(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064284
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス故障検出装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20240507BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20240507BHJP
G01R 31/54 20200101ALI20240507BHJP
G01R 31/58 20200101ALI20240507BHJP
G08C 25/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G01R31/52
B60R16/023 Z
G01R31/54
G01R31/58
G08C25/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172756
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】599161580
【氏名又は名称】株式会社デンソートリム
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】堀田 常史
【テーマコード(参考)】
2F073
2G014
【Fターム(参考)】
2F073AA11
2F073AA32
2F073AB01
2F073AB06
2F073BB04
2F073BC01
2F073CC03
2F073CC05
2F073CC07
2F073CC08
2F073CC14
2F073CD15
2F073DD01
2F073DD06
2F073DE16
2F073EE02
2F073EE03
2F073FF12
2F073FF14
2F073FF15
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG03
2F073GG04
2F073GG07
2G014AA02
2G014AA03
2G014AB38
2G014AC18
(57)【要約】
【課題】ワイヤハーネスが断線や短絡したり、また、ノイズや振動の影響でチャタリングしたりした時の異常を、A/D変換回路等特別な機器を追加することなく、検知する。
【解決手段】発信側コントロールユニットは、ハイ信号とロー信号との2値信号であって、一周期の半分以上がハイ信号とロー信号のいずれかが連続する非信号域で、残りがハイ信号とロー信号の組み合わせからなる信号域となる送信信号であって、信号域が第1パターン送信信号である第1信号と、信号域がこの第1パターン送信信号とはパターンが異なる第2パターン送信信号である第2信号を送信する。受信側コントロールユニットは、ハイ信号とロー信号のいずれかを非信号域の期間より長い期間連続して受信した場合、及び、受信したハイ信号とロー信号からなるパターンが第1パターン送信信号及び第2パターン送信信号のパターンの双方と異なる時に、ワイヤハーネスの異常を判断する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電気コネクタと、この第1電気コネクタと第1センサ及び第1アクチュエータの少なくともいずれかとが電気的に接続される複数のポートを有するマイコンを備える第1コントロールユニットと、
第2電気コネクタと、この第2電気コネクタと第2センサ及び第2アクチュエータの少なくともいずれかとが電気的に接続される複数のポートを有するマイコンを備える第2コントロールユニットと、
一端の第1ワイヤハーネスコネクタが前記第1電気コネクタに接続され、他端の第2ワイヤハーネスコネクタが前記第2電気コネクタに接続され、前記第1コントロールユニットと前記第2コントロールユニットとの間で電気信号を伝達する複数の電線を備えるワイヤハーネスとを備え、
前記第1コントロールユニット及び前記第2コントロールユニットのいずれか一方が電気信号の発信側である発信側コントロールユニットとなり、他方が電気信号の受信側である受信側コントロールユニットとなり、
前記発信側コントロールユニットは、ハイ信号とロー信号との2値信号であって、一周期の半分以上がハイ信号とロー信号のいずれかが連続する非信号域で、残りがハイ信号とロー信号の組み合わせからなる信号域となる送信信号であって、前記信号域が第1パターン送信信号である第1信号と、前記信号域がこの第1パターン送信信号とはパターンが異なる第2パターン送信信号である第2信号を送信し、
前記第1パターン送信信号及び前記第2パターン送信信号は、いずれも非信号域とは異なるハイ信号とロー信号のいずれかの信号である反対信号から始まると共にこの反対信号で終わるようにこの反対信号を2回以上含み、いずれも前記反対信号の間に前記非信号域のハイ信号とロー信号のいずれかと同一の信号である同一信号を含み、
前記第1信号の一周期の長さは、前記第2信号の一周期の長さと同じであり、
前記受信側コントロールユニットは、ハイ信号とロー信号のいずれかを前記非信号域の期間より長い期間連続して受信した場合、及び、受信したハイ信号とロー信号からなるパターンが前記第1パターン送信信号及び前記第2パターン送信信号のパターンの双方と異なる時、前記ワイヤハーネスの異常を判断する
ことを特徴とするワイヤハーネス故障検出装置。
【請求項2】
前記第1パターン送信信号の前記反対信号を送信する回数及び前記同一信号を送信する回数は、前記第2パターン送信信号の前記反対信号を送信する回数及び前記同一信号を送信する回数と同じである
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス故障検出装置。
【請求項3】
前記第1パターン送信信号及び前記第2パターン送信信号は、前記反対信号を送信する回数が4回以下であり、前記同一信号を送信する回数が3回以下である合計7回以下のパターンである
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス故障検出装置。
【請求項4】
前記受信側コントロールユニットは、所定周期で間欠的にハイ信号とロー信号を検知し、前記第1パターン送信信号及び前記第2パターン送信信号を構成するハイ信号継続期間とロー信号継続期間を前記所定周期の複数倍とする
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス故障検出装置。
【請求項5】
前記第1パターン送信信号及び前記第2パターン送信信号を構成するハイ信号継続期間とロー信号継続期間のうち最も短い継続期間を前記所定周期の5倍以上とし、前記受信側コントロールユニットは、検知した信号が2回以上連続した際に、ハイ信号及びロー信号のいずれかからなるパターンを受信したと判断する
ことを特徴とする請求項4に記載のワイヤハーネス故障検出装置。
【請求項6】
前記第1信号の前記信号域の長さと、前記第2信号の前記信号域の長さとは異なる
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス故障検出装置。
【請求項7】
前記第1コントロールユニット及び前記第2コントロールユニットの前記マイコンは、アナログ変換信号の入力が可能な専用ポートと2値信号入力の汎用ポートとを有し、
前記第1ワイヤハーネスコネクタ及び前記第2ワイヤハーネスコネクタは、専用ポート及び汎用ポートのいずれにも電気的に接続可能である
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス故障検出装置。
【請求項8】
前記第1パターン送信信号は、前記発信側コントロールユニットと電気接続する前記第1センサ、前記第1アクチュエータ、前記第2センサ及び前記第2アクチュエータのいずれかの第1状態を示し、
前記第2パターン送信信号は、前記発信側コントロールユニットと電気接続する前記第1センサ、前記第1アクチュエータ、前記第2センサ及び前記第2アクチュエータのいずれかの第2状態を示す
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス故障検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の記載は、ワイヤハーネス故障検出装置に関し、例えばスクータ等の鞍乗型車両のエンジンを制御するエンジンコントロールユニットと回転電機を制御する回転電機コントロールユニットとの間でワイヤハーネスを介して信号を通信する装置のワイヤハーネスの故障検出に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、複数の制御装置間での信号をハイ信号とロー信号で送受信する装置で、その信号経路に用いられるワイヤハーネスに断線や短絡の異常が生じた際、ワイヤハーネスの異常を検知する装置が提案されている。また、特許文献2では、ハイ信号とロー信号が5秒以上途絶えたことを検知して異常と判定する装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-133502号公報
【特許文献2】特開平9-162933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置は、異常の種類に応じてA/D変換回路における入力電圧を電圧信号とは異なる電圧とする分圧回路を用いている。そして、A/D変換回路における入力電圧が正常な電圧信号と異常に応じた電圧とのいずれであるかに基づいて、ワイヤハーネスの異常を判断している。
【0005】
しかしながら、例えば自動車やスクータ等の鞍乗型車両の場合、エンジン制御用のコントロールユニットとアクチュエータ等を制御するコントロールユニットとがワイヤハーネスを介して信号を授受している。そして、この信号の中にはアクチュエータの異常をエンジンコントロールユニットに伝達する信号もある。そして、この信号は通常ハイ信号とロー信号とを組み合わせた二値信号である。特許文献1では単純なハイ信号とロー信号のみを前提にしているが、実際に送信される信号は特許文献1の信号とは相違する。
【0006】
その為、ワイヤハーネスに異常が生じた場合、信号が単純なハイ信号とロー信号だけではないので、アナログ変換しても異常検知が難しい。加えて、アナログ変換する為にはその機能を有した専用のマイコンポートを使用する必要がある。使用状態によっては、アナログ変換信号を入力可能な専用ポートが他の信号用に使用されていることもある。できれば、ハイ信号とロー信号の入出力を行う汎用ポートを使用できるのが望ましい。
【0007】
また、例えばエンジン制御装置の場合、振動環境に配置されることとなる。するとワイヤハーネスの異常が断続的になってしまうことがある。この場合には、本来の信号に対し断続的な変化を重畳(チャタリング)させてしまいかねない。その結果、チャタリングの状態によっては、送信側のコントロールユニットでは正常を示す第1信号として送信した信号を、受信側のコントロールユニットが異常を示す第2信号と判断する恐れがある。逆に、送信側コントロールユニットが異常を示す第2信号として送信した信号を、受信側コントロールユニットが正常を示す第1信号と判断してしまう恐れもある。
【0008】
また特許文献2のように、一定時間経過、例えば5秒の間待つことも更に問題を難しくしかねない。通常の信号処理時間を利用して故障検出できるようにするのが望ましい。
【0009】
本開示は、ワイヤハーネスが断線や短絡したり、また、ノイズや振動の影響でチャタリングしたりした時の異常を、A/D変換回路等特別な機器を追加することなく、検知することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1は、第1電気コネクタと、この第1電気コネクタと第1センサ及び第1アクチュエータの少なくともいずれかとが電気的に接続される複数のポートを有するマイコンを備える第1コントロールユニットを備えている。また、第2電気コネクタと、この第2電気コネクタと第2センサ及び第2アクチュエータの少なくともいずれかとが電気的に接続される複数のポートを有するマイコンを備える第2コントロールユニットも備えている。かつ、一端の第1ワイヤハーネスコネクタが第1電気コネクタに接続され、他端の第2ワイヤハーネスコネクタが第2電気コネクタに接続され、第1コントロールユニットと第2コントロールユニットとの間で電気信号を伝達する複数の電線を備えるワイヤハーネスも備えている。
【0011】
本開示の第1では、第1コントロールユニット及び第2コントロールユニットのいずれか一方が電気信号の発信側である発信側コントロールユニットとなり、他方が電気信号の受信側である受信側コントロールユニットとなる。そして、発信側コントロールユニットは、ハイ信号とロー信号との2値信号であって、一周期の半分以上がハイ信号とロー信号のいずれかが連続する非信号域で、残りがハイ信号とロー信号の組み合わせからなる信号域となる送信信号であって、信号域が第1パターン送信信号である第1信号と、信号域がこの第1パターン送信信号とはパターンが異なる第2パターン送信信号である第2信号を送信する。
【0012】
本開示の第1は、第1パターン送信信号及び第2パターン送信信号は、いずれも非信号域とは異なるハイ信号とロー信号のいずれかの信号である反対信号から始まると共にこの反対信号で終わるようにこの反対信号を2回以上含み、いずれも反対信号の間に非信号域のハイ信号とロー信号のいずれかと同一の信号である同一信号を含んでいる。且つ、第1信号の一周期の長さは、第2信号の一周期の長さと同じである。そして、受信側コントロールユニットは、ハイ信号とロー信号のいずれかを非信号域の期間より長い期間連続して受信した場合、及び、受信したハイ信号とロー信号からなるパターンが第1パターン送信信号及び第2パターン送信信号のパターンの双方と異なる時に、ワイヤハーネスの異常を判断する。
【0013】
本開示の第1では、一周期の半分以上がハイ信号とロー信号のいずれかが連続する非信号域であるので、非信号域と信号域との判断を明確にすることができる。また、第1パターン送信信号及び第2パターン送信信号は、いずれも非信号域とは異なるハイ信号とロー信号のいずれかの信号である反対信号から始まると共にこの反対信号で終わるようにこの反対信号を2回以上含んでいるので、信号域の開始と終了を明確にすることもできる。
【0014】
本開示の第1では、受信側コントロールユニットは、ハイ信号とロー信号のいずれかを非信号域の期間より長い期間連続して受信した場合にはワイヤハーネスの異常を判断する。同一の信号が継続するのは非信号域である。その非信号域の期間を超える期間同一の信号が継続するのは、ワイヤハーネスの短絡の恐れがあるので、異常判定とする。
【0015】
本開示の第1では、受信したハイ信号とロー信号からなるパターンが第1パターン送信信号及び第2パターン送信信号のパターンの双方と異なる時にも、ワイヤハーネスの異常を判断する。ワイヤハーネスが間欠的に短絡したり、ノイズが入ったりしてチャタリングが生じる恐れがある。この場合、チャタリングが信号域の第1パターン送信信号や第2パターン送信信号と紛らわしくなる可能性もある。しかし、信号域の第1パターン送信信号とも、第2パターン送信信号とも一致しない信号はチャタリングであると判断できる。従って、その場合にもワイヤハーネスの異常と判断する。
【0016】
本開示の第2は、第1パターン送信信号の反対信号を送信する回数及び同一信号を送信する回数は、第2パターン送信信号の反対信号を送信する回数及び同一信号を送信する回数と同じである。本開示の第2では、第1パターン送信信号であるか否かの判定ロジックと、第2パターン送信信号であるか否かの判定ロジックとを共用することができる。これは、判定ロジックは同一回数の判定とし、単に第1パターン送信信号と第2パターン送信信号とでハイ信号とロー信号の時間を変えるのみとすることができるからである。
【0017】
本開示の第3は、第1パターン送信信号及び第2パターン送信信号は、反対信号を送信する回数が4回以下であり、同一信号を送信する回数が3回以下である合計7回以下のパターンである。判定ロジックの判定回数を多くすることは可能であるが、判定回数が増えると判定ロジックのプログラムが複雑化し、メモリの容量も圧迫する。そこで、本開示の第3では第1パターン送信信号及び第2パターン送信信号のハイ信号とロー信号の数を7回以下として、判定ロジックの複雑化を防止している。
【0018】
本開示の第4では、受信側コントロールユニットは、所定周期で間欠的にハイ信号とロー信号を検知している。そして、第1パターン送信信号及び第2パターン送信信号を構成するハイ信号継続期間とロー信号継続期間を所定周期の複数倍としている。本開示の第4では、受信側コントロールユニットのタイマ機能を用いて所定周期毎のハイ信号及びロー信号の検知を行う。この所定周期を、例えば、2マイクロ秒とした場合、ハイ信号継続期間とロー信号継続期間は2の倍数のマイクロ秒となる。最小の継続期間は、この例では、4マイクロ秒となる。
【0019】
本開示の第5では、第1パターン送信信号及び第2パターン送信信号を構成するハイ信号継続期間とロー信号継続期間のうち最も短い継続期間を所定周期の5倍以上としている。そして、受信側コントロールユニットは、検知した信号が2回以上連続した際に、ハイ信号及びロー信号のいずれかからなるパターンを受信したと判断する。上記のように、所定周期を、例えば、2マイクロ秒とする。この場合には、第1パターン送信信号及び第2パターン送信信号を構成するハイ信号継続期間とロー信号継続期間のうち最も短い継続期間は、10マイクロ秒となる。そして、最も短い継続期間の間に5回ハイ信号であるのかロー信号であるのかの判断をする。本開示の第5では、ハイ信号とロー信号で同じであるとの判断を2回以上連続した際に行うので、ノイズ等に起因するチャタリングで入った信号を誤って判断する恐れを低減できる。
【0020】
本開示の第6は、第1信号の信号域の長さと、第2信号の信号域の長さとは異なっている。信号域の長さを異ならせることで、第1信号と第2信号とをより明確に区別することができる。
【0021】
本開示の第7は、第1コントロールユニット及び第2コントロールユニットのマイコンは、アナログ変換信号の入力が可能な専用ポートと2値信号入力の汎用ポートとを有している。そして、第1ワイヤハーネスコネクタ及び第2ワイヤハーネスコネクタは、専用ポート及び汎用ポートのいずれにも電気的に接続可能である。本開示の第7では、送受信する信号はハイ信号とロー信号の2値信号であるので、専用ポートのみでなく汎用ポートも利用できる。
【0022】
本開示の第8は、第1パターン送信信号は、送信側コントロールユニットと電気接続する第1センサ、第1アクチュエータ、第2センサ及び第2アクチュエータのいずれかの第1状態を示している。また、第2パターン送信信号は、送信側コントロールユニットと電気接続する第1センサ、第1アクチュエータ、第2センサ及び第2アクチュエータのいずれかの第2状態を示している。本開示の第7では、ワイヤハーネスの異常を検出するのみでなく、送信側コントロールユニットに電気接続するセンサやアクチュエータの状態を受信側コントロールユニットに通知することも可能である。例えば、アクチュエータが所定の動作をしているときに第1状態を通知し、所定の動作をしなくなれば第2状態を通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、第1コントロールユニットと第2コントロールユニットを接続するワイヤハーネスの使用状態を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、ワイヤハーネスの配置形態を説明する図である。
【
図4】
図4は、コントロールユニットとワイヤハーネスの接続状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、コントロールユニットのマイコンを示す正面図である。
【
図6】
図6は、ワイヤハーネスの電気接続を示す回路図である。
【
図7】
図7は、第1信号と第2信号のパターンを説明する図である。
【
図8】
図8は、コントロールユニットの処理を説明する図である。
【
図9】
図9は、間欠的な信号受信を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の一例を図に基づいて説明する。
図1は、第1コントロールユニット100と第2コントロールユニット200との使用例を示すブロック図である。この例では、第1コントロールユニット100は、スクータ400のエンジン110をコントロールするエンジンコントロールユニットである。また、第2コントロールユニット200は、回転電機210への通電を制御する回転電機コントロールユニットである。
【0025】
エンジン110は、シリンダブロック111内をピストン112が往復移動し、ピストン112の往復移動がコンロッド113を介してクランク軸114に伝達される。クランク軸114はシリンダブロック111に回転支持され、クランク軸114の回転は駆動側プーリー115に伝達される。駆動側プーリー115の回転はベルト116を介して従動側プーリー117に伝達される。従動側プーリー117は駆動軸118と共に回転し、駆動軸118の回転は減速機構119を介してスクータ400の後輪410に伝達される。
【0026】
エンジン110のクランク軸114の回転は回転電機210にも伝達される。回転電機210はエンジン110の始動時には、スタータとして機能する。始動時には、回転電機210の回転力によりピストン112をシリンダブロック111内で往復移動させる。この際、第2コントロールユニット200はバッテリ450の直流電流を三相交流電流に変換して、回転電機210を回転駆動する。エンジン110の回転中にバッテリ450の残量が少なくなると、回転電機210は発電機として機能する。この際には、第2コントロールユニット200は回転電機210で発電した三相交流電流を直流電流に変換してバッテリ450に供給する。
【0027】
第1コントロールユニット100は、
図2に示すように、エンジン110の回転数制御機能120と、アイドルストップ制御機能121を備えている。回転数制御機能120は、エンジン110に供給される吸入空気の量、燃料噴射量、燃料噴射のタイミング、点火プラグの点火タイミング等の制御を行う。アイドルストップ制御機能121は、エンジン110の運転状況に応じて回転電機210を始動するよう第2コントロールユニット200に始動指令122を出力する。
【0028】
第2コントロールユニット200には、回転電機210の駆動制御機能123と、回転電機210の診断機能124がある。第1コントロールユニット100から始動指令122は、第2コントロールユニット200の駆動制御機能123に入力する。駆動制御機能123は始動指令122を受けると、回転電機210の診断結果に問題が無ければ、回転電機210を回転駆動し、エンジン110の始動を行う。
【0029】
アイドルストップ制御機能121を正しく行うため、第1コントロールユニット100にはメモリ125が含まれている。第2コントロールユニット200の診断機能124は、定期的に回転電機210の診断を行い、診断結果を診断信号126として第1コントロールユニット100に送信する。第1コントロールユニット100のメモリ125には、受信した診断信号126が記憶されている。メモリ125に記憶された情報は、モニタ127で確認することができる。アイドルストップ制御機能121は、メモリ125に蓄積された診断結果を参照することで、誤って始動指令122を送ることが無いようにしている。かつ、診断結果に異状が認められれば、警告ランプ129を点灯して乗員に報知する。
【0030】
第1コントロールユニット100の回転数制御機能120を適切に行うため、エンジン110の状態は各種のセンサ類130により検知される。センサ類としては、吸入空気量を検知する電子スロットルバルブの開度センサ、エンジン110の回転数を検知する回転速度センサ、スロットルグリップの開度を検知するスロットルセンサ、ブレーキの状態を検知するブレーキセンサ等がある。そして、第1コントロールユニット100の回転数制御機能120を達成するため、第1コントロールユニット100からの指令は、第2コントロールユニット200のみでなく、各種のアクチュエータ131に出力する。アクチュエータ131としては、スロットルバルブを開閉駆動する電子スロットル、燃料を噴射するインジェクタ、点火プラグを着火するイグナイター等がある。
【0031】
図3に示すように、第1コントロールユニット100と第2コントロールユニット200とは、スクータ400の異なった位置に配置されることが多い。第1コントロールユニット100は、メータ411の近傍のスクータ400の前方に配置される。前方には、メータ411の他にハンドル412や前輪413が配置されている。第2コントロールユニット200は、スクータ400の後方で、シート414の下部に配置される。後方には、後輪410が配置されている。また、シート414の下部には、回転電機210やバッテリ450も配置されている。なお、前方後方は、スクータ400の進行方向を前方とし、後退方向を後方としている。また、上下は、スクータ400の天地方向である。 第1コントロールユニット100と第2コントロールユニット200との間はワイヤハーネス300で電気的に接続されている。
図1ないし
図3に示すように、第1コントロールユニット100とセンサ類130やアクチュエータ131との間も、第2コントロールユニット200と回転電機210との間もワイヤハーネスで電気接続されている。第1コントロールユニット100と電気接続するセンサ類130が第1センサとなり、アクチュエータ131が第1アクチュエータとなる。また、第2コントロールユニット200と電気接続する回転電機210は、第2アクチュエータとなる。明確化の為、本開示では、第1コントロールユニット100と第2コントロールユニット200との間を電気接続するワイヤハーネスをワイヤハーネス300とし、その他のワイヤハーネスをその他ハーネス310とする。
図3では、その他ハーネス310は、第1コントロールユニット100とメータ411を電気接続するハーネスと、第2コントロールユニット200と回転電機210を電気接続するハーネスが示されている。なお、上述の通り第1コントロールユニット100には第1センサ(センサ類130)及び第1アクチュエータ(アクチュエータ131)が接続されているが、メータ411を除き他のセンサ、アクチュエータは図示を省略している。また、第1コントロールユニット100及び第2コントロールユニット200はそれぞれバッテリ450に接続されているが、図示を省略している。
【0032】
ワイヤハーネス300は、複数の電線を束にしたもので、各電線は被覆され相互に電気絶縁されている。また、電線の束も全体として被覆されている。ワイヤハーネス300とその他ハーネス310を合わせて、合計26本から48本程度の電線となる。
図4に示すように、ワイヤハーネス300の一端には第1ワイヤハーネスコネクタ301が設けられており、他端には第2ワイヤハーネスコネクタ302が設けられている。第1コントロールユニット100には第1電気コネクタ140が設けられており、ワイヤハーネス300の第1ワイヤハーネスコネクタ301がこの第1電気コネクタ140に接続される。第2コントロールユニット200も同様である。第2電気コネクタ230が設けられており、この第2電気コネクタ230に第2ワイヤハーネスコネクタ302が接続する。
【0033】
なお、第1電気コネクタ140及び第1ワイヤハーネスコネクタ301は、夫々内部に複数の端子を設けており、第1ワイヤハーネスコネクタ301を第1電気コネクタ140に挿入することにより、夫々の端子同士が電気的に接続される。そして、第1電気コネクタ140の端子はプリント基板101(
図6図示)と電気接続している。かつ、第1ワイヤハーネスコネクタ301の端子はワイヤハーネス300の電線と電気接続している。以上の説明は、第2電気コネクタ230と第2ワイヤハーネスコネクタ302にも同様に当てはまる。
【0034】
図2及び
図6に示すように、第1コントロールユニット100及び第2コントロールユニット200にはバッテリ450のプラス端子と電気的に導通して12ボルトの電圧を受ける電源線320が繋がっている。電源線320から印加される電圧は、第1コントロールユニット100及び第2コントロールユニット200内で5ボルトに変換されて信号電圧として利用される。また、バッテリ450のマイナス端子と電気的に導通するグランド線321も繋がっている。ワイヤハーネス300内には、電源線320から印加された電圧を5ボルトに変換した信号電圧同士を繋ぐ電源線ライン305と、グランド線321同士を繋ぐグランド線ライン306が含まれる。また、ワイヤハーネス300には、上述した診断信号126を伝達する診断信号ライン307と、始動指令122を伝達する始動指令ライン308も含まれている。
【0035】
図5に第1コントロールユニット100のマイコン128の例を示す。このマイコン128には、64個のポート1281が設けられている。そのうちの幾つかはハイ信号とロー信号の2値信号が入力可能な汎用ポートであり、また、幾つかはアナログ変換信号の入力も可能な専用ポートである。
図5の例では、37番~46番のポート1281がハイ信号とロー信号の2値信号のみでなく、アナログ変換信号の入力も可能な専用ポートとなっている。なお、50番と51番のポート1281は、ハイ信号とロー信号の2値信号のみでなく、シリアル通信にも使えるポートである。ただ、50番と51番のポートは、汎用ポートとしても使用可能である。
【0036】
ワイヤハーネス300からの電源線ライン305及びグランド線ライン306もこのマイコン128の電源線ポート及びグランド線ポートに接続している。また、ワイヤハーネス300の診断信号ライン307はマイコン128の汎用ポートに接続している。同様に、始動指令ライン308もマイコン128の汎用ポートに接続している。なお、第1電気コネクタ140とマイコン128との間の電気接続は、上述の通り、第1電気コネクタ140の内部に設けられた端子がプリント基板101に形成された電気回路102と電気接続し、この電気回路102がマイコン128と電気接続することでなされる。
【0037】
そして、その他ハーネス310も第1電気コネクタ140に接続される。その他ハーネス310からの電気信号は、マイコン128のその他のポートに入力する。電気接続は、
図6では示していないが、プリント基板101に形成された電気回路によってなされる。従って、ワイヤハーネス300とその他ハーネス310の電線は、プリント基板101の電気回路を介してマイコン128と電気接続している。
【0038】
なお、
図6では第1コントロールユニット100のマイコン128のみを図示しているが、第2コントロールユニット200も同様である。即ち、第2コントロールユニット200にもプリント基板101上にマイコン128が配置されている。第2電気コネクタ230の端子とマイコン128のポート1281とは、プリント基板101に形成された電気回路102を介して電気的に接続されている。
【0039】
ここで、ワイヤハーネス300には、何らかの要因で、断線、短絡が生じる可能性がある。断線は文字通り電線の切断である。また、短絡には天絡と地絡がある。天絡は電線が電源線ライン305側に電気的に接続した状態であり、地絡は電線がグランド線ライン306側に電気的に接続した状態である。天絡の場合には、電気信号はハイ信号が連続することになる。逆に地絡の場合には、電気信号はロー信号が連続する。
【0040】
断線や短絡の原因としては、ワイヤハーネス300はスクータ400のフレームに沿わせて、前方の第1コントロールユニット100と後方の第2コントロールユニット200の間を長く伸びていることがあげられる。特に、ワイヤハーネス300はクランプやアングルを用いて、部分的にスクータ400に固定される。その為、この固定部分では、エンジン110の振動やスクータ400の走行に伴う振動を受けやすくなっている。ワイヤハーネス300は、この固定部分で応力が集中して断線や短絡が生じる恐れがある。また、複数の電線同士が擦れて被膜が損傷する恐れもある。特に、被膜が経年劣化した場合には、損傷の恐れが高まることとなる。
【0041】
断線の場合、例えば、
図6の例では第1コントロールユニット100は電源線320に接続しているので、天絡と同様な状態となり、ハイ信号が連続する。仮に、
図6の例で電源線320と接続していなく、グランド線321とのみ接続していると、断線の場合には地絡と同様な状態となって、ロー信号が連続する。なお、上述の回転数制御機能120、アイドルストップ制御機能121は、マイコン128に含まれている。
【0042】
また、ワイヤハーネス300に外部からのノイズが含まれる可能性もある。かつ、断線、天絡若しくは地絡が生じた場合でも、スクータ400の振動を受けてハイ信号の状態やロー信号の状態が短周期で変化するチャタリングが生じる可能性もある。これは、電線が切れかかっている状態や、他の電線に僅かに電気的に接触しているような状態で、振動を受けた場合、断続的な信号となる恐れがあるからである。
【0043】
本開示では、ワイヤハーネス300に異常が生じていないのかを検出するため、
図7に示すような、第1信号330と第2信号340とを、第1コントロールユニット100と第2コントロールユニット200との間で送受信している。なお、発信側のコントロールユニットは、第1コントロールユニット100と第2コントロールユニット200のいずれでも良い。仮に第1コントロールユニット100が発進側コントロールユニットとなれば、第2コントロールユニット200は受信側コントロールユニットとなる。
【0044】
図7の例では、第1信号330と第2信号340の一周期の長さを300ミリ秒としている。但し、第1信号330と第2信号340とでは、一周期の長さが互いに同じであればよく、その時間は300ミリ秒に限定されない。また、第1信号330と第2信号340は、夫々一周期の長さの半分以上を非信号域331、341としている。第1信号330の非信号域331の長さは230ミリ秒であり、第2信号340の非信号域341は210ミリ秒としている。この非信号域331、341の長さは、一周期の長さの半分以上であれば、適宜設定すればよい。また、
図7の例では非信号域331、341を共にハイ信号が継続するようにしているが、非信号域331、341はロー信号が継続するようにしても良い。
【0045】
信号域332、342は、非信号域331、341とは異なる信号から始まる。即ち、信号域332、342の開始は、非信号域331、341の反対信号である。また、信号域332、342の終了も、非信号域331、341の反対信号である。これにより、非信号域331、341から信号域332、342への切り替え、及び、信号域332、342から非信号域331、341への切り替わりが明確となる。
【0046】
そして、信号域332、342は、ロー信号とハイ信号とが連続的に且つ交互に配置される。第1信号330の信号域332は、30ミリ秒続く第1回ロー信号333から始まる。次いで、第1回ハイ信号334を30ミリ秒継続し、第2回ロー信号335を10ミリ秒継続して、信号域332を終了する。信号域332の終了も、非信号域331の反対信号である。第2信号340の信号域342は、20ミリ秒続く第1回ロー信号343から始まり、次いで、第1回ハイ信号344を50ミリ秒継続する。第2信号340は、第2回ロー信号345を20ミリ秒継続して、信号域342を終了する。第2信号340も信号域342の開始及び終了は反対信号となっている。
【0047】
信号域332、342の最初の信号と最後の信号を、非信号域331、341とは異なる反対信号としているので、信号域332、342から非信号域331、341に変位したことや、非信号域331、341から信号域332、342に変位したことが確実に判断できる。
【0048】
また、非信号域331、341の長さを一周期の半分以上としているので、非信号域331、341であるのか信号域332、342であるのかを明確に区別することができる。例えば、非信号域331、341の長さを一周期の3分の1の100ミリ秒とすると、信号域332、342の長さは200ミリ秒となり、信号域332、342に100ミリ秒以上の第1回ハイ信号334、344を入れることが可能となる。この場合には、100ミリ秒の時間が、非信号域331、341のハイ信号が継続しているのか、信号域332、342の第1回ハイ信号334、344が継続しているのかの判断ができなくなる。それに対し、非信号域331、341の長さを一周期の半分以上とすれば、信号域332、342の同一信号と区別することができる。
【0049】
このように、本開示では、第1信号330及び第2信号340を共にハイ信号とロー信号のみからなる2値信号としている。その為、第1コントロールユニット100のマイコン128でも、第2コントロールユニット200のマイコンでも、汎用ポートを利用することができる。即ち、専用ポートでも汎用ポートでもいずれでも使用することが可能となる。
【0050】
なお、時間の継続は間欠的にハイ信号であるのかロー信号であるのかを検知して行っている。マイコン128の処理は定期的にカウントするタイマを用いており、1カウントは2マイクロ秒から数十マイクロ秒となることが多い。所定周期はこのタイマを基に作成する。
図8に示すように、タイマが2マイクロ秒で2バイトを1カウントするとして、65536カウントする時間をA(131.072ミリ秒)とする。所定周期を例えば、2ミリ秒の周期とする場合には、2ミリ秒周期の処理は時間Aが経過する毎に行う。
【0051】
他に、5ミリ秒周期の処理や、10ミリ秒周期の処理がある場合、各処理の実行可能タイミングが来たらその処理を実行することになる。ただ、処理の実行時に別の処理を実行していたら、その処理が終わるのを待ってから実行する。また、割込み処理を実行する時は、現在実施中の処理を中断して割込み処理を実施する。そして、割込み処理が終了したら、中断した処理を途中から再開する。その為、次の2ミリ秒周期の処理の実行可能タイミングが来るまでに他の処理が終わらない場合も生じる。2ミリ秒周期の処理が実行できない場合には、処理抜けBが発生することとなる。
【0052】
上述した第1信号330の信号域332を構成する、第1回ロー信号333、第1回ハイ信号334及び第2回ロー信号335の継続長さはこの間欠的に検知する周期の倍数となっている。同様に、第2信号340の信号域342の第1回ロー信号343、第1回ハイ信号344及び第2回ロー信号345の継続長さもこの間欠的に検知する周期の倍数である。所定周期が2ミリ秒である場合には、最小の継続長さは4ミリ秒となる。ただ、実用的には、2倍ではなく10ミリ秒以上としている。これは、ハイ信号からロー信号への切替わりタイミング、及び、ロー信号からハイ信号への切替わりタイミングで2ミリ秒のバラつきが生じるので、最大4ミリ秒のバラつきが生じるためである。この4ミリ秒のバラつきに、3回連続してカウントできるように6ミリ秒を加え、本例では最小の継続長さに10ミリ秒を採用している。
【0053】
図9に示すように、2ミリ秒周期で間欠的にハイ信号とロー信号を検知している際に、チャタリングにより誤って異なる信号を検知する可能性がある。例えば、本来ロー信号を検知する第1回ロー信号333のタイミングで、ハイ信号のノイズ336を検知する可能性がある。このノイズ336を除去するため、検知したハイ信号かロー信号が複数回継続して初めて、ハイ信号からロー信号若しくはロー信号からハイ信号へ変化したと判断する。
図9の例では、第1回ロー信号333から第1回ハイ信号334へ変化したとするのは、2ミリ秒周期で3回以上ハイ信号の検知が継続してからとしている。
【0054】
但し、
図9は第1回ロー信号333から第1回ハイ信号334へ変化時を示しているが、本例はこの場合に限られるものではない。例えば、第1回ハイ信号334から第2回ロー信号335への変化を検知する場合には、第2回ロー信号335の継続時間は10ミリ秒であるので、2ミリ秒周期では5回の検知となる。この場合には、3回以上のロー信号の検知を待つのではなく、2回の検知で第2回ロー信号335と判断することも可能である。
【0055】
そして、本例では、
図12に示すように、第1信号330と第2信号340とを複数回検知することで、第1信号330及び第2信号340を検知したか否かを確定する。即ち、第1回周期Xで信号域332を検知すると第1回判定xとし、第2回周期Yで信号域332を検知すると第2回判定yとし、第3回周期Zで信号域332を検知すると第3回判定zとする。この第3回判定zが検知できたことで、第1信号330が検知できたことを確定する。
図12では、第1信号330のみ示しているが、第2信号340も同様である。これは、第1信号330及び第2信号340は、共に周期性を有する信号であるので、この周期性を利用して、複数回の検知で検出を確定させ、検出をより明確にしているのである。尤も、3回は一例であり、2回等他の回数としても良い。必要に応じて、1回での判定とすることも可能である。
【0056】
なお、
図7の例では、第1信号330の信号域332を、第1回ロー信号333、第1回ハイ信号334及び第2回ロー信号335の合計3信号で形成したが、信号の合計数を増やしても良い。例えば、第1回ロー信号333、第1回ハイ信号334、第2回ロー信号335に第2回ハイ信号と第3回ロー信号を加えた合計5信号でパターンを形成するようにしても良い。同様に、第2信号340の信号域342も合計5信号でパターンを形成しても良い。
【0057】
但し、信号域332、342の信号数を増やしてパターンを複雑とするのは、プログラムの複雑化を招くこととなる。また、メモリの容量も圧迫することになる。その為、信号域332、342のパターンは、信号数の合計が7以下の奇数であるパターンとするのが妥当である。
【0058】
以上のようなパターンを有する第1信号330及び第2信号340を発信側コントロールユニット(例えば、第2コントロールユニット200)が発信する。受信側コントロールユニット(例えば、第1コントロールユニット100)は、予め定めたパターンの第1信号330及び第2信号340が受信できているか否かを判断する。非信号域331、341を超えた長さのハイ信号が継続すれば、断線か天絡が想定される。非信号域331、341がロー信号で形成される場合には、非信号域331、341を超えるロー信号が検知されると地絡が想定される。
【0059】
また、第1信号330の信号域332のパターンとも、第2信号340の信号域342のパターンとも異なる信号が検知されると、チャタリングが想定される。特に、ハイ信号とロー信号の組み合わせの回数が、信号域332、342の所定回数と異なる場合にはチャタリングが疑われる。また、本開示では、第1信号330の信号域332のパターンと第2信号340の信号域342のパターンとは異ならせているので、これらの双方とも異なる信号が検知されるのは、チャタリングである可能性が高い。
【0060】
なお、本例では受信側コントロールユニットの判定ロジックは、第1信号であるか否かの判定する判定ロジックと第2信号であるか否かの判定を行う判定ロジックとで共用している。仮に、第1信号であるか否かを判定する判定ロジックと、第2信号であるか否かを判定する判定ロジックとを別の判定ロジックとすれば、プログラムも多くなり、メモリの容量も圧迫する。
【0061】
本例では、第1信号330のパターンと第2信号340のパターンは異なっているが、第1信号330と第2信号340は、共に信号域332、342と非信号域331、341で構成されている。また、本例では第1信号330の信号域332も第2信号340の信号域342も共に、第1回ロー信号333、343と、第1回ハイ信号334、344及び第2回ロー信号335、345の3信号からなるパターンである。即ち、第1信号330と第2信号340とで、ハイ信号とロー信号の合計数を同じにしている。そして、判定時間のみ相違するようにしている。その為、
図11に示すように、判定ロジック350は第1信号330と第2信号340で共通とすることができる。そして、判定時間のみ入れ替えることにより、プログラムの簡略化を図ることができる。
【0062】
プログラムの簡略化は、まず、第1信号330と第2信号340とが、共に信号域332、342と非信号域331、341とを一つずつ持つことで共通化している。そして、第1信号330の信号域332でのロー信号の数及びハイ信号の合計数を、第2信号340の信号域342でのロー信号とハイ信号の合計数と共通化して同じにしている。更に、第1信号330と第2信号340とで、非信号域331、341のロー信号若しくはハイ信号を共通化して同じにして、プログラム簡略化を図っている。
【0063】
ただ、第1信号330の信号域332と第2信号340の信号域342とでは、第1回ロー信号333、343と、第1回ハイ信号334、344及び第2回ロー信号335、345で、時間が異なっている。その為、第1信号330用の時間設定351で時間の確認を行い、かつ、第2信号340用の時間設定352でも時間の確認を行っている。第1信号330の時間設定351は、
図7の例では30ミリ秒、30ミリ秒、10ミリ秒である。
図7の例の第2信号340の時間設定352は、20ミリ秒、50ミリ秒、20ミリ秒である。
【0064】
勿論、30ミリ秒、30ミリ秒、10ミリ秒の第1信号330の時間設定351や、第2信号340の時間設定352の20ミリ秒、50ミリ秒、20ミリ秒は一例である。時間の長さは適宜設定することが可能である。重要な点は、第1信号330と第2信号340とでパターンが異なっていれば良い。
【0065】
本例のように、第1信号330の信号域332のパターンと第2信号340の信号域342のハイ信号とロー信号の信号の合計数を同じにしつつ、継続時間を変えることでパターンを異ならせることは、判定ロジック350の共通化を図る上で望ましい。ただ、必要に応じ、信号の合計数を変えることは可能である。即ち、第1信号330の信号域332のロー信号及びハイ信号の合計数と、第2信号340の信号域342のロー信号及びハイ信号の合計数とを異ならすようにすることは可能である。例えば、第1信号330の信号域332を合計3信号のパターンとし、第2信号340の信号域342を合計5信号のパターンとしても良い。なお、第1信号330の信号域332のロー信号及びハイ信号の合計数は3以上7以下の奇数が望ましい。同様に、第2信号340の信号域342のロー信号及びハイ信号の合計数も3以上7以下の奇数が望ましい。
【0066】
なお、第1信号330の信号域332と第2信号340の信号域342とで合計数を変えてパターンを異ならせる場合は、2種類の信号パターンを、まず第1信号330の信号パターンであるか否かで判断する。次いで、第2信号の信号パターンであるか否かを判断する。このように、2種類の信号パターンを独立して判断することで判定することができる。
【0067】
なお、本開示では、第1信号330の信号域332のパターンと第2信号340の信号域342のパターンを異ならせているので、第1信号330と第2信号340を利用して、ワイヤハーネス300の故障検出のみでなく、他の信号として利用することも可能である。例えば、
図2の例では、第2コントロールユニット200の診断機能124は、定期的に回転電機210の診断を行い、診断結果を診断信号126として第1コントロールユニット100に送信していた。ワイヤハーネス故障検出に、更にこの診断信号126を兼ねることも可能である。この例では、第2コントロールユニット200が発信側コントロールユニットとなり、第1コントロールユニット100が受信側コントロールユニットとなる。そして、この例では例えば、第1信号330が回転電機210に異常が無いこと(第1状態)を示す信号とすることができる。その場合には、第2信号340は回転電機210に異常があること(第2状態)を示す信号となる。
【0068】
なお、第1信号330の信号域332のパターンも、第2信号340の信号域342のパターンも所定時間検知できない場合や、受信側コントロールユニットが受信した信号に変化が無い場合には、ハイ信号とロー信号のいずれか長い時間を用いて、天絡か地絡かを判断することも可能である。例えば、
図10に示すように、非信号域331、341がハイ信号であり、従って1周期の半分以上がハイ信号であるはずであるのに、一周期の300ミリ秒の内、120ミリ秒、60ミリ秒、20ミリ秒の合計200ミリ秒がロー信号である場合には、地絡であると判断しても良い。このように、1周期の中に非信号域331、341が見つからない場合には、非信号域331、341とは反対信号が入る故障がワイヤハーネス300に生じたと判断できる。
【0069】
また、上述の例では、第1コントロールユニット100がエンジン110の制御を行い、第2コントロールユニット200が回転電機210の制御を行っていた。しかし、コントロールユニットの用途はこれらに限定されるものではない。例えば、メータ411を制御するコントロールユニットに用いることも可能である。この場合には、メータ411を制御するコントロールユニットが第1コントロールユニット100若しくは第2コントロールユニット200の一方となり、エンジン110を制御するコントロールユニットが他方となる。
【0070】
また、上述の例はワイヤハーネス300をスクータ400に用いたが、モータサイクルや4輪バギー、またはスノーモービル等の鞍乗り車両に用いることも、勿論可能である。かつ、自動車にも使用可能である。
【0071】
なお、この明細書には、以下に列挙する複数の技術的思想と、それらの複数の組み合わせが開示されている。
【0072】
(技術的思想1)
第1電気コネクタと、この第1電気コネクタと第1センサ及び第1アクチュエータの少なくともいずれかとが電気的に接続される複数のポートを有するマイコンを備える第1コントロールユニットと、
第2電気コネクタと、この第2電気コネクタと第2センサ及び第2アクチュエータの少なくともいずれかとが電気的に接続される複数のポートを有するマイコンを備える第2コントロールユニットと、
一端の第1ワイヤハーネスコネクタが前記第1電気コネクタに接続され、他端の第2ワイヤハーネスコネクタが前記第2電気コネクタに接続され、前記第1コントロールユニットと前記第2コントロールユニットとの間で電気信号を伝達する複数の電線を備えるワイヤハーネスとを備え、
前記第1コントロールユニット及び前記第2コントロールユニットのいずれか一方が電気信号の発信側である発信側コントロールユニットとなり、他方が電気信号の受信側である受信側コントロールユニットとなり、
前記発信側コントロールユニットは、ハイ信号とロー信号との2値信号であって、一周期の半分以上がハイ信号とロー信号のいずれかが連続する非信号域で、残りがハイ信号とロー信号の組み合わせからなる信号域となる送信信号であって、前記信号域が第1パターン送信信号である第1信号と、前記信号域がこの第1パターン送信信号とはパターンが異なる第2パターン送信信号である第2信号を送信し、
前記第1パターン送信信号及び前記第2パターン送信信号は、いずれも非信号域とは異なるハイ信号とロー信号のいずれかの信号である反対信号から始まると共にこの反対信号で終わるようにこの反対信号を2回以上含み、いずれも前記反対信号の間に前記非信号域のハイ信号とロー信号のいずれかと同一の信号である同一信号を含み、
前記第1信号の一周期の長さは、前記第2信号の一周期の長さと同じであり、
前記受信側コントロールユニットは、ハイ信号とロー信号のいずれかを前記非信号域の期間より長い期間連続して受信した場合、及び、受信したハイ信号とロー信号からなるパターンが前記第1パターン送信信号及び前記第2パターン送信信号のパターンの双方と異なる時、前記ワイヤハーネスの異常を判断する
ことを特徴とするワイヤハーネス故障検出装置。
【0073】
(技術的思想2)
前記第1パターン送信信号の前記反対信号を送信する回数及び前記同一信号を送信する回数は、前記第2パターン送信信号の前記反対信号を送信する回数及び前記同一信号を送信する回数と同じである
ことを特徴とする技術的思想1に記載のワイヤハーネス故障検出装置。
【0074】
(技術的思想3)
前記第1パターン送信信号及び前記第2パターン送信信号は、前記反対信号を送信する回数が4回以下であり、前記同一信号を送信する回数が3回以下である合計7回以下のパターンである
ことを特徴とする技術的思想1若しくは2に記載のワイヤハーネス故障検出装置。
【0075】
(技術的思想4)
前記受信側コントロールユニットは、所定周期で間欠的にハイ信号とロー信号を検知し、前記第1パターン送信信号及び前記第2パターン送信信号を構成するハイ信号継続期間とロー信号継続期間を前記所定周期の複数倍とする
ことを特徴とする技術的思想1ないし3のいずれかに記載のワイヤハーネス故障検出装置。
【0076】
(技術的思想5)
前記第1パターン送信信号及び前記第2パターン送信信号を構成するハイ信号継続期間とロー信号継続期間のうち最も短い継続期間を前記所定周期の5倍以上とし、前記受信側コントロールユニットは、検知した信号が2回以上連続した際に、ハイ信号及びロー信号のいずれかからなるパターンを受信したと判断する
ことを特徴とする技術的思想4に記載のワイヤハーネス故障検出装置。
【0077】
(技術的思想6)
前記第1信号の前記信号域の長さと、前記第2信号の前記信号域の長さとは異なる
ことを特徴とする技術的思想1ないし5のいずれかに記載のワイヤハーネス故障検出装置。
【0078】
(技術的思想7)
前記第1コントロールユニット及び前記第2コントロールユニットの前記マイコンは、アナログ信号の入力が可能な専用ポートと2値信号入力の汎用ポートとを有し、
前記第1ワイヤハーネスコネクタ及び前記第2ワイヤハーネスコネクタは、専用ポート及び汎用ポートのいずれにも電気的に接続可能である
ことを特徴とする技術的思想1ないし6のいずれかに記載のワイヤハーネス故障検出装置。
【0079】
(技術的思想8)
前記第1パターン送信信号は、前記発信側コントロールユニットと電気接続する前記第1センサ、前記第1アクチュエータ、前記第2センサ及び前記第2アクチュエータのいずれかの第1状態を示し、
前記第2パターン送信信号は、前記発信側コントロールユニットと電気接続する前記第1センサ、前記第1アクチュエータ、前記第2センサ及び前記第2アクチュエータのいずれかの第2状態を示す
ことを特徴とする技術的思想1ないし7のいずれかに記載のワイヤハーネス故障検出装置。
【符号の説明】
【0080】
100 第1コントロールユニット
110 エンジン
200 第2コントロールユニット
210 回転電機
300 ワイヤハーネス
330 第1信号
331 非信号域
332 信号域
340 第2信号
341 非信号域
342 信号域