費を抑制することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-29620号公報
【特許文献2】特開2010-119462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、打撃エネルギーのボールの変形エネルギーとしての消費を抑制することができなかった点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、棒状の芯材と、前記芯材の径方向の外側に隙間を持って配置された外管と、前記外管と前記芯材との間に軸方向で部分的に配置され前記外管を前記芯材に対して変位可能に弾性支持する支持部材と、を備え、前記支持部材は、周方向で部分的に前記外管と前記芯材との少なくとも一方に結合される、バットを提供する。
【0008】
また、本発明は、棒状の芯材と、前記芯材の径方向の外側に隙間を持って配置された外管と、前記外管と前記芯材との間に軸方向で部分的に配置され前記外管を前記芯材に対して変位可能に弾性支持する支持部材と、を備え、前記支持部材は、前記外管と前記芯材との間に非結合状態で介在する、バットを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ボールの打撃時に支持部材の弾性により外管が芯材に対して変位し、バットによる打撃エネルギーがボールの変形エネルギーとして消費されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施例1に係るバットを示す斜視図である。
図2図2は、図1のバットを示す一部を省略した縦断面図である。
図3図3(A)は、図2のIIIA-IIIA線に係る横断面図、図3(B)は、図2のIIIB-IIIB線に係る横断面図である。
図4図4(A)及び(B)は、ボールの打撃時におけるバットを示す横断面図であり、図4(A)は比較例であり、図4(B)は実施例1である。
図5図5(A)~(C)は、実施例1の変形例に係るバットを示す横断面図である。
図6図6は、本発明の実施例2に係るバットを示す横断面図である。
図7図7は、本発明の実施例3に係るバットを示す横断面図である。
図8図8は、本発明の実施例4に係るバットを示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
打撃エネルギーがボールの変形エネルギーとして消費されることを抑制するという目的を、芯材の径方向外側に隙間を持って外管を変位可能に支持することにより実現した。
【0012】
図のように、本発明の球技用のバット1は、芯材3と、外管5と、支持部材7とを備える。
【0013】
芯材3は、棒状である。外管5は、芯材3の径方向の外側に隙間25を持って配置されている。支持部材7は、外管5と芯材3との間に軸方向で部分的に配置され、外管5を芯材3に対して変位可能に弾性支持する。そして、支持部材7は、周方向で部分的に外管5と芯材3と少なくとも一方に結合される。
【0014】
支持部材7は、周方向で部分的に外管5と芯材3との間を結合する限り、形状は任意に設定可能である。
【0015】
一実施形態において、支持部材7は、周方向に連続するリング状であり、リング状の周方向の一部が外管5と芯材3と少なくとも一方に結合される。
【0016】
また、他の実施形態において、支持部材7は、周方向で部分的に設けられた弧状であり、弧状の周方向の一部又は全部が外管5と芯材3との少なくとも一方に結合される。
【0017】
この場合において、バット1は、周方向で支持部材7と異なる位相で外管5と芯材3との間に保持され、支持部材7よりも剛性が低い並設部材35を備えてもよい。
【0018】
支持部材7と外管5及び芯材3との結合箇所は適宜設定することが可能である。一実施形態として、外管5は、横断面における径方向の一側に打球面23aを有し、支持部材7は、横断面における径方向の一側で外管5と芯材3との少なくとも一方に結合されてもよい。
【0019】
この場合において、支持部材7は、横断面における径方向の一側で外管5と芯材3との双方に結合されてもよい。さらに、支持部材7は、横断面における径方向の他側で芯材3に結合されてもよい。
【0020】
支持部材7は、外管5の軸方向の二カ所に設けられた第1支持部材29と第2支持部材31とを含んでもよい。
【0021】
他の実施形態として、支持部材7は、外管5と芯材3との間に非結合状態で介在してもよい。
【実施例0022】
[バットの構造]
図1は、本発明の実施例1に係るバットを示す斜視図である。図2は、図1のバットを示す一部を省略した縦断面図である。図3(A)は、図2のIIIA-IIIA線に係る横断面図、図3(B)は、図2のIIIB-IIIB線に係る横断面図である。
【0023】
本実施例のバット1は、野球やソフトボール等の球技に用いられるものであり、芯材3と、外管5と、支持部材7とを備える。
【0024】
本実施例の芯材3は、中空の棒状に形成されている。ただし、芯材3は、棒状であれば、中実でもよい。芯材3の材質は、繊維強化プラスチック(FRP)、本実施例において炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が用いられるが、他のFRP等の樹脂、金属或いは木等を用いてもよい。
【0025】
この芯材3は、軸方向の基端側から先端側にかけて、グリップ部領域9、遷移部11、打球部領域13、及びヘッド部15を備えている。なお、軸方向は、バット1の軸心に沿った方向である。以下において、周方向は、バット1の外周に沿った方向、径方向は、バットの外径に沿った方向をいう。
【0026】
グリップ部領域9、遷移部11、及び打球部領域13を含めた芯材3は、全体として横断面形状が円環状(円形)で肉厚が一定に構成されている。
【0027】
グリップ部領域9は、基端側から先端側へ向けて横断面形状が一定に遷移し、グリップテープ17が巻かれて打者が把持するグリップ19を構成する。グリップ部領域9の基端には、径方向に張り出したグリップエンド21が一体に設けられている。
【0028】
グリップ部領域9の先端には、遷移部11を介して打球部領域13が一体に設けられている。遷移部11は、基端側から先端側へ横断面形状が漸次大きくなり、打球部領域13に至る。
【0029】
打球部領域13は、グリップ部領域9よりも大きい外径を有し、基端側から先端側へ向けて横断面形状が一定に遷移する。この打球部領域13は、後述する外管5と共に打球部23を構成する。打球部23は、バット1のボールBの打撃をするための部分である。打球部領域13の先端には、ヘッド部15が取り付けられている。
【0030】
ヘッド部15は、本実施例において、板状、例えば円板状のキャップとして構成され、打球部領域13に結合されている。このヘッド部15は、打球部領域13に対して径方向に膨出し、打球部23の外径である外管5の外径とほぼ一致している。
【0031】
ただし、ヘッド部15の外径は、打球部23の外径よりも大きく又は小さくしてもよい。ヘッド部15の材質は、打球部領域13と同一であっても異なっていてもよい。
【0032】
なお、芯材3の形状は、一例であり、バット1に要求される特性に応じて適宜変更することが可能である。例えば、ヘッド部15は、打球部領域13に一体に設けられてもよい。また、芯材3は、グリップ部領域9、遷移部11、打球部領域13、及びヘッド部15の何れか一つ、或いは複数を別体の部材として構成し、それら別体の部材を相互に一体的に結合したものでもよい。
【0033】
また、芯材3の横断面形状は、円形ではなく、楕円等とすることも可能である。また、芯材3の肉厚は、周方向及び軸方向の一方又は双方において変動させてもよい。さらに、芯材3は、グリップ部領域9から打球部領域13に至るまで横断面形状が一定に遷移してもよい。また、グリップ部領域9と打球部領域13とを横断面において偏心させることも可能である。
【0034】
外管5は、芯材3の打球部領域13の径方向の外側に隙間25を持って配置された管状の部材である。本実施例において、外管5は、横断面形状が芯材3と同心上の円環状(円形)であり、芯材3の径方向で対応する部分の外径よりも大きい内径を有する。
【0035】
この外管5の横断面形状は、基端側から先端側へ向けて一定の肉厚で漸次径方向に大きくなった後、ほぼ一定となって遷移する。この外管5の横断面形状がほぼ一定に遷移する部分に、打球部23の衝撃中心、いわゆるスイートスポットが位置する。
【0036】
なお、外管5の形状も、一例であり、バット1に要求される特性に応じて適宜変更することが可能である。例えば、外管5の横断面形状は、円形に限らず、楕円形状等とすることも可能であり、また基端側から先端側へ一定に遷移してもよい。
【0037】
外管5と芯材3との間の隙間25は、外管5及び芯材3の形状に応じた周回形状となっている。本実施例の隙間25は、外管5に応じて軸方向で基端側から先端側へ漸次径方向に大きくなった後、ほぼ一定となって遷移する。周方向では、径方向の寸法が一定の円筒状となっている。ただし、隙間25は、周方向で径方向の寸法が変動するものでもよい。例えば芯材3と外管5とが横断面において偏心した場合等がある。
【0038】
外管5の先端部5aは、軸方向においてヘッド部15に突き当てられている。ただし、先端部5aは、ヘッド部15に対して軸方向でクリアランスをもって対向してもよい。外管5の基端部5bは、カラー27によって軸方向に突き当てられている。
【0039】
外管5の材質は、芯材3と同様、CFRP等のFRPであるが、他のFRP等の樹脂、金属、或いは木等とすることも可能である。
【0040】
この外管5は、支持部材7によって芯材3に対して支持されている。
【0041】
支持部材7は、外管5と芯材3との間に軸方向で部分的に配置され、外管5を芯材3に対して変位可能に弾性支持する。外管5の変位は、隙間25の範囲で許容される。このため、隙間25は、空気で満たされた空間であるが、他のガス等で満たされてもよい。また、隙間25には、支持部材7よりも剛性が低い部材を充填してもよい。
【0042】
本実施例の支持部材7は、外管5の軸方向の二カ所に設けられた第1支持部材29と第2支持部材31とを含む。なお、支持部材7は、一つ又は三つ以上の複数備えてもよい。
【0043】
軸方向において、第1支持部材29は先端側に配置され、第2支持部材31は基端側に配置されている。本実施例では、第1支持部材29が、軸方向の外管5の先端部5aに配置され、先端部5aと径方向において面一に形成されている。第2支持部材31は、軸方向の外管5の基端部5bに配置され、基端部5bと径方向において面一に形成されている。ただし、第1支持部材29及び第2支持部材31の軸方向の位置は、外管5を芯材3に対して隙間25を有して支持できる限り限定されるものではない。
【0044】
これら第1及び第2支持部材29及び31は、外管5及び芯材3の形状に応じた周回形状に形成されている。本実施例において、第1及び第2支持部材29及び31の周回形状は、周方向に連続したリング状である。
【0045】
このため、支持部材7の第1及び第2支持部材29及び31を芯材3の基端側からスライドさせて容易に組付けることができる。ただし、第1及び第2支持部材29及び31は、周方向に断続的に設けた周回形状又は周方向で部分的に設けた非周回形状であってもよい。第1及び第2支持部材29及び31は、螺旋状等であってもよい。
【0046】
第1支持部材29は、内周及び外周が円形であり、内径及び外径が軸方向にわたって一定となっている。これにより、第1支持部材29は、内外径の差の1/2である径方向の寸法も軸方向にわたって一定となっている。第1支持部材29の軸方向の寸法は、本実施例において第1支持部材29の径方向の寸法よりも大きい。
【0047】
第2支持部材31は、内径が軸方向にわたって一定であり、外径が基端側から先端側へ漸次大きくなる。第2支持部材31の軸方向の寸法は、第2支持部材31の径方向の寸法よりも大きい。この第2支持部材31の径方向の寸法は、第1支持部材29の径方向の寸法よりも小さい。なお、第2支持部材31の径方向の寸法は、本実施例において最も大きい部分でのものをいう。
【0048】
これら第1及び第2支持部材29及び31は、外周及び内周が外管5及び芯材3にそれぞれ接着されている。この接着により、第1及び第2支持部材29及び31は、外管5と芯材3との少なくとも一方に周方向で部分的に結合される。本実施例では、第1及び第2支持部材29及び31は、外管5と芯材3との双方に対して周方向で部分的に結合される。なお、結合方法は、接着に限られるものではない。
【0049】
ここでの結合は、芯材3の変位時に外管5又は芯材3に対して第1及び第2支持部材29及び31が追従可能に繋がることをいう。基端側の第2支持部材31は、外管5と芯材3とに対して全周において結合してもよい。また、軸方向の結合は、第1及び第2支持部材29及び31の一部又は全部において行えばよい。
【0050】
本実施例では、横断面における径方向に一側に外管5が打球面23aを有し、この径方向一側で第1及び第2支持部材29及び31が外管5と芯材3とに結合されている。つまり、第1及び第2支持部材29及び31は、打球面23aに対する径方向の反対側で外観5及び芯材3に対して非結合となっている。本実施例の結合範囲は、横断面における径方向の一側全体、つまり周方向の中心角が180度の範囲で接着部33が形成されて、第1及び第2支持部材29及び31が外管5と芯材3とに対して結合されている。径方向一側とは、図3(A)のように、バット1の横断面における中心を通る対象軸に対する径方向の一側をいう。
【0051】
なお、接着部33は、第1及び第2支持部材29及び31の内周及び外周に形成される。第1及び第2支持部材29及び31の残りの範囲は、外管5と芯材3との間に非結合状態で介在している。本実施例において、非結合状態は、第1及び第2支持部材29及び31が外管5と芯材3とに対して結合されずに当接している状態をいう。ただし、非結合状態は、第1及び第2支持部材29及び31が、外管5と芯材3とに結合されていなければよいので、外管5と芯材3とに当接している必要はない。
【0052】
本実施例の第1及び第2支持部材29及び31による結合箇所(接着部33)は、周方向での範囲及び位相が一致しているのが好ましいが、周方向での範囲及び位相が異なっていてもよい。第1及び第2支持部材29及び31のそれぞれにおいては、内周と外周の接着部33の周方向での範囲及び位相が一致しているのが好ましいが、周方向での範囲及び位相が異なっていてもよい。
【0053】
これら第1及び第2支持部材29及び31は、それぞれ熱硬化性ないし熱可塑性である発泡ポリウレタンエラストマー、発泡ポリスチレンエラストマー、発泡オレフィンエラストマー、発泡シリコーンエラストマー等の粘弾性体で構成できる。
【0054】
なお、第1支持部材29及び第2支持部材31の材質、径方向の寸法、軸方向の寸法、軸方向の位置は、バット1に要求される特性等を考慮して適宜設定すればよい。
【0055】
[バットの作用効果]
図4(A)及び(B)は、ボールの打撃時におけるバットを示す横断面図であり、図4(A)は比較例であり、図4(B)は実施例1である。
【0056】
バット1によりボールBを打撃する際に、図4(A)及び(B)のように、打球部23の外管5がボールBに径方向の一側の打球面23aで衝突する。このとき、ボールBにより打球部23の外管5が径方向の他側に押圧される。この押圧により、バット1の外管5を支持する支持部材7、特に第1支持部材29が径方向の一側で圧縮される。
【0057】
なお、第2支持部材31は、径方向の一側で圧縮されるが、径方向の寸法が小さく、圧縮量も小さい。このため、本実施例では、第1支持部材29について主として説明する。本実施例では、支持部材7が芯材3と外管5を結合している範囲である。
【0058】
上記第1支持部材29の圧縮により、外管5は、径方向の一側で芯材3に近づくように変位し、径方向の他側で芯材3から離れるように変位する。
【0059】
このとき、比較例は、図4(A)のように、支持部材7の第1支持部材29が全周において芯材3と外管5とを結合しているため、第1支持部材29の径方向の他側が外管5と芯材3との間で第1支持部材29が径方向に引張られて伸びる。
【0060】
結果として、第1支持部材29は、径方向の一側及び他側の双方において、外管5の変位に対する抵抗が生じる。このため、比較例では、外管5の変位が妨げられ、ボールBの変形を抑制することに限界が生じていた。
【0061】
一方、本実施例では、第1支持部材29の径方向の一側が外管5と芯材3とを結合し、第1支持部材29の径方向の他側が外管5と芯材3とを結合していない。従って、第1支持部材29の径方向の他側は、外管5及び芯材3の双方に対して繋がっていない状態となっている。
【0062】
従って、第1支持部材29の径方向の他側では、図4(B)のように、外管5が変位する際に殆ど変形せずに外管5から離れるため、外管5の変位を妨げずに許容する。この結果、径方向の一側で外管5を芯材3側に確実に変位させることができる。
【0063】
その後、ボールBは、径方向の一側において、変位状態の外管5及び圧縮状態の支持部材7を介して芯材3で受けられて変形する。従って、本実施例のバット1は、打球部23に撓りのような作用をさせることができ、打撃時のボールBの変形を抑制することができる。
【0064】
支持部材7は、外管5の軸方向の二カ所に設けられた第1支持部材29と第2支持部材31とを含むため、外管5を安定して支持し、外管5の変位を安定して行うことができる。
【0065】
従って、本実施例のバット1は、打撃時のボールBの変形をより確実に抑制することができる。
【0066】
さらに、支持部材7に剛性の低い材料を使用するため、密度を低減して軽量化を図ることもできる。
【0067】
このようにして、本実施例では、打撃時のボールBの変形を確実に抑制することができ、バット1による打撃エネルギーの一部が、ボールBの変形エネルギーとして消費されることが抑制される。代わりに、打撃エネルギーの一部は、支持部材7の変形エネルギーとして蓄積される。
【0068】
支持部材7に蓄積された変形エネルギーは、ボールBが跳ね返される際に、支持部材7の径方向一側での伸長により外管5を介してボールBの運動エネルギーに変換される。
【0069】
従って、本実施例のバット1は、打撃時のボールBの変形によるエネルギー損失を少なくすることができ、ボールBの飛距離を向上することができる。
【0070】
[変形例]
図5(A)~(C)は、変形例に係るバットを示す横断面図である。
【0071】
図5(A)の変形例は、横断面における径方向の一側において、第1支持部材29が外管5にのみ結合されている。
【0072】
図5(B)の変形例は、横断面における径方向の一側において、第1支持部材29が芯材3にのみ結合されている。
【0073】
図5(C)の変形例は、実施例1に対して、さらに横断面における径方向の他側において、第1支持部材29が芯材3に結合されている。
【0074】
これら変形例でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。なお、何れの変形例においても、第2支持部材31は、実施例1と同一箇所又は図5(A)~(C)の変形例と同一箇所において結合が行われればよい。
【実施例0075】
図6は、本発明の実施例2に係るバットを示す横断面図である。なお、実施例2は、基本構成が実施例1と共通するため、対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。なお、図6の断面は、図3(A)に対応した第1支持部材29を通る断面である。第2支持部材31については、図6において括弧書きで符号のみ示す。
【0076】
本実施例のバット1は、支持部材7の第1支持部材29及び第2支持部材31を周方向で部分的に設けられた弧状としたものである。第1支持部材29及び第2支持部材31の周方向の範囲及び位相は、一致させるのが好ましいが、異なっていてもよい。
【0077】
これら第1支持部材29及び第2支持部材31は、弧状の周方向の一部又は全部が外管5と芯材3とに結合されている。本実施例では、弧状の周方向の全体が外管5と芯材3とに結合されている。
【0078】
本実施例において、第1支持部材29及び第2支持部材31は、周方向の中心角が180度の範囲で設けられており、径方向の一側に位置している。これより、第1支持部材29及び第2支持部材31に対する径方向の他側は、空間部25aとなっている。
【0079】
本実施例でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例0080】
図7は、本発明の実施例3に係るバットを示す横断面図である。なお、実施例3は、基本構成が実施例2と共通するため、対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。なお、図7の断面は、図3(A)に対応した第1支持部材29を通る断面である。第2支持部材31については、図7において括弧書きで符号のみ示す。
【0081】
本実施例のバット1は、実施例2に加え、周方向で支持部材7と異なる位相で外管5と芯材3との間に保持され、支持部材7よりも剛性が低い並設部材35を備えている。
【0082】
並設部材35は、周方向の範囲が支持部材7よりも狭い弧状であり、周方向で支持部材7に隣接して配置されている。これにより、並設部材35は、周方向の両端が支持部材7の第1支持部材29との間に空間部25aを区画している。なお、並設部材35は、軸方向で支持部材7に対してずれ、支持部材7に周方向で隣接しない構成であってもよい。
【0083】
並設部材35は、ウレタン、ゴム、シリコン等により形成されるが、並設部材35の材質は、支持部材7よりも剛性が低くなるように適宜のものを設定すれば良い。
【0084】
かかる実施例3では、実施例2と同様の作用効果を奏することができるのに加え、並設部材35によって重量バランスを取ることができる。
【0085】
なお、並設部材35と支持部材7との間に空間部25aを有するような場合は、並設部材35と支持部材7とを同材質とすることも可能である。この場合、並設部材35は、支持部材7の周方向の一部を構成することになる。
【0086】
このため、支持部材7及び並設部材35は、実施例1等と同様に、外管5と芯材3とに周方向で部分的に結合され、外管5を芯材3に対して変位可能に弾性支持するものとなる。
【実施例0087】
図8は、本発明の実施例4に係るバットを示す横断面図である。なお、実施例4は、基本構成が実施例1と共通するため、対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。なお、図8の断面は、図3(A)に対応した第1支持部材29を通る断面である。第2支持部材31については、図8において括弧書きで符号のみ示す。
【0088】
本実施例のバット1は、支持部材7が外管5と芯材3との間に非結合状態で介在するものである。その他は、実施例1と同一である。
【0089】
すなわち、支持部材7は、実施例1と同様に、外管5及び芯材3の形状に応じた周回形状としての連続したリング状の第1及び第2支持部材29及び31を含む。これら第1及び第2支持部材29及び31は、全周において外管5と芯材3とに接着されずに当接している。
【0090】
例えば、第1及び第2支持部材29及び31は、径方向の寸法が対応する外管5と芯材3の間の径方向の寸法よりも大きく形成され、外管5と芯材3の間に圧入されている。
【0091】
支持部材7の非結合状態は、第1及び第2支持部材29及び31が外管5と芯材3とに対して結合されずに当接している状態をいう。ただし、非結合状態は、第1及び第2支持部材29及び31が、外管5と芯材3とに結合されていなければよいので、外管5と芯材3とに当接している必要は無い。
【0092】
例えば、第1及び第2支持部材29及び31は、外管5と芯材3との間に周方向で部分的に配置され、或いは外管5と芯材3と隙間を持って対向された状態であってもよい。これらの場合、第1及び第2支持部材29及び31は、周方向の複数箇所で外管5と芯材3との間に当接しつつ介在する必要がある。なお、第2支持部材31は、周方向の一部又は全部で外管5と芯材3との間を結合してもよい。
【0093】
かかる実施例4においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。加えて、本実施例では、第1及び第2支持部材29及び31を外管5と芯材3に結合する必要がないので、製造を容易にすることができる。
【符号の説明】
【0094】
1 バット
3 芯材
5 外管
7 支持部材
25 隙間
29 第1支持部材
31 第2支持部材
35 並設部材
B ボール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8