(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064308
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】バリケード用支持脚
(51)【国際特許分類】
E01F 13/00 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
E01F13/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172801
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】390014029
【氏名又は名称】株式会社八木熊
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】弁理士法人大手門国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 仁志
【テーマコード(参考)】
2D101
【Fターム(参考)】
2D101CA06
2D101DA05
2D101EA09
2D101FA11
2D101FA23
2D101GA22
(57)【要約】
【課題】 自動車の交通誘導を行うことができ、更に自動車とバリケードの距離や位置が変化した場合でも運転席から反射光に気づきやすいバリケード用支持脚を提供すること。
【解決手段】 バー材をかけ渡して使用されるプラスチック製のバリケード用支持脚において、前記支持脚本体を、前記バー材を脱着可能な上側の頭部と、この頭部よりも下側に形成された胴部と、を含んで構成し、前記胴部に、正面視で上側半直線と下側半直線が所定角度で交わるく字型の凹溝部を形成して、当該凹溝部の底面に光反射材を取着可能に構成し、凹溝部の底面を溝の短手方向において屈曲面に形成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バー材をかけ渡して使用されるプラスチック製のバリケード用支持脚であって、
前記支持脚本体が、前記バー材を脱着可能な上側の頭部と、この頭部よりも下側に形成された胴部と、を含んで成り、
前記胴部には、正面視で上側半直線と下側半直線が所定角度で交わるく字型の凹溝部が形成されて、当該凹溝部の底面に光反射材を取着可能に構成されており、更に前記凹溝部の底面が溝の短手方向において屈曲面となっている、バリケード用支持脚。
【請求項2】
前記凹溝部の底面が、く字の内側に形成された正面向きの第一底面と、く字の外側に形成された左向きまたは右向きの第二底面とから成り、前記第一底面と第二底面によって溝の短手方向の屈曲面が形成されている、請求項1記載のバリケード用支持脚。
【請求項3】
前記凹溝部の底面が、上側半直線および下側半直線の各溝の長手方向においてく字の頂点が最深部または最浅部となるように下向きまたは上向きに傾斜している、請求項1記載のバリケード用支持脚。
【請求項4】
前記胴部に一対の凹溝部が左右対称に、かつ、胴部の上下全体にわたって形成されると共に、前記一対の凹溝部の間に窓部が形成されている、請求項1記載のバリケード用支持脚。
【請求項5】
前記胴部の表裏面に同形状の凹溝部が対向位置に形成されている、請求項1記載のバリケード用支持脚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に工事現場等に使用されるバリケード用支持脚に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路工事の現場等では、立ち入りを禁止するためのバリケードが設置されるのが一般的であり、バリケードを簡単に構築するための器具として単管をかけ渡して設置できるバリケード用支持脚が広く知られている。またこの種のバリケードとしては、軽量かつ持ち運びが容易で通行人がぶつかったときでも怪我をしにくいプラスチック製のものが最近主流となっている。
【0003】
一方、道路の工事現場においては自動車の交通誘導(例えば、幅寄せ等)が必要になることも多く、警備員が配置されることも多いが、人件費等の面で警備員を配置できない場合には誘導用の矢印板などが設置されることも多い。また従来においては、バリケード用支持脚に光反射材を取着して矢印板の機能を持たせる技術(例えば、特許文献1~5参照)も公知となっている。
【0004】
しかしながら、上記従来のバリケード用支持脚は、支持脚の平面部分に光反射材を取着する構成であったため、自動車のヘッドランプの光が当たる角度によって運転席から反射光に気づき難くなるケースがあった(例えば、自動車とバリケードの距離が遠いときには運転席から気づき易い場合でも、自動車とバリケードの距離が近づいたときに気づき難くなる等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-185023号公報
【特許文献2】特開2002-212926号公報
【特許文献3】実用新案登録第3140829号公報
【特許文献4】特開2001-90034号公報
【特許文献5】特開2006-144314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題を解決することを課題としており、要約すると自動車の交通誘導を行うことができ、更に自動車とバリケードの距離や位置が変化した場合でも運転席から反射光に気づきやすいバリケード用支持脚を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決する手段として、バー材Pをかけ渡して使用されるプラスチック製のバリケード用支持脚において、前記支持脚本体1を、前記バー材Pを脱着可能な上側の頭部11と、この頭部11よりも下側に形成された胴部12と、を含んで構成し、前記胴部12に、正面視で上側半直線Uと下側半直線Dが所定角度で交わるく字型の凹溝部12aを形成して、当該凹溝部12aの底面に光反射材を取着可能に構成し、凹溝部12aの底面を溝の短手方向において屈曲面に形成した。
【0008】
また本発明では、上記凹溝部12aの底面を、く字の内側に形成された正面向きの第一底面Fと、く字の外側に形成された左向きまたは右向きの第二底面Lとから構成し、前記第一底面Fと第二底面Lによって溝の短手方向の屈曲面を形成することができる。これにより自動車とバリケードの距離が遠い場合には、正面向きの光反射材で光を反射させ、自動車とバリケードの距離が近い場合には、左右向きの光反射材で斜め方向に光を反射させることができる。
【0009】
また本発明では、上記凹溝部12aの底面を、上側半直線Uおよび下側半直線Dの各溝の長手方向においてく字の頂点Tが最深部または最浅部となるように下向きまたは上向きに傾斜させている。これにより上記自動車とバリケードの距離が近づいて光が下向きに入射する場合でも光を自動車の運転席がある上方向に反射させ易くなるため、自動車の誘導効果に優れる。
【0010】
また上記胴部12に一対の凹溝部12aを左右対称に、かつ、胴部12の上下全体にわたって形成すると共に、前記一対の凹溝部12aの間に窓部Wを形成することで右側誘導用、左側誘導用のどちらでも使用でき、胴部12の面積を小さく抑えることでバリケード支持脚を軽量化することができる。
【0011】
また本発明では、上記胴部12の表裏面に同形状の凹溝部12を対向位置に形成することにより表裏の向きを変えて右側誘導用、左側誘導用のどちらでも使用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のバリケード用支持脚は、胴部にく字型の凹溝部を形成してこの凹溝部の底面に光反射材を取着可能に構成すると共に、凹溝部の底面を溝の短手方向において屈曲面に形成したことにより、自動車とバリケードの距離が変化し、ヘッドランプ、運転席およびバリケードの相対位置が変わった場合でも凹溝部の角度が異なる面で光を反射させることで運転席に光を反射させ易くなるため、運転席から反射光に気づき易くなる。
【0013】
したがって、自動車を運転して工事現場を通過する際に離れた場所でも近づいた場所でもバリケードの誘導表示に気づき易く、誘導表示に従って工事現場を避けることで安全に通過することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一実施形態におけるバリケード用支持脚を表す正面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態におけるバリケード用支持脚の凹溝部の断面形状を表すA-A断面図およびその拡大図である。
【
図3】本発明の第一実施形態におけるバリケード用支持脚の凹溝部の断面形状を表すC-C断面図である。
【
図4】本発明の第一実施形態におけるバリケード用支持脚を表す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
『第一実施形態』
本発明の第一実施形態を
図1~
図4基づいて説明する。なお図中、符号1で指示するものは、支持脚本体であり、符号2で指示するものは、クランプ部材である。また符号Uで指示するものは、く字の上側半直線であり、符号Dで指示するものは、く字の下側半直線である。また符号Fで指示するものは、第一底面であり、符号Lで指示するものは、第二底面である。また符号Wで指示するものは、窓部である。
【0016】
「バリケード支持脚の構成」
[1]基本構成について
本実施形態のバリケード用支持脚の基本構成について説明する。本実施形態では、
図1に示すようにバー材Pを脱着可能な上側の頭部11と、この頭部11よりも下側に形成された胴部12と、更にその下側に形成された脚部13とからプラスチック製のバリケード用支持脚の支持脚本体1を構成している。また支持脚本体1の頭部11と胴部12には、それぞれクランプ部材2を取り付けてバー材Pの装着を行えるようにしている。バー材Pは特に限定されないが、一般的にバリケード用支持脚にかけ渡して使用される鋼管(単管)や樹脂パイプ等を好適に使用できる。
【0017】
また上記支持脚本体1の胴部12には、
図1の正面視で上側半直線Uと下側半直線Dが所定角度で交わるく字型の凹溝部12aを形成して、この凹溝部12aの底面に
図2に示すように光反射シート等の光反射材Sを取着可能に構成している。また凹溝部12aの底面を、
図2に示すように溝の短手方向(溝の長手方向と直交する方向)において屈曲面とすることで、自動車とバリケード用支持脚の距離が変化してヘッドライト、運転席およびバリケードの相対位置が変化した場合でも運転席に向けて光を反射させることができる。
【0018】
[2]支持脚本体について
[2-1]支持脚本体の材料
次に上記支持脚本体1について詳細に説明する。上記支持脚本体1の材料に関しては、本実施形態では高密度ポリエチレン(HDPE)を採用しているが、所定の強度を有する熱可塑性樹脂であればその他の樹脂を使用することもでき、例えば、ABS樹脂やポリプロピレン等を採用することもできる。また本実施形態では、支持脚本体1に中空のブロー成形品を採用しているが中実のものや射出成形品を採用することもできる。
【0019】
[2-2]頭部の形状
上記支持脚本体1の頭部11の形状に関しては、本実施形態では
図1に示す正面視で中央に空洞部11aを有し、その空洞部11a上に取付バー部11bを備えた形状となっている。そして空洞部11aにクランプ部材2を挿入して取付バー部11bに固定することで、クランプ部材2を支持脚本体1の頭部11に装着している。頭部11や空洞部11a、取付バー部11bの形状はこれに限らずクランプ部材2の種類に応じて適宜変更できる。
【0020】
[2-3]胴部の形状
上記支持脚本体1の胴部12の形状に関しては、本実施形態では
図1に示す正面視で中央に大きな窓部Wを備え、その左右に斜め方向の支柱を備えたA型形状となっている。左右の支柱には上下全体にわたりく字型の凹溝部12aをそれぞれ形成している。また本実施形態では
図1に示す正面視で中央下部に空洞部12bを形成し、その空洞部12b上に取付バー部12cを設けている。そして空洞部12bにバー材Pを装着するためのクランプ部材2を挿入して取付バー部12cに固定することで、クランプ部材2を支持脚本体1の胴部12に装着している。なお空洞部12bや取付バー部12cの形状はこれに限らずクランプ部材2の種類に応じて適宜変更できる。
【0021】
上記凹溝部12aに関しては、本実施形態では
図2に示すように凹溝部12aの底面を、く字の内側に形成された正面向きの第一底面Fと、く字の外側に形成された左向きまたは右向きの第二底面Lとから構成し、第一底面Fと第二底面Lによって溝の短手方向の屈曲面を形成している。これにより凹溝部12aの底部に光反射材Sを取着して使用すれば、自動車とバリケードの距離が遠い場合に正面向きに光を反射させ、自動車とバリケードの距離が近い場合には左右の斜め方向に光を反射させることができる。
【0022】
上記凹溝部12aの第一底面Fと第二底面Lの角度は特に限定されないが、150度~175度の範囲内であることが好ましい。また上記凹溝部12aの第一底面Fと第二底面Lを曲面状に形成することもでき、第二底面Lを段階的に傾斜が異なる複数の面から構成することもできる。また本実施形態では、第一底面Fと第二底面Lから成る屈曲面を凸型としているが、凹型に形成することもできる。凹溝部12aの深さについても、使用する光反射シートやその他の光反射材(例えば、光反射塗料など)の厚みに応じて適宜変更することができる。
【0023】
また本実施形態では、
図1及び
図3に示すように凹溝部12aの底面を、上側半直線Uおよび下側半直線Dの各溝の長手方向においてく字の頂点Tが最深部となるように下向きまたは上向きに傾斜させている。具体的には、上側半直線Uおよび下側半直線Dの各端部の凹溝部12aの深さが最も小さく、く字の頂点Tの凹溝部12aの深さが最も大きくなるように傾斜させている。これにより上記自動車とバリケードの距離が近づいて光が下向きに入射する場合でも光を自動車の運転席がある上方向に反射させ易くなるため、自動車の誘導効果に優れる。
【0024】
上記凹溝部12aの上側半直線Uおよび下側半直線Dの角度は特に限定されないが、150度~175度の範囲内であることが好ましい。また上記凹溝部12aの上側半直線Uおよび下側半直線Dを曲面状の傾斜面とすることもでき、更に上側半直線Uおよび下側半直線Dの各端部からく字の頂点部Tに向かって段階的に角度が付いた傾斜面とすることもできる。また本実施形態では、く字の頂点Tが最深部となるように上側半直線Uおよび下側半直線Dの各溝部を傾斜させているが、く字の頂点Tが最浅部(最も深さが小さい部分)となるように傾斜させることもできる。
【0025】
また本実施形態では、上記胴部12の左右の支柱に一対の凹溝部12aを左右対称に、かつ、胴部12の上下全体にわたって形成すると共に、一対の凹溝部12aの間に窓部Wを形成することで、左右どちらの凹溝部12aにも光反射材Sを取着できる。そのため、バリケード用支持脚を右側誘導用、左側誘導用のどちらにも使用できる。更に窓部Wを設けることで
図1の正面視における胴部12の面積を小さく抑えることができるため、バリケード支持脚を軽量化することもできる。本実施形態では、上記胴部12の左右下部にそれぞれ肉抜き部12dを設けることで更に軽量化している。
【0026】
また本実施形態では、
図4に示すように上記胴部12の表裏面(正面および背面)に同形状の凹溝部12・12´を対向位置に形成している。これにより表裏(正面および背面)の向きを変えれば右側誘導用、左側誘導用のどちらにも使用できる。なお本実施形態では、表裏の凹溝部12aを同形状としているが、表裏で異なる凹溝部12aの底面形状を採用することもできる。また本実施形態では、左右対称のく字型の凹溝部12を形成しているが、左右一方のみのく字型の凹溝部12aを採用することもできる。
【0027】
[2-4]脚部の形状
上記支持脚本体1の脚部13の形状に関しては、
図1及び
図4に示すように本実施形態では左右両側にそれぞれ脚部13を形成している。脚部13の大きさや配置、数等は胴部12の形状によって適宜変更できる。また脚部13を有しない支持脚本体1の形状を採用することもできる。また本実施形態では、
図4に示すように脚部13の底面側に突起状の摩耗部13aを形成してバリケード用支持脚を引きずって持ち運ぶ場合でも脚部13の本体部が削れないようにしている。この摩耗部13aの形状に関しては、本実施形態では波型の線状に形成しているが、点状や複数列の形状で形成することもできる。
【0028】
[2-5]支持脚本体の全体形状
本実施形態では、支持脚本体1を
図1に示す正面視でA型の形状としているが、全体形状はこれに限らず、例えば特開2001-90034号に示されるような窓部を持たない平板形状を採用することもでき、また特開2006-144314号に示されるような矢印型の形状を採用することもできる。また平板型や矢印型の形状を採用する場合には、同じ向きのく字型の凹溝部12aを複数並べて形成することもできる。
【0029】
[3]光反射材について
上記光反射材Sに関しては、本実施形態では凹溝部12aの底面全体に対して貼り付ける光反射シートを採用しているが、凹溝部12aの底面に光反射塗料を塗布することもできる。また他にも光反射シートをインサート成形したり、光反射シートや光反射塗料を凹溝部12aの全体ではなく部分的に貼り付け、または塗布することもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 支持脚本体
11 頭部
11a 空洞部
11b 取付バー部
12 胴部
12a 凹溝部
12b 空洞部
12c 取付バー部
12d 肉抜き部
13 脚部
13a 摩耗部
2 クランプ部材
U 上側半直線
D 下側半直線
F 第一底面
L 第二底面
W 窓部
S 光反射材