(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064306
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】道路補修材
(51)【国際特許分類】
E01C 7/26 20060101AFI20240507BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20240507BHJP
C08L 95/00 20060101ALI20240507BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
E01C7/26
C08L71/02
C08L95/00
C08K5/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172797
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅義
(72)【発明者】
【氏名】菊池 玲児
(72)【発明者】
【氏名】八幡 信行
(72)【発明者】
【氏名】横溝 克美
(72)【発明者】
【氏名】神尾 学
【テーマコード(参考)】
2D051
4J002
【Fターム(参考)】
2D051AF01
2D051AF02
2D051AG01
2D051AG04
4J002AG001
4J002DM006
4J002EH077
4J002FD016
4J002FD027
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】 本発明は、常温で施工することができ、実質的にVOCの発生がなく、また開封後に時間が経過しても使用可能な新規な道路補修材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、アスファルト、骨材、及び軟化剤を含む道路補修材であって、前記軟化剤が、脂肪酸系化合物を含む、道路補修材及びその製造方法に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト、骨材、及び軟化剤を含む道路補修材であって、前記軟化剤が、脂肪酸系化合物を含む、道路補修材。
【請求項2】
前記アスファルトが、ポリマー改質アスファルトである、請求項1に記載の道路補修材。
【請求項3】
アスファルトコンクリート再生骨材の含有量が、20質量%未満である、請求項1に記載の道路補修材。
【請求項4】
セメントの含有量が、20質量%未満である、請求項1に記載の道路補修材。
【請求項5】
前記軟化剤が、以下の一般式(1)に示される脂肪酸系化合物を含む、請求項1に記載の道路補修材。
R1-CO-(AO)m-OR2・・・一般式(1)
(式中、R1は、炭素数15~19の直鎖又は分岐の炭化水素基を表し、R2は、水素、又は、炭素数1~18の直鎖又は分岐の炭化水素基のいずれかを表す。AOは、炭素数2~4の直鎖若しくは分岐のアルキレンオキシド単位を表し、mは平均付加モル数を表し、0~30の数である。)
【請求項6】
前記脂肪酸系化合物のヨウ素価が、50~110である、請求項1に記載の道路補修材。
【請求項7】
前記軟化剤を、前記アスファルト100質量部に対して、10質量部以上60質量部以下で含む、請求項1に記載の道路補修材。
【請求項8】
前記アスファルト、前記骨材、及び前記軟化剤を混合することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の道路補修材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温で施工するための道路補修材に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト道路のポットホール等を補修するための道路補修材として、鉱物油等のカットバック材を含むアスファルト混合物が知られている。このアスファルト混合物は、カットバック材の揮発に伴って強度が向上することが知られている。
【0003】
また、道路補修材として、特許文献1及び2に記載のようなセメントを含むアスファルト混合物も知られており、このアスファルト混合物は、水を加えることによって硬化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-248472号公報
【特許文献2】特開2020-66980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉱物油等のカットバック材を含むアスファルト混合物は、揮発性有機化合物(VOC)を発生させるという課題があり、また袋詰されているアスファルト混合物を開封した場合には、それを使い切る必要があり、使いきれなかった場合には廃棄する必要がある。
【0006】
特許文献1及び2に記載のような道路補修材は、使用時に水が必要という課題がある。通常の道路補修作業であれば水は不要であるため、これらの道路補修材を用いるためには別途、水を準備する必要があるため、施工上問題となる場合がある。また、これらの道路補修材も、開封した後は吸湿して硬化が始まることから、開封後は、その日のうちに使用する必要がある。
【0007】
本発明は、常温で施工することができ、実質的にVOCの発生がなく、また開封後に時間が経過しても使用可能な新規な道路補修材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下の態様を有する本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
《態様1》
アスファルト、骨材、及び軟化剤を含む道路補修材であって、前記軟化剤が、脂肪酸系化合物を含む、道路補修材。
《態様2》
前記アスファルトが、ポリマー改質アスファルトである、態様1に記載の道路補修材。
《態様3》
アスファルトコンクリート再生骨材の含有量が、20質量%未満である、態様1に記載の道路補修材。
《態様4》
セメントの含有量が、20質量%未満である、態様1に記載の道路補修材。
《態様5》
前記軟化剤が、以下の一般式(1)に示される脂肪酸系化合物を含む、態様1に記載の道路補修材。
R1-CO-(AO)m-OR2・・・一般式(1)
(式中、R1は、炭素数15~19の直鎖又は分岐の炭化水素基を表し、R2は、水素、又は、炭素数1~18の直鎖又は分岐の炭化水素基のいずれかを表す。AOは、炭素数2~4の直鎖若しくは分岐のアルキレンオキシド単位を表し、mは平均付加モル数を表し、0~30の数である。)
《態様6》
前記脂肪酸系化合物のヨウ素価が、50~110である、態様1に記載の道路補修材。
《態様7》
前記軟化剤を、前記アスファルト100質量部に対して、10質量部以上60質量部以下で含む、態様1に記載の道路補修材。
《態様8》
前記アスファルト、前記骨材、及び前記軟化剤を混合することを含む、態様1~7のいずれか一項に記載の道路補修材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、常温で施工することができ、実質的にVOCの発生がなく、また開封後に時間が経過しても使用可能な新規な道路補修材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例で行った貫入抵抗試験を説明する図である。
【
図2】
図2は、実施例で行ったフロー試験を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《道路補修材》
本発明の道路補修材は、アスファルト、骨材、及び軟化剤を含む道路補修材であって、前記軟化剤が、脂肪酸系化合物を含む。
【0012】
本発明者らは、この道路補修材が圧力によって硬化することを見出した。この道路補修材は、従来技術の補修材のように、カットバック材の揮発等を待つ必要はなく、アスファルト道路のポットホール等に敷き詰めた後に、スコップ等によって仮転圧した後、車両又はプレートによって転圧すればすぐに使用できる。理論に拘束されないが、これはアスファルトと骨材と軟化剤とを含む道路補修材に、圧力が掛かることで、骨材のかみ合わせが良くなって骨材同士の接触面積が大きくなるとともに、アスファルトから軟化剤が分離をして迅速に硬化すると考えられる。また、本発明の道路補修材は、大きな圧力が掛かるまでは硬化が進まないため、開封後に時間が経過しても使用可能な状態を維持できることが分かった。
【0013】
本発明の道路補修材は、JIS K0125に準拠して20℃で測定をした場合に、VOC濃度が100mg/L以下、50mg/L以下、30mg/L以下、20mg/L以下、10mg/L以下、又は5mg/L以下であることができる。
【0014】
〈アスファルト〉
本発明の道路補修材は、アスファルトを含有する。
【0015】
アスファルトとしては、種々のアスファルトが使用できる。例えば舗装用石油アスファルトであるストレートアスファルトの他、改質アスファルトが挙げられる。改質アスファルトとしては、ブローンアスファルト;熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂等の高分子材料で改質したアスファルト等が挙げられる。
【0016】
アスファルトは、熱可塑性エラストマーを含有することが好ましい。そのようなアスファルト組成物としては、熱可塑性エラストマーで改質されたストレートアスファルト(改質アスファルト)等が挙げられる。
【0017】
改質アスファルトで用いられる熱可塑性エラストマーとしては、本分野で通常用いられる熱可塑性エラストマーを用いることができるが、例えば、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレンランダム共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸エステル共重合体等の一種以上を挙げることができる。これらの中でも特に、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、及びスチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体を用いることが好ましい。
【0018】
改質アスファルト中の熱可塑性エラストマーの含有量は、改質アスファルト全量に対して、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上であってもよく、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は2質量%以下であってもよい。
【0019】
改質アスファルト中のアスファルト又はストレートアスファルトの含有量は、改質アスファルト全量に対して、70質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は97質量%以上であってもよく、99.5質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、97質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってもよい。
【0020】
本発明の道路補修材中のアスファルトの含有量は、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってもよく、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8.0質量%以下、5.0質量%以下、又は4.0質量%以下であってもよい。
【0021】
〈骨材〉
本発明の道路補修材は、骨材を含有する。骨材としては、本分野で通常用いられるものを用いることができる。例えば、骨材として、再生骨材又はアスファルトコンクリート再生骨材を用いてもよく、これらの再生骨材は、骨材全体の5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、又は40質量%以上であってもよく、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、又は60質量%以下であってもよい。これらの再生骨材は、実質的に使用しなくてもよく、例えば全道路補修材中で20質量%未満、10質量%以下、5質量%以下、又は全く使用しなくてもよい。
【0022】
本発明の道路補修材は、骨材として、粗骨材及び/又は細骨材を用いることが好ましい。骨材中の粒径2.36mm以上の粗骨材及び粒径2.36mm未満の細骨材が、粗骨材同士のかみ合わせ、及び流動性の観点から、粒径、配合率等を選択して用いられることができる。
【0023】
粗骨材としては、例えば、粒径範囲2.36mm以上4.75mm未満の7号砕石、粒径範囲4.75mm以上13.2mm未満の6号砕石、粒径範囲13.2mm以上19mm未満の5号砕石、粒径範囲19mm以上31.5mm未満の4号砕石が挙げられる。この中でも特に、粒径範囲2.36mm以上4.75mm未満の粗骨材を用いることが好ましい。
【0024】
細骨材としては、例えば、2.36mm未満の細骨材を挙げることができ、例えば、川砂、丘砂、山砂、海砂、砕砂、細砂、スクリーニングス、砕石ダスト、シリカサンド、人工砂、ガラスカレット、鋳物砂等が挙げられる。
【0025】
上記の粗骨材及び細骨材の粒径は、JIS A5001-2008に規定される値をいう。
【0026】
本発明の道路補修材中の骨材の含有量は、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、又は90質量%以上であってもよく、97質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下であってもよい。
【0027】
〈軟化剤〉
本発明の道路補修材は、軟化剤として脂肪酸系化合物を含有することができる。これにより、本発明の道路補修材は、実質的にVOCの発生がなく、また開封後に時間が経過しても使用可能となる。
【0028】
脂肪酸系化合物としては、例えばヨウ素価が50~110の脂肪酸系化合物を用いることができる。軟化剤は、複数の脂肪酸系化合物の組み合わせであってもよく、この場合、上記のヨウ素価については、複数の化合物が組み合わせられた脂肪酸系化合物の値をいう。なお、脂肪酸系化合物のヨウ素価は、JIS K0070-1992に準拠して測定したヨウ素価である。
【0029】
脂肪酸系化合物は、以下の一般式(1)に示される化合物であることが好ましい。
R1-CO-(AO)m-OR2・・・一般式(1)
(式中、R1は、炭素数15~19の直鎖又は分岐の炭化水素基を表し、R2は、水素、又は、炭素数1~18の直鎖又は分岐の炭化水素基のいずれかを表す。AOは、炭素数2~4の直鎖若しくは分岐のアルキレンオキシド単位を表し、mは平均付加モル数を表し、0~30の数である。)
【0030】
一般式(1)で表される脂肪酸系化合物としては、脂肪酸および脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルが好ましく、これらを単独で、あるいはこれらから選ばれる2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
脂肪酸系化合物の分子量(g/mol)は、例えば100以上、150以上、200以上、250以上、270以上、又は280以上であってもよく、500以下、450以下、400以下、350以下、330以下、又は320以下であってもよい。脂肪酸系化合物が、複数の化合物の組み合わせで用いられる場合、これらの分子量は、重量平均分子量とすることができる。
【0032】
ここで、R1は炭素数15~17の直鎖または分岐のアルキル基及び炭素数15~17の直鎖または分岐のアルケニル基であることが好ましい。R2は水素、又は、メチル基であることが好ましい。AOはエチレンオキサイド単位であることが好ましい。mは0~15であることが好ましい。製造される道路補修材の施工性が向上するためである。施工性を向上させるため、脂肪酸系化合物のヨウ素価は60~100(g/100mg)であることが好ましく、70~85(g/100mg)であることがさらに好ましい。なお、本発明において「アルケニル基」とは、二重結合を1~3個含む炭化水素基を示す。
【0033】
一般式(1)で表される(b)脂肪酸系化合物としては、脂肪酸:R1COOH、脂肪酸メチルエステル:R1COOCH3、脂肪酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル:R1COO(CH2CH2O)mCH3、(ポリ)オキシエチレン脂肪酸エステル:R1COO(CH2CH2O)mH等があり、具体的な例としては、パルミチン酸、パルミチン酸メチルエステル、パルミチン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンパルミチン酸エステル(平均付加モル数:1~15)、ステアリン酸、ステアリン酸メチルエステル、ステアリン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンステアリン酸エステル(平均付加モル数:1~15)、オレイン酸、オレイン酸メチルエステル、オレイン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンオレイン酸エステル(平均付加モル数:1~15)、リノール酸、リノール酸メチルエステル、リノール酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンリノール酸エステル(平均付加モル数:1~15)、リノレン酸、リノレン酸メチルエステル、リノレン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンリノレン酸エステル(平均付加モル数:1~15)等が挙げられる。
【0034】
これらのうち、オレイン酸メチルエステルを75~95質量%含有し、かつ、ヨウ素価が50~110(g/100mg)である脂肪酸メチルエステル混合物や、炭素数16~18のポリオキシエチレン脂肪酸エステル(平均付加モル数:3~15)を用いることが好ましい。製造される道路補修材の施工性が向上するためである。
【0035】
本発明の道路補修材中の軟化剤の含有量は、アスファルト100質量部に対して、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、30質量部以上、又は40質量部以上であってもよく、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、35質量部以下、又は30質量部以下であってもよい。
【0036】
本発明の道路補修材中の軟化剤の含有量は、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.8質量%以上、又は1.0質量%以上であってもよく、10質量%以下、5.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、1.5質量%以下、又は1.0質量%以下であってもよい。
【0037】
〈その他〉
本発明の道路補修材は、セメントを実質的に含まないことが好ましく、例えばセメントは、全道路補修材中で20質量%未満、10質量%以下、5質量%以下、又は全く含まれないことが好ましい。
【0038】
《道路補修材の製造方法》
本発明の道路補修材の製造方法は、アスファルト、骨材、及び軟化剤を混合することを含む。ここで、本発明の道路補修材の製造方法の各構成については、本発明の道路補修材に関して説明した各構成を参照することができる。すなわち、アスファルト、骨材、軟化剤等の種類及び配合量については、上記の種類及び含有量を参照することができる。
【0039】
本発明の道路補修材の製造方法は、アスファルトと骨材とを混合して第1の混合物を得る工程、及び第1の混合物に軟化剤を添加及び混合して道路補修材を得る工程を含むことができる。ここで、各混合時には、150℃~180℃程度まで加熱して混合することができるが、道路補修材を袋詰する際には一定温度まで冷却を行うことができる。また、第1の混合物は、骨材にアスファルトが実質的に被覆されている状態となっていることが好ましい。
【0040】
本発明の道路補修材は、アスファルト混合物の製造後の高温のままで軟化剤を混合できるため有利である。すなわち、鉱物油を用いる従来技術の道路補修材は、アスファルト混合物の製造後の高温のままでは鉱物油が発火してしまうため、鉱物油を混合する際には一度冷却する必要があるが、本発明の道路補修材においては、そのような冷却及び再加熱の工程が不要となる。
【0041】
本発明の道路補修材の製造方法は、軟化剤の種類に応じて、軟化剤の凍結を防止してその混合性を高めるために、軟化剤を添加する前に、必要に応じて軟化剤を20℃程度まで加温する工程を含むことができる。
【0042】
本発明を以下の実施例でさらに具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【実施例0043】
〈製造例〉
骨材として、以下の表に記載のような粒度分布を有する骨材1及び2を用いた。
【表1】
【0044】
軟化剤として、以下の7種類の軟化剤を用いた。
【表2】
【0045】
道路補修材中のアスファルト及び軟化剤1の含有量が、5.7質量%となるように、上記の骨材1をアスファルト及び軟化剤1と混合して、実施例1の道路補修材を得た。ここで、アスファルトには、ポリマー改質アスファルトII型(ニチレキ株式会社、ポリファルトSS)を使用し、軟化剤1は、アスファルト100質量部に対して、約38質量部用いた。
【0046】
〈試験方法〉
得られた道路補修材、及び軟化剤として鉱物油由来品を含む比較例1の道路補修材(株式会社NIPPO、レミファルトST)について、貫入抵抗試験及びフロー試験によって施工性を評価するとともに、マーシャル密度試験、常温ホイールトラッキング試験、及びカンタブロ試験を行って各種物性を測定した。さらに、得られた道路補修材について、VOC測定も行った。
【0047】
貫入抵抗試験では、マーシャルモールドの上面まで道路補修材を入れて平らに均し、3回突き固めた後に、プッシュプルゲージを用いて
図1に示すようなニードルを1インチ/秒の速度で貫入し、抵抗値を測定した。
【0048】
フロー試験では、
図2に示すような漏斗に道路補修材を入れて、漏斗の上面で平らに均した後、漏斗を水平に持ち上げて漏斗内の道路補修材が全て落下するまでの時間を計測した。また、フロー試験は、製品袋から開封直後からの経時変化についても観察した。
【0049】
マーシャル密度試験は、「舗装調査・試験法便覧第3分冊(社団法人日本道路協会発行)」のB001(マーシャル安定度試験方法)に記載の方法によって供試体を製造した後、B008-1(「密粒度アスファルト混合物等の密度試験方法」)に記載の方法によって測定した。マーシャル密度試験は、製品袋から開封直後からの経時変化について観察した。
【0050】
具体的には、まずモールドの高さ(A)を測る。次に、空のモールド(B)とろ紙2枚(C)の質量を測り、所定の質量900グラムの合材をモールド内に入れて、片面30回付き固める。モールド、ろ紙、及び資料(D)の重量を測り、モールドの縁から合材面までの下がり(E)を測る。ここでは4箇所測定して、平均下がりを求めた。次に、突固め後の試料の厚さ(t)を測る。ここで、厚さ(t)=(A)-(E)-0.5とする。そして、厚さ(t)に、マーシャルモールドの底面積(81・03mm2)を乗じて体積(V)を求める。その後、試料の質量(m)を、(m)=(D)-(B)-(C)によって求める。最後に、密度(ρ)を、(ρ)=(m)/(V)によって計算する。
【0051】
常温ホイールトラッキング試験は、「舗装調査・試験法便覧第3分冊(社団法人日本道路協会発行)」のB003(ホイールトラッキング試験方法)に記載の方法によって測定をした。
【0052】
カンタブロ試験は、「舗装調査・試験法便覧第3分冊(社団法人日本道路協会発行)」のB010(カンタブロ試験方法)に記載の方法によって、5℃で測定をした。
【0053】
VOC測定については、グリーンサーチ株式会社に委託をして、JIS K0125に準拠して常温で測定をした。
【0054】
〈結果〉
これらの結果を、以下の表にまとめる。
【表3】
【0055】
フロー試験及びマーシャル密度試験の経時変化の結果を、以下の表にまとめる。なお、密度比は、開封直後の密度に対するその時点の密度の100分率を示している。
【表4】
【0056】
フロー試験においては、比較例1の補修材は、1日後の段階でほぐれにくい状態であり、3日後では塊をほぐして測定し、7日後及び14日後には塊を無理やりほぐした上で測定したのに対して、実施例1の補修材は、28日後においてもフロー試験において目標値の範囲内となった。同様に、マーシャル密度の試験では、比較例1の補修材は、密度が経時で低下していったのに対して、実施例1の補修材は、28日後であっても密度が実質的に変化しなかった。
【0057】
また、本発明の道路補修材についてVOC測定を行ったところ、VOCは検出されなかった。
【0058】
実施例1の施工性に関する貫入抵抗試験及びフロー試験の結果は、従来品の比較例1と同等であり、施工性は良好であった。また、他の物性試験については、実施例1は、従来品の比較例1よりも優れた結果が得られた。さらに、実施例1の道路補修材においては、VOCの発生がなかった。
【0059】
軟化剤1を、軟化剤2~7にそれぞれ変更して道路補修材を製造し、同様に評価した所、概ね実施例1と同等又は目標値の範囲内の結果が得られた。骨材1を、骨材2に変更した道路補修材も同様に良好な結果が得られたが、骨材の粒径の大きいことに起因して、その道路補修材は、施工性及び見栄えについては、骨材1を用いた道路補修材が良好であったものの、高い耐久性及び耐荷重性を有していた。