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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006429
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】湯桶
(51)【国際特許分類】
   A47K 1/04 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A47K1/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107270
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】591011650
【氏名又は名称】株式会社ASVEL
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】今井 勤
(57)【要約】
【課題】浴室の壁面においてマグネットに起因する汚れの発生を抑制することが可能な湯桶を提供する。
【解決手段】湯桶であって、底板と、底板に立設された周壁と、底板の周壁と反対の面に設けられたマグネットと、周壁の反対側からマグネットを見て、マグネットに重なる重なり部と、重なり部の外縁部からマグネットの外側に延びる延出部と、を有し、マグネットおよび底板に対して周壁の反対側から貼着された保護シートと、を備え、底板は、マグネットが取り付けられた被取付面と、被取付面の外縁部においてマグネットの側面を全周に亘り取り囲むマグネット囲み面と、周壁の反対側から底板を見てマグネット囲み面から外側に延びるとともに延出部が貼着される被貼着面と、被貼着面の外縁部において保護シートの側面を全周に亘り取り囲むシート囲み面と、を有し、被貼着面に対するシート囲み面の高さは延出部の厚みと同等またはこれよりも大きく設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯桶であって、
底板と、
前記底板の外縁の全周に亘り当該外縁上に立設された周壁と、
前記底板における前記周壁と反対の面に設けられたマグネットと、
前記周壁の反対側から前記マグネットを見る視点において、前記マグネットに重なる重なり部と、前記重なり部の外縁部の全周に亘り当該外縁部から前記マグネットの外側に延びる延出部と、を有し、前記マグネットおよび前記底板に対して前記周壁の反対側から貼着された保護シートと、を備え、
前記底板は、前記周壁の反対側に向くとともに前記マグネットが取り付けられた被取付面と、前記被取付面の外縁部から前記周壁の反対側に延びるとともに前記マグネットの側面を全周に亘り取り囲むマグネット囲み面と、前記周壁の反対側から前記底板を見る視点において前記マグネット囲み面から外側に延びるとともに前記延出部が貼着される被貼着面と、前記被貼着面の外縁部から前記周壁の反対側に延びるとともに前記保護シートの側面を全周に亘り取り囲むシート囲み面と、を有し、
前記被貼着面に対する前記シート囲み面の高さは、前記延出部の厚みと同等またはこれよりも大きく設定されている、湯桶。
【請求項2】
前記底板は、前記周壁の反対側から前記底板を見る視点において、前記シート囲み面から前記保護シートと平行に外側に延び、前記湯桶を載置するために所定の載置面に接触するように前記底板において前記周壁から最も離れた位置に設けられた接触面を有する、請求項1に記載の湯桶。
【請求項3】
前記底板は、前記周壁の反対側から前記底板を見る視点において、前記接触面の外側に設けられ、前記接触面が載置面に接触した状態において前記湯桶の傾きを抑制するために前記周壁と反対側に向く抑制面を有する、請求項2に記載の湯桶。
【請求項4】
前記抑制面は、前記底板の外縁に設けられている、請求項3に記載の湯桶。
【請求項5】
前記底板における前記抑制面と前記接触面との間には、前記抑制面および前記接触面よりも前記周壁に近い側に窪む窪み部が形成されている、請求項3に記載の湯桶。
【請求項6】
前記被取付面および前記被貼着面には、前記マグネットおよび前記保護シートに対する貼着力を上げるための表面処理が施されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の湯桶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室で使用される湯桶に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室での入浴時に使用される湯桶は、使用されないときには浴室の床面や風呂蓋の上に置かれることが一般的である。
【0003】
湯桶を濡れた床面に置くと、湯桶と床面との間にかびが発生しやすくなる、および、浴室の清掃時に湯桶が邪魔になる等の問題がある。
【0004】
このような問題を解決するため、特許文献1には、鉄板等を有する浴室の壁面に吸着可能なマグネットが設けられた底面を有する湯桶が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3220857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、マグネットが設けられた底面を有する湯桶では、マグネットに起因して、浴室の壁面に汚れが発生することがある。例えば、湯桶の底面に設けたマグネットが金属製のマグネットである場合には、高湿環境である浴室内でマグネットが錆び、その錆が浴室の壁面に移って壁面が汚れるおそれがある。また、湯桶に設けたマグネットが樹脂にフェライト磁石の粒子を練り込んだ可撓性を有するものである場合にも、浴室の壁面にフェライト磁石の粒子が移って壁面が汚れるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、浴室の壁面においてマグネットに起因する汚れの発生を抑制することが可能な湯桶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第一の発明は、湯桶であって、底板と、前記底板の外縁の全周に亘り当該外縁上に立設された周壁と、前記底板における前記周壁と反対の面に設けられたマグネットと、前記周壁の反対側から前記マグネットを見る視点において、前記マグネットに重なる重なり部と、前記重なり部の外縁部の全周に亘り当該外縁部から前記マグネットの外側に延びる延出部と、を有し、前記マグネットおよび前記底板に対して前記周壁の反対側から貼着された保護シートと、を備え、前記底板は、前記周壁の反対側に向くとともに前記マグネットが取り付けられた被取付面と、前記被取付面の外縁部から前記周壁の反対側に延びるとともに前記マグネットの側面を全周に亘り取り囲むマグネット囲み面と、前記周壁の反対側から前記底板を見る視点において前記マグネット囲み面から外側に延びるとともに前記延出部が貼着される被貼着面と、前記被貼着面の外縁部から前記周壁の反対側に延びるとともに前記保護シートの側面を全周に亘り取り囲むシート囲み面と、を有し、前記被貼着面に対する前記シート囲み面の高さは、前記延出部の厚みと同等またはこれよりも大きく設定されている、湯桶である。
【0009】
第一の発明によれば、マグネットにより浴室等の壁面に湯桶を保持することができるだけでなく、底板の被取付面に取り付けられたマグネットが保護シートにより被覆されているため、マグネットが壁面に直接接触することにより生じる壁面の汚れを抑制することができる。
【0010】
また、シート囲み面は保護シートの側面を全周に亘り取り囲み、シート囲み面の高さは保護シートの延出部の厚みと同等かこれよりも大きいことから、シート囲み面により、使用者の手や床面、壁面等が保護シートの縁に接触するのを抑制することができる。そのため、保護シートの剥がれを抑制することができ、保護シートによるマグネットの被覆状態を維持することができる。
【0011】
第二の発明は、第一の発明において、前記底板が、前記周壁の反対側から前記底板を見る視点において、前記シート囲み面から前記保護シートと平行に外側に延び、前記湯桶を載置するために所定の載置面に接触するように前記底板において前記周壁から最も離れた位置に設けられた接触面を有することが好ましい。
【0012】
第二の発明によれば、底板が接触面よりも周壁から離れて位置する部分を有しないため、接触面が載置面や壁面に接触することができる。これにより、マグネットの磁力を確実に壁面への吸着に利用することができ、安定して壁面に湯桶を保持することができる。
【0013】
第三の発明は、第二の発明において、前記周壁と反対側から前記底板を見る視点において、前記接触面の外側に設けられ、前記接触面が載置面に接触した状態において前記湯桶の傾きを抑制するために前記周壁と反対側に向く抑制面を有することが好ましい。
【0014】
第三の発明によれば、接触面が載置面に接触した状態で湯桶が傾いた際、または湯桶に傾く方向の力が作用した際に、抑制面が載置面に接触して湯桶がそれ以上傾くのを抑制することができる。
【0015】
第四の発明は、第三の発明において、前記抑制面が、前記底板の外縁に設けられていることが好ましい。
【0016】
第四の発明によれば、抑制面が底板の外縁に設けられているため、接触面が載置面に接触した状態で湯桶が傾いた際に、より傾きが小さい段階で抑制面が載置面に接触して湯桶がそれ以上傾くのを抑制することができる。
【0017】
第五の発明は、第三の発明または第四の発明において、前記底板における前記抑制面と前記接触面との間には、前記抑制面および前記接触面よりも前記周壁に近い側に窪む窪み部が形成されていることが好ましい。
【0018】
第五の発明によれば、使用者が底板の窪み部に指を掛けることができ、湯桶を保持しやすくなるため、湯桶の利便性を向上させることができる。
【0019】
第六の発明は、第一~第五の何れか一つの発明において、前記被取付面および前記被貼着面には、前記マグネットおよび前記保護シートに対する貼着力を上げるための表面処理が施されていることが好ましい。
【0020】
第六の発明によれば、被取付面のマグネットに対する貼着力および被貼着面の保護シートに対する貼着力を上げることができる。これにより、マグネットを被取付面に対して確実に貼着することができるとともに保護シートを被貼着面に確実に貼着することができるため、保護シートによるマグネットの被覆状態をより確実に維持することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、浴室の壁面においてマグネットに起因する汚れの発生を抑制することが可能な湯桶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、第1の実施形態に係る湯桶を周壁の開口側から見た斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る湯桶を周壁の反対側から見た分解斜視図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る湯桶を周壁の反対側から見た平面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線での断面図である。
図5図5は、図4の被貼着面周辺の部分拡大図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る湯桶を床面に載置した状態を示す断面図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る湯桶を壁面にマグネットで吸着させた状態を示す断面図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る湯桶(手桶)を周壁の開口側から見た斜視図である。
図9図9は、第2の実施形態に係る湯桶(手桶)の図4に相当する部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る湯桶について図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は本実施形態に係る湯桶を周壁の開口側から見た斜視図であり、図2は本実施形態に係る湯桶を周壁の反対側から見た分解斜視図である。また、図3は、本実施形態に係る湯桶を周壁の反対側から見た平面図である。
【0025】
本実施形態では、図1~3に現れている底板3の径方向のうち周壁4に設けられた孔4aに向かう方向を+x方向、その反対方向を-x方向とし、+x方向と-x方向を総称して第1の方向xとする。また、底板3の径方向のうち、第1の方向xに直交する方向を第2の方向yとし、図3の平面図の第2の方向yにおいて右方向を+y方向、左方向を-y方向とする。底板3に直交する方向を第3の方向zとし、第3の方向zにおいて底板3に対して周壁4が立設される方向を-z方向、その反対方向を+z方向とする。図3では、紙面手前方向が+z方向である。第3の方向zは、第1の方向xおよび第2の方向yのいずれにも直交する。また、底板3は、第1の方向xおよび第2の方向yのなす平面に平行であり、底板3の中心から周壁4に向かう方向を「外向き方向」とする。
【0026】
本実施形態に係る湯桶1は、円板状の底板3と、底板3の外縁3aの全周に亘り外縁3a上に立設された周壁4と、底板3における周壁4と反対の面に両面粘着シート5を介して設けられたマグネット6と、マグネット6および底板3に対して周壁4の反対側から、すなわち+z方向から貼着された保護シート7と、を備える。
【0027】
マグネット6は、例えばフェライト磁石の粒子を樹脂に練り込んだ可撓性を有するものや、金属製のものを使用することができる。本実施形態では、マグネット6は両面粘着シート5によって底板3に取り付けられているが、接着剤によって取り付けてもよい。
【0028】
保護シート7は、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)等の素材からなるフィルムであり、マグネット6および底板3に対向する面に粘着剤が設けられている。保護シート7は、周壁4の反対側から-z方向にマグネット6を見る視点において、マグネット6に重なる重なり部7aと、重なり部7aの外縁部の全周に亘り当該外縁部からマグネット6の外側に延びる延出部7bと、を有する。保護シート7は、透明であってもよく、また例えば底面3の色に応じて着色されていてもよい。
【0029】
本実施形態に係る湯桶1において、底板3と周壁4に囲まれた空間は湯を収容可能な収容部1aを構成する。また、底板3と周壁4は一体に成形されている。底板3および周壁4は、合成樹脂からなり、例えばポリプロピレンやABS樹脂を使用することができる。底板3および周壁4を構成する合成樹脂は、マグネット6および保護シート7の貼着力の観点からABS樹脂と比較してポリプロピレンが好ましい。
【0030】
周壁4は、外向き方向に広がるように底板3の外縁3aから-z方向に向かって延びている。周壁4の縁には、湯桶1をフック等に掛けるための孔4aが設けられている。
【0031】
図4図3のIV-IV線での断面図であり、図5図4の被貼着面3d周辺の部分拡大図である。図6は、湯桶を床面に載置した状態を示す断面図である。
【0032】
底板3は、周壁4の反対側すなわち+z方向に向くとともにマグネット6が取り付けられた被取付面3bと、被取付面3bの外縁部から+z方向に延びるとともにマグネット6の側面を全周に亘り取り囲むマグネット囲み面3cと、周壁4の反対側から-z方向に底板3を見る視点においてマグネット囲み面3cから外側に延びるとともに保護シート7の延出部7bが貼着される被貼着面3dと、被貼着面3dの外縁部から+z方向に延びるとともに保護シート7の側面を全周に亘り取り囲むシート囲み面3eと、を有する。
【0033】
被取付面3bには、両面粘着シート5を介してマグネット6が取り付けられている。ここで、マグネット6の側面と底板3のマグネット囲み面3cとの間には隙間が形成されているが、これらが接触していてもよい。
【0034】
被取付面3bおよび被貼着面3dには、マグネット6および保護シート7に対する貼着力を上げるための表面処理が施されている。このような表面処理は、例えばプラズマ放電加工によって行うことができる。
【0035】
被貼着面3dに対するシート囲み面3eの高さは、保護シート7の延出部7bの厚みと同等または延出部7bの厚みよりも大きく設定されている。すなわち、図5に示すシート囲み面3eの高さと保護シート7の延出部7bの厚みの差Gは、0mm以上である。差Gは、0.2mm以下が好ましい。
【0036】
保護シート7は、被取付面3bに取り付けられたマグネット6の全体を覆った状態で底板3に貼着されている。具体的に、保護シート7の重なり部7aは、マグネット6における周壁4と反対の面(+z方向に向く面)に貼着されている。さらに、保護シート7の延出部7bは、被貼着面3dに貼着されている。ここで、保護シート7の側面とシート囲み面3eとの間に隙間が形成されているが、これらが接触していてもよい。
【0037】
マグネット6の+z方向を向く面と被貼着面3dとは、同一平面上に位置することが好ましい。これにより、保護シート7を平面状に保った状態で貼着することができ、貼着された保護シート7に剥がれる方向の応力の発生を抑制できるため、保護シート7によるマグネット6の被覆状態をより確実に維持することができる。
【0038】
底板3は、周壁4の反対側から-z方向に底板3を見る視点において、シート囲み面3eから保護シート7と平行に外向き方向に延びる接触面3fを有する。接触面3fは、例えば図6に示す床面Fのような湯桶1を載置するための所定の載置面に接触するように底板3において周壁4から-z方向に最も離れた位置に設けられている。すなわち、本実施形態に係る湯桶1は、底板3には、+z方向において接触面3fよりも周壁4から離れて位置する部分を有しない。上述のようにシート囲み面3eの高さと保護シート7の延出部7bの厚みの差Gが0mm以上であることから、接触面3fは第3の方向zにおいて、保護シート7の+z方向を向く面と同一平面上にあるか、保護シート7の+z方向を向く面から+z方向に離れて配置されている。
【0039】
さらに、底板3は、周壁4の反対側から-z方向に底板3を見る視点において、接触面3fの外側に設けられ、接触面3fが床面Fに接触した状態において湯桶1の傾きを抑制するために周壁4と反対側に向く抑制面3gを有する。具体的に、抑制面3gは底板3の外縁3aに設けられている。なお、抑制面3gは底板3の外縁3aと接触面3fとの間に設けてもよい。
【0040】
本実施形態では、抑制面3gは接触面3fよりも-z方向に位置する。すなわち、図4に示す第3の方向zにおける抑制面3gと接触面3fの位置の差Hは、0mmよりも大きい。なお、接触面3fと同一平面上にあってもよく、すなわちHは0mmであってもよい。
【0041】
図7は、湯桶1を壁面Wにマグネット6で吸着させた状態を示す断面図である。抑制面3gが接触面3fと同一平面上に位置する場合、接触面3fおよび抑制面3fのいずれも壁面Wや床面Fに接触する。そのため、湯桶1を床面Fに置いた場合、抑制面3fによって湯桶1の傾きをより抑制することができる。しかし、湯桶1を壁面Wに取り付けた場合、窪み部3hと壁面Wに囲まれた空間Sが閉じた空間となり、空間Sに湿気が籠もることによって、壁面Wおよび窪み部3hにおいて汚れが発生するおそれがある。
【0042】
一方、抑制面3gが接触面3fよりも-z方向に位置する場合、図7に示すように、抑制面3gと壁面Wの間に隙間Dが生じる。隙間Dにより、窪み部3hと壁面Wに囲まれた空間Sの通気が保たれ、空間Sに湿気が籠もることによる壁面Wおよび窪み部3hにおける汚れの発生を抑制することができる。隙間Dを設ける場合、その大きさ(図4に示すH)は、0.2~0.5mmが好ましい。隙間Dを設ける場合、図7に示すように、抑制面3gを底面3の外縁3aに設けることにより、外縁3aよりも内側に設けた場合に比べて床面Fに置いた湯桶1の傾きを抑制することができる。
【0043】
底板3における抑制面3gと接触面3fとの間には、抑制面3gおよび接触面3fよりも周壁4に近い側、すなわち-z方向に窪む窪み部3hが形成されている。窪み部3hには、使用者が指を掛けることができる。
【0044】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る湯桶の一例である手桶10について説明する。
【0045】
図8は手桶10を周壁4の開口側から見た斜視図であり、図9は手桶10の第1の実施形態の図4に相当する部分の断面図である。以下の説明では、図1図7に記載の構成要素と実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0046】
手桶10では、第1の実施形態と異なり、底板3における窪み部3hおよび周壁4における孔4aが省略されている。一方、手桶10は、第1の実施形態と異なり、周壁4の開口端部(-z方向の端部)から-x方向に延びる把持部11を有する。
【0047】
また、手桶10では、抑制面3gは、接触面3fから外向き方向(図9では+x方向)に向かうに従って-z方向に向かうように傾斜する。抑制面3gは、手桶10の底板3の露出している部分において最も-z方向に位置する。
【0048】
一般に、把持部を有する手桶は、把持部のない湯桶に比べて底板の大きさが小さいことが多く、本実施形態に係る手桶10も、第1の実施形態に係る湯桶1に比べて底板3の大きさが小さい。しかし、底板3が小さい場合であっても、マグネット6による保持力を確保するには一定の大きさのマグネット6を使用する必要がある。そのため、接触面3fを底板3の外縁3aの比較的近くに設ける必要があり、第1の実施形態に係る湯桶1のように窪み部3hが設けられていない。
【0049】
(作用、効果)
上記各実施形態に係る湯桶1および手桶10によれば、マグネット6により浴室等の壁面Wに湯桶を保持することができるだけでなく、底板3の被取付面3bに取り付けられたマグネット6が保護シート7により被覆されているため、マグネット6が壁面Wに直接接触することにより生じる壁面Wの汚れを抑制することができる。
【0050】
また、シート囲み面3eは保護シート7の側面を全周に亘り取り囲み、シート囲み面3eの高さは保護シート7の延出部7bの厚みと同等かこれよりも大きいことから、シート囲み面3eにより、使用者の手や床面F、壁面W等が保護シート7の縁に接触するのを抑制することができる。そのため、保護シート7の剥がれを抑制することができ、保護シート7によるマグネット6の被覆状態を維持することができる。
【0051】
また、上記各実施形態に係る湯桶1および手桶10によれば、底板3が接触面3fよりも周壁4から離れて位置する部分を有しないため、接触面3fが床面Fや壁面Wに接触することができる。これにより、マグネット6の磁力を確実に壁面Wへの吸着に利用することができ、安定して壁面Wに湯桶1または手桶10を保持することができる。
【0052】
上記第1の実施形態に係る湯桶1によれば、接触面3fが床面F等の載置面に接触した状態で湯桶1が傾いた際に、抑制面3gが載置面に接触して湯桶1がそれ以上傾くのを抑制することができる。
【0053】
上記第1の実施形態に係る湯桶1によれば、抑制面3gが底板3の外縁3aに設けられているため、接触面3fが床面F等の載置面に接触した状態で湯桶1が傾いた際に、より傾きが小さい段階で抑制面3gが載置面に接触して湯桶1がそれ以上傾くのを抑制することができる。
【0054】
上記第1の実施形態に係る湯桶1によれば、底板3に窪み部3hが設けられている。これにより、使用者が窪み部3hに指を掛けることができ、湯桶1を保持しやすくなるため、湯桶1の利便性を向上させることができる。
【0055】
上記各実施形態に係る湯桶1および手桶10では、被取付面3bおよび被貼着面3dには、マグネット6および保護シート7に対する貼着力を上げるための表面処理が施されている。表面処理を行うことにより、被取付面3bおよび被貼着面3dへの粘着テープの密着性や接着剤の付着性を上げることができる。そのため、被取付面3bの両面粘着シート5によるマグネット6に対する貼着力および被貼着面3dの保護シート7に対する貼着力を上げることができる。これにより、マグネット6を被取付面3bに対して確実に貼着することができるとともに保護シート7を被貼着面3dに確実に貼着することができるため、保護シート7によるマグネット6の被覆状態をより確実に維持することができる。
【0056】
(変形例)
第1の実施形態に係る湯桶1の底板3において、第2の実施形態に係る手桶10のように、窪み部3hを省略してもよく、逆に、第2の実施形態に係る手桶10の底板3において、第1の実施形態に係る湯桶1のように、窪み部3hを設けてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 湯桶
3 底板
3a 外縁
3b 被取付面
3c マグネット囲み面
3d 被貼着面
3e シート囲み面
3f 接触面
3g 抑制面
3h 窪み部
4 周壁
6 マグネット
7 保護シート
7a 重なり部
7b 延出部
10 手桶(湯桶)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9