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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064242
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】蒸気発生器
(51)【国際特許分類】
   F22B 1/02 20060101AFI20240507BHJP
   F24H 1/10 20220101ALI20240507BHJP
   F22B 3/00 20060101ALI20240507BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20240507BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20240507BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240507BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20240507BHJP
【FI】
F22B1/02 Z
F24H1/10 N
F22B3/00
C25B15/08 302
C25B1/042
C25B9/00 A
C25B15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172686
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】若杉 知寿
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021CA08
4K021DB04
4K021DB40
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】沸点よりも少し高い低温熱源を用いた上で、蒸気を安定的かつ高応答に生成する。
【解決手段】蒸気発生器は、流体が流通する第1流路と、第1流路内に配置された構造物と、を有する噴霧蒸発部と、第1流路の上流側に配置される第2流路と、第2流路内に形成され、第2流路の一部分の断面積を前記第1流路の断面積よりも小さくする噴霧化部と、を有する流体噴霧化部と、第1流路内および第2流路内を流通する流体を加熱する加熱部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器であって、
流体が流通する第1流路と、前記第1流路内に配置された構造物と、を有する噴霧蒸発部と、
前記第1流路の上流側に配置される第2流路と、前記第2流路内に形成され、前記第2流路の一部分の断面積を前記第1流路の断面積よりも小さくする噴霧化部と、を有する流体噴霧化部と、
前記第1流路内および前記第2流路内を流通する流体を加熱する加熱部と、
を備える、蒸気発生器。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気発生器であって、
前記噴霧化部は、上流側から下流側に向かって、前記第2流路の一部分の断面積が徐々に小さくなる傾斜部と、前記傾斜部の下流側端部から下流側に向けて流通する流体が前記第1流路の内周部と接触しないように、前記傾斜部の下流側端部と前記内周部との間に形成される段差部とを有している、蒸気発生器。
【請求項3】
請求項2に記載の蒸気発生器であって、
前記構造物は、前記内周部との間に螺旋状の流路を形成する流路形成部材である、蒸気発生器。
【請求項4】
請求項3に記載の蒸気発生器であって、
前記流路形成部材は、
前記内周部との間に、第1の方向の旋回流を発生させる螺旋状の流路を形成する第1流路形成部と、
前記第1流路形成部の下流側に接続されて、前記内周部との間に、前記第1の方向とは逆方向の旋回流を発生させる螺旋状の流路を形成する第2流路形成部と、を有する、蒸気発生器。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の蒸気発生器であって、さらに、
前記第1流路内および前記第2流路内において、環状流から噴霧流へと変化する境界における液体と蒸気との合計の流量に対する蒸気の流量の割合を算出する算出部と、
前記噴霧化部が前記境界よりも上流側に位置するように、前記算出部により算出される前記割合を用いて、前記蒸気発生器に供給される流体の流量を制御する前記流量制御部と、
を備える、蒸気発生器。
【請求項6】
請求項5に記載の蒸気発生器であって、
前記算出部は、前記噴霧化部における最小の断面積を、前記第2流路の上流側における入口の断面積で除した面積比であって、前記蒸気発生器に供給される流体の流量に応じて、前記第1流路の下流側から液滴が流出しない面積比の範囲を算出し、
前記流量制御部は、前記面積比に応じて、前記第1流路の下流側から液滴が流出しない範囲で、前記蒸気発生器に供給される流体の流量を制御する、蒸気発生器。
【請求項7】
請求項3に記載の蒸気発生器であって、さらに、
前記流路形成部材の上流側の中心の温度と、前記流路形成部材の前記上流側と流路長さに沿って同じ位置にある前記第1流路を形成する管壁の温度と、の温度差を取得する温度差取得部と、
前記流路形成部材の厚みと、前記流路長さに沿った前記流路形成部材の長さと、前記蒸気発生器に供給される流体の流量と、を用いて、前記流路形成部材が液体の流体を蒸発させる際の前記流路形成部材の温度の低下分を算出する算出部と、
前記低下分が、前記温度差取得部により取得された温度差よりも小さくなるように、前記蒸気発生器に供給される液体の流量を制御する流量制御部と、
を備える、蒸気発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
高温水蒸気を電気分解することにより水素を製造するSOEC(Solid Oxide Electrolyser Cell:固体酸化物形電解セル)が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された水素製造装置では、外部熱源である原子炉から供給される900℃の熱との熱交換により予熱された水蒸気がSOECへと供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-090425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子炉などの高温熱源を用いると、液体から沸騰による蒸気生成が可能である。一方で、沸点よりも少し温度が高い低温熱源を用いると、沸騰ではなく蒸発による蒸気生成が主となるため、蒸気を供給する装置からの要求に応じて安定的かつ高応答な蒸気生成が難しい。低温熱源を用いて安定的かつ応答性の高い蒸気生成を行おうとすると、蒸気を生成する蒸発器を大型化する必要がある。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、沸点よりも少し高い低温熱源を用いた上で、蒸気を安定的かつ高応答に生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、蒸気発生器が提供される。この蒸気発生器は、流体が流通する第1流路と、前記第1流路内に配置された構造物と、を有する噴霧蒸発部と、前記第1流路の上流側に配置される第2流路と、前記第2流路内に形成され、前記第2流路の一部分の断面積を前記第1流路の断面積よりも小さくする噴霧化部と、を有する流体噴霧化部と、前記第1流路内および前記第2流路内を流通する流体を加熱する加熱部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、噴霧化部により第2流路の一部分の断面積が前記第1流路の断面積よりも小さくなることにより、噴霧化部を通過した流体は、第1流路の内周部ではなく断面における中心付近を流れる。第1流路の中心付近を流れる流体は、第1流路の内周部を伝わる液膜ではなく、液滴に変換されて第1流路内に配置された構造物に衝突しやすくなる。この結果、第1流路の内周部に形成される液膜のドライアウト変動により蒸気生成が不安定になることを抑制できる。
【0009】
(2)上記態様の蒸気発生器において、前記噴霧化部は、上流側から下流側に向かって、前記第2流路の一部分の断面積が徐々に小さくなる傾斜部と、前記傾斜部の下流側端部から下流側に向けて流通する流体が前記第1流路の内周部と接触しないように、前記傾斜部の下流側端部と前記内周部との間に形成される段差部とを有していてもよい。
この構成によれば、傾斜部により、第2流路の断面積が下流側に向かって徐々に小さくなるため、第2流路を流れる流体の圧力損失を低減できる。さらに、段差部により、第2流路から第1流路へと流通する流体は、第2流路の内周部を伝わらずに液滴に変化して構造物に衝突するため、より安定的に蒸気を生成できる。
【0010】
(3)上記態様の蒸気発生器において、前記構造物は、前記内周部との間に螺旋状の流路を形成する流路形成部材であってもよい。
この構成によれば、流路形成部材により流体が流れる方向に交差する旋回流が流体に対して発生する。そのため、液滴に変化した流体は、流路形成部材および第1流路の内周部に衝突しやすくなる。この結果、流路形成部材または内周部からの伝熱により、液体が蒸発しやすくなり、より安定的に蒸気を生成できる。
【0011】
(4)上記態様の蒸気発生器において、前記流路形成部材は、前記内主部との間に、前記第1流路内を流れる流体に対して第1の方向の旋回流を発生させる螺旋状の流路を形成する第1流路形成部と、前記第1流路形成部の下流側に接続されて、前記内周部との間に、前記第1の方向とは逆方向の旋回流を発生させる螺旋状の流路を形成する第2流路形成部と、を有していてもよい。
この構成によれば、流路形成部材は、それぞれ異なる向きの旋回流を発生させる第1流路形成部と、第1流路形成部に接続されている第2流路形成部とを有している。これにより、第1流路形成部を通過して第1の方向の旋回流に沿って流れる流体は、第2流路形成部に流通した時に、第1流路の内周部ではなく第2流路形成部に衝突しやすくなる。内周部が高温だと、ライデンフロスト効果により液滴が内周部に衝突しても蒸発しにくくなる。本構成によれば、内周部ではなく、第2流路形成部に流体を衝突させることにより、ライデンフロスト効果の影響を受けずに、安定的に蒸気を生成できる。
【0012】
(5)上記態様の蒸気発生器において、さらに、前記第1流路内および前記第2流路内において、環状流から噴霧流へと変化する境界における液体と蒸気との合計の流量に対する蒸気の流量の割合を算出する算出部と、前記噴霧化部が前記境界よりも上流側に位置するように、前記算出部により算出される前記割合を用いて、前記蒸気発生器に供給される流体の流量を制御する前記流量制御部と、を備えていてもよい。
この構成によれば、算出部により算出された蒸気の流量の割合を用いて、第1流路内および第2流路内における環状流と噴霧流との境界が表される。噴霧化部が当該境界よりも上流側に位置するように、蒸気発生器に供給される流体の流量が制御される。これにより、噴霧化部が、環状流の流域で第2流路の内周部に伝う液膜を、構造物に衝突させる流線上に導くことができるため、安定的に蒸気を生成できる。
【0013】
(6)上記態様の蒸気発生器において、前記算出部は、前記噴霧化部における最小の断面積を、前記第2流路の上流側における入口の断面積で除した面積比であって、前記蒸気発生器に供給される流体の流量に応じて、前記第1流路の下流側から液滴が流出しない面積比の範囲を算出し、前記流量制御部は、前記面積比に応じて、前記第1流路の下流側から液滴が流出しない範囲で、前記蒸気発生器に供給される流体の流量を制御してもよい。
この構成によれば、面積比に応じて蒸気発生器に供給される流体の流量が制御される。面積比が大きい、すなわち、噴霧化部の流路の最小の断面積が大きい場合には、第2流路の内周部を伝わる液膜が、そのまま第1流路の内周部に伝わって蒸発できずに、蒸気発生装置から液滴として流出するおそれがある。一方、面積比が小さい、すなわち、噴霧化部の流路の最小の断面積が小さい場合には、第2流路から第1流路へと流通する流体に含まれる液滴の多くが構造物に衝突するが速度が高いため、比較的大きい液滴が吹き抜ける。この結果、構造物に衝突した液滴の全てが蒸発せずに蒸気発生器から液滴として流出するおそれがある。本構成では、流路の面積比の上限値と下限値とが設定された範囲内で、蒸気発生器に供給される流体の流量が制御されることにより、蒸気発生器内で安定的に蒸気を生成できる。
【0014】
(7)上記態様の蒸気発生器において、さらに、前記構造物の上流側の中心の温度と、前記構造物の前記上流側と流路長さに沿って同じ位置にある前記第1流路を形成する管壁の温度と、の温度差を取得する温度差取得部と、前記構造物の厚みと、前記流路長さに沿った前記構造物の長さと、前記蒸気発生器に供給される流体の流量と、を用いて、前記構造物が液体の流体を蒸発させる際の前記構造物の温度の低下分を算出する算出部と、前記低下分が、前記温度差取得部により取得された温度差よりも小さくなるように、前記蒸気発生器に供給される液体の流量を制御する流量制御部と、を備えていてもよい。
この構成によれば、算出部により、蒸気発生器に供給される液体を構造物が蒸発させる際に必要な熱量が、温度差取得部により取得された温度差と、構造物の厚みおよび長さとを用いて算出される。蒸気発生器に供給される流体の流量が多いと、構造物に衝突して蒸発する液滴が増加するため、構造物の温度の低下分は上昇する。本構成では、構造物の温度の低下分と、温度差取得部により取得された温度差との比較により、蒸気発生器に供給される流体の流量が制御される。これにより、構造物に衝突する液滴の全てを蒸発させることができる範囲の流量が蒸気発生器に供給されるように制御されるため、蒸気発生器からの液滴の流出を抑制できる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、蒸気発生器、蒸気生成装置、水蒸気生成装置、水素製造システム、SOEC、蒸気発生方法、蒸気生成方法、水蒸気生成方法、蒸気発生器の設計方法、およびこれらの装置を備えるシステム、これら装置を実行するためのコンピュータプログラム、このコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、コンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態としての蒸気発生装置のブロック図である。
図2】蒸発器の概略斜視図である。
図3】流路内を流れる水が気化するまでの状態についての説明図である。
図4】蒸気発生装置の効果についての説明図である。
図5】蒸気発生装置の効果についての説明図である。
図6】蒸気発生装置の効果についての説明図である。
図7】蒸気発生装置の効果についての説明図である。
図8】蒸気クオリティについての説明図である。
図9】境界の蒸気クオリティと熱流束との関係の説明図である。
図10】エッジ部の管径比についての説明図である。
図11】エッジ部の管径比についての説明図である。
図12】エッジ部の管径比についての説明図である。
図13】エッジ部の管径比についての説明図である。
図14】フィンの厚みについての説明図である。
図15】温度差を用いた流量の制御方法のフローチャートである。
図16】変形例の噴霧化部の説明図である。
図17】変形例の噴霧化部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としての蒸気発生装置(蒸気発生器)100のブロック図である。本実施形態の蒸気発生装置100は、流路FLを通る液体の水を加熱して気化させ、気化した水蒸気を他の装置へと供給する。本実施形態の蒸気発生装置100では、流路FL内の管径が徐々に小さくなるエッジ部(噴霧化部)14を通過した液体の水が、管壁(内周部)WLを伝わる液膜ではなく、気体と共に流路FL内を流れる液滴としてフィンFNに衝突することにより蒸発する。そのため、管壁WLを伝わった液膜が液体の水のまま蒸気発生装置100から流出すること抑制でき、蒸気発生装置100の加熱温度が低くても、蒸気発生装置100により水蒸気を安定的に生成できる。
【0018】
図1に示されるように、蒸気発生装置100は、液体の水から水蒸気を生成する蒸発器10と、蒸発器10を加熱するヒータ(加熱部)30と、液体の水を貯留しているタンク40と、タンク40から蒸発器10へと水を供給するポンプ50と、ヒータ30およびポンプ40を制御する制御装置20と、を備えている。なお、図1には、蒸発器10の一部の概略断面図が示されている。
【0019】
蒸発器10は、金属の部材により、水が流れる流路FLを形成する管である。流路FL内の形状については後述する。ヒータ30は、蒸発器10である金属製の管の外周面を加熱する。ヒータ30の加熱により、流路FL内を流れる水が加熱される。流路FL内を流れる水は、加熱されることにより水蒸気へと気化する。
【0020】
本実施形態の制御装置20は、パーソナルコンピュータ(Personal Computer:PC)で構成されている。制御装置20は、図1に示されるように、CPU(Central Proccesing Unit)21と、記憶部22とを備えている。CPU21は、ROM(Read Only Memory)に格納されているコンピュータプログラムをRAM(Random Access Memory)に展開して実行することにより、算出部23、流量制御部24、および加熱制御部25として機能する。
【0021】
算出部23は、蒸発器10に供給される水の流量を、計算により算出する。なお、算出部23により算出される水の流量の詳細については、第2実施形態で説明する。流量制御部24は、算出部23により算出された流量の水を蒸発器10に供給するように、ポンプ50を制御する。加熱制御部25は、ヒータ30を制御する。記憶部22は、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)などで構成され、各種データを記憶する。
【0022】
図1に示されるように、蒸発器10は、中心軸OLに沿う流路長さを有し、管壁WLにより形成された流路FLを有している。蒸発器10は、上流側から順番に分割された第1領域11と、第2領域(流体噴霧化部)12と、第3領域(噴霧蒸発部)13と、第1温度センサSS1と、第2温度センサSS2と、蒸発器10に供給される水の流量mを検出する流量センサSS3と、を備えている。第1温度センサSS1と、第2温度センサSS2との検出温度については、算出部23の算出と共に説明する。
【0023】
第1領域11では、同一の断面積の上流側流路FL1が形成されている。第2領域12は、流体が流通する中間流路(第2流路)FL2と、中間流路FL2内に形成され、中間流路FL2内の一部分の断面積を下流側流路FL3の断面積よりも小さくするエッジ部(噴霧化部)14と、を備えている。第3領域13は、水および水蒸気が流通する下流側流路(第1流路)FL3と、管壁WLとの間に螺旋状の流路を形成する下流側流路FL3内を流れる水および水蒸気に旋回流を発生させるフィン(流路形成部材)FNと、を備えている。フィンFNは、下流側流路FL3内を流れる水および水蒸気に旋回流を発生させる。
【0024】
図2は、蒸発器10の概略斜視図である。図2には、蒸発器10の中心軸OLを通る断面が示されている。図1,2に示されるように、エッジ部14は、上流側から下流側に向かって、中間流路FL2の一部分の断面積が徐々に小さくなる傾斜部14Iと、傾斜部14Iの下流側において中間流路FL2の断面積が大きくなる段差部14Uと、を有している。段差部14Uは、傾斜部14Iの下流側端部から下流側に向けて流通する流体が下流側流路FL3の管壁WLと接触しないように、傾斜部14Iの下流側端部と管壁WLとの間に形成されている。中心軸OLに直交する断面に対して、傾斜部14Iが成す角度であるエッジ角は、θ(図1)である。
【0025】
フィンFNは、第3領域13内を流れる流体に対して所定方向(第1の方向)の中心軸OL回りの旋回流を発生させる第1フィン(第1流路形成部)FN1と、第1フィンFN1の下流側に接続されている第2フィン(第2流路形成部)FN2と、を有している。第1フィンFN1は、管壁WLとの間に、所定方向の旋回流を発生させる螺旋状の流路を形成している。第2フィンFN2は、管壁WLとの間に、所定方向とは逆回転の旋回流を発生させる螺旋状の流路を形成している。第1フィンFN1および第2フィンFN2は、金属材料で形成されている。フィンFNは、管壁WLに接続しているため、管壁WLを介してヒータ30により加熱される。図2に示されるように、第2フィンFN2は、第1フィンFN1により所定方向の旋回流が発生している流体に対して、所定方向とは逆方向(第2の方向)の中心軸OL回りの旋回流を発生させるように形成されている。なお、本実施形態の第1フィンFN1として、中心時OL回りに1回転半分のフィンが形成されている。同じように、第2フィンFN2として、中心軸OL回りに1回転半分のフィンが形成されている。
【0026】
図3は、流路FLx内を流れる水が気化するまでの状態についての説明図である。図3には、蒸発器10に対してエッジ部14を有さず、かつ、フィンFNが配置されていない比較例1の蒸発器10xの一部の概略断面図が示されている。図3に示されるように、流路FLxの上流側から供給された液体の水は、流路FLx内を下流側へと流れるにつれて、液体のみの液単相流、液体と気体とが混合している2相流、および気体のみのガス単相流へと変化する。2相流では、上流側から下流側へと、気泡流F1、スラグ流F2、環状流F3、噴霧流F4の順番で各流域が構成されている。図3に示されるように、環状流F3を含む上流側が沸騰域であり、噴霧流F4を含む下流側が噴霧蒸発域である。換言すると、環状流F3と噴霧流F4との境界よりも上流側が沸騰域であり、境界の下流側が噴霧蒸発域である。
【0027】
気泡流F1の流域では、管壁WL近傍で発生する沸騰核(気泡)による温度境界層の攪拌効果で流体に対して高い熱伝達率が得られる。スラグ流F2の流域では、管壁WLに形成された薄い液膜LFを介した広い蒸発界面により、液膜LFへの高い熱伝達率を維持することができる。一方、環状流F3の流域では、液体と蒸気との流量の合計に対する蒸気の流量である蒸気クオリティが高い。そのため、液膜LFには強い蒸気せん断力が作用する他、薄い液膜LF内での沸騰により液膜破断由来の液滴LDが発生する。噴霧蒸発域では、管壁WLを介した気相熱伝達によりガス相が加熱され、蒸気中に存在する液滴LDは、液滴表面におけるガス相と液相の直接熱交換により相変化(蒸発)し、噴霧流域出口でガス相(蒸気クオリティ100%)となる。
【0028】
ここで、管壁WLと、ガス相間との熱伝達率を促進(乱流促進、流路微細化による伝熱促進や伝熱面積の拡大等)しても、液滴表面における熱伝達で蒸発速度は失速するため完全に気化するための噴霧流域長さは増大する。特に流路FLx内の蒸気流速が速い場合では、蒸発完結までの時間と流速の積が必要噴霧流長さとなるため、流速に比例して液滴LDが蒸気に変化するまでの流路長さは増大し、蒸発器体格が増大する。その他、流路FLxの圧力損失も増大し、ポンプ50の消費エネルギーによりシステム効率が低下するおそれがある。
【0029】
蒸発器10,10xから液滴LDが流出することは、蒸発器10,10xから水蒸気が提供される装置が、単に冷却を目的としている場合には大きな問題とならない。一方で、蒸発器10,10xから水蒸気が提供される装置が、生成蒸気を原料とするシステムでは、蒸発器10,10xから排出される液滴LDにより、各種不具合が発生するおそれがある。例えば、水蒸気が提供され装置が、炭化水素燃料から水蒸気改質反応等により水素を製造する燃料改質システムの場合、水蒸気と燃料との比が変動して改質器内にカーボンが析出するおそれがある。また、水蒸気を原料として電力から水素を製造するSOEC(Solid Oxide Electrolyzer Cell)システムである場合、SOECスタックのセラミックス構成部材への液滴衝突に起因した急激な温度変動を伴う熱衝撃、膨張収縮により部材破壊を招くおそれがある。そのため、噴霧流F4の流域で液滴LDを発生させない(ほぼ全て気化させる)ことが好ましい。
【0030】
一方、気泡流F1、スラグ流F2、環状流F3の流域を含む沸騰域では気泡流F1の流域における発泡点密度の向上や環状流F3の流域の液膜LFの厚みの低減(液膜熱抵抗の低減)、安定化(ドライアウトパッチの抑制)が一般的な伝熱促進手法である。このように、沸騰域と噴霧蒸発域では流動状況に依存して伝熱現象は大きく異なるため、流路FL,FLxの低圧損化および小型化のためには個別の流路設計が必要となる。そのため、本実施形態の蒸気発生装置100では、図1に示されるように、中間流路FL2内にエッジ部14が形成され、下流側流路FL3内にフィンFNが配置されている。
【0031】
図4から図7までの各図は、蒸気発生装置100の効果についての説明図である。図4には、蒸発器10のエッジ部14よりも下流側の流路FLを領域P1~P5の5つに分割した場合の概略断面図が示されている。領域P1は、エッジ部14の下流側の端面である段差部14Uから第1フィンFN1の上流側の先端までの領域である。領域P2は、第1フィンFN1のうちの1回転分の領域である。領域P3は、第1フィンFN1の下流側の0.5回転分と、第2フィンFN2の上流側の0.5回転分とを含む領域である。領域P4は、第2フィンFN2の下流側の1回転分の領域である。領域P5は、蒸発器10の出口近傍の領域である。
【0032】
図5には、比較例1の蒸発器10xにおいて、領域P5に侵入する液滴LDの質量の流量が示されている。すなわち、図5には、蒸発器10xから流出する液滴LDの質量が示されている。図5に示される状態では、本実施形態の蒸発器10と、比較例1の蒸発器10xとの比較ため、エッジ部14の段差部14Uが環状流F3(図3)に位置するように、蒸発器10,10xに供給される水の流量を調整した場合の結果である。本実施形態の蒸発器10では、エッジ部14の存在により、蒸発器10から流出する液滴LDの質量はゼロであった。具体的には、領域P1に侵入しようとした液膜LFは、エッジ部14により液滴LDとして領域P1に流入した。一方で、比較例の蒸発器10xでは、図5に示されるように、主に直径が1.0×10-5~6.0×10-5の液滴LDが流出した。
【0033】
図6には、蒸発器10,10xにおいて、各領域P1~P5に流入する液膜LFの面内積算値が示されている。図6では、本実施形態の蒸発器10の積算値が白丸を直線で結んだ折れ線LNで示され、比較例1の蒸発器10xの積算値が黒丸を破線の直線で結んだ折れ線LNxで示されている。図6におけるY軸の液膜厚みの面内積算値は、中心軸OLに沿う流路長さにおける液膜厚みの積算値である。図6の折れ線LNxに示されるように、比較例1の蒸発器10xでは、下流側の領域に進むにつれて液膜LFの厚みが小さくなるが、一部の液膜LFが液体のまま蒸発器10xから流出している。
【0034】
一方で、本実勢形態の蒸発器10では、エッジ部14により、傾斜部14Iに形成されていた液膜LFの一部は、段差部14Uにより液滴LDとして領域P1に侵入する。そのため、領域P1の積算値が比較例1よりも小さくなっている。領域P2の積算値は、エッジ部14により液膜LFから変化した液滴LDが第1フィンFN1に付着するため、領域P1の積算値よりも増加している。領域P2において、比較例1の蒸発器10xでは蒸気中に存在する液滴LDはガス相と液相と直接熱交換により蒸発したが、本実施形態の蒸発器10では、第1フィンFN1に付着した液膜LFは蒸発しやすい。さらに、領域P3では、第2フィンFN2により発生する旋回流が第1フィンFN1により発生する旋回流の逆向きであるため、第1フィンFN1で周方向外側に進む力を受けた液滴LDが、周方向内側に進む力を受けて第2フィンFN2に付着しやすくなる。これにより、領域P3および領域P4では、折れ線LNに示されるように、液滴LDの積算値が減少する。この結果、本実施形態の蒸発器10から液滴LDとして流出する液体の水が存在しなくなる。
【0035】
図7には、逆向きの旋回流を発生させる第2フィンFN2を含む第1フィン構造SF1と、同一方向の旋回流を発生させる第1フィンのみで構成された第2フィン構造SF2とにおける液質量比の変化が示されている。液質量比とは、全質量に対して液滴LDとして残存している液質量の割合である。第1フィン構造SF1は、フィン1回転分の中心軸の長さが40mmの第1フィンとFN1、フィン1回転分の長さが第1フィンFN1と同じ40mmである第2フィンFN2と、さらに1回転分の第1フィンFN1とが接続されたフィンである。一方で、第2フィン構造SF2は、3回転分の第1フィンFN1が接続されたフィンである。すなわち、第1フィン構造SF1と第2フィン構造SF2とでは、2回転目の(40~80mmに位置する)フィンが第1フィンFN1と第2フィンFN2とで異なる。
【0036】
図7では、横軸に流路長さとしての距離に対する液質量比の変化が示されている。第1フィン構造SF1の液質量比が折れ線LN1で示され、第2フィン構造SF2の液質量比が破線の折れ線LN1yで示されている。図7に示されるように、第1フィン構造SF1は、流体に対して発生させる旋回流が異なる第2フィンFN2を含んでいるため、第2フィンFN2よりも液滴LDをより捕集できる。すなわち、第1フィン構造SF1の上流側で液滴LDを蒸発させたため、第1フィン構造SF1の下流側で液滴LDを捕集する量が減る。この結果、折れ線LN1で表されるように、第1フィン構造SF1の下流側では、第2フィン構造SF2の下流側よりも液質量比が低くなっている。
【0037】
以上のように、本実施形態の蒸気発生装置100では、蒸発器10の第2領域12は、流体が流通する中間流路FL2と、中間流路FL2内に形成され、中間流路FL2内の一部分の断面積を下流側流路FL3の断面積よりも小さくするエッジ部14と、を備えている。第3領域13は、水および水蒸気が流通する下流側流路FL3と、下流側流路FL3内を流れる水および水蒸気に旋回流を発生させるフィンFNと、を備えている。ヒータ30の加熱により、流路FL内を流れる水が加熱される。そのため、本実施形態では、エッジ部14により中間流路FL2の一部分の断面積が小さくなることにより、エッジ部14を通過した流体は、下流側流路FL3の管壁WLではなく中心軸OL付近を流れる。下流側流路FL3の中心付近を流れる流体は、下流側流路FL3の管壁WLを伝わる液膜LFではなく、液滴LDに変換されて下流側流路FL3内に配置されたフィンFNに衝突しやすくなる。この結果、下流側流路FL3の管壁WLに形成される液膜LFのドライアウト変動により蒸気生成が不安定になることを抑制できる。
【0038】
また、本実施形態のエッジ部14は、上流側から下流側に向かって、中間流路FL2の一部分の断面積が徐々に小さくなる傾斜部14Iと、傾斜部14Iの下流側において中間流路FL2の断面積が大きくなる段差部14Uと、を有している。段差部14Uは、傾斜部14Iの下流側端部から下流側に向けて流通する流体が下流側流路FL3の管壁WLと接触しないように、傾斜部14Iの下流側端部と管壁WLとの間には形成されている。すなわち、傾斜部14Iにより、中間流路FL2の断面積が下流側に向かって徐々に小さくなるため、中間流路FL2を流れる流体の圧力損失を低減できる。さらに、段差部14Uにより、中間流路FL2から下流側流路FL3へと流入する流体は、中間流路FL2の管壁WLを伝わらずに液滴LDに変化してフィンFNに衝突するため、より安定的に蒸気を生成できる。
【0039】
また、本実施形態のフィンFNは、下流側流路FL3内を流れる水および水蒸気に旋回流を発生させる。そのため、フィンFNにより流体が流れる方向に交差する旋回流が流体に対して発生する。液滴LDに変化した流体は、フィンFNおよび下流側流路FL3の管壁WLに衝突しやすくなる。この結果、フィンFNまたは管壁WLからの伝熱により、液滴LDが蒸発しやすくなり、蒸発器10はより安定的に蒸気を生成できる。
【0040】
また、本実施形態では、フィンFNは、第3領域13内を流れる流体に対して所定方向(第1の方向)の中心軸OL回りの旋回流を発生させる第1フィンFN1と、第1フィンFN1の下流側に接続されている第2フィンFN2と、を有している。そのため、第1フィンFN1を通過して旋回流に沿って流れる流体は、第2フィンFN2に流通した時に、下流側流路FL3の管壁WLではなく第2フィンFN2に衝突しやすくなる。管壁WLが高温だと、ライデンフロスト効果により液滴LDが管壁WLに衝突しても蒸発しにくくなる。本実施形態によれば、管壁WLではなく、第2フィンFN2に流体を衝突させることにより、ライデンフロスト効果の影響を受けずに、安定的に蒸気を生成できる。
【0041】
<第2実施形態>
第2実施形態では、制御装置20が各種パラメータを用いて第1実施形態の蒸発器10(図1)に供給される水の流量を制御することにより、蒸発器10から水蒸気を供給する所定の装置へと液滴LDが含まれない水蒸気を供給する。
【0042】
図8は、蒸気クオリティXbpについての説明図である。図8では、環状流F3と噴霧流F4との境界における蒸気クオリティXbpを調べるための試験装置が示されている。具体的には、上流側蒸発器101に所定流量の蒸発潜熱がQLである水を供給し、上流側蒸発器101に熱量Q1を供給する。さらに、上流側蒸発器101から流出した流体を下流側蒸発器102に供給できるように、上流側蒸発器101と下流側蒸発器102とを連結した状態で、下流側蒸発器102に熱量Q2を供給する。なお、図8では、便宜上、上流側蒸発器101と下流側蒸発器102とを切り離した状態が示されている。なお、境界の蒸気クオリティXbpは、環状流から噴霧流へと変化する境界における液体と蒸気との合計の流量に対する蒸気の流量の割合に相当する。
【0043】
下流側蒸発器102の一部はガラスで形成されている。カメラCAによりガラスにより透過される下流側蒸発器102の状態を観察する。観察により、下流側蒸発器102を流れる流体の状態(例えば、環状流F3)を調べた。上流側蒸発器101に供給する水の流量と、熱量Q1,Q2とを変化させることにより、環状流F3と噴霧流F4との境界における蒸気クオリティXbpを調査した。境界の蒸気クオリティXbpは、下記式(1)のように表される。図8に示される試験装置では、主に熱量Q1の制御により、下流側蒸発器102の壁面の熱流束qwの制御と、境界の蒸気クオリティXbpの制御とを独立に行うことができる。
【0044】
【数1】
【0045】
図9は、境界の蒸気クオリティXbpと熱流束qwとの関係の説明図である。図9には、流体の質量速度Gwが2.3kg/(m2・s)の場合に、熱流束qwに応じた境界の蒸気クオリティXbpの変化を表す折れ線LN2が示されている。図9に示されるように、流体の質量速度Gwが一定の場合には、熱流束qwに応じて境界の蒸気クオリティXbpが変化するため、蒸気クオリティXbpは、下記式(2)のような関数として表すことができる。折れ線LN2で表されるように、熱流束qwが1.0×104(W/m2)よりも大きいと、蒸気クオリティXbpの減少幅が大きくなる。
【0046】
【数2】
【0047】
蒸発器10により効率的に蒸気を発生させるには、液膜LFが発生している環状流F3(図3)においてドライアウトを発生させないことが好ましい。また、ドライアウトを発生させない上で、液膜LFが発生しない噴霧蒸発域よりも上流側の環状流F3に、エッジ部14が形成されることが好ましい。すなわち、エッジ部14は、噴霧蒸発域と沸騰域との境界の蒸気クオリティXbpよりも低い蒸気クオリティXsetの位置に形成されることが好ましい。
【0048】
一方で、低すぎる蒸気クオリティの位置、例えば、気泡流F1の位置にエッジ部14が形成されても、液滴LDを生成することによる効率的な蒸気生成の効果を期待できない。すなわち、エッジ部14の形成位置の蒸気クオリティXsetには、下限となる蒸気クオリティXcrが存在する。噴霧化限界となる下限の蒸気クオリティXcrは、数値解析により下記式(3)のように表すことができる。下記式(3)に示されるように、下限の蒸気クオリティXcrは、質量速度と、蒸気流速Ugと、エッジ角θとの関数で表される。図9には、折れ線LN2の条件の場合の下限の蒸気クオリティXcr=0.6が破線で示されている。
【数3】
【0049】
以上説明したように、エッジ部14の蒸気クオリティXsetが、下限の蒸気クオリティXcr以上、かつ、境界の蒸気クオリティXbp以下となるような位置に、エッジ部14が形成されることが好ましい。
【0050】
図10から図13までの各図は、エッジ部14の管径比についての説明図である。図1,2に示されるように、断面が円形状の流路面積は、エッジ部14により小さくなっている。エッジ部14の傾斜部14Iの上流側、すなわち、流路面積が小さくなる前の入口管径din(流路の直径)に対する、傾斜部14Iの下流側、すなわち、第2領域12の流路面積を他の部分よりも小さい出口管径doutの比である管径比Rd(=din/dout)と、蒸発器10の蒸気生成との関係について調べた。
【0051】
図10には、管径比Rdが0.25(=2mm/8mm)の蒸発器10yから流出した液滴LDの径に応じた液滴LDの質量流量(kg/s)が棒グラフで示されている。図11には、蒸発器10yと流路長さが同じで、管径比Rdが0.75(=6mm/8mm)の蒸発器10zから流出した液滴LDの径に応じた液滴LDの質量流量が棒グラフで示されている。なお、図10と、図11とでは、横軸と縦軸との数値のオーダーが異なっている。本実施形態の蒸発器10は、0.50(=4mm/8mm)の管径比Rdを有し、蒸発器10y、10zと同じ流路長さを有している。本実施形態の蒸発器10から流出した液滴LDは検出されなかった。なお、管径比Rdから流路面積が求められるため、管径比Rdを面積比とみなしてもよい。
【0052】
図10,11および本実施形態の蒸発器10から、管径比が小さすぎる、または、大きすぎると、蒸発器10y、10zから液滴LDが流出する。具体的には、管径比Rdが0.25の蒸発器10yでは、管径比Rdが0.75の蒸発器10zと比較して、液滴径が大きい液滴LDが流出している。これは、管径比Rdを小さくすることにより、流体の流線が、フィンFNの径方向中心側で密になる。この場合に、流体の流速が早いと、フィンFNの中央への液滴LDの付着が集中するため、液滴LDを蒸発させるために必要な流路長さが増大する。この結果、フィンFNにより捕集されなかった比較的大きな径の液滴LDが蒸発器10yから流出する。
【0053】
一方で、管径比Rdが0.75の蒸発器10zでは、液滴径が小さい液滴LDが流出している。これは、管径比Rdを大きくすることにより、流体の流線が、フィンFNの径方向外側に分散する。この場合に、エッジ部を通過した液滴LDの一部は、フィンFNに到達する前に管壁WLに付着する。この結果、管壁WLを伝って蒸発しなかった一部の液膜LFが、小さな径の液滴LDとして蒸発器10zから流出する。
【0054】
図12には、図6と同じように、蒸発器10,10x,10y、10zにおいて、各領域P1~P5に流入する液膜LFの面内積算値が示されている。なお、図12の縦軸のオーダーは、図6の縦軸のオーダーと異なる。図12では、図6に対して追加で、管径比Rdが0.25である蒸発器10yの積算値が黒塗りの三角を一点鎖線で結んだ折れ線LNyで示され、蒸発器10zの積算値が黒塗りの四角を二点鎖線の直線で結んだ折れ線LNzで示されている。
【0055】
折れ線LNyで示されるように、管径比Rdが0.25の蒸発器10yでは、エッジ部のエッジ角θが最も大きいため領域P1での積算値が、他の蒸発器10,10x,10zよりも小さい。一方で、領域P5で積算値が存在する、すなわち、一部の液膜LFが液体のまま蒸発器10yから流出している。折れ線LNzで示されるように、管径比Rdが0.75の蒸発器10zでは、図12に示されるように、蒸発器10zから液膜LFは流出していない。一方で、蒸発器10zからは、管径比Rdが0.50である蒸発器10と異なり、液滴LDが流出している。
【0056】
図13には、管径比Rdに応じて変化する流体の圧力損失(Pressure Drop)が棒グラフにより示されている。図13に示されるように、管径比Rdが大きいほど圧力損失が大きい。特に、管径比Rdが0.25である蒸発器10yの圧力損失は、蒸発器10,10zと比較して極めて高い。
【0057】
図10~13を用いて説明したように、管径比Rdが0.50である本実施形態の蒸発器10からは、他の蒸発器10x、10y、10zと異なり、液滴LDが流出しなかった。管径比Rdを0.50から変化させた際に、管径比Rdが0.37以上0.63以下の場合に、蒸発器から液滴LDが流出しないことが確認できた。以上から、蒸発器10に供給される水の流量に応じて、蒸発器10からの液滴LDの流出有無が異なることがわかる。すなわち、蒸発器10に供給される水の流量に応じて、蒸発器10から液滴LDが流出しない管径比Rdを算出できる。
【0058】
第2実施形態では、算出部23(図1)は、噴霧蒸発域と沸騰域との境界の蒸気クオリティXbpを算出する。流量制御部24は、エッジ部14の形成位置の蒸気クオリティXsetが噴霧蒸発域と沸騰域との境界の蒸気クオリティXbpよりも低く、かつ、下限の蒸気クオリティXcr以上となるように、蒸発器10に供給される水の流量を制御する。そのため、第2実施形態では、算出部23により算出された蒸気クオリティXbpを用いて、中間流路FL2内および下流側流路FL3内における環状流F3と噴霧流F4との境界が表される。エッジ部14が当該境界よりも上流側に位置するように、蒸発器10に供給される流体の流量が制御される。これにより、エッジ部14が、環状流F3の流域で中間流路FL2の管壁WLに伝う液膜LFを、フィンFNに衝突させる流線上に導くことができるため、安定的に蒸気を生成できる。
【0059】
また、算出部23は、蒸発器10に供給される水の流量に応じて、蒸発器10から液滴LDが流出しない管径比Rdの範囲を算出する。流量制御部24は、蒸発器10の管径比Rdに応じて、算出部23により算出された蒸発器10から液滴LDが流出しない範囲の流量の水を蒸発器10に供給する。すなわち、第2実施形態では、管径比Rdに応じて蒸発器10に供給される流体の流量が制御される。管径比Rdが大きい、すなわち、エッジ部14の流路の最小の断面積が大きい場合には、中間流路FL2の管壁WLを伝わる液膜LFが、そのまま下流側流路FL3の管壁WLに伝わって蒸発できずに、蒸発器10から液滴LDとして流出するおそれがある。一方、管径比Rdが小さい、すなわち、エッジ部14の流路の最小の断面積が小さい場合には、中間流路FL2から下流側流路FL3へと流入する流体に含まれる液滴LDの多くがフィンFNに衝突するが速度が高いため、比較的大きい液滴LDが吹き抜ける。この結果、フィンFNに衝突した液滴LDの全てが蒸発せずに蒸発器10から液滴LDとして流出するおそれがある。第2実施形態では、流路FLの管径比Rdの上限値と下限値とが設定された範囲内で、蒸発器10に供給される流体の流量が制御されることにより、蒸発器10内で安定的に蒸気を生成できる。
【0060】
<第3実施形態>
第3実施形態では、流量制御部24が、フィンFNの上流側の先端温度Tfと、管壁WLの管壁温度Thとの温度差ΔTfに応じて、蒸発器10に供給する水の流量が制御する。図14は、フィンFNの厚みtについての説明図である。図14には、フィンFNの一部の概略正面図が示されている。本実施形態のフィンFNの厚みは一定のtである。
【0061】
図1に示されるように、第1温度センサSS1は、フィンFNの上流側の先端温度Tfを検出する。また、第2温度センサSS2は、流路長さに沿ってフィンFNの上流側の先端と同じ位置の管壁WLの管壁温度Thを検出する。算出部23は、先端温度Tfおよび管壁温度Thを取得して、温度差ΔTf(=Th-Tf)を算出する。なお、算出部23と、第1温度センサSS1と、第2温度センサSS2とは、温度差取得部に相当する。
【0062】
エッジ部14を通過した液膜LFは、フィンFNに付着することにより、フィンFNから得た熱で蒸発する。しかしながら、フィンFNの先端での液膜LFの付着は微量であるため(液滴LDの付着・蒸発による径方向の熱流がないため)、フィンFNの先端温度Tfと、管壁温度Thとの温度差ΔTfは小さい。一方で、フィンFNの全体に付着した液膜LFを蒸発させるとフィンFNの熱伝導により、フィンFNの先端温度Tfと、管壁温度Thとには、下記式(4)で表される温度差ΔTcが生じる。式(4)における液滴LDを蒸発させるための熱量Q(W)は、下記式(5)により表される。式(5)における液滴捕集率αは、流路方向に沿う長さh(m)のフィンの0.5回転分(1セグメント分)が蒸発させる液滴LDの割合である。
【0063】
【数4】
d:第3領域13の管径(m)
t:フィンFNの厚み(m)
【数5】
λ:フィンFNの熱伝導率(W/(m・K))
L:蒸発潜熱(kJ/kg)
【0064】
算出部23は、上記式(4),(5)に示されるように、フィンFNの厚みtと、フィンFNの1セグメント当たりの長さhと、蒸発器10に供給される流体の質量速度Gwとを用いて、熱伝導により低下するフィンFNの温度差ΔTcを算出する。本実施形態の流量制御部24は、フィンFNの温度差ΔTcがフィンFNの先端温度Tfと、管壁温度Thとの温度差ΔTfよりも小さくなるように、蒸発器10に供給される流体の流量を制御する。
【0065】
図15は、温度差ΔTc,ΔTfを用いた流量の制御方法のフローチャートである。図15に示される制御フローでは、初めに、制御装置20は、他の装置から蒸発器10に生成するように要求される要求蒸気流量msetを取得する(ステップS1)。流量制御部24は、蒸発器10に供給する水の供給流量を設定する(ステップS2)。初期に設定される供給流量は、要求蒸気流量msetに応じて設定された流量であってもよいし、記憶部22に記憶された予め設定された初期流量であってもよい。
【0066】
水が蒸発器10に供給され始めると、流量mおよび温度差ΔTfが検出される(ステップS3)。算出部23は、第1温度センサSS1および第2温度センサSS2の検出温度から、フィンFNの先端温度Tfと管壁WLの温度Tfとの温度差ΔTfを取得する。また、流量制御部24は、流量センサSS3により検出された蒸発器10に供給された供給流量を取得する。
【0067】
流量制御部24は、温度差ΔTfが算出部23により予め算出されたフィンFNの温度差ΔTcよりも小さいか否かを判断する(ステップS4)。温度差ΔTfが温度差ΔTcよりも小さいと判定した場合には(ステップS4:YES)、流量制御部24は、現時点で蒸発器10に供給している流量mから流量Δmだけ減少させ(ステップS5)、ステップS3以降の処理を繰り返す。流量制御部24が減少させる流量Δmは、下記式(6)を用いて算出部23により算出される。
【0068】
【数6】
ΔX:蒸気クオリティの変更量
なお、本実施形態では、上記式(6)における蒸気クオリティの変更量ΔXは、0.05~0.10の範囲の任意の値が設定されている。変更量ΔXの設定については、変形可能である。
【0069】
ステップS4の処理において、温度差Tfが温度差ΔTc以上と判定された場合には(ステップS4:NO)、現時点の流量mが要求蒸気流量msetよりも小さいか否かを判定する(ステップS6)。流量mが要求蒸気流量msetよりも小さいと判定された場合には、流量制御部24は、流量mから流量Δmだけ増加させ(ステップS7)、ステップS3以降の処理を繰り返す。
【0070】
ステップS6の処理において、流量mが要求蒸気流量mset以上と判定された場合には(ステップS6:NO)、流量制御部24は、蒸発器10に水を供給する制御フローを終了するか否かを判定する(ステップS8)。制御フローの終了のトリガーは、例えば、制御装置20に対するユーザーからの終了操作等であればよい。制御フローを終了しないと判定された場合には(ステップS8:NO)、ステップS3以降の処理が繰り返される。制御フローを処理すると判定された場合には(ステップS:YES)、制御フローが終了する。なお、制御フローの終了判定については、ステップS8以外の処理が行われている時に受け付けてもよい。
【0071】
以上のように、算出部23は、上記式(4),(5)に示されるように、フィンFNの厚みtと、フィンFNの1セグメント当たりの長さhと、蒸発器10に供給される流体の質量速度Gwとを用いて、熱伝導により低下するフィンFNの温度差ΔTcを算出する。本実施形態の流量制御部24は、フィンFNの温度差ΔTcがフィンFNの先端温度Tfと、管壁温度Thとの温度差ΔTfよりも小さくなるように、蒸発器10に供給される流体の流量を制御する。すなわち、算出部23により、蒸発器10に供給される液体をフィンFNが蒸発させる際に必要な熱量Qが、算出部23により算出された温度差ΔTfと、フィンFNの厚みtおよび長さhとを用いて算出される。蒸発器10に供給される流体の流量が多いと、フィンFNに衝突して蒸発する液滴LDが増加するため、フィンFNの温度の低下分を表す温度差ΔTcは上昇する。第2実施形態では、フィンFNの温度の低下分の温度差ΔTcと、算出部23により算出された温度差ΔTfとの比較により、蒸発器10に供給される流体の流量が制御される。これにより、フィンFNに衝突する液滴LDの全てを蒸発させることができる範囲の流量が蒸発器10に供給されるように制御されるため、蒸発器10からの液滴LDの流出を抑制できる。
【0072】
<実施形態の変形例>
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。また、上記実施形態において、ハードウェアによって実現されるとした構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されるとした構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0073】
<変形例1>
上記第1実施形態では、下流側流路FL3内に配置される構造物として、フィンFNを一例に挙げたが、構造物はフィンFN以外の形状を有していてもよい。構造物は、直方体形状や球状であってもよく、旋回流を発生させない形状でもよい。構造物の形状は、エッジ部14により管壁WLではなく、中心軸OL側に導かれた流体に衝突しやすい位置に配置されている範囲で変形可能である。フィンFNは、第1フィンFN1が発生させる旋回流と逆向きの旋回流を発生させる第2フィンFN2を有していたが、第2フィンFN2を有していなくてもよい。換言すると、フィンFNは、第2フィン構造SF2のように、第1フィンのみで構成されていてもよい。
【0074】
上記第1実施形態の蒸気発生装置100は、蒸発器10と、ヒータ30とを備える範囲で変形可能である。蒸気発生装置100は、例えば、制御装置20を備えていなくてもよい。上記第2実施形態では、エッジ部14の位置に応じて、蒸発器10に供給される流量が制御された。しかし、他の実施形態では、蒸発器10に要求される蒸気生成量が予めわかっている場合には、要求蒸気生成量に応じて、エッジ部14が環状流F3と噴霧流F4との境界よりも上流側に位置するように、蒸発器10が設計されてもよい。上記第2実施形態で説明した制御装置20による制御は、予めわかっている仕様に基づく蒸発器10の設計方法とも換言できる。
【0075】
<変形例2>
上記第1実施形態のエッジ部14は、一例であって、中間流路FL2内に形成され、中間流路FL2の一部分の断面積を他の部分よりも小さくする範囲で変形可能である。図16は、変形例の噴霧化部14aの説明図である。図16には、変形例の蒸発器10aの一部の概略断面図が示されている。変形例の蒸発器10aでは、図16に示されるように、中間流路FL2aのうち噴霧化部14aよりも上流側の断面積は一定である。下流側流路FL3aの断面積は、中間流路FL2aの噴霧化部14aよりも上流側の断面積よりも大きく、かつ、一定である。この場合に、中間流路FL2aの管壁WLaが、下流側流路FL3aの断面積よりも小さくする噴霧化部14aに相当する。噴霧化部14aにより、噴霧化部14aを通過して下流側流路FL3aに流入した流体は、下流側流路FL3aの管壁WLaを液膜LFとして伝わらずに、図16では図示が省略されている下流側の構造物に衝突しやすくなる。
【0076】
図17は、変形例の噴霧化部14bの説明図である。図17には、変形例の蒸発器10bの一部の概略断面図が示されている。変形例の蒸発器10bでは、図17に示されるように、中間流路FL2bおよび下流側流路FL3bの断面積は、同じ、かつ、一定である。中間流路FL2bの一部に、複数の貫通孔HLが形成された噴霧化部14bが配置されている。中間流路FL2bを流れる流体は、噴霧化部14bの貫通孔HLを通って、下流側流路FL3bに流入する。この変形例では、噴霧化部14bが、下流側流路FL3bの断面積よりも、中間流路FL2bの断面積を小さくしている。噴霧化部14bにより、噴霧化部14bを通過して下流側流路FL3bに流入した流体は、下流側流路FL3bの管壁WLbを液膜LFとして伝わらずに、図17では図示が省略されている下流側の構造物に衝突しやすくなる。
【0077】
上記第1実施形態のエッジ部14は、管壁WLの全周に亘って形成されていたが、周方向に沿った一部(例えば0~180°の範囲)に形成されていてもよい。また、流路FLの断面は円形状以外の矩形状であってもよく、エッジ部14は、流路FLの断面形状に合わせて変形可能である。
【0078】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0079】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
蒸気発生器であって、
流体が流通する第1流路と、前記第1流路内に配置された構造物と、を有する噴霧蒸発部と、
前記第1流路の上流側に配置される第2流路と、前記第2流路内に形成され、前記第2流路の一部分の断面積を他の部分よりも小さくする噴霧化部と、を有する流体噴霧化部と、
前記第1流路内および前記第2流路内を流通する流体を加熱する加熱部と、
を備える、蒸気発生器。
[適用例2]
適用例1に記載の蒸気発生器であって、
前記噴霧化部は、上流側から下流側に向かって、前記第2流路の一部分の断面積が徐々に小さくなる傾斜部と、前記傾斜部の下流側端部から下流側に向けて流通する流体が前記第1流路の内周部と接触しないように、前記傾斜部の下流側端部と前記内周部との間に形成される段差部とを有している、蒸気発生器。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の蒸気発生器であって、
前記構造物は、前記内周部との間に螺旋状の流路を形成する流路形成部材である、蒸気発生器。
[適用例4]
適用例1から適用例3までのいずれか一項に記載の蒸気発生器であって、
前記流路形成部材は、
前記内周部との間に、前記第1流路内を流れる流体に対して第1の方向の旋回流を発生させる螺旋状の流路を形成する第1流路形成部と、
前記内周部との間に、前記第1流路形成部の下流側に接続されて、前記第1の方向とは逆方向の旋回流を発生させる螺旋状の流路を形成する第2流路形成部と、を有する、蒸気発生器。
[適用例5]
適用例1から適用例4までのいずれか一項に記載の蒸気発生器であって、さらに、
前記第1流路内および前記第2流路内において、環状流から噴霧流へと変化する境界における液体と蒸気との合計の流量に対する蒸気の流量の割合を算出する算出部と、
前記噴霧化部が前記境界よりも上流側に位置するように、前記算出部により算出される前記割合を用いて、前記蒸気発生器に供給される流体の流量を制御する前記流量制御部と、
を備える、蒸気発生器。
[適用例6]
適用例1から適用例5までのいずれか一項に記載の蒸気発生器であって、
前記算出部は、前記噴霧化部における最小の断面積を、前記第2流路の上流側における入口の断面積で除した面積比であって、前記蒸気発生器に供給される流体の流量に応じて、前記第1流路の下流側から液滴が流出しない面積比の範囲を算出し、
前記流量制御部は、前記面積比に応じて、前記第1流路の下流側から液滴が流出しない範囲で、前記蒸気発生器に供給される流体の流量を制御する、蒸気発生器。
[適用例7]
適用例1から適用例6までのいずれか一項に記載の蒸気発生器であって、さらに、
前記流路形成部材の上流側の中心の温度と、前記流路形成部材の前記上流側と流路長さに沿って同じ位置にある前記第1流路を形成する管壁の温度と、の温度差を取得する温度差取得部と、
前記流路形成部材の厚みと、前記流路長さに沿った前記流路形成部材の長さと、前記蒸気発生器に供給される流体の流量と、を用いて、前記流路形成部材が液体の流体を蒸発させる際の前記流路形成部材の温度の低下分を算出する算出部と、
前記低下分が、前記温度差取得部により取得された温度差よりも小さくなるように、前記蒸気発生器に供給される液体の流量を制御する流量制御部と、
を備える、蒸気発生器。
【符号の説明】
【0080】
10,10a,10b,10x,10y,10z…蒸発器
11…第1領域
12…第2領域(流体噴霧化部)
13…第3領域(噴霧蒸発部)
14…エッジ部(噴霧化部)
14I…傾斜部
14U…段差部
14a,14b…噴霧化部
20…制御装置
21…CPU
22…記憶部
23…算出部
24…流量制御部
25…加熱制御部
30…ヒータ(加熱部)
40…タンク
50…ポンプ
100…蒸気発生装置(蒸気発生器)
101…上流側蒸発器
102…下流側蒸発器
CA…カメラ
F1…気泡流
F2…スラグ流
F3…環状流
F4…噴霧流
FL,FLx…流路
FL1…上流側流路
FL2,FL2a,FL2b…中間流路
FL3,FL3a,FL3b…下流側流路
FN…フィン(流路形成部材)
FN1…第1フィン(第1流路形成部)
FN2…第2フィン(第2流路形成部)
HL…貫通孔
LD…液滴
LF…液膜
OL…中心軸
P1~P5…領域
Q,Q1,Q2…熱量
Rd…管径比
SF1…第1フィン構造
SF2…第2フィン構造
SS1…第1温度センサ
SS2…第2温度センサ
SS3…流量センサ
ΔTc…温度差
Tf…フィンの先端温度
ΔTf…温度差
Th…管壁温度
WL,WLa,WLb…管壁(内周部)
ΔX…流量の変更量
bp…境界の蒸気クオリティ
cr…下限の蒸気クオリティ
set…蒸気クオリティ
din…入口管径
dout…出口管径
m…流量
set…要求蒸気流量
図1
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