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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064285
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】ドアホールシール
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
B60J5/00 501E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172758
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】西 彩花
(57)【要約】
【課題】水の車内側への浸入を未然に防止することができると共に、ワイヤハーネスの抜き差し時にスリットからの破れが生じにくいドアホールシールを実現する。
【解決手段】車両のドアのドアインナーパネル(D1)に取り付けられるドアホールシール(1)であって、ドアホール(D2)を車内側から塞ぐ第1シート(10)と、第1シート(10)の車外側に接着する第2シート(20)とを備え、第1シート(10)は、第2シート(20)に形成された第2スリット(21)よりも鉛直上側の位置に、少なくとも1つの第1スリット(11)により囲まれた第1領域(12)を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアのドアインナーパネルに形成されたドアホールに取り付けられるドアホールシールであって、前記ドアホールを車内側から塞ぐ第1シートと、前記第1シートの車外側に接着する第2シートとを備え、前記第1シートは、前記第2シートに形成された第2スリットよりも鉛直上側の位置に、少なくとも1つの第1スリットにより囲まれた第1領域を有するドアホールシール。
【請求項2】
前記第1シートに形成されている前記第1スリットが2つ以上である、請求項1に記載のドアホールシール。
【請求項3】
前記第1領域は、平面形状が矩形状の領域であり、前記第1スリットの1つは、少なくとも、矩形状の前記第1領域の下辺と、両側辺のそれぞれにおける一部とに亘って連続して形成されている、請求項1に記載のドアホールシール。
【請求項4】
前記第1領域は、車外側に接着部を有しており、前記接着部により前記第2シートと接着している、請求項1から3のいずれか1項に記載のドアホールシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアホールシールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のドアのドアインナーパネルに形成されたサービスホールを塞ぐために、ドアホールシールが使用されている。ドアホールシールには、車外側から車内側にワイヤハーネスを通すためのスリットが形成される場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、ワイヤハーネスを抜き出すための、第一スリットを有するスリット機構を設けたドアホールシールが開示されている。第一スリットには、端部にスリット巾よりも直径の大きい丸穴形状の部位が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-282127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなスリットにワイヤハーネスを抜き差しする場合、当該スリットを形成するドアホールシールの周縁部に力がかかり、スリットの終端部を起点としてドアホールシールが破れてしまう恐れがある。特許文献1に記載の第一スリットは、端部に丸穴形状の部位を設けることでドアホールシールが破れにくくなっているが、改善の余地があった。
【0006】
本発明の一態様は、従来よりもスリットからの破れが生じにくいドアホールシールを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の態様1に係るドアホールシールは、車両のドアのドアインナーパネルに形成されたドアホールに取り付けられるドアホールシールであって、前記ドアホールを車内側から塞ぐ第1シートと、前記第1シートの車外側に接着する第2シートとを備え、前記第1シートは、前記第2シートに形成された第2スリットよりも鉛直上側の位置に、少なくとも1つの第1スリットにより囲まれた第1領域を有する。
【0008】
ドアホールシールにおいては、例えばワイヤハーネスを、車外側から第2スリットおよび第1スリットを通して車内側まで引き込むことが可能である。ここで、車外側の第2スリットは、車外側からの浸水防止の観点から第1スリットよりも鉛直下側に位置する。そのためワイヤハーネスは、第1スリットを、車内側に向かって上向きに通されることになる。このようなワイヤハーネスを第1スリットに抜き差しする場合には、第1シートにおける第1スリットの周縁に対して下向きに力がかかりやすくなる。そのため、従来の直線的なスリットでは、スリットの終端部を起点に第1シートが破れてしまうと、その破れが際限なく広がってしまう場合もあった。
【0009】
一方で前記構成によれば、第1シートには、第1領域を囲むように第1スリットが形成されている。第1領域が連続した1つの第1スリットにより囲まれている場合、第1スリットの周縁部において第1シートの破れの起点が生じないため、第1シートが破れにくい。また、第1スリットが非連続的に第1領域を囲む場合には、第1シートにおける第1スリットの端部間の部分が破れやすいことから、第1スリットに沿って第1領域を囲むように破れていきやすい。そのため、第1シートが破れるにしても第1領域の範囲に留まり、意図しない範囲まで第1シートの破れが広がることを防止できる。
【0010】
本発明の態様2に係るドアホールシールは、前記態様1において、前記第1シートに形成されている前記第1スリットが2つ以上であってもよい。
【0011】
前記構成によれば、第1領域は、複数の第1スリットにより囲まれて形成されている。この場合、第1シートにおいて、第1領域とその他の領域とは、複数の第1スリットの間の部分において接続されている。そのため、第1領域がドアホールシールから外れてしまうことを防止できる。
【0012】
本発明の態様3に係るドアホールシールは、前記態様1または2において、前記第1領域は、平面形状が矩形状の領域であり、前記第1スリットの1つは、少なくとも、矩形状の前記第1領域の下辺と、両側辺のそれぞれにおける一部とに亘って連続して形成されていてもよい。
【0013】
第1スリットよりも鉛直下側に位置する第2スリットを通ったワイヤハーネスは通常、第1領域の下辺に形成される第1スリットを通って車内側まで引き込まれる。第1スリットの1つが第1領域の下辺と両側辺のそれぞれにおける一部とに亘って連続して形成されていれば、ワイヤハーネスを第1スリットに、車外側の下方から車内側に向けて通すことが容易となる。
【0014】
本発明の態様4に係るドアホールシールは、前記態様1から3のいずれかにおいて、前記第1領域は、車外側に接着部を有しており、前記接着部により前記第2シートと接着していてもよい。
【0015】
前記構成によれば、第1領域を、第1シートのその他の領域とは独立して、第2シートに接着できる。そのため、第1領域がドアホールシールから外れてしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、従来よりもスリットからの破れが生じにくいドアホールシールを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係るドアホールシールが取り付けられたドアインナーパネルの車内側の構造を示す模式図である。
図2図1において符号Rにより示す範囲の拡大図である。
図3図2に示す第1スリットに、ワイヤハーネスが通った状態を示す図である。
図4図3に示す、第1スリットにワイヤハーネスが通った状態において、第1スリットの周縁部にワイヤハーネスから力がかかった状態を示す図である。
図5】一実施形態の変形例に係るドアホールシールの、第1スリット周辺を示す拡大図である。
図6図2に示す第1スリット周辺を示す拡大図において、第1領域が有する接着部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<ドアホールシールの概要および取り付け例>
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るドアホールシール1の概要および取り付け例について説明する。図1の例において、紙面向かって上側が鉛直上側、下側が鉛直下側、右側がフロント側(車両の前側)、左側がリア側(車両の後側)、手前側が車内側(車両の内側)、奥側が車外側(車両の外側)に、それぞれ対応している。これは、図2図3の符号301により示す図、図4から図6についても同様である。また、図1は、フロントドアDを車内側から見た図である。ただし、これはドアホールシール1が車両に取り付けられる方向を制限するものではなく、ドアホールシール1は、車両に対していかなる方向となるように取り付けられてもよい。
【0019】
フロントドアDは、車両のドアの一例であり、車両のフロントドア用開口部(図示せず)に開閉可能に取り付けられている。フロントドアDは、ドアアウターパネル(図示せず)およびドアインナーパネルD1を備え、ドアインナーパネルD1にはドアホールD2が形成されている。ドアホールD2は、例えばフロントドアDの内部に配置された各種部品を組付けするために、作業者が手または工具等を入れるための開口部である。なお、図1に示すフロントドアDの形成態様はあくまで一例である。
【0020】
ドアインナーパネルD1の車内側の面には、ドアホールシール1が取り付けられている。ドアホールシール1は、ドアホールD2を車内側から塞ぐことで、フロントドアDの内部に浸入した雨水等が、ドアホールD2から車内に浸入するのを防止する。また、ドアホールシール1は、ドアホールD2を塞ぐことで、フロントドアDの防音性を向上する。
【0021】
図1に示すように、ドアホールシール1は、第1シート10と第2シート20とを備えている。第2シート20は、第1シート10の車外側の面に接着している。ドアホールシール1は、ドアインナーパネルD1の車内側の面に接着することで、ドアホールD2を塞ぐように取り付けられている。
【0022】
ドアインナーパネルD1には、ドアホールシール1とドアインナーパネルD1との接着部分としてブチルラインBが形成されている。第2シート20は、車内外方向から見て第1シート10の外形を内包するように、第1シート10の車外側の面と接着している。ドアホールシール1は、第2シート20の車外側の面における、第1シート10と重なる部分よりも外側の周縁部分により、ブチルラインBに接着する。ただし、ドアホールシール1とドアインナーパネルD1との接着態様はブチルラインBによるものに限られず、いかなる態様により接着、または組付けられていてもよい。なお、本明細書において「接着」は、「粘着」、「圧着」および「溶着」等の概念を含む。
【0023】
なお、上述したドアホールシール1の取り付け態様はあくまで一例である。例えば、ドアホールシール1が取り付けられる車両のドアは図1の例に示すフロントドアDに限定されず、車両のドアであればどのような種類のドアであってもよい。したがって、ドアホールシール1は、例えばリアドアまたはスライドドアに取り付けられてもよい。また、ドアホールシール1の取り付け対象となる車両についても、ハードトップ車およびコンバーチブル車をはじめとする任意の種類の車両が取り付け対象となる。
【0024】
<ドアホールシールの材料>
ドアホールシール1は、防水性および防音性を備えていることが好ましい。ドアホールシール1の防水性および防音性は主に、第1シート10および第2シート20の材料により調整できる。
【0025】
第1シート10の材料の例としては、エラストマーおよびエラストマーを含む複合体が挙げられる。エラストマーの例としては、エチレンプロピレンジエン重合ゴム(EPDM)等のゴムおよび熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Elastomer:TPE)が挙げられる。TPEの例としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Olefinic Elastomer:TPO)が挙げられる。
【0026】
また、第1シート10は、上述のようなエラストマーまたはエラストマーを含む複合体を発泡させた発泡弾性体であることが好ましい。このような構成によれば、第1シート10は、高い防音性および防水性を発揮できる。
【0027】
第2シート20の材料の例としては、合成樹脂が挙げられる。合成樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の例としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)およびEVA(エチレンビニルアセテート)が挙げられる。第2シート20がこのような材料で形成されていれば、ドアホールシール1は、高い防水性を発揮できる。
【0028】
ドアホールシール1において、第2シート20は、第1シート10の車内側の略全面を覆うように、大きさおよび第1シート10と接着する位置が設定されていることが好ましい。
【0029】
ドアホールシール1は、第2シート20の車内側の面と、第1シート10の車外側の面とを接着することで製造できる。第1シート10および第2シート20はそれぞれ、公知の方法により製造してよい。
【0030】
<ドアホールシールの構造>
図2から図6を参照して、ドアホールシール1の構造について説明する。図3について、符号301により示すのは、ドアホールシール1にワイヤハーネスWを通した状態を示す模式図であり、符号302により示すのは、符号301により示す図のA-A線矢視断面図である。図3の符号302により示す図は、紙面向かって上側が鉛直上側、下側が鉛直下側、右側が車内側、左側が車外側、手前側がリア側、奥側がフロント側に、それぞれ対応している。
【0031】
図2および図3に示すように、第1シート10には、ワイヤハーネスWが挿通可能な第1スリット11が形成されている。また、第2シート20には、ワイヤハーネスWが挿通可能な第2スリット21が形成されている。ワイヤハーネスWは、ケーブルとも称され、例えば、フロントドアDのドア開閉ハンドル(不図示)と、ドアラッチ(不図示)とを接続する部材であってもよい。また、ワイヤハーネスWは、フロントドアDの内部の、スピーカまたはウインドレギュレータ等の装置(不図示)に電気を供給する部材であってもよい。
【0032】
第1シート10には、第1スリット11により囲まれた第1領域12が形成されている。言い換えれば、第1スリット11は、第1領域12を囲むように形成された、第1シート10を貫通する切込みである。第1シート10において、第1領域12以外の領域を第2領域13と称する。
【0033】
本実施形態において、第1領域12は、1つの第1スリット11により連続して囲まれている。図2に示すように、第1スリット11は、第1領域12の外周を連続して囲んでおり、スリット終端部が存在しない。
【0034】
ここで、第1シート10は、上述のように発泡弾性体により形成されることが好ましい。このような第1シート10は外力を受けると、比較的破れやすいという問題がある。そのため、第1スリット11が従来のように直線状のスリットであった場合、第1シート10における当該直線状のスリットの終端部を起点として第1シート10が破れてしまうと、その破れが際限なく広がってしまう場合があった。
【0035】
第1スリット11が、第1領域12を連続して囲むように形成されていれば、第1スリット11の周縁部にはスリットの終端部が存在しないため、第1シート10の破れの起点が生じにくい。そのため、ワイヤハーネスWから、第1シート10における第1スリット11の周縁部に力がかかっても、第1シート10が破れにくい。
【0036】
なお、このようなドアホールシール1は、フロントドアDの組み立て時およびメンテナンス時等に破損する可能性が低い。そのため、ドアホールシール1の交換頻度および廃棄量を低減できる。このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」等の達成にも貢献するものである。
【0037】
また、図2に示すように、第2シート20には、車両の前後方向に伸びるスリットである第2スリット21が形成されている。なお、図2は車内側から第1シート10の正面視を示しているため、第1シート10によって隠れて見えない第2スリット21を便宜上、破線で示している。第2スリット21は、第2シート20を貫通する一連の切込みとして形成されている。また、第2スリット21は、車両の前後方向以外の方向に伸びるスリットであってもよい。
【0038】
ここで、第1領域12を囲む第1スリット11は、第2シート20に形成された第2スリット21よりも鉛直上側の位置に形成される。ドアホールシール1において、第2シート20は車外側に位置する。そのため、仮にフロントドアD内に浸入した水滴等が第2スリット21を通過しても、さらに第1スリット11を通って車内側まで浸入することを防止できる。
【0039】
図3で符号302により図示するように、第1スリット11および第2スリット21を通るワイヤハーネスWは、第1スリット11を車内側に向かって上向きに挿通されることになる。そのため、ワイヤハーネスWを抜き差しする場合、図4に示すように、第1スリット11の周縁部に対して下向きに力がかかりやすくなる。本実施形態の第1スリット11によれば、ワイヤハーネスWから第1シート10に力がかかっても、第1スリット11が広い範囲で開口していくことで、破れの起点が生じにくい。
【0040】
図4では、2点鎖線により、ワイヤハーネスWからかかる力により、第1シート10における第1スリット11の周縁部が伸びる部分の一例を示す。図4に示すように、本実施形態に係る第1スリット11によれば、第1シート10における第1スリット11の周縁部を長く確保できるため、第1シート10が伸びる余地が大きい。第1シート10が伸びやすい構造である程、ワイヤハーネスWからかかる力を吸収しやすいため、第1シート10が破れることを防止できる。
【0041】
また、図5で符号501により例示するように、第1シート10には、第1領域12を非連続的に囲む、1つの第1スリット11aが形成されていてもよい。この場合、第1スリット11aの終端部同士の間には、第1領域12と第2領域13とを接続する接続部14が形成される。接続部14によれば、第1シート10において、第1領域12が第2領域13から外れてしまうことを防止できる。そのため、例えばドアホールシール1の製造途中において、第1領域12が第1シート10から外れてしまい、例えば、戻すために余計な工数が発生することを防止できる。
【0042】
接続部14において、第1スリット11aの終端部同士の間の長さは、例えば1cm以下であってよく、0.5cm以下であることが好ましく、0.25cm以下であることがより好ましい。第1スリット11aの終端部同士の間がこのような長さであれば、第1スリット11aは、第1領域12を囲んでいるといえる。
【0043】
別の言い方をすれば、第1スリット11aの長さは、車内外方向から見た第1領域12の外周全長に対して90%以上の長さであってよく、95%以上の長さであることが好ましく、98%以上の長さであることがより好ましい。このような構成であれば、第1スリット11aは、第1領域12を囲んでいるといえる。
【0044】
接続部14がこのような大きさであれば、第1スリット11aの一方の終端部が、ワイヤハーネスWからかかる力によって破れの起点となっても、当該破れは、第1スリット11aの他方の終端部に届いて、それ以上は破れない。そのため、第1シート10の破れは接続部14のみに留まり、第2領域13の範囲まで第1シート10の破れが広がることを防止できる。
【0045】
また、第1シート10に形成されている第1スリット11は2つ以上であってもよい。本明細書では、第1シート10が複数の第1スリットを有する場合の説明において、単に第1スリット11と称する場合は、複数の第1スリットの総称を意図する。
【0046】
図5では、第1シート10に、第1スリット11b、第1スリット11cおよび第1スリット11dの、3つの第1スリット11が形成されている例を符号502により図示している。この場合、第1スリット11bと第1スリット11cとの間、第1スリット11cと第1スリット11dとの間、第1スリット11dと第1スリット11bとの間に、それぞれ接続部14が形成される。各接続部14における、第1スリット11終端部同士の間の長さは、上述の第1スリット11aの場合と同様であってよい。
【0047】
また、3つの第1スリット11b、第1スリット11cおよび第1スリット11dは、それぞれの長さの合計が、第1領域12の外周全長に対して、90%以上の長さであってよく、95%以上の長さであることが好ましく、98%以上の長さであることがより好ましい。複数の第1スリット11の長さの合計が、第1領域12の外周全長に対してこのような長さであれば、これらの第1スリット11は第1領域12を囲んでいるといえる。
【0048】
第1領域12が、複数の第1スリット11により囲まれて形成される構成によれば、第1シート10において、第1領域12と第2領域13とは、複数の接続部14において接続される。これにより、第1領域12が第2領域13から外れてしまうことを防止できる。また、第1シート10に接続部14が複数形成されていれば、いずれかの接続部14がワイヤハーネスWからの力によって破れても、他の接続部14によって第1領域12と第2領域13との接続を維持できる。
【0049】
第1領域12は、車内外方向から見た平面形状が矩形状の領域であることが好ましい。第1領域12の前後方向の長さは、第2スリット21の前後方向の長さと同程度であることが好ましい。この場合、ワイヤハーネスWを、第1スリット11と第2スリット21との両方に、スムーズに挿通しやすい。
【0050】
このとき、第1領域12が矩形状であれば、第1領域12の大きさを、第2スリット21の長さに応じて調整しやすい。例えば、第1領域12の前後方向の長さは第2スリット21の前後方向の長さと同程度にし、上下方向の長さを短くできる。このように、第1領域12が前後方向に長い長方形状であれば、ワイヤハーネスWの良好な挿通性を維持しながら、第1シート10に占める第1領域12の面積を、適切な大きさに調整できる。
【0051】
また、第1領域12が矩形状である場合、第1領域12の四隅の少なくとも1つは、丸みを帯びた形状であってもよい。言い換えれば、第1領域12の四隅の少なくとも1つは、角部が屈曲ではなく湾曲して、曲線状に形成されていてもよい。このような構成によれば、第1領域12の四隅のうち、曲線状に形成されている部分は、第1シート10の破れの起点となりにくい。
【0052】
第1シート10の破れ防止の観点から、第1領域12の四隅のうち、第1領域12の下辺側に位置する2つの隅が曲線状に形成されていることが好ましく、四隅の全てが曲線状に形成されていることがより好ましい。
【0053】
接続部14は、矩形状の第1領域12の下辺と、両側辺のそれぞれにおける一部とを除く位置、すなわち、第1領域12の下側部分を除く位置に形成されていることが好ましい。例えば、図5で符号501により示すように、接続部14は、第1領域12の上辺に形成されていることが好ましい。
【0054】
第1シート10に複数の第1スリット11が形成されている場合には、第1スリット11の1つは、少なくとも、矩形状の第1領域12の下辺と、両側辺のそれぞれにおける一部とに亘って連続して形成されていることが好ましい。例えば、図5で符号502により示すように、3つの接続部14はそれぞれ、第1領域12の上辺と、両側辺のそれぞれ中間とに形成されていることが好ましい。
【0055】
第1スリット11よりも鉛直下側に位置する第2スリット21を通ったワイヤハーネスWは通常、第1領域12の下辺に形成される第1スリット11を通って車内側まで引き込まれる。図5に示す第1スリット11aまたは第1スリット11bのように、第1スリット11の1つが、少なくとも、第1領域12の下辺と両側辺のそれぞれにおける一部とに亘って連続して形成されていれば、接続部14がワイヤハーネスWに干渉しない。そのため、ワイヤハーネスWを第1スリット11に、車外側の下方から車内側に向けて通すことが容易となる。
【0056】
なお、第1領域12の平面形状は、矩形状に限られない。第1領域12の平面形状としては、例えば、円形状、楕円形状、三角形状および多角形状が挙げられる。
【0057】
図6に示すように、第1領域12は、車外側に接着部30を有しており、接着部30により第2シート20と接着していてもよい。このような構成によれば、第1領域12を、第2領域13とは独立して第2シート20に接着できる。そのため、第1領域12が第2シート20から外れてしまうことを防止できる。
【0058】
なお、部分的でも全周であってもよいが、接着部30は、第1領域12において、第1スリット11との間に間隙が形成されていることが好ましい。第1シート10における第1スリット11を形成する周縁部が、第2シート20と接着していなければ、第1スリット11にワイヤハーネスWをスムーズに通すことができる。
【0059】
また、接着部30は、第1領域12において、前記の間隙を確保した上で、第1スリット11に近い位置に形成されていることが好ましい。このような構成によれば、ワイヤハーネスWが第1スリット11に挿通された状態において、第1シート10における第1スリット11を形成する周縁部と、第2シート20との間に隙間が生じにくい。そのため、ワイヤハーネスWが第1スリット11に挿通された状態でも、第1領域12の防音性が低減しにくい。
【0060】
第1領域12が接着部30を有していない場合には、第1シート10は、第2領域13において第2シート20と接着する。また、第1領域12が接着部30を有する場合でも、第2領域13は、第2シート20との接着部(不図示)を有していてよい。第2領域13において、第2シート20と接着する位置は特に限定されず、ドアホールシール1が取り付けられるフロントドアDの内部構造によって、適宜設計してよい。
【0061】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 ドアホールシール
10 第1シート
11、11a、11b、11c、11d 第1スリット
12 第1領域
13 第2領域
14 接続部
20 第2シート
21 第2スリット
30 接着部
B ブチルライン
D フロントドア(ドア)
D1 ドアインナーパネル
D2 ドアホール
図1
図2
図3
図4
図5
図6