(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064229
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】機械学習装置及び微地絡監視装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/08 20200101AFI20240507BHJP
H02H 3/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G01R31/08
H02H3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172669
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】高見 和文
(72)【発明者】
【氏名】松下 典広
【テーマコード(参考)】
2G033
5G142
【Fターム(参考)】
2G033AA01
2G033AB02
2G033AC02
2G033AF05
2G033AG12
2G033AG15
5G142AB02
5G142AC06
(57)【要約】
【課題】微地絡への効率的な対処を可能とする学習モデルを構築できる機械学習装置及び当該学習モデルを用いた微地絡監視装置を提供すること。
【解決手段】機械学習装置1は、配電線101に接続された所定の開閉器103における期間P1における零相電流を示す零相電流情報と、所定の開閉器103における期間P1における零相電圧を示す零相電圧情報と、を入力データとして取得する入力データ取得部11と、基準時TS1における配電線101での微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因と、をラベルとして取得するラベル取得部12と、入力データとラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、配電線101での微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因と、を推定可能な学習モデルを構築する学習モデル構築部13と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線に接続された所定の開閉器における所定の基準時以前の所定の期間における零相電流を示す零相電流情報と、前記所定の開閉器における前記所定の基準時以前の前記所定の期間における零相電圧を示す零相電圧情報と、を入力データとして取得する入力データ取得部と、
前記所定の基準時における、前記配電線での微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因と、をラベルとして取得するラベル取得部と、
前記入力データと前記ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、前記配電線での前記微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因と、を推定可能な学習モデルを構築する学習モデル構築部と、
を備える機械学習装置。
【請求項2】
前記入力データ取得部は、気象情報を前記入力データとして取得可能である、請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項3】
前記入力データ取得部は、地形情報を前記入力データとして取得可能である、請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項4】
前記ラベル取得部は、前記微地絡への対処方法を前記ラベルとして更に取得可能であり、
前記学習モデル構築部は、前記入力データと前記ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、前記微地絡への対処方法を提示可能な前記学習モデルを構築可能である、請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項5】
前記ラベル取得部は、前記微地絡の継続期間を前記ラベルとして更に取得可能であり、
学習モデル構築部は、前記入力データと前記ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、前記微地絡の継続期間を推定可能な学習モデルを構築可能である、請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の機械学習装置で構築した前記学習モデルを用いた微地絡監視装置であって、
前記所定の開閉器における零相電流を示す零相電流情報と、前記所定の開閉器における零相電圧を示す零相電圧情報と、を推定用データとして取得可能な推定用データ取得部と、
前記推定用データと前記学習モデルとに基づいて、前記配電線での前記微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因と、を推定可能な推定部と、
を備える微地絡監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習装置及び微地絡監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配電線に地絡が発生した場合には、速やかに事故発生箇所(以下、「事故点」という)を修復して、当該配電線における電力供給の復旧を図ることが要求される。また、地絡が発生する前段階である微地絡が発生した時点で原因を除去し、地絡事故の未然防止を図ることが望ましい。
【0003】
そこで、微地絡の発生を検出するとともに、事故点を特定可能なシステムが知られている。例えば、特許文献1の微地絡区間標定システムは、各送電線に設けられた複数の地絡保護リレーを備えている。各地絡保護リレーは、零相電流監視部及び零相電圧監視部を有しており、各零相電流監視部及び零相電圧監視部の監視結果に基づいて微地絡事故を検出可能となっている。また、微地絡区間標定システムは、各地絡保護リレーが微地絡事故の検出時に出力する微地絡検出信号等に基づいて、微地絡事故の発生区間を特定可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のシステムでは、微地絡の発生要因(例えば、樹木の接触、設備の破損)を特定することができない。この場合、発生した微地絡への対処方法を即座に判断することができず、微地絡への効率的な対処が困難となるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、微地絡への効率的な対処を可能とする学習モデルを構築できる機械学習装置及び当該学習モデルを用いた微地絡監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の機械学習装置は、配電線に接続された所定の開閉器における所定の基準時以前の所定の期間における零相電流を示す零相電流情報と、前記所定の開閉器における前記所定の基準時以前の前記所定の期間における零相電圧を示す零相電圧情報と、を入力データとして取得する入力データ取得部と、前記所定の基準時における、前記配電線での微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因と、をラベルとして取得するラベル取得部と、前記入力データと前記ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、前記配電線での前記微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因と、を推定可能な学習モデルを構築する学習モデル構築部と、を備える。
【0008】
第2の発明の機械学習装置は、第1の発明において、前記入力データ取得部は、気象情報を前記入力データとして取得可能である。
【0009】
第3の発明の機械学習装置は、第1の発明において、前記入力データ取得部は、地形情報を前記入力データとして取得可能である。
【0010】
第4の発明の機械学習装置は、第1の発明において、前記ラベル取得部は、前記微地絡への対処方法を前記ラベルとして取得可能であり、前記学習モデル構築部は、前記入力データと前記ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、前記微地絡への対処方法を提示可能な前記学習モデルを構築可能である。
【0011】
第5の発明の機械学習装置は、第1の発明において、前記ラベル取得部は、前記微地絡の継続期間を前記ラベルとして更に取得可能であり、学習モデル構築部は、前記入力データと前記ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、前記微地絡の継続期間を推定可能な学習モデルを構築可能である。
【0012】
第6の発明の微地絡監視装置は、第1~第5の発明のいずれか1に記載の機械学習装置で構築した前記学習モデルを用いた微地絡監視装置であって、前記所定の開閉器における零相電流を示す零相電流情報と、前記所定の開閉器における零相電圧を示す零相電圧情報と、を推定用データとして取得可能な推定用データ取得部と、前記推定用データと前記学習モデルとに基づいて、前記配電線での前記微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因と、を推定可能な推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、微地絡への効率的な対処を可能とする学習モデルを構築できる機械学習装置及び当該学習モデルを用いた微地絡監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る微地絡監視システムの全体構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る機械学習装置の機能ブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る微地絡監視装置の機能ブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る機械学習装置の動作のフローチャートを示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る微地絡監視装置の動作のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、微地絡監視システム100の全体構成を示す図である。本実施形態の微地絡監視システム100は、所定の地域Aを監視対象としている。
【0016】
まず、
図1に示すように、地域Aには、複数の電柱102と、各電柱102同士を繋ぐ複数の配電線101とが設けられている。各電柱102には、各配電線101間の電気の流れを遮断可能な開閉器103がそれぞれ設けられている。なお、微地絡監視システム100の監視対象となる地域Aは、特に限定されるものではなく、任意の地域を設定可能である。
【0017】
各開閉器103は、各開閉器103における零相電流及び零相電圧を検出可能である。各開閉器103は、検出された零相電流等が、所定の閾値を超過した場合には、当該開閉器103によって地絡の発生区間が電力系統から切り離されて停電する。これにより、漏電事故の発生を抑制することができる。
【0018】
また、零相電流及び零相電圧が、各開閉器103が動作する零相電流及び零相電圧の閾値を超えない範囲で変動する微地絡が発生する場合がある。微地絡の発生時には、各開閉器103の動作は起こらない。しかし、微地絡の発生は、地絡事故の兆候であると考えられることから、微地絡の発生段階で、何らかの処置を施すことが望ましい。
【0019】
そこで、微地絡監視システム100は、微地絡の発生等を監視することが可能となっている。
【0020】
微地絡監視システム100は、機械学習装置1と、微地絡監視装置2とを備える。
【0021】
機械学習装置1と微地絡監視装置2とは1対1の組とされて、通信可能に接続されている。機械学習装置1と微地絡監視装置2とはネットワークNを介して、互いに接続可能である。ネットワークNは、例えば、LAN(Local Area Network)や、インターネット、公衆電話網、あるいは、これらの組み合わせである。ネットワークNにおける具体的な通信方式や、有線接続及び無線接続のいずれであるか等については、特に限定されない。あるいは、機械学習装置1と微地絡監視装置2とは、ネットワークを用いた通信ではなく、コネクタを介して直接接続してもよい。
【0022】
微地絡監視システム100は、所定の推定対象時TEにおける、各配電線101における微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因と、を推定可能である。
【0023】
続いて、機械学習装置1について
図2を参照しながら説明する。
図2は機械学習装置1の機能ブロックを示す図である。
【0024】
機械学習装置1は、教師あり学習により学習モデルを構築可能である。機械学習装置1によって構築される学習モデルは、微地絡監視装置2により、地域Aにおける微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因とを推定するために利用可能である。
図2に示すように、機械学習装置1は、入力データ取得部11と、ラベル取得部12と、記憶部14と、学習モデル構築部13とを備える。
【0025】
入力データ取得部11は、地域Aにおける各種情報を入力データとして取得する。入力データとしては、地域A内の開閉器103ごとの零相電流情報及び零相電圧情報と、地域Aの気象情報と、地域Aの地形情報と、を含むデータ群が挙げられる。
【0026】
零相電流情報及び零相電圧情報は、所定の基準時TS1以前の所定の期間(以下、「期間P1a」という)における、各開閉器103における零相電流及び零相電圧に関する情報を使用可能である。期間P1aの長さは、特に限定されるものではなく、例えば、数分間であってもよいし、数時間であってもよいし、数日間であってもよい。零相電流情報及び零相電圧情報としては、例えば、零相電流及び零相電圧の大きさ、方向、周波数等が挙げられる。零相電流情報及び零相電圧情報は、各開閉器103に設けられたセンサ(図示略)により検知される。機械学習装置1は、ネットワークNを介して、各開閉器103と接続されている。機械学習装置1は、各開閉器103のセンサにより検知された零相電流情報及び零相電圧情報を取得可能となっている。例えば、機械学習装置1は、各開閉器103のセンサにより検知された零相電流情報及び零相電圧情報を、ネットワークNを介して取得可能となっている。なお、機械学習装置1は、各開閉器103と有線又は無線で直接接続されていてもよい。
【0027】
なお、基準時TS1とは、過去に微地絡が発生した時点のうち、ユーザが任意に選定した時点をいう。例えば、2022年8月1日15時00分から同日の16時30分にかけて微地絡が発生していたことが判明している場合には、ユーザは、同日の15時00分から16時30分までの期間に含まれる任意の時点を、基準時TS1として選定可能である。
【0028】
また、零相電流及び零相電圧は、地絡が生じていない通常状態では小さい値に調整されている。しかし、三相交流の各相のうち何れかの相と地面の電位差が減少すると、三相の対地電圧の大きさや位相が不揃いとなり、零相電流及び零相電圧が増加する。零相電流及び零相電圧が所定の閾値を超えて地絡が起こると、上述のように、各開閉器103によって地絡の発生区間が電力系統から切り離されて停電する。
【0029】
気象情報は、所定の基準時TS1以前の所定の期間(以下、「期間P1b」という)における、地域Aの気象に関する情報を使用可能である。なお、期間P1bの長さは、特に限定されるものではなく、数時間であってもよいし、数日間であってもよい。また、零相電流情報及び零相電圧情報に関する期間P1aの長さと、気象情報に関する期間P1bの長さとは、同一である必要はない。
【0030】
気象情報としては、天気や天候に関する情報等が挙げられる。天気や天候に関する情報としては、例えば、気圧、風速、風向、気温、降雨量、発雷の有無、日照量、台風の有無、台風の進路、台風通過後の天気等が挙げられる。気象情報としては、例えば、気象観測所の発表値を用いることが可能である。気象観測所の発表値は、気象情報データベース120に記憶されている。機械学習装置1は、ネットワークN等を通じて気象情報データベース120にアクセス可能である。機械学習装置1は、気象観測所の発表値を気象情報データベース120から取得可能であるとともに、気象情報として取得可能である。なお、気象情報は、これに限定されるものではなく、例えば、気圧、風速、風向、気温、降雨量、日照量等を測定する測定機器から得られる値であってもよい。その場合、機械学習装置1は、気象情報を取得する測定機器と通信可能に接続され、当該測定機器から気象情報を取得可能となるようにする。
【0031】
地形情報は、地域Aの地形に関する情報である。地形情報としては、例えば、山地等の地形の種類や、樹木や田畑の位置、建造物の高さや形状、位置等の情報が挙げられる。これらの地形情報は、地形
図131から取得可能である。地形
図131は、地域Aの地形図であり、各電柱102及び各配電線101の配置に関する情報と、森林132、田畑133等の配置に関する情報と、を含んでいる。地形
図131は、地形情報を管理する地形情報管理システム130に記憶されている。機械学習装置1は、ネットワークNを介して地形情報管理システム130と通信可能である。機械学習装置1は、地形
図131を、地形情報管理システム130から取得可能である。なお、地形情報は、地形
図131に基づき取得されるものに限定されるものではなく、例えば、衛星画像等の解析により取得される市街地や森林等を区分けした情報であってもよい。また、
図1では、便宜上、地形
図131において、電柱102、配電線101、森林132、田畑133等が示されている箇所に対して、それらに対応する符号を付している。
【0032】
ラベル取得部12は、基準時TS1における、地域A内での、微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因とをラベルとして取得可能である。
【0033】
機械学習装置1は、例えば、ネットワークNを介してユーザの情報端末140と接続可能である。ユーザが情報端末140を操作して、基準時TS1における、地域A内での、微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因とに関する情報をそれぞれ入力すると、ラベル取得部12は、情報端末140及びネットワークNを介して、基準時TS1における、地域A内での、微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因に関する情報とをそれぞれ取得可能である。
【0034】
例えば、微地絡の発生の有無及び微地絡の発生区間は、ユーザが、各開閉器103における零相電流及び零相電圧の値のデータに基づいて判断することで取得可能である。微地絡の発生要因は、ユーザが、微地絡の発生現場の写真や自ら微地絡の発生現場で観察を行った結果に基づいて判断することで取得可能である。
【0035】
また、当該微地絡の発生時における各開閉器103の零相電流情報及び零相電圧情報は、ユーザが各開閉器103のセンサによる測定結果を確認することで取得可能である。当該微地絡の発生時における地域Aの地形情報は、比較的変化が少ないと考えられるため、地域Aの地形情報を予め機械学習装置1の記憶部14に記憶させておき、これを読み出して取得することが可能である。当該微地絡の発生時における地域Aの天候情報は、ユーザが、微地絡の発生現場の写真や自ら微地絡の発生現場で観察を行った結果に基づいて判断することで取得可能である。
【0036】
なお、微地絡の発生要因としては、例えば、絶縁不良(雨水による各配電線101の絶縁性能の低下等)、樹木接触(強風による枝葉の接触)、鳥獣接触(鳥類の営巣等)、設備破損(落雷による碍子の割れ等)などが想定される。
【0037】
ここで、入力データ取得部11によって取得されるデータ群(零相電流情報、零相電圧情報、地形情報及び気象情報)と、ラベル取得部12によって取得されるラベル(微地絡の発生の有無、当該微地絡の発生区間及び当該微地絡の発生要因)との関係性について説明する。
【0038】
基準時TS1における各配電線101での微地絡の発生の有無、当該微地絡の発生区間及び当該微地絡の発生要因は、期間P1における各開閉器103の零相電流情報及び零相電圧情報により推定可能である。
【0039】
例えば、各開閉器103の期間P1における零相電圧及び零相電流の大きさや位相変化に基づいて、基準時TS1における、微地絡の発生の有無や、当該開閉器103から見た微地絡の発生区間の方向を推定可能である。そして、複数の開閉器103における当該開閉器103から見た微地絡の発生区間の方向の情報に基づいて、微地絡の発生区間を推定可能である。
【0040】
各開閉器103の期間P1における零相電圧及び零相電流の変動の大きさは、設備の損傷の程度と関連があると考えらえる。また、設備の損傷の程度は、微地絡の発生要因によって異なると考えらえる。よって、各開閉器103の期間P1における零相電流情報及び零相電圧情報は、微地絡の発生要因に影響すると考えられる。
【0041】
基準時TS1における各配電線101での微地絡の発生の有無、当該微地絡の発生区間及び当該微地絡の発生要因は、地域Aの地形情報により推定可能である。
【0042】
例えば、地域Aに森林132又は田畑133が存在するか否かは、樹木接触や鳥獣接触が発生する可能性に影響すると考えられる。このため、地形情報は、微地絡の発生の有無や当該微地絡の発生要因に影響すると考えられる。各配電線101の近傍に森林132又は田畑133が存在するか否かは、当該配電線101において樹木接触や鳥獣接触が起こる可能性に影響すると考えられる。よって、地形情報は、当該配電線101において微地絡が発生する可能性(換言すると、微地絡の発生区間が、当該配電線101を含むものである可能性)に影響すると考えられる。
【0043】
基準時TS1における各配電線101での微地絡の発生の有無、当該微地絡の発生区間及び当該微地絡の発生要因は、期間P1における地域Aの気象情報により推定可能である。
【0044】
例えば、降雨量が大きいと、雨水による絶縁性能低下による微地絡が発生しやすくなると考えられるため、気象情報は、微地絡の発生の有無や当該微地絡の発生要因に影響すると考えられる。風速が大きいほど、配電線101の近傍に樹木がある区間(例えば、森林132がある区間)において、微地絡が発生しやすくなると考えられる。よって、気象情報は、微地絡の発生区間に影響すると考えられる。
【0045】
さらに、各開閉器103における零相電流情報及び零相電圧情報と、地域Aの地形情報と、地域Aの気象情報とを併せて考慮することで、微地絡の発生の有無と、微地絡の発生区間と、微地絡の発生要因とをより正確に推定することができる。また、このような、微地絡の発生の有無と、微地絡の発生区間と、微地絡の発生要因とを教師データとして学習させるので、精度の高い学習モデルを構築させることができる。
【0046】
記憶部14は、入力データ取得部11によって取得された各入力データ(各開閉器103の零相電流情報及び零相電圧情報と、地域Aの地形情報と、地域Aの気象情報)を互いに紐づけられた1組のデータ群として記憶可能である。そして、記憶部14は、上記1組のデータ群(各入力データ)と、当該入力データに対するラベル(微地絡の発生の有無、微地絡の発生区間及び微地絡の発生要因)と、を互いに紐づけて1組の教師データとして記憶可能である。また、記憶部14は、学習モデル構築部13が構築した学習モデルを記憶可能である。
【0047】
学習モデル構築部13は、記憶部14に記憶された入力データと、ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因と、を推定するための学習モデルを構築可能である。学習モデル構築部13は、微地絡監視装置2との間で情報の送受信が可能である。例えば、学習モデル構築部13は、学習モデル構築部13が構築した学習モデルを微地絡監視装置2に送信可能である。
【0048】
学習モデル構築部13は、例えば、サポート・ベクター・マシン(Support Vector Machine)、決定木(Decision Tree)、ニューラルネットワーク(Neural Network)等を用いて実現可能である。
【0049】
続いて、微地絡監視装置2について
図3を参照しながら説明する。
図3は、微地絡監視装置2の機能ブロック図である。微地絡監視装置2は、所定の推定対象時TEにおける、地域A内での、微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因とを推定可能である。
【0050】
推定対象時TE1は、現時点とすることが可能である。現時点とは、微地絡監視装置2(詳しくは、後述する推定用データ取得部21)が、推定用データの取得処理を実行している時点のことをいう。なお、推定対象時TEは、現時点に限定されるものではなく、例えば、現時点よりも過去の時点であってもよい。
【0051】
図3に示すように、微地絡監視装置2は、制御部20と、記憶部31と、通信部32と、表示部33と、を備える。
【0052】
制御部20は、微地絡監視装置2の全体を制御する部分であり、各種プログラムを、ROM、RAM、フラッシュメモリ又はハードディスク(HDD)等の記憶領域から適宜読み出して実行することにより、本実施形態における各種機能を実現している。制御部20は、CPUであってよい。制御部20は、推定用データ取得部21と、推定部22と、出力部23と、を有する。
【0053】
推定用データ取得部21は、推定部22が、微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因とを推定するための推定用データを取得可能である。推定用データ取得部21は、零相電流情報取得部211と、零相電圧情報取得部212と、気象情報取得部213と、地形情報取得部214とを有する。
【0054】
零相電流情報取得部211は、各開閉器103と通信可能となっている。零相電流情報取得部211は、各開閉器103のセンサによる検知結果を取得可能である。零相電流情報取得部211は、機械学習した際に用いた教師データに含まれる零相電流情報とは別個に、現時点以前の期間である所定の測定期間M1における、地域Aの電力系統の零相電流情報を取得可能である。なお、測定期間M1の長さは、特に限定されるものではなく、数秒間であってもよいし、数時間であってもよいし、数日間であってもよい。また、零相電流情報取得部211と各開閉器103とは、ネットワークNとを介して接続されていてもよいし、有線や無線で直接接続されていてもよい。
【0055】
零相電圧情報取得部212は、各開閉器103と通信可能となっている。零相電圧情報取得部212は、各開閉器103のセンサの検知結果を取得可能である。零相電圧情報取得部212は、機械学習した際に用いた教師データに含まれる零相電圧情報とは別個に、測定期間M1における、地域Aの電力系統の零相電圧情報を取得可能である。また、零相電圧情報取得部212と各開閉器103とは、ネットワークNとを介して接続されていてもよいし、有線や無線で直接接続されていてもよい。
【0056】
気象情報取得部213は、ネットワークN等を通じて気象情報データベース120にアクセス可能となっている。気象情報取得部213は、気象情報データベース120から、機械学習した際に用いた教師データに含まれる気象情報とは別個に、現時点以前の期間である所定の測定期間M2における、地域Aの気象情報(気象観測所の発表値)を取得可能である。なお、気象情報取得部213が取得可能な気象情報は、気象観測所の発表値に限定されるものではなく、例えば、気圧、風速、風向、気温、降雨量、日照量等を測定する測定機器から得られる値であってもよい。その場合、機械学習装置1は、気象情報を取得する測定機器と通信可能に接続され、当該測定機器から気象情報を取得可能となるようにする。
【0057】
なお、測定期間M2の長さは、特に限定されるものではなく、例えば、1週間未満であってもよいし、1週間以上であってもよい。零相電流情報及び零相電圧情報の測定期間M1と、気象情報の測定期間M2とは、同じ長さである必要はなく、それぞれ異なる長さであってもよい。
【0058】
地形情報取得部214は、地形情報管理システム130とネットワークNを介して接続されている。地形情報取得部214は、地形情報管理システム130から地域Aの地形情報を取得可能である。地域Aの地形情報は、機械学習した際に用いた教師データに含まれる情報であってもよく、該教師データに含まれる情報とは別個に取得される現時点での最新の地形情報であってもよい。
【0059】
推定部22は、推定用データ取得部21によって取得された推定用データと、機械学習装置1(学習モデル構築部13)により構築された学習モデルとに基づいて、推定対象時TEにおける、地域Aでの、微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因とを推定可能である。
【0060】
出力部23は、推定部22によって推定された、地域Aの微地絡の発生の有無と、微地絡の発生区間と、微地絡の発生要因とを表示部26に出力可能である。
【0061】
記憶部31は、機械学習装置1から取得した学習モデルを記憶可能である。記憶部31は、推定用データ取得部21によって取得された零相電流情報と、零相電圧情報と、地形情報と、気象情報とを1組の入力データとするとともに、当該入力データに対して推定された微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因とをラベルとして記憶可能である。
【0062】
通信部32は、機械学習装置1との間でデータを送受信可能である。例えば、微地絡監視システム100は、学習モデル構築部13によって構築された学習モデルを、機械学習装置1から微地絡監視装置2に通信部32を通じて送信可能である。また、微地絡監視システム100は、推定用データ取得部21によって取得された推定用データ群を、微地絡監視装置2から機械学習装置1に通信部32を通じて送信可能である。微地絡監視システム100は、推定部22によって推定された微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因とを、微地絡監視装置2から機械学習装置1に通信部32を通じて送信可能である。
【0063】
表示部33は、モニタであって、制御部20の出力部23から出力された地域Aにおける微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因とについての推定結果を表示可能である。
【0064】
続いて、本実施形態に係る微地絡監視システム100における機械学習時の動作について説明する。
図4は、この機械学習時の機械学習装置1の動作を示すフローチャートである。なお、
図4のフローチャートは、機械学習装置1により所定の周期で繰り返し実行される。
【0065】
図4に示すように、ステップS11では、入力データ取得部11は、期間T1aにおける各開閉器103の零相電流情報及び零相電圧情報と、地域Aの地形情報と、期間T1bにおける地域Aの気象情報と、を含む1組のデータ群を入力データとして取得する。続いてステップS12に進む。
【0066】
ステップS12では、ラベル取得部12は、基準時TS1における、地域Aでの、微地絡の発生の有無と、微地絡の発生区間と、微地絡の発生要因とをラベルとして取得する。続いてステップS13に進む。
【0067】
ステップS13では、学習モデル構築部13は、入力データとラベルとの組を教師データとして受け付ける。続いてステップS14に進む。
【0068】
ステップS14では、学習モデル構築部13は、ステップS13で受け付けた教師データを用いて機械学習を実行する。
【0069】
ステップS15では、学習モデル構築部13は、機械学習を終了するか機械学習を繰り返すかを判定する。学習モデル構築部13は、機械学習を繰り返すと判定した場合には、NO判定し、ステップS11に戻り各処理を繰り返す。学習モデル構築部13は、機械学習を終了すると判定した場合には、YES判定し、ステップS16に進む。なお、機械学習を終了させる条件は任意に定めることが可能である。例えば、予め定められた回数だけ機械学習を繰り返した場合に、機械学習を終了させるようにしてもよい。
【0070】
ステップS16は、学習モデル構築部13は、機械学習を終了し、学習モデルの構築を完了する。続いてステップS17に進む。
【0071】
ステップS17では、機械学習装置1の記憶部14は、その時点までの機械学習により構築された学習モデルを記憶する。これにより、例えば、新たな教師データを取得した場合に、学習モデルに対して更なる機械学習を行うことができる。その後、本処理を終了する。
【0072】
ステップS18では、機械学習装置1の通信部15は、機械学習装置1の記憶部14に記憶された学習モデルを、ネットワークN等を介して微地絡監視装置2に送信する。例えば、機械学習装置1(通信部15)は、微地絡監視装置2から学習モデルを要求された場合に、機械学習装置1の記憶部14に記憶された学習モデルを、微地絡監視装置2に対して送信可能である。その後、本処理を終了する。
【0073】
なお、微地絡監視装置2は、微地絡監視装置2の通信部32を通じて学習モデルを受信すると、微地絡監視装置2の記憶部31が、当該学習モデルを記憶可能である。
【0074】
続いて、微地絡監視装置2による、推定対象時TEにおける、地域Aでの、微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因とを推定する処理の一例について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、微地絡監視装置2による、推定対象時TEにおける地域Aでの、微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因とを推定する処理の流れを示すフローチャートである。なお、
図5のフローチャートは、微地絡監視装置2により所定の周期で繰り返し実行される。
【0075】
図5に示すように、ステップS21では、推定用データ取得部21は、測定期間M1における各開閉器103における零相電流情報及び零相電圧情報と、地域Aの地形情報と、測定期間M2における地域Aの気象情報と、を含むデータ群を、1組の推定用データとして取得する。続いてステップS22に進む。なお、記憶部31は、推定用データ取得部21に取得された推定用データを記憶可能である。
【0076】
ステップS22では、推定部22は、ステップS21で取得された推定用データと、機械学習装置1から送信された学習モデルとに基づいて、推定対象時TE1における、微地絡の発生の有無を推定する。続いてステップS23に進む。なお、微地絡監視装置2の記憶部31は、推定部22による微地絡の発生の有無についての推定結果を記憶可能である。
【0077】
ステップS23では、ステップS22において、推定部22が、微地絡の発生ありと推定したか否かを判定する。推定部22が微地絡の発生ありと判定した場合には、YES判定してステップS25に進む。推定部22が微地絡の発生なしと判定した場合には、NO判定して本処理を終了する。
【0078】
ステップS25では、推定部22は、ステップS21で取得された推定用データと、機械学習装置1から送信された学習モデルと、に基づいて、推定対象時TE1における、微地絡の発生区間を推定する。続いて、ステップS26に進む。なお、微地絡監視装置2の記憶部31は、推定部22による微地絡の発生区間についての推定結果を記憶可能である。
【0079】
ステップS26では、推定部22は、ステップS21で取得された推定用データと、機械学習装置1から送信された学習モデルと、に基づいて、推定対象時TE1における、微地絡の発生要因を推定する。その後、ステップS27に進む。なお、微地絡監視装置2の記憶部31は、推定部22による微地絡の発生要因についての推定結果を記憶可能である。
【0080】
ステップS27では、出力部23は、各ステップS22,S25,S26において推定部22が推定した結果を、表示部33に出力する。この結果、推定部22による各種推定結果等が表示部33に表示される。これにより、微地絡監視システム100は、その監視結果をユーザに知らせることができる。その後、本処理を終了する。
【0081】
以上説明した本実施形態に係る微地絡監視システム100の機械学習装置1又は微地絡監視装置2によれば、以下の効果を奏する。
【0082】
本実施形態にかかる機械学習装置1は、配電線101に接続された所定の開閉器103における期間P1における零相電流を示す零相電流情報と、所定の開閉器103における期間P1における零相電圧を示す零相電圧情報と、を入力データとして取得する入力データ取得部11と、基準時TS1における配電線101における微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因と、をラベルとして取得するラベル取得部12と、入力データとラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因と、を推定可能な学習モデルを構築する学習モデル構築部13と、を備える。
【0083】
これにより、微地絡の発生の有無や当該微地絡の発生区間に加えて、当該微地絡の発生要因を推定可能な学習モデルを構築することができる。したがって、微地絡への対処方法を判断し易くすることができるため、微地絡に効率的に対処可能とすることができる。
【0084】
また、微地絡の場合、通常の地絡の場合と比較して、零相電圧及び零相電圧の変動は微小なものである。したがって、微地絡の発生要因等を零相電圧及び零相電圧の変動に基づいて精度の高い推定を行うことは、困難性が高いと考えられる。しかし、本実施形態に係る機械学習装置1によれば、各開閉器103における零相電流及び微地絡の発生要因等を教師データとして微地絡の発生の有無と当該微地絡の発生区間と当該微地絡の発生要因とを推定可能な学習モデルを構築することができる。これにより、微地絡の発生の有無と当該微地絡の発生区間と当該微地絡の発生要因とをより精度よく推定可能な学習モデルを構築することができる。
【0085】
本実施形態にかかる機械学習装置1において、入力データ取得部11は、気象情報を入力データとして取得可能である。
【0086】
これにより、気象状態を考慮して微地絡の発生の有無と当該微地絡の発生区間と当該微地絡の発生要因とをより精度よく推定可能な学習モデルを構築することができる。
【0087】
本実施形態にかかる機械学習装置1において、入力データ取得部11は、地形情報を前記入力データとして取得可能である。
【0088】
これにより、地形情報を考慮して微地絡の発生の有無と当該微地絡の発生区間と当該微地絡の発生要因とをより精度よく推定可能な学習モデルを構築することができる。
【0089】
本実施形態に係る微地絡監視装置2は、機械学習装置1で構築した学習モデルを用いた微地絡監視装置2であって、各開閉器103における零相電流を示す零相電流情報と、各開閉器103における零相電圧を示す零相電圧情報と、を推定用データとして取得可能な推定用データ取得部21と、推定用データと学習モデルとに基づいて、微地絡の発生の有無と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因と、を推定する推定部22と、を備える。
【0090】
これにより、本実施形態の学習モデル推定用のデータ群を入力することで、微地絡の発生の有無や当該微地絡の発生区間のみならず、当該微地絡の発生要因についても推定することができる。したがって、微地絡に対してより効率的に対応することができる。また、微地絡の発生の有無と当該微地絡の発生区間と当該微地絡の発生要因とをより精度よく推定することができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく適宜変更が可能である。
【0092】
・上記実施形態では、ラベル取得部12は、微地絡の発生の有無と、微地絡の発生区間と、微地絡の発生要因とをラベルとして取得可能とされているが、これに限定されるものではない。例えば、ラベル取得部12は、微地絡への対処方法をラベルとして取得可能であり、学習モデル構築部13は、入力データ取得部11が取得する入力データと微地絡への対処方法を含むラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、微地絡への対処方法を提示可能な学習モデルを構築可能である構成としてもよい。なお、微地絡への対処方法とは、例えば、緊急性、作業内容、必要な道具、交換部品、人員、作業時間等に関する情報が想定される。
【0093】
入力データ取得部11によって取得されるデータ群(零相電流情報、零相電圧情報、地形情報及び気象情報)と、ラベルとしての微地絡への対処方法との関係性について説明する。
【0094】
微地絡への対処方法は、期間P1における各開閉器103の零相電流情報及び零相電圧情報と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因とのうち少なくともいずれかにより推定可能である。例えば、期間P1における零相電流情報及び零相電圧情報と地域Aの地形情報と地域Aの気象情報とは、上述のとおり、微地絡の発生要因に影響すると考えられる。また、微地絡への対処方法は、微地絡の発生要因によって異なると考えられる。よって、各開閉器103の期間P1における零相電流情報及び零相電圧情報と、当該微地絡の発生区間と、当該微地絡の発生要因とは、微地絡への対処方法に影響すると考えられる。
【0095】
したがって、学習モデル構築部13は、入力データ取得部11が取得する入力データと微地絡への対処方法を含むラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、微地絡への対処方法を提示可能な学習モデルを構築可能である。これにより、例えば道具や人員を迅速に手配したり、事故現場の巡回計画を作成し易くしたりすることができるため、微地絡へのより効率的な対処が可能となる。
【0096】
・他にも、ラベル取得部12は、微地絡の継続期間をラベルとして取得可能であり、学習モデル構築部13は、入力データ取得部11が取得する入力データと微地絡の継続期間を含むラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、微地絡の継続期間を推定可能な学習モデルを構築可能であってもよい。
【0097】
入力データ取得部11によって取得されるデータ群(零相電流情報、零相電圧情報、地形情報及び気象情報)と、ラベルとしての微地絡の継続期間との関係性について説明する。
【0098】
微地絡の継続期間は、期間P1における各開閉器103の零相電流情報及び零相電圧情報と、期間P1における地域Aの地形情報と、期間P1における地域Aの気象情報と、のうち少なくともいずれかにより推定可能である。例えば、期間P1における零相電流情報及び零相電圧情報と、期間P1における地域Aの地形情報と、期間P1における地域Aの気象情報とは、上述のとおり、微地絡の発生要因に影響すると考えられる。また、微地絡の継続期間は、微地絡の発生要因によって異なると考えられる。例えば、微地絡の継続期間は、微地絡の発生要因が、雨水による絶縁性能低下等の一過性のものである場合と碍子破損等の一過性でないものである場合とでは異なると考えられる。よって、各開閉器103の期間P1における零相電流情報及び零相電圧情報と、期間P1における地域Aの地形情報と、期間P1における地域Aの気象情報とは、微地絡の継続期間に影響すると考えられる。
【0099】
したがって、学習モデル構築部13は、入力データ取得部11が取得する入力データと微地絡の継続期間を含むラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、微地絡の継続期間を推定可能な学習モデルを構築可能である。これにより、微地絡監視装置2により微地絡の発生有りと推定された場合に、ユーザが対処を行うべきか否かを判断し易くすることができる。このため、微地絡へのより効率的な対処が可能となる。
【0100】
・上記実施形態では、機械学習装置1は、各開閉器103における零相電流情報及び零相電圧情報と、地形情報と、気象情報とを入力データとして取得して教師あり学習を行っていたが、地形情報と気象情報とは、入力データとして必須のものではない。ただし、推定等の精度を向上させる点で、入力データとして地形情報や気象情報についても利用することが好ましい。
【0101】
・上記実施形態では、機械学習装置1と微地絡監視装置2とが1対1の組として通信可能に接続されているが、これに限定されるものではない。例えば、1つの機械学習装置1が複数の微地絡監視装置2とネットワークNを介して通信可能に接続され、当該一の機械学習装置1が、各微地絡監視装置2の機械学習を実施するようにしてもよい。その際、機械学習装置1の各機能を、適宜複数のサーバに分散する、分散処理システムとしてもよい。また、クラウド上で仮想サーバ機能等を利用して、機械学習装置1の各機能を実現してもよい。
【0102】
・上記実施形態では、微地絡監視システム100は、1つの機械学習装置1を備えているが、微地絡監視システムは、複数の機械学習装置1を備えるものであってもよい。微地絡監視システムが機械学習装置1を複数備える場合には、いずれかの機械学習装置1が記憶した学習モデルを、他の機械学習装置1との間で共有するようにしてもよい。学習モデルを複数の機械学習装置1で共有するようにすれば、各機械学習装置1において分散して学習を行うことが可能となるので、微地絡監視システムは、より効率的に学習を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0103】
1 機械学習装置
2 微地絡監視装置
11 入力データ取得部
12 ラベル取得部
13 学習モデル構築部
21 推定用データ取得部
22 推定部
100 微地絡監視システム
101 配電線
103 開閉器