(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064315
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】制振ブレース構造
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20240507BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20240507BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
E04H9/02 311
E04H9/14 G
F16F15/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172811
(22)【出願日】2022-10-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行者名:一般社団法人日本建築学会、刊行物名:DVD2022年度大会(北海道)学術講演梗概集 建築デザイン発表梗概集、発行年月日:2022年7月20日。 集会名:2022年度日本建築学会大会(北海道)、主催者名:一般社団法人日本建築学会、開催日:2022年9月7日。
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷 翼
(72)【発明者】
【氏名】中島 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】大島 睦巳
(72)【発明者】
【氏名】柳坂 祥希
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AA05
2E139AC23
2E139AD03
2E139BA17
2E139BD14
3J048AA06
3J048AC05
3J048BD08
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】木質系の部材を使用して木材の質感を持たせつつ、簡潔な構造で振動を効果的に低減する。
【解決手段】制振ブレース構造10Aは、構造物1の骨組2の第1の部分P1に接合された第1連結用鋼板20Aと、骨組2の第2の部分P2に固定され、第1連結用鋼板20Aに向けて延び、第1連結用鋼板20Aに対して相対移動可能に設けられた木質系支持材40Aと、第1連結用鋼板20Aと木質系支持材40Aの間に介装されて、第1連結用鋼板20Aと木質系支持材40Aとの相対移動を減衰させる粘弾性ダンパー50Aと、を備え、粘弾性ダンパー50Aは、第1鋼板及び第2鋼板と、高減衰ゴムと、を備え、第1鋼板と第2鋼板は、それぞれ接着剤層を介して木質系支持材40A及び第1連結用鋼板20Aの各々の表面に接着接合されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘弾性ダンパーと木質系支持材が組み合わされた制振ブレース構造であって、
構造物の骨組の第1の部分に接合された第1連結用鋼板と、
前記骨組の第2の部分に固定され、前記第1連結用鋼板に向けて延び、前記第1連結用鋼板に対して相対移動可能に設けられた前記木質系支持材と、
前記第1連結用鋼板と前記木質系支持材の各々の表面の間に介装されて、前記第1連結用鋼板と前記木質系支持材との相対移動を減衰させる前記粘弾性ダンパーと、を備え、
前記粘弾性ダンパーは、互いに離間して設けられた第1鋼板及び第2鋼板と、前記第1鋼板と前記第2鋼板の間に設けられた高減衰ゴムを備え、前記第1鋼板及び前記第2鋼板の各々と前記高減衰ゴムとが加硫接着されており、
前記第1鋼板と前記第2鋼板は、それぞれ接着剤層を介して前記木質系支持材及び前記第1連結用鋼板の各々の前記表面に接着接合されていることを特徴とする制振ブレース構造。
【請求項2】
前記木質系支持材と、前記粘弾性ダンパーは、それぞれが一対設けられ、一対の前記木質系支持材の各々は、前記第1連結用鋼板を、一対の前記粘弾性ダンパーの各々を介して挟み込むように設けられて、前記木質系支持材と前記粘弾性ダンパー、及び前記粘弾性ダンパーと前記第1連結用鋼板が、それぞれ構造用接着剤で接合され、
前記第2の部分に接合された第2連結用鋼板を更に備え、前記木質系支持材は、前記表面が、前記構造用接着剤、またはボルトを用いて、前記第2連結用鋼板に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の制振ブレース構造。
【請求項3】
前記第1連結用鋼板と、前記粘弾性ダンパーは、それぞれが一対設けられ、一対の前記第1連結用鋼板の各々は、前記木質系支持材を、一対の前記粘弾性ダンパーの各々を介して挟み込むように設けられて、前記第1連結用鋼板と前記粘弾性ダンパー、及び前記粘弾性ダンパーと前記木質系支持材が、それぞれ構造用接着剤で接合され、
前記第2の部分に接合された第2連結用鋼板を更に備え、前記木質系支持材は、前記表面が、前記構造用接着剤、またはボルトを用いて、前記第2連結用鋼板に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の制振ブレース構造。
【請求項4】
前記一対の木質系支持材の間には、延在方向に所定の間隔ごとにつづり材が設けられているか、または、前記一対の木質系支持材の間の隙間を塞ぐように隙間塞ぎ用の木材が設けられることを特徴とする請求項2に記載の制振ブレース構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘弾性ダンパーと木質系支持材が組み合わされた制振ブレース構造に関する。
【背景技術】
【0002】
粘弾性ダンパーを用い、建物の制振性能を高めることが行われている。粘弾性ダンパーは、風や地震による建物の揺れに対し、制振性能を発揮する。
例えば特許文献1には、構造物の骨組みの一方の部位に取り付けられて軸力が作用する内側部材と、骨組みの他方の部位に取り付けられて軸力が作用する外側部材と、これら内側部材及び外側部材の間に介装された粘弾性体とを備えた制震ダンパーが開示されている。
また、特許文献2には、複数枚の鋼板と、各鋼板間に接着される粘弾性体とからなり、鋼板の一端が建物のフレーム側の連結部材に連結される制震ダンパーが開示されている。
また、特許文献3には、鋼製外側筋かい構成材における筋かい長手方向に延長する保持孔内に、筋かい長手方向に延長する鋼製内側筋かい構成材が配置され、その内側筋かい構成材における外側筋かい構成材内に配置された部分の周面とその外側筋かい構成材の内周面との間に粘弾性層が介在されて固着され、外側筋かい構成材内の奥部と内側筋かい構成材の先端部との間に伸縮許容間隙が設けられて、振動抑制筋かい材が構成され、その振動抑制筋かい材の両端部が建造物の骨組みに連結されている、構造物の振動抑制装置が開示されている。
【0003】
このような粘弾性ダンパーを、例えばブレースとして用いるに際し、デザイン性を高めるために、木質系の部材を使用して木現しとすることが考えられる。木質系の部材を使用する場合においては、特に、木質系の部材を取り付けるためのボルト等の取付部材と、木質系の部材との間に応力が集中し、取付部材が木質系の部材にめり込むことがある。取付部材が木質系の部材にめり込むと、接合部分の剛性が低下してしまう。したがって、木質系の部材を粘弾性ダンパーと組み合わせてブレースを構築したとしても、粘弾性ダンパーの性能を有効に発揮できず、振動を効果的に低減できない可能性がある。
また、木質系の部材を、ボルト等を用いて取り付ける場合においては、取り合いが複雑になる可能性がある。
木質系の部材を使用して木材の質感を持たせつつ、簡潔な構造で振動を効果的に低減することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4950913号公報
【特許文献2】特開2016-56605号公報
【特許文献3】特開平3-262881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、木質系の部材を使用して木材の質感を持たせつつ、簡潔な構造で振動を効果的に低減することができる、制振ブレース構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の制振ブレース構造は、粘弾性ダンパーと木質系支持材が組み合わされた制振ブレース構造であって、構造物の骨組の第1の部分に接合された第1連結用鋼板と、前記骨組の第2の部分に固定され、前記第1連結用鋼板に向けて延び、前記第1連結用鋼板に対して相対移動可能に設けられた前記木質系支持材と、前記第1連結用鋼板と前記木質系支持材の各々の表面の間に介装されて、前記第1連結用鋼板と前記木質系支持材との相対移動を減衰させる前記粘弾性ダンパーと、を備え、前記粘弾性ダンパーは、互いに離間して設けられた第1鋼板及び第2鋼板と、前記第1鋼板と前記第2鋼板の間に設けられた高減衰ゴムを備え、前記第1鋼板及び前記第2鋼板の各々と前記高減衰ゴムとが加硫接着されており、前記第1鋼板と前記第2鋼板は、それぞれ接着剤層を介して前記木質系支持材及び前記第1連結用鋼板の各々の前記表面に接着接合されていることを特徴とする。
このような構成によれば、粘弾性ダンパーの第1鋼板が、木質系支持材の表面に対して接合され、第2鋼板が第1連結用鋼板に接合されるようにして、粘弾性ダンパーが設けられている。粘弾性ダンパーが木質系支持材の表面に接合されているため、粘弾性ダンパーと木質系支持材との間の接合において、接合面を平面状としつつ、接合面積を大きくして、第1連結用鋼板から木質系支持材へと作用する応力を、広範囲に分散させることができる。これにより、第1鋼板の、木質系支持材へのめり込みが抑制される。
また、何らかの部材を木質系支持材に接合するに際し、ボルトや釘などの鋼製の接合具を用いると、木質系支持材のボルトや釘などが設けられた部分の周辺に応力が集中し、これにより、部材が木質系支持材にめり込むことが考えられる。これに対し、上記のような構成によれば、粘弾性ダンパーの第1鋼板と、木質系支持材は、接着剤層を介して接着接合されている。これにより、第1鋼板を木質系支持材に対してボルトや釘などの鋼製の接合具を用いて接合した場合に比べ、第1鋼板の、木質系支持材へのめり込みが抑制される。
このようにして、木質系支持材に接合された第1鋼板の、木質系支持材へのめり込みが抑制されるため、粘弾性ダンパーの性能が有効に発揮され、振動を効果的に低減することができる。
また、粘弾性ダンパーの第1鋼板と第2鋼板は、それぞれ接着剤層を介して、木質系支持材及び第1連結用鋼板の各々の表面に接着接合されている。このため、粘弾性ダンパーを取り付けるためにボルトを用いる必要がなくなる。すると、ボルトを締結するための接合しろを、第1鋼板、第2鋼板に設ける必要がなくなり、接合部分の取り合いが簡潔なものとなる。
このようにして、木質系の部材を使用して木材の質感を持たせつつ、簡潔な構造で振動を効果的に低減することができる、制振ブレース構造を提供することが可能となる。
【0007】
本発明の一態様においては、前記木質系支持材と、前記粘弾性ダンパーは、それぞれが一対設けられ、一対の前記木質系支持材の各々は、前記第1連結用鋼板を、一対の前記粘弾性ダンパーの各々を介して挟み込むように設けられて、前記木質系支持材と前記粘弾性ダンパー、及び前記粘弾性ダンパーと前記第1連結用鋼板が、それぞれ構造用接着剤で接合され、前記第2の部分に接合された第2連結用鋼板を更に備え、前記木質系支持材は、前記表面が、前記構造用接着剤、またはボルトを用いて、前記第2連結用鋼板に固定されている。
このような構成によれば、第1連結用鋼板を挟んだ両側に、粘弾性ダンパーと、木質系支持材とが設けられている。このように、粘弾性ダンパーを複数備えることで、制振ブレース構造における振動減衰性能を高めることができる。
また、木質系支持材が、骨組の第2の部分に固定される部分においては、木質系支持材が、第2の部分に接合された第2連結用鋼板に対して、構造用接着剤、またはボルトを用いて強固に接合されている。このように、木質系支持材を、骨組の第2の部分に強固に固定することで、地震等による振動による、骨組の第1の部分と第2の部分との間の変位が、木質系支持材と、第1の部分に接合された第1連結用鋼板と、の間に配置された、粘弾性ダンパーに集中して作用する。これにより、粘弾性ダンパーによる振動減衰性能を、より効果的に発揮することが可能となる。
【0008】
本発明の一態様においては、前記第1連結用鋼板と、前記粘弾性ダンパーは、それぞれが一対設けられ、一対の前記第1連結用鋼板の各々は、前記木質系支持材を、一対の前記粘弾性ダンパーの各々を介して挟み込むように設けられて、前記第1連結用鋼板と前記粘弾性ダンパー、及び前記粘弾性ダンパーと前記木質系支持材が、それぞれ構造用接着剤で接合され、前記第2の部分に接合された第2連結用鋼板を更に備え、前記木質系支持材は、前記表面が、前記構造用接着剤、またはボルトを用いて、前記第2連結用鋼板に固定されている。
このような構成によれば、木質系支持材を挟んだ両側に、粘弾性ダンパーと、第1連結用鋼板とが設けられている。このように、粘弾性ダンパーを複数備えることで、制振ブレース構造における振動減衰性能を高めることができる。
また、木質系支持材が、骨組の第2の部分に固定される部分においては、木質系支持材が、第2の部分に接合された第2連結用鋼板に対して、構造用接着剤、またはボルトを用いて強固に接合されている。このように、木質系支持材を、骨組の第2の部分に強固に固定することで、地震等による振動による、骨組の第1の部分と第2の部分との間の変位が、木質系支持材と、第1の部分に接合された第1連結用鋼板と、の間に配置された、粘弾性ダンパーに集中して作用する。これにより、粘弾性ダンパーによる振動減衰性能を、より効果的に発揮することが可能となる。
【0009】
本発明の一態様においては、前記木質系支持材が一対設けられた場合において、前記一対の木質系支持材の間には、延在方向に所定の間隔ごとにつづり材が設けられているか、または、前記一対の木質系支持材の間の隙間を塞ぐように隙間塞ぎ用の木材が設けられる。
このような構成によれば、一対をなす木質系支持材同士の間に、所定の間隔ごとに設けられるつづり材、または、一対の木質系支持材の間の隙間を塞ぐように隙間塞ぎ用の木材が設けられている。これにより、制振ブレースを構成する木質系支持材の圧縮剛性、引張剛性を高めることができる。その結果、地震等による振動による、骨組の第1の部分と第2の部分との間の変位が、第2の部分に固定された木質系支持材と、第1の部分に接合された第1連結用鋼板と、の間に配置された、粘弾性ダンパーに集中して作用する。これにより、粘弾性ダンパーによる振動減衰性能を、より効果的に発揮することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、木質系の部材を使用して木材の質感を持たせつつ、簡潔な構造で振動を効果的に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る制振ブレース構造を、壁厚方向から見た図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る制振ブレース構造を示す断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る制振ブレース構造の上部に配置された粘弾性ダンパーを示す拡大断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態の変形例に係る制振ブレース構造を示す断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る制振ブレース構造を示す断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態の変形例に係る制振ブレース構造を示す断面図である。
【
図8】制振性能の確認のために行ったシミュレーション検討の際に用いた、躯体モデルの平面構成を示す図である。
【
図9】制振性能の確認のために行ったシミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、高減衰ゴムを挟んだ上側鋼板と下側鋼板が其々加硫接着された粘弾性ダンパーと木質系支持材が構造用接着剤Jで接着接合された制振ブレース構造10である。
具体的には、第1実施形態は、構造物の骨組に接合された連結用鋼板20、30を挟んだ両側に、粘弾性ダンパー50と、木質系支持材40が其々一対として設けられている(
図1~
図5)。第2実施形態は、構造物の骨組に接合された一対をなす連結用鋼板20、30の間に、木質系支持材40が1枚、または1本設けられている(
図6、
図7)。
以下、添付図面を参照して、本発明による制振ブレース構造を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る制振ブレース構造を、壁厚方向から見た図を
図1に示す。
図2は、本発明の第1実施形態に係る制振ブレース構造を示す断面図である。
図3は、本発明の第1実施形態に係る制振ブレース構造の上部に配置された粘弾性ダンパーを示す拡大断面図である。
図1、
図2に示されるように、制振ブレース構造10Aは、構造物1の骨組2において、互いに上下に位置する梁3A、3B同士と、水平方向で隣り合う柱4A、4B同士の間で、斜めに延びるように設けられている。本実施形態において、梁3A、3Bは、それぞれ、H型鋼からなり、上部フランジ3fと、下部フランジ3bと、上部フランジ3fと下部フランジ3bとの間に設けられたウェブ3cと、を有している。梁3A、3Bは、その延伸方向Daの一方の側における端部3sが、一方の柱4Aに接合されている。梁3A、3Bは、その延伸方向Daの他方の側における端部3tが、他方の柱4Bに接合されている。また、本実施形態において、柱4A、4Bは、上下方向Dvから見た際の断面形状が、平面視矩形状の鋼管からなる。
【0013】
制振ブレース構造10Aは、粘弾性ダンパー50Aと木質系支持材40Aが組み合わされている。制振ブレース構造10Aは、第1連結用鋼板20Aと、第2連結用鋼板30Aと、木質系支持材40Aと、粘弾性ダンパー50Aと、を備えている。
第1連結用鋼板20Aは、上方の梁3Aの一方の端部3sと、一方の柱4Aと、の接合部である、骨組2の第1の部分P1に固定されている。第1連結用鋼板20Aは、上方の梁3Aの下部フランジ3bの下面、及び柱4Aの側面に、例えば溶接により接合されている。第1連結用鋼板20Aは、上方の梁3Aの下部フランジ3bの下面、及び柱4Aの側面に、適宜のブラケット(図示無し)を介して、溶接、ボルト接合等によって接合されていてもよい。第1連結用鋼板20Aは、梁3A、3Bの延伸方向Daと、上下方向Dvとの双方に交差する梁幅方向Dtにおいて、上方の梁3Aの下部フランジ3bの中央から、鉛直下方に延びている。
第2連結用鋼板30Aは、下方の梁3Bの、一方の柱4Aに接合された端部3sとは反対側の端部3tと、柱4Aに隣り合う他方の柱4Bとの接合部である、骨組2の第2の部分P2に固定されている。第2連結用鋼板30Aは、下方の梁3Bの上部フランジ3fの上面、及び他方の柱4Bの側面に、例えば溶接により接合されている。第2連結用鋼板30Aは、下方の梁3Bの上部フランジ3fの上面、及び他方の柱4Bの側面に、適宜のブラケット(図示無し)を介して、溶接、ボルト接合等によって接合されていてもよい。第2連結用鋼板30Aは、梁幅方向Dtにおいて、下方の梁3Bの上部フランジ3fの中央から、鉛直上方に延びている。
このようにして、2つの隣り合う柱4A、4Bと、上方の梁3A、及び下方の梁3Bにより形成される矩形形状の架構面において、当該矩形形状の対角線上に位置する角部同士を連結するように、制振ブレース構造10Aは設けられている。
【0014】
木質系支持材40Aは、骨組2の第2の部分P2と第1の部分P1との間で、斜めに延びている、長尺の板材である。
図2に示されるように、木質系支持材40Aは、梁幅方向Dtにおいて、第1連結用鋼板20A、及び第2連結用鋼板30Aを挟んだ両側に、一対が設けられている。一対の木質系支持材40Aは、梁幅方向Dtに間隔をあけて設けられている。各木質系支持材40Aは、例えば、CLT(Cross Laminated Timber:直交集成材)により形成されている。
図3に示されるように、木質系支持材40Aの一方の端部40tは、粘弾性ダンパー50Aと第1連結用鋼板20Aを介して、骨組2の第1の部分P1に連結されている。
【0015】
粘弾性ダンパー50Aは、第1連結用鋼板20Aの、梁幅方向Dtで外側を向く表面20fと、当該表面20fに対向して設けられる、木質系支持材40Aの表面40fとの間に介装されている。粘弾性ダンパー50Aは、第1連結用鋼板20Aを挟んだ両側に、一対が設けられている。これにより、一対の木質系支持材40Aの各々は、第1連結用鋼板20Aを、一対の粘弾性ダンパー50Aの各々を介して挟み込むように設けられている。
粘弾性ダンパー50Aは、第1連結用鋼板20Aと木質系支持材40Aとの相対移動を減衰させる。粘弾性ダンパー50Aは、第1鋼板51と、第2鋼板52と、高減衰ゴム53と、を一体に有している。
図4A、
図4Bは、それぞれ、粘弾性ダンパーの平面図と側面図である。
粘弾性ダンパー50Aは、第1鋼板51と高減衰ゴム53、及び第2鋼板52が、この順に積層されて一体に形成されている。第1鋼板51と第2鋼板52は、平行に、かつ互いに離間して設けられている。高減衰ゴム53は、第1鋼板51と第2鋼板52の間に設けられている。本実施形態においては、粘弾性ダンパー50Aは、第1鋼板51と第2鋼板52を互いに離間して設け、これらの間に高減衰ゴム53を加硫形成することにより、第1鋼板51、第2鋼板52、及び高減衰ゴム53が加硫接着されて一体となるように、製造されている。特に、本実施形態においては、粘弾性ダンパー50Aは、粘弾性ダンパー50Aを厚さ方向から見たときに、その形状が略正方形状となるように形成されて、ユニット化されたものを使用している。
【0016】
高減衰ゴム53は、温度依存性、振動数依存性が共に小さく、単位面積当たりの減衰能力が大きい。高減衰ゴム53は、硬度が高いゴムである。高減衰ゴム53は、粘弾性ダンパーとして使用され得る他の種類のゴムと比較すると、減衰力が大きく、耐震用として使用することが可能である。より具体的には、本実施形態においては、高減衰ゴム53は、イソブレン系のゴムであり、非線形の特性を有し、許容歪は200%で、限界歪は300%であり、最大ダンパー力は400kNであるものが使用され得る。
本実施形態において高減衰ゴム53は、温度依存性が0.70(30℃/10℃)と小さい。より具体的には、高減衰ゴム53の、温度が例えば0℃から40℃に上昇した場合の吸収エネルギーの低下量は、線形ゴムよりも小さい。このように、高減衰ゴム53は温度依存性が小さく、温度が高くなっても大きいエネルギーを吸収できる。また、高減衰ゴム53は、せん断応力度と歪の関係をグラフとして表したときに、線形ゴムよりも履歴ループが大きく、したがって、せん断応力が大きくなったとしても、これに対応可能である。高減衰ゴム53としては、例えば、住友ゴム工業株式会社製の「VS4」を用いることが可能である。
【0017】
図3に示されるように、木質系支持材40Aの端部40tにおいて、各粘弾性ダンパー50Aの第1鋼板51と第2鋼板52は、それぞれ、構造用接着剤Jからなる接着剤層50jを介して、木質系支持材40A及び第1連結用鋼板20Aの各々の表面40f、20fに接着接合されている。木質系支持材40Aと粘弾性ダンパー50A、及び粘弾性ダンパー50Aと第1連結用鋼板20Aが、それぞれ構造用接着剤Jで接合されている。
各粘弾性ダンパー50Aの第1鋼板51は、その表面が、木質系支持材40Aの表面40fに対して当接し、構造用接着剤Jにより、木質系支持材40Aの表面40fに接合されている。各粘弾性ダンパー50Aの第2鋼板52は、その表面が、第1連結用鋼板20Aの表面20fに対して当接し、構造用接着剤Jにより、第1連結用鋼板20Aの表面20fに接合されている。
【0018】
構造用接着剤Jは、スポット溶接接合、ボルト接合、リベット接合などの接合方法に比べて、2倍以上の接合強度を有すると言われている接着剤である。よって、構造用接着剤Jは、部材同士を連結する接合強度が高く、耐久性に優れている特徴があり、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤などがある。
具体的には、本発明の制振ブレース構造では、構造用接着剤Jには粘弾性ダンパー50Aの高減衰ゴム53として使用される高減衰ゴム53の破断耐力(約2.0N/mm2)に対して、十分な剥離強さ(4.5N/mm以上)、及びせん断強さ(15N/mm2以上)を備えているものを使用するのが望ましい。構造用接着剤Jとしては、表面に多少、不揃い、油やほこりが有る場合でも、接着が可能であり、かつ硬化時間が短い、2液混合型のアクリル樹脂系のものを使用するのが望ましい。例えば、構造用接着剤Jとしては、セメダイン株式会社製の2液アクリル樹脂系のメタルロックシリーズの、「Y618H」または「Y630D」を用いることが可能である。
【0019】
木質系支持材40Aの、粘弾性ダンパー50Aが設けられた端部40tとは反対側の、他方の端部40sは、骨組2の第2の部分P2に、第2連結用鋼板30Aを介して固定されている。木質系支持材40Aの端部40sと、第2連結用鋼板30Aとの間には、梁幅方向Dtに所定の厚さを有したスペーサ70が挟み込まれている。スペーサ70は、例えば、木材から形成されている。スペーサ70は、粘弾性ダンパー50Aと同等の厚さを有している。木質系支持材40Aの、梁幅方向Dtで内側を向く表面40fと、スペーサ70の、梁幅方向Dtで外側を向く表面70fとは、当接している。スペーサ70の、梁幅方向Dtで内側を向く表面70gと、第2連結用鋼板30Aの、梁幅方向Dtで外側を向く表面30fとは、当接している。木質系支持材40Aの表面40fとスペーサ70の表面70f、スペーサ70の表面70gと第2連結用鋼板30Aの表面30fとは、それぞれ、構造用接着剤Jにより接合されている。
木質系支持材40A、スペーサ70、及び第2連結用鋼板30Aは、ボルトにより接合されても構わない。ただし、これらの接合にボルトを用いた場合においては、木質系支持材40Aのボルトが設けられた部分の周辺に応力が集中し、木質系支持材40Aが変形する可能性がある。したがって、これらの接合には、本実施形態のように、構造用接着剤Jを用いて接合するのが、より望ましい。
【0020】
図1、
図2に示すように、一対の木質系支持材40Aの間には、木質系支持材40Aの延在する方向に所定の間隔ごとにつづり材80が設けられている。つづり材80は、一対の木質系支持材40Aの間に挟み込まれている。つづり材80は、例えば、木材から形成されている。
【0021】
このようにして、木質系支持材40Aの一方の端部40tが、粘弾性ダンパー50Aを介して、構造物1の骨組2の第1の部分P1に接合された第1連結用鋼板20Aに連結され、他方の端部40sが、骨組2の第2の部分P2に固定されることで、木質系支持材40Aの端部40tは、第1連結用鋼板20Aに対して相対移動可能に設けられている。
このような構成において、例えば地震や風等により、制振ブレース構造10Aが設けられた構造物1が揺れた場合には、上方の梁3Aと下方の梁3Bが、互いに相対変位する。この際に、第2連結用鋼板30A及び木質系支持材40Aは、下方の梁3Bと一体に変位し、第1連結用鋼板20Aは、上方の梁3Aと一体に変位する。すると、粘弾性ダンパー50Aにおいては、第1鋼板51と第2鋼板52が、互いに相対変位しようとする。この相対変位が、第1鋼板51と第2鋼板52の間に設けられた、粘弾性ダンパー50Aの高減衰ゴム53により減衰されることにより、構造物1の揺れが減衰される。
【0022】
上述したような制振ブレース構造10Aによれば、粘弾性ダンパー50Aと木質系支持材40Aが組み合わされた制振ブレース構造10Aであって、構造物1の骨組2の第1の部分P1に接合された第1連結用鋼板20Aと、骨組2の第2の部分P2に固定され、第1連結用鋼板20Aに向けて延び、第1連結用鋼板20Aに対して相対移動可能に設けられた木質系支持材40Aと、第1連結用鋼板20Aと木質系支持材40Aの各々の表面20f、40fの間に介装されて、第1連結用鋼板20Aと木質系支持材40Aとの相対移動を減衰させる粘弾性ダンパー50Aと、を備え、粘弾性ダンパー50Aは、互いに離間して設けられた第1鋼板51及び第2鋼板52と、第1鋼板51と第2鋼板52の間に設けられた高減衰ゴム53を備え、第1鋼板51及び第2鋼板52の各々と高減衰ゴム53とが加硫接着されており、第1鋼板51と第2鋼板52は、それぞれ接着剤層50jを介して木質系支持材40A及び第1連結用鋼板20Aの各々の表面40f、20fに接着接合されている。
このような構成によれば、粘弾性ダンパー50Aの第1鋼板51が、木質系支持材40Aの表面40fに対して接合され、第2鋼板52が第1連結用鋼板20Aに接合されるようにして、粘弾性ダンパー50Aが設けられている。粘弾性ダンパー50Aが木質系支持材40Aの表面40fに接合されているため、粘弾性ダンパー50Aと木質系支持材40Aとの間の接合において、接合面を平面状としつつ、接合面積を大きくして、第1連結用鋼板20Aから木質系支持材40Aへと作用する応力を、広範囲に分散させることができる。これにより、第1鋼板51の、木質系支持材40Aへのめり込みが抑制される。
また、何らかの部材を木質系支持材40Aに接合するに際し、ボルトや釘などの鋼製の接合具を用いると、木質系支持材40Aのボルトや釘などが設けられた部分の周辺に応力が集中し、これにより、部材が木質系支持材40Aにめり込むことが考えられる。これに対し、上記のような構成によれば、粘弾性ダンパー50Aの第1鋼板51と、木質系支持材40Aは、接着剤層50jを介して接着接合されている。これにより、第1鋼板51を木質系支持材40Aに対してボルトや釘などの鋼製の接合具を用いて接合した場合に比べ、第1鋼板51の、木質系支持材40Aへのめり込みが抑制される。
このようにして、木質系支持材40Aに接合された第1鋼板51の、木質系支持材40Aへのめり込みが抑制されるため、粘弾性ダンパー50Aの性能が有効に発揮され、振動を効果的に低減することができる。
また、粘弾性ダンパー50Aの第1鋼板51と第2鋼板52は、それぞれ接着剤層50jを介して、木質系支持材40A及び第1連結用鋼板20Aの各々の表面に接着接合されている。このため、粘弾性ダンパー50Aを取り付けるためにボルトを用いる必要がなくなる。すると、ボルトを締結するための接合しろを、第1鋼板51、第2鋼板52に設ける必要がなくなり、接合部分の取り合いが簡潔なものとなる。
このようにして、木質系の部材を使用して木材の質感を持たせつつ、簡潔な構造で振動を効果的に低減することができる、制振ブレース構造10Aを提供することが可能となる。
【0023】
また、木質系支持材40Aと、粘弾性ダンパー50Aは、それぞれが一対設けられ、一対の木質系支持材40Aの各々は、第1連結用鋼板20Aを、一対の粘弾性ダンパー50Aの各々を介して挟み込むように設けられて、木質系支持材40Aと粘弾性ダンパー50A、及び粘弾性ダンパー50Aと第1連結用鋼板20Aが、それぞれ構造用接着剤Jで接合され、第2の部分P2に接合された第2連結用鋼板30Aを更に備え、木質系支持材40Aは、表面40fが、構造用接着剤J、またはボルトを用いて、第2連結用鋼板30Aに固定されている。
このような構成によれば、第1連結用鋼板20Aを挟んだ両側に、粘弾性ダンパー50Aと、木質系支持材40Aとが設けられている。このように、粘弾性ダンパー50Aを複数備えることで、制振ブレース構造10Aにおける振動減衰性能を高めることができる。
また、木質系支持材40Aが、骨組2の第2の部分P2に固定される部分においては、木質系支持材40Aが、第2の部分P2に接合された第2連結用鋼板30Aに対して、構造用接着剤J、またはボルトを用いて強固に接合されている。このように、木質系支持材40Aを、骨組2の第2の部分P2に強固に固定することで、地震等による振動による、骨組2の第1の部分P1と第2の部分P2との間の変位が、木質系支持材40Aと、第1の部分P1に接合された第1連結用鋼板20Aと、の間に配置された、粘弾性ダンパー50Aに集中して作用する。これにより、粘弾性ダンパー50Aによる振動減衰性能を、より効果的に発揮することが可能となる。
【0024】
また、一対の木質系支持材40Aの間には、延在方向に所定の間隔ごとにつづり材80が設けられている。
このような構成によれば、制振ブレースを構成する木質系支持材40Aの圧縮剛性、引張剛性を高めることができる。その結果、地震等による振動による、骨組2の第1の部分P1と第2の部分P2との間の変位が、第2の部分P2に固定された木質系支持材40Aと、第1の部分P1に接合された第1連結用鋼板20Aと、の間に配置された、粘弾性ダンパー50Aに集中して作用する。これにより、粘弾性ダンパー50Aによる振動減衰性能を、より効果的に発揮することが可能となる。
【0025】
(第1実施形態の変形例)
なお、本発明の制振ブレース構造は、図面を参照して説明した上述の第1実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
本発明の第1実施形態の変形例に係る制振ブレース構造を示す断面図を
図5に示す。
本変形例は、上記第1実施形態を、上下方向に逆転させた構成となっている。本変形例の制振ブレース構造10Bは、第1実施形態と同様に、2つの隣り合う柱4A、4Bと、上方の梁3A、及び下方の梁3Bにより形成される矩形形状の架構面において、当該矩形形状の対角線上に位置する角部同士を連結するように、設けられている。
図5に示されるように、制振ブレース構造10Bは、第1連結用鋼板20Bと、第2連結用鋼板30Bと、木質系支持材40Bと、粘弾性ダンパー50Bと、を備えている。
第1連結用鋼板20Bは、下方の梁3Bと、柱4Bと、の接合部である、骨組2の第1の部分P11に固定されている。第1連結用鋼板20Bは、下方の梁3Bの上部フランジ3fの上面、及び柱4Bの側面に、例えば溶接により接合されている。第1連結用鋼板20Bは、梁幅方向Dtにおいて、下方の梁3Bの上部フランジ3fの中央から、鉛直上方に延びている。
第2連結用鋼板30Bは、上方の梁3Aと、柱4Bに隣り合う他方の柱4Aとの接合部である、骨組2の第2の部分P12に固定されている。第2連結用鋼板30Bは、上方の梁3Aの下部フランジ3bの下面、及び他方の柱4Aの側面に、例えば溶接により接合されている。第2連結用鋼板30Bは、梁幅方向Dtにおいて、上方の梁3Aの下部フランジ3bの中央から、鉛直下方に延びている。
【0026】
木質系支持材40Bは、骨組2の第2の部分P12と第1の部分P11との間で、斜めに延びる、長尺の板材である。木質系支持材40Bは、梁幅方向Dtにおいて、第1連結用鋼板20B、及び第2連結用鋼板30Bを挟んだ両側に、一対が設けられている。一対の木質系支持材40Bは、梁幅方向Dtに間隔をあけて設けられている。
木質系支持材40Bの一方の端部40tは、粘弾性ダンパー50Bと第1連結用鋼板20Bを介して、骨組2の第1の部分P11に連結されている。
各粘弾性ダンパー50Bの第1鋼板51と第2鋼板52は、それぞれ、構造用接着剤Jからなる接着剤層50jを介して、木質系支持材40B及び第1連結用鋼板20Bの各々の表面40f、20fに接着接合されている。
各粘弾性ダンパー50Bの第1鋼板51は、その表面が、木質系支持材40Bの表面40fに対して当接し、構造用接着剤Jにより、木質系支持材40Bの表面40fに接合されている。各粘弾性ダンパー50Bの第2鋼板52は、その表面が、第1連結用鋼板20Bの表面20fに対して当接し、構造用接着剤Jにより、第1連結用鋼板20Bの表面20fに接合されている。
【0027】
木質系支持材40Bは、骨組2の第2の部分P12に、第2連結用鋼板30Bを介して固定されている。木質系支持材40Bと、第2連結用鋼板30Bとの間には、スペーサ70が挟み込まれている。木質系支持材40Bの表面40fと、スペーサ70の、梁幅方向Dtで外側を向く表面70fとは、当接し、構造用接着剤Jにより接合されている。スペーサ70の、梁幅方向Dtで内側を向く表面70gと、第2連結用鋼板30Bの表面30fとは、当接し、構造用接着剤Jにより接合されている。木質系支持材40B、スペーサ70、及び第2連結用鋼板30Bは、ボルトにより接合されても構わない。
一対の木質系支持材40Bの間には、木質系支持材40Bに延在する方向に所定の間隔ごとにつづり材80が設けられている。つづり材80は、一対の木質系支持材40Bの間に挟み込まれている。
【0028】
このようにして、木質系支持材40Bの一方の端部40tが、粘弾性ダンパー50Bを介して、構造物1の骨組2の第1の部分P11に接合された第1連結用鋼板20Bに連結され、他方の端部40sが、骨組2の第2の部分P12に固定されることで、木質系支持材40Bは、第1連結用鋼板20Bに対して相対移動可能に設けられている。
このような構成において、例えば地震や風等により、制振ブレース構造10Bが設けられた構造物1が揺れた場合には、下方の梁3Bと上方の梁3Aが、互いに相対変位する。この際に、第2連結用鋼板30B及び木質系支持材40Bは、上方の梁3Aと一体に変位し、第1連結用鋼板20Bは、下方の梁3Bと一体に変位する。すると、粘弾性ダンパー50Bにおいては、第1鋼板51と第2鋼板52が、互いに相対変位しようとする。この相対変位が、第1鋼板51と第2鋼板52の間に設けられた、粘弾性ダンパー50Bの高減衰ゴム53により減衰されることにより、構造物1の揺れが減衰される。
【0029】
上述したような制振ブレース構造10Bによれば、粘弾性ダンパー50Bと木質系支持材40Bが組み合わされた制振ブレース構造10Bであって、構造物1の骨組2の第1の部分P11に接合された第1連結用鋼板20Bと、骨組2の第2の部分P12に固定され、第1連結用鋼板20Bに向けて延び、第1連結用鋼板20Bに対して相対移動可能に設けられた木質系支持材40Bと、第1連結用鋼板20Bと木質系支持材40Bの各々の表面20f、40fの間に介装されて、第1連結用鋼板20Bと木質系支持材40Bとの相対移動を減衰させる粘弾性ダンパー50Bと、を備え、粘弾性ダンパー50Bは、互いに離間して設けられた第1鋼板51及び第2鋼板52と、第1鋼板51と第2鋼板52の間に設けられた高減衰ゴム53を備え、第1鋼板51及び第2鋼板52の各々と高減衰ゴム53とが加硫接着されており、第1鋼板51と第2鋼板52は、それぞれ接着剤層50jを介して木質系支持材40B及び第1連結用鋼板20Bの各々の表面40f、20fに接着接合されている。
【0030】
また、木質系支持材40Bと、粘弾性ダンパー50Bは、それぞれが一対設けられ、一対の木質系支持材40Bの各々は、第1連結用鋼板20Bを、一対の粘弾性ダンパー50Bの各々を介して挟み込むように設けられて、木質系支持材40Bと粘弾性ダンパー50B、及び粘弾性ダンパー50Bと第1連結用鋼板20Bが、それぞれ構造用接着剤Jで接合され、第2の部分P12に接合された第2連結用鋼板30Bを更に備え、木質系支持材40Bは、表面40fが、構造用接着剤J、またはボルトを用いて、第2連結用鋼板30Bに固定されている。
【0031】
また、一対の木質系支持材40Bの間には、延在方向に所定の間隔ごとにつづり材80が設けられている。
このような構成が、上記第1実施形態と同様な効果を奏することは、言うまでもない。
【0032】
なお、上記第1実施形態、及びその変形例では、一対の木質系支持材40A、40B同士の間に、つづり材80を設けるようにしたが、つづり材80に代えて、一対の木質系支持材40A、40Bの間の隙間を塞ぐように隙間塞ぎ用の木材を設けるようにしてもよい。この場合においても、木質系支持材40A、40Bの軸剛性、せん断剛性を高め、制振ブレース構造10A、10Bにおける振動減衰性能を高めることができる。
【0033】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る制振ブレース構造を示す断面図を
図6に示す。
本変形例の制振ブレース構造10Cは、第1実施形態と同様に、2つの隣り合う柱4A、4Bと、上方の梁3A、及び下方の梁3Bにより形成される矩形形状の架構面において、当該矩形形状の対角線上に位置する角部同士を連結するように、設けられている。
図6に示されるように、制振ブレース構造10Cは、第1連結用鋼板20Cと、第2連結用鋼板30Cと、木質系支持材40Cと、粘弾性ダンパー50Cと、を備えている。
第1連結用鋼板20Cは、上方の梁3Aと、柱4Aと、の接合部である、骨組2の第1の部分P1に固定されている。第1連結用鋼板20Cは、梁幅方向Dtに間隔をあけて一対が設けられている。一対の第1連結用鋼板20Cは、木質系支持材40Cを挟んで、梁幅方向Dtの両側に設けられている。各第1連結用鋼板20Cは、上方の梁3Aの下部フランジ3bの下面、及び柱4Aの側面に、例えば溶接により接合されている。各第1連結用鋼板20Cは、上方の梁3Aの下部フランジ3bから、鉛直面内で下方に向かって延伸している。
第2連結用鋼板30Cは、下方の梁3Bと、柱4Aに隣り合う他方の柱4Bとの接合部である、骨組2の第2の部分P2に固定されている。第2連結用鋼板30Cは、梁幅方向Dtに間隔をあけて一対設けられている。一対の第2連結用鋼板30Cは、木質系支持材40Cを挟んで、梁幅方向Dtの両側に設けられている。各第2連結用鋼板30Cは、下方の梁3Bの上部フランジ3fの上面、及び他方の柱4Bの側面に、例えば溶接により接合されている。各第2連結用鋼板30Cは、下方の梁3Bの上部フランジ3fから、鉛直面内で上方に向かって延伸している。
【0034】
木質系支持材40Cは、骨組2の第2の部分P2と第1の部分P1との間で、斜めに延びている、長尺の板材である。本実施形態においては、第1実施形態とは異なり、木質系支持材40Cは、1枚が設けられている。
木質系支持材40Cの一方の端部40tは、粘弾性ダンパー50Cと第1連結用鋼板20Cを介して、骨組2の第1の部分P1に連結されている。
粘弾性ダンパー50Cは、木質系支持材40Cの、梁幅方向Dtで外側を向く表面40hと、当該表面40hに対向して設けられる、第1連結用鋼板20Cの表面20hとの間に介装されている。粘弾性ダンパー50Cは、木質系支持材40Cを挟んだ両側に、一対が設けられている。これにより、一対の第1連結用鋼板20Cの各々は、木質系支持材40Cを、一対の粘弾性ダンパー50Cの各々を介して挟み込むように設けられている。
【0035】
粘弾性ダンパー50Cは、第1鋼板51と高減衰ゴム53、及び第2鋼板52が、この順に積層されて一体に形成されている。第1鋼板51と第2鋼板52は、平行に、かつ互いに離間して設けられている。高減衰ゴム53は、第1鋼板51と第2鋼板52の間に設けられている。本実施形態においては、粘弾性ダンパー50Aは、第1鋼板51と第2鋼板52を互いに離間して設け、これらの間に高減衰ゴム53を加硫形成することにより、第1鋼板51、第2鋼板52、及び高減衰ゴム53が加硫接着されて一体となるように、製造されている。特に、本実施形態においては、粘弾性ダンパー50Cは、粘弾性ダンパー50Cを厚さ方向から見たときに、その形状が略正方形状となるように形成されて、ユニット化されたものを使用している。
【0036】
木質系支持材40Cの端部40tにおいて、各粘弾性ダンパー50Cの第1鋼板51と第2鋼板52は、それぞれ、構造用接着剤Jからなる接着剤層50jを介して、木質系支持材40C及び第1連結用鋼板20Cの各々の表面40h、20hに接着接合されている。木質系支持材40Cと粘弾性ダンパー50C、及び粘弾性ダンパー50Cと第1連結用鋼板20Cが、それぞれ構造用接着剤Jで接合されている。
各粘弾性ダンパー50Cの第1鋼板51は、その表面が、木質系支持材40Cの表面40hに対して当接し、構造用接着剤Jにより、木質系支持材40Cの表面40hに接合されている。各粘弾性ダンパー50Cの第2鋼板52は、その表面が、第1連結用鋼板20Cの表面20hに対して当接し、構造用接着剤Jにより、第1連結用鋼板20Cの表面20hに接合されている。
粘弾性ダンパー50Cと構造用接着剤Jは、第1実施形態で説明したものと同様のものが使用され得る。
【0037】
一対の第2連結用鋼板30Cのそれぞれにおいて、梁幅方向Dtの内側を向く表面30fは、木質系支持材40Cの梁幅方向Dtの両側を向く表面40hに対し、当接して設けられている。一対の第2連結用鋼板30Cの表面30fと、木質系支持材40Cの表面40hとは、それぞれ、構造用接着剤Jにより接合されている。これにより、木質系支持材40Cの、粘弾性ダンパー50Cが設けられた端部40tとは反対側の、他方の端部40sは、骨組2の第2の部分P2に、一対の第2連結用鋼板30Cを介して固定されている。
木質系支持材40Cと第2連結用鋼板30Cは、ボルトにより接合されても構わない。ただし、これらの接合にボルトを用いた場合においては、木質系支持材40Cのボルトが設けられた部分の周辺に応力が集中し、木質系支持材40Cが変形する可能性がある。したがって、これらの接合には、本実施形態のように、構造用接着剤Jを用いて接合するのが、より望ましい。
【0038】
このようにして、木質系支持材40Cの一方の端部40tが、粘弾性ダンパー50Cを介して、構造物1の骨組2の第1の部分P1に接合された第1連結用鋼板20Cに連結され、他方の端部40sが、骨組2の第2の部分P2に固定されることで、木質系支持材40Cの端部40tは、第1連結用鋼板20Cに対して相対移動可能に設けられている。
このような構成において、例えば地震や風等により、制振ブレース構造10Cが設けられた構造物1が揺れた場合には、上方の梁3Aと下方の梁3Bが、互いに相対変位する。この際に、第2連結用鋼板30C及び木質系支持材40Cは、下方の梁3Bと一体に変位し、第1連結用鋼板20Cは、上方の梁3Aと一体に変位する。すると、粘弾性ダンパー50Cにおいては、第1鋼板51と第2鋼板52が、互いに相対変位しようとする。この相対変位が、第1鋼板51と第2鋼板52の間に設けられた、粘弾性ダンパー50Cの高減衰ゴム53により減衰されることにより、構造物1の揺れが減衰される。
【0039】
上述したような制振ブレース構造10Cによれば、粘弾性ダンパー50Cと木質系支持材40Cが組み合わされた制振ブレース構造10Cであって、構造物1の骨組2の第1の部分P1に接合された第1連結用鋼板20Cと、骨組2の第2の部分P2に固定され、第1連結用鋼板20Cに向けて延び、第1連結用鋼板20Cに対して相対移動可能に設けられた木質系支持材40Cと、第1連結用鋼板20Cと木質系支持材40Cの各々の表面20h、40hの間に介装されて、第1連結用鋼板20Cと木質系支持材40Cとの相対移動を減衰させる粘弾性ダンパー50Cと、を備え、粘弾性ダンパー50Cは、互いに離間して設けられた第1鋼板51及び第2鋼板52と、第1鋼板51と第2鋼板52の間に設けられた高減衰ゴム53を備え、第1鋼板51及び第2鋼板52の各々と高減衰ゴム53とが加硫接着されており、第1鋼板51と第2鋼板52は、それぞれ接着剤層50jを介して木質系支持材40C及び第1連結用鋼板20Cの各々の表面40h、20hに接着接合されている。
このような構成によれば、粘弾性ダンパー50Cの第1鋼板51が、木質系支持材40Cの表面40hに対して接合され、第2鋼板52が第1連結用鋼板20Cに接合されるようにして、粘弾性ダンパー50Cが設けられている。粘弾性ダンパー50Cが木質系支持材40Cの表面40hに接合されているため、粘弾性ダンパー50Cと木質系支持材40Cとの間の接合において、接合面を平面状としつつ、接合面積を大きくして、第1連結用鋼板20Cから木質系支持材40Cへと作用する応力を、広範囲に分散させることができる。これにより、第1鋼板51の、木質系支持材40Cへのめり込みが抑制される。
また、何らかの部材を木質系支持材40Cに接合するに際し、ボルトや釘などの鋼製の接合具を用いると、木質系支持材40Cのボルトや釘などが設けられた部分の周辺に応力が集中し、これにより、部材が木質系支持材40Cにめり込むことが考えられる。これに対し、上記のような構成によれば、粘弾性ダンパー50Cの第1鋼板51と、木質系支持材40Cは、接着剤層50jを介して接着接合されている。これにより、第1鋼板51を木質系支持材40Cに対してボルトや釘などの鋼製の接合具を用いて接合した場合に比べ、第1鋼板51の、木質系支持材40Cへのめり込みが抑制される。
このようにして、木質系支持材40Cに接合された第1鋼板51の、木質系支持材40Cへのめり込みが抑制されるため、粘弾性ダンパー50Cの性能が有効に発揮され、振動を効果的に低減することができる。
また、粘弾性ダンパー50Cの第1鋼板51と第2鋼板52は、それぞれ接着剤層50jを介して、木質系支持材40C及び第1連結用鋼板20Cの各々の表面に接着接合されている。このため、粘弾性ダンパー50Cを取り付けるためにボルトを用いる必要がなくなる。すると、ボルトを締結するための接合しろを、第1鋼板51、第2鋼板52に設ける必要がなくなり、接合部分の取り合いが簡潔なものとなる。
このようにして、木質系の部材を使用して木材の質感を持たせつつ、簡潔な構造で振動を効果的に低減することができる、制振ブレース構造10Cを提供することが可能となる。
【0040】
また、第1連結用鋼板20Cと、粘弾性ダンパー50Cは、それぞれが一対設けられ、一対の第1連結用鋼板20Cの各々は、木質系支持材40Cを、一対の粘弾性ダンパー50Cの各々を介して挟み込むように設けられて、第1連結用鋼板20Cと粘弾性ダンパー50C、及び粘弾性ダンパー50Cと木質系支持材40Cが、それぞれ構造用接着剤Jで接合され、第2の部分P2に接合された第2連結用鋼板30Cを更に備え、木質系支持材40Cは、表面40hが、構造用接着剤J、またはボルトを用いて、第2連結用鋼板30Cに固定されている。
このような構成によれば、木質系支持材40Cを挟んだ両側に、粘弾性ダンパー50Cと、第1連結用鋼板20Cとが設けられている。このように、粘弾性ダンパー50Cを複数備えることで、制振ブレース構造10Cにおける振動減衰性能を高めることができる。
また、木質系支持材40Cが、骨組2の第2の部分P2に固定される部分においては、木質系支持材40Cが、第2の部分P2に接合された第2連結用鋼板30Cに対して、構造用接着剤J、またはボルトを用いて強固に接合されている。このように、木質系支持材40Cを、骨組2の第2の部分P2に強固に固定することで、地震等による振動による、骨組の第1の部分と第2の部分との間の変位が、木質系支持材40Cと、第1の部分P1に接合された第1連結用鋼板20Cと、の間に配置された、粘弾性ダンパー50Cに集中して作用する。これにより、粘弾性ダンパー50Cによる振動減衰性能を、より効果的に発揮することが可能となる。
【0041】
(第2実施形態の変形例)
なお、本発明の制振ブレース構造は、図面を参照して説明した上述の第2実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
本発明の第2実施形態の変形例に係る制振ブレース構造を示す断面図を
図7に示す
本変形例は、上記第2実施形態を、上下方向に逆転させた構成となっている。本変形例の制振ブレース構造10Dは、第1及び第2実施形態と同様に、2つの隣り合う柱4A、4Bと、上方の梁3A、及び下方の梁3Bにより形成される矩形形状の架構面において、当該矩形形状の対角線上に位置する角部同士を連結するように、設けられている。
制振ブレース構造10Dは、第1連結用鋼板20Dと、第2連結用鋼板30Dと、木質系支持材40Dと、粘弾性ダンパー50Dと、を備えている。
第1連結用鋼板20Dは、下方の梁3Bと、柱4Bと、の接合部である、骨組2の第1の部分P11に固定されている。第1連結用鋼板20Dは、梁幅方向Dtに間隔をあけて一対設けられている。一対の第1連結用鋼板20Dは、木質系支持材40Dを挟んで、梁幅方向Dtの両側に設けられている。各第1連結用鋼板20Dは、下方の梁3Bの上部フランジ3fの上面、及び柱4Bの側面に、例えば溶接により接合されている。各第1連結用鋼板20Dは、下方の梁3Bの上部フランジ3fから、鉛直面内で上方に向かって延伸している。
第2連結用鋼板30Dは、上方の梁3Aと、柱4Bに隣り合う他方の柱4Aとの接合部である、骨組2の第2の部分P12に固定されている。第2連結用鋼板30Dは、梁幅方向Dtに間隔をあけて一対設けられている。一対の第2連結用鋼板30Dは、木質系支持材40Dを挟んで、梁幅方向Dtの両側に設けられている。各第2連結用鋼板30Dは、上方の梁3Aの下部フランジ3bの下面、及び他方の柱4Aの側面に、例えば溶接により接合されている。各第2連結用鋼板30Dは、上方の梁3Aの下部フランジ3bから、鉛直面内で下方に向かって延伸している。
【0042】
木質系支持材40Dは、骨組2の第2の部分P12と第1の部分P11との間で、斜めに延びている、長尺の板材である。
粘弾性ダンパー50Dは、木質系支持材40Dの、梁幅方向Dtで外側を向く表面40hと、当該表面40hに対向して設けられる、第1連結用鋼板20Dの表面20hとの間に介装されている。粘弾性ダンパー50Dは、木質系支持材40Dを挟んだ両側に、一対が設けられている。これにより、一対の第1連結用鋼板20Dの各々は、木質系支持材40Dを、一対の粘弾性ダンパー50Dの各々を介して挟み込むように設けられている。
【0043】
木質系支持材40Dの端部40tにおいて、各粘弾性ダンパー50Dの第1鋼板51と第2鋼板52は、それぞれ、構造用接着剤Jからなる接着剤層50jを介して、木質系支持材40D及び第1連結用鋼板20Dの各々の表面40h、20hに接着接合されている。木質系支持材40Dと粘弾性ダンパー50D、及び粘弾性ダンパー50Dと第1連結用鋼板20Dが、それぞれ構造用接着剤Jで接合されている。
各粘弾性ダンパー50Dの第1鋼板51は、その表面が、木質系支持材40Dの表面40hに対して当接し、構造用接着剤Jにより、木質系支持材40Dの表面40hに接合されている。各粘弾性ダンパー50Dの第2鋼板52は、その表面が、第1連結用鋼板20Dの表面20hに対して当接し、構造用接着剤Jにより、第1連結用鋼板20Dの表面20hに接合されている。
【0044】
一対の第2連結用鋼板30Dのそれぞれにおいて、梁幅方向Dtの内側を向く表面30hは、木質系支持材40Dの梁幅方向Dtの両側を向く表面40hに対し、当接して設けられている。一対の第2連結用鋼板30Dの表面30hと、木質系支持材40Dの表面40hとは、それぞれ、構造用接着剤Jにより接合されている。これにより、木質系支持材40Dの、粘弾性ダンパー50Dが設けられた端部40tとは反対側の、他方の端部40sは、骨組2の第2の部分P12に、一対の第2連結用鋼板30Dを介して固定されている。木質系支持材40Dと第2連結用鋼板30Dは、ボルトにより接合されても構わない。
【0045】
このようにして、木質系支持材40Dの一方の端部40tが、粘弾性ダンパー50Dを介して、構造物1の骨組2の第1の部分P11に接合された第1連結用鋼板20Dに連結され、他方の端部40sが、骨組2の第2の部分P12に固定されることで、木質系支持材40Dの端部40tは、第1連結用鋼板20Dに対して相対移動可能に設けられている。
このような構成において、例えば地震や風等により、制振ブレース構造10Dが設けられた構造物1が揺れた場合には、下方の梁3Bと上方の梁3Aが、互いに相対変位する。この際に、第2連結用鋼板30D及び木質系支持材40Dは、上方の梁3Aと一体に変位し、第1連結用鋼板20Dは、下方の梁3Bと一体に変位する。すると、粘弾性ダンパー50Dにおいては、第1鋼板51と第2鋼板52が、互いに相対変位しようとする。この相対変位が、第1鋼板51と第2鋼板52の間に設けられた、粘弾性ダンパー50Dの高減衰ゴム53により減衰されることにより、構造物1の揺れが抑えられる。
【0046】
上述したような制振ブレース構造10Dによれば、粘弾性ダンパー50Dと木質系支持材40Dが組み合わされた制振ブレース構造10Dであって、構造物1の骨組2の第1の部分P11に接合された第1連結用鋼板20Dと、骨組2の第2の部分P12に固定され、第1連結用鋼板20Dに向けて延び、第1連結用鋼板20Dに対して相対移動可能に設けられた木質系支持材40Dと、第1連結用鋼板20Dと木質系支持材40Dの各々の表面20h、40hの間に介装されて、第1連結用鋼板20Dと木質系支持材40Dとの相対移動を減衰させる粘弾性ダンパー50Dと、を備え、粘弾性ダンパー50Dは、互いに離間して設けられた第1鋼板51及び第2鋼板52と、第1鋼板51と第2鋼板52の間に設けられた高減衰ゴム53を備え、第1鋼板51及び第2鋼板52の各々と高減衰ゴム53とが加硫接着されており、第1鋼板51と第2鋼板52は、それぞれ接着剤層50jを介して木質系支持材40D及び第1連結用鋼板20Dの各々の表面40h、20hに接着接合されている。
【0047】
また、第1連結用鋼板20Dと、粘弾性ダンパー50Dは、それぞれが一対設けられ、一対の第1連結用鋼板20Dの各々は、木質系支持材40Dを、一対の粘弾性ダンパー50Dの各々を介して挟み込むように設けられて、第1連結用鋼板20Dと粘弾性ダンパー50D、及び粘弾性ダンパー50Dと木質系支持材40Dが、それぞれ構造用接着剤Jで接合され、第2の部分P2に接合された第2連結用鋼板30Dを更に備え、木質系支持材40Dは、表面40hが、構造用接着剤J、またはボルトを用いて、第2連結用鋼板30Dに固定されている。
このような構成が、上記第2実施形態と同様な効果を奏することは、言うまでもない。
【0048】
(第1実施形態及び第2実施形態のその他の変形例)
また、上記各実施形態及びその変形例では、粘弾性ダンパー50A~50Dは、2枚の、第1鋼板51と第2鋼板52との間に、高減衰ゴム53を備える構成としたが、3枚以上の鋼板と、その間に設けられた複数の高減衰ゴムを備えるようにしてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0049】
(検討例)
次に、上記各実施形態で示した制振ブレース構造の制振性能について検討したので、その結果を以下に示す。
上記したような制振ブレース構造10Aを、構造物1に設置した場合について、地震発生時における応答をシミュレーションにより検証した。
図8は、制振性能の確認のために行ったシミュレーション検討の際に用いた、建物の躯体モデルの平面構成を示す図である。
構造物1は、地上13階建てとし、
図8に示すような骨組2を有する構成とした、骨組2の各階の平面は36.0m×24.8mとした。階高は1階を5.0mとし、その他の階を4.2mとした。
制振ブレース構造10Aは、最大減衰力を75~200tとしたものを、
図8に示すように、各階8台ずつ設け、骨組2全体では、8台×13階の計104台設けた。
このような検討モデルに対し、入力地震動として、告示波×4及び観測波×3のレベル2の7波に対する最大応答値を、シミュレーションにより得た。
また、比較のため、制振ブレース構造10Aを備えず、通常の耐震ブレースを用いた場合についても、同様のシミュレーションを行った。
図9は、制振性能の確認のために行ったシミュレーション検討の結果を示す図である。
この
図9に示されるように、シミュレーションの結果、通常の耐震ブレースを用いた構造に比較し、制振ブレース構造10Aを設置した場合には、最大で層間変形角が30%程度低減することが確認された。
【符号の説明】
【0050】
1 構造物 50A~50D 粘弾性ダンパー
2 骨組 50j 接着剤層
10A~10D 制振ブレース構造 51 第1鋼板
20A~20D 第1連結用鋼板(連結用鋼板) 52 第2鋼板
20f、20h 表面 53 高減衰ゴム
30A~30D 第2連結用鋼板(連結用鋼板) 80 つづり材
30f、30h 表面 J 構造用接着剤
40A~40D 木質系支持材 P1、P11 第1の部分
40f、40h 表面 P2、P12 第2の部分