(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006428
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62K 5/10 20130101AFI20240110BHJP
B62J 7/06 20060101ALI20240110BHJP
B62K 5/08 20060101ALI20240110BHJP
B62K 5/05 20130101ALI20240110BHJP
【FI】
B62K5/10
B62J7/06
B62K5/08
B62K5/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107268
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】今利 貞政
【テーマコード(参考)】
3D011
【Fターム(参考)】
3D011AA02
3D011AC01
3D011AD22
(57)【要約】
【課題】車両の大型化を抑制しつつキャリアの支持剛性の高い鞍乗型車両を提供する。
【解決手段】
鞍乗型車両は、車体フレームと、右前輪および左前輪と、右前輪と左前輪とに連結された前輪の相対位置を変化させるリンク機構と、リンク機構より前方に配置されたキャリアと、を有し、リンク機構は、上クロス部材と、下クロス部材と、を有し、上クロス部材および下クロス部材はそれぞれの回転軸を中心に車体フレームに回転可能に連結されており、キャリアは下クロス部材に複数のキャリア支持部によって支持されており、車両の側方から見た際に上下方向にずれた位置に少なくとも二つのキャリア支持部が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
車両の前方から見て左右に配置され、操舵可能な右前輪および左前輪と、
前記右前輪と前記左前輪とに連結された前輪の相対位置を変化させるリンク機構と、
前記右前輪を下部で支持し、前記リンク機構に対する前記右前輪の相対変位を緩衝する右緩衝装置と、
前記左前輪を下部で支持し、前記リンク機構に対する前記左前輪の相対変位を緩衝する左緩衝装置と、
パワーユニットを前記車体フレームに支持するパワーユニット支持部と、
前記リンク機構より前方に配置されたキャリアと、を有し、
前記リンク機構は、
前記右緩衝装置の上部を前記車体フレームの上下方向に延びる右操舵軸線回りに回動可能に支持する右サイド部材と、
前記左緩衝装置の上部を前記右操舵軸線と平行な左操舵軸線回りに回動可能に支持する左サイド部材と、
前記右サイド部材の上部を右端部に前記車体フレームの前後方向に延びる上右リーニング軸線回りに回動可能に支持し、前記左サイド部材の上部を左端部に前記上右リーニング軸線に平行な上左リーニング軸線回りに回動可能に支持する上クロス部材と、
前記右サイド部材の下部を右端部に前記上右リーニング軸線に平行な下右リーニング軸線回りに回動可能に支持し、前記左サイド部材の下部を左端部に前記上左リーニング軸線に平行な下左リーニング軸線回りに回動可能に支持する下クロス部材と、を有し、
前記上クロス部材および前記下クロス部材はそれぞれの回転軸を中心に前記車体フレームに回転可能に連結されており、
前記キャリアは前記下クロス部材に複数のキャリア支持部によって支持されており、
車両の側方から見た際に上下方向にずれた位置に少なくとも二つの前記キャリア支持部が設けられている、鞍乗型車両。
【請求項2】
前記下クロス部材は、車両を前方から見たときの上面、下面、側面、前面および後面のうち少なくとも二つの面に、前記キャリア支持部を固定する固定部を有する、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記下クロス部材は、前記キャリア支持部が固定される固定部を有し、車両を前方から見て前記下クロス部材を車体中心線を基準として右領域、左領域に仮想的に二分割したときに、前記右領域および前記左領域に、前記固定部の少なくとも一部が配置されている、請求項1または請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記下クロス部材は前記固定部を少なくとも三つ有する、請求項2または請求項3に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記キャリアは灯火器が取り付けられる灯火器取付部を有する、請求項1または請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記下クロス部材は前記上クロス部材の前端部より前方に前記固定部を少なくとも一つ有する、請求項1または2に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記固定部は前記下クロス部材の上部に設けられ、前記車両の旋回時において、前記上クロス部材の前端部より前方に位置する、請求項1または請求項2に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、前後クロス部材の上面の前後2点でキャリア(シート支持部&チャイルドシート)の前後方向に延びる支持部材を締結するために片持ち支持構造を採用し、直立時およびリーン時にキャリアを路面に対して略水平な状態を維持する自転車を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の自転車においては、キャリアに積荷を積載した場合、キャリアはキャリア支持部による片持ち支持構造であるため、キャリア支持部にせん断力および曲げモーメントが発生し、キャリア支持部を撓ませる力がかかる。また、積載物の位置および重量によっては、キャリア支持部に大きな曲げ応力がかかるため、キャリア支持部の剛性が必要となる。
【0005】
また、積荷を積載した状態で悪路(凹凸のある路面)を走行した場合、車体の上下動に伴いキャリアに積載した積荷の上下動によってキャリア全体が上下に振動し、キャリア支持部に上下方向のせん断力および曲げモーメントが作用する。悪路を左右方向にリーンしながら走行する場合には、キャリア支持部には上下方向に加えて左右方向にもせん断力および曲げモーメントが作用する。
【0006】
特許文献1が対象とする自転車とは異なり、エンジンを搭載した車両においてこのようなキャリア支持構造を採用する場合には、振動がさらに大きくなることが想定されるので、上述したような振動を抑制する必要がある。振動の抑制に対しては、キャリア支持部のパイプ径を太くすることでキャリア支持部の剛性を上げ、キャリアに生じる振動を抑制することが考えられる。しかし、このような構造ではキャリア支持部が大型化するため、キャリア支持部を固定する固定部の剛性も向上させる必要がある。しかし、固定部の剛性を高くすると、固定部の周辺構造が大型化するため、車両のリーン時に固定部及びキャリア支持部が別部材に干渉してしまい、干渉を避けるためにリンク機構が大型化してしまう。
【0007】
本開示は、車両の大型化を抑制しつつキャリアの支持剛性の高い鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示にかかる鞍乗型車両は、
車体フレームと、
車両の前方から見て左右に配置され、操舵可能な右前輪および左前輪と、
前記右前輪と前記左前輪とに連結された前輪の相対位置を変化させるリンク機構と、
前記右前輪を下部で支持し、前記リンク機構に対する前記右前輪の相対変位を緩衝する右緩衝装置と、
前記左前輪を下部で支持し、前記リンク機構に対する前記左前輪の相対変位を緩衝する左緩衝装置と、
パワーユニットを前記車体フレームに支持するパワーユニット支持部と、
前記リンク機構より前方に配置されたキャリアと、を有し、
前記リンク機構は、
前記右緩衝装置の上部を前記車体フレームの上下方向に延びる右操舵軸線回りに回動可能に支持する右サイド部材と、
前記左緩衝装置の上部を前記右操舵軸線と平行な左操舵軸線回りに回動可能に支持する左サイド部材と、
前記右サイド部材の上部を右端部に前記車体フレームの前後方向に延びる上右リーニング軸線回りに回動可能に支持し、前記左サイド部材の上部を左端部に前記上右リーニング軸線に平行な上左リーニング軸線回りに回動可能に支持する上クロス部材と、
前記右サイド部材の下部を右端部に前記上右リーニング軸線に平行な下右リーニング軸線回りに回動可能に支持し、前記左サイド部材の下部を左端部に前記上左リーニング軸線に平行な下左リーニング軸線回りに回動可能に支持する下クロス部材と、を有し、
前記上クロス部材および前記下クロス部材はそれぞれの回転軸を中心に前記車体フレームに回転可能に連結されており、
前記キャリアは前記下クロス部材に複数のキャリア支持部によって支持されており、
車両の側方から見た際に上下方向にずれた位置に少なくとも二つの前記キャリア支持部が設けられている。
【0009】
本開示に係る鞍乗型車両において、
前記下クロス部材は、前記キャリア支持部が固定される固定部を有し、車両を前方から見て前記下クロス部材を車体中心線を基準として右領域、左領域に仮想的に二分割したときに、前記右領域および前記左領域に、前記固定部の少なくとも一部が配置されていてもよい。
本開示の鞍乗型車両によれば、下クロス部材の右領域、左領域のうち少なくとも一方の領域において、キャリアを少なくとも二つの固定部によってキャリア支持部を固定することができ、キャリア支持部にかかる荷重を分散することができる。このため、キャリアを安定して取り付けることができる。
【0010】
本開示に係る鞍乗型車両において、
前記下クロス部材は前記固定部を少なくとも三つ有してもよい。
本開示の鞍乗型車両によれば、下クロス部材はキャリア支持部を固定する固定部を少なくとも三つ有するので、キャリア支持部にかかる荷重をより分散することができ、キャリアを安定して取り付けることができる。
【0011】
本開示に係る鞍乗型車両において、
前記キャリアは灯火器が取り付けられる灯火器取付部を有してもよい。
本開示の鞍乗型車両によれば、キャリアに灯火器取付部が設けられているため、キャリアに荷物が積載されていたとしても、前方に光を照射することができる。
【0012】
本開示に係る鞍乗型車両において、
前記下クロス部材は前記上クロス部材の前端部より前方に前記固定部を少なくとも一つ有してもよい。
本開示の鞍乗型車両によれば、固定部は上クロス部材の前端部より前方にあるので、車両旋回時、上クロス部材と下クロス部材は干渉することが無い。このため、キャリアを安定的に取り付けることが可能である。
【0013】
本開示に係る鞍乗型車両において、
前記固定部は前記下クロス部材の上部に設けられ、前記車両の旋回時において、前記上クロス部材の前端部より前方に位置してもよい。
本開示の鞍乗型車両によれば、車両旋回時であっても固定部は上クロス部材の前端部より前方にあるので、上クロス部材と下クロス部材は干渉することが無い。このため、キャリアを安定的に取り付けることが可能である。
【発明の効果】
【0014】
上記によれば、キャリア支持部が車両上下方向にずれた位置で下クロス部材に固定されるため、キャリア支持部にかかる荷重を分散することができ、キャリアを安定して取り付ける車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る車両の全体を左方から見た側面図である。
【
図3】
図3は、左緩衝装置および左前輪を示す側面図である。
【
図5】
図5は、転舵時における
図1の車両の前部を示す平面図である。
【
図6】
図6は、傾斜時における
図1の車両の前部を示す正面図である。
【
図7】
図7は、傾斜および転舵時における
図1の車両の前部を示す正面図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に係るキャリアの一例を示す上面図である。
【
図9】
図9は、キャリアが固定された状態を示す、斜視図である。
【
図10】
図10は、本実施形態においてキャリアが固定された状態を示す、側面図である。
【
図11】
図11は、車両直立状態とリーン状態における上クロス部材と下クロス部材の位置関係を示す側面図である。
【
図12】
図12は、下クロス部材の上部と下部のずれた位置にキャリアが固定された状態を示す別実施形態の側面図である。
【
図13】
図13は、下クロス部材の上部と下部のずれた位置にキャリアが固定された状態を示す別実施形態の正面図および側面図である。
【
図14】
図14は、下クロス部材の上部と下部のずれた位置にキャリアが固定された状態を示す別実施形態の正面図および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の実施形態に係る鞍乗型車両の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0017】
添付の図面において、矢印Fは、車両の前方向を示している。矢印Bは、車両の後方向を示している。矢印Uは、車両の上方向を示している。矢印Dは、車両の下方向を示している。矢印Rは、車両の右方向を示している。矢印Lは、車両の左方向を示している。
【0018】
車両は、車体フレームを鉛直方向に対して車両の左右方向に傾斜させて旋回する。そこで車両を基準とした方向に加え、車体フレームを基準とした方向が定められる。添付の図面において、矢印FFは、車体フレームの前方向を示している。矢印FBは、車体フレームの後方向を示している。矢印FUは、車体フレームの上方向を示している。矢印FDは、車体フレームの下方向を示している。矢印FRは、車体フレームの右方向を示している。矢印FLは、車体フレームの左方向を示している。
【0019】
本明細書において、「車体フレームの前後方向」、「車体フレームの左右方向」、および「車体フレームの上下方向」とは、車両を運転する乗員から見て、車体フレームを基準とした前後方向、左右方向、および上下方向を意味する。「車体フレームの側方」とは、
車体フレームの右方向あるいは左方向を意味している。
【0020】
本明細書において、「車体フレームの前後方向に延びる」とは、車体フレームの前後方向に対して傾いて延びることを含み、車体フレームの左右方向および上下方向と比較して、車体フレームの前後方向に近い傾きで延びることを意味する。
【0021】
本明細書において、「車体フレームの左右方向に延びる」とは、車体フレームの左右方向に対して傾いて延びることを含み、車体フレームの前後方向および上下方向と比較して、車体フレームの左右方向に近い傾きで延びることを意味する。
【0022】
本明細書において、「車体フレームの上下方向に延びる」とは、車体フレームの上下方向に対して傾いて延びることを含み、車体フレームの前後方向および左右方向と比較して、車体フレームの上下方向に近い傾きで延びることを意味する。
【0023】
本明細書において、「車両の直立状態」とは、無転舵状態かつ車体フレームの上下方向が鉛直方向と一致している状態を意味する。この状態においては、車両を基準にした方向と車体フレームを基準にした方向は一致する。車体フレームを鉛直方向に対して左右方向に傾斜させて旋回しているときは、車両の左右方向と車体フレームの左右方向は一致しない。また車両の上下方向と車体フレームの上下方向も一致しない。しかしながら、車両の前後方向と車体フレームの前後方向は一致する。
【0024】
本明細書において、「回転」とは、部材が中心軸線回りに360度以上の角度に変位することを言う。本明細書において、「回動」とは、部材が中心軸線回りに360度未満の角度で変位することを言う。
【0025】
図1から
図7を参照しつつ、一実施形態に係る車両1について説明する。車両1は、動力源から発生する動力により駆動され、傾斜可能な車体フレームと、その車体フレームの左右方向に配置された2つの前輪を備える車両である。
【0026】
図1は、車両1の全体を左方から見た左側面図である。車両1は、車両本体部2、左右一対の前輪3、後輪4、リンク機構5、および操舵力伝達機構6を備えている。
【0027】
車両本体部2は、車体フレーム21、車体カバー22、シート24、およびパワーユニット25を含んでいる。
図1において、車両1は直立状態にある。
図1を参照する以降の説明は、車両1の直立状態を前提にしている。
【0028】
車体フレーム21は、車両1の前後方向に延びている。車体フレーム21は、ヘッドパイプ211と、リンク支持部212を備えている。
【0029】
ヘッドパイプ211は、後述する上流側ステアリングシャフト60を回動可能に支持している。ヘッドパイプ211は、車体フレーム21の上下方向に延びている。
リンク支持部212は、車両1の前後方向において、ヘッドパイプ211より前方に設けられている。リンク支持部212は、リンク機構5を回動可能に支持している。
【0030】
車体フレーム21は、ヘッドパイプ211より車両1の前後方向の後方にパワーユニット支持部251を有している。パワーユニット支持部251は、パワーユニット25を支持している。パワーユニット25は、後輪4を揺動可能に支持している。パワーユニット25は、エンジン、電動モータ、バッテリなどの動力源や、トランスミッションなどの装置を備えている。動力源は、車両1を駆動する力を生成する。
【0031】
車体カバー22は、左右一対のフロントフェンダー223およびリアフェンダー224を含んでいる。車体カバー22は、左右一対の前輪3、車体フレーム21、リンク機構5などの車両1に搭載される車体部品の少なくとも一部を覆う車体部品である。本実施形態においては、車体カバー22は、前記リンク機構の少なくとも一部を覆っている。
【0032】
左右一対のフロントフェンダー223の少なくとも一部は、左右一対の前輪3の上方にそれぞれ配置されている。
【0033】
リアフェンダー224の少なくとも一部は、後輪4の上方に配置されている。
【0034】
後輪4の少なくとも一部は、シート24より下方に配置されている。後輪4の少なくとも一部は、リアフェンダー224の下方に配置されている。
【0035】
図2は、車両1の前部を車体フレーム21の前方から見た正面図である。
図2において、車両1は直立状態にある。
図2を参照する以降の説明は、車両1の直立状態を前提にしている。
【0036】
左右一対の前輪3は、左前輪31と右前輪32を含んでいる。左前輪31と右前輪32は、車体フレーム21の左右方向に並んで設けられている。右前輪32は、左前輪31より車体フレーム21の右方に設けられている。
【0037】
車両1は、左緩衝装置33、右緩衝装置34、左ブラケット317、および右ブラケット327を含んでいる。
【0038】
図3は、左緩衝装置33および左前輪31を示す側面図である。なお、右緩衝装置34は、左緩衝装置33と左右対称の構造を有しているため、
図3に右緩衝装置34を示す符号も合わせて書き込んである。
図3に示すように、左緩衝装置33は、いわゆるテレスコピック式の緩衝装置である。
左緩衝装置33は、左前テレスコピック要素331と、左後テレスコピック要素332と、左インナ連結要素337を有している。
【0039】
左前テレスコピック要素331は、左前アウタチューブ333と左前インナチューブ334とを有している。左前インナチューブ334の下部は、左インナ連結要素337に連結されている。左前インナチューブ334の上部が、左前アウタチューブ333に挿入されている。左前アウタチューブ333の上部は、左ブラケット317に連結されている。
左前インナチューブ334は、左前アウタチューブ333に対して、車体フレーム21の上下方向に延びる左伸縮軸線cに沿って相対的に変位する。左前テレスコピック要素331は、左前インナチューブ334の左前アウタチューブ333に対する左伸縮軸線cに沿った相対変位により、左伸縮軸線c方向に伸縮可能である。
【0040】
左後テレスコピック要素332の少なくとも一部は、左前テレスコピック要素331より後方に設けられている。左後テレスコピック要素332は、左後アウタチューブ335と左後インナチューブ336とを有している。左後アウタチューブ335と左前アウタチューブ333は互いに移動不可能に連結されている。
左後インナチューブ336の下部は、左インナ連結要素337に連結されている。左後インナチューブ336の上部が、左後アウタチューブ335に挿入されている。左後アウタチューブ335の上部は、左ブラケット317に連結されている。
左後インナチューブ336は、左後アウタチューブ335に対して、車体フレーム21の上下方向に延びる左伸縮軸線cに沿って相対的に変位する。左後テレスコピック要素332は、左後インナチューブ336の左後アウタチューブ335に対する左伸縮軸線cに沿った相対変位により、左伸縮軸線c方向に伸縮可能である。
【0041】
左インナ連結要素337は、左前輪31の左車軸部材311を回転可能に支持している。左インナ連結要素337は、左前インナチューブ334の下部と左後インナチューブ336の下部とを連結している。
【0042】
左緩衝装置33は、左前テレスコピック要素331の伸縮動作および左後テレスコピック要素332の伸縮動作により、左前アウタチューブ333および左後アウタチューブ335に対する左前輪31の左伸縮軸線c方向に沿った変位を緩衝する。
【0043】
図3に示すように、右緩衝装置34は、いわゆるテレスコピック式の緩衝装置である。右緩衝装置34は、右前テレスコピック要素341と、右後テレスコピック要素342と、右インナ連結要素347を有している。
【0044】
右前テレスコピック要素341は、右前アウタチューブ343と右前インナチューブ344とを有している。右前インナチューブ344の下部は、右インナ連結要素347に連結されている。右前インナチューブ344の上部が、右前アウタチューブ343に挿入されている。右前アウタチューブ343の上部は、右ブラケット327に連結されている。
右前インナチューブ344は、右前アウタチューブ343に対して、車体フレーム21の上下方向に延びる右伸縮軸線dに沿って相対的に変位する。右前テレスコピック要素341は、右前インナチューブ344の右前アウタチューブ343に対する右伸縮軸線dに沿った相対変位により、右伸縮軸線d方向に伸縮可能である。
【0045】
右後テレスコピック要素342の少なくとも一部は、右前テレスコピック要素341より後方に設けられている。右後テレスコピック要素342は、右後アウタチューブ345と右後インナチューブ346とを有している。右後アウタチューブ345と右前アウタチューブ343は互いに移動不可能に連結されている。
右後インナチューブ346の下部は、右インナ連結要素347に連結されている。右後インナチューブ346の上部が、右後アウタチューブ345に挿入されている。右後アウタチューブ345の上部は、右ブラケット327に連結されている。
右後インナチューブ346は、右後アウタチューブ345に対して、車体フレーム21の上下方向に延びる右伸縮軸線dに沿って相対的に変位する。右後テレスコピック要素342は、右後インナチューブ346の右後アウタチューブ345に対する右伸縮軸線dに沿った相対変位により、右伸縮軸線d方向に伸縮可能である。
【0046】
右インナ連結要素347は、右前輪32の右車軸部材321を回転可能に支持している。右インナ連結要素347は、右前インナチューブ344の下部と右後インナチューブ346の下部とを連結している。
【0047】
右緩衝装置34は、右前テレスコピック要素341の伸縮動作および右後テレスコピック要素342の伸縮動作により、右前アウタチューブ343および右後アウタチューブ345に対する右前輪32の右伸縮軸線d方向に沿った変位を緩衝する。
【0048】
図4に示すように、車両1は、操舵力伝達機構6を含んでいる。操舵力伝達機構6は、
ハンドルバー23(操舵力入力部の一例)と、上流側ステアリングシャフト60(後軸部材の一例)と、連結部材80と、下流側ステアリングシャフト68(前軸部材の一例)とを備えている。
【0049】
車体フレーム21は、上流側ステアリングシャフト60を回動可能に支持するヘッドパイプ211と、下流側ステアリングシャフト68を回動可能に支持するリンク支持部212を備えている。リンク支持部212は、
図2に示すように、車体フレーム21の上下方向に延びる中間操舵軸線Zの方向に延びている。なお、本実施形態においては、ハンドルバー23の回動中心(中央操舵軸線)と、上流側ステアリングシャフトの回動中心(後軸線)とは一致している。
【0050】
ハンドルバー23には、操舵力が入力される。上流側ステアリングシャフト60は、ハンドルバー23に連結されている。上流側ステアリングシャフト60の上部は、上流側ステアリングシャフト60の下部よりも、車体フレーム21の前後方向において後方に位置している。上流側ステアリングシャフト60は、ヘッドパイプ211に回動可能に支持されている。
【0051】
連結部材80は、上流側ステアリングシャフト60と下流側ステアリングシャフト68とに連結されている。連結部材80は、上流側ステアリングシャフト60の回動に応じて変位する。連結部材80は、上流側ステアリングシャフト60の回動を下流側ステアリングシャフト68に伝達する。
【0052】
下流側ステアリングシャフト68は、リンク支持部212に回動可能に支持されている。下流側ステアリングシャフト68は、連結部材80に連結されている。下流側ステアリングシャフト68は、車体フレーム21の前後方向において、上流側ステアリングシャフト60より前方に設けられている。下流側ステアリングシャフト68は、連結部材80の変位に応じて回動する。下流側ステアリングシャフト68が回動することにより、タイロッド67を介して左前輪31および右前輪32が転舵される。
【0053】
操舵力伝達機構6は、乗員がハンドルバー23を操作する操舵力を、左ブラケット317と右ブラケット327に伝達する。具体的な構成については、後に詳述する。
【0054】
本実施形態に係る車両1においては、平行四節リンク(パラレログラムリンクとも呼ばれる)方式のリンク機構5を採用している。
【0055】
図2に示すように、リンク機構5は、左前輪31と右前輪32より上方に配置されている。リンク機構5は、上クロス部材51、下クロス部材52、左サイド部材53、および右サイド部材54を含んでいる。リンク機構5は、中間操舵軸線Zの方向に延びるリンク支持部212に回動可能に支持されている。リンク機構5は、ハンドルバー23の操作により上流側ステアリングシャフト60が回動されても、この上流側ステアリングシャフト60の回動につられては回動しない。
【0056】
上クロス部材51は、板状部材512を含んでいる。板状部材512は、リンク支持部212より前方に配置されている。板状部材512は、車体フレーム21の左右方向に延びている。
【0057】
上クロス部材51の中間部は、連結部Cによってリンク支持部212に連結されている。上クロス部材51は、連結部Cを通り車体フレーム21の前後方向に延びる中間上軸線Muを中心に、リンク支持部212に対して回動可能である。
【0058】
上クロス部材51の左端部は、連結部Aによって左サイド部材53に連結されている。上クロス部材51は、連結部Aを通り車体フレーム21の前後方向に延びる左上軸線を中心に、左サイド部材53に対して回動可能である。
【0059】
上クロス部材51の右端部は、連結部Eによって右サイド部材54に連結されている。上クロス部材51は、連結部Eを通り車体フレーム21の前後方向に延びる右上軸線を中心に、右サイド部材54に対して回動可能である。
【0060】
図4は、車両1の前部を車体フレーム21の上方から見た平面図である。
図4において、車両1は直立状態にある。
図4を参照する以降の説明は、車両1の直立状態を前提にしている。
【0061】
図4に示すように、下クロス部材52は、下前クロス要素522aと下後クロス要素522bを含んでいる。下前クロス要素522aは、リンク支持部212より前方に配置されている。下後クロス要素522bは、リンク支持部212より後方に配置されている。
下前クロス要素522aと下後クロス要素522bは、車体フレーム21の左右方向に延びている。下前クロス要素522aと下後クロス要素522bは、左連結ブロック523aと右連結ブロック523bにより連結されている。左連結ブロック523aは、リンク支持部212より左方に配置されている。右連結ブロック523bは、リンク支持部212より右方に配置されている。
【0062】
図2に戻り、下クロス部材52は、上クロス部材51より下方に配置されている。下クロス部材52は、上クロス部材51と平行に延びている。下クロス部材52の中間部は、連結部Iによってリンク支持部212に連結されている。下クロス部材52は、連結部Iを通り車体フレーム21の前後方向に延びる中間下軸線Mdを中心に回動可能である。
【0063】
下クロス部材52の左端部は、連結部Gによって左サイド部材53に連結されている。下クロス部材52は、連結部Gを通り車体フレーム21の前後方向に延びる左下軸線を中心に回動可能である。
【0064】
下クロス部材52の右端部は、連結部Hによって右サイド部材54に連結されている。下クロス部材52は、連結部Hを通り車体フレーム21の前後方向に延びる右下軸線を中心に回動可能である。上クロス部材51の連結部Eから連結部Aまでの長さと、下クロス部材の連結部Hから連結部Gまでの長さは略等しい。
【0065】
中間上軸線Mu、右上軸線、左上軸線、中間下軸線Md、右下軸線、および左下軸線は、互いに平行に延びている。中間上軸線Mu、右上軸線、左上軸線、中間下軸線Md、右下軸線、および左下軸線は、左前輪31と右前輪32より上方に配置されている。
【0066】
図2と
図4に示すように、左サイド部材53は、リンク支持部212より左方に配置されている。左サイド部材53は、左前輪31より上方に配置されている。左サイド部材53は、リンク支持部212の中間操舵軸線Zと平行に延びている。左サイド部材53の上部は、その下部より後方に配置されている。
【0067】
左サイド部材53の下部は、左ブラケット317に接続されている。左ブラケット317は、左サイド部材53に対して、左操舵軸線Xを中心に回動可能である。左操舵軸線Xは、リンク支持部212の中間操舵軸線Zと平行に延びている。
【0068】
図2と
図4に示すように、右サイド部材54は、リンク支持部212より右方に配置されている。右サイド部材54は、右前輪32より上方に配置されている。右サイド部材54は、リンク支持部212の中間操舵軸線Zと平行に延びている。右サイド部材54の上部は、その下部より後方に配置されている。
【0069】
右サイド部材54の下部は、右ブラケット327に接続されている。右ブラケット327は、右サイド部材54に対して、右操舵軸線Yを中心に回動可能である。右操舵軸線Yは、リンク支持部212の中間操舵軸線Zと平行に延びている。
【0070】
以上説明したように、上クロス部材51、下クロス部材52、左サイド部材53、および右サイド部材54は、上クロス部材51と下クロス部材52が相互に平行な姿勢を保ち、左サイド部材53と右サイド部材54が相互に平行な姿勢を保つように、リンク支持部212に支持されている。
【0071】
図2と
図4に示すように、操舵力伝達機構6は、中間伝達プレート61、左伝達プレート62、右伝達プレート63、中間ジョイント64、左ジョイント65、右ジョイント66、およびタイロッド67を含んでいる。
【0072】
中間伝達プレート61は、下流側ステアリングシャフト68の下部に接続されている。中間伝達プレート61は、下流側ステアリングシャフト68に対して相対回動不能である。中間伝達プレート61は、リンク支持部212に対して、中間操舵軸線Z回りに回動可能である。
【0073】
左伝達プレート62は、中間伝達プレート61より左方に配置されている。左伝達プレート62は、左ブラケット317に接続されている。左伝達プレート62は、左ブラケット317に対して相対回動不能である。左伝達プレート62は、左サイド部材53に対して、左操舵軸線Xを中心に回動可能である。
【0074】
右伝達プレート63は、中間伝達プレート61より右方に配置されている。右伝達プレート63は、右ブラケット327に接続されている。右伝達プレート63は、右ブラケット327に対して相対回動不能である。右伝達プレート63は、右サイド部材54に対して、右操舵軸線Yを中心に回動可能である。
【0075】
図4に示すように、中間ジョイント64は、車体フレーム21の上下方向に延びる軸部を介して中間伝達プレート61の前部に連結されている。中間伝達プレート61と中間ジョイント64は、当該軸部を中心として相対回動可能とされている。
【0076】
左ジョイント65は、中間ジョイント64の左方に配置されている。左ジョイント65は、車体フレーム21の上下方向に延びる軸部を介して左伝達プレート62の前部に連結されている。左伝達プレート62と左ジョイント65は、当該軸部を中心として相対回動可能とされている。
【0077】
右ジョイント66は、中間ジョイント64の右方に配置されている。右ジョイント66は、車体フレーム21の上下方向に延びる軸部を介して右伝達プレート63の前部に連結されている。右伝達プレート63と右ジョイント66は、当該軸部を中心として相対回動可能とされている。
【0078】
中間ジョイント64の前部には、車体フレーム21の前後方向に延びる軸部が設けられている。左ジョイント65の前部には、車体フレーム21の前後方向に延びる軸部が設けられている。右ジョイント66の前部には、車体フレーム21の前後方向に延びる軸部が設けられている。
【0079】
タイロッド67は、車体フレーム21の左右方向に延びている。タイロッド67は、これらの軸部を介して、中間ジョイント64、左ジョイント65、および右ジョイント66に連結されている。タイロッド67と中間ジョイント64は、中間ジョイント64の前部に設けられた軸部を中心として相対回動可能とされている。タイロッド67と左ジョイント65は、左ジョイント65の前部に設けられた軸部を中心として相対回動可能とされている。タイロッド67と右ジョイント66は、右ジョイント66の前部に設けられた軸部を中心として相対回動可能とされている。
【0080】
次に
図4と
図5を参照しつつ、車両1の操舵動作について説明する。
図5は、左前輪31と右前輪32を左転舵させた状態における車両1の前部を、車体フレーム21の上方から見た平面図である。
【0081】
乗員がハンドルバー23を操作すると、上流側ステアリングシャフト60が回動する。上流側ステアリングシャフト60の回動は、連結部材80を介して下流側ステアリングシャフト68に伝達される。下流側ステアリングシャフト68は、前操舵軸線bを中心にリンク支持部212に対して回動する。
図5に示す左転舵の場合、ハンドルバー23の操作に伴って、中間伝達プレート61は、リンク支持部212に対して、前操舵軸線bを中心に矢印Tの方向へ回動する。
【0082】
中間伝達プレート61の矢印Tの方向への回動に伴って、タイロッド67の中間ジョイント64は、中間伝達プレート61に対して、矢印S方向に回動する。これにより、タイロッド67は、その姿勢を維持したまま左後方へ移動する。
【0083】
タイロッド67の左後方への移動に伴って、タイロッド67の左ジョイント65と右ジョイント66は、それぞれ左伝達プレート62と右伝達プレート63に対して矢印S方向に回動する。これにより、タイロッド67はその姿勢を維持したまま、左伝達プレート62と右伝達プレート63が、矢印Tの方向に回動する。
【0084】
左伝達プレート62が矢印Tの方向に回動すると、左伝達プレート62に対して相対回動不能である左ブラケット317が、左サイド部材53に対して、左操舵軸線Xを中心に、矢印Tの方向に回動する。
【0085】
右伝達プレート63が矢印Tの方向に回動すると、右伝達プレート63に対して相対回動不能である右ブラケット327が、右サイド部材54に対して、右操舵軸線Yを中心に、矢印Tの方向に回動する。
【0086】
左ブラケット317が矢印Tの方向に回動すると、左前アウタチューブ333および左後アウタチューブ335を介して左ブラケット317に接続されている左緩衝装置33が、左サイド部材53に対して、左操舵軸線Xを中心に、矢印Tの方向に回動する。左緩衝装置33が矢印Tの方向に回動すると、左緩衝装置33に支持されている左前輪31が、左サイド部材53に対して、左操舵軸線Xを中心に、矢印Tの方向に回動する。
【0087】
右ブラケット327が矢印Tの方向に回動すると、右前アウタチューブ343および右後アウタチューブ345を介して右ブラケット327に接続されている右緩衝装置34が、右サイド部材54に対して、右操舵軸線Yを中心に、矢印Tの方向に回動する。右緩衝装置34が矢印Tの方向に回動すると、右緩衝装置34に支持されている右前輪32が、右サイド部材54に対して、右操舵軸線Yを中心に、矢印Tの方向に回動する。
【0088】
右転舵するように乗員がハンドルバー23を操作すると、上述した各要素は、矢印Sの方向に回動する。各要素の動きは左右が逆になるのみであるため、詳細な説明は省略する。
【0089】
以上説明したように、操舵力伝達機構6は、乗員によるハンドルバー23の操作に応じて、操舵力を左前輪31と右前輪32に伝達する。左前輪31と右前輪32は、それぞれ左操舵軸線Xと右操舵軸線Yを中心に、乗員によるハンドルバー23の操作方向に応じた方向に回動する。
【0090】
次に
図2と
図6を参照しつつ、車両1の傾斜動作について説明する。
図6は、車体フレーム21が車両1の左方に傾斜した状態における車両1の前部を、車体フレーム21の前方から見た正面図である。
【0091】
図2に示すように、車両1の直立状態においては、車体フレーム21の前方から車両1を見ると、リンク機構5は長方形状をなしている。
図6に示すように、車両1が左方にリーンした状態においては、車体フレーム21の前方から車両1を見ると、リンク機構5は平行四辺形状をなしている。
リンク機構5の変形と車体フレーム21の車両1の左右方向への傾斜は連動する。リンク機構5の作動とは、リンク機構5を構成する上クロス部材51、下クロス部材52、左サイド部材53、および右サイド部材54が、それぞれの連結部A,C,E,G,H,Iを通る回動軸線を中心に相対回動し、リンク機構5の形状が変化することを意味している。
【0092】
例えば
図6に示すように、乗員が車両1を左方に傾斜させると、リンク支持部212が鉛直方向に対して左方に傾斜する。リンク支持部212が傾斜すると、上クロス部材51は、連結部Cを通る中間上軸線Muを中心に、リンク支持部212に対して、車両1の前方から見て反時計回りに回動する。同様に、下クロス部材52は、連結部Iを通る中間下軸線Mdを中心に、リンク支持部212に対して、車両1の前方から見て反時計回りに回動する。これにより、上クロス部材51は、下クロス部材52に対して左方に移動する。
【0093】
上クロス部材51の左方への移動に伴い、上クロス部材51は、連結部Aを通る左上軸線と連結部Eを通る右上軸線を中心に、それぞれ左サイド部材53と右サイド部材54に対して、車両1の前方から見て反時計回りに回動する。同様に、下クロス部材52は、連結部Gを通る左下軸線と連結部Hを通る右下軸線を中心に、それぞれ左サイド部材53と右サイド部材54に対して、車両1の前方から見て反時計回りに回動する。これにより、左サイド部材53と右サイド部材54は、リンク支持部212と平行な姿勢を保ったまま、鉛直方向に対して左方に傾斜する。
【0094】
このとき下クロス部材52は、タイロッド67に対して左方に移動する。下クロス部材52の左方への移動に伴い、中間ジョイント64、左ジョイント65、および右ジョイント66の各前部に設けられた軸部がタイロッド67に対して回動する。これにより、タイロッド67は、上クロス部材51および下クロス部材52と平行な姿勢を保つ。
【0095】
左サイド部材53の左方への傾斜に伴い、左サイド部材53に接続されている左ブラケット317が左方に傾斜する。左ブラケット317の左方への傾斜に伴い、左ブラケット317に接続されている左緩衝装置33が左方に傾斜する。左緩衝装置33の左方への傾斜に伴い、左緩衝装置33に支持されている左前輪31が、リンク支持部212と平行な姿勢を保ったまま左方に傾斜する。
【0096】
右サイド部材54の左方への傾斜に伴い、右サイド部材54に接続されている右ブラケット327が左方に傾斜する。右ブラケット327の左方への傾斜に伴い、右ブラケット327に接続されている右緩衝装置34が左方に傾斜する。右緩衝装置34の左方への傾斜に伴い、右緩衝装置34に支持されている右前輪32が、リンク支持部212と平行な姿勢を保ったまま左方に傾斜する。
【0097】
上記の左前輪31と右前輪32の傾斜動作に係る説明は、鉛直方向を基準としている。しかしながら、車両1の傾斜動作時(リンク機構5の作動時)においては、車体フレーム21の上下方向と鉛直上下方向は一致しない。車体フレーム21の上下方向を基準とした場合、リンク機構5の作動時において、左前輪31と右前輪32は、車体フレーム21に対する相対位置が変化している。換言すると、リンク機構5は、左前輪31と右前輪32の車体フレーム21に対する相対位置を、車体フレーム21の上下方向に変更することにより、車体フレーム21を鉛直方向に対して傾斜させる。
【0098】
乗員が車両1を右方に傾斜させると、各要素は右方に傾斜する。各要素の動きは左右が逆になるのみであるため、詳細な説明は省略する。
【0099】
図7は、車両1を傾斜させ、かつ転舵させた状態における車両前部の正面図である。車両1が左方に傾斜した状態で左方に転舵した状態を示している。操舵動作により左前輪31と右前輪32が左方に回動され、傾斜動作により左前輪31と右前輪32が車体フレーム21とともに左方に傾斜している。すなわち、この状態においては、リンク機構5は平行四辺形状を呈しており、タイロッド67は、車体フレーム21の直立状態における位置から左後方に移動している。
【0100】
上述したように本実施形態における鞍乗型車両1は、
車体フレーム21と、
車両の前方から見て左右に配置され、操舵可能な右前輪32および左前輪33と、
右前輪32と左前輪33とに連結された前輪の相対位置を変化させるリンク機構5と、
右前輪32を下部で支持し、リンク機構5に対する右前輪32の相対変位を緩衝する右緩衝装置34と、
左前輪31を下部で支持し、リンク機構5に対する左前輪31の相対変位を緩衝する左緩衝装置33と、
パワーユニット25を車体フレーム21に支持するパワーユニット支持部251とを有し、
リンク機構は、
右緩衝装置34の上部を車体フレーム21の上下方向に延びる右操舵軸線Y回りに回動可能に支持する右サイド部材54と、
左緩衝装置33の上部を右操舵軸線Yと平行な左操舵軸線X回りに回動可能に支持する左サイド部材53と、
右サイド部材54の上部を右端部に車体フレーム21の前後方向に延びる上右リーニング軸線回りに回動可能に支持し、左サイド部材53の上部を左端部に上右リーニング軸線に平行な上左リーニング軸線回りに回動可能に支持する上クロス部材51と、
右サイド部材54の下部を右端部に上右リーニング軸線に平行な下右リーニング軸線回りに回動可能に支持し、左サイド部材53の下部を左端部に上左リーニング軸線に平行な下左リーニング軸線回りに回動可能に支持する下クロス部材52と、を有し、
上クロス部材51および下クロス部材52はそれぞれの回転軸を中心に車体フレーム21に回転可能に連結されている。
【0101】
さらに本実施形態における鞍乗型車両1においては、
リンク機構5より前方に配置されたキャリア100を有し、
キャリア100は下クロス部材52に複数のキャリア支持部102によって支持されており、
車両の側方から見た際に上下方向にずれた位置に少なくとも二つのキャリア支持部102が設けられている。
上記構成によれば、キャリア支持部102が車両上下方向にずれた位置で下クロス部材52に固定されるため、キャリア支持部102にかかる荷重を分散することができ、キャリア100を安定して取り付けることができる。これらの構成について以下に詳細に説明する。
【0102】
<キャリア100の詳細>
図8~
図11を用いてキャリア100の構成について説明する。
図8に示すように、キャリア100は車体フレーム21より前方、すなわちリンク機構5より前方に位置する。キャリア100は、例えば荷物を積載するかごである。キャリア100はリンク機構5に固定されている。
【0103】
キャリア100は積載部101と、キャリア支持部102と、ヘッドランプやフラッシャなどの灯火器103が取り付けられる灯火器取付部104とを有する。荷物は積載部101に積載される。
図3および
図8に示すように、キャリア支持部102はリンク機構5の下クロス部材52に固定され、積載部101を支持する。灯火器取付部104は灯火器103が取り付けられる部位である。荷物を積載した場合においても灯火器103が前方を照射できるように、灯火器取付部104はキャリア100の前方に位置する構成が望ましい。
【0104】
キャリア支持部102はパイプ状の金属部材によって構成されている。キャリア支持部102は前後方向に延びる部材である。キャリア支持部102の長手方向端部はそれぞれ下クロス部材52に締結可能に構成されている。
【0105】
図9に図示した例では、キャリア100は、積載部101の後部の右上領域に設けられた第一キャリア支持部102aと、積載部101の後部の右下領域に設けられた第二キャリア支持部102bと、積載部101の後部の左上領域に設けられた第三キャリア支持部102cと、積載部101の後部の左下領域に設けられた第四キャリア支持部102dを有している。第一キャリア支持部102aは、積載部101の後部の左上領域から右斜め後方に向かって延びている。第二キャリア支持部102bは、積載部101の後部の左下領域から後方に向かって延びている。第三キャリア支持部102cは、積載部101の後部の右上領域から左斜め後方に向かって延びている。第四キャリア支持部102dは、積載部101の後部の右下領域から後方に向かって延びている。
【0106】
図9に示すように、下クロス部材52はキャリア支持部102が固定される複数の固定部152を有する。キャリア支持部102はボルト105によって下クロス部材52の固定部152に固定される。
なお、キャリア支持部102と下クロス部材52との固定は、ボルトやねじによる締結の他、溶接、接着、篏合などの締結以外の方法によって固定されていてもよい。
【0107】
本実施形態において固定部152は4つ設けられ、車両を前方から見て下クロス部材を車体中心線Zを基準として右領域、左領域に仮想的に二分割したときに、下クロス部材52の左領域の上部に第一固定部152a、下クロス部材52の左領域の前部に第二固定部152b、下クロス部材52の右領域の上部に第三固定部152c、下クロス部材52の右領域の前部に第四固定部152dが、それぞれ設けられている。
【0108】
第一固定部152aは、下クロス部材上面52Uのうちの左領域に設けられている。第一固定部152aは、上方に開口したねじ孔である。第一固定部152aには、第一キャリア支持部102aを貫通した第一ボルト105aが上方からねじ込まれている。
第二固定部152bは、下クロス部材前面52Fのうちの左領域に設けられている。第二固定部152bは、前方に開口したねじ孔である。第二固定部152bには、パイプ状の第二キャリア支持部102bの内部を貫通した第二ボルト105bが前方からねじ込まれている。
第三固定部152cは、下クロス部材上面52Uのうちの右領域に設けられている。第三固定部152cは、上方に開口したねじ孔である。第三固定部152cには、第三キャリア支持部102cを貫通した第三ボルト105aが上方からねじ込まれている。
第四固定部152dは、下クロス部材前面52Fのうちの右領域に設けられている。第四固定部152dは、前方に開口したねじ孔である。第四固定部152dには、パイプ状の第四キャリア支持部102dの内部を貫通した第四ボルト105dが前方からねじ込まれている。
なおここでいう、下クロス部材上面52Uとは、下クロス部材52を車両の上方から見たときに見える面を言う。また、下クロス部材前面52Fとは、下クロス部材52を車両の前方から見たときに見える面を言う。下クロス部材52を鉛直方向および前後方向に切った断面が円形状などである場合にも、このような定義に従って下クロス部材52の上面および前面が定義されうる。
【0109】
図10に示すように、本実施形態において、キャリア100は下クロス部材52に複数のキャリア支持部102によって支持されており、車両の側方から見た際に上下方向にずれた位置に少なくとも二つのキャリア支持部102が設けられている。なお、ここで言う「車両の側方から見た際に上下方向にずれた位置に少なくとも二つのキャリア支持部102が設けられている」とは、車両の側方から見た際に二つのキャリア支持部102の大部分が上下方向に重なっている場合、少なくとも一部分が重なっている場合、重ならず離間している場合も含む。例えば、無転舵かつ直立状態の車両を水平方向の左側方から見た際に、右側に位置するキャリア支持部102が左側に位置するキャリア支持部102によってその大部分が覆われていても、左側に位置するキャリア支持部102よりも上方または下方に右側に位置するキャリア支持部102の一部が見えていれば、「車両の側方から見た際に上下方向にずれた位置に少なくとも二つのキャリア支持部102が設けられている」と言える。
【0110】
本開示における鞍乗型車両1においては、エンジン(パワーユニット25)が搭載されているため、特許文献1に記載の3輪自転車よりカーブや悪路を速い速度で走行する。そのため、同じ道を走行した場合に鞍乗型車両1のキャリア100にかかる振動は一般的な3輪自転車よりも大きいことが考えられる。そのため、悪路の走行時や車両リーン時はキャリア100に係る振動がキャリア支持部102に与える力やモーメントによる影響は一般的な3輪自転車よりも大きい。以上の背景に基づき、発明者は、上述のようなキャリア支持部102にかかる力やモーメントに起因するキャリア支持部102の撓みを抑制することを考えた。
【0111】
当業者であれば上述した目的を達成するために、キャリア100及びキャリア支持部102を構成する部材を太くすることで剛性を上げることが考えられる。しかし、部材を太くすることで、キャリア100は大型化するので、キャリア支持部102を固定する固定部152の剛性をさらに向上させる必要が出てくる。
しかし、固定部152の剛性を高くするためには、固定部152の周辺構造を大型化する必要がある。固定部152の周辺構造を大型化すると、車両のリーン時に固定部及びキャリア支持部が別部材に干渉してしまい、干渉を避けるためにリンク機構5が大型化してしまう。
【0112】
本開示にかかる鞍乗型車両1によれば、キャリア100を支持するために2つのキャリア支持部102を設けたことにより、キャリア支持部102のそれぞれに作用する力を分散させて軽減することができる。さらに、2つのキャリア支持部102を上下方向に設けることによって、キャリア100のさらに上下方向に作用する力に対してキャリア支持部102の剛性を高めることができる。
【0113】
ところで、キャリア100を上下方向に2つの位置で支持する構成においては、キャリア支持部102を下クロス部材52の他に上クロス部材51にも固定することにより、キャリア支持部102に作用する力を低減することも考えられる。しかしながら、パワーユニット25を搭載した本開示に係る鞍乗型車両1においては、上クロス部51よりも前方の領域は、ブレーキの油圧装置や他の部材などと干渉を起こしやすい。このため、キャリア支持部102を下クロス部材52と上クロス部材51とに固定する構造は、上述した干渉を回避するためのリンク機構5及び車両の大型化を招きやすい。
【0114】
また、特許文献1に記載の自転車では、車重が小さく下クロス部材52に作用する負荷が小さいことから、下クロス部材52の上下方向の寸法も小さいため、二つのキャリア支持部102を取り付けることが難しい。しかしエンジンを搭載した本実施形態の鞍乗型車両1は、2つのキャリア支持部102を取り付けられる程度には下クロス部材52が大きいことに発明者は着目した。
そこで発明者は、エンジンを搭載した鞍乗型車両において、キャリア100を支持するキャリア支持部102を下クロス部材52に対して上下方向にずれた位置に二つ設けることを検討した。これにより、キャリア支持部102が他の部材と干渉しない構成とすることができる。
また、固定部152の大型化を抑制することができるので、車両が直立状態、リーン状態のいずれの状態であっても、固定部152と他の部材が干渉しない構成とすることができる。
したがって上記構成によれば、車両の大型化を抑制しつつキャリアの支持剛性の高い鞍乗型車両1が提供される。
【0115】
次に
図11を用いて、上クロス部材51と、下クロス部材52の位置関係について、車両が傾いていない直立状態と、傾いているリーン状態に分けて説明する。
図11の(a)は車両直立状態における、上クロス部材51、下クロス部材52、左サイド部材53を示す側面図である。
図11の(b)は車両を左に傾け、リーン状態となった際の上クロス部材51、下クロス部材52、左サイド部材53を示す側面図である。
【0116】
図11の(a)に示すように、本実施形態における鞍乗型車両1は、非旋回時において、下クロス部材52に設けられた固定部152の少なくとも一つは上クロス部材51の前端より前方に位置している。本実施形態における鞍乗型車両1は直立状態において、下クロス部材52に設けられた固定部152は上クロス部材51の前端部より前方に位置するため、上クロス部材51と下クロス部材52に設けられた固定部152とは互いに干渉しない構成となっている。
【0117】
図11の(b)に示すように、車両が直立状態からリーン状態に移行する際、リンク機構5は変形し、左サイド部材53は左方に、上クロス部材51は下クロス部材52との平行な状態を維持しながら左方に移動する。これにより、上クロス部材51と下クロス部材52の距離は縮まり、車両を最大限傾けた際は上クロス部材51の一部が下クロス部材52と車両前後方向に重なることもある。本実施形態における鞍乗型車両1は、旋回時において、下クロス部材52に設けられた固定部152は上クロス部材51の前端部より前方に位置するため、上クロス部材51と下クロス部材52が隣接する際も、上クロス部材51と下クロス部材52に設けられた固定部152とは互いに干渉しない構成となっている。
【0118】
また、上述したように、車両がリーン状態であっても、リンク機構5の上クロス部材51、下クロス部材52は路面に対して平行な状態を維持する。本実施形態における鞍乗型車両1によれば、キャリア100をキャリア支持部102でリンク機構5の下クロス部材52に固定しているため、キャリア100においても下クロス部材52と同様に、路面に対して平行な状態を維持することができる。
これにより、車両が左右に傾斜した際に、キャリア100に積載した荷物が傾くことを防止できる。よって、キャリア100の積載性を向上させることができる。
【0119】
本実施形態における固定部152の位置は上述した形態に限られない。例えば
図12に示すように、車両を前方から見て下クロス部材52を車体中心線Zを基準として、右領域、左領域に仮想的に二分割したときに、下クロス部材上面52Uの右領域、下クロス部材下面52Dの右領域、下クロス部材上面52Uの左領域、下クロス部材下面52Dの左領域に固定部152a~152dがそれぞれ設けられていてもよい。
固定部152の位置及び個数は、キャリア100の形状等により適時決定される。固定部152は、上記右領域および左領域に少なくとも一つ設けられる構成が望ましい。
【0120】
図13の(a)~(c)および
図14の(d)~(f)は下クロス部材の上部と下部のずれた位置にキャリアが固定された状態を示す別実施形態の正面図(左図)および側面図(右図)である。
【0121】
キャリア支持部102および固定部152は
図13の(a)に示すように、下クロス部材上面52Uおよび下クロス部材側面52Sに設けられていてもよい。
図13の(a)に示す実施形態においては、キャリア支持部102は、車両の側方から見た際に上下方向にずれた位置に少なくとも二つ設けられており、固定部152は車両を前方から見たときの上面、下面、側面、前面、および後面のうち少なくとも二つの面に設けられている。
【0122】
キャリア支持部102および固定部152は
図13の(b)に示すように、下クロス部材下面52Dおよび下クロス部材前面52Fに設けられていてもよい。
図13の(b)に示す実施形態においては、キャリア支持部102は、車両の側方から見た際に上下方向にずれた位置に少なくとも二つ設けられており、固定部152は車両を前方から見たときの上面、下面、側面、前面、および後面のうち少なくとも二つの面に設けられている。
【0123】
キャリア支持部102および固定部152は
図13の(c)に示すように、下クロス部材下面52Dよび下クロス部材側面52Sに設けられていてもよい。
図13の(c)に示す実施形態においては、キャリア支持部102は、車両の側方から見た際に上下方向にずれた位置に少なくとも二つ設けられており、固定部152は車両を前方から見たときの上面、下面、側面、前面、および後面のうち少なくとも二つの面に設けられている。
【0124】
キャリア支持部102および固定部152は
図14の(d)および(e)に示すように、下クロス部材前面52Fおよび下クロス部材側面52Sに設けられていてもよい。
図14の(d)および(e)に示す実施形態においては、キャリア支持部102は、車両の側方から見た際に上下方向にずれた位置に少なくとも二つ設けられており、固定部152は車両を前方から見たときの上面、下面、側面、前面、および後面のうち少なくとも二つの面に設けられている。
【0125】
キャリア支持部102および固定部152は
図14の(f)、(g)、(h)に示すように、下クロス部材後面52Bおよび下クロス部材側面52Sに設けられていてもよい。
図14の(f)、(g)、(h)に示す実施形態においては、キャリア支持部102は、車両の側方から見た際に上下方向にずれた位置に少なくとも二つ設けられており、固定部152は車両を前方から見たときの上面、下面、側面、前面、および後面のうち少なくとも二つの面に設けられている。
【0126】
なお、ここで言う下クロス部材下面52Dとは、下クロス部材52を車両の下方から見たときに見える面を言う。また、下クロス部材後面52Bとは、下クロス部材52を車両の後方から見たときに見える面を言う。また、下クロス部材側面52Sとは、下クロス部材52を車両の側方から見たときに見える面を言う。下クロス部材52を鉛直方向および前後方向に切った断面が円形状などである場合にも、このような定義に従って下クロス部材52の下面および後面が定義されうる。
【0127】
本実施形態における鞍乗型車両1によれば、固定部152を少なくとも三つ有してもよい。これにより、キャリア支持部102にかかる荷重をさらに分散することができるため、キャリア100を安定して取り付けることができる。
【0128】
なお、上記実施形態においては、下クロス部材52は前後方向および上下方向に延びる断面が四角形の矩形状として説明したが、該断面形状は三角形や五角形などの多角形や円形であってもよい。
【0129】
なお、上記実施形態では、いわゆる外サス構造の車両を例示したが、本発明はいわゆる内サス構造の車両に適用してもよいことは言うまでもない。
【0130】
上記の実施形態においては、車両1は、1つの後輪4を備えている。しかしながら、後輪の数は、複数でもよい。
【0131】
上記の実施形態においては、後輪4の車体フレーム21の左右方向における中央は、車体フレーム21の左右方向における左前輪31と右前輪32の間隔の中央と一致している。このような構成が好ましいものの、後輪4の車体フレーム21の左右方向における中央は、車体フレーム21の左右方向における左前輪31と右前輪32の間隔の中央と一致していなくてもよい。
【0132】
本明細書で用いられている「平行」という語は、±40°の範囲で傾斜するが、部材としては交わらない2つの直線も含む意味である。本明細書において方向や部材に関して用いられている「沿う」という語は、±40°の範囲で傾斜する場合も含む意味である。本明細書で用いられている「方向に延びる」という語は、当該方向に対して±40°の範囲で傾斜する場合も含む意味である。
【0133】
ここに用いられた用語および表現は、説明のために用いられたものであって、限定的に解釈するために用いられたものではない。本発明は、ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形例をも許容するものであると認識されなければならない。本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。
【0134】
この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものとみなされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/または図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、記載されている。本発明は、ここに記載した実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ、改良および/または変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0135】
1 車両(鞍乗型車両)
2 車両本体部
3 前輪
4 後輪
5 リンク機構
6 操舵力伝達機構
21 車体フレーム
22 車体カバー
23 ハンドルバー
24 シート
25 パワーユニット
31 左前輪
32 右前輪
33 左緩衝装置
34 右緩衝装置
51 上クロス部材
52 下クロス部材
52U 下クロス部材上面
52F 下クロス部材前面
52D 下クロス部材下面
52B 下クロス部材後面
53 左サイド部材
54 右サイド部材
60 上流側ステアリングシャフト
61 中間伝達プレート
62 左伝達プレート
63 右伝達プレート
64 中間ジョイント
65 左ジョイント
66 右ジョイント
67 タイロッド
68 下流側ステアリングシャフト
80 連結部材
100 キャリア
101 積載部
102、102a、102b、102c、102d キャリア支持部
103 灯火器
104 灯火器取付部
105、105a、105b、105c、105d ボルト
152、152a、152b、152c、152d 固定部
211 ヘッドパイプ
212 リンク支持部
223 フロントフェンダー
224 リアフェンダー
311 左車軸部材
317 左ブラケット
321 右車軸部材
327 右ブラケット
c 左伸縮軸線
d 右伸縮軸線
X 左操舵軸線
Y 右操舵軸線
Z 車体中心線