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特開2024-64219非空気圧タイヤ及び非空気圧タイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064219
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】非空気圧タイヤ及び非空気圧タイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/00 20060101AFI20240507BHJP
   B29D 30/02 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B60C7/00 H
B29D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172644
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】田原 裕士
【テーマコード(参考)】
3D131
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
3D131AA30
3D131BB19
3D131BC31
3D131BC49
3D131CC03
3D131LA28
4F215AH20
4F215VA02
4F215VC08
4F215VL33
4F215VP39
4F501TA02
4F501TB07
4F501TE26
4F501TL38
4F501TV27
(57)【要約】
【課題】スポークの耐久性を向上させることができる非空気圧タイヤおよび非空気圧タイヤの製造方法を提供すること。
【解決手段】非空気圧タイヤ1は、内側環状部20と、内側環状部20の外周側に同軸に配置される外側環状部30と、内側環状部20と外側環状部30とを連結し、タイヤ周方向Cに沿って配列される複数のスポーク40と、を備える非空気圧タイヤ1であって、スポーク40には、非空気圧タイヤ1の成形時にタイヤ幅方向Yに分割される分割金型100によって形成されるパーティションライン80が配置され、パーティションライン80は、スポーク40の長さ方向L1,L2に延びる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側環状部と、
前記内側環状部の外周側に同軸に配置される外側環状部と、
前記内側環状部と前記外側環状部とを連結し、タイヤ周方向に沿って配列される複数のスポークと、を備える非空気圧タイヤであって、
前記スポークには、非空気圧タイヤの成形時にタイヤ幅方向に分割される分割金型によって形成されるパーティションラインが配置され、
前記パーティションラインは、前記スポークの長さ方向に延びる非空気圧タイヤ。
【請求項2】
前記パーティションラインは、前記スポークの板幅方向の略中央部に位置する請求項1に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項3】
前記スポークは、長尺板状であり、
前記パーティションラインは、前記スポークの板厚方向に相対する第1の表面及び第2の表面の少なくとも何れかの面に配置され、第1の表面及び第2の表面の板幅方向の両端の端縁と離間している請求項1に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項4】
前記内側環状部及び前記外側環状部は、補強層を有する請求項1に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項5】
前記スポークは、
タイヤ軸方向の一方側へ傾斜する第1のスポークと、
前記第1のスポークとは反対側に傾斜する第2のスポークと、を含み、
前記第1のスポークと前記第2のスポークとが、タイヤ周方向に交互に配置されている請求項1~4のいずれか1項に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項6】
請求項1に記載の非空気圧タイヤを製造する製造方法であって、
分割金型に樹脂を充填し、その後分割金型を除去することで前記パーティションラインが配置される前記スポークを成形する成形工程を含む非空気圧タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非空気圧タイヤ及び非空気圧タイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パンクの発生等の問題が起こらず、空気圧調整も不要な非空気圧タイヤが開発されている。一般に、非空気圧タイヤは、互いに同軸に配置される内周側環状部及び外周側環状部が、複数のスポークによって連結された構造を有する。複数のスポークはタイヤ周方向に間隔をおいて放射状に配列される。外側環状部の外周面には、路面と接地するトレッドが設けられる。非空気圧タイヤは、例えば特許文献1に記載されているように金型に樹脂材料を充填することで型成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-87573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、分割金型を用いて非空気圧タイヤを成形する場合、分割金型の上型と下型の合わせ目に沿う線状のパーティションラインがスポークに形成される。特許文献1に記載されているような非空気圧タイヤは、スポークにかかる荷重の割合が高く、タイヤ転動時に剪断応力が発生しやすいパーティションラインの影響によりスポークの耐久性が低下することが懸念される。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、スポークの耐久性を向上させることができる非空気圧タイヤおよび非空気圧タイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の非空気圧タイヤは、内側環状部と、前記内側環状部の外周側に同軸に配置される外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結し、タイヤ周方向に沿って配列される複数のスポークと、を備える非空気圧タイヤであって、前記スポークには、非空気圧タイヤの成形時にタイヤ幅方向に分割される分割金型によって形成されるパーティションラインが配置され、前記パーティションラインは、前記スポークの長さ方向に延びる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スポークの耐久性を向上させることができる非空気圧タイヤおよび非空気圧タイヤの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の非空気圧タイヤを示す側面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3図2に示す部分を斜めから見た非空気圧タイヤの一部斜視図である。
図4】実施形態に係る1つのスポークを示す側面図である。
図5】実施形態に係る非空気圧タイヤの製造に用いる分割金型を示す平面図である。
図6図5に示す分割金型を矢印VIの方向に沿って見たときの側面図である。
図7図5に示すにVII-VII断面図であり、分割金型の上型及び下型の一部を示す図である。
図8図7に示す分割金型が型開きされた状態を示す図である。
図9】縦荷重を受けたスポークにかかる剪断応力の解析モデルを示す図であって、本発明の実施例を示す図である。
図10】縦荷重を受けたスポークにかかる剪断応力の解析モデルを示す図であって、本発明外の比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の非空気圧タイヤ1をタイヤ回転軸(タイヤ子午線)と平行な方向、すなわち図1で紙面表裏方向に沿う方向から側面視した側面図である。図1に示す非空気圧タイヤ1は、無荷重状態である。図2は、図1のII-II断面図である。図3は、図2に示す部分を斜めから見た非空気圧タイヤ1の一部斜視図である。
【0010】
図1及び図3において、矢印Cはタイヤ周方向を示している。図1図3において、矢印Xはタイヤ径方向を示している。図2及び図3において、矢印Yはタイヤ幅方向を示している。図1においてのタイヤ幅方向Yは、紙面表裏方向である。図2の符号Eは、タイヤ赤道面である。図2においてのタイヤ周方向Cは、紙面表裏方向である。
【0011】
タイヤ周方向Cは、タイヤ回転軸周りの方向であって非空気圧タイヤ1が回転する方向と同一の方向である。タイヤ径方向Xは、タイヤ回転軸に垂直な方向である。タイヤ幅方向Yは、タイヤ回転軸と平行な方向である。図2及び図3においては、タイヤ幅方向Yの一方側をY1として示し、タイヤ幅方向Yの他方側をY2として示している。図2に示すタイヤ赤道面Eは、タイヤ回転軸に直交する面で、かつ、タイヤ幅方向Yの中心に位置する面である。
【0012】
本実施形態の非空気圧タイヤ1は、内側環状部20と、外側環状部30と、複数のスポーク40と、トレッド50と、を備える。
【0013】
なお、以下において、内側環状部20及び外側環状部30の厚みとは、タイヤ径方向Xに沿った方向の寸法である。内側環状部20及び外側環状部30の幅とは、図2に示すタイヤ幅方向Yに沿った方向の寸法である。
【0014】
内側環状部20は、非空気圧タイヤ1の内周部を構成するタイヤ周方向Cに沿った環状の部分である。内側環状部20の厚み及び幅は、ユニフォミティを向上させるために一定に設定される。内側環状部20の内周側の空間に、図示しないタイヤホイールが配置される。そのタイヤホイールのリムの外周部に、内側環状部20の内周部が嵌合して装着される。内側環状部20がリムに装着されて、非空気圧タイヤ1は当該タイヤホイールに装着される。内側環状部20の内周面には、当該リムとの嵌合のために、凸部や溝等で構成される嵌合部が設けられる場合がある。
【0015】
内側環状部20は、例えば、弾性を有する樹脂材料によって形成することができるが、材料は樹脂に限定されない。
【0016】
内側環状部20は、上記タイヤホイールの回転をスポーク40及び外側環状部30に伝達する。内側環状部20の厚みは、スポーク40に回転力を十分に伝達する機能を満たしつつ、軽量化及び耐久性も得られる観点から決定される。内側環状部20の厚みは特に限定されないが、例えば、図2に示すタイヤ断面高さHの2%以上7%以下であることが好ましく、3%以上6%以下であることがより好ましい。
【0017】
内側環状部20の内径は、非空気圧タイヤ1が装着されるタイヤホイールのリムの寸法や車両の用途等に応じて決定される。例えば、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、内側環状部20の内径は、例えば、250mm以上500mm以下といった寸法が挙げられるが、これに限定されない。
【0018】
内側環状部20の幅は、非空気圧タイヤ1が装着される車両の用途等に応じて適宜決定される。例えば、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、内側環状部20の幅は、100mm以上300mm以下といった寸法が挙げられるが、これに限定されない。
【0019】
内側環状部20の内部には、補強層としての内側補強層60が埋設されている。内側補強層60は、上述したタイヤホイールのリムに内側環状部20が高い弾性及び強度を持って嵌合することを可能とする機能を果たす。内側補強層60は、繊維強化プラスチックを含む。内側補強層60は、例えばGFRP等の繊維強化プラスチック製のコードをメッシュ状に配列したものなどが用いられるが、これに限定されない。内側補強層60は、例えば、内側環状部20の成形時に金型内に配置され、内側環状部20の樹脂材料を充填して成形することにより、内側環状部20に埋設することができる。なお、内側補強層60は繊維強化プラスチックを含む層に限定されず、例えば金属板であってもよい。
【0020】
外側環状部30は、非空気圧タイヤ1の外周部を構成するタイヤ周方向Cに沿った環状の部分である。外側環状部30は、内側環状部20の外周側に、内側環状部20と同軸に配置される。外側環状部30の厚み及び幅は、ユニフォミティを向上させるために一定に設定される。
【0021】
外側環状部30は、例えば、弾性を有する樹脂材料によって形成することができるが、材料は樹脂に限定されない。
【0022】
外側環状部30は、内側環状部20及びスポーク40の回転を、トレッド50を介して路面に伝達する。外側環状部30の厚みは、スポーク40から路面に回転力を十分に伝達する機能を満たしつつ、軽量化及び耐久性も得られる観点から決定される。外側環状部30の厚みは特に限定されないが、例えば、図2に示すタイヤ断面高さHの2%以上7%以下であることが好ましく、2%以上5%以下であることがより好ましい。
【0023】
外側環状部30の内径は、非空気圧タイヤ1が装着されるタイヤホイールのリムの寸法や車両の用途等に応じて適宜決定される。例えば、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、外側環状部30の内径は、420mm以上750mm以下といった寸法が挙げられるが、これに限定されない。
【0024】
外側環状部30の幅は、非空気圧タイヤ1が装着される車両の用途等に応じて適宜決定される。例えば、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、外側環状部30の幅は、100mm以上300mm以下といった寸法が挙げられるが、これに限定されない。
【0025】
外側環状部30の内部には、補強層としての円環状の外側補強層70が全周にわたって埋設されている。外側補強層70は、外側環状部30の内部に外側環状部30と同軸に埋設されている。外側補強層70は、外側環状部30に埋設される補強層の一例である。
【0026】
外側補強層70は、繊維強化プラスチックを含む。本実施形態の外側補強層70は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)を含んでいる。具体的には、外側補強層70は、メッシュ状に編み込まれた炭素繊維が樹脂中に埋め込まれ、可撓性を有する素材シートが積層されることにより、可撓性を有するシート状に構成されている。なお、外側補強層70を構成する樹脂は、後述するスポーク40を構成する樹脂とは異なる種類の樹脂が用いられることが好ましい。なお、外側補強層70は繊維強化プラスチックを含む層に限定されず、例えば金属板であってもよい。
【0027】
外側補強層70の幅、すなわちタイヤ幅方向Yの寸法は、例えば135mm程度が好ましい。外側環状部30のタイヤ幅方向Yは、後述するトレッド50のタイヤ幅方向Yに略等しい。外側環状部30の内部に埋設される外側補強層70の厚み、すなわちタイヤ径方向Xの寸法は、外側環状部30の厚みよりも当然小さく、その厚みは、例えば2.0mm程度が好ましい。外側補強層70は、外側環状部30のタイヤ径方向Xの中央、かつ、タイヤ幅方向Yの中央に配置されると好ましい。
【0028】
複数のスポーク40は、内側環状部20と外側環状部30とを連結する。複数のスポーク40で連結された内側環状部20と外側環状部30とは、互いに同軸に配置される。複数のスポーク40のそれぞれは、タイヤ周方向Cに沿って各々独立して配列される。図1に示すように、複数のスポーク40は、非空気圧タイヤ1が無荷重状態では、側面視した場合においてタイヤ径方向Xと略平行でラジアル方向に直線状に延びている。本実施形態の複数のスポーク40は、タイヤ周方向Cに等間隔に配列されているが、タイヤ周方向Cにバリアブルピッチで配置されていてもよい。
【0029】
図2及び図3に示すように、本実施形態の複数のスポーク40は、複数の第1のスポーク41と、複数の第2のスポーク42と、を含む。第1のスポーク41及び第2のスポーク42のいずれも、その延在方向は、タイヤ周方向Cに沿った方向で見た場合において、タイヤ径方向Xとは平行ではない。第1のスポーク41は、タイヤ軸方向すなわちタイヤ幅方向Yの一方側へ傾斜している。第2のスポーク42は、第1のスポーク41とは反対側へ傾斜している。第1のスポーク41と第2のスポーク42とは、タイヤ周方向Cに交互に配置されている。
【0030】
図2図4に示すように、第1のスポーク41と第2のスポーク42には、本実施形態の非空気圧タイヤ1の製造時に形成されるパーティションライン80が配置される。パーティションライン80の構成については後述する。
【0031】
図2及び図3に示すように、第1のスポーク41は、全体的に、外側環状部30のタイヤ幅方向Yの一方側であるY1側から、内側環状部20のタイヤ幅方向Yの他方側であるY2側へ向かって傾斜して延びている。第2のスポーク42は、全体的に、外側環状部30のタイヤ幅方向Yの他方側であるY2側から、内側環状部20のタイヤ幅方向Yの一方側であるY1側へ向かって傾斜して延びている。
【0032】
第1のスポーク41及び第2のスポーク42の傾斜角度は同じである。このため、タイヤ周方向Cに隣接する第1のスポーク41と第2のスポーク42とは、タイヤ周方向Cに沿う方向から見た場合、略X字状に配置されている。図2に示すように、第1のスポーク41及び第2のスポーク42は、タイヤ幅方向Yに対して角度θで傾斜しており、その角度θは、例えば39°以上49°以下が好ましい。
【0033】
図2に示すように、タイヤ周方向Cに沿う方向から見た状態での第1のスポーク41及び第2のスポーク42のそれぞれは、タイヤ赤道面Eに対して対称な同一形状である。したがって、以下においては、第1のスポーク41及び第2のスポーク42を区別する必要がなく、まとめて説明できる場合には、第1のスポーク41及び第2のスポーク42を、スポーク40と総称する。
【0034】
スポーク40は板状であって、内側環状部20から外側環状部30に向けて、上記のように角度θの角度で斜めに延びている。図3に示すように、スポーク40は、タイヤ周方向に沿った板厚tが、板幅wよりも小さく、板厚tの方向がタイヤ周方向Cに沿っている。すなわち、スポーク40は、タイヤ径方向X及びタイヤ幅方向Yの面内に沿って延びる板状に形成されている。なお、ここでいう板幅wは、図2にも示すように、スポーク40をタイヤ周方向Cに沿う方向から見た場合での、スポーク40が延在する傾斜方向すなわちスポーク40の長さ方向に直交する方向の寸法である。第1のスポーク41の板幅wは、図2及び図3に示すように、スポーク40をタイヤ周方向Cに沿う方向から見た場合での、第1のスポーク41の長さ方向L1に直交する方向の寸法である。また、第2のスポーク42の板幅wは、図2及び図3に示すように、スポーク40をタイヤ周方向Cに沿う方向から見た場合での、第2のスポーク42の長さ方向L2に直交する方向の寸法である。本実施形態においては、全てのスポーク40の板厚tは同じである。また、全てのスポーク40の板幅wは同じである。また、スポーク40の長さ方向の寸法は、板幅wよりも大きい。
【0035】
スポーク40は、長尺板状であって、スポーク40の板厚方向Tに相対する第1の表面401及び第2の表面402と、スポーク40の板幅方向に相対する第1の側面403及び第2の側面404を有する。第1の表面401は図2で紙面表側の表面であり、第2の表面402は図2において紙面裏側の表面である。第1の側面403はスポーク40のタイヤ幅方向Y1側の側面であり、第2の側面404はスポーク40のタイヤ幅方向Y2側の側面である。
【0036】
図4は、非空気圧タイヤ1を側方から見た場合の1つのスポーク40の側面図である。本実施形態のスポーク40は、図4に示すように、タイヤ側面視において、内側環状部20側の一端部である内側端部40aから外側環状部30側の他端部である外側端部40bに向かうにつれてしだいに大きくなるテーパ形状を有している。図4に示す外周側が内周側よりも厚くなっている態様であって、内側端部40aから外側端部40bに向かうにつれて板厚tがしだいに大きくなっている。なお、スポーク40の板厚tは、内側端部40aから外側端部40bにわたり一定であってもよい。
【0037】
本実施形態では、複数のスポーク40は、タイヤ周方向Cに等間隔に配列されている。すなわち複数のスポーク40においては、タイヤ周方向Cに隣接する一対のスポーク40における板厚tの中央の間の間隔が等しい。なお、複数のスポーク40は、タイヤ周方向Cにバリアブルピッチで配置されていてもよい。
【0038】
スポーク40は長尺板状であるため、板厚tを薄くしても、板幅wを広く設定することによってスポーク40の耐久性を維持することができる。
【0039】
なお、本実施形態のスポーク40は側面視においてタイヤ径方向Xと平行であるが、スポーク40は側面視においてタイヤ径方向Xと交差するようにタイヤ径方向Xに対し斜めに配置されてもよい。
【0040】
以下、図2及び図3を参照して、第1のスポーク41及び第2のスポーク42を詳述する。
【0041】
第1のスポーク41は、第1の直線部410と、第1の直線部410と内側環状部20とを接続する第1の内側接続部411と、第1の直線部410と外側環状部30とを接続する第1の外側接続部412と、を有する。第1の内側接続部411は、内側環状部20のタイヤ幅方向Y2側の半分の領域に設けられている。第1の外側接続部412は、外側環状部30のタイヤ幅方向Y1側の半分の領域に設けられている。
【0042】
第1の直線部410は、外側環状部30のタイヤ幅方向Y1側から、内側環状部20のタイヤ幅方向Y2側に向かって傾斜して延びている。すなわち第1の直線部410は、第1のスポーク41の傾斜方向に一致する。第1の直線部410の板幅wは、長さ方向L1において一定である。
【0043】
図2に示すように、第1のスポーク41の第1の内側接続部411は、第1の直線部410から内側環状部20に近付くにつれてタイヤ幅方向Yに沿って広がる形状を有している。第1の内側接続部411のタイヤ幅方向Y2側の第2の側面404である側面411aは、内側環状部20のタイヤ幅方向Y2側の端部20bまでなだらかに湾曲しながら延びている。第1の内側接続部411のタイヤ幅方向Y1側の第1の側面403である側面411bは、内側環状部20のタイヤ赤道面Eの位置までタイヤ幅方向Y1側に向かって湾曲して延びている。すなわち、第1の内側接続部411の板幅wは、第1の直線部410側から内側環状部20に近づくにつれて大きくなる。
【0044】
第1のスポーク41の第1の外側接続部412は、第1の内側接続部411と同様の形状であって、第1の直線部410から外側環状部30に近付くにつれてタイヤ幅方向に沿って広がる形状を有している。第1の外側接続部412のタイヤ幅方向Y1側の第1の側面403である側面412aは、外側環状部30のタイヤ幅方向Y1側の端部30aまでなだらかに湾曲しながら延びている。第1の外側接続部412のタイヤ幅方向Y2側の第2の側面404である側面412bは、外側環状部30のタイヤ赤道面Eの位置までタイヤ幅方向Y2側に向かって湾曲して延びている。すなわち、第1の外側接続部412の板幅wは、第1の直線部410側から外側環状部30に近づくにつれて大きくなる。
【0045】
第1のスポーク41は、図2及び図3に示すように、第1の表面401及び第2の表面402の板幅方向D1の両端に端縁413a、413bを有する。具体的には、第1の表面401の端縁413aは、第1のスポーク41のタイヤ幅方向Y2側の第2の側面404と第1の表面401とが交わる部位である。第2の表面402の端縁413aは、第1のスポーク41のタイヤ幅方向Y2側の第2の側面404と第2の表面402とが交わる部位である。第1の表面401の端縁413bは、第1のスポーク41のタイヤ幅方向Y1側の第1の側面403と第1の表面401とが交わる部位である。第2の表面402の端縁413bは、第1のスポーク41のタイヤ幅方向Y1側の第1の側面403と第2の表面402とが交わる部位である。すなわち、第1のスポーク41の端縁413a、413bは、スポーク40をタイヤ周方向Cに沿って見た場合での、第1のスポーク41の輪郭線Bに相当する。図2及び図3に示すように、第1のスポーク41の輪郭線Bは、第1の直線部410において直線状に延び、第1の内側接続部411及び第1の外側接続部412において曲線状に延びる。
【0046】
第2のスポーク42は、第1のスポーク41と同一形状であって、タイヤ赤道面Eにして第1のスポーク41と対称形状である。
【0047】
第2のスポーク42は、第2の直線部420と、第2の直線部420と内側環状部20とを接続する第2の内側接続部421と、第2の直線部420と外側環状部30とを接続する第2の外側接続部422と、を有する。第2の内側接続部421は、内側環状部20のタイヤ幅方向Y1側の半分の領域に設けられている。第2の外側接続部422は、外側環状部30のタイヤ幅方向Y2側の半分の領域に設けられている。
【0048】
第2の直線部420は、外側環状部30のタイヤ幅方向Y2側から、内側環状部20のタイヤ幅方向Y1側に向かって傾斜して延びている。すなわち第2の直線部420は、第2のスポーク42の傾斜方向に一致する。第2の直線部420の板幅wは、長さ方向L2において一定である。
【0049】
図2に示すように、第2のスポーク42の第2の内側接続部421は、第2の直線部420から内側環状部20に近付くにつれてタイヤ幅方向Yに沿って広がる形状を有している。第2の内側接続部421のタイヤ幅方向Y1側の第1の側面403である側面421aは、内側環状部20のタイヤ幅方向Y1側の端部20aまでなだらかに湾曲しながら延びている。第2の内側接続部421のタイヤ幅方向Y2側の第2の側面404である側面421bは、内側環状部20のタイヤ赤道面Eの位置までタイヤ幅方向Y2側に向かって湾曲して延びている。すなわち、第2の内側接続部421の板幅wは、第2の直線部420側から内側環状部20に近づくにつれて大きくなる。
【0050】
第2のスポーク42の第2の外側接続部422は、第2の内側接続部421と同様の形状であって、第2の直線部420から外側環状部30に近付くにつれてタイヤ幅方向に沿って広がる形状を有している。第2の外側接続部422のタイヤ幅方向Y2側の第2の側面404である側面422aは、外側環状部30のタイヤ幅方向Y2側の端部30bまでなだらかに湾曲しながら延びている。第2の外側接続部422のタイヤ幅方向Y1側の側面422bは、外側環状部30のタイヤ赤道面Eの位置までタイヤ幅方向Y1側に向かって湾曲して延びている。すなわち、第2の内側接続部421の板幅wは、第2の直線部420側から外側環状部30に近づくにつれて大きくなる。
【0051】
第2のスポーク42は、図2及び図3に示すように、第1の表面401及び第2の表面402の板幅方向D2の両端に端縁423a、423bを有する。具体的には、第1の表面401の端縁423aは、第2のスポーク42のタイヤ幅方向Y1側の第1の側面403と第1の表面401とが交わる部位である。第2の表面402の端縁423aは、第1のスポーク41のタイヤ幅方向Y1側の第1の側面403と第2の表面402とが交わる部位である。第1の表面401の端縁423bは、第2のスポーク42のタイヤ幅方向Y2側の第2の側面404と第1の表面401とが交わる部位である。第2の表面402の端縁423bは、第2のスポーク42のタイヤ幅方向Y2側の第2の側面404と第2の表面402とが交わる部位である。すなわち、第2のスポーク42の端縁423a、423bは、スポーク40をタイヤ周方向Cに沿って見た場合の第2のスポーク42の輪郭線Bに相当する。図2及び図3に示すように、第2のスポーク42の輪郭線Bは、第2の直線部420において直線状に延び、第2の内側接続部421及び第2の外側接続部422において曲線状に延びる。
【0052】
上述したように、本実施形態の全てのスポーク40の板厚tは同じである。板厚tの寸法は特に限定されないが、スポーク40が内側環状部20及び外側環状部30からの回転力を十分受けつつ、荷重を受けた際には適度に撓み変形が可能なようにする上で、1mm以上30mm以下であることが好ましく、5mm以上25mm以下であることがより好ましい。
【0053】
上述したように、本実施形態の全てのスポーク40の板幅wは同じである。スポーク40の板幅wは特に限定されないが、内側環状部20及び外側環状部30からの回転力を十分受けつつ、荷重を受けた際には適度に撓み変形が可能なようにする上で、5mm以上25mm以下であることが好ましく、10mm以上20mm以下であることがより好ましい。また、板幅wは、耐久性を向上させつつ接地圧を分散させ得る観点から、板厚tの110%以上であることが好ましく、115%以上であることがより好ましい。
【0054】
スポーク40の数としては、車両からの荷重を十分支持しつつ、軽量化が可能で、動力伝達性及び耐久性の向上をともに図ることを可能とする観点から、80個以上300個以下であることが好ましく、100個以上200個以下であることがより好ましい。
【0055】
複数のスポーク40のタイヤ周方向Cの間隔は、例えば、1.0mm以上4.1mm以下で設定されることが好ましい。なお、本実施形態では、複数のスポーク40のタイヤ周方向Cの間隔は等しいが、不等間隔であってもよい。
【0056】
スポーク40は、下記に挙げる弾性材料によって形成することができる。まず、その弾性材料の特性としては、十分な耐久性を確保しながら、適度な剛性を付与する観点から、JIS K7312:1996に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した引張モジュラスが、3MPa以上12MPa以下が好ましい。
【0057】
スポーク40において、10%伸び時の引張応力から算出した引張モジュラスが3MPaを下回る場合、十分な剛性が得られず、タイヤ周方向Cに隣接するスポーク40どうしが接触する可能性がある。一方、10%伸び時の引張応力から算出した引張モジュラスが12MPaを上回る場合、過度に剛性が高くなり、乗り心地が悪化する。
【0058】
スポーク40の母材として用いられる弾性材料としては、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂が挙げられる。
【0059】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等が例示される。
【0060】
架橋ゴムを構成するゴム材料としては、天然ゴム及び合成ゴムのいずれを使用することもできる。合成ゴムとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(水添NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等が例示される。これらのゴム材料は、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0061】
その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0062】
スポーク40には、上記の弾性材料のうち、成形、加工性及びコストの観点から、ポリウレタン樹脂が好ましく用いられる。なお、弾性材料としては、発泡材料を使用することもできる。すなわち、上記の熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂を発泡させたものを使用することができる。
【0063】
なお、スポーク40の母材として用いられる弾性材料は、補強繊維により補強されていてもよい。補強繊維としては、長繊維、短繊維、織布、不織布等が挙げられる。補強繊維の種類としては、レーヨンコード、ナイロン-6,6等のポリアミドコード、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルコード、アラミドコード、ガラス繊維コード、カーボンファイバー、スチールコード等が挙げられる。
【0064】
なお、弾性材料の補強は、補強繊維による補強に限らない。例えば、粒状フィラーの添加による補強が行われてもよい。添加される粒状フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ、アルミナ等のセラミックス、その他の無機材料のフィラー等が挙げられる。
【0065】
ところで、上述した内側環状部20及び外側環状部30は、スポーク40と同じ樹脂材料で形成されると好ましく、その場合には、例えば注型成形法によって、内側環状部20、外側環状部30及びスポーク40を一体成形することができる。
【0066】
トレッド50は、外側環状部30の外周面32に設けられている。トレッド50は、非空気圧タイヤ1の最外周部分を構成する。図2及び図3に示すように、トレッド50は、トレッドゴム51を含む。トレッドゴム51は、路面に接地する踏面51aを外周面に有する。トレッドゴム51のゴム材料としては、特にその種類に制限はなく、車両用タイヤのトレッドを構成するゴムとしての一般的な加硫ゴム等を使用することができる。トレッドゴム51の踏面51aには、従来の空気入りタイヤと同様にして、複数の溝及び陸部で形成されるトレッドパターンが設けられる。
【0067】
なお、トレッドゴム51は、成分や特性が異なる複数のゴム層が積層された構成(例えば、2層あるいは3層)でもよい。また、トレッド50は、樹脂で形成されてもよい。トレッドゴム51は、加硫接着層52によって外側環状部30の外周面32に接着される。
【0068】
次に、パーティションライン80について説明する。
【0069】
パーティションライン80は、非空気圧タイヤ1の成形時にタイヤ幅方向Yに分割される分割金型100によってスポーク40に線状に形成される。まず、パーティションライン80の具体的な構成を説明する前に、分割金型100の基本的な構成について図5及び図6を参照しながら説明する。図5は、実施形態に係る非空気圧タイヤ1の製造に用いる分割金型100を示す平面図である。図6は、図5に示す分割金型100を矢印VIの方向に沿って見たときの側面図である。なお、図6では内型101の側面視での形状が確認できるように、外型102の一部の図示を省略している。
【0070】
図5及び図6において、矢印Fは分割金型100の径方向を示し、矢印F1は金型径方向Fにおいて分割金型100の中心軸に近づく内径方向を示し、矢印F2は内径方向F1の反対側の外径方向を示している。図5において、矢印Gは分割金型100の周方向を示している。図6においての分割金型100の金型周方向Gは、紙面表裏方向である。図6において、矢印Iは分割金型100の軸方向を示しているとともに、分割金型100による成形時の上下方向を示している。
【0071】
分割金型100は、図5及び図6に示すように、上型110及び下型120からなる内型101と、内型101の外周側に配置される外型102と、を備える。分割金型100は、非空気圧タイヤ1の形状に合わせて全体として環状に形成される。内型101は、分割金型100の軸方向において上型110と下型120に分割される。
【0072】
内型101は、主としてスポーク40を成形する。内型101を構成する上型110と下型120とは、互いに対向する側に成形面を備える。上型110及び下型120は、成形される非空気圧タイヤ1のタイヤ幅方向Yに型開きされる。すなわち、分割金型100の軸方向とタイヤ幅方向Yが一致するように非空気圧タイヤ1が成形される。パーティションライン80は、分割金型100の型閉時における上型110と下型120とが互いに接触する合わせ目に沿って形成される。具体的には、分割金型100の型閉時に下型120に対して上型110が金型周方向Gにズレ、この状態でスポーク40が成形されることにより、スポーク40の第1の表面401及び第2の表面402上に段差が生じる。この段差がパーティションライン80である。
【0073】
次に、パーティションライン80の詳細な構成について図2図4を参照しながら説明する。
【0074】
パーティションライン80は、図2及び図3に示すように、スポーク40の長さ方向に延びる。図4に示すように、パーティションライン80は、スポーク40の第1の表面401及び第2の表面402上に配置され、その長さ方向の一方側が内側環状部20に向かって延び、他方側が外側環状部30に向かって延びる。本実施形態では、第1のスポーク41の第1の表面401及び第2の表面402に配置されるパーティションライン80は、第1の直線部410における端縁413a、413bが延びる方向に対して略平行に延びる。また、第2のスポーク42の第1の表面401及び第2の表面402に配置されるパーティションライン80は、端縁423a、423bが延びる方向に対して略平行に延びる。なお、第1のスポーク41に配置されるパーティションライン80は、第1の直線部410における端縁413a、413bが延びる方向に対して所定の角度を傾斜して延びていてもよい。また、第2のスポーク42に配置されるパーティションライン80は、第2の直線部420における端縁423a、423bが延びる方向に対して所定の角度を傾斜して延びていてもよい。
【0075】
本実施形態では、パーティションライン80は、スポーク40の長さ方向に沿って、その一端部81が内側環状部20に接触し、他端部82が外側環状部30に接触するように延びる。すなわち、パーティションライン80は、第1のスポーク41における内側環状部20から外側環状部30に亘って延び、第2のスポーク42における内側環状部20から外側環状部30に亘って延びる。
【0076】
また、パーティションライン80は、スポーク40の長さ方向に直交する板幅方向の略中央部に位置する。具体的には、第1のスポーク41に配置されるパーティションライン80は、第1の直線部410において第1のスポーク41の板幅方向D1の略中央部に位置し、長さ方向L1に沿って延びる。第2のスポーク42に配置されるパーティションライン80は、第2の直線部420において第2のスポーク42の板幅方向D2の略中央部に位置し、長さ方向L2に沿って延びる。
【0077】
また図2及び図3に示すように、パーティションライン80は、第1の表面401及び第2の表面402の端縁413a、413b,423a、423bと接触していない。具体的には、第1のスポーク41に配置されるパーティションライン80は、第1の表面401において端縁413a、413bと離間しており、第2の表面402において端縁413a、413bと離間している。また第2のスポーク42に配置されるパーティションライン80は、第1の表面401において端縁423a、423bと離間しており、第2の表面402において端縁423a、423bと離間している。すなわち、パーティションライン80は、スポーク40をタイヤ周方向Cで見た場合、第1の表面401又は第2の表面402においてスポーク40の輪郭線Bに接触せずに輪郭線Bから離れた位置に配置される。
【0078】
ここで、非空気圧タイヤ1のスポーク40は、タイヤ転動時において、他の部位に比べて高い割合の荷重がかかる。特にスポーク40に生じる段差であるパーティションライン80の一端部81、他端部82やスポーク40の端縁413a、413b、423a、423b等は、応力がかかりやすい傾向にある。パーティションライン80がスポーク40の板幅方向の両端まで延びている場合、パーティションライン80と端縁413a、413b、423a、423b等の交点に剪断応力が発生し、樹脂の剪断降伏が起こり、そこを起点にクラックが進展し、スポーク破断に至る。
【0079】
本実施形態では、スポーク40に配置されるパーティションライン80が端縁413a、413b、423a、423bと接触せず、スポーク40の長さ方向に沿って延びているので、剪断応力の発生を防止できる。よって、スポーク40の耐久性を向上させることができる。
【0080】
次に、本実施形態に係る非空気圧タイヤ1の製造方法について説明する。
【0081】
非空気圧タイヤ1は、分割金型100を用いて内側環状部20、外側環状部30及びスポーク40となる支持構造体を成形する成形工程と、外側環状部30の外周面32にトレッド50を形成するトレッド形成工程と、を含む。
【0082】
成形工程では、型閉した分割金型100に樹脂が充填され、加熱(例えば100℃~160℃)された後に、冷却される。冷却後にタイヤ幅方向Yに型開きされ、支持構造体が分割金型から取り出される。これによって、内側環状部20と、外側環状部30と、パーティションライン80が配置されたスポーク40とが成形される。即ち、分割金型100に樹脂を充填し、その後分割金型100を除去することでパーティションライン80が配置されるスポーク40等が成形される。スポーク40に配置されるパーティションライン80は、分割金型100を用いることでスポーク40の長さ方向に沿って延びるように配置される。
【0083】
トレッド形成工程では、支持構造体の外周面に加硫接着剤を塗布する。そして、加硫接着剤を塗布した外側環状部30の外周面32にトレッド用ゴム組成物を貼着させた後、加硫装置を用いて加熱加圧することにより、支持構造体と、トレッド用ゴム組成物と、を加硫接着させる。トレッド用ゴム組成物は、特に限定されないが、例えば、天然ゴムおよびカーボンブラックを含み、硫黄、シリカ等をさらに含んでいてもよい。ここで、トレッド用ゴム組成物は、天然ゴムとともに、または、天然ゴムの代わりに、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム等の合成ゴムを含んでいてもよい。
【0084】
このような製造工程により、非空気圧タイヤ1が製造される。
【0085】
次に、長さ方向に沿ったパーティションライン80が配置されるスポーク40を成形する分割金型100の内型101の構成について図7及び図8を参照しながら説明する。図7は、図5に示すVII-VII断面図であり、金型周方向Gに沿って見た上型110のスペーサ112及び下型120のスペーサ122を示す図である。図8は、図7に示す分割金型が型開きされた状態を示す図である。図7において、分割金型100によって成形される内側環状部20、外側環状部30及びスポーク40と、内型101の位置関係を二点鎖線で示している。
【0086】
図7及び図8において、矢印Fは分割金型100の径方向を示し、矢印F1は金型径方向Fにおいて分割金型100の中心軸に近づく内径方向を示し、矢印F2は内径方向F1の反対側の外径方向を示している。図7及び図8においての金型周方向Gは、紙面表裏方向である。
【0087】
図7及び図8に示すように、上型110は、環状の基部111、スポーク40が成形される空間を区画するための複数のスペーサ112等を有する。スペーサ112は、板状であり、基部111の下面、すなわち型閉時に下型120と対向する面から下方に延出する。複数のスペーサ112は、所望の板厚tのスポーク40を成形できる間隔で金型周方向Gに沿って間欠的に配列される。なお、各スペーサ112は、金型径方向F、すなわち基部111の幅方向における基部111の一端から他端に亘って延びている。
【0088】
スペーサ112は、第1延出片112aと第2延出片112bによって構成される。第1延出片112aは、三角板状であり、図8に示すように外径方向F2に向かうにつれて下方に延出する長さが長くなるように形成される。即ち、第1延出片112aには、外径方向F2に向かって下方に傾斜する傾斜部S1が形成される。第2延出片112bは、三角板状であり、内径方向F1に向かうにつれて下方に延出する長さが長くなるように形成される。即ち、第2延出片112bには、内径方向F1に向かって下方に傾斜する傾斜部S2が形成される。第1延出片112aと第2延出片112bとは、金型周方向Gである厚み方向において接触した状態で一体化されている。なお、図8に示すスペーサ112の第1延出片112aは、第2延出片112bよりも図8における紙面手前側に位置するが、図8に示すスペーサ112に金型周方向Gで隣接するスペーサ112の第1延出片112aは、第2延出片112bよりも図8における紙面奥側に位置する。すなわち金型周方向Gに配列された複数のスペーサ112の第1延出片112aと第2延出片112bの位置は金型周方向Gにおいて交互に入れ替わっている。すなわちスペーサ112は、分割金型100が型閉された状態で、その第1延出片112aが金型周方向Gにおいて隣接するスペーサ112の第1延出片112aと対向するように配置される。またスペーサ112は、分割金型100が型閉された状態で、その第2延出片112bが金型周方向Gにおいて隣接するスペーサ112の第2延出片112bと対向するように配置される。
【0089】
図7及び図8に示すように、下型120は、環状の基部121、スポーク40が成形される空間を区画するための複数のスペーサ122等を有する。スペーサ122は、板状であり、基部121の上面、すなわち型閉時に上型110と対向する面から上方に延出する。複数のスペーサ122は、所望の板厚tのスポーク40を成形できる間隔で金型周方向Gに沿って間欠的に配置される。
【0090】
スペーサ122は、第1延出片122aと第2延出片122bによって構成される。第1延出片122aは、三角板状であり、図8に示すように内径方向F1に向かうにつれて上方に延出する長さが長くなるように形成される。すなわち、第1延出片122aには、内径方向F1に向かって上方に傾斜する傾斜部S3が形成される。第2延出片122bは、三角板状であり、外径方向F2に向かうにつれて上方に延出する長さが長くなるように形成される。すなわち、第2延出片122bには、外径方向F2に向かうにつれて上方に傾斜する傾斜部S4が形成される。第1延出片122aと第2延出片122bは、金型周方向Gである厚み方向において接触した状態で一体化されている。なお、第1延出片122aは、第2延出片122bよりも図8における紙面手前側に位置するが、図8に示すスペーサ122に金型周方向Gで隣接するスペーサ122の第1延出片122aは、第2延出片122bよりも図8における紙面奥側に位置する。すなわち金型周方向Gに配列された複数のスペーサ122の第1延出片122aと第2延出片122bの位置は金型周方向Gにおいて交互に入れ替わっている。すなわちスペーサ122は、分割金型100が型閉された状態で、その第1延出片122aが金型周方向Gにおいて隣接するスペーサ122の第1延出片122aと対向するように配置される。またスペーサ112は、分割金型100が型閉された状態で、その第2延出片122bが金型周方向Gにおいて隣接するスペーサ122の第2延出片122bと対向するように配置される。
【0091】
スペーサ112とスペーサ122は、型閉時に傾斜部S1と傾斜部S3が接触し、傾斜部S2と傾斜部S4とが接触するように構成される。即ち、上型110と下型120の合わせ目Pは、傾斜部S1、S3が接触する部位と、傾斜部S2、S4が接触する部位によって形成される。
【0092】
図7に示すように、成形される非空気圧タイヤ1の幅方向Yが分割金型100の軸方向Iと一致する。また、成形される非空気圧タイヤ1のタイヤ周方向Cが分割金型100の金型周方向Gと成形される一致する。また、上型110と下型120の合わせ目Pの位置とスポーク40が形成される位置が重なる。具体的には第1のスポーク41は、傾斜部S1、S3による合わせ目Pと隣接するスペーサ112、122の傾斜部S1、S3による合わせ目Pが金型周方向Gで対向する空間に成形される。また第1のスポーク41は、その傾斜角度が合わせ目Pの傾斜角度と略等しくなるように成形される。これにより、第1のスポーク41の第1の表面401及び第2の表面402に長さ方向L1に沿って延びるパーティションライン80が形成される。第2のスポーク42は、傾斜部S2、S4による合わせ目Pと隣接するスペーサ112、122の傾斜部S2、S4による合わせ目Pが金型周方向Gで対向する空間に形成される。また第2のスポーク42は、その傾斜角度が合わせ目Pの傾斜角度と略等しくなるように成形される。これにより、第2のスポーク42の第1の表面401及び第2の表面402に長さ方向L2に沿って延びるパーティションライン80が形成される。
【0093】
また、分割金型100は、その型閉時に上型110の第1延出片112aが下型120の第2延出片122bと重なり、上型110の第2延出片112bが下型120の第1延出片121bと重なる。この構成により、下型120に対する上型110の金型周方向Gのズレの発生を抑制でき、パーティションライン80の段差を低減する効果を奏する。これにより、成形されるスポーク40の耐久性をより高めることができる。
【実施例0094】
以下、実施例について説明する。上記製造方法によって製造され、上記実施形態と同様の構成を備える実施例の非空気圧タイヤと、比較例の非空気圧タイヤを、FEMによる解析モデルを用いて評価した。
【0095】
比較例の非空気圧タイヤは、スポークに配置されるパーティションラインの位置以外は実施例と同様の構成を備える。比較例のパーティションラインは、スポークの第1の表面及び第2の表面において、タイヤ幅方向Yの中央部をタイヤ径方向Xに直線状に延びるように配置される。
【0096】
図9は縦荷重を受けたスポークにかかる剪断応力の解析モデルを示す図であって、実施例を示す図である。図10は縦荷重を受けたスポークにかかる剪断応力の解析モデルを示す図であって、比較例を示す図である。図9及び図10において、解析モデルの濃淡は応力の大きさを示しており、濃淡が濃いほどスポークにかかる応力が大きいことを示している。
【0097】
図10に示すように、比較例では、パーティションラインが配置された箇所により大きな応力がかかっていることが確認できる。特にパーティションラインとスポークの板幅方向の端縁とが交差する箇所に応力が集中していることが確認できる。これに対して、実施例では、図9に示すように、比較例に比べてスポークにかかる応力が分散されている。特にスポークの板幅方向の端縁にかかる応力が小さいことが確認できる。実施例の結果によれば、パーティションライン80がスポーク40の長さ方向に沿って延びるようにスポーク40に配置されるので、これにより、タイヤの耐久性を向上できることが判る。
【0098】
上述した実施形態の非空気圧タイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0099】
(1)本実施形態に係る非空気圧タイヤ1は、内側環状部20と、内側環状部20の外周側に同軸に配置される外側環状部30と、内側環状部20と外側環状部30とを連結し、タイヤ周方向Cに沿って配列される複数のスポーク40と、を備える非空気圧タイヤ1であって、スポーク40には、非空気圧タイヤ1の成形時にタイヤ幅方向Yに分割される分割金型100によって形成されるパーティションライン80が配置され、パーティションライン80は、スポーク40の長さ方向L1,L2に沿って延びる。
【0100】
これにより、タイヤ転動時に剪断応力が発生しやすいパーティションライン80がスポーク40の長さ方向に沿って延びるので、剪断応力の発生を防止できる。よって、タイヤの耐久性を向上させることができる。
【0101】
(2)また、パーティションライン80は、スポーク40の板幅方向D1,D2の略中央部に位置することが好ましい。
【0102】
これにより、タイヤ転動時にパーティションライン80に剪断応力が発生し、パーティションライン80を起点にクラックが生じた場合であっても、クラックがスポークの板幅方向D1,D2の両端と交差され難く、スポーク40の耐久性を確実に向上させることができる。
【0103】
(3)また、スポーク40は、長尺板状であり、パーティションライン80は、スポーク40の板厚方向Tに相対する第1の表面401及び第2の表面402の少なくとも何れかの面に配置され、第1の表面401及び第2の表面402の板幅方向D1、D2の両端の端縁413a、413b、423a、423bと離間している。
【0104】
これにより、スポーク40に配置されるパーティションライン80が端縁413a、413b、423a、423bと接触せず、スポーク40の長さ方向に沿って延びているので、剪断応力の発生を防止できる。
【0105】
(4)内側環状部20及び外側環状部30は、内側補強層60、外側補強層70を有する。
【0106】
これにより、内側環状部20及び外側環状部30の強度が向上するので、内側環状部20側に存在するパーティションライン80の一端部81や外側環状部30側に存在する他端部82からのクラックの発生を抑制できる。
【0107】
(5)スポーク40は、タイヤ軸方向の一方側へ傾斜する第1のスポーク41と、第1のスポーク41とは反対側に傾斜する第2のスポーク42と、を含み、第1のスポーク41と第2のスポーク42とが、タイヤ周方向Cに交互に配置されている。
【0108】
第1のスポーク41及び第2のスポーク42は、タイヤ周方向Cに沿った方向から見た場合に略X字状に配置される。第1のスポーク41及び第2のスポーク42は、それぞれがタイヤ軸方向に傾斜しているため過度に剛性が高くなることが抑えられ、乗り心地の向上が図られる。
【0109】
(6)本実施形態に係る非空気圧タイヤ1の製造方法は、非空気圧タイヤ1を製造する製造方法であって、分割金型100に樹脂を充填し、その後分割金型100を除去することでパーティションライン80が配置されるスポーク40を成形する成形工程を含む。
【0110】
これにより、スポーク40長さ方向L1,L2に沿って延びるパーティションライン80が配置されたスポーク40を備え、耐久性の高い非空気圧タイヤ1を製造することができる。
【0111】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【0112】
実施形態のスポーク40は、タイヤ周方向Cに沿う方向から見て略X字状に交差する第1のスポーク41及び第2のスポーク42を含むが、スポーク40はこれに限らず、タイヤ径方向Xに真っ直ぐ延びる板状の部分で構成されてよい。
【0113】
実施形態のスポーク40の形状は長尺板状であったが、その形状は特に限定されない。例えば、円柱状であってもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 非空気圧タイヤ
20 内側環状部
30 外側環状部
40 スポーク
80 パーティションライン
100 分割金型
C タイヤ周方向
Y タイヤ幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
図10