(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064305
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】ヒートシンク及び電子部品
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172796
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】513114571
【氏名又は名称】株式会社マテリアル・コンセプト
(74)【代理人】
【識別番号】100209624
【弁理士】
【氏名又は名称】制野 友樹
(72)【発明者】
【氏名】小池 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ホアン チ ハイ
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA04
5F136BA31
5F136BA36
5F136FA03
5F136FA70
5F136FA82
5F136GA31
(57)【要約】
【課題】絶縁性放熱基板に接着された金属板と、ヒートシンクとを接合する界面全領域において、接合時に発生する揮発成分の除去を可能として導電性ペースト中の粒子間の焼結を実現し、その結果、パワーモジュール等、高電圧・高電流でも動作する半導体装置の効率的な放熱を実現するために用いるヒートシンク及びそのようなヒートシンクを備える電子部品を提供すること。
【解決手段】本発明のヒートシンクは、少なくとも板状基部を備え、板状基部は、第1の主面から第1の主面の裏面である第2の主面まで貫通開口し、第2の主面を平面視した場合において、最大長が2mm以上、面積が2mm
2以上である複数の貫通孔を有し、所定の方法で算出される総有効範囲が、所定の方法で算出される基準範囲を占める割合は、面積比で50%以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも板状基部を備え、
前記板状基部は、第1の主面から前記第1の主面の裏面である第2の主面まで貫通開口し、前記第2の主面を平面視した場合において、最大長が2mm以上、面積が2mm2以上である複数の貫通孔を有し、
下記総有効範囲が、下記基準範囲を占める割合は、面積比で50%以上である
ヒートシンク。
〔総有効範囲〕
前記第2の主面を平面視した場合において、それぞれの前記貫通孔の輪郭上に中心を持つ半径6mmの全ての円が連なってなす形状の外輪郭に囲まれた範囲を有効範囲とする。全ての前記貫通孔の前記有効範囲を重ね合わせてなる範囲を総有効範囲とする。
〔基準範囲〕
前記第2の主面を平面視した場合において、それぞれの前記貫通孔の輪郭間を結ぶ線分と前記貫通孔の輪郭とを組み合わせて最大の面積となる範囲を基準範囲とする。
【請求項2】
前記第2の主面を平面視した場合において、前記貫通孔の総面積は、前記第2の主面の面積に対して40%以下である
請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記第1の主面において、前記貫通孔の第1の主面側の第1の開口と重ならないように前記第1の主面から複数のフィンが起立延在する
請求項1又は2に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記第2の主面に、少なくとも、金属元素を金属及び/又は金属酸化物の状態で含む粒子と、有機溶媒とを含むペーストを塗布し、焼結するための
請求項1又は2に記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記金属元素は銅及び/又は銀である
請求項4に記載のヒートシンク。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のヒートシンクを備える
電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンク及び電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザーダイオード、LED、パワーモジュール等の半導体装置においては、半導体装置の機能を利用する際に、電気出力が大きいために発熱が生じる。
【0003】
例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車等に用いられるパワー半導体素子は、高電流、高電圧を制御することから、電気的絶縁性と熱伝導性に優れた絶縁性放熱基板としてSi3N4(窒化ケイ素)、AlN(窒化アルミニウム)、Al2O3(酸化アルミニウム)等のセラミックス基板を用いており、これらの基板の一方の面に、回路パターン形状にした銅板又はアルミニウム板を接合し、さらにこの銅板又はアルミニウム板と半導体素子をワイヤーボンディングで電気的に接続する。
【0004】
セラミックス基板の他方の面には、回路パターンが形成されていない銅板又はアルミニウム板を接合し、さらに、その表面にヒートシンクを接合して半導体素子で発生した熱を外部へ放熱する。
【0005】
これらの金属板とヒートシンクを接合する熱伝導材料はサーマル・インターフェース・マテリアル(TIM材料)と呼ばれ、多くの場合に90重量%以上の鉛を含有する高鉛はんだが用いられているが、高鉛はんだは200℃以上の高温における耐熱性が乏しいことに加えて、熱伝導性が低く、人体や環境に有害である。
【0006】
そのため、高鉛はんだに替わるTIM材料として、銀や銅からなるペーストの焼結体を用いることが検討されている。しかしながら、従来の金属ペーストでは焼結温度が例えば250℃以上の高温となるため、焼結時間が長時間となるときは半導体素子が損傷を受ける可能性がある。
【0007】
そこで、低温で焼結できる可能性がある金属酸化物ペーストに注目が集まっている。例えば、特許文献1には、上述したようなTIM材料を、酸化銀ペーストの焼結体に置き換えることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
酸化銀ペーストは銀に還元されて焼結が起こるので、焼結に伴って酸素や水といった揮発性の還元生成物が発生する。また、酸化銀紛をペースト化する際に用いた溶剤成分も揮発する。これらの揮発成分は酸化銀ペーストの還元焼結に先立って接合部から除去される必要がある。
【0010】
しかしながら、本発明者らによれば、このような接合部において酸化銀ペーストは、放熱面積を大きくするために数センチメートル以上のサイズを持つ金属板とヒートシンクに挟まれているため、接合端部近傍に存在する揮発成分は除去可能であるが、接合部の中心にいくにつれて揮発成分の除去が困難となることがわかった。そしてその結果、酸化銀ペーストの焼結は接合端部近傍に限定されることもわかった。なお、このような問題は、酸化銀ペースト等金属酸化物ペーストを利用する場合のみならず、銅ペースト等の金属ペーストをはじめとする導電性ペーストを接合に利用する場合においても、成分等によらず生じるものである。
【0011】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、絶縁性放熱基板に接着された金属板と、ヒートシンクとを接合する界面全領域において、接合時に発生する揮発成分の除去を可能として導電性ペースト中の粒子間の焼結を実現し、その結果、パワーモジュール等、高電圧・高電流でも動作する半導体装置の効率的な放熱を実現するために用いるヒートシンク及びそのようなヒートシンクを備える電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、ヒートシンクに、揮発成分を除去する経路として、基部に特定の形状、サイズ、分布を有する複数の貫通孔を形成することが上述した課題の解決に重要であることが分かった。そして、本発明者らは、少なくとも板状基部を備え、板状基部は、第1の主面から第1の主面の裏面である第2の主面まで貫通開口し、第2の主面を平面視した場合において、最大長が2mm以上、面積が2mm2以上である複数の貫通孔を有し、所定の定義による総有効範囲が、所定の定義による基準範囲を占める割合は、面積比で50%以上であるヒートシンクを、導電性ペーストを介し金属板に接合し焼結することで、内部から揮発成分を除去した焼結体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のものを提供する。
【0013】
(1)少なくとも板状基部を備え、前記板状基部は、第1の主面から前記第1の主面の裏面である第2の主面まで貫通開口し、前記第2の主面を平面視した場合において、最大長が2mm以上、面積が2mm2以上である複数の貫通孔を有し、下記総有効範囲が、下記基準範囲を占める割合は、面積比で50%以上であるヒートシンク。
〔総有効範囲〕
前記第2の主面を平面視した場合において、それぞれの前記貫通孔の輪郭上に中心を持つ半径6mmの全ての円が連なってなす形状の外輪郭に囲まれた範囲を有効範囲とする。全ての前記貫通孔の前記有効範囲を重ね合わせてなる範囲を総有効範囲とする。
〔基準範囲〕
前記第2の主面を平面視した場合において、それぞれの前記貫通孔の輪郭間を結ぶ線分と前記貫通孔の輪郭とを組み合わせて最大の面積となる範囲を基準範囲とする。
【0014】
(2)前記第2の主面を平面視した場合において、前記貫通孔の総面積は、前記第2の主面の面積に対して40%以下である(1)に記載のヒートシンク。
【0015】
(3)前記第1の主面において、前記貫通孔の第1の主面側の第1の開口と重ならないように前記第1の主面から複数のフィンが起立延在する(1)又は(2)に記載のヒートシンク。
【0016】
(4)前記第2の主面に、少なくとも、金属元素を金属及び/又は金属酸化物の状態で含む粒子と、有機溶媒とを含むペーストを塗布し、焼結するための(1)又は(2)に記載のヒートシンク。
【0017】
(5)前記金属元素は銅及び/又は銀である(4)に記載のヒートシンク。
【0018】
(6)(1)又は(2)に記載のヒートシンクを備える電子部品。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、パワーモジュール等、高電圧・高電流でも動作する半導体装置の効率的な放熱を実現するために用いるヒートシンク及びそのようなヒートシンクを備える電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係るヒートシンクの斜視模式図である。
【
図2A】有効範囲を説明するためのヒートシンクの第2の主面の平面模式図である。
【
図2B】有効範囲を説明するためのヒートシンクの第2の主面の平面模式図である。
【
図3】貫通孔の有効範囲が重ならない場合の総有効範囲を説明するためのヒートシンクの第2の主面の平面模式図である。
【
図4】貫通孔の有効範囲が重なる場合の総有効範囲を説明するためのヒートシンクの第2の主面の平面模式図である。
【
図5】基準範囲を説明するためのヒートシンクの第2の主面の平面模式図である
【
図6】基準範囲を説明するためのヒートシンクの第2の主面の他の平面模式図である。
【
図7】第2の実施形態に係るヒートシンクの斜視模式図である。
【
図8】本実施形態に係るヒートシンクを用いたパワーモジュールの一例の縦断面図である。
【
図9】表1で用いた各パラメータを説明するためのヒートシンクの第2の主面の平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は実施形態の記載によって何ら限定されるものではなく、適宜変更を加えて実施することができる。
【0022】
≪ヒートシンク≫
本実施形態に係るヒートシンクは、少なくとも板状基部を備え、板状基部は、第1の主面から第1の主面の裏面である第2の主面まで貫通開口し、第2の主面を平面視した場合において、最大長が2mm以上、面積が2mm2以上である複数の貫通孔を有し、下記総有効範囲が、下記基準範囲を占める割合は、面積比で50%以上であるヒートシンク。
〔総有効範囲〕
第2の主面を平面視した場合において、それぞれの貫通孔の輪郭上に中心を持つ半径6mmの全ての円が連なってなす形状の外輪郭に囲まれた範囲を有効範囲とする。全ての貫通孔の有効範囲を重ね合わせてなる範囲を総有効範囲とする。
〔基準範囲〕
第2の主面を平面視した場合において、それぞれの貫通孔の輪郭間を結ぶ線分と貫通孔の輪郭とを組み合わせて最大の面積となる範囲を基準範囲とする。
【0023】
<第1の実施形態のヒートシンク>
以下、図を用いて第1の実施形態のヒートシンクの一例について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るヒートシンクの斜視模式図である。第1の実施形態に係るヒートシンク1は、少なくとも板状基部2を備え、板状基部2は、第1の主面21から第1の主面21の裏面である第2の主面22まで貫通開口し、第2の主面22を平面視した場合において、最大長が2mm以上、面積が2mm
2以上である複数の貫通孔23を有し、総有効範囲が、基準範囲を占める割合は、面積比で50%以上である。ここで、総有効範囲は、第2の主面22を平面視した場合において、それぞれの貫通孔23-1,23-2,23-3・・・の輪郭上に中心を持つ半径6mmの全ての円が連なってなす形状の外輪郭に囲まれた範囲を有効範囲とし、全ての貫通孔23-1,23-2,23-3・・・の有効範囲を重ね合わせてなる範囲をいう。また、基準範囲は、第2の主面を平面視した場合において、それぞれの貫通孔23の輪郭間を結ぶ線分と貫通孔の輪郭とを組み合わせて最大の面積となる範囲をいう。
【0024】
また、ヒートシンク1は、第1の主面21において、貫通孔23の第1の主面21側の第1の開口231(231-1,231-2,231-3・・・)と重ならないように第1の主面111から起立延在する複数のフィン3を備える。
【0025】
なお、
図1においては、便宜上、貫通孔23として、一部の貫通孔23-1,23-2,23-3のみを示しているものとし、図示していないがこれらの他にも例えばフィンとフィンとの間等に貫通孔が存在するものとする。
【0026】
[板状基部]
板状基部2は、ヒートシンクのベースとなる板である。板状基部は、板の一方の面である第1の主面21と、第1の主面21の裏面である第2の主面22とを有する。
【0027】
板状基部2の材質としては、熱伝導性の高い材料(例えば25℃における熱伝導率が50Wm-1K-1以上である材料)であれば特に限定されず、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、SUS等を用いることができる。
【0028】
(第1の主面)
第1の主面21は、板状基部2が有する一方の面である。第1の主面は、大気や水等の冷媒と接する面である。
【0029】
一実施形態において、ヒートシンク1がフィン3を備える場合、フィン3は第1の主面21に配置される。一方で、ヒートシンク1がフィン3を備える場合、フィン3は第2の主面22には配置されない。
【0030】
(第2の主面)
第2の主面22は、板状基部2が有する一方の面であり、第1の主面21の裏面に位置する面である。第2の主面は、TIM材料としてのペースト層又はペーストの焼結体を介して絶縁性放熱基板に接着された金属板に接する面である。
【0031】
(貫通孔)
貫通孔23は、第1の主面21からその裏面である第2の主面22まで貫通開口してなるものであり、第2の主面22を平面視した場合において、最大長が2mm以上、面積が2mm2以上であるものである。この要件に該当しないものについては、たとえ第1の主面21から第2の主面22まで貫通した孔であっても、本明細書における「貫通孔」には該当せず、有効範囲、総有効範囲及び基準範囲の決定にあたっては考慮しないものとする。
【0032】
貫通孔23の最大長としては、2mm以上であれば特に限定されないが、例えば2.1mm以上、2.2mm以上、2.3mm以上、2.4mm以上、2.5mm以上、2.6mm以上、2.7mm以上、2.8mm以上、2.9mm以上、3mm以上、3.1mm以上、3.2mm以上、3.3mm以上、3.4mm以上、3.5mm以上、3.6mm以上、3.7mm以上、3.8mm以上、3.9mm以上、4mm以上であることが好ましい。貫通孔23の最大長が所要値以上であることにより、かかるヒートシンクが接触した金属酸化物ペーストへの水素の供給量を増加させることができ、金属酸化物粒子の還元と焼結を促進することができる。一方、貫通孔23の最大長としては、200mm以下、180mm以下、160mm以下、140mm以下、120mm以下、100mm以下、80mm以下、60mm以下、55mm以下、50mm以下、45mm以下、40mm以下、35mm以下、30mm以下、25mm以下、20mm以下であってよい。なお、貫通孔32の最大長は、第2の主面22を平面視した場合における長さであり、言い換えると第2の主面22上の長さである。
【0033】
貫通孔23の面積としては、2mm2以上であれば特に限定されないが、例えば2.2mm2以上、2.4mm2以上、2.6mm2以上、2.8mm2以上、3mm2以上、3.2mm2以上、3.4mm2以上、3.6mm2以上、3.8mm2以上、4mm2以上、4.2mm2以上、4.4mm2以上、4.6mm2以上、4.8mm2以上、5mm2以上、5.2mm2以上、5.4mm2以上、5.6mm2以上、5.8mm2以上、6mm2以上であることが好ましい。貫通孔23の面積が所要値以上であることにより、かかるヒートシンクが接触した金属酸化物ペーストへの水素の供給量を増加させることができ、金属酸化物ペースト中の金属酸化物粒子の還元と焼結を促進することができる。一方、貫通孔23の面積としては、800mm2以下、750mm2以下、700mm2以下、650mm2以下、600mm2以下、550mm2以下、500mm2以下、450mm2以下、400mm2以下、350mm2以下、300mm2以下、250mm2以下、200mm2以下、150mm2以下、100mm2以下であってよい。通常、ヒートシンクには、それと接触する冷媒による基板への影響を防止するため、基板に固定するためのネジ等の締結部材を締結するための締結孔以外の孔は空けない。本実施形態に係るヒートシンクでも、金属酸化物ペーストを焼結して焼結体を形成させた後、冷媒の種類によっては冷媒による影響を防止するための処理を施す必要がある場合がある。貫通孔23の最大長が所要値以下であることにより、このように処理を施す面積を小さくすることができる。
【0034】
第2の主面22を平面視した場合において、貫通孔23の総面積としては、特に限定されないが、第2の主面22の面積に対して40%以下、37%以下、35%以下、32%以下、30%以下、27%以下、25%以下、20%以下であることが好ましい。貫通孔23の総面積が所要の値以下であることにより、このペーストより形成される焼結体の機械的強度を担保することができる。貫通孔23の総面積としては、第2の主面22の面積に対して1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上であってよい。
【0035】
また、貫通孔23の形状も、
図1等に示すような矩形に限られず、三角形、四角形(矩形以外のものを含む)、五角形等の多角形、円形、楕円形、その他の定形、不定形等であってよい。
【0036】
(有効範囲)
本実施形態に係るヒートシンクでは、第2の主面22を平面視した場合において、それぞれの貫通孔23の輪郭上に中心を持つ半径6mmの全ての円が連なってなす形状の外輪郭に囲まれた範囲を有効範囲とする。
【0037】
本実施形態に係るヒートシンクにおいて、「有効範囲」とは、ヒートシンク中に複数の貫通孔が存在する中で、貫通孔1つに着目した範囲であり、特定の1つの貫通孔の輪郭上に中心を持つ半径6mmの全ての円が連なってなす形状の外輪郭に囲まれた範囲をいう。
【0038】
図2A,
図2Bは、有効範囲を説明するためのヒートシンクの第2の主面の平面模式図である。説明の便宜のため、まず
図2Aを用いて貫通孔23の輪郭の左上の角から右上の角までの辺(上辺)に基づく有効範囲のみについて説明する。
図2Aにおいて、上辺上に中心を持つ全ての円が連なってなす形状は、一点鎖線で囲んだ形状である。
【0039】
これと同様にして、全ての辺(下辺、右辺及び左辺)上に中心を持つ全ての円が連なってなす形状は、
図2Bの一点鎖線で囲んだ外輪郭と、二点鎖線で囲んだ内輪郭との間の範囲である。外輪郭は半径6mmの角丸を持つ角丸四角形である。また内輪郭は四角形(縦横の辺は、貫通孔の縦横マイナス12mm)である。
【0040】
この場合において、有効範囲は、角丸四角形の形状を持つ外輪郭に囲まれた範囲である。なお、有効範囲は、外輪郭よりも内部側でも、貫通孔の輪郭上に中心を持つ半径6mmの円が到達しない、内輪郭に囲まれた範囲をも含むものとする。言い換えると、有効範囲から内輪郭の内部の範囲を除かない。
【0041】
なお、例えば矩形であれば貫通孔の対向する二辺が12mm以下である場合、外輪郭は存在するが、内輪郭は存在しないこととなる。上述したとおり本実施形態に係るヒートシンクの特定において用いるのは外輪郭のみであり、内輪郭の有無により何ら限定されることはなく、例えば内輪郭を有しない(対向する二辺が12mm以下である)貫通孔が排除されるものではない。
【0042】
(総有効範囲)
続いて、総有効範囲について説明する。総有効範囲は、全ての貫通孔23-1,23-2,23-3・・・の有効範囲を重ね合わせてなる範囲をいう。
【0043】
以下、総有効範囲の算出方法、特に「全ての貫通孔の有効範囲を重ね合わせてなる範囲」の意義についてより具体的に説明するため、各貫通孔の有効範囲が重ならない場合と各貫通孔の有効範囲が重なる場合に分けて説明する。
【0044】
まず、貫通孔の有効範囲が重ならない場合の総有効範囲について説明する。
図3は、貫通孔の有効範囲が重ならない場合の総有効範囲を説明するためのヒートシンクの第2の主面の平面模式図である。
【0045】
第2の主面上22には、平面視正方形の複数の貫通孔23-1,23-2,23-3,23-4,23-5,23-6・・・が辺同士を向かい合うようにして縦横等間隔で配置されている。ここでは、貫通孔23-1,23-2,23-3,23-4,23-5,23-6・・・が、半径6mmの円よりも十分に大きい辺を持つ正方形状を有している例を示している。隣接する貫通孔同士は、それぞれの辺の間が最短距離で12mmの間隔を隔てて配置されている。一方で、貫通孔の有効範囲は、貫通孔の輪郭から6mmの範囲である。したがって、隣接する貫通孔同士で有効範囲は重なることがなく、4つの角丸が対向する部分が有効範囲から外れている。
【0046】
このように、各々の貫通孔が第2の主面22上で重ならない場合において、総有効範囲は単純に、全ての貫通孔23-1,23-2,23-3,23-4,23-5,23-6・・・のそれぞれの有効範囲E-1,E-2,E-3,E-4,E-5,E-6・・・の足し合わせとなる。なお、
図3の例では複数の貫通孔23-1,23-2,23-3,23-4,23-5,23-6・・・のそれぞれの有効範囲E-1,E-2,E-3,E-4,E-5,E-6・・・は隣り合う貫通孔の有効範囲と接しているが、複数の貫通孔の有効範囲は、このように接触せずに離間していてもその合わせた範囲を総有効範囲とする。
【0047】
したがって、このような場合において、総有効範囲の面積は、有効範囲E-1,E-2,E-3,E-4,E-5,E-6・・・の面積の積算である。
【0048】
一方で、複数の貫通孔の有効範囲が相互に重なる場合において、総有効範囲の面積は、貫通孔の有効範囲の面積を単純に足し合わせて算出するのではなく、貫通孔の有効範囲が重なる部分について減算して算出する。
【0049】
具体的な例について、
図4を用いて説明する。
図4は、貫通孔の有効範囲が重なる場合の総有効範囲を説明するためのヒートシンクの第2の主面の平面模式図である。
【0050】
図4に示す、第2の主面42上には、隣接する貫通孔43-1,43-2のそれぞれの有効範囲Ea-1,Ea-2が、重複範囲Dにおいて重なって存在している。このような場合において、総有効範囲は、Ea-1,Ea-2の単純な足し合わせでなく、Ea-1,Ea-2の単純な足し合わせから重複範囲Dの分を減算して計算する。
【0051】
(基準範囲)
本実施形態に係るヒートシンクにおいて、基準範囲は、第2の主面を平面視した場合において、それぞれの貫通孔の輪郭間を結ぶ線分と貫通孔の輪郭とを組み合わせて最大の面積となる範囲である。全ての貫通孔の輪郭上の全ての点(角部等に限られない)を直線で結んだときに最外方に存在する線及び貫通孔の輪郭をつなぎ合わせて閉じたときのそれらの線の集合によってなす範囲である。
【0052】
なお、基準範囲の設定にあたっては、最も近接する他の貫通孔の輪郭から、当該貫通孔の輪郭までの最短距離が24mm以上のものは無視するものとする。
【0053】
図5は、基準範囲を説明するためのヒートシンクの第2の主面の平面模式図である。
図5のように貫通孔53-1,53-2,53-3・・・が縦横に等間隔に配列している場合、基準範囲Raは、四隅に存在する貫通孔53-1の左上の角、貫通孔53-4の左下の角、貫通孔53-16の右下の角及び53-13の右上の角を結んだ範囲である。なお、「左上」、「左下」等の表記は、便宜上、紙面上の配置を表したものであり、実際に配置される方向とは何ら関係ない。以下において同様とする。
【0054】
図6は、基準範囲を説明するためのヒートシンクの第2の主面の他の平面模式図である。第2の主面62上おいて、基準範囲Rbは、貫通孔63-1の左辺、貫通孔63-1の左下の角と貫通孔63-2の左下の角を結ぶ線分、貫通孔63-2の下辺、貫通孔63-2の右下の角と貫通孔63-14の右下の角を結ぶ線分、貫通孔63-14の右下の角と貫通孔63-16の右下の角を結ぶ線分、貫通孔63-16の右辺、貫通孔63-16の左上の角と貫通孔63-15の左上の角を結ぶ線分、貫通孔63-15の左上の角と貫通孔63-12の右上の角を結ぶ線分、貫通孔63-12の上辺、貫通孔63-12の左上の角と貫通孔63-3の左上の角を結ぶ線分及び貫通孔63-3の左上の角と貫通孔63-1の左上の角を結ぶ線分によってなす範囲である。
【0055】
例えば、貫通孔63-2の右下の角から右方向へは、貫通孔63-8の左下の角、貫通孔63-8の右下の角、貫通孔63-14の左下の角、貫通孔63-14の右下の角・・・等を結ぶ線分が存在するが、このうち基準範囲として各線分が最大の範囲を形成し得る線分は、貫通孔63-2の右下の角と貫通孔63-14の右下の角を結ぶ線分である。
【0056】
なお、貫通孔の輪郭間を結ぶ線分の選定にあたっては、基準範囲を最大とし得るものを選択すればよく、最も近接する貫通孔の輪郭を結ぶ線分である必要はなく、また貫通孔の輪郭を結ぶ最短の距離の線分である必要もない。例えば、貫通孔63-2にとって最近接する貫通孔は、貫通孔63-4であるし、右方向には貫通孔63-8も存在するが、これらを経由するよりも基準範囲が大きくなる貫通孔63-14の輪郭を結ぶ線分を選択する。そして、貫通孔63-2の輪郭から貫通孔63-14の輪郭への最短距離は、貫通孔63-2の右辺と貫通孔63-14の左辺を水平に結ぶ線分であるが、基準範囲を最大とするため、貫通孔63-2の右下の角から貫通孔63-14の右下の角を結ぶ線分を選択する。
【0057】
離間した2つの貫通孔の輪郭間は直線で結んで基準範囲を構成するが、貫通孔が曲線を有する場合、その曲線を基準範囲の輪郭として選択することで基準範囲が最大となるのであれば、その貫通孔の輪郭に基づいて基準範囲が曲線を有してもよい。また、貫通孔の曲線部から他の貫通孔へ結ぶ線分を求める場合、当該線分は貫通孔の曲線部の接線であってもよい。例えば貫通孔が円形の場合、貫通孔の輪郭間を結ぶ線分は、2つの円の共通接線である。
【0058】
ここで、総有効範囲が基準範囲を占める割合の算出にあたっては、総有効範囲の中でも基準範囲に含まれない(基準範囲と重複しない)範囲を除いて算出する。例えば、
図6の貫通孔63-1については、その有効範囲Eb-1のうち基準範囲Rbの内部に含まれない、網掛けで示した部分の面積は除くものとする。
【0059】
総有効範囲が基準範囲を占める割合としては、面積比で50%以上であれば特に限定されず、例えば51%以上、52%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、72%以上、75%以上、77%以上、80%以上、82%以上、85%以上、87%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上であることが好ましい。総有効範囲が基準範囲を占める割合が所要値以上であることにより、かかるヒートシンクが接触した金属酸化物ペースト中の金属酸化物粒子の還元を促進することができる。一方、総有効範囲が基準範囲を占める割合としては、100%以下、99%以下、97%以下、95%以下、93%以下、91%以下であってよい。
【0060】
(技術的意義)
本実施形態に係るヒートシンクは特定の理論に限定されるものではないが、本発明者らは、金属板とヒートシンクとの接合部として、金属酸化物のペーストから高い熱伝導率を有する焼結体を得ることができる理由について次のように考えている。ヒートシンクの板状の基部に貫通孔が存在することにより、焼結時に、貫通孔から還元雰囲気中の水素が、ヒートシンクと接したペースト内に侵入することができる。そして、侵入した水素は金属酸化物を還元させ、熱伝導性や接合強度の良好な焼結体を得ることができる。ここで、水素が侵入できる距離、還元時に金属酸化物中の酸素と水素が反応して生成した水がペースト内から退出できる距離は、約6mmである。すなわち、貫通孔の輪郭上に中心を持つ半径6mmの円がなす範囲(有効範囲)の内部は非常に還元されやすく、生成した水も除去されやすい。このような有効範囲が50%以上であることにより、還元生成物や有機溶媒が揮発せずに残る割合を減らすことができ、焼結体として高い熱伝導率を有するものとなる。
【0061】
<第2の実施形態のヒートシンク>
本実施形態のヒートシンクは、第1の実施形態のヒートシンクのようにフィンを備えていても備えていなくてもよい。フィンを備えないヒートシンクとしては、例えば水冷ヒートシンク、水冷プレート、コールドプレート等と呼ばれるプレートの内部に冷媒(水等)のジグザグの流路を形成し、そこに冷媒を流すことで冷却するものが挙げられるが、冷却の形態等は、上述した所定の貫通孔を有するものであれば、冷媒を流通させるものに限定されない。
【0062】
以下、図を用いて第2の実施形態のヒートシンクの一例について説明する。
図7は、第2の実施形態に係るヒートシンクの斜視模式図である。ヒートシンク7は、板状基部8を備えており、その内部に冷媒が流れる流路84が形成されている。また、板状基部8には、流路84を避けるようにして、第1の主面81から第2の主面82まで貫通開口する貫通孔83が設けられている。
【0063】
なお、
図1においては、便宜上、貫通孔83としては、一部の貫通孔83-1,83-2,83-3,83-4,83-5,83-6のみを示しているものとし、図示していないが例えばこれらの貫通孔の他にも貫通孔が存在するものとする。
【0064】
ヒートシンク7は、板状基部8の構造が異なる以外は、第1の実施形態のヒートシンク1と同様であるのでここでの詳細な説明は省略する。
【0065】
以上のようなヒートシンク1,7は、典型的には、第2の主面22,82に、ペーストを塗布し、焼結するために用いるものである。そして、このようなペーストとして、少なくとも、金属元素を金属及び/又は金属酸化物の状態で含む粒子と、有機溶媒とを含むものが挙げられる。
【0066】
金属元素としては、熱伝導性を有するものであれば特に限定されないが、銅及び/又は銀であることが好ましい。
【0067】
そして、このようなペーストを、ヒートシンク1,7を用いて焼結させることで熱伝導性に優れる焼結体が得られる。このようにして形成された焼結体は熱伝導性に優れるので、これを介してヒートシンク1,7と接合される各電子素子からの熱をヒートシンク1,7に効率よく伝導し、冷却することができる。
【0068】
なお、本明細書では、本実施形態に係るヒートシンクを金属酸化物ペーストに接触させた場合の効果を中心に記載しているが、本実施形態に係るヒートシンク1,7を適用できるペーストは、金属元素を金属酸化物の状態で含む金属酸化物ペーストに限定されるものではなく、焼結により焼結体を形成するものであれば用いることができる。このように焼結により焼結体を形成する成分としては、例えば金属粒子等が挙げられる。このような場合には、粒子を還元する必要がないので、金属酸化物ペーストのように水素等を含む還元雰囲気で焼結する必要がなく、窒素雰囲気で加熱すればよいという利点がある。
【0069】
本実施形態に係るヒートシンクを金属ペーストに接触させて焼結、接合した場合でも、金属ペースト中の有機溶剤等が除去でき、熱伝導率が高い焼結体が得られる。また、金属粒子の保存状態等によっては金属粒子(特に表面)が部分的に酸化し、焼結体の形成を阻害することもあるが、本実施形態に係るヒートシンクによれば、このような場合でも酸素を還元して熱伝導性の良好な焼結体が得られる。
【0070】
ヒートシンク1,7を冷却するための冷媒としては、気体であっても液体であってもよい。気体としては、空気(自然放熱)であってもよい。特に、冷媒が、焼結体を介してヒートシンク1,7と接合される各電子素子に悪影響(例えば腐食等)を及ぼすものである場合等には、焼結後、ヒートシンク1,7の貫通孔23,83は金属や樹脂等で孔埋め処理を施したり、ヒートシンク上にさらに蓋をしたりしてもよい。
【0071】
≪電子部品≫
本実施形態に係る電子部品は、上述したヒートシンクを備える。具体的な電子部品としては、パワーモジュール、LED、レーザーダイオード等が挙げられる。
【0072】
図8は、本実施形態に係るヒートシンクを用いたパワーモジュールの一例の縦断面図である。パワーモジュール9は、半導体チップ91とダイボンド92と金属板93と絶縁基板94と金属板95と焼結体96とヒートシンク97がこの順に積層されて構成される。
【0073】
このようなパワーモジュール9において、ヒートシンク97として、上述した構成のヒートシンクを用いる。このようなパワーモジュール9の製造工程において、金属板95の表面にペーストを塗布し、ヒートシンク97上に載せた後、還元雰囲気で加圧、加熱することにより、焼結体96を形成する。この際、ヒートシンク97として本実施形態に係るヒートシンクを用いることにより、その貫通孔(ここでは図示せず)から水素をペーストの内部まで接触させることにより、金属酸化物の還元が促進され、金属に還元する割合が極めて大きくなり、熱伝導性や接合強度の良好な焼結体96が得られる。
【0074】
パワーモジュール9における半導体チップ91は高出力で発熱も大きいため素子全体として放熱性を高める必要がある。ダイボンドについては銀や銅等熱伝導率の高い金属、絶縁基板についてはSi3N4、AlN、Al2O3等熱伝導率の高いセラミックス基板を使用しているが、絶縁基板とヒートシンクとの間の材料として従来は熱伝導率の低いはんだを使用しているため、電子部品全体としての放熱性が低いものとなっていた。本実施形態のパワーモジュール9においては、ヒートシンク97に接触させてペーストを焼結することで熱伝導率の高い焼結体を形成することができ、パワーモジュール9における半導体チップ91の大きな発熱にも対応できる十分な放熱性が得られる。
【実施例0075】
〔酸化銀ペーストの調整〕
酸化銀粒子(平均粒径(D50)1μm)と、テキサノールと、ブチルカルビトールアセテートとを、質量比が8:1:1となるように遊星ミキサーを用いて混合して酸化銀ペーストを作製した。
【0076】
〔貫通孔を有する基板の作製〕
本実施例では、ヒートシンクに接して焼結されたペーストの評価を行う。本実施例では、フィン等の冷却機構を有する実際のヒートシンクの基板に貫通孔を形成したものではなく、貫通孔を有する基板のモデルとして平板状の基板を用いた。具体的に、縦70mm×横70mm×厚さ1.5mmのガラス板(下記「電気抵抗率の測定」で使用)又は銅板(下記「ダイシェア強度の測定」で使用)に、以下表1に示す縦横の長さを有する矩形の貫通孔を、以下表1に示す縦横の個数だけ、隣接する貫通孔の辺同士を対向させて平行かつ連続的に形成した(以下、それぞれを「有孔ガラス板」及び「有孔銅板」という)。それぞれの貫通孔は、縦横に、以下表1に示す隣接貫通孔間距離(隣接する貫通孔の辺同士の最短距離)を隔てて形成した。
【0077】
〔電気抵抗率の測定〕
ヒートシンクが有する貫通孔等の相違により、ヒートシンクに接して形成されたペーストの焼結体の熱伝導性が受ける影響を検討すべく電気抵抗率を測定した。焼結体の熱伝導率ではなく、電気抵抗率を測定した理由は、熱伝導率を直接測定するには特別な装置が必要であるためである。なお、電気抵抗率は、以下に示すWiedemann-Franzの式を用いて熱伝導率に換算することができる。
(Wiedemann-Franzの式)
熱伝導率(WK-1m-1)
=2.44×10-8(WΩK-2)×温度(K)/電気抵抗率(Ωm)
【0078】
ヒートシンクが有する貫通孔等の相違により、ヒートシンクに接して形成された焼結体の熱伝導性が受ける影響を検討するためには、その焼結体の電気抵抗率を測定する必要があるが、焼結後の焼結体は、ヒートシンクや金属板と一体化されている。一方、ヒートシンクも、焼結体を介してヒートシンクと接合されることが想定される金属板等の材料のいずれも導電材料から構成されている。したがって、このような金属板、焼結体及びヒートシンクが一体化したものについて電気抵抗率を測定すると、測定値がヒートシンクの電気抵抗率と金属板の電気抵抗率の影響を受けてしまうため焼結体そのものの測定・評価ができない。焼結体そのものの電気抵抗率を測定・評価するためのモデルとして焼結体に接する両側の板に、導電性を有しないガラス板を用いた。
【0079】
貫通孔を有しない、縦70mm×横70mm×厚さ1.5mmのガラス板(以下、「無孔ガラス板」という)の表面に酸化銀ペーストを塗布した。塗布範囲は、縦横の長さが以下表1に示す「基準範囲縦一辺」及び「基準範囲横一辺」と同じ平面視矩形の範囲であり、塗布厚さは350μmとした。その後、大気下、80℃で10分加熱して酸化銀ペーストを乾燥させた。無孔ガラス板上の酸化銀ペーストを塗布した平面視矩形の範囲の4つの角と、有孔ガラス板上の、貫通孔が縦横配置された範囲の四隅の点(これらを結んだものが基準範囲となる)が重なるように、無孔ガラス板と有孔ガラス板を配置した。
【0080】
その後、2枚重ねたガラス板を、5%水素/残部窒素の雰囲気中で高温プレス機を用いて10MPaの荷重を負荷しながら、250℃で10分間の加圧焼結を行った。室温まで冷却した後、プローブ間隔を1mmに設定した直流4探針法電気抵抗測定装置を使用し、電気抵抗率を測定した。
【0081】
〔接合性の評価〕
無孔ガラス板を、貫通孔を有しない縦70mm×横70mm×厚さ1.5mmの銅板(以下、「無孔銅板」という)に、有孔ガラス板を有孔銅板に変更した以外、上記「電気抵抗率の測定」と同様にして、2枚重ねた銅板について加圧焼結を行った。得られた試料を超音波探傷検査装置(Scanning Acoustic Tomography,SAT)を用いて観察し、2枚の基板が隙間なく接合しているか否か確認し、以下の基準で評価した。
A:得られたSAT像が一様に明るい輝度を示す(隙間なく接合している)
B:得られたSAT像が部分的に暗い輝度を示す(部分的に隙間がある)
【0082】
〔ダイシェア強度の測定〕
上記接合性評価に用いた試料のダイシェア強度は接合面積が大きくそのため付加する外力も大きくなり通常の装置では測定できない。そこで、上記「接合性の評価」と同様にして加圧焼結を行った試料を、貫通孔のない縦3mm×横3mmの部分をダイヤモンドワイヤーソーで切断した試料について、接合強度試験機(Nordson社製DAGE4000)を用いて2枚の銅基板の間のダイシェア強度を測定した。
【0083】
〔試験条件と結果〕
以下表1に、貫通孔の長さ(縦横)、貫通孔最大長、貫通孔面積、隣接貫通孔間の距離(縦横)、貫通孔の個数(縦横)、総有効範囲、基準範囲の長さ(縦横)、基準範囲の面積、面積比(総有効範囲/基準範囲)、SAT観察結果、電気抵抗率、熱伝導率(電気抵抗率の換算値)及びダイシェア強度を示す。
【0084】
図9は、表1で用いた各パラメータを説明するためのヒートシンクの第2の主面の平面模式図である。
【0085】
なお、比較例5については、「有孔ガラス板」及び「有孔銅板」の代わりに、それぞれ「無孔ガラス板」及び「無孔銅板」を用いた。
図9に示した第2の主面は、
図3に示した第2の主面22と同様である。
【表1】