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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064276
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】地中掘削推進施工システム
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/093 20060101AFI20240507BHJP
   E21D 9/087 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
E21D9/093 C
E21D9/087 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172743
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】500519987
【氏名又は名称】株式会社ジェイアール総研情報システム
(74)【代理人】
【識別番号】100133802
【弁理士】
【氏名又は名称】富樫 竜一
(74)【代理人】
【識別番号】100197181
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 泰子
(72)【発明者】
【氏名】田村 晋治郎
(72)【発明者】
【氏名】関根 朝次
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AA10
2D054AC04
2D054AD02
2D054BA03
2D054DA01
2D054GA04
2D054GA25
2D054GA33
2D054GA38
2D054GA62
2D054GA82
2D054GA87
2D054GA97
(57)【要約】      (修正有)
【課題】IT技術を取り入れた効率的な掘削システムの提供すること。
【解決手段】掘削部駆動手段25および方向制御アクチュエータ31、32を備えた掘削機本体2と掘削機制御手段4を備えた推進施工システムであって、記掘削機本体2に対する制御情報と、掘削機本体2に搭載されたセンサから取得された検出情報を取得する中継用端末N2を設け、中継用端末N2が取得した制御情報や検出情報を、通信ネットワークN上に設けたネットワークサーバNSが取得するとともに、ネットワークサーバNSに設けたプログラムによって制御情報および検出情報を他の端末装置N1、N3によって取得できるよう構成した。ネットワークサーバNSは、取得した情報をプログラムによって求められる機能に応じて編集し、ネットワークサーバNSに接続した複数の端末装置N1等によって取得することで遠隔地からの監視等を可能にした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土石を掘削する掘削カッターを先端面に備えた掘削部と当該掘削部を駆動する掘削部駆動手段および掘削部の進行方向を制御する方向制御アクチュエータを備えた掘削機本体と、
前記掘削機本体の掘削部駆動手段および方向制御アクチュエータを制御する掘削機制御手段
を備えた推進施工システムであって、
前記掘削機本体に対する制御情報と、当該掘削機本体に搭載されたセンサから取得された検出情報を取得する中継用端末を設け、
当該中継用端末が取得した前記制御情報および検出情報を、通信ネットワーク上に設けたネットワークサーバが取得するとともに、当該ネットワークサーバに設けたプログラムによって配信可能に処理した前記制御情報および検出情報を通信ネットワーク上に設けた他の端末装置が取得し視認できる監視機能を設けたことを特徴とする地中掘削推進施工システム。
【請求項2】
土石を掘削する掘削カッターを先端面に備えた掘削部と当該掘削部を駆動する掘削部駆動手段および掘削部の進行方向を制御する方向制御アクチュエータを備えた掘削機本体と、
前記掘削機本体の掘削部駆動手段および方向制御アクチュエータを制御する掘削機制御手段と、
掘削機本体を推進させる推進装置および推進装置制御手段と、
掘削される土石を泥化するための添加剤を供給する加泥装置および加泥装置制御手段と、
掘削によって生じた泥化した土石を排出する排泥装置および排泥装置制御手段を備えた推進施工システムであって、
前記掘削機本体、推進装置、加泥装置および排泥装置に対する制御情報と、前記掘削機本体、推進装置、加泥装置および排泥装置に搭載されたセンサから取得された検出情報を取得する中継用端末を設け、
当該中継用端末が取得した前記制御情報および検出情報を、通信ネットワーク上に設けたネットワークサーバが取得するとともに、当該ネットワークサーバに設けたプログラムによって配信可能に処理した前記制御情報および検出情報を通信ネットワーク上に設けた他の端末装置が取得し視認できる監視機能を設けたことを特徴とする地中掘削推進施工システム。
【請求項3】
前記ネットワークサーバに設けたプログラムは、過去に記録した前記掘削機本体に対する制御情報および検出情報に基づいて、前記推進装置の動作を再現表示する再現機能を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の地中掘削推進施工システム。
【請求項4】
前記ネットワークサーバに設けたプログラムは、事前に計画された掘削によって生成される図面化された穴の経路と、前記検出情報によって得られた実際の掘削による図面化された経路を、前記他の端末装置上で比較して表示する工程比較機能を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の地中掘削推進施工システム。
【請求項5】
前記ネットワークサーバに設けたプログラムは、当該ネットワークサーバに接続された他の端末装置によって入力された前記掘削機本体に対する制御情報を、前記掘削機制御手段に対して送信し前記掘削機本体を遠隔制御する遠隔制御機能を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の地中掘削推進施工システム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削装置を制御して地中を掘削する推進施工システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線や通信ケーブルを収納する管を地中に敷設する際に使用する掘削装置がある。例えば、ラムサス工法(非特許文献1)と称される方法があり、先端に土や岩石等を掘削するカッタヘッドを装着した円筒状の外形を有した掘削装置を使用するものがある。
この掘削装置は、先端に地中を掘削する掘削部を有した掘削機本体があり、埋設管として敷設される管状部材を継ぎ足しながら後方から押圧することで、掘削と管路の敷設を同時に行うものである。掘削装置は、掘削装置のコントロールを行う掘削機制御手段や掘削残土の排出設備や地上から掘削装置の位置を測定する測定手段など、様々な設備と連携して工事を行わせるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-355388号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「ラムサス工法」(推進施工システム)に関する説明<URL:https://www.ramsus.com/method/ramsus>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および非特許文献1に記載されている掘削装置の操作は、現場の土質、岩盤や水脈の出現などに応じて適切に行われなければならない。これには熟練した操作が求められるものであるが、現状では熟練した推進施工オペレータは減少傾向にあるため、経験の浅いオペレータを指導し育てる必要がある。しかしながら、実際の現場で経験の浅いオペレータに対する教育時間を確保することが非常に難しく、経験と技術の承継に役立つシステムが求められている。
また、施工中にトラブルが発生した場合に、トラブルの原因やプロセスを解明するための手段がなく、以後の施工において再度同様のトラブルが発生するなど、発生した事象を教訓として活かすことができていなかった。
【0006】
その他にも、施工期間中に毎日作成する推進施工日報の作成所要時間が非常に大きく、毎日施工終了後に宿舎でデータの整理や写真の整理に追われていた。また、推進施工用機器の操作は慣れていてもパソコンの操作に不慣れな高齢作業者が多いという現実的な問題があった。
本発明は、上記の現実的課題に鑑み、今後さらに発展するであろうIT技術を取り入れた効率的なシステムによって各種の課題の解消を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。即ち、
土石を掘削する掘削カッターを先端面に備えた掘削部と当該掘削部を駆動する掘削部駆動手段および掘削部の進行方向を制御する方向制御アクチュエータを備えた掘削機本体と、
前記掘削機本体の掘削部駆動手段および方向制御アクチュエータを制御する掘削機制御手段
を備えた推進施工システムであって、
前記掘削機本体に対する制御情報と、当該掘削機本体に搭載されたセンサから取得された検出情報を取得する中継用端末を設け、
当該中継用端末が取得した前記制御情報および検出情報を、通信ネットワーク上に設けたネットワークサーバが取得するとともに、当該ネットワークサーバに設けたプログラムによって配信可能に処理した前記制御情報および検出情報を通信ネットワーク上に設けた他の端末装置が取得し視認できる監視機能を設けたことを特徴とする地中掘削推進施工システム。
【0008】
また、本発明は以下の構成を有する。即ち、
土石を掘削する掘削カッターを先端面に備えた掘削部と当該掘削部を駆動する掘削部駆動手段および掘削部の進行方向を制御する方向制御アクチュエータを備えた掘削機本体と、
前記掘削機本体の掘削部駆動手段および方向制御アクチュエータを制御する掘削機制御手段と、
掘削機本体を推進させる推進装置および推進装置制御手段と、
掘削される土石を泥化するための添加剤を供給する加泥装置および加泥装置制御手段と、
掘削によって生じた泥化した土石を排出する排泥装置および排泥装置制御手段を備えた推進施工システムであって、
前記掘削機本体、推進装置、加泥装置および排泥装置に対する制御情報と、前記掘削機本体、推進装置、加泥装置および排泥装置に搭載されたセンサから取得された検出情報を取得する中継用端末を設け、
当該中継用端末が取得した前記制御情報および検出情報を、通信ネットワーク上に設けたネットワークサーバが取得するとともに、当該ネットワークサーバに設けたプログラムによって配信可能に処理した前記制御情報および検出情報を通信ネットワーク上に設けた他の端末装置が取得し視認できる監視機能を設けたことを特徴とする地中掘削推進施工システム。
【0009】
また、本発明は上記発明において以下の構成を有する。
前記ネットワークサーバに設けたプログラムは、過去に記録した前記掘削機本体に対する制御情報および検出情報に基づいて、前記推進装置の動作を再現表示する再現機能を有していることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は上記発明において以下の構成を有する。
前記ネットワークサーバに設けたプログラムは、事前に計画された掘削によって生成される図面化された穴の経路と、前記検出情報によって得られた実際の掘削による図面化された経路を、前記他の端末装置上で比較して表示する工程比較機能を有していることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は上記発明において以下の構成を有する。
前記ネットワークサーバに設けたプログラムは、当該ネットワークサーバに接続された他の端末装置によって入力された前記掘削機本体に対する制御情報を、前記掘削機制御手段に対して送信し前記掘削機本体を遠隔制御する遠隔制御機能を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る地中掘削推進施工システムは、従来型の施工システムをインターネット等のネットワークに接続できるよう構成し、ネットワーク上に配置したネットワークサーバによって、掘削に関する様々な情報を取得するとともに、取得した情報を様々な形態で配信できるように構成したものである。取得した情報は、ネットワークサーバに搭載したプログラムによって求められる用途に応じたレイアウトで表示されるように編集され配信される。ネットワークサーバに接続できる端末の数は基本的に制限が無いため、工事に携わる様々な立場の人達が工事に関する情報を取得できるようになっている。
例えば、現場のオペレーションを監視する場合には熟練したオペレータが使用する。また、日報などの報告書類を作成する場合には管理的な立場な担当者が使用できる。特に、従来は現場に赴かなければならなかった作業が、会社や現場以外の場所でも利用出来るようになるので、無駄な労力や工数を削減する上でも極めて有効な手段を提供できるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本システムの概要を表した説明図である。
図2】本システムの概念を表した概念図である。
図3】本システムにおける掘削機の進行方向制御に関する説明図である。
図4】本システムにおける監視端末に表示される画像の一例を表した説明図である。
図5】本システムにおける監視端末に表示される他の画像例を表した説明図である。
図6】本システムにおける監視端末に表示される他の画像例を表した説明図である。
図7】本システムにおける職責対応判定テーブルの一例を表した説明図である。
図8】本システムにおける警報判定テーブルの一例を表した説明図である。
図9】本システムにおける電子メールによる警報内容の一例を表した説明図である。
図10】本システムにおける警報伝達の概要を表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明に係る地中掘削推進施工システム(以下「本システム」)1の概要を表した説明図であり地中部と地上部に配置される装置群および通信ネットワークNに接続された各種の端末装置N1、N2、N3等によって構成されている。接続可能な端末装置の数には実質的な制限はなく、コンピュータ端末の他、スマホ等の携帯端末を用いても良い。なお、図1は概要図であるから、各装置の形状、細部の構造、縮尺は機能を説明するためのものであって実際の装置とは異なるものであり、適宜省略、簡略化して記載している点に留意されたい。また、図2は本システム1の概念を表した概念図である。
【0015】
地中部に於いて動作する主な機器・装置には掘削機本体2と推進装置3があり、地上部において動作する機器・装置には掘削機制御手段4、推進装置制御手段5、加泥装置6、加泥装置制御手段7、排泥装置8、排泥装置制御手段9がある。
また、掘削機本体2内には位置情報を発信する発信器34と各種アクチュエータの動作状態を検出して検出情報を出力するセンサが複数設けられている。センサには、物理的、機械的、電気的に検出可能なジャイロ、傾斜計、圧力計、電圧計、電流計、流量計、距離計等の各種センサが含まれる。また、推進装置3、加泥装置6、排泥装置8についても同様に、動作状態を検出して検出情報を出力するセンサが各所に設けられている。
【0016】
掘削機本体2は、先端面にカッター(切り刃)22を設けた円形の外形を有する掘削部23を有している。掘削部23は掘削機本体2の先端で回転する回転体であり、掘削機本体2内に設けた掘削部駆動手段25を構成するアクチュエーター(モーター)によって回転するように構成されている。掘削部23はフレキシブルジョイント等の継ぎ手を介してモーターのドライブシャフト24と接続されている。これにより、掘削部23を搭載した先端ユニット27の中心軸が先端ユニット27の後方に配置したアクチュエータ25を搭載した中間ユニット28の中心線に対して傾いた場合でも駆動力を伝達できるようになっている。
【0017】
詳細な説明は省略するが、掘削部23は加泥装置6によって供給された液状の添加剤とともに掘削によって生じた土、岩石等の泥状体を取り込む排泥機構を有している。排泥機構によって取り入れた泥状の土や岩石は、排泥装置8によって直接若しくは中継設備を経由して地上に送られ排出されるようになっている。
掘削機本体2に必要な推力は推進装置3によって付与されるようになっている。推進装置3は掘削機本体2の後方に逐次継ぎ足されていく分割管26の末端部を押圧するように構成されたものであり、掘削によって形成した穴内に分割管26を連続させることで管路を敷設する作用も有している。また、推進装置3による押圧力は先端面においてカッター22を押しつける圧力となり、これにより掘削が行われるようになっている。
また、詳細には図示していないが、掘削部23の近傍には地上に設置した加泥装置6から送られた添加剤を放出する放出部が設けられている。
【0018】
掘削機本体2内に設けた掘削部23や、掘削部23前面に配置したカッター22を駆動させる掘削部駆動手段25は、地上に配置した制御盤として構成される掘削機制御手段4から送られた制御電流によって駆動されるようになっている。掘削機制御手段4から出力される制御電流を含めた掘削に必要な各種の制御情報は、オペレータによる制御盤の操作若しくは詳細には後述する端末装置N1等によって行われる。
また、掘削部駆動手段25に対する制御情報は時系列的に逐次記録されるようになっており、同時に各装置に搭載された各種センサによる検出情報も逐次記録されるようになっている。制御情報や検出情報は、中継用端末N2やネットワークサーバNSの記録手段Mに記録され、プログラムされた各種の機能で使用されるようになっている。
【0019】
掘削機本体2は一例として3分割されており、先端に掘削部23を設けた円筒状の外形を有する先端ユニット27と、先端ユニットの後方に設けた同様の外形を有する中間ユニット28、中間ユニットの後方に設けた同様の外形を有する後方ユニット29によって構成されている。
先端ユニット27と中間ユニット28は、設定された角度の範囲で屈曲できるように接続されており、両者の間には等角度で内周部において均等的に配置された3個のアクチュエータ(シリンダJ1、シリンダJ2、シリンダJ3)によって構成された第1方向操舵用機構30が設けられている。
また、中間ユニットと後方ユニットも設定された角度の範囲で屈曲できるように接続されており、両者の間には等角度で内周部において均等的に配置された3個のアクチュエータによって構成された第2方向操舵用機構31が設けられている。
【0020】
第1方向操舵用機構30および第2方向操舵用機構31を構成する方向制御アクチュエータには一例として油圧シリンダ(シリンダJ1、シリンダJ2、シリンダJ3)が採用されており、掘削機制御手段4によって行われる油圧制御によって個々の方向制御アクチュエータを制御するようになっている。図3は、方向制御アクチュエータである油圧シリンダの伸縮を用いた掘削機本体2の進行方向制御に係る説明図である。
第1方向操舵用機構30を成すシリンダJ1、シリンダJ2、シリンダJ3は、円筒状を成す先端ユニット27の長手方向に向かう中心線CLと平行、かつ中心線CLを中心として等角度を成す角度θ1、θ2、θ3で配置されている。また、中心線CLから各シリンダJ1、シリンダJ2、シリンダJ3の軸芯までの距離L1、L2、L3は同一の長さである。
【0021】
各シリンダJ1、シリンダJ2、シリンダJ3の一端は先端ユニットの後部に取り付けられているので、各シリンダJ1、シリンダJ2、シリンダJ3の伸縮後の距離d1、d2、d3に応じて先端ユニットが進行する方向を決定することができる。先端ユニットの進行方向が直進である場合には、各シリンダJ1、シリンダJ2、シリンダJ3の伸縮距離d1、d2、d3は同一である。説明の都合上、各シリンダJ1、シリンダJ2、シリンダJ3が配置されている部位の先端ユニット27の後端面と中間ユニット28の先端面の間の伸縮距離をd1、d2、d3であると見做して説明すると、伸縮後の距離d1、d2、d3の先端を結んだ平面は法線Nxyz方向を向くことになり、この法線Nxyz方向が先端ユニット27に設定された進行方向になる。具体的な計算式は、以下に示す通りである。
J1(x、y、z)=(L1cosθ1、d1、L1sinθ1)
J2(x、y、z)=(L2cosθ2、d2、L2sinθ2)
J3(x、y、z)=(L3cosθ3、d3、L3sinθ3)
J1、J2、J3で構成される面の法線ベクトルNxyzの成分Nx、Ny、Nzは
Nx=((J2y-J1y)*(J3z-J1z))-((J2z-J1z)*(J3y-J1y))
Ny=((J2z-J1z)*(J3x-J1x))-((J2x-J1x)*(J3z-J1z))
Nz=((J2x-J1x)*(J3y-J1y))-((J2y-J1y)*(J3x-J1x))
【0022】
上記によって法線Nxyzの方向である法線ベクトルの成分Nx、Ny、Nzが計算されるので、この計算に基づいて各シリンダJ1、シリンダJ2、シリンダJ3の伸縮距離が制御され、第1方向操舵用機構30による掘削方向を設定することが可能になる。また、同様の機構である第2方向操舵用機構31が中間ユニットと後方ユニットの間に設けられている。この第1方向操舵用機構30と第2方向操舵用機構31の組み合わせによって、設定された進路に合わせた方向制御が行われるようになっている。
【0023】
各方向制御アクチュエータに対する制御は、掘削機制御手段4を用いたオペレータの操作によって行われるものであり、掘削機制御手段4による制御指令に基づいて個々の方向制御アクチュエータを駆動する油圧バルブが制御される。なお、後述するように遠隔制御を行う場合にはネットワークサーバNSを介して掘削機制御手段4から制御指令が発信される。
この第1方向操舵用機構30と第2方向操舵用機構31に対する制御指令の内容は制御情報の一つとして所定の記録手段Mに時系列的に記録される。記録手段Mには、同時に各種センサが検出した情報や映像などが記録され、プログラムによるデータ処理および分析、評価ができるようになっている。
【0024】
掘削機本体2は先端の掘削部23で掘削を行いつつ地中を掘り進むものであり、掘削機本体2の後方には複数個連結された分割管26が接続され、連結された分割管26の末端は推進装置3によって押されるようになっている。
分割管26は複数個連結することで一本の埋設管を構成するものであり、後端部から継ぎ足しながら敷設するように構成されたものである。個々の分割管26は先端面と後端面に他の分割管と嵌合する嵌合部(図示せず)が設けられており、これにより同軸上において互いに嵌合するようになっている。同軸状に配置された分割管26は後方からの押圧力を順次前方に向かって伝達するようになっており、これにより全体が前進するとともに、掘削に必要な押圧力を生じるようになっている。
【0025】
推進装置3は、一例として末端に継ぎ足した分割管の後端を押す油圧アクチュエータによって構成される。実際の施工では、埋設管(分割管26)を配置する深度まで地表から縦穴(発進立坑)Uを掘り、縦穴Uに直交する向きで内面から掘削機本体2によって横穴を形成しながら掘り進むようになっている。
前述したように、掘削機本体2の後方に連結した最後部の分割管26は、推進装置3の押圧部40によって押すようになっている。推進装置3の押圧部の反対側は縦穴Uの内面に設けた当接体41に当接するようになっている。推進装置3の押圧部は油圧アクチュエータによって押圧されるようになっており、推進装置3の後方は当接体41に当接することで油圧アクチュエータに生じる反力を受け止めるようになっている。
【0026】
加泥装置6は、地上に配置した装置から流動性のある添加剤を掘削機本体2の先端部に送り込む圧送装置として構成されている。加泥装置6は添加剤に対する加圧力を調整することで流量をコントロールするものであり、加泥装置制御手段7を経由した制御情報によって動作するものである。
排泥装置8は、掘削部23によって破砕した岩石や土を加泥装置6によって圧送した添加剤と混合して流状体にしたものを取り込み、排出用のパイプを使用して地上に搬出するものである。排泥装置8は、排泥装置制御手段9が出力した動力および制御情報によって動作するものである。
【0027】
本システム1について、さらに詳細に説明する。掘削機本体2の制御は主に掘削機制御手段4である制御盤の操作によって行われる。制御盤は、掘削機本体2に対する各種の制御を行うための入力手段や、掘削機本体2や他の周辺装置から得られた情報や映像を視覚的に表示するディスプレイを有しており、施工現場における地上設備の一つとして設けられるものである。掘削機本体2内には、掘削機本体2の姿勢や位置を把握するためのジャイロセンサや傾斜計等のセンサ類が搭載されている。センサ類として、他には電気的に駆動する装置については駆動電流、トルク等の定量的に把握可能な情報、圧力等の物理的な情報を検出するための機器が設けられている。これらのセンサ類から得られた情報は、掘削機本体2から得られる検出情報として直接若しくは所定の中継手段を経由して、掘削機制御手段4や他の装置によって取得できるように構成されている。
【0028】
また、本実施の形態に係る掘削機本体2は、内部にターゲットボード33が設けられている。ターゲットボード33は、縦坑内に設置したレーザ発信器42が照射したレーザ光を、分割管26内を通過させて受光させる板である。ターゲットボード33に到達したレーザ光の照射位置はカメラ(図示せず)で撮影されており、その映像は掘削機制御手段4に設けたディスプレイで監視できるようになっている。また、この監視画像は、記録可能な他の情報とともに記録手段Mに記録されるようになっている。
【0029】
ターゲットボード33に到達したレーザ光が所定の位置、例えば中央に止まっている場合には、掘削機本体2が直進していることを表し、上下若しくは左右に移動している場合には、レーザ光によって示された直進ルートから外れていることを示している。ターゲットボード33の画像の監視は、主に直線区間の工事に行われる。
曲がったルートで穴を形成する場合には、ジャイロセンサや傾斜計等の各種のセンサ出力、および地表における受信機43を用いた探索結果を参酌しながら第1方向操舵用機構30や第2方向操舵用機構31、他の制御手段を適切に操作しながら掘削作業を行うようになっている。受信機43は掘削機本体2に搭載した発信器34が発進した信号(電磁気信号)を受信することによって、地表上において掘削機本体2の位置(座標)を得ることができるものである。受信機43が取得した位置情報は、他の情報とともに記録手段(M)に時系列的に記録される。この位置情報は、測量によって計測した受信機43の位置やGPSによる計測によって取得される。
【0030】
[ネットワークサーバ]
本システムは、掘削現場に設置、運用される前述した設備の他に、通信ネットワークN上に配置したネットワークサーバNSを設けている。通信ネットワークの一例はインターネットである。
ネットワークサーバNSは、同じ通信ネットワークNに接続された他のコンピュータ端末(N1、N2、N3・・・)と接続できるようになっている。ネットワークサーバNSは、プログラムによって実行される各種の機能をHTMLファイルで構成されるインターフェイス画面を介して提供できるように構成されている。ネットワークサーバNSのHTMLファイルを利用するためには、IDとバスワードによる認証等が必要になっている。
また、ネットワークサーバNSは、掘削現場に配置された中継用端末N2を介して各種の設備と接続されることで、検出された各種の情報や撮影された動画や画像を取得する。また、ネットワークサーバNSは、提供する機能ごとに用意されたプログラムを実行することで、HTMLファイル上で静的若しくは動的な情報を提供するようになっている。
【0031】
ネットワークサーバNSは記録手段Mを有しており、掘削現場に設置、運用される設備から送信されたデータや、ネットワークサーバNS上のプログラムで生成した各種のデータを記録するようになっている。なお、記録手段Mに相当するものを、所謂クラウドと称される他のストレージ上に設けてもよい。
【0032】
[記録データ]
掘削現場から送信されたデータは、データ取得時刻とともに記録手段M内に構築されるデータベースに記録される。本システム1の場合には、工事ごとにデータがまとめられ記録されるようになっている。記録されるデータには、各装置に対して行った制御の内容と、その制御に基づいて駆動した各装置の動作、状態、施工結果等の計測値や映像等を含む検出可能な情報が含まれている。
【0033】
[監視機能]
本システム1は監視機能を有している。監視機能は、掘削現場に設置、運用される設備からネットワークサーバNSに送信されたデータをHTMLファイル上において表示することによって実現される。具体的には、画面表示の中に設けられているメニューMeの中に表示された項目(機能)を選択することで、機能に応じた画面デザインのHTMLファイルが提供される。
HTMLファイルで構成される画面デザインは、一例として図4に示すように現場に設置されている制御盤のディスプレイ画像を模して作られており、現場作業の経験者によって認識しやすくなるよう配慮されている。前述したように、ネットワークサーバNSが提供するHTMLファイルは、他のコンピュータ端末を監視端末N1として構成し見ることができるようになっている。これにより、現場のオペレータによる操作を遠隔地で監視することができるようになっている。
上記の監視機能は、例えば現場オペレータが経験の少ない人間であった場合に、熟練したオペレータが作業を監視しながら適切なアドバイスをしたり、発生したトラブルを検証して対策を検討したりといった運用を可能とするものである。
【0034】
実際の現場では、掘り進むうちに地盤の性質が変わったり、水脈のある地層に入ったり、大きな岩石や岩盤に当たるなどして進行方向ではない方向に外力が作用する場合がある。また、湾曲したルートで掘削する場合には、第1方向操舵用機構30や第2方向操舵用機構31をどのように使用するか等、経験を必要とする操作がある。熟練したオペレータであれば、制御盤に表示される各種のデータから掘削状況を推測し適切な制御によって湾曲したルートで掘削したり、予定ルートから外れた場合には軌道を修正するなどの対処を行うことができる。しかし、経験の浅いオペレータの場合には、適切な対応を瞬時に行うことは難しいので、このような場合を想定して遠隔地で作業状況を監視しながら熟練オペレータが操作指示を出すことを可能にしている。
【0035】
HTMLファイルで構成される画面デザインには、他に図5に示したものがある。図5に示した画面には、レーザ発信器42で示される直線ルートR1に対する掘削機本体2の位置と進行方向R2が示されている。
同動画には、同時に第1方向操舵用機構30と第2方向操舵用機構31に対する制御内容(ジャッキ1、ジャッキ2)が示されている。ジャッキ1と表示されているものは、第1方向操舵用機構30を成すシリンダJ1、シリンダJ2、シリンダJ3のことである。また、ジャッキ2と表示されているものは、第2方向操舵用機構31を成す各シリンダのことである。その他、予定された各所の位置と差異が距離として数値で表わされている。
図6は別の画面デザインを表しており、カメラで撮影されたターゲットボード33の画像33aおよび、掘削の状態を表すカッター電流やその他の情報が表示されている。
【0036】
以上説明した図4図5図6で示した画面は、現場に設置された制御盤のディスプレイに表示されるものとレイアウトが近似しており、遠隔地において制御盤のディスプレイを見ている(監視している)のと同様の作用をもたらすものである。
【0037】
[アラーム(警報)機能]
本システム1はアラーム機能を有している。本機能はアラーム設定プログラムによって実行されるものであり、各種装置の制御手段から送られてくる情報を監視し、送られてきた情報が正常値を逸脱していると判定したり、予め設定した状態に至った場合に、視覚若しくは視覚と音声を伴って監視者に報知するものである。この機能を設ける場合には、アラーム設定プログラムにアラームの設定対象として指定する検出情報の指定手段と、指定された検出情報に対する設定値の指定手段が設けられる。
アラームが発生した場合には、遠隔地から現場オペレータに指示を出したり、遠隔制御機能によって遠隔地から装置の駆動を停止させるといった直接的な制御を行わせても良く、このように構成することでトラブルや事故を未然に防ぐ効果が期待される。また、アラームが発生した場合に、設定した携帯端末N3に対してアラームが発生していることを報知するよう設定してもよい。
【0038】
[日報作成機能]
また、本システム1は、施工別に収納された蓄積データから、毎日作成に時間がかかる推進施工日報を自動的に作成する機能を有する。掘削によって形成した穴の長さ、各装置の稼働時間、加泥装置6によって供給した添加剤の量、排出した残土や岩石の量は、自動的に計測され記録される。日々の作業報告書において記載すべき情報が各装置から取得された数値的な情報である場合には、そのままの数値あるいは所定の演算を行った上で、作業報告書の記載フォーマットに準じて自動入力される。自動的に入力された情報は、作業報告書のフォーマットで画面上に表示若しくは印刷出力可能な文書ファイルとして生成されるようになっている。当然ながら、作成された文書ファイルは、同時若しくは生成後に於いても記載内容の追記や修正といった編集が可能であり、このような編集を行わせるためのエディタ機能が設けられている。
【0039】
[工程比較機能]
掘削工事は当然ながら事前の計画によって、掘削によって生成する穴の位置、工程、工期等が定められている。掘削機本体2の正確な位置は、発信器34から発信される電磁波を地表に配置した受信機43によって受信することで得ることができる。受信機43によって得られた位置の座標は2D若しくは3Dで表現される図面として表すことが出来、座標を連続的にプロットすると掘削機本体2の動線となる。また、掘削機本体2は傾斜センサ等のセンサ類を搭載しており、座標の各プロット点における掘削機本体2が向いている上・下、左・右といった方向、ピッチング(上下方向への移動距離)を自律的に検出することができるので、連続的にプロットされた掘削機本体2の動線とともに図面化して表示することができる。これは、図5に示したような図でもよいし、3次元的な立体図として示したものでもよい(図示せず)。
【0040】
掘削機本体2の予定進路と実際の進路を同一画面上に表示すると、両者がどの程度一致しているのか乖離しているのかを視覚的に知ることができる。このような表示を逐次行わせることで、予定進路に対する相違を修正しながら工事を行うことができるようになっている。なお、終了した工事の記録を読み出して予定進路と実際の進路を対比して表示させることも可能である。
【0041】
[再現機能]
本システム1は再現機能を有している。再現機能は、HTMLファイルで提供される画面表示の中に設けられているメニューを選択することで実行される再現プログラムによって提供される。監視機能で説明したように、現場の各装置からネットワークサーバに送信されたデータは、ネットワークサーバにアクセスを許可された端末によってリアルタイムで表示できるように構成され、同時に記録手段にも記録される。
【0042】
再現機能は、ネットワークサーバNSにアクセスした端末(N1)によって記録手段Mに記録された過去の記録を選択することによって、現場オペレータが入力した制御情報や制御情報によって駆動した各装置の動作記録を視覚的に再現するものである。この再現は、制御盤を模した画面レイアウトでの再現表示や、掘削機の状態をイメージしやすい図形やアニメーションとして視覚化したものを自動生成し表示するように構成しても良い。
また、再現機能は、掘削機本体2の挙動や移動した軌跡等の情報を時間の進行に合わせて読み込み表示する機能であり、停止、逆再生、早送り、巻き戻し機能を備えるよう構成してもよい。再現機能は、適切な運転を行っていたか否かの確認や、トラブルがあった場合の検証、オペレータを教育するためのツールとしても使用することができる。
【0043】
[遠隔制御機能]
本システム1は、前述した監視機能に加えて遠隔制御機能を設けても良い。遠隔制御機能はHTMLファイルで生成される画面表示の中に設けられているメニューを選択することで実行される。この機能は、ネットワークサーバNSを介して現場に設置されている掘削機制御手段4と、推進装置制御手段5と、排泥装置制御手段9に対して制御信号を送る機能であり、これにより掘削機と、推進装置3と、排泥装置8を遠隔制御するというものである。掘削機制御手段4と、推進装置制御手段5と、排泥装置制御手段9は、当然ながら外部機器からの制御信号を受信するインターフェイスを有している。
【0044】
掘削機制御手段4と、推進装置制御手段5と、排泥装置制御手段9に搭載した各インターフェイスは中継用端末N2に対して直接若しくは間接的に接続されており、遠隔制御用のデータを受信することで、掘削機制御手段4と、推進装置制御手段5と、排泥装置制御手段9の制御を可能にするものである。動作状態を監視させるための情報は逐次中継用端末N2を介してネットワークサーバNSに送信される。
遠隔制御のための制御情報は、コンピュータ端末のキーボードやマウス等の入力デバイス、ビデオゲーム機用のコントローラでもよく、専用のコントロールボックスを形成して行っても良い。
【0045】
[シミュレーション機能]
また、本システム1は、運転シミュレータ機能を備えていてもよい。運転シミュレータ機能はシュミレータプログラムを実行可能に構成したネットワークサーバNS若しくはコンピュータ端末N1だけで行うことも可能である。
このシュミレータプログラムに使用するパラメータには、過去に蓄積した本システム1の実際の情報が参酌されるようになっており、掘削する地中の状態や水脈に当たったり、岩盤に当たったりといった特異的な状態等、様々な条件を設定して、制御と制御に基づく動作のシミュレーションを行うものである。このシミュレーションには掘削機本体2の挙動の外に、加泥装置6や推進装置3等の制御可能な各種の装置を含めてもよく、これらの全ての装置若しくは一部の装置といった、装置の組み合わせを選択して行うように構成することも可能である。
【0046】
従来の地中掘削推進施工システムは、単に現場で装置を動かして掘削を行うだけのシステムであったため、人的な作業によって残せる記録にも限りがあり、施工記録を残すだけでも多くの時間を必要としていた。本発明は、従来型の施工システムをインターネット等のネットワークに接続できるよう構成し、ネットワーク上に配置したネットワークサーバによって、掘削に関する様々な情報を取得するとともに、様々な形態で取得した情報を配信できるように構成したものである。取得した情報の配信は、ネットワークサーバに搭載したプログラムによって用途に応じた形態で提供できるものである。ネットワークサーバに接続できる端末の数は基本的に制限が無いため、現場のオペレーションを監視する場合には熟練したオペレータが使用し、日報などの報告書類を作成する場合には他の担当者が使用できる。特に、従来現場に赴かなければならなかった作業が、遠隔地でも出来ることは無駄な労力や工数を削減する上で極めて有効である。また、複数の人間に対して情報を共有することができるので、経験の浅いオペレータの教育に使用するなど用途は多岐に及ぶものとなっている。
【0047】
[アラーム(警報)レベル設定機能]
(1)リモートフレームワーク
リモートフレームワークは、掘削作業現場に設置された機器を遠隔地において監視若しくは制御するものである。前述したアラーム(警報)機能には、アラームレベル設定機能が設けられている。アラームレベル設定機能とは、掘削機等から得られた各種情報を基にして、作業(施工)現場とは距離的に離れた場所に所在する施工監督者に対して通知する現場情報の積極的通知機能として設けるものである。主に監視している各種装置の制御手段から送られてきた情報ごとに必要とされる対応の緊急度を設定したり、情報の規模、程度、質等を報知できるような内容に区別して発生するアラームの内容を可変させるものである。
(2)現場情報の伝達と異常判断
リモートフレームワークを採用した施工作業では、現地で機器を操作する操作員は連続して変化する各種情報を注意深く確認している。これに対して遠隔地において監視を担当する者は、現地の施工責任者もしくは組織上の上司となる場合が多く、通常は作業の進み具合をときどき観察する程度で充分であることから常に監視状態にあるわけではない。
また、現地担当者より経験が深い者が監視対象である情報の読取りをしていたとしても、機器異常もしくは操作上の誤りがあった場合に、認識が遅れてしまう場合もある。
【0048】
実際、現地の機器を構成する操作盤等には、機器の異常発生や通常行うべき装置に対する負荷量の逸脱が発生した場合に、警報音および異常表示灯点灯などにより操作者にこの旨を通報している。リモートフレームワークの基本機能としては、この現地での警報発出の時点で、遠隔地で監視している担当者に同様の警報を伝達することは行われるが、この機能を実現するだけであれば、現地操作盤の生き写しとして遠隔地の監視端末(パソコンなど)としての機能であれば充分である。しかしながら、現地の操作盤によって警報発出がされたという事態は、すでに異常状態に陥った状態であり、通常の場合現地操作者によって即応的な対処が行われることが多い。
【0049】
すなわち、遠隔地において現地の操作盤を監視できる機器を備えていたとしても、連続して表示される大量の現場情報を遠隔地の監視者が片時も目を離さず見続けることは実際には不可能であり、状況判断を早めに行うことが難しい。これらの問題を解決するために、連続して変化する情報の中から、異常発生につながると想定される事象をリモートフレームワークの処理機能において自動判定し、異常事態として対処が必要になる前の予備的段階で遠隔地の監視者に報知するシステムを考案した。
【0050】
リモートフレームワークによって監視可能な情報には、主に掘削機本体2や他の各手段に搭載した物理的、機械的、電気的な状態量としてジャイロ、傾斜計、圧力計、電圧計、電流計、流量計、距離計等の計器やセンサ類によって検出される数値に換算可能な連続したアナログ情報が含まれる。
このため、リミットとして設定した数値を超えた異常発生時のみならず、例えば所定の警報レベル(数値)の80%もしくは90%を超えた時点、またこの数値に加えてこのような状況が継続する時間も組合せてアラームを設定することで、緊急対応が必要な警報発出の前に予備警報を遠隔地へ伝えることができる。
【0051】
(3)職責に対応した警報伝達
本システム1では、現地の機器から読み取った情報をすべてサーバNS上の記録手段Mに記録している。遠隔地の監視端末N1を使用する者は、サーバNS上の記録手段Mから適時情報を取得して現地の状況を観測することができる。読み出し操作を行う関係者には、権限が異なる職責保持者が複数関与する場合がある。職責と遠隔地にて受け取るべき情報の質の関連性としては、特に警報レベルについては、一例として次のようなクラスを設定することができる。
クラスA:施工責任(施工現場の状況判断ができる人)
クラスB:ベテラン技術者(装置の取扱い、過去に多くの現場での作業経験があった人)
クラスC:部門管理者(課長、科長) 現場作業全般の管理者で特に安全管理責任者
以上のような3クラス(職責)の関係者がいた場合、現場に係わる職責に応じて、提供される情報と対応権限を異ならせることができる。対応権限をバランスシートとして表すと表1のような関係になる。
【表1】
異常警報とは、現場作業者が認識する警報レベルでの警報通知である。
早期異常検知とは、現場作業者が認識する警報レベルより早い段階での警報通知である。
【0052】
クラスAとクラスBの関係者は実際に現場の状況も自分の目で見ているという想定であり、機器の情報を読み取ることで現場の作業状況を容易に推測できる立場である。クラスAとなればかなりの頻度で現場情報を監視端末を介して眺める機会があり、現地データそのものから早期に異常の発生を察知するなどの判断することができる。
一方、クラスBの関係者はこれまでの施工経験から機器情報の変化について、独自の判断基準を適用して早期異常診断を行うことができると期待される。そのための補助として、警報レベルの設定条件をシビアに設定できることが望ましく、本リモートフレームワークの一つの機能として当該判定条件の設定をクラスごとに定めることができる。
【0053】
(4)警報レベルの設定テーブル
上記のように遠隔地の監視端末に対してクラス(職責)に応じた警報レベルの条件を設定するため、次のような警報レベルの設定テーブルをネットワークサーバNS内に置き、同時にネットワークサーバNS内部にて稼働するプログラムにより警報判断、警報発出の処理を行う。一例として、テーブルは大きく2つのグループから構成される。
一つは、関係者のクラス分けを行うテーブルであり、図7に示した職責対応判定テーブルT1として関係者の作業上の権限、責任範囲に結びつけたものである。
遠隔地の監視端末の起動にはあらかじめ本システム1に事前に登録されたIDコードによる認証が必要であり、このIDコードとの連携で実際に遠隔地の監視端末N1が起動された状態との結合を行うテーブルである。
【0054】
このテーブルとリンクする形で設定するのが図8に示した警報判定テーブルT2である。職責対応判定テーブルT1に記載されたテーブル名にリンクされており、現地操作盤から読み取ったデータは常にこの警報レベルの設定条件と比較され、警報発出条件に達していないかを監視する。
一例として警報判定テーブルT2は3つの判定テーブルを設けている。ネットワークサーバNSが取得した情報が警報判定テーブルT2において設定された制限値を超えたときに警報発出若しくは警報発出の準備を行う。警報の伝達先は職責対応判定テーブルのクラスA、B、Cに登録されているアクセスIDを用いてログインされている監視端末N1であり、画面上に警報として表示する。
【0055】
判定テーブルには追加情報として、警報メールボックスの設定が可能であり、当該メールボックスに配信先となるメールアドレスが登録されており、かつ警報のメール配信を可として選択してある場合には、遠隔地の監視端末が起動されているか否かに関わらず図9に示した内容の電子メールによる警報通知を実施する。
【0056】
(5)警報伝達の仕組み
機器異常が発生した場合や所定の操作条件を逸脱した場合の判定機構は予め現地操作盤(掘削機制御手段4、推進装置制御手段5、加泥装置制御手段7、排泥装置制御手段9)に組み込まれている。
一方、監視端末N1が受信する情報は、各装置(掘削機本体2、推進装置3、掘削機制御手段4、加泥装置6、排泥装置8)の挙動情報であり、現地操作盤で判定した警報とは異なっている。
図10は、警報伝達の概要を表した説明図である。本システム1は、基本的に現地操作盤を経由して出力された各装置の状態情報を基にして警報判断を行うものであり、現地操作盤での内部の警報判定とは独立して行われるようになっている。なお、現地操作盤の内部の警報判定を情報として取得し、ネットワークサーバNS上において情報を処理するように構成することは、当然ながら技術的に可能であり、システムの運用に応じて使い分けるようにすることも可能である。
【0057】
警報メッセージおよび警報音を発生させるための情報は、通信回線を経由し監視端末に伝達される仕組みとなっている。この際、予備警報を含めた2段階警報の発出シーケンスを設定した警報判定テーブルによって、監視端末上で出力される予備警報時の警報音や警報発出時の警報音を設定し音質や音量を変化させることも可能である。
判定テーブルにおいて指定されているP1、P2はネットワークサーバ内部に保管されている警報音の音声データを指定する情報である。遠隔地の監視端末を見ている関係者に対してP1、P2によって指定された音声データを送信し、受信した監視端末N1の音声合成機能により指定された音声、警報音として鳴動させることになる。
【0058】
(6)警報判定テーブルの管理方法
警報発出の条件や発出先を規定する警報判定テーブルT2は、基本的に本システム1の運用管理責任者が行う。すなわち、監視端末N1によって警報を受け取る関係者が自己判断で警報レベルの設定条件や、メールボックスの設定を変更できないように制限されている。
掘削機による推進施工を開始する前には運用管理者が対象となる現場の条件を確認し、警報レベルの設定条件が適切であること、アクセスIDの担当者が現場の関係者であること、通知先となるメールボックスの設定先が有効であることを確認する。管理責任者となる者は、必ずしも職責対応判定テーブルに含まれる者とは限らず、別な担当者により運用されることもある。
【0059】
警報機能の重要な特徴として、権限を有する者によって警報レベルが監視者側(N2もしくはN3側)で決められること。これにより、現場のオペレータに対して4、5、7、9から表示されるよりも早い段階で警報を報知することが可能になっている。この警報レベルの設定は、通信ネットワークNの中に設定テーブルT1、T2を置くことで自由に定めることができる。また、警報レベルの重要度を2段階に分けて設定するなど、後方支援をするベテランオペレータに対して予備警報、緊急警報などのきめ細かな状態通知を可能にしている。
【0060】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、これは一例として示したものであって、発明の技術的範囲の限定を意図したものではない。また、例示した各例および技術的要素は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において適宜組み合わせ、省略、置き換え、変更、追加を伴って使用することができるものであり、これらについても本明細書に記載されているものであり本発明の技術的範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、地中に埋設管を敷設する地中掘削推進施工システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 地中掘削 推進施工システム(本システム)
2 掘削機本体
3 推進装置
4 掘削機制御手段
5 推進装置制御手段
6 加泥装置
7 加泥装置制御手段
8 排泥装置
9 排泥装置制御手段
22 カッター(切り刃)
23 掘削部
24 ドライブシャフト
25 掘削部駆動手段
26 分割管
27 先端ユニット
28 中間ユニット
29 後方ユニット
30 第1方向操舵用機構
31 第2方向操舵用機構
33 ターゲットボード
34 発信器
40 押圧部
41 当接体
42 レーザ発信器
43 受信機
33a 画像
CL 中心線
d1、d2、d3 距離(伸縮距離)
J1、J2、J3 シリンダ
L1、L2、L3 距離
θ1、θ2、θ3 角度
M 記録手段
Me メニュー
N 通信ネットワーク
N1 端末(監視端末/操作端末)
N2 中継用端末
N3 携帯端末
NS サーバ(ネットワークサーバ)
T1 職責対応判定テーブル
T2 警報判定テーブル
Nxyz 法線
U 縦穴(発進立坑)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10