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特開2024-64266吸着部材、その製造方法及び真空断熱材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064266
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】吸着部材、その製造方法及び真空断熱材
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/38 20060101AFI20240507BHJP
   F16L 59/065 20060101ALI20240507BHJP
   C22C 21/02 20060101ALI20240507BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20240507BHJP
   B65D 81/26 20060101ALI20240507BHJP
   C22F 1/04 20060101ALI20240507BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20240507BHJP
【FI】
B65D81/38 A
F16L59/065
C22C21/02
C22C21/00 M
B65D81/26 H
C22F1/04 A
C22F1/00 622
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 691Z
C22F1/00 692A
C22F1/00 692B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172723
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】313012349
【氏名又は名称】旭ファイバーグラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】友谷 真久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥平
【テーマコード(参考)】
3E067
3H036
【Fターム(参考)】
3E067BA12A
3E067BB01A
3E067BB06A
3E067BB12A
3E067BB14A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB25A
3E067BB26A
3E067CA05
3E067CA06
3E067FB07
3E067FC01
3E067GA11
3E067GA15
3E067GB09
3H036AA09
3H036AB13
3H036AB23
3H036AB24
3H036AB25
3H036AB28
3H036AB29
3H036AC01
(57)【要約】
【課題】本発明は、製造過程で包装材にピンホールが生じるのを低減し、包装後の吸着剤の吸着性能の劣化を抑制した吸着部材、その製造方法及び真空断熱材を提供することを目的とする。
【解決手段】水分吸着剤と、1層又は複数層のシート状の包装材であって、折り重ねられることによって、水分吸着剤を収容する吸着剤収容空間と、吸着剤収容空間から包装材の外部まで屈曲しながら延びる通気路とを形成している包装材とを備え、包装材は、アニール処理されたアルミニウムシートによって形成されている、吸着部材。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分吸着剤と、
1層又は複数層のシート状の包装材であって、折り重ねられることによって、前記水分吸着剤を収容する吸着剤収容空間と、前記吸着剤収容空間から前記包装材の外部まで屈曲しながら延びる通気路とを形成している前記包装材とを備え、
前記包装材は、アニール処理されたアルミニウムシートによって形成されている、吸着部材。
【請求項2】
前記アルミニウムシートは、Alを98.0質量%以上と、Siを0.7質量%以下と、Feを0.7質量%以下と、Cuを0.1質量%以下と、Mnを0.05質量%以下と、Mgを0.05質量%以下と、Znを0.05質量%以下とを含む、請求項1に記載の吸着部材。
【請求項3】
前記包装材は、1枚のアルミニウムシートから形成された1層の包装材であるか、又は重ね合わせた複数枚のアルミニウムシートから形成された複数層の包装材である、請求項1に記載の吸着部材。
【請求項4】
前記アニール処理されたアルミニウムシートの厚みは8~40μmである、請求項1に記載の吸着部材。
【請求項5】
請求項1に記載の吸着部材の製造方法であり、
(a)大気電気炉を用い、大気圧下で、ON/OFF制御もしくはPID制御にて100~600℃で1~3時間、アルミニウムシートに対してアニール処理を行った後、前記大気電気炉中で自然放冷にて室温まで冷却するか、もしくは前記大気電気炉から前記アルミニウムシートを取り出して室温まで自然冷却する工程、又は
(b)真空加熱炉を用い、真空下で、PID制御にて100~600℃で1~3時間、アルミニウムシートに対してアニール処理を行った後、前記真空加熱炉中で真空放冷にて室温まで冷却する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項6】
前記工程(b)を含み、前記アニール処理及び前記冷却における操作圧力は1000Pa以下である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の吸着部材と、芯材と、前記吸着部材及び前記芯材を封入する袋体とを備えることを特徴とする、真空断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着部材、その製造方法、及び該吸着部材を備えた真空断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物、自動販売機、クーラーボックス等に適用される真空断熱材が普及している。真空断熱材は、ガスバリア性を有する袋体の内部に芯材を収容することによって形成されている。芯材が収容される領域から空気を排出し、当該領域を真空に近い状態とした後に袋体を密閉することにより、真空断熱材は高い断熱性能を発揮する。
【0003】
密閉後に袋体内に残存する水分は、真空断熱材の断熱性能の低下を招くおそれがある。これに対し、特許文献1及び2は、水分を吸着する吸着剤を備えた真空断熱材を開示している。当該吸着剤は包材によって包装され、芯材とともに袋体内に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-178853号公報
【特許文献2】特開2021-088411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、吸着剤を包装する包材として、通気性を有する紙や不織布が提案されている。このため、活性が高い吸着剤(つまり、水分の吸着速度が大きい吸着剤)を採用する場合、当該吸着剤は、袋体に収容される前に、包材を介して大気中の水分を吸着してしまうおそれがある。この結果、吸着剤の活性が失われ、当該吸着剤は袋体に収容された後にその水分吸着性能を発揮できず、真空断熱材の断熱性能低下を招くおそれがある。
また、吸着剤として酸化カルシウムやゼオライト等が用いられている場合、使用済みの真空断熱材等から回収された吸着剤を加熱し、除水することによって、当該吸着剤を再利用することができる。しかしながら、特許文献1記載の発明において包材として用いられている紙、不織布、多孔質プラスチックフィルム等は加熱に適しておらず、再利用の手間を増加させるおそれがある。
【0006】
一方、特許文献2では、吸着剤を包装する包材として、金属材料によって形成されている薄膜状のフィルムを用いることにより、吸着剤を活性が高い状態で真空断熱材に用いることを可能にしつつ、再利用が容易な吸着部材となっている。しかしながら、金属材料を圧延加工する際に生じた残留応力の影響で、フィルム自体が硬く、フィルムを折込む際に折込み線上にいくつかピンホールが空いてしまい、それらのピンホールによる影響で包装後の吸着剤の吸着性能が劣化してしまう、という課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、製造過程で包装材にピンホールが生じるのを低減し、包装後の吸着剤の吸着性能の劣化を抑制した吸着部材、その製造方法及び真空断熱材を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、包装材をアニール処理されたアルミニウムシートによって形成されたものとすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
水分吸着剤と、
1層又は複数層のシート状の包装材であって、折り重ねられることによって、前記水分吸着剤を収容する吸着剤収容空間と、前記吸着剤収容空間から前記包装材の外部まで屈曲しながら延びる通気路とを形成している前記包装材とを備え、
前記包装材は、アニール処理されたアルミニウムシートによって形成されている、吸着部材。
[2]
前記アルミニウムシートは、Alを98.0質量%以上と、Siを0.7質量%以下と、Feを0.7質量%以下と、Cuを0.1質量%以下と、Mnを0.05質量%以下と、Mgを0.05質量%以下と、Znを0.05質量%以下とを含む、[1]に記載の吸着部材。
[3]
前記包装材は、1枚のアルミニウムシートから形成された1層の包装材であるか、又は重ね合わせた複数枚のアルミニウムシートから形成された複数層の包装材である、[1]又は[2]に記載の吸着部材。
[4]
前記アニール処理されたアルミニウムシートの厚みは8~40μmである、[1]~[3]のいずれかに記載の吸着部材。
[5]
[1]~[4]のいずれかに記載の吸着部材の製造方法であり、
(a)大気電気炉を用い、大気圧下で、ON/OFF制御もしくはPID制御にて100~600℃で1~3時間、アルミニウムシートに対してアニール処理を行った後、前記大気電気炉中で自然放冷にて室温まで冷却するか、もしくは前記大気電気炉から前記アルミニウムシートを取り出して室温まで自然冷却する工程、又は
(b)真空加熱炉を用い、真空下で、PID制御にて100~600℃で1~3時間、アルミニウムシートに対してアニール処理を行った後、前記真空加熱炉中で真空放冷にて室温まで冷却する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
[6]
前記工程(b)を含み、前記アニール処理及び前記冷却における操作圧力は1000Pa以下である、[5]に記載の製造方法。
[7]
[1]~[4]のいずれかに記載の吸着部材と、芯材と、前記吸着部材及び前記芯材を封入する袋体とを備えることを特徴とする、真空断熱材。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造過程で包装材にピンホールが生じるのを低減し、包装後の吸着剤の吸着性能の劣化を抑制した吸着部材、その製造方法及び真空断熱材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の真空断熱材の一例を示す斜視図である。
図2図1のII-II断面を示す断面図である。
図3】第1の実施形態の吸着部材を示す平面図である。
図4図3のIV-IV断面を示す断面図である。
図5】第1の実施形態の吸着部材の製造工程を示す説明図である。
図6】第2の実施形態の吸着部材を示す斜視図である。
図7】第2の実施形態の吸着部材の製造工程を示す説明図である。
図8】第3の実施形態の吸着部材の製造工程を示す説明図である。
図9】第4の実施形態の吸着部材の製造工程を示す説明図である。
図10】第5の実施形態の吸着部材の製造工程を示す説明図である。
図11】第6の実施形態の吸着部材の製造工程を示す説明図である。
図12】第7の実施形態の吸着部材の製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
なお、本明細書において、「略〇〇形状」とは、正確な〇〇形状に加え、おおよそ〇〇形状と把握される形状を含むものとする。
【0013】
<吸着部材>
本実施形態の吸着部材は、水分吸着剤と包装材とを備える。
吸着部材の形状(折り重ねられた後の包装材の最終的な形状)は、特に限定されないが、例えば、平面視で縦40~60mm、横40~60mmの略正方形であるもの等が挙げられる。
【0014】
[包装材]
本実施形態の吸着部材を構成する包装材は、1層又は複数層のシート状であり、折り重ねられることによって、水分吸着剤を収容する吸着剤収容空間と、吸着剤収容空間から包装材の外部まで屈曲しながら延びる通気路とを形成しており、アニール処理されたアルミニウムシートによって形成されている。
この構成によれば、水分吸着剤はアルミニウムシートによって形成された包装材に収容されるため、当該包装材を介した水分の吸着が抑制される。また、水分吸着剤は、通気路を介して包装材の外部から水分を吸着することができるが、当該通気路は屈曲しながら延びている。したがって、当該通気路の屈曲の程度を調整することにより、当該通気路を介した水分の吸着を調整することができる。この結果、水分吸着剤を活性が高い状態で真空断熱材に用いることが可能になる。
【0015】
また、包装材は、アニール処理されたアルミニウムシートによって形成されているため、アニール処理されていないアルミニウムシートによって形成された包装材と比較して、折り重ねが容易になり、折り重ね時に折込み線上にピンホールが生じるのを低減することができ、包装材のバリア性能が向上する。また、これにより、包装材内に収容された水分吸着剤の吸着性能の劣化速度が遅くなり、包装後の吸着剤の吸着性能の劣化を抑制することができる。
【0016】
また、アルミニウムシートは高い耐熱性を有するため、水分吸着剤を除水する際に、包装材に収容された状態のまま水分吸着剤を加熱することができる。すなわち、吸着部材の再利用が容易になる。
【0017】
包装材は、1枚のアルミニウムシートから形成された1層の包装材であってもよいし、重ね合わせた複数枚のアルミニウムシートから形成された複数層の包装材であってもよい。重ね合わせた複数枚のアルミニウムシートから形成された複数層の包装材である場合、アルミニウムシートの枚数(包装材の層数)は、所望するアニール処理されたアルミニウムシートの総厚みに応じて適宜設定されてよいが、2~5枚(2~5層)であることが好ましく、2~3枚(2~3層)であることがより好ましい。アルミニウムシートの枚数が上記範囲であると、アニール処理されたアルミニウムシートの折り重ねが容易であり、折り重ね時に折込み線上にピンホールが生じるのを効果的に低減することができ、包装材のバリア性能が向上する傾向にある、また、これにより、包装材内に収容された水分吸着剤の吸着性能の劣化速度が遅くなり、包装後の水分吸着剤の吸着性能の劣化を効果的に抑制することができる傾向にある。
【0018】
包装材の折り重ね回数は、水分吸着剤を収容する吸着剤収容空間と、吸着剤収容空間から包装材の外部まで屈曲しながら延びる通気路とが形成されれば特に限定されず、何回折り重ねられていてもよいが、3~6回であることが好ましい。包装材の折り重ね回数が上記範囲であると、折り重ね時に折込み線上にピンホールが生じるのを効果的に低減することができ、包装後の吸着剤の吸着性能の劣化を効果的に抑制することができる傾向にある。
【0019】
[アニール処理されたアルミニウムシート]
包装材を構成するアニール処理されたアルミニウムシートは、特に限定されず、後述の第1の実施形態等のようにアルミ箔等のアルミニウムシートをシート状のままアニール処理したもの、後述の第3の実施形態等のようにアルミニウムシートをカップ形状等に成形したものをアニール処理したもの等が挙げられる。
シート状とは、例えば、縦100~150mm、横100~150mmの略正方形状等が挙げられる。カップ形状とは、例えば、直径100~130mmの略円形状又は縦100~150mm、横100~150mmの略矩形状のアルミニウムシートを折り曲げてカップ形状にしたもの等が挙げられる
【0020】
アニール処理されたアルミニウムシートの厚みは、8~40μmであることが好ましく、より好ましくは11~20μmである。アニール処理されたアルミニウムシートの厚みが上記範囲であると、アニール処理されたアルミニウムシートの折り重ねが容易であり、折り重ね時に折込み線上にピンホールが生じるのを効果的に低減することができ、包装材のバリア性能が向上する傾向にある、また、これにより、包装材内に収容された水分吸着剤の吸着性能の劣化速度が遅くなり、包装後の水分吸着剤の吸着性能の劣化を効果的に抑制することができる傾向にある。
【0021】
アニール処理されるアルミニウムシートは、Alを98.0質量%以上と、Siを0.7質量%以下と、Feを0.7質量%以下と、Cuを0.1質量%以下と、Mnを0.05質量%以下と、Mgを0.05質量%以下と、Znを0.05質量%以下とを含むことが好ましい。
アルミニウムシート中のAlの含有量は、より好ましくは90%質量以上であり、さらに好ましくは99.3%質量以上である。
なお、アルミニウムシートの組成(アルミニウムシートに含まれる各金属の含有量)は、従来公知の成分分析方法を用いて測定すればよく、例えば、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)、蛍光X線分析法(XRF)等を用いることができる。
【0022】
[水分吸着剤]
水分吸着剤は、水分(水蒸気)を吸着する物質であれば特に限定されず、例えば、酸化カルシウム、塩化カルシウム、酸化マグネシウム、ゼオライト(結晶性アルミノシリケート)、非結晶性アルミノシリケート、MOF(金属有機構造体)、シリカゲル、活性炭、酸化バリウム、酸化コバルト、バリウム-リチウム合金、Cu―ZSM5ゼオライト又はこれらの混合物等である。水分吸着性能及び生産性の観点や、加熱・再利用の容易性の観点から、水分吸着剤は、酸化カルシウム又はゼオライトであることが好ましい。
水分吸着剤は、1種単独であっても、複数種類の組み合わせであってもよい。
【0023】
水分吸着剤の形状は、特に限定されず、例えば、粉末状、顆粒状等の定形を有しないもの、粉末状の水分吸着剤を成形したもの等が挙げられる。
【0024】
本実施形態の吸着部材において、水分吸着剤は、好ましくは包装材上に配置され、吸着剤収容空間は、包装材が複数の線に沿って谷折りされることによって形成されている。
この構成によれば、吸着剤収容空間及び通気路をシート状の包装材によって容易に形成することが可能になる。
【0025】
本実施形態の吸着部材において、好ましくは、谷折りされる前の包装材は、底部と、底部の周縁から上方に延びる周側部と、を有し、底部の上面に、水分吸着剤が配置される吸着剤配置領域が設けられ、周側部は、吸着剤配置領域の周囲を覆っている。
この構成によれば、底部の上面の吸着剤配置領域に配置された水分吸着剤の移動が、周側部によって制限される。この結果、水分吸着剤をこぼすことなく吸着剤配置領域に安定的に配置した状態で、包装材を谷折りすることが可能になる。
【0026】
本実施形態の吸着部材において、好ましくは、包装材は、第1の包装材及び第2の包装材を有し、第1の包装材は、折り重ねられることによって、吸着剤収容空間と、吸着剤収容空間から第1の包装材の外部まで屈曲しながら延びる第1の通気路と、を有するコアを形成し、第2の包装材は、折り重ねられることによって、コアを収容するコア収容空間と、コア収容空間から第2の包装材の外部まで屈曲しながら延びる第2の通気路と、を形成している。
この構成によれば、吸着剤収容空間から包装材の外部まで延びる通気路を、第2の包装材を設けることによって長くし、当該通気路を介した水分の吸着を調整することが可能になる。
【0027】
本実施形態の吸着部材において、好ましくは、複数の線は、互いに交差している。
この構成によれば、通気路を、その端部においても屈曲するように形成することができる。この結果、屈曲の程度の調整の自由度を高め、通気路を介した水分の吸着を調整することが可能になる。
【0028】
本実施形態の吸着部材において、好ましくは、吸着剤収容空間は、包装材が、互いに対向する第1の一対の線と、互いに対向するとともに第1の一対の線と交差する第2の一対の線と、に沿って谷折りされることによって形成されている。
この構成によれば、吸着剤収容空間を囲む4つの線に沿って包装材が折り重ねられる。この結果、吸着剤収容空間から屈曲することなく包装材の外部まで延びる隙間が無くなり、通気路を介した水分の吸着が制限されるように調整することが可能になる。
【0029】
本実施形態の吸着部材において、好ましくは、包装材は、一端に開口が形成された袋状部を有しており、包装材は、さらに、袋状部の開口よりも内側において谷折りされることによって、袋状部内に吸着剤収容空間を形成している。
この構成によれば、袋状部内に吸着剤収容空間が形成されるため、当該吸着剤収容空間に収容された水分吸着剤の移動が、袋状部内で制限される。この結果、水分吸着剤をこぼすことなく袋状部内に安定的に配置した状態で、包装材を折り重ねることが可能になる。
【0030】
<吸着部材の製造方法>
本実施形態の吸着部材を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、以下の工程(a)又は工程(b)を含むことが好ましい。
(a)大気電気炉を用い、大気圧下で、ON/OFF制御もしくはPID制御にて100~600℃で1~3時間、アルミニウムシートに対してアニール処理を行った後、前記大気電気炉中で自然放冷にて室温まで冷却するか、もしくは前記大気電気炉から前記アルミニウムシートを取り出して室温まで自然冷却する工程。
(b)真空加熱炉を用い、真空下で、PID制御にて100~600℃で1~3時間、アルミニウムシートに対してアニール処理を行った後、前記真空加熱炉中で真空放冷にて室温まで冷却する工程。
【0031】
大気圧下で実施する工程(a)において、アニール処理温度は、100~600℃であることが好ましく、より好ましくは200~600℃、さらに好ましくは250~500℃、よりさらに好ましくは300~500℃である。
アニール処理温度が上記範囲であると、折り重ねが容易なアルミニウムシートとなり、折り重ね時に折込み線上にピンホールが生じるのを効果的に低減することができ、包装材のバリア性能が向上する傾向にある、また、これにより、包装材内に収容された水分吸着剤の吸着性能の劣化速度が遅くなり、包装後の水分吸着剤の吸着性能の劣化を効果的に抑制することができる傾向にある。
【0032】
工程(a)において、アニール処理時間は、1~3時間であることが好ましい。アニール処理時間が上記範囲であると、包装材として包装し易い一定の強度を有するとともに、ピンホールの発生低減のための柔度も有するシートとなる傾向にある。
【0033】
真空下で実施する工程(b)において、アニール処理温度は、100~600℃であることが好ましく、より好ましくは200~600℃、さらに好ましくは300~500℃である。
アニール処理温度が上記範囲であると、アニール処理されたアルミニウムシートの折り重ねが容易であり、折り重ね時に折込み線上にピンホールが生じるのを低減することができ、包装材のバリア性能が向上する傾向にある、また、これにより、包装材内に収容された水分吸着剤の吸着性能の劣化速度が遅くなり、包装後の水分吸着剤の吸着性能の劣化を効果的に抑制することができる傾向にある。
【0034】
工程(b)において、アニール処理時間は、1~3時間であることが好ましく、より好ましくは1~2時間である。アニール処理時間が上記範囲であると、包装材として包装し易い一定の強度を有するとともに、ピンホールの発生低減のための柔度も有するシートとなる傾向にある。
【0035】
工程(b)において、アニール処理及び冷却における操作圧力は1000Pa以下であることが好ましい。操作圧力が上記範囲であると、包装材として包装し易い一定の強度を有するシートとなる傾向にあり、かつ真空下でのアニール処理において表面酸化反応が起こりにくくなる。また、ピンホールの発生低減のための柔度も有するシートとなる傾向にある。
【0036】
以下、図面を参照しながら本実施形態の吸着部材の構成について、具体例として第1の実施形態~第7の実施形態を挙げて説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0037】
〈第1の実施形態〉
第1の実施形態である吸着部材4Aについて、図3図5を参照しながら説明する。図3は、吸着部材4Aを示す平面図であり、図4は、図3のIV-IV断面を示す断面図である。図5は、吸着部材4Aの製造工程を示す説明図である。
【0038】
吸着部材4Aは、水分吸着剤41と、包装材42と、を備えている。
水分吸着剤41は粉末状又は顆粒状を呈しており、定形を有しない。
包装材42はシート状を呈しており、後述するように主面420a,420bを有している(図5参照)。具体的には、包装材42は略正方形のアニール処理された1枚(1層)のアルミ箔であり、その厚さは12μm、一辺の寸法は150mmである。また、包装材42は、紙や不織布等と比較して高いガスバリア性を有している。換言すると、包装材42は、紙や不織布等よりも空気や水蒸気を通し難い性質を有している。後述するように、包装材42を破損やピンホール等が生じることなく、容易に折り重ねることができるようにするため、包装材42の厚さは25μm以下であることが好ましい。
【0039】
図4に示されるように、包装材42は、折り重ねられることにより、その内部に吸着剤収容空間43を形成している。また、包装材42の折り重ねられた部位の間には、微小な隙間である通気路45が形成されている。通気路45は、吸着剤収容空間43から包装材42の外部まで屈曲しながら延びている。すなわち、吸着剤収容空間43は、通気路45を介して包装材42の外部と連通している。吸着剤41は、吸着剤収容空間43に収容されている。
【0040】
吸着部材4Aを製造する際は、まず、図5(A)に示されるように、包装材42の吸着剤配置領域421内に吸着剤41を配置する。吸着剤配置領域421は、包装材42の一方の主面420a上の中央部に位置する略正方形状の仮想の領域である。
【0041】
次に、包装材42を、仮想線V11、V12に沿って谷折りする。仮想線V11,V12は、上述の「第1の一対の線」の一例であり、互いに対向し、略平行に延びる直線である。仮想線V11は、吸着剤配置領域421よりも辺42a側に位置しており、仮想線V12は、吸着剤配置領域421よりも辺42b側に位置している。
【0042】
詳細には、まず、仮想線V11に沿って、矢印F11で示されるように包装材42を谷折りする。これにより、包装材42のうち辺42a寄りの部位によって、吸着剤配置領域421が覆われる。その後、仮想線V12に沿って、矢印F12で示されるように包装材42を谷折りする。図5(B)は、仮想線V11、V12に沿って谷折りされた包装材42を示している。
【0043】
次に、包装材42を、仮想線V13、V14に沿って谷折りする。仮想線V13,V14は、上述の「第2の一対の仮想線」の一例であり、互いに対向し、略平行に延びる直線である。また、仮想線V13、V14は、仮想線V11、V12と交差する。仮想線V13は、吸着剤配置領域421よりも辺42c側に位置しており、仮想線V14は、吸着剤配置領域421よりも辺42d側に位置している。
【0044】
詳細には、まず、仮想線V13に沿って、矢印F13で示されるように包装材42を谷折りする。その後、仮想線V14に沿って、矢印F14で示されるように包装材42を谷折りする。
【0045】
これにより、図3に示されるように、平面視で略正方形を呈する吸着部材4Aが構成される。すなわち、吸着部材4Aは、包装材42を4回谷折りし、折り重ねることによって構成される。
【0046】
〈第2の実施形態〉
第2の実施形態である吸着部材4Bについて、図6及び図7を参照しながら説明する。図6は、吸着部材4Bを示す斜視図であり、図7は、吸着部材4Bの製造工程を示す説明図である。吸着部材4Bの構成のうち、第1の実施形態である吸着部材4Aの構成と共通する部分については、その説明を適宜省略する。
【0047】
吸着部材4Bに用いられる包装材42も、第1の実施形態の吸着部材4Aに用いられる包装材42と同様に、1枚(1層)のアニール処理されたアルミ箔からなる。
【0048】
吸着部材4Bを製造する際は、まず、図7(A)に示されるように、包装材42の吸着剤配置領域422内に水分吸着剤41を配置する。吸着剤配置領域421は、包装材42の一方の主面420a上の中央部に位置する略三角形状の仮想の領域である。
【0049】
次に、包装材42を、仮想線V21に沿って、矢印F21で示されるように谷折りする。仮想線V21は直線であり、吸着剤配置領域421の一辺に沿うように位置している。図7(B)は、仮想線V21に沿って谷折りされた包装材42を示している。
【0050】
次に、包装材42を、仮想線V22に沿って、矢印F22で示されるように谷折りする。仮想線V22は直線であり、吸着剤配置領域421の他の一辺に沿うように位置している。また、仮想線V22は、仮想線V21と交差する。図7(C)は、仮想線V22に沿って谷折りされた包装材42を示している。
【0051】
次に、包装材42を、仮想線V23に沿って、矢印F23で示されるように谷折りする。仮想線V23は直線であり、吸着剤配置領域421のさらに他の一辺に沿うように位置している。また、仮想線V23は、仮想線V21、V22と交差する。
【0052】
これにより、図6に示されるように、平面視で多角形を呈する吸着部材4Bが構成される。すなわち、吸着部材4Bは、包装材42を3回谷折りし、折り重ねることによって構成される。包装材42は、その内部に、吸着剤収容空間(不図示)と、当該吸着剤収容空間から包装材42の外部まで屈曲しながら延びる通気路(不図示)と、を形成している。
【0053】
〈第3の実施形態〉
第3の実施形態である吸着部材4Cについて、図8を参照しながら説明する。図8は、吸着部材4Cの製造工程を示す説明図である。吸着部材4Cの構成のうち、第1の実施形態である吸着部材4Aの構成と共通する部分については、その説明を適宜省略する。
【0054】
吸着部材4Cに用いられる包装材44は、カップ形状を呈している。詳細には、包装材44は、略円形状の1枚(1層)のアルミ箔を折り曲げることによって形成されたカップ形状のアルミ箔をアニール処理したものであり、平面視で略円形状を呈する底部44aと、底部44aの周縁から上方に延びる周側部44bと、を有している。
【0055】
吸着部材4Cを製造する際は、まず、図8(A)に示されるように、包装材44の吸着剤配置領域441内に水分吸着剤41を配置する。吸着剤配置領域441は、底部44aの上面に位置する略円形状の仮想の領域である。周側部44bはこの吸着剤配置領域441の周囲を覆っているため、吸着剤配置領域441内に配置された水分吸着剤41の移動は周側部44bによって制限される。
【0056】
次に、包装材44を、仮想線V31に沿って、矢印F31で示されるように谷折りし、さらに、仮想線V32に沿って、矢印F32で示されるように谷折りする。仮想線V31、V32はいずれも直線であり、吸着剤配置領域443の一側部と他側部とに位置している。図8(B)は、仮想線V31、V32に沿って谷折りされた包装材44を示している。
【0057】
次に、包装材44を、仮想線V33に沿って、矢印F33で示されるように谷折りし、さらに、仮想線V34に沿って、矢印F34で示されるように谷折りする。仮想線V33、V34はいずれも直線であり、仮想線V31、V32と交差する。
【0058】
これにより、平面視で略正方形を呈する吸着部材4C(図10参照)が構成される。すなわち、吸着部材4Cは、包装材44を4回谷折りし、折り重ねることによって構成される。包装材44は、その内部に、吸着剤収容空間(不図示)と、当該吸着剤収容空間から包装材44の外部まで屈曲しながら延びる通気路(不図示)と、を形成している。
【0059】
〈第4の実施形態〉
第4の実施形態である吸着部材4Dについて、図9を参照しながら説明する。図9は、吸着部材4Cの製造工程を示す説明図である。吸着部材4Dの構成のうち、第1の実施形態である吸着部材4Aの構成と共通する部分については、その説明を適宜省略する。
【0060】
吸着部材4Dに用いられる包装材46も、カップ形状を呈している。詳細には、包装材46は、略矩形状の1枚(1層)のアルミ箔を折り曲げることによって形成されたカップ形状のアルミ箔をアニール処理したものであり、平面視で略矩形状を呈する底部46aと、底部46aの周縁から上方に延びる周側部46bと、を有している。
【0061】
吸着部材4Dを製造する際は、まず、図9(A)に示されるように、包装材46の吸着剤配置領域461内に水分吸着剤41を配置する。吸着剤配置領域461は、底部46aの上面に位置する略矩形状の仮想の領域である。周側部46bはこの吸着剤配置領域461の周囲を覆っているため、吸着剤配置領域461内に配置された水分吸着剤41の移動は周側部46bによって制限される。
【0062】
次に、包装材46を、仮想線V41に沿って、矢印F41で示されるように谷折りし、さらに、仮想線V42に沿って、矢印F42で示されるように谷折りする。仮想線V41、V42はいずれも直線であり、吸着剤配置領域461の一側部と他側部とに位置している。図9(B)は、仮想線V41、V42に沿って谷折りされた包装材46を示している。
【0063】
次に、包装材46を、仮想線V43に沿って、矢印F43で示されるように谷折りし、さらに、仮想線V44に沿って、矢印F44で示されるように谷折りする。仮想線V43、V44はいずれも直線であり、仮想線V41、V42と交差する。
【0064】
これにより、平面視で略正方形を呈する吸着部材4D(図11参照)が構成される。すなわち、吸着部材4Cは、包装材46を4回谷折りし、折り重ねることによって構成される。包装材46は、その内部に、吸着剤収容空間(不図示)と、当該吸着剤収容空間から包装材46の外部まで屈曲しながら延びる通気路(不図示)と、を形成している。
【0065】
〈第5の実施形態〉
第5の実施形態である吸着部材4Eについて、図10を参照しながら説明する。図10は、吸着部材4Eの製造工程を示す説明図である。吸着部材4Eの構成のうち、第1の実施形態である吸着部材4Aの構成と共通する部分については、その説明を適宜省略する。
【0066】
吸着部材4Eで用いられる包装材は、包装材44Iと包装材44IIとを有している。包装材44Iは、上述の「第1の包装材」の一例であり、包装材44IIは、上述の「第2の包装材」の一例であり、いずれも上述した第3の実施形態の包装材44と同一である。
【0067】
吸着部材4Eは、第3の実施形態である吸着部材4Cを包装材44IIで包装することによって製造される。換言すると、吸着部材4Eは、2枚の包装材44を用いて水分吸着剤41を2重に包装することによって製造される。詳細には、まず、包装材44Iを用いて、第3の実施形態である吸着部材4Cを製造する。以下の説明では、吸着部材4Cを「コア4C」と称する。コア4Cの内部の吸着剤収容空間(不図示)から包装材44Iの外部まで屈曲しながら延びる通気路(不図示)は、上述の「第1の通気路」の一例である。
【0068】
次に、図10(A)に示されるように、包装材44IIのコア配置領域442内にコア4Cを配置する。コア配置領域442は、底部44aの上面に位置する略円形状の仮想の領域である。周側部44bはこのコア配置領域442の周囲を覆っているため、コア配置領域442内に配置されたコア4Cの移動は周側部44bによって制限される。
【0069】
次に、包装材44IIを、仮想線V51に沿って、矢印F51で示されるように谷折りし、さらに、仮想線V52に沿って、矢印F52で示されるように谷折りする。仮想線V51、V52はいずれも直線であり、コア配置領域442の一側部と他側部とに位置している。図10(B)は、仮想線V51、V52に沿って谷折りされた包装材44IIを示している。
【0070】
次に、包装材44IIを、仮想線V53に沿って、矢印F53で示されるように谷折りし、さらに、仮想線V54に沿って、矢印F54で示されるように谷折りする。仮想線V53、V54はいずれも直線であり、仮想線V51、V52と交差する。
【0071】
これにより、平面視で略正方形を呈する吸着部材4Eが構成される。すなわち、吸着部材4Eは、包装材44I、44IIをそれぞれ4回谷折りし、折り重ねることによって構成される。包装材44IIの内部には、コア4Cを収容するコア収容空間(不図示)と、当該コア収容空間から包装材44IIの外部まで延びる通気路(不図示)と、が形成されている。当該通気路は、上述の「第2の通気路」の一例である。
【0072】
吸着部材4Eの吸着剤収容空間は、吸着剤収容空間からコア収容空間まで屈曲しながら延びる通気路(第1の通気路)と、コア収容空間から包装材44IIの外部まで屈曲しながら延びる通気路(第2の通気路)と、を介して、包装材44IIの外部と連通している。これにより、水分吸着剤41(図8(A)参照)は、両通気路を介して、包装材44IIの外部から水分を吸着する。
【0073】
〈第6の実施形態〉
第6の実施形態である吸着部材4Fについて、図11を参照しながら説明する。図11は、吸着部材4Fの製造工程を示す説明図である。吸着部材4Fの構成のうち、第1の実施形態である吸着部材4Aの構成と共通する部分については、その説明を適宜省略する。
【0074】
吸着部材4Fで用いられる包装材は、包装材46Iと包装材46IIとを有している。包装材46Iは、上述の「第1の包装材」の一例であり、包装材46IIは、上述の「第2の包装材」の一例であり、いずれも上述した第4の実施形態である包装材46と同一である。
【0075】
吸着部材4Fは、第4の実施形態である吸着部材4Dを包装材46IIで包装することによって製造される。換言すると、吸着部材4Fは、2枚の包装材46を用いて水分吸着剤41を2重に包装することによって製造される。詳細には、まず、包装材46Iを用いて、第4の実施形態である吸着部材4Dを製造する。以下の説明では、吸着部材4Dを「コア4D」と称する。コア4Dの内部の吸着剤収容空間(不図示)から包装材46Iの外部まで屈曲しながら延びる通気路(不図示)は、上述の「第1の通気路」の一例である。
【0076】
次に、図11(A)に示されるように、包装材46IIのコア配置領域462内にコア4Dを配置する。コア配置領域462は、底部46aの上面に位置する略矩形状の仮想の領域である。周側部46bはこのコア配置領域462の周囲を覆っているため、コア配置領域462内に配置されたコア4Dの移動は周側部46bによって制限される。
【0077】
次に、包装材46IIを、仮想線V61に沿って、矢印F61で示されるように谷折りし、さらに、仮想線V62に沿って、矢印F62で示されるように谷折りする。仮想線V61、V62はいずれも直線であり、コア配置領域462の一側部と他側部とに位置している。図11(B)は、仮想線V61、V62に沿って谷折りされた包装材44IIを示している。
【0078】
次に、包装材46IIを、仮想線V63に沿って、矢印F63で示されるように谷折りし、さらに、仮想線V64に沿って、矢印F64で示されるように谷折りする。仮想線V63、V64はいずれも直線であり、仮想線V61、V62と交差する。
【0079】
これにより、平面視で略正方形を呈する吸着部材4Fが構成される。すなわち、吸着部材4Fは、包装材46I、46IIをそれぞれ4回谷折りし、折り重ねることによって構成される。包装材46IIの内部には、コア4Dを収容するコア収容空間(不図示)と、当該コア収容空間から包装材46IIの外部まで延びる通気路(不図示)と、が形成されている。当該通気路は、上述の「第2の通気路」の一例である。
【0080】
吸着部材4Fの吸着剤収容空間は、吸着剤収容空間からコア収容空間まで屈曲しながら延びる通気路(第1の通気路)と、コア収容空間から包装材46IIの外部まで屈曲しながら延びる通気路(第2の通気路)と、を介して、包装材46IIの外部と連通している。これにより、水分吸着剤41(図9(A)参照)は、両通気路を介して、包装材46IIの外部から水分を吸着する。
【0081】
〈第7の実施形態〉
第7の実施形態である吸着部材4Gについて、図12を参照しながら説明する。図12は、吸着部材4Gの製造工程を示す説明図である。吸着部材4Gの構成のうち、第1の実施形態である吸着部材4Aの構成と共通する部分については、その説明を適宜省略する。
【0082】
第7の実施形態である吸着部材4Gに用いられる包装材49は、袋形状を呈している。詳細には、包装材49は、平面視で略矩形状を呈し、アニール処理された1枚(1層)のアルミ箔からなる第1の包装材部分49Iと、平面視で略矩形状を呈し、アニール処理された1枚(1層)のアルミ箔からなる第2の包装材部分49IIとが重ね合わせて配置され、その3辺に沿う融着部491が設けられることによって形成されている。これにより、包装材49は、開口492aが形成された袋状部492を有している。袋状部492は、開口492aにおいて外部と連通している。
【0083】
吸着部材4Gを製造する際は、まず、開口492aから、袋状部492内に水分吸着剤41を挿入する。袋状部492内に配置された水分吸着剤41の移動は、融着部491によって制限される。
【0084】
次に、包装材49を、仮想線V71、V72、V73に沿って、矢印F71、F72、F73で示されるように順に谷折りする。仮想線V71、V72、V3はいずれも直線であり、開口492aよりも袋状部492の内側において、互いに略平行に位置している。
【0085】
これにより、平面視で略正方形を呈する吸着部材4Gが構成される。すなわち、吸着部材4Gは、包装材49を3回谷折りし、折り重ねることによって構成される。包装材49は、袋状部492内の吸着剤収容空間493と、吸着剤収容空間493から包装材49の外部まで(つまり、開口492aまで)屈曲しながら延びる通気路(不図示)と、を形成している。
【0086】
<真空断熱材>
本実施形態の真空断熱材は、上述の本実施形態の吸着部材と、芯材と、吸着部材及び芯材を封入する袋体と、を備える。
本実施形態の真真空断熱材によれば、吸着剤を活性が高い状態で用いて、当該真空断熱材の断熱性能の低下を抑制することが可能になる。
以下、図面を参照しながら本実施形態の真空断熱材の一例の構成について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0087】
図1は、真空断熱材1を示す斜視図であり、図2は、図1のII-II断面を示す断面図である。説明の理解を容易にするため、図1及び図2は、後述する外装フィルム21、22の厚み等を誇張して示している。
【0088】
図1に示されるように、真空断熱材1は全体として略平板形状を呈している。真空断熱材1は平面視で略矩形状を呈しており、長辺1Lと、短辺1Sと、を有している。
【0089】
真空断熱材1は、袋体2と、芯材3と、吸着部材4と、を備えている。
【0090】
[吸着部材]
本実施形態の吸着部材4は、図2に示されるように、芯材3とともに袋体2の芯材収容空間27に収容されている。具体的には、吸着部材4は、芯材3に埋設されている。吸着部材4は、上述の第1の実施形態~第7の実施形態のように、種々の形態を採用することができる。
【0091】
[袋体]
袋体2は、外装フィルム21、22を有している。外装フィルム21、22は積層シートであり、最外層に保護フィルムを、中間層にガスバリア性フィルムを、最内層に融着性フィルムを備えている。
【0092】
保護フィルムは、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート)系フィルム、ポリスチレンフィルム、アクリロニトリル-スチレン共重合体フィルム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンフィルム、メタクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ナイロンフィルム、ポリアミド樹脂フィルムなどにより構成される。
保護フィルムの厚さは、外装フィルム21、22の破損を有効に防止することができることから、10μm以上であることが好ましい。
【0093】
ガスバリア性フィルムは、例えば、アルミニウム、ステンレス、銅などの金属箔、アルミニウム、(透明)シリカ、アルミナなどの蒸着フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールなどの樹脂フィルムなどから構成される。
ガスバリア性フィルムの厚さは、外装フィルム21、22の破損を有効に防止することができることから、10μm以上であることが好ましい。
【0094】
融着性フィルムは、外装フィルム21、22同士を融着させる目的で積層シートの最内層に配置されている。融着性フィルムとしては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマーなどのフィルムが挙げられる。
融着性フィルムの厚さは、融着性フィルム同士を融着させた融着部の密封性を高めることができ、真空包装後において融着部からの漏れを防止できることから、25μm以上であることが好ましい。
【0095】
袋体2は、このように構成された外装フィルム21、22を、融着性フィルムが配置された面を対向させるように重ね合わせて配置されている。そして、外装フィルム21、22は、面内において部分的に融着している。
【0096】
詳細には、外装フィルム21と外装フィルム22とは、長辺側融着部23a、23bと、短辺側融着部25a、25bにおいて融着している。長辺側融着部23a、23bは、真空断熱材1の長辺1Lに沿って直線的に延びている。短辺側融着部25a、25bは、真空断熱材1の短辺1Sに沿って直線的に延びるとともに、長辺側融着部23a、23bの端部と連続している。
【0097】
外装フィルム21と外装フィルム22とが長辺側融着部23a、23b及び短辺側融着部25a、25bにおいて融着することにより、図2に示されるように、袋体2の内部に芯材収容空間27が形成されている。芯材収容空間27は、長辺側融着部23b、23b及び短辺側融着部25a、25bにより囲まれており、これらの融着部により封止され、気密性を有している。
【0098】
[芯材]
芯材3は扁平形状を呈しており、袋体2の芯材収容空間27に収容されている。
芯材3は、真空断熱材1の断熱性能を担う部材であり、無機繊維マット、多孔性材料、粉末成型体等からなる。無機繊維とは、無機物からなる繊維であり、例えば、短繊維からなるグラスウール、長繊維からなるガラス繊維等を挙げることができる。また、多孔性材料としてはエアロゲル、ウレタンフォーム等を挙げることができ、粉末成型体としては、シリカ粒子、パーライト等を挙げることができる。具体的には、断熱吸音材として一般的に用いられているグラスウール、ガラス繊維を好適に用いることができる。
【0099】
芯材3は、無機繊維マットである場合、無機繊維マット1枚からなる単層体であってもよく、無機繊維マットが2~4枚積層された積層体であってもよい。
上記無機繊維マットは、有機バインダー、無機バインダー、又はこれらの混合物に由来する熱硬化性バインダーが付与されていてもよい。このような無機繊維マットは、適度な剛性を有し、潰れ難いため、芯材密度や無機繊維間の熱伝導率が上昇し難い。したがって、このような無機繊維マットは、高い断熱性能を維持することが可能になる。
【0100】
[真空断熱材の製造工程]
このような真空断熱材1を製造する際は、まず、外装フィルム21と外装フィルム22とを重ね合わせるとともに、長辺側融着部23a、23b及び短辺側融着部25aに対応する部位を加熱する。加熱によって融着性フィルムが溶融すると、長辺側融着部23a、23b及び短辺側融着部25aが設けられる。このとき、短辺側融着部25bはまだ設けられていないため、芯材収容空間27は、1つの短辺1Sにおいて外部と連通している。
【0101】
次に、短辺1S側から、芯材収容空間27に芯材3及び吸着部材4を挿入する。そして、真空包装機を用いて、芯材3及び吸着部材4が収容された芯材収容空間27から、短辺1Sを介して空気を排出する。これにより、芯材収容空間27内の圧力が1~2Pa程度(中真空状態)まで低下する。
【0102】
次に、外装フィルム21、22のうち、上述した短辺側融着部25bに対応する部位を加熱する。加熱によって融着性フィルムが溶融すると、短辺側融着部25bが設けられる。これにより、芯材収容空間27が封止され、芯材収容空間27に芯材3及び吸着部材4が真空包装される。その後、真空包装機の内部が大気解放されることによって、袋体2の内外で圧力差が生じ、芯材3が外装フィルム21、22によって圧縮され、真空断熱材1が完成する。
【0103】
このようにして製造された真空断熱材1は、高い断熱性能を発揮し、建築物、自動販売機、クーラーボックス等に適用することができる。実用性の観点から、真空断熱材1の熱伝導率は2.5mW/(m・K)以下であることが好ましい。
【0104】
上述した製造工程では、芯材収容空間27に空気が残存することがある。この空気が含む水分(つまり、水蒸気)は、芯材収容空間27において熱伝達物質として機能し、これにより、真空断熱材1の断熱性能の低下を招くおそれがある。そこで、真空断熱材1は、吸着部材4に芯材収容空間27の水分を吸着させることによって、断熱性能の低下を抑制している。
【実施例0105】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0106】
実施例及び比較例で用いた測定方法は、以下のとおりである。
【0107】
[ピンホール数]
実施例及び比較例で用いた包装材について、折り重ねを解消してシート状に広げた。シート状に広げた包装材に平行LED光源を用いて光を当てた。斎藤光学株式会社製電子顕微鏡「SKL-Z200C LENS」を用いて包装材の影を観察し、包装材に生じたピンホールを通過してできた光の部分(直径21μm以上)の数を数えることにより、包装材に生じたピンホールの数(個)を測定した。試験数N=4で実施し、平均値(四捨五入により小数点以下第1位まで表示)を測定結果とした。なお、アルミニウムシートを複数枚重ね合わせた複数層の包装材である場合は、それぞれのシート(層)について測定し、最も外側のシートから順に1枚(層)目、2枚(層)目等と表記した。
【0108】
[水分吸着量]
実施例及び比較例で得られた吸着部材を、温度50℃湿度70%の環境下へ設置し、設置から24時間後の水分吸着量(g)を下記式により求めた。
24時間後の水分吸着量(g)=24時間後の吸着部材の質量(g)-設置前の吸着部材の質量(g)
試験数N=4で実施し、平均値を測定結果とした。
【0109】
実施例及び比較例において使用した原材料は、以下のとおりである。
【0110】
[包装材]
・正方形アルミ箔(組成:Al98.0質量%以上、Si0.7質量%以下、Fe0.7質量%以下、Cu0.1質量%以下、Mn0.05質量%以下、Mg0.05質量%以下、Zn0.05質量%以下、縦150mm×横150mm×厚み12μm)
・円形アルミ箔(組成:Al98.0質量%以上、Si0.7質量%以下、Fe0.7質量%以下、Cu0.1質量%以下、Mn0.05質量%以下、Mg0.05質量%以下、Zn0.05質量%以下、直径120mm×厚み20μm)
・正方形銅箔(縦150cm×横150cm×厚み12μm)
・円形銅箔(直径120mm相当×厚み12μm)
【0111】
[水分吸着剤]
・酸化カルシウム(CaO)(粉末状)
・ゼオライト(粉末状)
【0112】
[実施例1]
水分吸着剤として酸化カルシウム(CaO)を、アルミニウムシートとしてアニール処理した正方形アルミ箔を用い、上述の第1の実施形態に記載の手順で吸着部材を作製し、実施例1とした。
アニール処理した正方形アルミ箔は、大気電気炉を用い、大気圧下で、ON/OFF制御にて300℃で1時間、アルミ箔に対してアニール処理を行った後、大気電気炉中で自然放冷にて室温まで冷却することにより得た。
【0113】
[実施例2~8]
アルミニウムシートのアニール処理条件を表1に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、吸着部材を作製した。
なお、実施例5~8のアニール処理した正方形アルミ箔は、真空加熱炉を用い、真空下で、PID制御にて表1に示す温度と時間でアルミ箔に対してアニール処理を行った後、真空加熱炉中で真空放冷にて室温まで冷却することにより得た。アニール処理及び冷却における操作圧力は1000Pa以下であった。
各物性の測定結果を表1に示す。
【0114】
[実施例9]
アルミニウムシートとしてアニール処理した正方形アルミ箔を用い、上述の第2の実施形態に記載の手順で吸着部材を作製し、実施例9とした。
アニール処理は、実施例1と同様に大気圧下で行った。
各物性の測定結果を表1に示す。
【0115】
[実施例10、11]
アルミニウムシートを表1に示す枚数だけ重ね合わせて用いたこと以外は実施例1と同様にして、吸着部材を作製した。
各物性の測定結果を表1に示す。
【0116】
[実施例12]
水分吸着剤としてゼオライトを用いたこと以外は実施例1と同様にして、吸着部材を作製した。
各物性の測定結果を表1に示す。
【0117】
[実施例13]
アルミニウムシートとして、円形アルミ箔をカップ形状にしてアニール処理したものを用い、上述の第3の実施形態に記載の手順で吸着部材を作製し、実施例13とした。
アニール処理は、実施例1と同様に大気圧下で行った。
各物性の測定結果を表1に示す。
【0118】
[実施例14~20]
アルミニウムシートのアニール処理条件を表1に示すとおりに変更したこと以外は実施例13と同様にして、吸着部材を作製した。
実施例17~20のアニール処理は、実施例5~8と同様に真空下で行った。
各物性の測定結果を表1に示す。
【0119】
[実施例21、22]
アルミニウムシートを表1に示す枚数だけ重ね合わせて用いたこと以外は実施例13と同様にして、吸着部材を作製した。
各物性の測定結果を表1に示す。
【0120】
[実施例23]
水分吸着剤としてゼオライトを用いたこと以外は実施例13と同様にして、吸着部材を作製した。
各物性の測定結果を表1に示す。
【0121】
[比較例1]
アルミニウムシートをアニール処理しなかったこと以外は実施例1と同様にして、吸着部材を作製した。
各物性の測定結果を表2に示す。
【0122】
[比較例2]
アルミニウムシートをアニール処理しなかったこと以外は実施例13と同様にして、吸着部材を作製した。
各物性の測定結果を表2に示す。
【0123】
[比較例3]
正方形アルミニウム箔ではなく正方形銅箔を用い、アニール処理しなかったこと以外は実施例1と同様にして、吸着部材を作製した。
各物性の測定結果を表2に示す。
【0124】
[比較例4]
正方形アルミニウム箔ではなく正方形銅箔を用いたこと以外は実施例1と同様にして、吸着部材を作製した。
各物性の測定結果を表2に示す。
【0125】
[比較例5]
カップ形状にした円形アルミニウム箔ではなく、円形銅箔をカップ形状にせずに用いたこと以外は実施例14と同様にして、吸着部材を作製した。
各物性の測定結果を表2に示す。
【0126】
【表1-1】
【0127】
【表1-2】
【0128】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の吸着部材は、製造過程で包装材にピンホールが生じるのを低減し、包装後の吸着剤の吸着性能の劣化を抑制した吸着部材であるため、真空断熱材に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0130】
1:真空断熱材
2:袋体
3:芯材
4、4A~4G:吸着部材
4C、4D:コア
41:吸着剤
42、44、46、49:フィルム
43、493:吸着剤収容空間
44I、46I:第1のフィルム
44II、46II:第2のフィルム
44a、46a:底部
44b、46b:周側部
45:通気路
421、422、441、461:吸着剤配置領域
442、462:コア配置領域
492:袋状部
492a:開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12