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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064241
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
A61B8/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172684
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川畑 健一
(72)【発明者】
【氏名】吉川 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 敬章
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD19
4C601EE04
4C601HH08
4C601JB36
4C601JB38
4C601JC17
4C601JC21
4C601JC23
4C601JC37
4C601KK02
4C601KK10
4C601KK24
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、弾性特性測定用のプッシュ波の音響特性を生体組織の物理的な特性に応じて適切に設定することである。
【解決手段】プッシュ波送信部14は、被検体50の生体組織にプッシュ波を送信する。トラッキング波送受信部16は、生体組織にトラッキング波を送信し、生体組織で反射した反射超音波を受信する。弾性解析部30は、生体組織にプッシュ波によって発生したせん断波の伝搬速度を測定し、伝搬速度に基づいて、生体組織の弾性特性を測定する。弾性解析部30は、トラッキング波送受信部16が受信した反射超音波によって得られる測定用信号に基づいて、せん断波の伝搬速度を測定する。制御部42は、測定用信号に含まれる不要成分に応じて、弾性特性を再測定するか否かを判定する。弾性特性を再測定するとの判定がされたときに、超音波診断装置100は、プッシュ波の音響特性を不要成分に応じて変更して弾性特性を再測定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波診断装置であって、
生体組織にプッシュ波を送信するプッシュ波送信部と、
前記生体組織にトラッキング波を送信し、前記生体組織で反射した反射超音波を受信するトラッキング波送受信部と、
前記生体組織に前記プッシュ波によって発生したせん断波の伝搬速度を測定し、前記伝搬速度に基づいて、前記生体組織の弾性特性を測定する弾性解析部であって、前記トラッキング波送受信部が受信した前記反射超音波によって得られる測定用信号に基づいて前記伝搬速度を測定する、弾性解析部と、
前記測定用信号に含まれる不要成分に応じて、前記弾性特性を再測定するか否かを判定する制御部と、を備え、
前記弾性特性を再測定するとの判定がされたときに、前記超音波診断装置は、前記測定用信号に含まれる不要成分に応じて前記プッシュ波の音響特性を変更し、前記弾性特性を再測定することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、
前記制御部は、
前記測定用信号に含まれる不要成分としてのノイズ成分に基づいて、前記弾性特性を再測定するか否かを判定することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、
前記制御部は、
前記測定用信号に含まれる不要成分としての反射波成分に基づいて、前記弾性特性を再測定するか否かを判定することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
超音波診断装置であって、
生体組織にプッシュ波を送信するプッシュ波送信部と、
前記生体組織にトラッキング波を送信し、前記生体組織で反射した反射超音波を受信するトラッキング波送受信部と、
前記生体組織に前記プッシュ波によって発生したせん断波の伝搬速度を測定し、前記伝搬速度に基づいて、前記生体組織の弾性特性を測定する弾性解析部であって、前記トラッキング波送受信部が受信した前記反射超音波によって得られる測定用信号に基づいて前記伝搬速度を測定する、弾性解析部と、
前記弾性特性に基づく弾性画像を表示する表示処理部と、
前記超音波診断装置は、前記弾性画像が表示されたときに行われたユーザの操作に応じて、前記プッシュ波の音響特性を変更して前記弾性特性を再測定することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1または請求項4に記載の超音波診断装置であって、
前記測定用信号に含まれるノイズ成分に対するせん断波信号成分の大きさの比率が所定の閾値未満であるときに、再測定において前記プッシュ波送信部は、先に前記弾性特性を測定したときよりも前記プッシュ波の波連長を長くし、あるいは1回の測定ごとの前記プッシュ波の送信回数を多くすることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1または請求項4に記載の超音波診断装置であって、
前記測定用信号に含まれるせん断波信号成分と反射波成分との分離度が所定の閾値未満であるときに、再測定において前記プッシュ波送信部は、先に前記弾性特性を測定したときよりも前記プッシュ波の波連長を短くし、あるいは1回の測定ごとの前記プッシュ波の送信回数を少なくすることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項1または請求項4に記載の超音波診断装置であって、
前記測定用信号に基づいて前記生体組織の超音波画像データを生成し、
先に前記弾性特性を測定したときに生成した前記超音波画像データに基づく先測定画像に、前記弾性特性を再測定したときに生成した前記超音波画像データに基づく再測定画像を重ねた合成画像を示す合成画像データ、を生成する画像合成部を備え、
前記合成画像は、
前記先測定画像および前記再測定画像に対して混合処理が施された画像であり、
前記混合処理は、
前記先測定画像の画素値と、前記再測定画像の画素値とを、画素の位置に応じて重み付け合成する処理であることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
超音波診断装置であって、
音響特性が異なる複数種のプッシュ波を生体組織に送信するプッシュ波送信部と、
前記生体組織にトラッキング波を送信し、前記生体組織で反射した反射超音波を受信するトラッキング波送受信部と、
前記プッシュ波によって前記生体組織に発生したせん断波の伝搬速度を測定し、前記伝搬速度に基づいて、前記生体組織の弾性特性を測定する弾性解析部であって、前記トラッキング波送受信部が受信した前記反射超音波によって得られる測定用信号に基づいて前記伝搬速度を測定する、弾性解析部と、
複数種の前記プッシュ波のうちの1つに対して得られた第1の前記弾性特性と、複数種の前記プッシュ波のうちの他の1つに対して得られた第2の前記弾性特性のうち、信頼性の高い一方を、最終的に求められた前記弾性特性として決定する制御部と、を備え、
前記信頼性は、前記測定用信号に含まれる不要成分に基づいて決定されることを特徴とする超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、生体組織の弾性特性を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の生体組織にせん断波を発生させ、せん断波の伝搬速度を測定し、せん断波の伝搬速度に基づいて生体組織の弾性特性を測定する超音波診断装置がある。この超音波診断装置では、超音波振動子等から生体組織にプッシュ波が送信され、プッシュ波によって生体組織にせん断波が励振される。生体組織における各点のせん断波による変位を超音波の送受信によって測定することで、せん断波の伝搬速度が測定され、せん断波の伝搬速度に基づいて生体組織の弾性特性が測定される。
【0003】
以下の特許文献1~3には、生体組織の弾性特性を測定する超音波診断装置が記載されている。特許文献1には、せん断波の波面位置の測定によって得られたデータの信頼度を評価し、信頼度が所定の条件を満たさないデータを、他のデータによって補間することが記載されている。特許文献2には、周波数の異なる機械的パルス(プッシュ波)をタイミングを異ならせて生体組織に送信することが記載されている。特許文献3には、ユーザの手の運動によってプローブにパルス振動を与えることで被検体の組織にせん断波を励振する超音波診断装置が記載されている。この超音波診断装置では、プローブで超音波を送受信し、プローブで受信された超音波に基づいて生体組織におけるせん断波の伝搬速度分布が計測され、さらには弾性率分布が計測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-221512号公報
【特許文献2】特表2016-506846号公報
【特許文献3】特開2015-198843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
せん断波の伝搬速度を測定するために取得される測定用信号には、ノイズ成分および反射波成分等の不要成分が含まれている。不要成分が大きい場合には、測定値に誤差が生じてしまう。不要成分の大きさは、生体組織の物理的な特性やプッシュ波の音響特性によって定まる。生体組織の物理的な特性に対し、プッシュ波の音響特性が適切でない場合には、弾性特性の測定誤差が大きくなってしまうことがある。
【0006】
本発明の目的は、弾性特性測定用のプッシュ波の音響特性を生体組織の物理的な特性に応じて適切に設定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、超音波診断装置であって、生体組織にプッシュ波を送信するプッシュ波送信部と、前記生体組織にトラッキング波を送信し、前記生体組織で反射した反射超音波を受信するトラッキング波送受信部と、前記生体組織に前記プッシュ波によって発生したせん断波の伝搬速度を測定し、前記伝搬速度に基づいて、前記生体組織の弾性特性を測定する弾性解析部であって、前記トラッキング波送受信部が受信した前記反射超音波によって得られる測定用信号に基づいて前記伝搬速度を測定する、弾性解析部と、前記測定用信号に含まれる不要成分に応じて、前記弾性特性を再測定するか否かを判定する制御部と、を備え、前記弾性特性を再測定するとの判定がされたときに、前記超音波診断装置は、前記測定用信号に含まれる不要成分に応じて前記プッシュ波の音響特性を変更し、前記弾性特性を再測定することを特徴とする。
【0008】
望ましくは、前記制御部は、前記測定用信号に含まれる不要成分としてのノイズ成分に基づいて、前記弾性特性を再測定するか否かを判定する。
【0009】
望ましくは、前記制御部は、前記測定用信号に含まれる不要成分としての反射波成分に基づいて、前記弾性特性を再測定するか否かを判定する。
【0010】
また、本発明は、超音波診断装置であって、生体組織にプッシュ波を送信するプッシュ波送信部と、前記生体組織にトラッキング波を送信し、前記生体組織で反射した反射超音波を受信するトラッキング波送受信部と、前記生体組織に前記プッシュ波によって発生したせん断波の伝搬速度を測定し、前記伝搬速度に基づいて、前記生体組織の弾性特性を測定する弾性解析部であって、前記トラッキング波送受信部が受信した前記反射超音波によって得られる測定用信号に基づいて前記伝搬速度を測定する、弾性解析部と、前記弾性特性に基づく弾性画像を表示する表示処理部と、前記超音波診断装置は、前記弾性画像が表示されたときに行われたユーザの操作に応じて、前記プッシュ波の音響特性を変更して前記弾性特性を再測定することを特徴とする。
【0011】
望ましくは、前記測定用信号に含まれるノイズ成分に対するせん断波信号成分の大きさの比率が所定の閾値未満であるときに、再測定において前記プッシュ波送信部は、先に前記弾性特性を測定したときよりも前記プッシュ波の波連長を長くし、あるいは1回の測定ごとの前記プッシュ波の送信回数を多くする。
【0012】
望ましくは、前記測定用信号に含まれるせん断波信号成分と反射波成分との分離度が所定の閾値未満であるときに、再測定において前記プッシュ波送信部は、先に前記弾性特性を測定したときよりも前記プッシュ波の波連長を短くし、あるいは1回の測定ごとの前記プッシュ波の送信回数を少なくする。
【0013】
望ましくは、前記測定用信号に基づいて前記生体組織の超音波画像データを生成し、先に前記弾性特性を測定したときに生成した前記超音波画像データに基づく先測定画像に、前記弾性特性を再測定したときに生成した前記超音波画像データに基づく再測定画像を重ねた合成画像を示す合成画像データ、を生成する画像合成部を備え、前記合成画像は、前記先測定画像および前記再測定画像に対して混合処理が施された画像であり、前記混合処理は、前記先測定画像の画素値と、前記再測定画像の画素値とを、画素の位置に応じて重み付け合成する処理である。
【0014】
また、本発明は、超音波診断装置であって、音響特性が異なる複数種のプッシュ波を生体組織に送信するプッシュ波送信部と、前記生体組織にトラッキング波を送信し、前記生体組織で反射した反射超音波を受信するトラッキング波送受信部と、前記プッシュ波によって前記生体組織に発生したせん断波の伝搬速度を測定し、前記伝搬速度に基づいて、前記生体組織の弾性特性を測定する弾性解析部であって、前記トラッキング波送受信部が受信した前記反射超音波によって得られる測定用信号に基づいて前記伝搬速度を測定する、弾性解析部と、複数種の前記プッシュ波のうちの1つに対して得られた第1の前記弾性特性と、複数種の前記プッシュ波のうちの他の1つに対して得られた第2の前記弾性特性のうち、信頼性の高い一方を、最終的に求められた前記弾性特性として決定する制御部と、を備え、前記信頼性は、前記測定用信号に含まれる不要成分に基づいて決定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、弾性特性測定用のプッシュ波の音響特性を生体組織の物理的な特性に応じて適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】超音波診断装置の構成を示す図である。
図2】受信部によって生成される複数のフレームデータを概念的に示す図である。
図3】プッシュ波の時間波形を模式的に示す図である。
図4A】断層面上のある測定点におけるSW信号の時間波形を示す図である。
図4B】断層面上のある測定点におけるSW信号の時間波形を示す図である。
図4C】断層面上のある測定点におけるSW信号の時間波形を示す図である。
図5】波連長を変更するか否かの判定を、ノイズ成分に対するせん断波信号成分の比率に基づいて行う場合の調整処理を示すフローチャートである。
図6】波連長を変更するか否かの判定を、せん断波の進行波と反射波との分離度に基づいて行う場合の調整処理を示すフローチャートである。
図7】再測定をするか否かの判定、および関心領域全体について再測定するか否かの判定を、制御部が実行する場合のフローチャートである。
図8】再測定をするか否かの判定、および関心領域全体について再測定するか否かの判定を、制御部が実行する場合のフローチャートである。
図9】合成画像を模式的に示す図である。
図10】応用実施形態に係る選択測定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示されている同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
【0018】
図1には、本発明の実施形態に係る超音波診断装置100の構成が示されている。超音波診断装置100は、プローブ駆動部10、超音波プローブ12、受信部18、情報処理部20、ディスプレイ(表示装置)40、制御部42および操作部44を備えている。操作部44は、ボタン、レバー、キーボード、マウス等を備えてもよい。操作部44は、ディスプレイ40に設けられるタッチパネルであってもよい。
【0019】
情報処理部20は、弾性解析部30、Bモード画像生成部32、画像合成部34、表示処理部36および記憶部38を備えている。情報処理部20および制御部42は、プログラムを実行するプロセッサによって構成されてよい。情報処理部20は、プログラムを実行することで、各構成要素(弾性解析部30、Bモード画像生成部32、画像合成部34および表示処理部36)を構成してよい。各構成要素は、記憶部38に記憶されたデータを読み込んで演算を実行し、演算の結果得られたデータを記憶部38に記憶してよい。制御部42は、ユーザによる操作部44の操作に応じて、プローブ駆動部10、受信部18および情報処理部20を制御してよい。
【0020】
超音波プローブ12は、プッシュ波送信部14と、トラッキング波送受信部16を備えている。プローブ駆動部10は、プッシュ波送信部14およびトラッキング波送受信部16から超音波を発生させる信号として、それぞれ、プッシュ波駆動信号および送信信号を出力する。プッシュ波送信部14は、プローブ駆動部10から出力されたプッシュ波駆動信号に応じて被検体50にプッシュ波を送信し、被検体50にせん断波を励振する。プッシュ波送信部14は、被検体50内に定められた焦点にプッシュ波を収束させてよい。
【0021】
トラッキング波送受信部16は、プローブ駆動部10から出力された送信信号に基づいて、被検体50の生体組織の状態や、せん断波の伝搬状態を観測するための超音波としてトラッキング波を送信する。トラッキング波送受信部16は、被検体50内で反射して生じた反射超音波を受信する。
【0022】
トラッキング波送受信部16は、複数の超音波振動子を備えている。プローブ駆動部10は、各超音波振動子に出力する送信信号の遅延時間を調整し、複数の超音波振動子から被検体50に、トラッキング波として平面波を送信してよい。各超音波振動子は、被検体50内で反射して生じた反射超音波を受信し、電気信号である受信信号に変換して受信部18に出力する。
【0023】
受信部18は、各超音波振動子から出力された受信信号に対して整相加算等の合成処理を施し、複数のy軸方向受信ビームデータを生成する。これら複数のy軸方向受信ビームデータは、被検体50の深さ方向(y軸方向)に向けられてx軸方向に並ぶ複数の受信ビームに対応する。受信部18は、複数のy軸方向受信ビームデータに基づいて、時間軸上に配列されたフレームデータを生成し、弾性解析部30およびBモード画像生成部32に出力する。
【0024】
図2には、受信部18によって生成された複数のフレームデータが概念的に示されている。この図では、プッシュ波が送信された励振時刻t=Tpよりも後の基準時刻t0から時間t0+(n-1)・δの間に、時間δの間隔でn個のフレームデータF0~Fn-1が生成された例が示されている。各フレームデータは、x軸方向に配列された複数の受信ビームに対応する複数のy軸方向受信ビームデータ54を含む。
【0025】
各フレームデータにはxy座標が対応付けられている。すなわち、1つのy軸方向受信ビームデータ54には、対応する受信ビームのx座標が対応付けられている。また、1つのy軸方向受信ビームデータ54の時間軸t’には、y座標が対応付けられている。ここで、被検体50の生体組織における超音波の速さをcとすれば、y=c・t’/2の関係がある。1つのフレームデータにおける測定点P(x,y)に対応するデータは、測定点P(x,y)における反射超音波の強度を示す。
【0026】
また、図2には、被検体50の生体組織を構成する組織粒子Mが、せん波断によって時間経過と共にy軸方向に変位し、振動する様子が概念的に示されている。測定点P(x,y)におけるy軸方向変位は、その測定点P(x,y)を通るxy平面に垂直な直線60に対するy軸方向変位である。
【0027】
弾性解析部30は、次のような処理に基づいて生体組織の弾性特性を測定する。すなわち、弾性解析部30は、次の(i)~(iii)の処理に基づいてxy平面上での弾性率分布を求める。
(i)時間軸上に配列された複数のフレームデータのそれぞれについて、xy平面上におけるせん断波を検出する。
(ii)せん断波が一定距離を伝搬するのに要する時間をxy平面上の各点Pに対して求めることで、xy平面上でのせん断波の伝搬速度の分布を求める。
(iii)xy平面上でのせん断波の伝搬速度の分布に基づいてxy平面上での弾性率分布を求める。
【0028】
弾性解析部30は、例えば次のような処理によって、xy平面上におけるせん弾波のy軸方向伝搬速度分布を求めてよい。すなわち、弾性解析部30は、時間軸上で時間間隔δで隣接する2つのフレームデータに基づいて、時間δ当たりのy軸方向の変位を求め、せん断波による振動のy軸方向速度成分Vy(x,y)およびVy(x,y+Δ)を求める。ただし、Vy(x,y+Δ)は、点(x,y)からy軸方向にΔだけ離れた位置におけるy軸方向速度成分を示す。
【0029】
弾性解析部30は、y軸方向速度成分Vy(x,y)およびVy(x,y+Δ)の時間波形を求める。弾性解析部30は、さらに、y軸方向速度成分Vy(x,y)の時間波形と、y軸方向速度成分Vy(x,y+Δ)の時間波形の時間軸上での移動量に基づいて、測定点P(x,y)におけるせん断波のy軸方向伝搬速度を求め、xy平面上におけるせん弾波のy軸方向伝搬速度分布を求める。弾性解析部30は、xy平面上におけるせん弾波のy軸方向伝搬速度分布に基づいて、xy平面上における弾性率の分布を求める。弾性率は、伝搬速度の自乗に比例する値であり、生体組織の硬さを表す。
【0030】
弾性解析部30は、xy平面上における弾性率分布を表す弾性画像データを生成し、画像合成部34に出力する。弾性画像データは、例えば、弾性率が小さい領域程、波長の短い色彩が施され、弾性率が大きい程、波長の長い色彩が施された弾性画像を示す画像データであってよい。
【0031】
弾性解析部30は、上記(i)~(iii)の手順に従うその他の処理に基づいて弾性率分布を求めてもよい。
【0032】
Bモード画像生成部32は、時間軸上に配列されたフレームデータに基づいて、時間軸上に配列されたBモード画像データを生成し、画像合成部34に出力する。Bモード画像データは、トラッキング波送受信部16から送信された平面波が伝搬した断層面におけるエコー画像を示すデータである。
【0033】
画像合成部34は、同一時刻に対応する弾性画像データおよびBモード画像データに基づいて、同一時刻に対応するBモード画像に弾性画像を重ねて示したBモード弾性画像を生成する。この画像は、Bモード画像に、弾性率に応じた色彩を施した画像であってよい。画像合成部34は、Bモード弾性画像データを表示処理部36に出力する。表示処理部36は、Bモード弾性画像データを映像信号に変換し、ディスプレイ40に出力する。ディスプレイ40は、映像信号に基づいてBモード弾性画像を表示する。
【0034】
画像合成部34は、ユーザによる操作部44の操作に従って、Bモード画像データのみを表示処理部36に出力し、Bモード画像のみをディスプレイ40に表示させてもよい。画像合成部34は、ユーザによる操作部44の操作に従って、弾性画像データのみを表示処理部36に出力し、弾性画像のみをディスプレイ40に表示させてもよい。
【0035】
プッシュ波の焦点の位置は、ユーザによって設定されてよい。焦点の位置の設定は、例えば、表示処理部36がBモード画像をディスプレイ40に表示させている状態で、Bモード画像が取得された断層面上に焦点の位置を設定する操作を行うことで行われてよい。
【0036】
弾性率分布は、ユーザによって指定された関心領域について求められてよい。関心領域の設定は、例えば、表示処理部36がBモード画像をディスプレイ40に表示させている状態で、Bモード画像が取得された断層面上に関心領域を設定する操作を行うことで生成される。この場合、トラッキング波送受信部16は、断層面上の領域のうち、弾性率分布が取得される領域についてのみ、トラッキング波を送受信してもよい。
【0037】
プッシュ波の音響特性には、波連長および振幅がある。図3には、プッシュ波の時間波形が模式的に示されている。横軸は時間を示し、縦軸はプッシュ波が引き起こす変位の瞬時値を示す。波連長は、プッシュ波が1回送信されるときにおけるプッシュ波の周期数を示す。Bモード弾性画像を取得するに際して、ユーザは操作部44を操作することによって、プッシュ波の波連長および振幅を設定してよい。生体組織に与えられる負担を軽減するため、許容される最大値に振幅を一定に維持した上で、波連長が様々な値に設定されてもよい。制御部42は、波連長および振幅の各設定値を操作部44から読み込み、プッシュ波送信部14から送信されるプッシュ波の振幅および波連長が設定値に応じた値となるように、プローブ駆動部10を制御する。
【0038】
生体組織には、せん断波の進行波と反射波が伝搬する。反射波は、生体組織内の媒質が不連続である領域で進行波の一部が反射することで生じる。弾性率の測定に寄与するのは進行波である。図4A図4Cには、振幅が同一であり波連長が異なる3通りの条件について、断層面上のある測定点P(x,y)におけるSW(Shear Wave)信号の時間波形が示されている。横軸は時間を示し、縦軸はSW(Shear Wave)信号の値、すなわち生体組織の変位を示す。
【0039】
SW信号は、せん断波の伝搬速度を測定するための測定用信号である。SW信号はせん断波の進行波および反射波に基づく生体組織の変位を示す。また、SW信号にはノイズ成分が含まれている。進行波は、せん弾波の伝搬速度を測定するためのせん断波信号成分であり、反射波(反射波成分)およびノイズ成分は、せん弾波の伝搬速度の測定に寄与させるべきではない不要成分である。
【0040】
図4Aには、プッシュ波の波連長が短か過ぎる場合の例が示されている。この例では、進行波Wtによる変位が十分でなく、測定される弾性率の精度がノイズ成分Nsによって低下する可能性がある。図4Bには、プッシュ波の波連長が長過ぎる場合の例が示されている。この例では、進行波Wtと反射波Wrが時間軸上で重なり合って干渉し、弾性率を測定する際の空間分解能が低下する可能性がある。図4Cには、プッシュ波の波連長が適切である場合の例が示されている。この例では、進行波による変位が十分であり、進行波と反射波が時間軸上で分離されている。
【0041】
本実施形態に係る超音波診断装置100では、SW信号や弾性率分布を測定した結果に基づいて、プッシュ波の振幅および波連長を調整する調整処理が実行される。図5には、調整処理を示すフローチャートが示されている。
【0042】
最初に制御部42は、操作部44におけるユーザの操作に基づいて、被検体50の断層面に対して関心領域(図5図7および図10において「ROI」と表記される。ROIは、Region Of Interestを省略したものである。)を設定する。また、制御部42は、送信されるプッシュ波の波連長および振幅を予め定められた初期値に設定する。プッシュ波の波連長および振幅の各設定値が、操作部44におけるユーザの操作に応じて、操作部44から読み込まれ、プッシュ波の波連長および振幅が各設定値に設定されてもよい。
【0043】
プッシュ波送信部14は、制御部42によって設定された波連長および振幅を有するプッシュ波を送信する(S101)。トラッキング波送受信部16はトラッキング波を被検体50に送信し、被検体50内でトラッキング波が反射して生じた反射超音波を受信する(S102)。
【0044】
トラッキング波送受信部16は、各超音波振動素子から受信部18に受信信号を出力し、受信部18は、各超音波振動子から出力された受信信号に基づいてフレームデータを生成する。トラッキング波送受信部16は、トラッキング波の送受信を繰り返し実行し、受信部18は、時間軸上で配列されるフレームデータを生成する。
【0045】
弾性解析部30は、時間軸上で配列される複数フレームのフレームデータに基づいてSW信号を生成する。SW信号は、関心領域内で代表される測定点P(x0,y0)(代表点)における信号であってよい。弾性解析部30は、SW信号についての信号対雑音比(以下、SNRという)を求める(S103)。SNRは、SW信号に含まれるノイズ成分に対するせん断波信号成分の比率を表す。また、弾性解析部30は、時間軸上で配列される複数フレームのフレームデータに基づいて弾性画像データを生成し、画像合成部34に出力する。
【0046】
上記では、1つの代表点P(x0,y0)におけるSW信号によって、SNRが求められる例が示された。SNRは、複数n個の代表点P(x0,y0)~P(xn,yn)のそれぞれについて求められるSW信号のSNRの統計値であってもよい。ここで、統計値には、平均値、中央値、最頻値等がある。
【0047】
Bモード画像生成部32は、受信部18から出力されたフレームデータに基づいて、Bモード画像データを生成し、画像合成部34に出力する。画像合成部34は、弾性解析部30から出力された弾性画像データと、Bモード画像生成部32から出力されたBモード画像データに基づいてBモード弾性画像を生成する。画像合成部34は、Bモード弾性画像データを表示処理部36に出力する。表示処理部36は、Bモード弾性画像をディスプレイ40に表示させる(S104)。
【0048】
表示処理部36は、Bモード弾性画像をディスプレイ40に表示させると共に(S104)、制御部42から出力される問い合わせ情報をディスプレイ40に表示させる(S105,S106)。問い合わせ情報には、再測定するか否かをユーザに問い合わせる情報と、関心領域全体について再測定するか否かを問い合わせる情報がある。
【0049】
表示処理部36は、再測定するか否かを問い合わせる情報をディスプレイ40に表示させる(S105)。この情報が表示されたときに、再測定をしない旨の情報が操作部44から入力された場合、超音波診断装置100は測定処理を終了する。一方、再測定をする旨の情報が操作部44から入力された場合、表示処理部36は、関心領域(ROI)全体について再測定するか否かを問い合わせる情報をディスプレイ40に表示させる(S106)。この情報が表示されたときに、関心領域全体について再測定をする旨の情報が操作部44から入力された場合、制御部42はステップS101の処理を実行する。
【0050】
一方、関心領域全体ではなく関心領域内の一部分について再測定をする旨の情報が操作部44から入力された場合、制御部42は、以下のようにプッシュ波の音響特性を変更した再測定のための制御を実行する。すなわち、制御部42は、SW信号について求められたSNRが閾値Th1未満であるか否かを判定する(S107)。制御部42は、SNRが閾値Th1未満であるときは、先に設定された波連長よりも波連長を長く設定し(S108)、ステップS111の処理に進む。SNRが閾値Th1以上であるときは、制御部42は、SW信号について求められたSNRが閾値Th2を超えるか否かを判定する(S109)。制御部42は、SNRが閾値Th2を超えるときは、先に設定された波連長よりも波連長を短く設定し(S110)、ステップS111の処理に進む。制御部42は、SNRが閾値Th1以上、閾値Th2以下であるときは、波連長を先に設定された長さに維持したままステップS111の処理に進む。
【0051】
ステップS108の処理は、先に設定された波連長のK倍(Kは2以上の整数)に波連長を設定する処理であってよい。また、ステップS110の処理は、先に設定された波連長のJ分の1倍(Jは2以上の整数)に波連長を設定する処理であってよい。
【0052】
ステップS111において、制御部42は、再測定領域の設定を行う(S107)。
再測定領域の設定は、例えば、表示処理部36がBモード画像をディスプレイ40に表示させている状態で、断層面上に再測定領域を設定する操作を行うことで行われる。この際、先に設定された関心領域内の一部の領域として再測定領域を設定するようユーザに指示する情報を、表示処理部36がディスプレイ40に表示させてもよい。
【0053】
再測定領域の設定が行われた後(S111)、超音波診断装置100は、再測定領域について再測定処理(S112)を実行する。再測定処理は、再測定領域に対して、ステップS101~S104と同様の処理を実行するものである。
【0054】
このような処理によれば、超音波診断装置100は、Bモード弾性画像が表示されているときに行われたユーザの操作に応じて弾性特性を再測定する。すなわち、Bモード弾性画像がディスプレイ40に表示された上で、測定を再度行うか否かの選択がユーザによって行われる。さらに、関心領域全体に対して再測定を行うか、関心領域の一部分に対して再測定を行うかの選択がユーザによって行われる。ユーザの知識や経験に従って再測定に関する設定が行われるため、超音波診断装置100による演算処理のみでは判定が困難な場合であっても、弾性率分布が適切に取得され得る。
【0055】
また、このような処理によれば、SNRが閾値Th1よりも小さく、図4Aの例に示されているように、測定される弾性率の精度がノイズ成分Nsによって低下してしまう可能性がある場合には、先に設定された長さよりも波連長が長くされる。
【0056】
SNRが閾値Th2よりも大きい場合には、先に設定された長さよりも波連長を短くし、弾性率を測定する際の空間分解能が図4Bの例に示されているように低下することが防止される。
【0057】
SNRが閾値Th1以上、閾値Th2以下であり、図4Cの例に示されているように、進行波による変位が十分であり、せん断波の進行波と反射波が時間軸上で分離されている可能性がある場合には、波連長は先に設定された長さに維持される。
【0058】
したがって、本実施形態に係る超音波診断装置100によれば、適切な波連長が設定された上で、再測定領域について弾性率分布が求められるため、弾性率分布が高精度に求められる。
【0059】
なお、ステップS109の判定に代えて、せん断波の進行波と反射波との分離度に基づいて、波連長を短くするか否かの判定が行われてもよい。図6には、この場合に超音波診断装置100で実行される調整処理のフローチャートが示されている。制御部42は、SW信号について求められたSNRが閾値Th1未満であるか否かを判定し(S107)、SNRが閾値Th1以上であるときは、Bモード画像データと弾性画像データに基づいて、反射波分離度Dを求める(S113)。反射波分離度Dは、せん断波の進行波と反射波とが分離されている度合い(分離度合い)を示す。反射波分離度Dは、例えば、Bモード画像データが示す画像の境界線と、弾性画像が示す画像の境界線との近似度で表されてよい。
【0060】
制御部42は、Bモード画像データに対して、Bモード画像の境界線を抽出する処理を実行し、弾性画像データに対して、弾性画像の境界線を抽出する処理を実行する。制御部42は、Bモード画像の境界線と、弾性画像の境界線に対して相関演算を施し、Bモード画像の境界線と、弾性画像の境界線との相関値(境界線相関値)を反射波分離度Dとして求める。
【0061】
また、制御部42は、予め取得された学習データによって構築される学習モデルに対して、Bモード画像データと弾性画像データを当てはめて、反射波分離度Dを求めてもよい。学習データは、例えば、過去に様々な被検体50に対して取得されたBモード画像データ、断層画像データおよび境界線相関値の組を複数組含むデータであってよい。
【0062】
制御部42は、反射波分離度Dが所定の閾値Th3未満であるか否かを判定する(S114)。制御部42は、反射波分離度Dが所定の閾値Th3未満であるときは、先に設定された波連長よりも波連長を短く設定し(S115)、ステップS111の処理に進む。制御部42は、反射波分離度Dが閾値Th3以上であるときは、波連長を先に設定された長さに維持したままステップS111の処理に進む。
【0063】
図5および図6に示された処理では、再測定するか否かを問い合わせる情報が、ステップS105においてディスプレイ40に表示され、この情報が表示されたときにおける操作に応じた処理を制御部42が実行する。また、ステップS106において関心領域全体について再測定するか否かを問い合わせる情報がディスプレイ40に表示され、この情報が表示されたときにおける操作に応じた処理を制御部42が実行する。このような問い合わせ情報の表示に応じた処理を制御部42が実行する代わりに、制御部42は、再測定をするか否かの判定、および関心領域全体について再測定するか否かの判定を自ら実行する処理に基づいて実行してもよい。
【0064】
図7には、そのような処理のフローチャートが示されている。ステップS205において制御部42は、例えば、SW信号に基づいて再測定をするか否かを判定する。例えば、SW信号のSNRが所定の閾値Tha未満であるときは、再測定をするとの判定をしてもよい。また、制御部42は、反射波分離度Dを求め、反射波分離度Dが所定の閾値Thb未満であるときは、再測定をするとの判定をしてもよい。さらに、制御部42は、SW信号のSNRが所定の閾値Tha未満であり、かつ、反射波分離度Dが所定の閾値Thb未満であるときには、再測定をするとの判定をしてもよい。制御部42は、再測定しないとの判定をした場合には処理を終了し、再測定するとの判定をした場合には、ステップS206の処理に進む。
【0065】
ステップS206では、例えば、制御部42は、関心領域を複数のサブ関心領域にN分割し、各サブ関心領域について反射波分離度Di(i=1~N)を求める。そして、反射波分離度Diが所定の閾値Thc未満である領域の数が所定数L以上であるときは、関心領域全体について再測定を行うとの判定をする。一方、制御部42は、反射波分離度Diが所定の閾値Thc未満である領域の数が所定数L未満であるときは、再測定領域に対する再測定をするステップS107以降の処理に進む。
【0066】
図8のフローチャートに示される処理は、図6に示されたステップS105およびS106を、制御部42が実行する処理(S205およびS206)に置き換えたものである。
【0067】
図5図8に示されたステップS101の処理は、所定の波連長を有するプッシュ波を一定時間内に所定回数だけ送信する処理であってよい。この場合、ステップS108において波連長を長くする代わりに、波連長は一定とし、一定時間内のプッシュ波送信回数を先のプッシュ波送信回数よりも増加させて再測定処理(S112)を実行する処理を実行してもよい。一定時間内のプッシュ波送信回数は、1回の測定ごとの送信回数である。また、制御部42は、ステップS110またはS115において波連長を短くする代わりに、波連長は一定とし、一定時間内のプッシュ波送信回数を先のプッシュ波送信回数よりも減少させて再測定処理(S112)を実行する処理を実行してもよい。
【0068】
次に、図5図8に示された再測定処理(S112)において、ディスプレイ40に表示される画像について説明する。再測定処理において、制御部42は、Bモード弾性画像と、再測定領域に対して生成されたBモード弾性画像(以下、再測定画像という)とを重ねた合成画像を表示する処理を画像合成部34に実行させる。
【0069】
図9には合成画像62が模式的に示されている。図9の破線64は関心領域の外周を示し、図9の一点鎖線66は再測定領域の外周を示している。破線64の外側はBモード画像である。破線64の内側は、Bモード弾性画像に再測定画像が重ねられた合成画像である。
【0070】
画像合成部34は、Bモード弾性画像の各画素値Aと、再測定処理によって生成された再測定画像の各画素値Bについて、次の(数1)で表される混合処理を実行して合成画素値Cを求める。
【0071】
(数1)C=(1-α)・A+α・B
【0072】
ここで、混合率αは、再測定画像の画素値を合成画像の画素値に寄与させる度合いを示す。混合率αは、再測定領域内の位置に応じて値が決定される。すなわち、混合率αは、測定点P(x,y)の座標値(x,y)に関する関数であり、1以上、0以下の値を有する。
【0073】
混合率αは、再測定領域の重心から外周に向かうにつれて1から0に近付くように決定されてもよい。また、再測定領域の外周から所定の距離だけ内側の位置から外側に向かうにつれて1から0に近付き、外周で0となるように決定されてよい。
【0074】
また、画像合成部34は、Bモード弾性画像上の領域のうち、再測定画像と最も近似度の高い領域に、再測定画像を重ねる処理を実行してもよい。具体的に、画像合成部34は、Bモード弾性画像に対する再測定画像の位置を変化させながら、各位置に対する相関値を求める。画像合成部34は、Bモード弾性画像と再測定画像の位置関係が、相関値が最大となる位置関係となるように、混合処理を実行してもよい。
【0075】
このように、超音波診断装置100は、測定用信号としてのSW信号に基づいて生体組織のBモード弾性画像データ(超音波画像データ)を生成する画像合成部34を備えている。画像合成部34は、先に弾性特性を測定したときに生成したBモード弾性画像データに基づく先測定画像に、弾性特性を再測定したときに生成したBモード弾性画像データに基づく再測定画像を重ねた合成画像を示す、合成画像データを生成する。
【0076】
合成画像は、先測定画像および再測定画像に対して混合処理が施された画像であり、混合処理は、先測定画像の画素値と再測定画像の画素値とを、(数1)に従って画素の位置に応じて重み付け合成する処理である。
【0077】
また、画像合成部34は、Bモード弾性画像上の領域と、再測定画像との近似度が最も大きくなるように、再測定画像を変形させてもよい。変形は、例えば、ある特定方向に再測定画像を引き延ばしたり、収縮させたりすることで行われてよい。具体的に、画像合成部34は、再測定画像の形状を変化させながら、Bモード弾性画像に対する相関値を求める。画像合成部34は、相関値が最大となるように再測定画像を変形させた後、混合処理を実行してもよい。
【0078】
図10には、本発明の応用実施形態に係る選択測定処理のフローチャートが示されている。選択測定処理は、関心領域を複数の分割関心領域に分割し、各分割関心領域について、プッシュ波の音響特性が異なる2種類の測定処理を実行するものである。各分割関心領域については、2種類の音響特性のうちSNRが良好である方の測定結果が選択され、関心領域全体についてのBモード弾性画像が表示される。以下の説明では、プッシュ波の音響特性として、波連長および送信回数のうち少なくとも一方が異なる音響特性1および音響特性2があるものとする。
【0079】
制御部42は、1つの関心領域を複数の分割領域に分割し、複数の分割領域を設定する(S301)。分割関心領域の設定は、例えば、表示処理部36がBモード画像をディスプレイ40に表示させている状態で、Bモード画像が取得された断層面上に分割関心領域を設定する操作を行うことで生成される。
【0080】
制御部42は、プローブ駆動部10、受信部18および情報処理部20を制御して、複数の分割関心領域のそれぞれについてSNR1を求め、複数の分割関心領域のそれぞれについてBモード画像データおよび弾性画像データを情報処理部20に生成させる(S302)。ここで、SNR1とは、音響特性1について求められるSNRをいう。
【0081】
制御部42は、プローブ駆動部10、受信部18および情報処理部20を制御して、複数の分割関心領域のそれぞれについてSNR2を求め、複数の分割関心領域のそれぞれについてBモード画像データおよび弾性画像データを情報処理部20に生成させる(S303)。ここで、SNR2とは、音響特性2について求められるSNRをいう。
【0082】
制御部42は、複数の分割関心領域から順に選択される1つの分割関心領域について、SNR1が所定の閾値Tha未満であるか否かを判定する(S304)。制御部42は、SNR1が所定の閾値Tha以上であるときは、ステップS307の処理に進む。制御部42は、SNR1が所定の閾値Tha未満であるときは、SNR2が所定の閾値Tha以上であるか否かを判定する(S305)。制御部42は、SNR2が所定の閾値Tha未満である場合にはステップS307の処理に進む。制御部42は、SNR2が所定の閾値Tha以上である場合には、ステップS306の処理を画像合成部34に実行させる。ステップS306において画像合成部34は、処理対象下の分割関心領域について、Bモード画像データおよび弾性画像データを、音響特性2で生成されたBモード画像データおよび弾性画像データに置き換える。
【0083】
制御部42は、総ての分割関心領域について、ステップS304~S306の処理が実行されたか否かを判定する(S307)。制御部42は、総ての分割関心領域についてステップS304~S306の処理が実行されていないと判定したときは、複数の分割関心領域から次に選択される1つの分割関心領域について、ステップS304~S306の処理を実行する。
【0084】
制御部42は、総ての分割関心領域についてステップS304~S306の処理が実行されたと判定したときは、ステップS304~S306を介して生成されたBモード画像データおよび弾性画像データに基づいて、画像合成部34にBモード弾性画像データを生成させる。表示処理部36は、Bモード弾性画像をディスプレイ40に表示させる(S308)。
【0085】
このように、制御部42は、音響特性が異なる複数種のプッシュ波のうちの1つに対して得られたBモード画像データおよび弾性画像データ(第1の弾性特性を示すデータ)と、複数種のプッシュ波のうちの他の1つに対して得られたBモード画像データおよび弾性画像データ(第2の前記弾性特性を示すデータ)のうち、信頼性の高い一方を、最終的に求められたBモード画像データおよび弾性画像データとして決定する(S304~S306)。図11に示される例では、Bモード画像データおよび弾性画像データの信頼性は、SW信号(測定用信号)から得られたSNRが閾値Tha以上であるか否かによって判定される。
【0086】
このような処理によれば、複数の分割関心領域のうち、SNR1が所定の閾値Tha未満であり、かつ、SNR2が所定の閾値Tha以上であるものについては、音響特性1について取得されたBモード画像データおよび弾性画像データが、音響特性2について取得されたBモード画像データおよび弾性画像データに置き換えられる。これによって、視認性が向上されたBモード弾性画像がディスプレイ40に表示される。
【0087】
なお、Bモード画像データおよび弾性画像データの信頼性は、SW信号(測定用信号)に対して求められる反射波分離度Dに基づいて判定されてもよい。この場合、音響特性1に対して得られた反射波分離度をD1とし、音響特性2に対して得られた反射波分離度をD2としたときに次のような処理が実行されてよい。すなわち、複数の分割関心領域のうち、反射波分離度D1が所定の閾値Thd未満であり、かつ、反射波分離度D2が所定の閾値Thd以上であるものについては、音響特性1について取得されたBモード画像データおよび弾性画像データが、音響特性2について取得されたBモード画像データおよび弾性画像データに置き換えられる。
【0088】
本発明に係るガイドワイヤは、以下のような構成を有してよい。
【0089】
(構成1)
超音波診断装置であって、生体組織にプッシュ波を送信するプッシュ波送信部と、前記生体組織にトラッキング波を送信し、前記生体組織で反射した反射超音波を受信するトラッキング波送受信部と、前記生体組織に前記プッシュ波によって発生したせん断波の伝搬速度を測定し、前記伝搬速度に基づいて、前記生体組織の弾性特性を測定する弾性解析部であって、前記トラッキング波送受信部が受信した前記反射超音波によって得られる測定用信号に基づいて前記伝搬速度を測定する、弾性解析部と、前記測定用信号に含まれる不要成分に応じて、前記弾性特性を再測定するか否かを判定する制御部と、を備え、前記弾性特性を再測定するとの判定がされたときに、前記超音波診断装置は、前記測定用信号に含まれる不要成分に応じて前記プッシュ波の音響特性を変更し、前記弾性特性を再測定する。
【0090】
(構成2)
構成1に記載の超音波診断装置であって、前記制御部は、前記測定用信号に含まれる不要成分としてのノイズ成分に基づいて、前記弾性特性を再測定するか否かを判定する。
【0091】
(構成3)
構成1または2に記載の超音波診断装置であって、前記制御部は、前記測定用信号に含まれる不要成分としての反射波成分に基づいて、前記弾性特性を再測定するか否かを判定する。
【0092】
(構成4)
超音波診断装置であって、生体組織にプッシュ波を送信するプッシュ波送信部と、前記生体組織にトラッキング波を送信し、前記生体組織で反射した反射超音波を受信するトラッキング波送受信部と、前記生体組織に前記プッシュ波によって発生したせん断波の伝搬速度を測定し、前記伝搬速度に基づいて、前記生体組織の弾性特性を測定する弾性解析部であって、前記トラッキング波送受信部が受信した前記反射超音波によって得られる測定用信号に基づいて前記伝搬速度を測定する、弾性解析部と、前記弾性特性に基づく弾性画像を表示する表示処理部と、前記超音波診断装置は、前記弾性画像が表示されたときに行われたユーザの操作に応じて、前記プッシュ波の音響特性を変更して前記弾性特性を再測定する。
【0093】
(構成5)
構成1から4のいずれか1つに記載の超音波診断装置であって、前記測定用信号に含まれるノイズ成分に対するせん断波信号成分の大きさの比率が所定の閾値未満であるときに、再測定において前記プッシュ波送信部は、先に前記弾性特性を測定したときよりも前記プッシュ波の波連長を長くし、あるいは1回の測定ごとの前記プッシュ波の送信回数を多くする。
【0094】
(構成6)
構成1から5のいずれか1つに記載の超音波診断装置であって、前記測定用信号に含まれるせん断波信号成分と反射波成分との分離度が所定の閾値未満であるときに、再測定において前記プッシュ波送信部は、先に前記弾性特性を測定したときよりも前記プッシュ波の波連長を短くし、あるいは1回の測定ごとの前記プッシュ波の送信回数を少なくする。
【0095】
(構成7)
構成1から6のいずれか1つに記載の超音波診断装置であって、前記測定用信号に基づいて前記生体組織の超音波画像データを生成し、先に前記弾性特性を測定したときに生成した前記超音波画像データに基づく先測定画像に、前記弾性特性を再測定したときに生成した前記超音波画像データに基づく再測定画像を重ねた合成画像を示す合成画像データ、を生成する画像合成部を備え、前記合成画像は、前記先測定画像および前記再測定画像に対して混合処理が施された画像であり、前記混合処理は、前記先測定画像の画素値と、前記再測定画像の画素値とを、画素の位置に応じて重み付け合成する処理である。
【0096】
(構成8)
超音波診断装置であって、音響特性が異なる複数種のプッシュ波を生体組織に送信するプッシュ波送信部と、前記生体組織にトラッキング波を送信し、前記生体組織で反射した反射超音波を受信するトラッキング波送受信部と、前記プッシュ波によって前記生体組織に発生したせん断波の伝搬速度を測定し、前記伝搬速度に基づいて、前記生体組織の弾性特性を測定する弾性解析部であって、前記トラッキング波送受信部が受信した前記反射超音波によって得られる測定用信号に基づいて前記伝搬速度を測定する、弾性解析部と、複数種の前記プッシュ波のうちの1つに対して得られた第1の前記弾性特性と、複数種の前記プッシュ波のうちの他の1つに対して得られた第2の前記弾性特性のうち、信頼性の高い一方を、最終的に求められた前記弾性特性として決定する制御部と、を備え、前記信頼性は、前記測定用信号に含まれる不要成分に基づいて決定される。
【符号の説明】
【0097】
10 プローブ駆動部、12 超音波プローブ、14 プッシュ波送信部、16 トラッキング波送受信部、18 受信部、20 情報処理部、30 弾性解析部、32 Bモード画像生成部、34 画像合成部、36 表示処理部、38 記憶部、40 ディスプレイ、42 制御部、44 操作部、54 y軸方向受信ビームデータ、60 直線、62 合成画像、64 関心領域の外周を示す破線、66 再測定領域の外周を示す一点鎖線、100 超音波診断装置、Wt 進行波、Wr 反射波。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10