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特開2024-64227La2O3とCeO2を含む金属酸化物繊維
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064227
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】La2O3とCeO2を含む金属酸化物繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 9/08 20060101AFI20240507BHJP
   B01J 23/10 20060101ALI20240507BHJP
   B01J 35/58 20240101ALI20240507BHJP
【FI】
D01F9/08 Z
B01J23/10 Z
B01J35/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172664
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小坂 祐輔
【テーマコード(参考)】
4G169
4L037
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC42A
4G169BC42B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169CB07
4G169CB25
4G169CB63
4G169DA06
4G169EA03X
4G169EA03Y
4G169EB14X
4G169EB14Y
4G169EC02Y
4G169FC08
4L037CS17
4L037FA03
4L037PA24
4L037PA41
4L037PA46
(57)【要約】
【課題】触媒用途として使用するのに十分な強度を有する金属酸化物繊維の提供。
【解決手段】本発明者らは、LaとCeOを含む金属酸化物繊維において、その平均繊維径が75nmより大きい場合には、メタンを含む気体などの気体を供給した際に、当該金属酸化物繊維が気体流を受けて形崩れを起こし難くなり、金属酸化物繊維が飛び散ることが防止されていることで、触媒用途として使用するのに十分な強度を有することを見出した。このことから本発明の金属酸化物繊維は、空気中のメタンからエチレンやプロピレンを合成する触媒として使用するのに優れている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LaとCeOを含み、平均繊維径が75nmより大きい、金属酸化物繊維。
【請求項2】
エネルギー分散型蛍光X線分析装置で金属酸化物繊維の表面を測定した際の、金属酸化物繊維に含まれるLaのモル分率が、金属酸化物繊維に含まれるCeのモル分率以上である、請求項1に記載の金属酸化物繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタンからエチレンやプロピレンを合成する触媒用途に用いることができる、LaとCeOを含む金属酸化物繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物繊維は高い比表面積を有することから、触媒やフィルタなどを構成する材料として使用できることが知られている。
【0003】
このような金属酸化物繊維は、例えば、特開2014-80700号公報(特許文献1)に開示されている。また、ChemCatChem communications,2013,5,p.146-149(非特許文献1)には、メタンからエチレンやプロピレンを合成する触媒用途に用いることができる、繊維径が50~75nmの、La(酸化ランタン(III)とCeO(酸化セリウム(IV)から構成された金属酸化物繊維が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-80700号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ChemCatChem communications,2013,5,p.146-149
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に開示されているLaとCeOから構成された繊維径が小さい(具体的には75nm以下の)金属酸化物繊維は、脆いという問題を抱えていた。そのため、当該金属酸化物繊維へメタンを含む気体を供給することで、メタンからエチレンやプロピレンを合成する触媒として利用した際に、当該金属酸化物繊維が気体流を受けて形崩れを起こし、金属酸化物繊維が飛び散るおそれがあった。
【0007】
本発明はこのような状況下においてなされたものであり、形崩れを起こしにくいことから金属酸化物繊維が飛び散ることが防止されており、触媒用途として使用するのに十分な強度を有する金属酸化物繊維の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1にかかる発明は、「LaとCeOを含み、平均繊維径が75nmより大きい、金属酸化物繊維。」である。
【0009】
本発明の請求項2にかかる発明は、「エネルギー分散型蛍光X線分析装置で金属酸化物繊維の表面を測定した際の、金属酸化物繊維に含まれるLaのモル分率が、金属酸化物繊維に含まれるCeのモル分率以上である、請求項1に記載の金属酸化物繊維。」である。
【発明の効果】
【0010】
本発明者らは、LaとCeOを含む金属酸化物繊維において、その平均繊維径が75nmより大きい場合には、メタンを含む気体などの気体を供給した際に、当該金属酸化物繊維が気体流を受けて形崩れを起こし難くなり、金属酸化物繊維が飛び散ることが防止されていることで、触媒用途として使用するのに十分な強度を有することを見出した。
このことから本発明の金属酸化物繊維は、空気中のメタンからエチレンやプロピレンを合成する触媒として使用するのに優れている。
【0011】
本発明の請求項2にかかる金属酸化物繊維は、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)で金属酸化物繊維の表面を測定した際の、金属酸化物繊維に含まれるLaのモル分率が、金属酸化物繊維に含まれるCeのモル分率以上であることで、触媒活性が優れる金属酸化物繊維である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の金属酸化物繊維は、La(酸化ランタン(III))とCeO(酸化セリウム(IV))を含む。
【0013】
また、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)で金属酸化物繊維の表面を測定した際の金属酸化物繊維に含まれるLa(ランタン)のモル分率が、金属酸化物繊維に含まれるCeのモル分率以上であると、金属酸化物繊維の触媒活性が優れることから好ましい。具体的に、金属酸化物繊維に含まれるLa(ランタン)のモル分率と、金属酸化物繊維に含まれるCe(セリウム)のモル分率の比は、La:Ce=1:1~20:1が好ましく、La:Ce=1:1~18:1がより好ましく、La:Ce=1:1~15:1が更に好ましい。
【0014】
なお、「エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)で金属酸化物繊維の表面を測定した際の金属酸化物繊維に含まれるLa由来のLa(ランタン)のモル分率と、金属酸化物繊維に含まれるCeO由来のCe(セリウム)のモル分率の比」は、金属酸化物繊維表面をエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)に供して電子線を照射した際の特性X線を検出し、この特性X線の強度から求めた同一測定箇所におけるLaのモル分率とCeのモル分率の比から求めることができる。
【0015】
本発明の金属酸化物繊維は、LaとCeOの他に、染料などの有機成分や、ヒドロキシアパタイトやシリカ、アルミナなどの金属酸化物などの無機成分を含有することができる。本発明の金属酸化物繊維における、LaとCeOの合計の含有割合は、触媒活性が優れる金属酸化物繊維であるように、60mass%以上が好ましく、80mass%以上がより好ましく、100mass%(LaとCeOのみで構成されている)が最も好ましい。
【0016】
本発明の金属酸化物繊維の平均繊維径は、触媒として使用するのに適した高い強度を有するように、75nmより大きい。金属酸化物繊維を触媒として使用するのに適するようにより高い強度を得るために、金属酸化物繊維の平均繊維径は100nm以上がより好ましく、200nm以上が更に好ましい。一方、平均繊維径は細ければ細いほど、比表面積が大きくなり、比表面積が大きいと触媒活性が優れる金属酸化物繊維であることが出来ることから、平均繊維径は、1μm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、400nm以下が更に好ましい。なお、「平均繊維径」は、金属酸化物繊維50点における繊維径の算術平均値をいい、「繊維径」は、金属酸化物繊維の断面を撮影した50~5000倍の電子顕微鏡写真を基に測定した、金属酸化物繊維の直径をいう。
【0017】
金属酸化物繊維の繊維断面は、円形でない異形断面であってもよく、異形断面の金属酸化物繊維の繊維径の測定方法は、異形断面の断面積を計測し、その断面積を有する円の直径を繊維径とみなす。異形断面の金属酸化物繊維の形状は、例えば、三角形形状などの多角形形状、楕円形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などであることができる。
【0018】
また、本発明の金属酸化物繊維の平均繊維長は、特に限定するものではない。なお、本発明における「平均繊維長」は、50本の金属酸化物繊維における各繊維長の算術平均値をいい、「繊維長」は、金属酸化物繊維を撮影した50~5000倍の電子顕微鏡写真を基に測定した、金属酸化物繊維の長軸方向における長さをいう。
【0019】
本発明の金属酸化物繊維の比表面積は、大きければ大きいほど、触媒活性が優れる金属酸化物繊維であることができることから、10m/g以上が好ましく、12m/g以上がより好ましく、13m/g以上が更に好ましい。比表面積が大きい金属酸化物繊維は多孔質で脆い傾向があり、金属酸化物繊維の比表面積が大きすぎると、触媒として使用するのに適した強度が得られないおそれがあることから、30m/g以下が現実的である。なお、本発明における「比表面積」とは、測定対象となる主面を有する測定対象物を温度200℃で3時間処理した後、室温冷却して1×10-3Torrまで真空引きした後、測定対象物における当該主面を構成する部分から採取した約0.5gの試料をガス吸着測定装置[日本ベル(株)製、BELSORP28A]へ供し、BET法により測定した値である。なお、吸着ガスとして、窒素を用いる。
【0020】
次に、本発明の金属酸化物繊維の製造方法の一例について説明する。
【0021】
まず、ランタン(La)とセリウム(Ce)と、溶媒または分散媒を混合した、ランタンとセリウムを含む紡糸液を調製する工程について説明する。
【0022】
溶媒または分散媒中にランタンとセリウムを含む紡糸液は、ランタンまたはランタン塩・ランタンアルコキシドなどのランタンを含む物質、セリウムまたはセリウム塩・セリウムアルコキシドなどのセリウムを含む物質、溶媒又は分散媒、必要に応じて粘度を調整するための高分子、あるいは、ランタン塩・セリウム塩を用いている場合はランタンイオン、セリウムイオンと配位結合可能な高分子を準備する。
【0023】
ランタンを含む物質のうちランタン塩、セリウムを含む物質のうちセリウム塩は、例えば、例えばランタン、セリウムを含むハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩などを1種類以上用いることができる。
【0024】
また、溶媒または分散媒は特に限定するものではないが、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコールなど)、水などを挙げることができる。
【0025】
更に、粘度を調整するため紡糸液中に高分子成分を含ませてもよい。当該高分子成分についても特に限定するものではなく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0026】
更に、紡糸液中にランタンイオンまたはセリウムイオンと配位結合可能な高分子成分を含ませてもよい。当該高分子成分についても特に限定するものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸系ポリマー、カルボン酸系ポリマー、アミノアルコール系ポリマー、ポルフィリンアレイ、チオシアン酸系ポリマー、エチレンジアミン系ポリマーなどが挙げられる。
【0027】
紡糸液の粘度は、紡糸後焼成してLaとCeOを含み、平均繊維径が75nmより大きい金属酸化物繊維を形成することができれば特に限定するものではないが、100~10000mPa・sであることができる。
【0028】
次に、紡糸液を紡糸し焼成することで、LaとCeOを含む金属酸化物繊維を調製できる。紡糸液の紡糸方法は、紡糸後焼成してLaとCeOを含む、平均繊維径が75nmより大きい金属酸化物繊維を形成することが出来る限り、特に限定するものではないが、例えば、常法の乾式紡糸法、静電紡糸法、特開2005-264374号公報に開示されているような、静電紡糸の際に繊維とは反対極性のイオンを照射する紡糸方法、特開2009-287138号公報に開示されているような、ガスの剪断作用により紡糸する方法、或いは特開2012-154009号公報に開示されているような、電界の作用に加えてガスの剪断力を作用させて紡糸する方法、を挙げることができる。これらの中でも、静電紡糸法、あるいは、電界の作用に加えてガスの剪断力を作用させて紡糸する方法によれば、繊維径が小さく、比表面積の大きい金属酸化物繊維を紡糸することができるため好適である。
【0029】
また、紡糸液を紡糸した後、紡糸液に含まれるランタンとセリウムの酸化や、紡糸液に含まれるポリマーの除去を目的とした焼成を行い、本発明のLaとCeOを含む金属酸化物繊維を得ることができる。なお、焼成は、例えば、オーブン、焼結炉などの装置を用いて実施することができ、その温度は、100~1500℃が好ましく、200~1200℃がより好ましく、400~1000℃が更に好ましい。また、焼成時間は1時間以上が好ましい。
【0030】
得られた金属酸化物繊維を触媒用途に用いる際、そのまま用いてもよいが、金属酸化物繊維の取り扱い性向上のための成形や、強度向上のため、有機成分や無機成分を付与し金属酸化物繊維同士の接着をしてもよい。
【実施例0031】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
硝酸ランタン六水和物(6.90mmol)、硝酸セリウム六水和物(0.46mmol)、及びアセト酢酸エチル(7.36mmol)をエタノール(100mmol)に加えて1時間攪拌を行い、金属塩を溶解させ、溶液を得た。次いで、前記溶液1.67g、ポリビニルピロリドン溶液(溶媒:N,N-ジメチルホルムアミド、固形分濃度:20mass%)7.50g、N,N-ジメチルホルムアミド0.83gを混合して、紡糸液Aを調製した。
そして、得られた紡糸液Aを、ガスのせん断作用と電界の作用によって紡糸する方法により紡糸して、集積させ、金属酸化物繊維前駆体Aを形成した。なお、ガスのせん断作用と電界の作用によって紡糸する方法は、特開2012-154009号公報の実施例と同じ方法で実施した。詳細を以下に示す。
(紡糸条件)
液吐出ノズル(紡糸ノズル)からの紡糸液Aの吐出量:1.0g/時間
ガス吐出ノズルからの空気吐出風量:5L/分
ガス吐出ノズルからの吐出空気温度:25℃
液吐出ノズル(紡糸ノズル)への印加電圧:+10kV
紡糸室内の雰囲気:温度25℃、湿度20%RH
最後に、得られた金属酸化物繊維前駆体Aを空気雰囲気下、800℃まで2時間かけて昇温し、さらに800℃を保持した状態で2時間かけて焼成して熱処理し、LaとCeOが混在してなる金属酸化物繊維A(平均繊維径:230nm、平均繊維長:3.6μm、比表面積:18.5m/g)を得た。
なお、このようにして得た金属酸化物繊維Aをエネルギー分散型蛍光X線分析装置へ供し金属酸化物繊維の表面を測定することで得られた、金属酸化物繊維に含まれるLaのモル分率とCeのモル分率の比はLa:Ce=15:1であった。
【0033】
(実施例2)
硝酸ランタン六水和物(6.90mmol)、硝酸セリウム六水和物(0.86mmol)、及びアセト酢酸エチル(7.76mmol)をエタノール(100mmol)に加えて1時間攪拌を行い、金属塩を溶解させ、溶液を得た。次いで、前記溶液1.67g、ポリビニルピロリドン溶液(溶媒:N,N-ジメチルホルムアミド、固形分濃度:20mass%)7.50g、N,N-ジメチルホルムアミド0.83gを混合して、紡糸液Bを調製した。
そして、得られた紡糸液Bを、実施例1と同じ条件で、ガスのせん断作用と電界の作用によって紡糸する方法により紡糸して、集積させ、金属酸化物繊維前駆体Bを形成した。
最後に、得られた金属酸化物繊維前駆体Bを空気雰囲気下、800℃まで2時間かけて昇温し、さらに800℃を保持した状態で2時間かけて焼成して熱処理し、LaとCeOが混在してなる金属酸化物繊維B(平均繊維径:350nm、平均繊維長:3.2μm、比表面積:13.1m/g)を得た。
なお、このようにして得た金属酸化物繊維Aをエネルギー分散型蛍光X線分析装置へ供し金属酸化物繊維の表面を測定することで得られた、金属酸化物繊維に含まれるLaのモル分率とCeのモル分率の比はLa:Ce=8:1であった。
【0034】
(実施例3)
硝酸ランタン六水和物(6.90mmol)、硝酸セリウム六水和物(6.90mmol)、及びアセト酢酸エチル(13.8mmol)をエタノール(100mmol)に加えて1時間攪拌を行い、金属塩を溶解させ、溶液を得た。次いで、前記溶液1.67g、ポリビニルピロリドン溶液(溶媒:N,N-ジメチルホルムアミド、固形分濃度:20mass%)7.50g、N,N-ジメチルホルムアミド0.83gを混合して、紡糸液Cを調製した。
そして、得られた紡糸液Cを、実施例1と同じ条件で、ガスのせん断作用と電界の作用によって紡糸する方法により紡糸して、集積させ、金属酸化物繊維前駆体Cを形成した。
最後に、得られた金属酸化物繊維前駆体Cを空気雰囲気下、800℃まで2時間かけて昇温し、さらに800℃を保持した状態で2時間かけて焼成して熱処理し、LaとCeOが混在してなる金属酸化物繊維C(平均繊維径:390nm、平均繊維長:3.2μm、比表面積:18.4m/g)を得た。
なお、このようにして得た金属酸化物繊維Cをエネルギー分散型蛍光X線分析装置へ供し金属酸化物繊維の表面を測定することで得られた、金属酸化物繊維に含まれるLaのモル分率とCeのモル分率の比はLa:Ce=1:1であった。
【0035】
(比較例1)
Laのモル分率とCeモル分率の比がLa:Ce=8:1となるように硝酸ランタンと硝酸セリウムを水に溶かして混合した。その後、水を加熱により蒸発させて、得られた固体を100℃/hの割合で500℃まで昇温した後、500℃で5h温度を保持する条件で焼成し粉末を得た。この粉末を圧縮成形及び粉砕し、ふるいにかけて粒径1mmの金属酸化物粒子を得た。
なお、このようにして得た金属酸化物粒子をエネルギー分散型蛍光X線分析装置へ供し金属酸化物粒子の表面を測定することで得られた、金属酸化物粒子に含まれるLaのモル分率とCeのモル分率の比は、La:Ce=8:1であった。
以上のようにして調製した、実施例1~3の金属酸化物繊維、及び、比較例1の金属酸化物粒子の構成を、以下の表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例1~3で調製した金属酸化物繊維の触媒活性を、以下の方法で評価した。
【0038】
まず、石英製の管状流通式反応器(内径:9.5mm、外径:11.5mm、電気炉加熱部長さ:20cm)と、この反応器に流通させる、メタンからオレフィンを合成するための原料ガスとして、メタン:酸素のモル比が10:1である原料ガスを調製した。
次いで、メタンが熱により分解して発生した炭素が管状流通式反応器に析出するコーキング防止のため水を3.5mol%となるように原料ガスに添加した。
【0039】
次に、0.2gの金属酸化物繊維を管状流通式反応器に入れ、反応温度(管状流通式反応器の内部温度)を600℃、全圧を0.3MPaとし、原料ガス流量が0℃、1013hPaに換算した際に6000ml/minとなる条件で、管状流通式反応器に4時間の間、水を添加した原料ガスを流通させた。
【0040】
その後、反応器から流出したガスをサンプリングし、ガスクロマトグラフ法によって、サンプリングしたガス中のメタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロペン、ブタン、ブテン、一酸化炭素、二酸化炭素の濃度を測定した。測定された前述した各成分の濃度に基づいて、管状流通式反応器から流出したガスに含まれる物質のモル量を算出し、「メタンの転化率」と「C2+選択率」を算出した。
【0041】
なお、「メタンの転化率」とは、管状流通式反応器へ流通させたガスに含まれるメタンのモル量a(mol)と、管状流通式反応器から流出したガスに含まれるメタンのモル量a(mol)により、以下の式から算出できる。
(メタンの転化率)=(a-a)/a×100(%)
【0042】
また、「C2+選択率」とは、管状流通式反応器から流出したガスに含まれるメタンが反応して得られたエタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロペン、ブタン、ブテン、一酸化炭素、二酸化炭素のメタン換算の合計モル量b(mol)と、管状流通式反応器から流出したガスに含まれるオレフィンであるエタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロペン、ブタン、ブテンのメタン換算の合計モル量b(mol)により、以下の式から算出できる。なお、メタン換算のモル量は、それぞれの炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素のモル量にそれぞれの炭素数をかけ合わせる事によって得られる。
(C2+選択率)=(b/b)×100(%)
【0043】
実施例1~3で調製した金属酸化物繊維の「メタンの転化率」と「C2+選択率」を以下の表2に示す。なお、実施例1~3で調製した金属酸化物繊維を使用した評価において、管状流通式反応器の出口付近に、形崩れし排出された金属酸化物繊維は認められなかった。
【0044】
【表2】
【0045】
実施例1~3で調製した金属酸化物繊維のいずれも、気体流を受けて形崩れを起こすことがなく、触媒用途として使用するのに、十分な強度を有するものであった。
【0046】
また、実施例1~3で調製した金属酸化物繊維を用いることで、メタンが反応してオレフィンが高収率で得られたことから、これら金属酸化物繊維に触媒作用があることが確認できた。更に、実施例1~3の中で比較すると、金属酸化物に含まれるLaのモル分率とCeのモル分率の比がLa:Ce=1:1の金属酸化物繊維を触媒として用いた場合にメタンの転化率が最も高く、メタンを効率よく反応できることがわかった。
【0047】
次に、実施例2で調製した金属酸化物繊維、および、比較例1で調製した金属酸化物粒子の触媒活性を、以下の方法で評価した。
【0048】
原料ガス流量が0℃、1013hPaに換算した際に2000ml/minとなるように反応器に原料ガスを流通させたことを除いては、前述した測定方法と同様にして、管状流通式反応器に原料ガスを流通させ、「メタンの転化率」と「C2+選択率」を算出した。
【0049】
なお、比較例1で調製した金属酸化物粒子の評価においては、原料ガス流量が0℃、1013hPaに換算した際に2000ml/minとなるように反応器に原料ガスを流通させたことに加え、0.2gの金属酸化物の替わりに1.4gの金属酸化物粒子を管状流通式反応器に入れたことを除いては、前述した測定方法と同様にして、管状流通式反応器に原料ガスを流通させ、「メタンの転化率」と「C2+選択率」を算出した。
【0050】
実施例2で調製した金属酸化物繊維、ならびに、比較例1で調製した金属酸化物粒子の「メタンの転化率」と「C2+選択率」を以下の表3に示す。なお、実施例2で調製した金属酸化物繊維を使用した評価において、管状流通式反応器の出口付近に、形崩れし排出された金属酸化物繊維は認められなかった。
【0051】
【表3】
【0052】
実施例2と比較例1との結果から、比較例1の方が、実施例2よりもメタンの転化率と、C2+選択率がいずれも若干高いものであった。しかし、g単位当たりに換算した「メタンの転化率」と「C2+選択率」は、いずれも、実施例2で調製した金属酸化物繊維は、比較例1で調製した金属酸化物粒子よりも優れるものであった。以上のことから、本発明にかかる金属酸化物繊維は、少ない触媒使用量でオレフィンが高収率で得られる有用なものであることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の金属酸化物繊維は、気体を供給した際に金属酸化物が形崩れを起こしにくく金属酸化物繊維が飛び散ることが防止されていることから、メタンからエチレンやプロピレンを合成する触媒用途に用いることができる。