(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064290
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】セメント組成物の表面仕上方法
(51)【国際特許分類】
B28C 7/04 20060101AFI20240507BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20240507BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B28C7/04
C04B22/08 A
C04B28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172763
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】518208716
【氏名又は名称】ポゾリス ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 将希
(72)【発明者】
【氏名】阿合 延明
(72)【発明者】
【氏名】井元 晴丈
【テーマコード(参考)】
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CB32
4G112MB01
4G112PB06
4G112PC04
4G112PE01
(57)【要約】
【課題】セメント組成物表面の仕上げ作業までの待ち時間を短縮しつつも可使時間を確保することが可能なセメント組成物の表面仕上方法を提供する。
【解決手段】予め練り混ぜられたセメント組成物を、打設前に攪拌機内で撹拌する第一攪伴ステップと、前記第一攪伴ステップの後に前記撹拌機内において液状又はスラリー状をなし、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤、または、CSH系の硬化促進剤及び強度増進助剤、を添加する硬化促進剤添加ステップと、前記添加をした添加後セメント組成物を前記第一攪伴ステップの攪伴速度よりも速く撹拌する第二攪伴ステップと、前記添加後セメント組成物を打設する打設ステップと、前記打設した前記添加後セメント組成物の表面を仕上げる仕上ステップと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め練り混ぜられたセメント組成物を、打設前に攪拌機内で攪拌する第一攪拌ステップと、
前記第一攪伴ステップの後に前記撹拌機内において液状又はスラリー状をなし、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤、または、CSH系の硬化促進剤及び強度増進助剤、を添加する硬化促進剤添加ステップと、
前記添加をした添加後セメント組成物を前記第一攪伴ステップの攪伴速度よりも速く撹拌する第二攪伴ステップと、
前記添加後セメント組成物を打設する打設ステップと、
前記打設した前記添加後セメント組成物の表面を仕上げる仕上ステップと、
を有することを特徴とするセメント組成物の表面仕上方法。
【請求項2】
請求項1に記載のセメント組成物の表面仕上方法であって、
前記仕上ステップは、前記添加後セメント組成物のブリーディング量が最大となった後から凝結開始時間までの間に開始することを特徴とするセメント組成物の表面仕上方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のセメント組成物の表面仕上方法であって、
前記添加後セメント組成物の温度が9℃~10℃の時、前記硬化促進剤の前記添加による前記添加後セメント組成物の凝結開始時間は、前記添加をしない前記セメント組成物の凝結開始時間から50分短縮~3時間45分短縮となるように前記硬化促進剤を添加することを特徴とするセメント組成物の表面仕上方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のセメント組成物の表面仕上方法であって、
前記添加後セメント組成物の温度が9℃~10℃の時、前記硬化促進剤の前記添加による前記添加後セメント組成物のブリーディング量は、前記添加をしない前記セメント組成物のブリーディング量から25%~70%に減少するように前記硬化促進剤を添加することを特徴とするセメント組成物の表面仕上方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のセメント組成物の表面仕上方法であって、
前記添加後セメント組成物の温度が9℃~10℃の時、前記硬化促進剤の前記添加による前記添加後セメント組成物の発現強度は、前記添加をしない前記セメント組成物の発現強度以上であるように前記硬化促進剤を添加することを特徴とするセメント組成物の表面仕上方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のセメント組成物の表面仕上方法であって、
前記添加後セメント組成物の温度が9℃~10℃の時、前記硬化促進剤の前記添加による前記添加後セメント組成物のスランプは、前記添加をしない前記セメント組成物のスランプの95%~105%であるように前記硬化促進剤を添加することを特徴とするセメント組成物の表面仕上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打設したセメント組成物の表面を仕上げるセメント組成物の表面仕上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場でのコンクリート等のセメント組成物の打設工事においては、打ち込み終了後、ブリーディングがほぼ終了し、凝結が始まる頃まで待って、セメント組成物の表面をコテなどにより仕上げる工程が生じる。特に冬場などの低温時は、打設から凝結の開始やブリーディングの終了までの時間が長くなり、作業員の待ち時間が増えて長時間残業の要因となったり、夜間作業に伴う設備費の増加が負担となったりする。
【0003】
このため、例えば、コンクリート表面の仕上げ作業までの待ち時間を短縮するために、吹付コンクリートの急結剤などに用いられているような粉体状の凝結促進剤等の薬剤をコンクリートに添加し、凝結を促進する方法は知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から使用されている粉体状の凝結促進剤は、吹付コンクリートの急結剤として用いられるものと同種のものであることから、コンクリートに添加し、練り混ぜた後、急激に硬化が始まって流動性を失うため、コンクリートの可使時間が短いという特徴がある。このため、添加後のコンクリートの運搬や締固めに必要な時間を確保しにくく、適用条件が限定される、或いは、短時間での施工を余儀なくされるという課題があった。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、セメント組成物表面の仕上げ作業までの待ち時間を短縮しつつも可使時間を確保することが可能なセメント組成物の表面仕上方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために本発明のセメント組成物の表面仕上方法は、予め練り混ぜられたセメント組成物を、打設前に攪拌機内で撹拌する第一攪伴ステップと、
前記第一攪伴ステップの後に前記撹拌機内において液状又はスラリー状をなし、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤、または、CSH系の硬化促進剤及び強度増進助剤、を添加する硬化促進剤添加ステップと、
前記添加をした添加後セメント組成物を前記第一攪伴ステップの攪伴速度よりも速く撹拌する第二攪伴ステップと、
前記添加後セメント組成物を打設する打設ステップと、
前記打設した前記添加後セメント組成物の表面を仕上げる仕上ステップと、
を有することを特徴とする。
本発明の他の特徴については、本明細書および添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セメント組成物表面の仕上げ作業までの待ち時間を短縮しつつも可使時間を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明にかかるセメント組成物の表面仕上方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
態様1のセメント組成物の表面仕上方法は、予め練り混ぜられたセメント組成物を、打設前に攪拌機内で撹拌する第一攪伴ステップと、
前記第一攪伴ステップの後に前記撹拌機内において液状又はスラリー状をなし、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤、または、CSH系の硬化促進剤及び強度増進助剤、を添加する硬化促進剤添加ステップと、
前記添加をした添加後セメント組成物を前記第一攪伴ステップの攪伴速度よりも速く撹拌する第二攪伴ステップと、
前記添加後セメント組成物を打設する打設ステップと、
前記打設した前記添加後セメント組成物の表面を仕上げる仕上ステップと、
を有することを特徴とする。
【0011】
態様1のセメント組成物の表面仕上方法によれば、急結剤と同種の成分である粉体状の凝結促進剤よりも反応が穏やかな液体又はスラリー状の、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤、または、CSH系の硬化促進剤及び強度増進助剤を、セメント組成物に添加するので、添加して練り混ぜた後も、セメント組成物の急激な硬化が始まることは無い。このため、粉体状の凝結促進剤を添加した場合よりも、セメント組成物の可使時間を長く確保できるため、適用条件が限定されず、施工時間をより長く確保することが可能となる。
【0012】
また、添加する強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤、及び、CSH系の硬化促進剤及び強度増進助剤は、液体またはスラリー状なので、事前に計量や梱包の必要が無く、現場で容易に計量することができ、さらに粉塵発生による周辺環境への影響も生じない。また、添加して均一に撹拌しつつ練り混ぜるのに要する時間も短縮することが可能となる。
【0013】
また、粉体状の凝結促進剤を添加したセメント組成物は、粉体状の凝結促進剤の性質上、早く強度が発現するが、それと引き換えに、長期的な強度発現が悪くなる傾向があるため、無添加のセメント組成物に対して強度が低下する。このため、粉体状の凝結促進剤を添加した場合には、所定の強度を確保するために、予め1~2ランク強度の高いセメント組成物を用いる必要がある。上記液体又はスラリー状の、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤、及び、CSH系の硬化促進剤及び強度増進助剤は、長期的な強度発現も良好であるため、強度の高いセメント組成物を用いることなく所定の強度を確保することが可能となる。
【0014】
また、液体又はスラリー状の、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤、または、CSH系の硬化促進剤及び強度増進助剤として、流動性の増大を抑える工夫を施した薬剤を選定し、さらに、強度を増進する薬剤を追加することにより、セメント組成物に添加する、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤、または、CSH系の硬化促進剤及び強度増進助剤が、水分を含む液体又はスラリー状であったとしても、添加後のセメント組成物の流動性(スランプ値)が大きくなる、或いは、強度が低下する影響を抑制することが可能である。
【0015】
態様2のセメント組成物の表面仕上方法は、態様1に記載のセメント組成物の表面仕上方法であって、
前記仕上ステップは、前記添加後セメント組成物のブリーディング量が最大となった後から凝結開始時間までの間に開始することを特徴とする。
【0016】
このようなセメント組成物の表面仕上方法によれば、硬化を促進しかつ反応が穏やかな、CSH系の硬化促進剤が添加された添加後セメント組成物は、ブリーディング量が最大となるまでの時間が短く、可使時間を長く確保できるので、ブリーディング量が最大となった後から凝結開始時間までの間に開始する仕上ステップを、より早く開始することが可能であり、また、仕上げ作業の時間を確保することが可能となる。
【0017】
態様3のセメント組成物の表面仕上方法は、態様1または態様2に記載のセメント組成物の表面仕上方法であって、
前記添加後セメント組成物の温度が9℃~10℃の時、前記硬化促進剤の前記添加による前記添加後セメント組成物の凝結開始時間は、前記添加をしない前記セメント組成物の凝結開始時間から50分短縮~3時間45分短縮となるように前記硬化促進剤を添加することを特徴とする。
【0018】
このようなセメント組成物の表面仕上方法によれば、添加後セメント組成物の温度が9℃~10℃の時に、添加後セメント組成物の凝結開始時間を、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤、または、CSH系の硬化促進剤及び強度増進助剤を添加しないセメント組成物の凝結開始時間から50分~3時間45分短縮することが可能となる。
【0019】
態様4のセメント組成物の表面仕上方法は、態様1乃至3のいずれかに記載のセメント組成物の表面仕上方法であって、
前記添加後セメント組成物の温度が9℃~10℃の時、前記硬化促進剤の前記添加による前記添加後セメント組成物のブリーディング量は、前記添加をしない前記セメント組成物のブリーディング量から25%~70%に減少するように前記硬化促進剤を添加することを特徴とする。
【0020】
このようなセメント組成物の表面仕上方法によれば、添加後セメント組成物の温度が9℃~10℃の時に、添加後セメント組成物のブリーディング量を、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤、または、CSH系の硬化促進剤及び強度増進助剤を添加しないセメント組成物のブリーディング量に対して25%~70%減少させることが可能となる。
【0021】
態様5のセメント組成物の表面仕上方法は、態様1乃至4のいずれかに記載のセメント組成物の表面仕上方法であって、
前記添加後セメント組成物の温度が9℃~10℃の時、前記硬化促進剤の前記添加による前記添加後セメント組成物の発現強度は、前記添加をしない前記セメント組成物の発現強度以上であるように前記硬化促進剤を添加することを特徴とする。
【0022】
このようなセメント組成物の表面仕上方法によれば、添加後セメント組成物の温度が9℃~10℃の時に、添加後セメント組成物の発現強度を、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤、または、CSH系の硬化促進剤及び強度増進助剤を添加しないセメント組成物の発現強度以上とすることが可能となる。
【0023】
態様6のセメント組成物の表面仕上方法は、態様1乃至5のいずれかに記載のセメント組成物の表面仕上方法であって、
前記添加後セメント組成物の温度が9℃~10℃の時、前記硬化促進剤の前記添加による前記添加後セメント組成物のスランプは、前記添加をしない前記セメント組成物のスランプの95%~105%であるように前記硬化促進剤を添加することを特徴とする。
【0024】
このようなセメント組成物の表面仕上方法によれば、添加後セメント組成物の温度が9℃~10℃の時に、添加後セメント組成物のスランプを、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤、または、CSH系の硬化促進剤及び強度増進助剤を添加しないセメント組成物のスランプの95%~105とすることが可能となる。
【0025】
===本実施の形態について===
以下、本発明のセメント組成物の表面仕上方法の一実施の形態について、さらに詳しく説明する。
【0026】
本実施の形態のセメント組成物の表面仕上方法は、
図1に示すように、打設前のセメント組成物としてのコンクリートを攪拌機内で撹拌する第一攪伴ステップ(S1)と、前記第一攪伴ステップ(S1)の後に前記撹拌機内において、液状又はスラリー状をなし強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤を添加する硬化促進剤添加ステップ(S2)と、液状又はスラリー状をなし強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤を添加した添加後セメント組成物としての添加後コンクリートを第一攪伴ステップ(S1)の攪伴速度よりも速く撹拌する第二攪伴ステップ(S3)と、添加後コンクリートを打設する打設ステップ(S4)と、打設した添加後コンクリートの表面を仕上げる仕上ステップ(S5)と、を有している。尚、硬化促進剤添加ステップ(S2)においては、液状をなし、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤に代えて、CSH系の硬化促進剤と強度増進助剤とを添加しても構わない。
【0027】
第一攪伴ステップ(S1)では、例えば、生コン工場などにおいて、細骨材やセメント等の各コンクリート材料を、ミキサ等により練り混ぜて生成したコンクリートを生コン車などの攪拌機により撹拌しつつ、生コン工場などから建設現場などに搬送する。
硬化促進剤添加ステップ(S2)では、建設現場等において、搬送されたコンクリートに例えば液状の硬化促進剤を添加する。
【0028】
本実施形態の硬化促進剤は、液状又はスラリー状のCSH系硬化促進剤であって、ケイ酸カルシウム水和物を含有する。具体的にCSH系硬化促進剤は、ケイ酸カルシウム水和物のほかに、分散剤および水を含有していてもよい。また、本実施形態の硬化促進剤は、CSH系硬化促進剤の他に、本発明の効果を妨げない範囲で、周知の硬化促進助剤が予め副成分として含有させていても良い。CSH系硬化促進剤及び硬化促進助剤については、後に詳述する。
【0029】
第二攪伴ステップ(S3)では、CSH系硬化促進剤及び硬化促進助剤を添加したコンクリートを撹拌する。このとき、第一撹拌ステップ(S1)の撹拌速度よりも速い速度にて撹拌する。例えば、第一撹拌ステップでは1~4rpmにて回転させて撹拌し、第二撹拌ステップ(S3)では6~12rpmにて回転させて撹拌する。
【0030】
打設ステップ(S4)では、第二撹拌ステップ(S3)にて撹拌したコンクリートを型枠内に打設し、打設したコンクリートのブリーディング量が最大となった後から凝結開始時間までの間に、打設したコンクリート表面を鏝などにより均して仕上げる仕上ステップ(S5)を開始する。
【0031】
本実施形態のセメント組成物の表面仕上方法において、コンクリートに強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤を添加して、コンクリートの仕上時間が短縮される、具体的には凝結が始発するまでの時間が短縮される効果の把握と、このコンクリートのフレッシュ性状および硬化コンクリートの諸性状を把握するために以下の3つの試験を実施した。
【0032】
<試験1>
試験1にて使用したコンクリートの配合割合を表1に、使用材料を表2に示す。表1に示すように、本試験では、比較用に硬化促進剤を添加しないベースコンクリートと、硬化促進剤のセメントに対する配合割合を1%、2%、3%とした3種類のコンクリートに対し、環境温度10℃の室内にて実施し、試験項目、試験方法、目標値及び許容値を表3に示す。なお、硬化促進剤ACが、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤に相当する。
【0033】
【0034】
【0035】
備考)
※1 スランプはベースコンクリートで15±2.5cmに合わせ、硬化促進剤添加後については規定なし。
※2 空気量は硬化促進剤添加前後で4.5±1.5%になるよう、AE剤または消泡剤で調整する。
【0036】
コンクリートの練混ぜは、容量100lの強制二軸ミキサを用いて、70l練り混ぜる。材料投入順序および練混ぜ時間は以下による。
1.ベースコンクリート(100l強制二軸ミキサにより練混)
1-1)細骨材SとセメントCとを10秒間撹拌
1-2)水Wと混和剤ADを加えてさらに30秒撹拌
1-3)粗骨材Gを加えてさらに60秒撹拌
1-4)強制二軸ミキサから排出し表3の各試験項目を実施
上記の1-1)~1-3)が第一撹拌ステップに相当する。
【0037】
2.硬化促進剤入りコンクリート(100l傾胴式ミキサにより練混)
2-1)ベースコンクリートを傾胴式ミキサに投入
2-2)硬化促進剤を添加して60秒撹拌(第二撹拌ステップ)
2-3)傾胴式ミキサから排出し表3の各試験項目を実施
【0038】
【0039】
表5 圧縮強度試験結果(室内試験、試験実施日 2月1日)
【0040】
<試験2>
試験2にて使用したコンクリートの配合割合を表6に、使用材料を表7に示す。表6に示すように、本試験では、比較用に硬化促進剤を添加しないベースコンクリートと、硬化促進剤のセメントに対する配合割合を2%としたコンクリートのフレッシュ性状を確認した。試験項目、試験方法、目標値及び許容値を表8に示す。なお、硬化促進剤ACが、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤に相当する。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
コンクリートの練混ぜは、容量100lの強制二軸ミキサを用いて、70l練り混ぜる。材料投入順序および練混ぜ時間は以下による。
1.ベースコンクリート(100l強制二軸ミキサにより練混)
ベースコンクリートの練混(第一撹拌ステップ)は、<試験1>と同様である。
【0045】
2.硬化促進剤入りコンクリート(アジテータ車により練混)
2-1)ベースコンクリートをアジテータ車に投入
2-2)硬化促進剤を添加して60秒撹拌(第二撹拌ステップ)
2-3)アジテータ車から排出し表8の各試験項目を実施
【0046】
【0047】
表10 圧縮強度試験結果(室内試験、試験実施日 2月8日)
【0048】
また、添加後コンクリートの温度が9℃~10℃の時に、添加後コンクリートのブリーディング量を、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤を添加しないコンクリートのブリーディング量に対して25%~70%減少させることが確認された。
【0049】
また、添加後コンクリートの温度が9℃~10℃の時に、添加後コンクリートの発現強度を、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤を添加しないコンクリートの発現強度以上とすることが可能となった。
【0050】
また、試験1及び試験2の結果から、添加後コンクリートの温度が9℃~10℃の時に、添加後コンクリートのスランプを、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤を添加しないコンクリートのスランプの95%~105%とすることが確認された。
【0051】
以上の結果から、本実施形態のセメント組成物の表面仕上方法によれば、第一撹拌ステップS1後のコンクリートに添加する、液体又はスラリー状の、強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤は、一般的な急結剤と同種の成分である粉体状の凝結促進剤よりも反応が穏やかなので、添加して練り混ぜた後も、コンクリートの急激な硬化が始まることはない。このため、試験1~3の結果に示されるように、コンクリート表面の仕上げ作業までの待ち時間、例えば凝結開始までの時間を短縮することが可能となり、且つ、コンクリートの可使時間を、粉体状の凝結促進剤を添加した場合よりも長く確保できるため、適用条件が限定されず、施工性に優れている。
【0052】
また、添加する強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤は、液体またはスラリー状なので、事前に計量や梱包の必要がなく、現場で容易に計量することができ、さらに粉塵発生による周辺環境への影響も生じない。また、粉体状の凝結促進剤と比較して、添加して均一に撹拌しつつ練り混ぜるのに要する時間も短縮することが可能となる。
【0053】
また、粉体状の凝結促進剤を添加したコンクリートは、粉体状の凝結促進剤の性質上、早く強度が発現するが、それと引き換えに、長期的な強度発現が悪くなる傾向があり、無添加のコンクリートに対して強度が低下する。このため、粉体状の凝結促進剤を添加した場合には、所定の強度を確保するために、予め確保すべき強度に対して1~2ランク強度の高いコンクリートを用いる必要がある。
【0054】
一方、本発明のセメント組成物の仕上方法に用いる液体又はスラリー状のCSH系の硬化促進剤は、強度増進助剤が配合されているので長期的な強度発現も良好である。このため、強度の高いコンクリートを用いることなく所定の強度を確保することが可能となる。
【0055】
また、液体又はスラリー状の強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤として、流動性の増大を抑える工夫を施した薬剤を選定し、さらに、強度を増進する薬剤を追加することにより、コンクリートに添加する強度増進助剤が配合されたCSH系の硬化促進剤が、水分を含む液体又はスラリー状であったとしても、添加後のコンクリートの流動性(スランプ値)が大きくなる、或いは、強度が低下する影響を抑制することが可能である。
【0056】
また、硬化を促進しかつ反応が穏やかな、CSH系の硬化促進剤が添加された添加後コンクリートは、ブリーディング量が最大となるまでの時間が短く、可使時間を長く確保できるので、ブリーディング量が最大となった後から凝結開始時間までの間に開始する仕上ステップS4を、より早く開始することが可能であり、また、仕上げ作業の時間を確保することが可能となる。
【0057】
上記実施形態においては、硬化促進剤添加ステップ(S2)にて添加するCSH系の硬化促進剤に強度増進助剤が配合されている例について説明したが、これに限らず、例えば、液体またはスラリー状のCSH系の硬化促進剤と液体またはスラリー状の強度増進助剤とをそれぞれ添加しても構わない。
【0058】
上記の実施形態においては、セメント組成物としてコンクリートを例に挙げて説明したが、これには限られず、例えばモルタルなどの他のセメント組成物にも適用可能である。
【0059】
本発明におけるCSH系硬化促進剤は、ケイ酸カルシウム水和物を含有する。具体的に、CSH系硬化促進剤は、ケイ酸カルシウム水和物のほかに、分散剤および水を含有していてもよい。CSH系硬化促進剤におけるケイ酸カルシウム水和物の含有量は0.1~75質量%が好ましく、より好ましくは0.1~50質量%である。CSH系硬化促進剤における分散剤の含有量は0.1~30質量%が好ましく、より好ましくは0.1~10質量%である。CSH系硬化促進剤における水の含有量は24~95質量%が好ましく、より好ましくは50~95質量%、さらに好ましくは70~95質量%である。
【0060】
ケイ酸カルシウム水和物は、下記式
mCaO・SiO2・nH2O
で表される。式中、0.1≦m≦2であることが好ましく、より好ましくは0.66≦m≦1.8である。また、0.6≦n≦6であることが好ましく、より好ましくは1.2≦n≦5.5である。
【0061】
ケイ酸カルシウム水和物の粒径は1000nm未満であることが好ましく、より好ましくは300nm未満、さらに好ましくは200nm未満である。ケイ酸カルシウム水和物の粒子径は、分析用超遠心法によって測定することができる。
【0062】
ケイ酸カルシウム水和物としては、例えば、フォシャグ石、ヒレブランド石、ゾノトライト、ネコ石、単斜トベルモリ石、9Å-トバモライト(リバーサイド石)、11Å-トバモライト、14Å-トバモライト(プロンビエル石)、ジェンニ石、メタジェンナイト、カルシウムコンドロダイト、アフィライト、α-C2SH、デルライト、ジャフェ石、ローゼンハーン石、キララ石、スオルン石が挙げられる。特に、ゾノトライト、9Å-トバモライト(リバーサイド石)、11Å-トバモライト、14Å-トバモライト(プロンビエル石)、ジェンニ石、メタジェンナイト、アフィライト、ジャフェ石が好ましい。
【0063】
CSH系硬化促進剤は、さらに増粘剤ポリマーを含有していてもよい。増粘剤ポリマーは、多糖類誘導体、および重量平均分子量Mwが500,000g/mol超、好ましくは1,000,000g/mol超の(コ)ポリマーの群より選択される。
【0064】
多糖類誘導体としては、例えば、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、プロピルセルロースおよびメチルエチルセルロースなどのアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)およびプロピルヒドロキシプロピルセルロースなどのアルキルヒドロキシアルキルセルロースが挙げられる。より好ましいのは、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)およびエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)である。特に好ましいのは、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)およびメチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)である。また、カルボキシメチルセルロース(CMC)であってもよい。さらに、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシエチルデンプンおよびメチルヒドロキシプロピルデンプンなどの非イオン性デンプンエーテル誘導体であってもよい。また、ウェランガムおよびキサンタンなどの微生物によって産生された多糖類、ならびに、アルギン酸塩、カラゲナンおよびガラクトマンナンなど天然に存在する多糖類であってもよい。
【0065】
重量平均分子量Mwが500,000g/mol超、好ましくは1,000,000g/mol超の(コ)ポリマーは、例えば、非イオン性(メタ)アクリルアミドモノマー誘導体および/またはスルホン酸モノマー誘導体から製造することができる。非イオン性(メタ)アクリルアミドモノマー誘導体は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N―ジエチルアクリルアミド、N-シクロヘキシルアクリルアミド、N-ベンジルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミドおよびN-tert-ブチルアクリルアミドの群から選択することができる。スルホン酸モノマー誘導体は、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミドブタンスルホン酸および2-アクリルアミド-2,4,4-トリメチルペンタンスルホン酸の群から選択することができる。増粘剤ポリマーは、非イオン性(メタ)アクリルアミドモノマー誘導体および/またはスルホン酸モノマー誘導体に由来する構造単位を、50mol%超、より好ましくは70mol%超で含有していることが好ましい。他の構造単位は、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とC1~C10-アルコールとのエステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよびスチレンなどのモノマーに由来する。
【0066】
CSH系硬化促進剤における増粘性ポリマーの含有量は0.001~10質量%が好ましく、より好ましくは0.001~1質量%である。
【0067】
コンクリート中のCSH系硬化促進剤の含有量は0.1~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~5質量%である。CSH系硬化促進剤の含有量が0.1質量%未満であると、コンクリートの仕上時間が短縮されない場合がある。一方、CSH系硬化促進剤の含有量が10質量%を超えると、可使時間の確保が困難となるため好ましくない。
【0068】
本発明における強度増進助剤は、カルシウム塩類、アルミニウム塩類、多価アルコール類、その他の硬化促進成分が例示され、これらの1種類以上を含んでいても良い。
【0069】
前記カルシウム塩は、カルシウムシリケート、生石灰、消石灰、石膏、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、チオシアン酸カルシウム、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、プロピオン酸カルシウムが例示できる。
【0070】
前記アルミニウム塩類は、アルカリ金属アルミニウム塩であるNaAlO2、Na[Al(OH)4]、カルシウムアルミネ―ト類である、C3A、C12A17、CSA(カルシウムサルホアルミネ―ト)、硫酸アルミニウム、ミョウバンが例示できる。
【0071】
前記多価アルコールは、ポリアルキレングリコール類であるエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ソルビトール、オキシカルボン酸、スクロースやアルカノールアミン類であるジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンが例示でき、またこれらのアルキレンオキサイド付加物でも良い。本発明の多価アルコールは、二価アルコール又は三価アルコールが好ましく、また、分子量が1000を超えないものが好ましい。分子内の水酸基が3を超える場合や分子量が1000を超える場合は、界面活性作用や増粘作用が働き、コンクリートのレオロジー特性や硬化特性が意図せず変動させるおそれがあり好ましくない。より好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタンジオール、グリセリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンであり、更には、液状として取り扱うことができる点から、好ましくは水に易溶である、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン である。
【0072】
前記その他の硬化促進成分は、アルカリ金属のアルミン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、チオシアン酸塩が例示され、適宜、CSH系硬化促進剤及び/又は他の強度増進助剤と併用されることが好ましい。
【0073】
強度増進助剤は、CSH系硬化促進剤と共に、適宜コンクリートに添加され、CSH系硬化促進剤と別途添加されても良いし、CSH系硬化促進剤と予め混合された状態で添加されても良い。液体及び/又はスラリー状の硬化促進剤と予め混合する場合には、水に易溶な強度増進助剤から選択されることが好ましい。
【0074】
以上、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0075】
S1 第一撹拌ステップ、
S2 硬化促進剤添加ステップ、
S3 第二撹拌ステップ、
S4 打設ステップ、
S5 仕上ステップ、