(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064268
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】半導体パッケージ及び半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20240507BHJP
H01L 25/04 20230101ALI20240507BHJP
【FI】
H01L23/12 501P
H01L25/04 Z
H01L23/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172731
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】倉持 悟
(57)【要約】 (修正有)
【課題】FOPLP(Fan Out Panel Level Package)において、支持キャリアから剥離された半導体パッケージの反りを抑制した半導体パッケージ及び半導体パッケージの製造方法を提供する。
【解決手段】半導体パッケージ1は、第1面201及び第1面の反対側に位置する第2面202を含み、絶縁層21及び複数の配線22を其々有する第1配線層20A、第2配線層20B、第3配線層20C及び第4配線層20Dを含む再配線層20と、第1面201に位置する第1半導体素子40A及び第2半導体素子40Bと、第1面201に位置し、平面視において第1半導体素子40A及び第2半導体素子40Bを囲うモールド樹脂層60と、を備える。再配線層20は、30μm以上50μm以下の厚みを有する。モールド樹脂層60は、200μm以上400μm以下の厚みを有する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体パッケージであって、
第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含み、絶縁層及び配線を含む再配線層と、
前記第1面に位置する第1半導体素子及び第2半導体素子と、
前記第1面に位置し、平面視において前記第1半導体素子及び前記第2半導体素子を囲うモールド樹脂層と、を備え、
前記再配線層は、30μm以上50μm以下の厚みを有し、
前記モールド樹脂層は、200μm以上400μm以下の厚みを有する、半導体パッケージ。
【請求項2】
前記再配線層の前記絶縁層は、ポリイミドを含み、
前記モールド樹脂層は、エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の半導体パッケージ。
【請求項3】
前記再配線層は、第1弾性率E1を有し、
前記モールド樹脂層は、第2弾性率E2を有し、
前記第1弾性率E1に対する前記第2弾性率E2の比であるE2/E1が、8.0以上10.0以下である、請求項1に記載の半導体パッケージ。
【請求項4】
半導体パッケージであって、
第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含み、絶縁層及び配線を含む再配線層と、
前記第1面に位置する第1半導体素子及び第2半導体素子と、
前記第1面に位置し、前記第1半導体素子及び前記第2半導体素子に接するモールド樹脂層と、を備え、
前記再配線層は、第1弾性率E1を有し、
前記モールド樹脂層は、第2弾性率E2を有し、
前記第1弾性率E1に対する前記第2弾性率E2の比であるE2/E1が、8.0以上10.0以下である、半導体パッケージ。
【請求項5】
前記再配線層は、第1厚みT1を有し、
前記モールド樹脂層は、第2厚みT2を有し、
第1厚みT1と前記第1弾性率E1の積であるT1×E1に対する、第2厚みT2と前記第2弾性率E2の積であるT2×E2の比である(T2×E2)/(T1×E1)が、60.0以上75.0以下である、請求項4に記載の半導体パッケージ。
【請求項6】
前記モールド樹脂層は、平面視において前記第1半導体素子と前記第2半導体素子との間に位置する中間部分を含み、
前記中間部分は、前記再配線層との境界において、-6.0μm以上6.0μm以下の反りを有する、請求項4に記載の半導体パッケージ。
【請求項7】
前記第1弾性率E1に対する前記第2弾性率E2の比であるE2/E1が、9.0以上9.3以下であり、
前記中間部分は、前記再配線層との境界において、-3.0μm以上3.0μm以下の反りを有する、請求項6に記載の半導体パッケージ。
【請求項8】
前記再配線層は、積層された複数の配線層を含み、
複数の前記配線層はそれぞれ、前記絶縁層及び前記配線を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の半導体パッケージ。
【請求項9】
複数の前記配線層はそれぞれ、4.0μm以上12.0μm以下の厚みを有する、請求項8に記載の半導体パッケージ。
【請求項10】
前記モールド樹脂層は、モールド第1面と、前記モールド第1面の反対側に位置し、前記再配線層の前記第1面に面するモールド第2面と、を含み、
前記モールド第1面は、第1半導体素子の上面及び前記第2半導体素子の上面と同一平面上に位置する、請求項1~7のいずれか一項に記載の半導体パッケージ。
【請求項11】
前記再配線層の前記第2面に面する支持キャリアを備え、
前記支持キャリアは、前記第2面から剥離可能である、請求項1~7のいずれか一項に記載の半導体パッケージ。
【請求項12】
前記支持キャリアと前記再配線層の前記第2面との間に位置する剥離層を備える、請求項11に記載の半導体パッケージ。
【請求項13】
前記再配線層の前記第2面に面するインターポーザ第1面と、前記インターポーザ第1面の反対側に位置するインターポーザ第2面と、前記インターポーザ第1面と前記インターポーザ第2面との間に位置する絶縁層と、前記再配線層の前記配線に電気的に接続された貫通電極と、を含むインターポーザを備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の半導体パッケージ。
【請求項14】
半導体パッケージの製造方法であって、
支持キャリアを準備する工程と、
前記支持キャリア上にインターポーザを形成する工程と、
前記インターポーザ上に、絶縁層及び配線を含む再配線層を形成する工程と、
前記再配線層上に第1半導体素子及び第2半導体素子を搭載する工程と、
前記再配線層上にモールド樹脂層を形成する工程と、を備え、
前記再配線層は、30μm以上50μm以下の厚みを有し、
前記モールド樹脂層は、200μm以上400μm以下の厚みを有する、半導体パッケージの製造方法。
【請求項15】
前記再配線層は、第1弾性率E1を有し、
前記モールド樹脂層は、第2弾性率E2を有し、
前記第1弾性率E1に対する前記第2弾性率E2の比であるE2/E1が、8.0以上10.0以下である、請求項14に記載の半導体パッケージの製造方法。
【請求項16】
半導体パッケージの製造方法であって、
支持キャリアを準備する工程と、
前記支持キャリア上にインターポーザを形成する工程と、
前記インターポーザ上に、絶縁層及び配線を含む再配線層を形成する工程と、
前記再配線層上に第1半導体素子及び第2半導体素子を搭載する工程と、
前記再配線層上にモールド樹脂層を形成する工程と、を備え、
前記再配線層は、第1弾性率E1を有し、
前記モールド樹脂層は、第2弾性率E2を有し、
前記第1弾性率E1に対する前記第2弾性率E2の比であるE2/E1が、8.0以上10.0以下である、半導体パッケージの製造方法。
【請求項17】
前記再配線層は、第1厚みT1を有し、
前記モールド樹脂層は、第2厚みT2を有し、
第1厚みT1と前記第1弾性率E1の積であるT1×E1に対する、第2厚みT2と前記第2弾性率E2の積であるT2×E2の比である(T2×E2)/(T1×E1)が、60.0以上75.0以下である、請求項15又は16に記載の半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、半導体パッケージ及び半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CPUやメモリなど、機能の異なる複数の半導体素子を1つの基板上に高密度で実装するパッケージング技術が注目されている。複数の半導体素子を電気的に接続する基板は、インターポーザとも称される。例えば特許文献1,2は、貫通電極を含むインターポーザと、インターポーザに搭載された半導体素子と、を備える半導体パッケージを開示している。
【0003】
近年、半導体素子のさらなる高密度化を実現する技術として、FOWLP(Fan Out Wafer Level Package)が注目されている。FOWLPの一例を説明する。まず、8インチなどのウェハの形状を有する基板上に配線層を形成する。続いて、基板上に半導体素子を実装する。続いて、配線層及び半導体素子を封止するモールド樹脂層を基板上に形成する。半導体素子を他の配線基板などに接続する際には、配線層、半導体素子及びモールド樹脂層を含む構造体を基板から剥離する。FOWLPによれば、半導体素子よりも外側の領域にまで配線層を形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6014907号公報
【特許文献2】特許第6159820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FOWLPよりも高い生産性を実現できる技術として、FOPLP(Fan Out Panel Level Package)が知られている。FOPLPにおいては、支持キャリア上に半導体パッケージを形成する。例えば、支持キャリア上に再配線層が形成され、再配線層上に半導体素子が搭載される。その後、再配線層上にモールド樹脂層が形成される。
【0006】
半導体パッケージは、支持キャリアから剥離された後、マザーボードなどの配線基板に搭載される。半導体パッケージの構成要素に応力が生じている場合、支持キャリアから剥離された半導体パッケージに反りが生じることがある。反りは、半導体パッケージと配線基板との間の接続不良などを引き起こす可能性がある。
【0007】
本開示の実施形態は、このような課題を効果的に解決し得る半導体パッケージ及び半導体パッケージの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施形態は、以下の[1]~[17]に関する。
[1] 半導体パッケージであって、
第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含み、絶縁層及び配線を含む再配線層と、
前記第1面に位置する第1半導体素子及び第2半導体素子と、
前記第1面に位置し、平面視において前記第1半導体素子及び前記第2半導体素子を囲うモールド樹脂層と、を備え、
前記再配線層は、30μm以上50μm以下の厚みを有し、
前記モールド樹脂層は、200μm以上400μm以下の厚みを有する、半導体パッケージ。
【0009】
[2] [1]に記載の半導体パッケージにおいて、前記再配線層の前記絶縁層は、ポリイミドを含んでもよく、前記モールド樹脂層は、エポキシ樹脂を含んでもよい。
【0010】
[3] [1]又は[2]に記載の半導体パッケージにおいて、前記再配線層は、第1弾性率E1を有してもよく、前記モールド樹脂層は、第2弾性率E2を有してもよく、前記第1弾性率E1に対する前記第2弾性率E2の比であるE2/E1が、8.0以上10.0以下であってもよい。
【0011】
[4] 半導体パッケージであって、
第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含み、絶縁層及び配線を含む再配線層と、
前記第1面に位置する第1半導体素子及び第2半導体素子と、
前記第1面に位置し、前記第1半導体素子及び前記第2半導体素子に接するモールド樹脂層と、を備え、
前記再配線層は、第1弾性率E1を有し、
前記モールド樹脂層は、第2弾性率E2を有し、
前記第1弾性率E1に対する前記第2弾性率E2の比であるE2/E1が、8.0以上10.0以下である、半導体パッケージである。
【0012】
[5] [3]又は[4]に記載の半導体パッケージにおいて、前記再配線層は、第1厚みT1を有してもよく、前記モールド樹脂層は、第2厚みT2を有してもよく、第1厚みT1と前記第1弾性率E1の積であるT1×E1に対する、第2厚みT2と前記第2弾性率E2の積であるT2×E2の比である(T2×E2)/(T1×E1)が、60.0以上75.0以下であってもよい。
【0013】
[6] [1]~[5]のいずれか1つに記載の半導体パッケージにおいて、前記モールド樹脂層は、平面視において前記第1半導体素子と前記第2半導体素子との間に位置する中間部分を含んでもよく、前記中間部分は、前記再配線層との境界において、-6.0μm以上6.0μm以下の反りを有してもよい。
【0014】
[7] [6]に記載の半導体パッケージにおいて、前記第1弾性率E1に対する前記第2弾性率E2の比であるE2/E1が、9.0以上9.3以下であってもよく、前記中間部分は、前記再配線層との境界において、-3.0μm以上3.0μm以下の反りを有してもよい。
【0015】
[8] [1]~[7]のいずれか1つに記載の半導体パッケージにおいて、前記再配線層は、積層された複数の配線層を含んでもよく、複数の前記配線層はそれぞれ、前記絶縁層及び前記配線を含んでもよい。
【0016】
[9] [8]に記載の半導体パッケージにおいて、複数の前記配線層はそれぞれ、4.0μm以上12.0μm以下の厚みを有してもよい。
【0017】
[10] [1]~[9]のいずれか1つに記載の半導体パッケージにおいて、前記モールド樹脂層は、モールド第1面と、前記モールド第1面の反対側に位置し、前記再配線層の前記第1面に面するモールド第2面と、を含んでもよく、前記モールド第1面は、第1半導体素子の上面及び前記第2半導体素子の上面と同一平面上に位置してもよい。
【0018】
[11] [1]~[10]のいずれか1つに記載の半導体パッケージは、前記再配線層の前記第2面に面する支持キャリアを備えてもよく、前記支持キャリアは、前記第2面から剥離可能であってもよい。
【0019】
[12] [11]に記載の半導体パッケージは、前記支持キャリアと前記再配線層の前記第2面との間に位置する剥離層を備えてもよい。
【0020】
[13] [1]~[12]のいずれか1つに記載の半導体パッケージは、前記再配線層の前記第2面に面するインターポーザ第1面と、前記インターポーザ第1面の反対側に位置するインターポーザ第2面と、前記インターポーザ第1面と前記インターポーザ第2面との間に位置する絶縁層と、前記再配線層の前記配線に電気的に接続された貫通電極と、を含むインターポーザを備えてもよい。
【0021】
[14] 半導体パッケージの製造方法であって、
支持キャリアを準備する工程と、
前記支持キャリア上にインターポーザを形成する工程と、
前記インターポーザ上に、絶縁層及び配線を含む再配線層を形成する工程と、
前記再配線層上に第1半導体素子及び第2半導体素子を搭載する工程と、
前記再配線層上にモールド樹脂層を形成する工程と、を備え、
前記再配線層は、30μm以上50μm以下の厚みを有し、
前記モールド樹脂層は、200μm以上400μm以下の厚みを有する、半導体パッケージの製造方法である。
【0022】
[15] [14]に記載の半導体パッケージの製造方法において、前記再配線層は、第1弾性率E1を有してもよく、前記モールド樹脂層は、第2弾性率E2を有してもよく、前記第1弾性率E1に対する前記第2弾性率E2の比であるE2/E1が、8.0以上10.0以下であってもよい。
【0023】
[16] 半導体パッケージの製造方法であって、
支持キャリアを準備する工程と、
前記支持キャリア上にインターポーザを形成する工程と、
前記インターポーザ上に、絶縁層及び配線を含む再配線層を形成する工程と、
前記再配線層上に第1半導体素子及び第2半導体素子を搭載する工程と、
前記再配線層上にモールド樹脂層を形成する工程と、を備え、
前記再配線層は、第1弾性率E1を有し、
前記モールド樹脂層は、第2弾性率E2を有し、
前記第1弾性率E1に対する前記第2弾性率E2の比であるE2/E1が、8.0以上10.0以下である、半導体パッケージの製造方法である。
【0024】
[17] [15]又は[16]に記載の半導体パッケージの製造方法において、前記再配線層は、第1厚みT1を有してもよく、前記モールド樹脂層は、第2厚みT2を有してもよく、第1厚みT1と前記第1弾性率E1の積であるT1×E1に対する、第2厚みT2と前記第2弾性率E2の積であるT2×E2の比である(T2×E2)/(T1×E1)が、60.0以上75.0以下であってもよい。
【発明の効果】
【0025】
本開示の実施形態によれば、半導体パッケージの反りの量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】一実施の形態による半導体パッケージを示す平面図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿った半導体パッケージの断面図である。
【
図3】モールド樹脂層の中間部分の一例を示す断面図である。
【
図4】モールド樹脂層の中間部分の一例を示す断面図である。
【
図5】支持キャリアを準備する工程を示す断面図である。
【
図7A】再配線層を形成する工程を示す平面図である。
【
図7B】
図7AのVIIB-VIIB線に沿った積層体の断面図である。
【
図8A】再配線層を形成する工程を示す平面図である。
【
図8B】
図8AのVIIIB-VIIIB線に沿った積層体の断面図である。
【
図9A】半導体素子を搭載する工程を示す平面図である。
【
図9B】
図9AのIXB-IXB線に沿った積層体の断面図である。
【
図10】モールド樹脂層を形成する工程を示す断面図である。
【
図11A】半導体パッケージ中間体を分断する工程を示す平面図である。
【
図12】第1変形例における半導体パッケージを示す断面図である。
【
図13】第2変形例における半導体パッケージを示す断面図である。
【
図14】第3変形例における半導体パッケージを示す断面図である。
【
図15】第4変形例における半導体パッケージを示す断面図である。
【
図16】貫通電極基板が搭載される製品の例を示す図である。
【
図17】例1-A~例3-Kの半導体パッケージの評価結果を示す表である。
【
図18】ナノインデンテーション試験で用いる圧子を示す図である。
【
図19】対象物に圧子が押し込まれている様子を示す断面図である。
【
図20】圧子が取り除かれた後の対象物を示す断面図である。
【
図21】押し込み深さと荷重との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
半導体パッケージの構成及びその製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本開示の実施形態の一例であって、本開示はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。本明細書において、「基板」、「基材」、「シート」、「フィルム」などの用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「基板」はシートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。「面」とは、対象となる板状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となる板状の部材の平面方向と一致する面のことを指す。板状の部材に対して用いる法線方向とは、部材の面に対する法線方向のことを指す。本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
【0028】
本明細書において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補及び複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。例えば、「パラメータBは、例えばA1以上であり、A2以上であってもよく、A3以上であってもよい。パラメータBは、例えばA4以下であり、A5以下であってもよく、A6以下であってもよい。」と記載されている場合を考える。この場合、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下であってもよく、A1以上A5以下であってもよく、A1以上A6以下であってもよく、A2以上A4以下であってもよく、A2以上A5以下であってもよく、A2以上A6以下であってもよく、A3以上A4以下であってもよく、A3以上A5以下であってもよく、A3以上A6以下であってもよい。
【0029】
本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0030】
図1は、半導体パッケージ1の一例を示す平面図である。
図2は、
図1の半導体パッケージ1のII-II線に沿った断面図である。半導体パッケージ1は、第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3を有する。第1方向D1及び第2方向D2は、半導体パッケージ1の面方向に含まれる。第1方向D1は第2方向D2に直交している。第3方向D3は、半導体パッケージ1の厚み方向である。第3方向D3は第1方向D1及び第2方向D2に直交している。
【0031】
半導体パッケージ1は、再配線層20、少なくとも2つの半導体素子、及びモールド樹脂層60を備える。
図1及び
図2に示す例において、半導体パッケージ1は、第1半導体素子40A及び第2半導体素子40Bを備える。
【0032】
半導体パッケージ1の各構成要素について説明する。
【0033】
(再配線層)
再配線層20は、第1面201及び第2面202を含む。第2面202は、第1面201の反対側に位置する。再配線層20は、絶縁層21及び複数の配線22を含む。絶縁層21は、第1面201から第2面202まで半導体パッケージ1の第3方向D3において広がっていてもよい。複数の配線22の一部は、第1半導体素子40A又は第2半導体素子40Bに電気的に接続されていてもよい。
【0034】
再配線層20は、積層された複数の配線層を含んでもよい。
図2に示す例において、再配線層20は、第1配線層20A、第2配線層20B、第3配線層20C及び第4配線層20Dを含む。複数の配線層はそれぞれ、絶縁層21及び複数の配線22を含んでもよい。第1配線層20Aの絶縁層21が、再配線層20の第2面202を構成していてもよい。第4配線層20Dの絶縁層21が、再配線層20の第1面201を構成していてもよい。
【0035】
図2に示すように、再配線層20は、貫通電極23を含んでもよい。貫通電極23は、1つの配線層において、半導体パッケージ1の第3方向D3に延びている。貫通電極23は、第3方向D3において隣接する2つの配線層の配線22を電気的に接続できる。
【0036】
図2に示すように、再配線層20は、パッド24を含んでもよい。パッド24は、半導体素子の端子と第3方向D3において対向していてもよい。パッド24と半導体素子の端子との間には、バンプ25が位置していてもよい。バンプ25は、導電性を有する材料を含む。例えば、バンプ25は半田を含む。
【0037】
再配線層20は、厚みT1を有する。再配線層20の厚みのことを、第1厚みとも称する。第1厚みT1は、例えば30μm以上であり、35μm以上であってもよい。第1厚みT1は、例えば50μm以下であり、45μm以下であってもよい。第1厚みT1は、第1面201から第2面202までの、第3方向D3における距離である。第1厚みT1は、走査型電子顕微鏡によって撮影された半導体パッケージ1の断面画像に基づいて算出される。
【0038】
再配線層20の複数の配線層の厚みはそれぞれ、例えば4.0μm以上であり、6.0μm以上であってもよい。再配線層20の複数の配線層の厚みはそれぞれ、例えば12.0μm以下であり、10.0μm以下であってもよい。複数の配線層の厚みは、同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、第1面201を構成する配線層の厚みは、第2面202を構成する配線層の厚みよりも小さくてもよい。例えば、
図2に示す例において、第4配線層20Dの厚みは、第1配線層20Aの厚みよりも小さくてもよい。
【0039】
複数の配線層の絶縁層21を構成する材料が同一である場合、
図2に示すような、2つの配線層の間の境界が、明確には確認されない可能性がある。この場合、第3方向D3における配線22の間隔に基づいて、配線層の厚みが測定されてもよい。複数の配線層は、絶縁層21及び配線22を交互に形成することによって作製される。この場合、配線22は、2つの配線層の間の境界に位置する。
【0040】
配線22、パッド24などの導電層の厚みは、例えば0.1μm以上であり、0.5μm以上であってもよく、1.0μm以上であってもよい。配線22、パッド24などの導電層の厚みは、例えば10.0μm以下であり、5.0μm以下であってもよい。
【0041】
配線22の幅は、例えば0.5μm以上であり、1.0μm以上であってもよい。配線22の幅は、例えば5.0μm以下であり、3.0μm以下であってもよく、2.0μm以下であってもよい。平面視において隣り合う2つの配線22の間隔は、例えば0.5μm以上であり、1.0μm以上であってもよい。平面視において隣り合う2つの配線22の間隔は、例えば5.0μm以下であり、3.0μm以下であってもよく、2.0μm以下であってもよい。再配線層20は、これらの数値範囲を満たす配線22の他に、これらの数値範囲を満たさない配線22を含んでいてもよい。
【0042】
再配線層20は、弾性率E1を有する。再配線層20の弾性率のことを、第1弾性率とも称する。再配線層20の絶縁層21を構成する材料の型番が判明している場合、第1弾性率E1としては、材料のデータシートに記載されている値が用いられる。絶縁層21を構成する材料の型番が不明である場合、第1弾性率E1としては、ナノインデンテーション試験によって算出される再配線層20の減少弾性率が用いられる。第1弾性率E1は、25℃の環境において規定される。第1弾性率E1は、例えば1.0GPa以上であり、1.5GPa以上であってもよく、2.0GPa以上であってもよい。第1弾性率E1は、例えば5.0GPa以下であり、4.5GPa以下であってもよく、4.0GPa以下であってもよく、3.5GPa以下であってもよい。
【0043】
再配線層20は、熱膨張率C1を有する。再配線層20の弾性率のことを、第1熱膨張率とも称する。第1熱膨張率C1は、再配線層20の絶縁層21を構成する材料から作製されたサンプルを、熱機械分析によって評価することによって算出される。第1熱膨張率C1は、25℃の環境において規定される。第1熱膨張率C1は、例えば40ppm/℃以上であり、50pm/℃以上であってもよい。第1熱膨張率C1は、例えば80ppm/℃以下であり、70ppm/℃以下であってもよい。
【0044】
絶縁層21の材料は、上述の第1弾性率E1及び第1熱膨張率C1の数値範囲が満たされるよう選択されてもよい。絶縁層21は、例えばポリイミドなどの樹脂を含んでもよい。
【0045】
配線22、貫通電極23、パッド24は、導電性を有する材料を含む。例えば、配線22、貫通電極23、パッド24は、銅、金、銀、白金、ロジウム、スズ、アルミニウム、ニッケル、クロムなどの金属又はこれらを用いた合金を含んでいてもよい。
【0046】
(半導体素子)
第1半導体素子40A、第2半導体素子40Bなどの半導体素子は、再配線層20の第1面201に位置する。
図2に示す例において、半導体素子は、再配線層20の第1面201を構成する第4配線層20D上に位置する。
【0047】
第1半導体素子40A、第2半導体素子40Bなどの半導体素子は、シリコン等の半導体によって形成されたトランジスタを含む。半導体素子は、例えばCPU、GPU、FPGA、センサ、メモリ等である。半導体素子は、CPU、GPU、FPGA、センサ、メモリ等の半導体素子が機能ごとに分割されたチップレットであってもよい。半導体素子は、積層された複数の基板を含んでいてもよい。第2半導体素子40Bの形状、機能、性能などは、第1半導体素子40Aの形状、機能、性能などと同一でもよく、異なっていてもよい。
【0048】
第1半導体素子40A、第2半導体素子40Bなどの半導体素子は、上面401、下面402及び側面403を含む。下面402は、再配線層20の第1面201に面している。上面401は、第3方向D3において下面402の反対側に位置している。側面403は、上面401と下面402の間に位置している。側面403は、第3方向D3に沿って広がっていてもよい。
【0049】
(モールド樹脂層)
モールド樹脂層60は、第1半導体素子40A、第2半導体素子40Bなどの半導体素子の保護を目的とする部材である。例えば、モールド樹脂層60は、半導体素子を機械的又は電気的に保護できる。機械的な保護の例は、半導体素子への衝撃、圧力などからの保護である。電気的な保護の例は、水分の侵入を防ぎ、電気的な絶縁性を確保することである。モールド樹脂層60は、モールド第1面601と、モールド第1面601の反対側に位置するモールド第2面602と、を含む。モールド第2面602は、再配線層20の第1面201に面する。モールド第2面602は、再配線層20の第1面201に接していてもよい。
【0050】
モールド樹脂層60は、
図1に示すように、平面視において第1半導体素子40A、第2半導体素子40Bなどの半導体素子を囲んでいてもよい。モールド樹脂層60は、
図2に示すように、半導体素子の側面403に接していてもよい。
【0051】
モールド樹脂層60は、平面視において第1半導体素子40Aと第2半導体素子40Bとの間に位置する部分を含んでもよい。平面視において第1半導体素子40Aと第2半導体素子40Bとの間に位置するモールド樹脂層60の部分を、中間部分とも称し、符号61で表す。中間部分61は、半導体素子の側面403に接していてもよい。
【0052】
中間部分61の幅kは、例えば1.0mm以上であり、1.5mm以上であってもよい。中間部分61の幅kは、例えば5.0mm以下であり、4.0mm以下であってもよく、3.0mm以下であってもよい。中間部分61の幅kは、平面視において隣り合う2つの半導体素子の間の間隔に等しい。
【0053】
図2に示すように、モールド第1面601は、第1半導体素子40Aの上面401及び第2半導体素子40Bの上面401と同一平面上に位置してもよい。例えば、モールド第1面601と、第1半導体素子40Aの上面401及び第2半導体素子40Bの上面401との間の、第3方向D3における段差が、10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0054】
図2に示すように、モールド樹脂層60は、第1半導体素子40A及び第2半導体素子40Bの上面401に位置していなくてもよい。すなわち、第1半導体素子40A及び第2半導体素子40Bの上面401は、モールド樹脂層60によって覆われていなくてもよい。これにより、上面401がモールド樹脂層60によって覆われている場合に比べて、半導体パッケージ1の厚みを低減できる。
【0055】
第1半導体素子40A及び第2半導体素子40Bの上面401がモールド樹脂層60によって覆われて場合、放熱性を有する部材を上面401に配置してもよい。放熱性を有する部材は、モールド樹脂層60の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有してもよい。放熱性を有する部材は、例えば、ヒートスプレッダ、ヒートシンクなどである。
【0056】
モールド樹脂層60は、厚みT2を有する。モールド樹脂層60の厚みのことを、第2厚みとも称する。第2厚みT2は、例えば200μm以上であり、250μm以上であってもよい。第2厚みT2は、例えば400μm以下であり、350μm以下であってもよい。第2厚みT2は、モールド第1面601からモールド第2面602までの、第3方向D3における距離である。第2厚みT2は、走査型電子顕微鏡によって撮影された半導体パッケージ1の断面画像に基づいて算出される。
【0057】
モールド樹脂層60は、弾性率E2を有する。モールド樹脂層60の弾性率のことを、第2弾性率とも称する。モールド樹脂層60を構成する材料の型番が判明している場合、第2弾性率E2としては、材料のデータシートに記載されている値が用いられる。モールド樹脂層60を構成する材料の型番が不明である場合、第2弾性率E2としては、ナノインデンテーション試験によって算出されるモールド樹脂層60の減少弾性率が用いられる。第2弾性率E2は、25℃の環境において規定される。第2弾性率E2は、例えば8.0GPa以上であり、10.0GPa以上であってもよく、12.0GPa以上であってもよく、15.0GPa以上であってもよく、20.0GPa以上であってもよい。第2弾性率E2は、例えば60.0GPa以下であり、50.0GPa以下であってもよく、40.0GPa以下であってもよく、35.0GPa以下であってもよく、30.0GPa以下であってもよい。
【0058】
モールド樹脂層60は、熱膨張率C2を有する。モールド樹脂層60の弾性率のことを、第2熱膨張率とも称する。第2熱膨張率C2は、モールド樹脂層60を構成する材料から作製されたサンプルを、熱機械分析によって評価することによって算出される。第2熱膨張率C2は、25℃の環境において規定される。第2熱膨張率C2は、例えば50pm/℃以上であり、7.0ppm/℃以上であってもよい。第2熱膨張率C2は、例え20.0ppm/℃以下であり、16.0ppm/℃以下であってもよい。
【0059】
モールド樹脂層60の材料は、上述の第2弾性率E2及び第2熱膨張率C2の数値範囲が満たされるよう選択されてもよい。モールド樹脂層60は、例えばポリイミドなどの樹脂を含んでもよい。エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ビスマレイミド、ポリベンゾオキサゾール、及びベンゾシクロブテンのうちのいずれか、又はこれらの二種以上の組合せなどを含んでもよい。モールド樹脂層60は、熱硬化性樹脂を含んでもよい。
【0060】
図3は、モールド樹脂層60の中間部分61及び中間部分61の周囲の半導体パッケージ1の構成要素の一例を示す断面図である。再配線層20、モールド樹脂層60などの内部に歪が生じている場合、それらの構成要素には弾性的な復元力が生じている。例えば、再配線層20が圧縮されて歪んでいる場合、再配線層20には、再配線層20が伸びようとする方向において復元力が生じている。この復元力は、第3方向D3において再配線層20に接続されているモールド樹脂層60に作用する。この結果、再配線層20及びモールド樹脂層60の境界において、再配線層20及びモールド樹脂層60に反りが生じる可能性がある。
図3に示す例において、再配線層20及び中間部分61は、再配線層20が第3方向D3において中間部分61に向かって突出するように反っている。
【0061】
第1半導体素子40A及び第2半導体素子40Bなどの半導体素子の剛性は、モールド樹脂層60の剛性及び再配線層20の剛性に比べて大きい。このため、半導体パッケージ1のうち半導体素子に重なる部分には、反りが生じにくい。反りは、中間部分61のような、平面視において半導体素子に重なっていない部分に生じやすい。
【0062】
図4は、モールド樹脂層60の中間部分61及び中間部分61の周囲の半導体パッケージ1の構成要素のその他の例を示す断面図である。
図4に示す例において、再配線層20及び中間部分61は、中間部分61が第3方向D3において再配線層20に向かって突出するように反っている。
【0063】
図3及び
図4において、符号wは、再配線層20と中間部分61との境界において中間部分61に生じている反り量を表す。反り量wは、好ましくは-6.0μm以上6.0μm以下であり、より好ましくは-3.0μm以上3.0μm以下である。反り量wを低減することにより、平面視における半導体パッケージ1の構成要素の位置精度が低下することを抑制できる。例えば、平面視における再配線層20のパッド24の位置、後述するバンプ26の位置などが、設計位置からずれることを抑制できる。これにより、半導体パッケージ1とその他の基板との間の接続不良などが生じることを抑制できる。
【0064】
反り量wは、中間部分61の幅kに依存していてもよい。例えば、幅kに対する反り量wの比であるw/kが、一定の範囲内であってもよい。w/kは、好ましくは-3.0μm/mm以上3.0μm/mm以下であり、より好ましくは-1.5μm以上1.5μm以下である。
【0065】
反り量wが正の値であることは、
図3に示すような、再配線層20が第3方向D3において中間部分61に向かって突出する反りが生じていることを意味する。反り量wが負の値であることは、
図4に示すような、中間部分61が第3方向D3において再配線層20に向かって突出する反りが生じていることを意味する。
【0066】
反り量wは、中間部分61のモールド第2面602の、第3方向D3における位置の差の最大値として定義される。反り量wは、走査型電子顕微鏡によって撮影された中間部分61の断面画像に基づいて算出される。
【0067】
本実施の形態においては、再配線層20に生じる復元力とモールド樹脂層60に生じる復元力とが打ち消し合うようにモールド樹脂層60を構成することを提案する。これにより、半導体パッケージ1の反り量wを低減できる。
【0068】
例えば、再配線層20の第1弾性率E1に対するモールド樹脂層60の第2弾性率E2の比であるE2/E1が、適切に調整されてもよい。E2/E1は、例えば8.0以上であり、8.2以上であってもよく、8.5以上であってもよく、9.0以上であってもよい。E2/E1は、例えば10.0以下であり、9.8以下であってもよく、9.5以下であってもよく、9.3以下であってもよい。
【0069】
後述する実施例に示されるように、モールド樹脂層60の第2弾性率E2が一定である場合、再配線層20の第1弾性率E1が増加するほど、反り量wが増加する。言い換えると、再配線層20の第1弾性率E1が一定である場合、モールド樹脂層60の第2弾性率E2が増加するほど、反り量wが減少する。
【0070】
弾性率に加えて厚みを考慮して、モールド樹脂層60が構成されてもよい。例えば、再配線層20の第1厚みT1と第1弾性率E1の積であるT1×E1に対する、モールド樹脂層60の第2厚みT2と第2弾性率E2の積であるT2×E2の比である(T2×E2)/(T1×E1)が、適切に調整されてもよい。(T2×E2)/(T1×E1)は、例えば58.0以上であり、60.0以上であってもよく、63.0以上であってもよい。(T2×E2)/(T1×E1)は、例えば80.0以下であり、75.0以下であってもよく、70.0以下であってもよい。
【0071】
(アンダーフィル)
図2~
図4に示すように、半導体パッケージ1は、再配線層20の第1面201と半導体素子の下面402との間に位置するアンダーフィル65を備えてもよい。アンダーフィル65は、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂を含んでもよい。アンダーフィル65は、再配線層20と半導体素子とを接合する接着材として機能できる。
【0072】
(半導体パッケージの製造方法)
次に、半導体パッケージ1の製造方法を説明する。
【0073】
まず、
図5に示すように、支持キャリア50が準備される。支持キャリア50は、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、樹脂基板、シリコン基板、炭化シリコン基板、アルミナ(Al2O3)基板、窒化アルミ(AlN)基板、酸化ジルコニア(ZrO2)基板、ニオブ酸リチウム基板、ニオブ酸タンタル基板などを含んでいてもよい。樹脂基板は、有機材料を含んでいてもよい。例えば、樹脂基板は、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを含んでいてもよい。
【0074】
支持キャリア50の厚みは、例えば100μm以上であり、200μm以上であってもよく、500μm以上であってもよい。支持キャリア50の厚みは、例えば2mm以下であり、1.5mm以下であってもよく、1mm以下であってもよい。支持キャリア50の面積は、例えば0.5m2以上であり、1.0m2以上であってもよく、2.0m2以上であってもよく、3.0m2以上であってもよい。
【0075】
続いて、
図6に示すように、支持キャリア50上に剥離層51が形成される。剥離層51は、支持キャリア50上に形成される再配線層20を支持キャリア50から剥離する工程を容易化するための構成要素である。剥離層51は、熱可塑性の樹脂を含んでもよい。この場合、半導体パッケージ1を加熱することにより、剥離層51が再配線層20から剥離しやすくなる。剥離層51の厚みは、例えば0.3μm以上であり、1μm以上であってもよい。剥離層51の厚みは、例えば30μm以下であり、50μm以下であってもよい。
【0076】
続いて、剥離層51上に再配線層20Mを形成する再配線層工程が実施される。再配線層20Mは、分断されることによって上述の再配線層20を構成する層である。すなわち、再配線層20Mは、各々が再配線層20に対応する複数の部分を含む。
【0077】
再配線層工程は、例えば
図7A及び
図7Bに示すように、剥離層51上に第1配線層20Aを形成する工程を含む。例えば、剥離層51上に配線22を形成する工程が実施される。続いて、配線22を覆う絶縁層21を形成する工程が実施される。続いて、平面視において配線22に重なる絶縁層21の一部に貫通孔が形成されてもよい。続いて、絶縁層21上に配線22を形成し、貫通孔に貫通電極23を形成する工程が実施されてもよい。
【0078】
第1配線層20Aの形成工程と同様に、絶縁層21及び配線22を交互に形成することによって、第2配線層20B、第3配線層20C、第4配線層20Dが形成される。このようにして、第1配線層20A、第2配線層20B、第3配線層20C及び第4配線層20Dを含む再配線層20Mが得られる。
図8A及び
図8Bは、剥離層51上に形成された再配線層20Mを示す平面図及び断面図である。
【0079】
続いて、
図9A及び
図9Bに示すように、再配線層20M上に第1半導体素子40A及び第2半導体素子40Bを搭載する工程が実施される。続いて、
図10に示すように、再配線層20M上にモールド樹脂層60を形成する工程が実施される。
【0080】
モールド樹脂層60は、コンプレッションモールドによって形成されてもよい。例えば、まず、第1の型と第2の型との間のキャビティに、
図9A及び
図9Bに示す積層体を配置する。続いて、キャビティにおいて、液状又は粒状の樹脂を積層体の再配線層20M、第1半導体素子40A及び第2半導体素子40Bに接触させる。また、第1の型と第2の型との間で樹脂を圧縮する。樹脂が冷却されて固化することにより、モールド樹脂層60が得られる。
【0081】
図10に示す積層体のことを、半導体パッケージ中間体2とも称する。
【0082】
続いて、
図11A及び
図11Bに示すように、半導体パッケージ中間体2を分断する分断工程が実施される。分断工程においては、個々の半導体パッケージ1の寸法に応じて、半導体パッケージ中間体2が第1方向D1及び第2方向D2に沿って切断される。これにより、複数の半導体パッケージ1が得られる。
【0083】
分断工程においては、少なくとも再配線層20M及びモールド樹脂層60が、第3方向D3において切断される。
図11Bに示す例においては、支持キャリア50も、第3方向D3において切断される。このため、再配線層20の外側面203、モールド樹脂層60のモールド外側面603及び支持キャリア50のキャリア側面503が、半導体パッケージ1の連続的な側面を構成する。
【0084】
半導体パッケージ1は、再配線層20が支持キャリア50によって支持された状態で流通してもよい。すなわち、半導体パッケージ1は、再配線層20の第2面202に面する支持キャリア50を備えてもよい。この場合、半導体パッケージ1は、支持キャリア50と再配線層20との間に位置する剥離層51を備えてもよい。
【0085】
分断工程の後、再配線層20を支持キャリア50から剥離する剥離工程が実施されてもよい。例えば、半導体パッケージ1を加熱することによって、剥離層51を再配線層20から剥離させてもよい。
【0086】
図示はしないが、分断工程は、支持キャリア50が再配線層20Mから剥離された後に実施されてもよい。
【0087】
本実施の形態によれば、再配線層20に生じる弾性的な復元力を、モールド樹脂層60が少なくとも部分的に打ち消すことができる。このため、半導体パッケージ1の反り量wを低減できる。
【0088】
上述した一実施形態を様々に変更できる。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した一実施形態と同様に構成され得る部分について、上述の一実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いる。重複する説明は省略する。また、上述した一実施形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略する場合もある。
【0089】
(第1変形例)
図12は、第1変形例における半導体パッケージ1を示す断面図である。半導体パッケージ1は、再配線層20の第2面202に位置するバンプ26を含んでもよい。バンプ26は、再配線層20の複数の配線22の一部に電気的に接続されている。バンプ26は、導電性を有する材料を含む。例えば、バンプ26は半田を含む。
【0090】
(第2変形例)
図13は、第2変形例における半導体パッケージ1を示す断面図である。半導体パッケージ1は、第3方向D3において再配線層20に接続されたインターポーザ30を備えてもよい。
【0091】
インターポーザ30は、インターポーザ第1面301と、インターポーザ第1面301の反対側に位置するインターポーザ第2面302と、を含む。インターポーザ第1面301は、再配線層20の第2面202に面している。
【0092】
インターポーザ30は、絶縁層31及び貫通電極33を含む。貫通電極33は、再配線層20の複数の配線22の一部に電気的に接続されていてもよい。インターポーザ30は、配線32、パッド34を含んでもよい。パッド34は、再配線層20のバンプ26に接続されていてもよい。
【0093】
絶縁層31は、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、樹脂基板、シリコン基板、炭化シリコン基板、アルミナ(Al2O3)基板、窒化アルミ(AlN)基板、酸化ジルコニア(ZrO2)基板、ニオブ酸リチウム基板、ニオブ酸タンタル基板などを含んでいてもよい。樹脂基板は、有機材料を含んでいてもよい。例えば、樹脂基板は、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを含んでいてもよい。
【0094】
絶縁層31の厚みは、例えば100μm以上であり、200μm以上であってもよく、500μm以上であってもよい。絶縁層31の厚みは、例えば2mm以下であり、1.5mm以下であってもよく、1.0mm以下であってもよい。
【0095】
貫通電極33は、絶縁層31の貫通孔に形成されている。貫通電極33は、第3方向D3において絶縁層31を貫通していてもよい。
【0096】
配線32、貫通電極33、パッド34は、導電性を有する材料を含む。例えば、配線32、貫通電極33、パッド34は、銅、金、銀、白金、ロジウム、スズ、アルミニウム、ニッケル、クロムなどの金属又はこれらを用いた合金を含んでいてもよい。
【0097】
(第3変形例)
図14は、第3変形例における半導体パッケージ1を示す断面図である。半導体パッケージ1は、インターポーザ30のインターポーザ第2面302に位置するバンプ36を含んでもよい。バンプ36は、インターポーザ30の複数の貫通電極33の一部に電気的に接続されている。バンプ36は、導電性を有する材料を含む。例えば、バンプ36は半田を含む。
【0098】
(第4変形例)
図15は、第4変形例における半導体パッケージ1を示す断面図である。第1半導体素子40A、第2半導体素子40Bなどの半導体素子の上面401は、モールド樹脂層60によって覆われていてもよい。
【0099】
図16は、半導体パッケージ1が搭載される製品の例を示す図である。半導体パッケージ1は、様々な製品において利用され得る。例えば、ノート型パーソナルコンピュータ110、タブレット端末120、携帯電話130、スマートフォン140、デジタルビデオカメラ150、デジタルカメラ160、デジタル時計170、サーバ180等に搭載される。
【0100】
上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて上述した実施の形態に適用することも可能である。
【実施例0101】
次に、本開示の実施形態を実施例により更に具体的に説明するが、本開示の実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0102】
(例1-A)
支持キャリア50上に再配線層20を形成した。再配線層20の絶縁層21の材料としては、再配線材料1を用いた。再配線材料1は、東レ株式会社製の感光性ポリイミド PNである。1つの絶縁層21の厚みは4.0μm以上12.0μm以下であり、再配線層20の第1厚みT1は40μmであった。続いて、再配線層20上に2個の半導体素子を搭載した。半導体素子は、平面視において、一辺が20mmの正方形の形状を有する。半導体素子の厚みは、300μmであった。2個の半導体素子の間の間隔は、2.0mmであった。
【0103】
続いて、再配線層20上にモールド樹脂層60を形成した。モールド樹脂層60の材料としては、モールド材料Aを用いた。モールド材料Aは、信越化学株式会社製のエポキシ成形材料 KMC-2310である。モールド樹脂層60の第2厚みは、300μmであった。
【0104】
再配線層20、半導体素子及びモールド樹脂層60を含む積層体から支持キャリア50を剥離させて、半導体パッケージ1を作製した。続いて、半導体パッケージ1の中間部分61に生じている反り量wを測定した。反り量wは、+6.0μmよりも大きかった。
【0105】
反り量wの測定結果を、再配線層20及びモールド樹脂層60の物性と合わせて
図17に示す。
図17に示す弾性率及び熱膨張率(CTR)は、材料のデータシートに記載されている数値である。
【0106】
再配線層20及びモールド樹脂層60の材料の型番が不明である場合、再配線層20の第1弾性率E1及びモールド樹脂層60の第2弾性率E2は、ナノインデンテーション試験によって算出される。
【0107】
図18~
図21を参照して、ナノインデンテーション試験によって弾性率を算出する方法を説明する。
図18は、ナノインデンテーション試験において用いられる圧子70を示す図である。圧子70は、頂角が115°である角錐面を含む。
【0108】
ナノインデンテーション試験においては、ステージ上に載置された対象物の表面に、トランスデューサに装着された圧子70を、トランスデューサで荷重をかけながら押込む。対象物は、再配線層20又はモールド樹脂層60である。
図19は、対象物75に圧子70が押込まれている状態を示す断面図である。圧子70が押し込まれている状態における対象物75の表面を、変形表面76とも称する。その後、圧子70を押込み方向と逆方向に移動させることにより、圧子70が対象物75から取り除かれる。
図20は、圧子70が取り除かれた後の対象物75を示す断面図である。圧子70が取り除かれた後の対象物75の表面を、復元表面77とも称する。
図20においては、変形表面76が点線で示されている。
【0109】
図21は、圧子70の押込み深さhと、圧子70の荷重Pとの関係を示すグラフである。荷重Pは、圧子70の押込み深さhの増加にともなって二次関数的な曲線Aをたどって増加する。曲線Aは、対象物75の弾性変形及び塑性変形の両方を表している。押込みが完了したとき、圧子70の押込み深さhは最大値h
maxとなり、荷重Pも最大値P
maxとなる。
【0110】
圧子70の押込みの完了後、圧子70を押込み方向と逆方向に移動させる。これにより、
図21に示すように、荷重Pは、曲線Aよりも急峻な二次関数的な曲線Bをたどって減少する。また、圧子70の除荷にともなう弾性回復によって、対象物75の表面は、変形表面76から復元表面77へと変形する。
図20の符号h
fは、復元表面77に形成されている凹部の深さを表す。
【0111】
ナノインデンテーション試験においては、押込み接点の減少弾性率Erが、次式によって算出される。
Er=π1/2/2CAp
1/2 (1)
数式(1)において、Cは、荷重の最大値Pmaxにおける曲線Bの接線の傾きdP/dhである。Apは、圧子70と対象物75が接している投影面積である。
【0112】
数式(1)におけるA
pは、次式によって求めることができる。
A
p=23.96×{h
max-ε(h
max-h
C)} (2)
数式(2)において、εは、圧子Iの幾何学形状による補正係数である。圧子70がダイヤモンドビッカース圧子の場合、εは0.75である。h
Cは、荷重の最大値P
maxにおける曲線Bの接線と
図21の横軸との交点である。
【0113】
減少弾性率Erに基づいて、対象物75の押込み弾性率EITが、次式によって算出される。
EIT={1-(VS)2}/[(1/Er)-{1-(Vi)2}/Ei] (3)
数式(3)において、VSは、対象物75のポアソン比である。Viは、圧子70のポアソン比である。Eiは、圧子70の弾性率である。
【0114】
(例1-B~例1-G)
モールド樹脂層60の材料として、モールド材料B~Gを用いたこと以外は、例1-Aの場合と同様の方法によって、半導体パッケージ1を作製した。続いて、例1-Aの場合と同様の方法によって、半導体パッケージ1の中間部分61に生じている反り量wを測定した。反り量wの測定結果を、再配線層20及びモールド樹脂層60の物性と合わせて
図17に示す。モールド材料B~Gを、上述のモールド材料A及び後述するモールド材料H~Kと合わせて表に示す。
【0115】
【0116】
図17に示すように、モールド樹脂層60の第2弾性率E2が増加するにつれて、反り量が減少する傾向が見られた。配線層20の第1弾性率E1に対するモールド樹脂層60の第2弾性率E2の比であるE2/E1が、8.0以上10.0以下の場合、反り量が-6.0μm以上6.0μm以下であった。すなわち、E2/E1が、8.0以上10.0以下の場合、反り量の絶対値が6.0μm以下であった。
【0117】
(例2-D)
再配線層20の絶縁層21の材料として、再配線材料2を用いたこと以外は、例1-Dの場合と同様の方法によって、半導体パッケージ1を作製した。続いて、例1-Aの場合と同様の方法によって、半導体パッケージ1の中間部分61に生じている反り量wを測定した。反り量wは、+6.0μmよりも大きかった。反り量wの測定結果を、再配線層20及びモールド樹脂層60の物性と合わせて
図17に示す。再配線材料2を、上述の再配線材料1及び後述する再配線材料3と合わせて表に示す。
【0118】
【0119】
(例2-E~例2-I)
モールド樹脂層60の材料として、モールド材料E~Iを用いたこと以外は、例2-Dの場合と同様の方法によって、半導体パッケージ1を作製した。続いて、例1-Aの場合と同様の方法によって、半導体パッケージ1の中間部分61に生じている反り量wを測定した。反り量wの測定結果を、再配線層20及びモールド樹脂層60の物性と合わせて
図17に示す。
【0120】
図17に示すように、モールド樹脂層60の第2弾性率E2が増加するにつれて、反り量が減少する傾向が見られた。配線層20の第1弾性率E1に対するモールド樹脂層60の第2弾性率E2の比であるE2/E1が、8.0以上10.0以下の場合、反り量が-6.0μm以上6.0μm以下であった。すなわち、E2/E1が8.0以上10.0以下の場合、反り量の絶対値が6.0μm以下であった。また、E2/E1が9.0以上10.0以下の場合、反り量が-3.0μm以上3.0μm以下であった。すなわち、E2/E1が9.0以上9.3以下の場合、反り量の絶対値が3.0μm以下であった。
【0121】
(例3-D)
再配線層20の絶縁層21の材料として、再配線材料3を用いたこと以外は、例1-Dの場合と同様の方法によって、半導体パッケージ1を作製した。続いて、例1-Aの場合と同様の方法によって、半導体パッケージ1の中間部分61に生じている反り量wを測定した。反り量wは、+6.0μmよりも大きかった。反り量wの測定結果を、再配線層20及びモールド樹脂層60の物性と合わせて
図17に示す。
【0122】
(例3-E~例3-K)
モールド樹脂層60の材料として、モールド材料E~Kを用いたこと以外は、例3-Dの場合と同様の方法によって、半導体パッケージ1を作製した。続いて、例1-Aの場合と同様の方法によって、半導体パッケージ1の中間部分61に生じている反り量wを測定した。反り量wの測定結果を、再配線層20及びモールド樹脂層60の物性と合わせて
図17に示す。
【0123】
図17に示すように、モールド樹脂層60の第2弾性率E2が増加するにつれて、反り量が減少する傾向が見られた。配線層20の第1弾性率E1に対するモールド樹脂層60の第2弾性率E2の比であるE2/E1が、8.0以上10.0以下の場合、反り量が-6.0μm以上6.0μm以下であった。すなわち、E2/E1が8.0以上10.0以下の場合、反り量の絶対値が6.0μm以下であった。また、E2/E1が9.0以上10.0以下の場合、反り量が-3.0μm以上3.0μm以下であった。すなわち、E2/E1が9.0以上9.3以下の場合、反り量の絶対値が3.0μm以下であった。