(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064263
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】タイヤ在庫管理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/087 20230101AFI20240507BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20240507BHJP
【FI】
G06Q10/087
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172719
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】原 光平
(72)【発明者】
【氏名】戸田 隼人
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB63
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】高精度にタイヤの在庫量を予測可能なタイヤ在庫管理装置が提供される。
【解決手段】タイヤ在庫管理装置(10)は、将来の特定時期におけるタイヤの在庫量を算出するタイヤ在庫管理装置であって、特定時期に関連するタイヤの入庫予測数量を取得する入庫量取得部(131)と、特定時期に関連するタイヤの出庫予測数量を取得する出庫量取得部(132)と、入庫予測数量及び出庫予測数量に基づいて特定時期の在庫量を算出する在庫量算出部(133)と、を備え、入庫予測数量は、特定時期より前のタイヤの取り外し、使用及び搬送の少なくとも1つの時期を示すタイヤ運用時期データに基づいて生成される入庫データを用いて算出される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
将来の特定時期におけるタイヤの在庫量を算出するタイヤ在庫管理装置であって、
前記特定時期に関連する前記タイヤの入庫予測数量を取得する入庫量取得部と、
前記特定時期に関連する前記タイヤの出庫予測数量を取得する出庫量取得部と、
前記入庫予測数量及び前記出庫予測数量に基づいて前記特定時期の在庫量を算出する在庫量算出部と、を備え、
前記入庫予測数量は、前記特定時期より前の前記タイヤの取り外し、使用及び搬送の少なくとも1つの時期を示すタイヤ運用時期データに基づいて生成される入庫データを用いて算出される、タイヤ在庫管理装置。
【請求項2】
前記入庫データは、前記タイヤ運用時期データで示される時期に予め設定された所定の期間を加算した入庫予測を含む、請求項1に記載のタイヤ在庫管理装置。
【請求項3】
前記タイヤ運用時期データで示される時期に基づいて前記特定時期より前の前記タイヤの取り外しの時期が予測されて、
前記入庫データは、前記タイヤの取り外しの時期に予め設定された所定の期間を加算して算出される、請求項2に記載のタイヤ在庫管理装置。
【請求項4】
前記タイヤ運用時期データで示される時期は、前記特定時期より前の前記タイヤの使用の時期を含み、
前記所定の期間は、前記タイヤの使用の回数に応じて変更される、請求項2又は3に記載のタイヤ在庫管理装置。
【請求項5】
前記特定時期は、第1特定時期と第2特定時期を含む複数の時期である、請求項2又は3に記載のタイヤ在庫管理装置。
【請求項6】
前記入庫データは、前記タイヤ運用時期データのうち前記第1特定時期より前の前記タイヤの取り外し、使用及び搬送の少なくとも1つの時期を示すデータに基づいて生成される第1入庫データと、前記タイヤ運用時期データのうち前記第2特定時期より前の前記タイヤの取り外し、使用及び搬送の少なくとも1つの時期を示すデータに基づいて生成される第2入庫データと、を含む、請求項5に記載のタイヤ在庫管理装置。
【請求項7】
前記第2入庫データで用いられる前記所定の期間は、前記第1入庫データで用いられる前記所定の期間より短い、請求項6に記載のタイヤ在庫管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ在庫管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機用タイヤの摩耗量を予測する技術が知られている。摩耗量が所定値に達した航空機用タイヤは交換される。同一の交換時期に一定数以上のタイヤの交換が集中した場合、交換作業の遅延又は在庫不足に陥るおそれがある。そこで、交換時期の把握による交換業務の計画化が望まれている。ここで、航空機用タイヤに限定されず、乗用自動車、トラック、バス等に装着されるタイヤについても交換業務の計画化が望まれている。
【0003】
交換業務の計画化のために、例えば特許文献1は、タイヤの溝残量と移動物体の走行情報に基づいてタイヤの交換時期を算出し、交換時期に交換されるタイヤの数が閾値を超える場合、所定の通知先に通知する、タイヤの管理方法を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、タイヤの交換時期だけでなく、タイヤの在庫量を予測してさらに計画的にタイヤを管理することが求められている。例えば航空機用タイヤでは、航空機から取り外された使用済みのタイヤ付きホイールが補修等のサービス提供会社に送られる。そして、サービス提供会社においてホイールから使用済みのタイヤが取り外されて、ホイールの点検(ホイールメンテナンス)を経て、ホイールに別のタイヤが組み付けられる。別のタイヤが組み付けられたホイールは、航空会社に発送されて再び入庫することがある。タイヤの在庫量の予測では、このようなホイールメンテナンスについても考慮されることが好ましい。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、高精度にタイヤの在庫量を予測可能なタイヤ在庫管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の一実施形態に係るタイヤ在庫管理装置は、
将来の特定時期におけるタイヤの在庫量を算出するタイヤ在庫管理装置であって、
前記特定時期に関連する前記タイヤの入庫予測数量を取得する入庫量取得部と、
前記特定時期に関連する前記タイヤの出庫予測数量を取得する出庫量取得部と、
前記入庫予測数量及び前記出庫予測数量に基づいて前記特定時期の在庫量を算出する在庫量算出部と、を備え、
前記入庫予測数量は、前記特定時期より前の前記タイヤの取り外し、使用及び搬送の少なくとも1つの時期を示すタイヤ運用時期データに基づいて生成される入庫データを用いて算出される。
この構成により、高精度にタイヤの在庫量を予測することができる。
【0008】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記入庫データは、前記タイヤ運用時期データで示される時期に予め設定された所定の期間を加算した入庫予測を含む。
この構成により、例えばホイールメンテナンス等を経たタイヤの再入庫等を、複雑な計算をすることなく予測に含めることができる。
【0009】
(3)本開示の一実施形態として、(2)において、
前記タイヤ運用時期データで示される時期に基づいて前記特定時期より前の前記タイヤの取り外しの時期が予測されて、
前記入庫データは、前記タイヤの取り外しの時期に予め設定された所定の期間を加算して算出される。
この構成により、例えばホイールメンテナンス等を経たタイヤの再入庫等を考慮して、長期の予測についても精度を高めることができる。
【0010】
(4)本開示の一実施形態として、(2)又は(3)において、
前記タイヤ運用時期データで示される時期は、前記特定時期より前の前記タイヤの使用の時期を含み、
前記所定の期間は、前記タイヤの使用の回数に応じて変更される。
この構成により、例えば所定期間毎に行われるホイールメンテナンスの作業期間等を、複雑な計算をすることなく予測に含めることができる。
【0011】
(5)本開示の一実施形態として、(2)から(4)のいずれかにおいて、
前記特定時期は、第1特定時期と第2特定時期を含む複数の時期である。
この構成により、将来のタイヤの在庫量の推移を予測することができる。
【0012】
(6)本開示の一実施形態として、(5)において、
前記入庫データは、前記タイヤ運用時期データのうち前記第1特定時期より前の前記タイヤの取り外し、使用及び搬送の少なくとも1つの時期を示すデータに基づいて生成される第1入庫データと、前記タイヤ運用時期データのうち前記第2特定時期より前の前記タイヤの取り外し、使用及び搬送の少なくとも1つの時期を示すデータに基づいて生成される第2入庫データと、を含む。
この構成により、近い将来のタイヤの在庫量について、さらに高精度な予測が可能になる。
【0013】
(7)本開示の一実施形態として、(6)において、
前記第2入庫データで用いられる前記所定の期間は、前記第1入庫データで用いられる前記所定の期間より短い。
この構成により、近い将来のタイヤの在庫量について、さらに高精度な予測が可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、高精度にタイヤの在庫量を予測可能なタイヤ在庫管理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るタイヤ在庫管理装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1のタイヤ在庫管理装置を備えるタイヤ在庫管理システムの構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、タイヤ在庫管理装置が用いるデータ及び予測手法を説明するための図である。
【
図4】
図4は、タイヤ在庫管理装置が実行するタイヤ在庫管理方法の処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係るタイヤ在庫管理装置が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0017】
図1は、本実施形態に係るタイヤ在庫管理装置10の構成例を示す。
図2は、
図1のタイヤ在庫管理装置10を備えるタイヤ在庫管理システムの構成例を示す。タイヤ在庫管理装置10は、航空機用のタイヤ30の在庫を管理する装置である。タイヤ在庫管理装置10は、将来の特定時期におけるタイヤ30の在庫量の算出、すなわち、タイヤ30の在庫量の予測を行う。タイヤ在庫管理装置10は、予測結果を例えば航空機の管理者に提供し、管理者が在庫量の多少を判定して、少ない場合に新たなタイヤ30を発注する等の対応をとらせることができる。ここで、本実施形態において、タイヤ30は航空機用であるが、乗用自動車、トラック、バス等の車両用であってよい。
【0018】
タイヤ在庫管理装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を備える。制御部13は、演算部130と、入庫量取得部131と、出庫量取得部132と、在庫量算出部133と、出力部134と、を備える。タイヤ在庫管理装置10は、ハードウェア構成として、例えばコンピュータであってよい。タイヤ在庫管理装置10の構成要素の詳細については後述する。
【0019】
タイヤ在庫管理装置10は、ネットワーク40で接続される第1サーバ50及び第2サーバ60の少なくとも1つとともに、タイヤ在庫管理システムを構成してよい。ネットワーク40は、例えばインターネットである。また、ネットワーク40は、例えば一部においてLAN(Local Area Network)を含んで構成されてよい。
【0020】
第1サーバ50及び第2サーバ60のそれぞれは、例えばタイヤ在庫管理装置10とは別のコンピュータである。本実施形態において、第1サーバ50は航空会社のコンピュータであって、航空機の運航に関するデータを管理する。本実施形態において、第2サーバ60は、MRO(Maintenance Repair Overhaul)サービスを提供する会社のコンピュータであって、航空機用のタイヤ30及びホイールの補修、点検及び整備関連に関するデータを管理する。以下において、MROサービスを提供する会社は「ショップ」と称される。また、第1サーバ50は、タイヤ在庫管理装置10から出力される予測結果等を、ネットワーク40を介して取得して、第1サーバ50に接続されたディスプレイ等の表示装置に表示させてよい。同様に、第2サーバ60は、タイヤ在庫管理装置10から出力される予測結果等を、ネットワーク40を介して取得して、第2サーバ60に接続されたディスプレイ等の表示装置に表示させてよい。
【0021】
ここで、タイヤ在庫管理システムは
図2に示される構成に限定されない。例えば、タイヤ在庫管理システムは、タイヤ在庫管理装置10、第1サーバ50及び第2サーバ60のうちの1つが、他の1つと統合(一体化)された構成であってよい。
【0022】
以下、タイヤ在庫管理装置10の構成要素の詳細が説明される。通信部11は、ネットワーク40に接続する1つ以上の通信モジュールを含んで構成される。通信部11は、例えば4G(4th Generation)、5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応する通信モジュールを含んでよい。通信部11は、例えば無線のLAN規格(一例としてIEEE802.11)に対応する通信モジュールを含んでよい。また、通信部11は、例えば有線のLAN規格に対応する通信モジュールを含んでよい。
【0023】
記憶部12は、1つ以上のメモリである。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部12は、例えばタイヤ在庫管理装置10に内蔵されるが、任意のインターフェースを介してタイヤ在庫管理装置10によって外部からアクセスされる構成も可能である。
【0024】
記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出において使用される各種のデータを記憶する。また、記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出の結果及び中間データを記憶してよい。
【0025】
本実施形態において、記憶部12は、通信部11を介して取得されたタイヤ運用時期データを記憶する。タイヤ運用時期データは、詳細について後述するが、特定時期より前のタイヤ30の取り外し、使用及び搬送の少なくとも1つの時期を示すデータである。ここで、特定時期は、タイヤ在庫管理装置10がタイヤ30の在庫量を算出する(予測する)将来の時期である。また、記憶部12は、後述する入庫データも記憶する。
【0026】
制御部13は、1つ以上のプロセッサである。プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。制御部13は、タイヤ在庫管理装置10の全体の動作を制御する。
【0027】
ここで、タイヤ在庫管理装置10は、以下のようなソフトウェア構成を有してよい。タイヤ在庫管理装置10の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部12に記憶される。記憶部12に記憶されたプログラムは、制御部13のプロセッサによって読み込まれると、プロセッサを演算部130、入庫量取得部131、出庫量取得部132、在庫量算出部133及び出力部134として機能させる。
【0028】
演算部130は、特定時期に関連するタイヤ30の入庫予測数量及び出庫予測数量を得るための演算を行う。例えば入庫予測数量は、演算部130によって入庫データを用いて算出される。演算部130は、タイヤ30の入庫予測を含んで構成される入庫データを生成する。演算部130は、タイヤ運用時期データで示される時期に予め設定された所定の期間を加算する演算を行って、タイヤ30の入庫予測を行う。ここで、タイヤ運用時期データで示す時期は、タイヤ30の取り外しの時期であり得るし、使用の時期であり得るし、搬送の時期であり得る。また、それぞれの時期の種類に応じて、加算される所定の期間が異なる。具体例については、
図3を参照しながら後述する。
【0029】
入庫量取得部131は、特定時期に関連するタイヤ30の入庫予測数量を取得する。ここで、タイヤ30の入庫予測数量は、タイヤ30の種類毎に異なるものと扱われてよい。すなわち、タイヤ在庫管理装置10は、種類毎にタイヤ30の在庫を管理してよい。ただし、本実施形態ではタイヤ30の種類が1つであるとして説明する。
【0030】
出庫量取得部132は、特定時期に関連するタイヤ30の出庫予測数量を取得する。ここで、タイヤ30の出庫予測数量は、タイヤ30の種類毎に異なるものと扱われてよい。すなわち、タイヤ在庫管理装置10は、種類毎にタイヤ30の在庫を管理してよい。ただし、上記のように、本実施形態ではタイヤ30の種類が1つであるとして説明する。
【0031】
在庫量算出部133は、入庫予測数量及び出庫予測数量に基づいて特定時期の在庫量を算出する。本実施形態において、在庫量算出部133は、特定時期における入庫予測数量と出庫予測数量との差分を在庫量として算出する。
【0032】
出力部134は、算出された特定時期の在庫量を含む算出結果を、表示装置等に対して出力する。第1サーバ50及び第2サーバ60のディスプレイ等が、算出結果を表示する表示装置として機能し得る。
【0033】
図3は、タイヤ在庫管理装置10が用いるデータ及び予測手法を説明するための図である。ここで、航空会社は、航空機の運行計画に従って航空機のタイヤ30を使用したり、交換したりする。航空会社は、取り外されたタイヤ30及びホイールを、ショップに発送してホイールメンテナンス等の後に再び入庫することがある。航空会社は、第1サーバ50によって、タイヤ30及びホイールに個体識別番号を付して管理し、使用状態に応じて例えばホイールメンテナンス等をショップに依頼する。ショップは、航空機から取り外された使用済みのタイヤ30付きホイールを受け入れる。ショップでは、ホイールから使用済みのタイヤ30が取り外されて、ホイールメンテナンス等を経て、ホイールに別のタイヤ30を組み付けて航空会社に発送する。ショップは、第2サーバ60によって、航空機から取り外されたタイヤ30及びホイールの受け入れ及び搬送の状態を管理する。タイヤ在庫管理装置10は、第1サーバ50及び第2サーバ60からタイヤ30に関する情報を取得する。そして、タイヤ在庫管理装置10は、取得した情報に基づいて高精度にタイヤ30の在庫量を予測し、予測結果を航空会社に提供することによって、航空会社におけるタイヤ30の在庫管理を支援できる。ここで、使用済みのタイヤ30についてリトレッドが行われる場合もある。リトレッドは、タイヤ30のトレッドゴムを削ってから新しいゴムを貼り付けて、加硫して再利用することをいう。以下、ホイールメンテナンス等とは、ホイールメンテナンスを代表とする、航空機から取り外された使用済みのタイヤ30付きホイールを再入庫可能にするための補修、点検及び整備等の作業を意味する。ホイールメンテナンス等は、ホイールメンテナンスの他に、例えばホイールの洗浄を含んでよい。また、ホイールメンテナンス等は、ホイールメンテナンスの他に、リトレッドを含んでよい。また、以下において「タイヤ30及びホイール」の発送、受け入れ、再発送を、単に「タイヤ30」の発送、受け入れ、再発送と表記して説明することがある。
【0034】
タイヤ在庫管理装置10は、第1サーバ50及び第2サーバ60からタイヤ運用時期データとして以下のDT1~DT5を取得する。DT1は、第1サーバ50によって管理されているタイヤ30の「使用状態」の情報である。DT2は、第1サーバ50によって管理されているタイヤ30の「取り外し計画」の情報である。DT3は、第1サーバ50によって管理されているタイヤ30の「取り外し実績」の情報である。DT4は、第2サーバ60によって管理されている、航空機から取り外されたタイヤ30がショップで受け入れられた「受け入れ」の情報である。DT5は、第2サーバ60によって管理されている、ホイールメンテナンス等が完了して航空会社に入庫するために発送されたタイヤ30の「発送」の情報である。タイヤ在庫管理装置10は、DT1~DT5の全てを取得可能であるが、DT1~DT5の順(番号の大きい順)に予測の精度を高めることができる。そのため、より番号の大きいタイヤ運用時期データを優先的に用いて予測を行うことが好ましい。以下、タイヤ運用時期データの種類を示す場合に、例えばDT1又は「使用状態」のように簡略化した表記が用いられることがある。ここで、「使用状態」は、少なくともタイヤ30の使用の時期を示すタイヤ運用時期データである。「取り外し計画」及び「取り外し実績」は、少なくともタイヤ30の取り外しの時期を示すタイヤ運用時期データである。また、「受け入れ」及び「発送」は、少なくともタイヤ30の搬送の時期を示すタイヤ運用時期データである。
【0035】
上記のように、演算部130は、特定時期に関連するタイヤ30の入庫予測数量及び出庫予測数量を得るための演算を行う。演算部130は、入庫予測数量を算出するために、タイヤ運用時期データに基づいて入庫データを生成する。入庫データは、
図3の棒グラフで示される入庫予測(入庫本数)を含む。
図3の例では、タイヤ在庫管理装置10の計算実行日が7月14日であり、予測日である特定時期は8月10日(計算実行日を含めて4週間後)を含む。入庫データとして、8月10日までの入庫予測が行われている。
【0036】
演算部130は、タイヤ運用時期データである「使用状態」に基づいて、摩耗予測によってタイヤ30の取り外し時期を予測する。そして、演算部130は、取り外されたタイヤ30がホイールメンテナンス等を経て再び入庫されるとして入庫予測を行う。例えば
図3の(A)で示すように、演算部130は、摩耗予測によってタイヤ30が7月28日に取り外されると予測し、ホイールメンテナンス等の作業時間に対応する所定の期間を加算して入庫日が8月10日であると予測する。このように、入庫予測は、タイヤ運用時期データで示される時期に予め設定された所定の期間を加算することで行われる。そのため、ホイールメンテナンス等を経たタイヤ30の再入庫等を、複雑な計算をすることなく予測に含めることができる。
【0037】
図3の(A)では、タイヤ運用時期データで示される時期(タイヤ30の使用の時期)に基づいて特定時期より前のタイヤ30の取り外しの時期が予測された上で、タイヤ30の取り外しの時期に予め設定された所定の期間を加算して入庫データが算出される。そのため、ホイールメンテナンス等を経たタイヤ30の再入庫等を考慮して、長期の予測についても精度を高めることができる。
【0038】
ここで、タイヤ30の取り外しの時期に関して、摩耗エネルギーから航空機用のタイヤ30の摩耗量を予測する手法は、公知の技術(例えば特開2013-113724号公報に記載された技術)を用いればよい。別の例として、演算部130は、「使用状態」からタイヤ30の内圧、タイヤ30にかかる荷重、航空機の速度、タイヤ30に発生するスリップ角及び航空機の制動力等の情報を得られる場合に、これらのパラメータに基づいてタイヤ30の摩耗量を予測してよい。演算部130は、予測した摩耗量からタイヤ30の溝残量を算出して、溝残量が所定値以下になるまでの日数を算出することによって、タイヤ30の取り外しの時期を予測してよい。ここで、タイヤ30の取り外しの時期の予測の精度を高めるために、「取り外し計画」の情報がさらに参照されてよい。「取り外し計画」は航空会社によって管理される、より精度の高い、タイヤ30の取り外し予定についての情報である。
【0039】
また、
図3の(A)の例では、ホイールメンテナンス等の作業に対応する所定の期間は13日であるが、特定時期より前のタイヤ30の使用の回数に応じて変更されてよい。例えば、特に航空機用のタイヤ30では、タイヤ30が特定回数使用されると、ショップにおいてホイールメンテナンスを実行する必要がある。換言すれば、タイヤ30が特定回数使用されていない場合に、ホイールメンテナンスの作業をせずに、ホイールに別のタイヤ30を組み付けて発送することができる。ホイールメンテナンスの作業の有無に応じて、タイヤ30のショップにおける滞在期間が変化する。所定の期間をタイヤ30の使用の回数に応じて変更することによって、例えば所定期間毎に行われるホイールメンテナンスの作業期間等を、複雑な計算をすることなく予測に含めることができる。
【0040】
また、演算部130は、タイヤ運用時期データである「取り外し実績」に基づいて、取り外されたタイヤ30がホイールメンテナンス等を経て再び入庫されるとして入庫予測を行う。例えば
図3の(B)で示すように、演算部130は、計算実行日前のタイヤ30が取り外された日に、ホイールメンテナンス等の作業時間に対応する所定の期間を加算して入庫予測を行う。タイヤ30の取り外しについて実績日が用いられるため、さらに精度の高い入庫予測を行うことができる。
【0041】
また、演算部130は、タイヤ運用時期データである「受け入れ」に基づいて、取り外されたタイヤ30がホイールメンテナンス等を経て再び入庫されるとして入庫予測を行う。例えば
図3の(C)で示すように、演算部130は、計算実行日にショップが受け取ったタイヤ30について、ホイールメンテナンスの作業に対応する所定の期間を加算して入庫予測を行う。ショップが受け取った実際の日が用いられるため、さらに精度の高い入庫予測を行うことができる。ここで、所定の期間は、航空会社からショップまでの搬送期間を含まなくてよいため、例えば
図3の(A)に比べて短く設定される。
【0042】
また、演算部130は、タイヤ運用時期データである「発送」に基づいて、タイヤ30がホイールメンテナンス等を完了して搬送中であり、再び入庫されるとして入庫予測を行う。例えば
図3の(D)で示すように、演算部130は、計算実行日に搬送中であるタイヤ30を入庫本数に加える入庫予測を行う。この処理によって、入庫本数の漏れを無くすことができる。
【0043】
以上のような入庫予測のデータ(入庫データ)を用いて、演算部130は入庫予測数量の演算を行う。演算部130は、算出した入庫予測数量を入庫量取得部131に出力する。
【0044】
また、出庫予測数量は、「取り外し計画」の情報に基づいて算出することができる。例えば航空機に取り付けられていたタイヤ30が取り外されると、代わりのタイヤ30が出庫される。演算部130は、算出した出庫予測数量を出庫量取得部132に出力する。
【0045】
在庫量算出部133は、特定時期における入庫予測数量と出庫予測数量との差分を在庫量として算出する。
図3の折れ線グラフは在庫量の例を示す。
【0046】
出力部134は、算出された特定時期の在庫量を含む算出結果を、表示装置(例えば第1サーバ50及び第2サーバ60のディスプレイ)等に対して出力してよい。
【0047】
ここで、タイヤ在庫管理装置10が在庫量を予測する特定時期(予測日)は1つでよいが、複数であることが好ましい。
図3の例では、特定時期は、第1特定時期と第2特定時期を含む複数の時期である。複数の時期について在庫量が予測されることによって、将来のタイヤ30の在庫量の推移を予測することができる。
【0048】
特定時期が複数である場合に、第2入庫データで用いられる所定の期間は、第1入庫データで用いられる所定の期間より短くてよい。
図3の例では、第1入庫データ(第1の入庫予測のデータ)は、タイヤ運用時期データのうち第1特定時期(8月10日)より前のタイヤ30の取り外し、使用及び搬送の少なくとも1つの時期を示すデータに基づいて生成される。第1入庫データの予測期間は長期であって、タイヤ運用時期データのうち「使用状態」(DT1)が用いられる。つまり、第1の入庫予測では、摩耗予測に基づくタイヤ30の取り外し時期の予測を含む。一方、第2入庫データ(第2の入庫予測のデータ)は、タイヤ運用時期データのうち第2特定時期(7月27日)より前のタイヤ30の取り外し、使用及び搬送の少なくとも1つの時期を示すデータに基づいて生成される。第2入庫データの予測期間は、第1入庫データほど長期でなく、タイヤ運用時期データのうち「取り外し計画」、「取り外し実績」、「受け入れ」及び「発送」(DT2~DT5)を用いることができる。つまり、第2の入庫予測では、タイヤ30の取り外し時期等について精度の高い予定日又は実際の日を用いた予測ができる。そのため、近い将来のタイヤ30の在庫量(第2入庫データに基づく在庫量)について、さらに高精度な予測が可能になる。
【0049】
ここで、予測精度をさらに高めるために、演算部130が実行する入庫予測は、さらに多くのパターンを含んでよい。例えばタイヤ運用時期データである「受け入れ」は、航空機から取り外されたタイヤ30の受け入れだけでなく、ショップ外で実行されたリトレッド等の作業完了後のタイヤ30の受け入れに関する情報を含めてよい。演算部130は、これらの情報を用いて、さらに精度の高い予測を行ってよい。ここで、取り外されたタイヤ30は、必ずリトレッドされるわけでなく、ショップで代替品(新品)を航空会社に送付することも多い。例えばタイヤ運用時期データである「発送」は代替品の送付の情報を含む。
【0050】
図4は、タイヤ在庫管理装置10の制御部13が実行するタイヤ在庫管理方法の処理を例示するフローチャートである。
【0051】
演算部130は、タイヤ運用時期データを取得する(ステップS1)。タイヤ運用時期データは「使用状態」、「取り外し計画」、「取り外し実績」、「受け入れ」及び「発送」(DT1~DT5)の少なくとも1つ以上であってよい。
【0052】
演算部130は、入庫データを生成する(ステップS2)。上記のように、入庫データは特定時期までの入庫予測のデータである。演算部130は、入庫データに基づいて入庫予測数量を算出し、出庫予測数量も算出する。
【0053】
入庫量取得部131は、特定時期に関連するタイヤ30の入庫予測数量を取得する(ステップS3)。
【0054】
出庫量取得部132は、特定時期に関連するタイヤ30の出庫予測数量を取得する(ステップS4)。
【0055】
在庫量算出部133は、入庫予測数量及び出庫予測数量に基づいて特定時期の在庫量を算出する(ステップS5)。
【0056】
出力部134は、算出された特定時期の在庫量を含む算出結果を出力する(ステップS6)。特定時期の在庫量だけでなく、例えば
図3のような在庫量の推移が第1サーバ50のディスプレイに表示されてよい。このような表示に基づいて、航空会社はタイヤ30、ホイールのショップへの発注、修理の効率化を図ることができる。また、航空会社は在庫枯渇のリスクを低減することができる。また、在庫推移を把握することによって、航空会社は在庫レベル(保有すべき在庫数の下限)を下げて、在庫削減及び在庫保管スペースの有効活用を図ることができる。
【0057】
以上のように、本実施形態に係るタイヤ在庫管理装置10は、上記の構成によって、高精度にタイヤ30の在庫量を予測可能である。
【0058】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム及びプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献】
【0059】
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本開示の一実施形態は「No.9 産業と技術革新の基盤をつくろう」等に貢献する技術となり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0060】
10 タイヤ在庫管理装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
30 タイヤ
40 ネットワーク
50 第1サーバ
60 第2サーバ
130 演算部
131 入庫量取得部
132 出庫量取得部
133 在庫量算出部
134 出力部