(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064320
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】杭打機の制御システム
(51)【国際特許分類】
E02D 7/22 20060101AFI20240507BHJP
E02D 13/06 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
E02D7/22
E02D13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172819
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 重希
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA06
2D050CB02
2D050CB23
2D050FF03
2D050FF07
(57)【要約】
【課題】施工の段取り作業に必要なオーガ移動量を最適化し、効率よく施工を進めることが可能な杭打機の制御システムを提供する。
【解決手段】施工用の部材(例えば鋼管杭29)を着脱可能に装着するオーガ28と、該オーガの昇降を案内するリーダ15と、オーガを駆動制御する制御部とを備えた杭打機11の制御システムにおいて、施工予定位置に対する目標深度、施工用の部材構成及び部材継ぎ深度を設定した施工計画データを記憶する記憶部と、部材継ぎの作業開始を促す報知部とを備え、制御部は、現在の施工深度が部材継ぎ深度に達したときに、報知部を作動させ、オーガの上昇運転操作に伴い、部材継ぎ深度を基準としたオーガ上昇移動量が、継ぎ部材の長さに基づく設定移動量に達したときに、オーガの上昇動作を停止させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工用の部材を着脱可能に装着するオーガと、該オーガの昇降を案内するリーダと、前記オーガを駆動制御する制御部とを備えた杭打機の制御システムにおいて、
施工予定位置に対する目標深度、施工用の部材構成及び部材継ぎ深度を設定した施工計画データを記憶する記憶部と、部材継ぎの作業開始を促す報知部とを備え、
前記制御部は、
現在の施工深度が前記部材継ぎ深度に達したときに、前記報知部を作動させ、
前記オーガの上昇運転操作に伴い、前記部材継ぎ深度を基準としたオーガ上昇移動量が、継ぎ部材の長さに基づく設定移動量に達したときに、前記オーガの上昇動作を停止させることを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、現在の施工深度が前記部材継ぎ深度に達したときに、前記オーガの下降動作を停止させることを特徴とする請求項1記載の制御システム。
【請求項3】
前記杭打機は、前記施工用の部材を鋼管杭とした鋼管杭施工に適用されることを特徴とする請求項1又は2記載の制御システム。
【請求項4】
前記杭打機は、前記施工用の部材をロッドとした地盤改良施工に適用されることを特徴とする請求項1又は2記載の制御システム。
【請求項5】
施工用のロッドを着脱可能に装着するオーガと、該オーガの昇降を案内するリーダと、前記オーガを駆動制御する制御部とを備えた杭打機の制御システムにおいて、
施工予定位置に対する目標深度、施工用のロッド構成及びロッド掴み替え深度を設定した施工計画データを記憶する記憶部と、ロッド掴み替えの作業開始を促す報知部とを備え、
前記制御部は、
現在の施工深度が前記ロッド掴み替え深度に達したときに、前記報知部を作動させ、
前記オーガの上昇運転操作に伴い、前記ロッド掴み替え深度を基準としたオーガ上昇移動量が、ロッドの掴み位置間距離に基づく設定移動量に達したときに、前記オーガの上昇動作を停止させることを特徴とする制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、現在の施工深度が前記ロッド掴み替え深度に達したときに、前記オーガの下降動作を停止させることを特徴とする請求項5記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機の制御システムに関し、詳しくは、杭施工用のオーガを備えた杭打機の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、リーダに沿って昇降するオーガを備えた杭打機は、その構造上、オーガ昇降における1ストローク長さ(1回あたりの施工長さ)が、リーダの長さを限度として制限される。したがって、施工長さがオーガストロークを超えるような長尺施工を行う場合、1ストローク長さに見合う長さの施工用部材(鋼管杭、掘削ロッドなど)を継ぎ足しながら施工が行われている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
一例として、鋼管杭を継ぎ足しながら施工する手順は、1本目の鋼管杭を杭打機のオーガにセットし、施工管理装置の深度データをリセットしてゼロとした後、オーガ駆動(回転・下降)で鋼管杭を地中に回転圧入するとともに、施工管理装置で深度データを取り込んでいく。鋼管杭を所定量埋設した後は、施工管理装置を杭継ぎモードにして深度データを保持し、該保持状態で、オーガから1本目の鋼管杭を分離する。次いで、オーガを上昇させ、クレーンなどで2本目の鋼管杭を吊り込んでオーガにセットし、該セットした2本目の鋼管杭を1本目の鋼管杭の上にセットした状態で、2本の鋼管杭を溶接や螺合によって接続する。次いで、施工管理装置を杭継ぎモードから通常モードに戻し、一旦保持した深度データに新たな深度を加算しながら鋼管杭を埋設する。3本以上の鋼管杭を接続して継ぎ足す場合には、2本目の鋼管杭を埋設した後、同じ操作を繰り返して3本目の鋼管杭を2本目の鋼管杭の上部に接続して埋設する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-76415号公報
【特許文献2】特開2001-317041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
施工用部材の継ぎ作業は、一見すると定型的な作業の繰り返しに見えるが、確実な継手を得る観点から、作業しやすい足場の確保が不可欠であり、安易に効率重視で進めることができない作業でもある。例えば、杭打機のオペレータは、良好な作業姿勢を確保できる高さに杭を打止めることが求められる。その上、先行埋設杭とオーガとの間に次の杭を吊り込んで配置するための適切な隙間も求められる。特に、当該隙間を得るためのオーガ移動量については、施工管理に表れない要素であることから、オペレータの経験や勘に頼る必要があり、作業に無駄が生じやすい。
【0006】
そこで本発明は、施工の段取り作業に必要なオーガ移動量を最適化し、効率よく施工を進めることが可能な杭打機の制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機の制御システムの第1の構成は、施工用の部材を着脱可能に装着するオーガと、該オーガの昇降を案内するリーダと、前記オーガを駆動制御する制御部とを備えた杭打機の制御システムにおいて、施工予定位置に対する目標深度、施工用の部材構成及び部材継ぎ深度を設定した施工計画データを記憶する記憶部と、部材継ぎの作業開始を促す報知部とを備え、前記制御部は、現在の施工深度が前記部材継ぎ深度に達したときに、前記報知部を作動させ、前記オーガの上昇運転操作に伴い、前記部材継ぎ深度を基準としたオーガ上昇移動量が、継ぎ部材の長さに基づく設定移動量に達したときに、前記オーガの上昇動作を停止させることを特徴としている。
【0008】
また、前記制御部は、現在の施工深度が前記部材継ぎ深度に達したときに、前記オーガの下降動作を停止させることを特徴としている。さらに、前記杭打機は、前記施工用の部材を鋼管杭とした鋼管杭施工に適用されることを特徴としている。加えて、前記杭打機は、前記施工用の部材をロッドとした地盤改良施工に適用されることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の杭打機の制御システムの第2の構成は、施工用のロッドを着脱可能に装着するオーガと、該オーガの昇降を案内するリーダと、前記オーガを駆動制御する制御部とを備えた杭打機の制御システムにおいて、施工予定位置に対する目標深度、施工用のロッド構成及びロッド掴み替え深度を設定した施工計画データを記憶する記憶部と、ロッド掴み替えの作業開始を促す報知部とを備え、前記制御部は、現在の施工深度が前記ロッド掴み替え深度に達したときに、前記報知部を作動させ、前記オーガの上昇運転操作に伴い、前記ロッド掴み替え深度を基準としたオーガ上昇移動量が、ロッドの掴み位置間距離に基づく設定移動量に達したときに、前記オーガの上昇動作を停止させることを特徴としている。さらに、前記制御部は、現在の施工深度が前記ロッド掴み替え深度に達したときに、前記オーガの下降動作を停止させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の杭打機の制御システムによれば、第1の構成では、例えば、施工用部材として杭を使用する場合、現在の施工深度が杭継ぎ深度に達したときに報知部を作動させるので、施工の最適時にオペレータに対して杭継ぎの作業開始を促すことができる。しかも、オーガの上昇移動量が継ぎ杭の長さに基づく設定移動量に達したときにオーガの上昇動作を停止させるので、オーガ移動量の最適化が図れ、例えば、地中に鋼管杭を埋設する鋼管杭施工において、オペレータの経験や勘に頼ることなく、効率よく施工を進めることができる。
【0011】
また、第2の構成では、現在の施工深度がロッド掴み替え深度に達したときに報知部を作動させるので、施工の最適時にオペレータに対してロッド掴み替えの作業開始を促すことができる。しかも、オーガの上昇移動量がロッドの掴み位置間距離に基づく設定移動量に達したときにオーガの上昇動作を停止させるので、オーガ移動量の最適化が図れ、例えば、地中に柱状の改良体を構築する地盤改良施工において、オペレータの経験や勘に頼ることなく、効率よく施工を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の杭打機の制御システムの第1形態例における制御システムが適用される鋼管埋設仕様の杭打機の側面図である。
【
図2】同じく地盤改良仕様の杭打機の側面図である。
【
図3】同じく施工計画データの設定表示画面(鋼管杭施工の場合)を示す図である。
【
図4】同じくオーガに下杭を装着した杭打機の施工開始状態(深度=0m)を示す説明図である。
【
図5】同じく杭継ぎ深度到達状態(深度=2m)を示す説明図である。
【
図6】同じく杭継ぎ作業におけるオーガ上昇停止状態を示す説明図である。
【
図7】同じく杭継ぎ作業における第1中杭装着状態を示す説明図である。
【
図8】同じく杭継ぎ作業完了状態を示す説明図である。
【
図9】同じく杭継ぎ深度到達状態(深度=5m)を示す説明図である。
【
図10】同じく杭継ぎ作業におけるオーガ上昇停止状態を示す説明図である。
【
図11】同じく杭継ぎ作業における第2中杭装着状態を示す説明図である。
【
図12】同じく杭継ぎ作業完了状態を示す説明図である。
【
図13】同じく杭継ぎ深度到達状態(深度=8m)を示す説明図である。
【
図14】同じく杭継ぎ作業におけるオーガ上昇停止状態を示す説明図である。
【
図15】同じく杭継ぎ作業における上杭装着状態を示す説明図である。
【
図16】同じく杭継ぎ作業完了状態を示す説明図である。
【
図17】同じく施工完了状態(深度=13m)を示す説明図である。
【
図18】本発明の杭打機の制御システムの第2形態例における施工計画データの設定表示画面(地盤改良施工の場合)を示す図である。
【
図19】同じくオーガにロッドを装着した杭打機の施工開始状態(深度=0m)を示す説明図である。
【
図20】同じく掘削工程におけるロッド掴み替え深度到達状態(深度=6.9m)を示す説明図である。
【
図21】同じくロッド掴み替え作業におけるオーガ上昇停止状態を示す説明図である。
【
図22】同じく掘削工程完了状態(深度=12m)を示す説明図である。
【
図23】同じく引上工程におけるロッド掴み替え深度到達状態(深度=6.9m)を示す説明図である。
【
図24】同じくロッド掴み替え作業におけるオーガ下降停止状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至
図17は、本発明の杭打機の制御システムの第1形態例を示すもので、本形態例に示す制御システムが適用される杭打機11は、鋼管杭施工と地盤改良施工とを切り替えて行うことができる兼用機であって、
図1に示すように、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に立設したリーダ15と、該リーダ15を後方から支持する起伏シリンダ16とを備えている。また、上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するリーダサポート17が設けられ、上部旋回体13の前部上方には、リーダ15の後方で配管を支持する配管案内アーム18が設けられている。さらに、上部旋回体13の前後左右の4箇所に安定用のジャッキ19が設けられるとともに、上部旋回体13の後端部に杭打機11のバランスをとるためのカウンタウエイト20が搭載されている。
【0014】
リーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を連結したもので、リーダサポート17に設けられたベースマシン幅方向の支軸に回動可能に取り付けられた基本リーダ21と、該基本リーダ21の上部に連結される上部リーダ22と、基本リーダ21の下部に連結される下部リーダ23とに分割形成され、上部リーダ22は、更に複数のリーダ部材に分割形成されている。これらの各リーダ部材は、上下端のフランジ部材によって連結され、ボルト・ナットを使用して着脱可能に構成されている。そして、ボルト・ナットを外してフランジ結合を解除することにより、リーダ部材を多数で構成した長尺仕様(
図1)と、リーダ部材を少数で構成した短尺仕様(図示せず)とに組み替え可能になっている。
【0015】
リーダ15の上端部には、吊上げ用ロープが巻掛けられるトップシーブ24が、下部前方には、回転駆動される施工用部材の振れを防止する開閉可能な振止装置25がそれぞれ備えられており、リーダ15の前面中央には、ラックピニオン式昇降機構(作業装置昇降機構)の構成品の一つであるラックギヤ26が、両側面前端部には、作業装置の昇降を案内するための左右一対のガイドパイプ27,27が、リーダ15の全長に亘ってそれぞれ連続的に設けられている。
【0016】
作業装置の一例であるオーガ28は、リーダ15のガイドパイプ27,27に摺接する左右一対のガイドギブ28a,28aが後方に突出して設けられるとともに、ラックギヤ26の両側に設けられている歯列に歯合するピニオンギヤをオーガ昇降用油圧モータ(図示せず)で回転駆動することにより、リーダ15の前面に沿って昇降可能になっている。また、減速機構を備えたオーガ本体28bには、オーガ28に回転駆動力を付与するためのオーガ駆動用油圧モータ28cが設けられている。
【0017】
ここで、杭打機11を鋼管杭施工を行う目的として使用する場合には、施工用部材として鋼管杭が使用される。鋼管杭29は、オーガ本体28bの中に取り付けたドライブシャフト30の下端にロッドキャップ31を介して着脱可能に連結される。ドライブシャフト30は、トルク伝達可能な多角形断面の角軸部をオーガ本体28bの回転軸部(角孔)に挿通した状態で、オーガ28の下側に設けられたチャック装置28dに係合して軸方向の移動が規制される。チャック装置28dは、例えば、ドライブシャフト30の周方向のチャック溝部に係合可能なチャック板を備えた周知のものである。
【0018】
オーガ28に装着された鋼管杭29は、振止装置25によって回転可能かつ軸方向に移動可能に保持され、この施工開始状態(
図1)で、オーガ28の回転と下降動作(押込み)とによって地中に圧入される。また、施工長さがオーガストロークを超えるような長尺施工を行う場合には、1ストローク長さに見合う長さPLの鋼管杭29、つまり、リーダ15の長さを限度として、運搬性も考慮した長さ(例えば3~6m程度)の鋼管杭29を継ぎ足しながら施工が行われる。この場合、杭継ぎ作業に最適なオーガ上昇移動量は、後述する杭継ぎ深度を基準として、継ぎ足す鋼管杭(継ぎ杭)29の長さPLに、当該鋼管杭29を先行埋設杭の上に配置するための隙間(例えば10~20cm程度)を考慮した長さに相当する。
【0019】
一方、杭打機11を地盤改良施工を行う目的として使用する場合には、施工用部材としてロッドが使用される。ロッド32は、
図2に示すように、内部に地盤改良剤の流路を備えたパイプ状のものであって、複数本連結してリーダ15よりも長尺に形成され、下端には掘削刃33aと撹拌羽根33bとを備えた掘削ヘッド33が設けられている。また、ロッド32の上端には、注入ホース34から地盤改良剤を導入するスイベルジョイント35が設けられている。このように形成されたロッド32は、軸方向に複数設けられた角軸部のうち、中間角軸部をオーガ本体28bの回転軸部に挿通した状態で、チャック装置28dに係合して軸方向の移動が規制される。
【0020】
オーガ28に装着されたロッド32は、振止装置25によって回転可能かつ軸方向に移動可能に保持され、この施工開始状態(
図2)で、ロッド32を回転駆動しながらリーダ15に沿って下降させるとともに、ロッド32を通って送られた地盤改良剤を掘削ヘッド33の先端から掘削孔に噴射することにより、掘削ヘッド33の掘削刃33aで掘削した土砂と地盤改良剤とを撹拌羽根33bで混合する。
【0021】
オーガ28をリーダ15の下部に下降させた後は、中間角軸部の把持を解除したオーガ28を上昇させて上部角軸部を把持する掴み替えを行う。この場合、ロッド掴み替え作業に最適なオーガ上昇移動量は、後述するロッド掴み替え深度を基準として、ロッド32の掴み位置間距離CL、すなわち、上下チャック溝部32a(下側は図示せず)同士の間の距離に相当する。掴み替え作業は、ロッド32の押し込み時だけでなく引き上げ時も行われるものであるが、いずれにおいても、ロッド32をその位置に固定しておくために、振止装置25の固定手段が用いられる。
【0022】
このような鋼管杭施工や地盤改良施工などの各種施工を行うために、上部旋回体13に設置された運転室36内には、走行や旋回、オーガ28の昇降・回転駆動などを行う操作レバーや操作ペダル、押しボタンスイッチ、タッチパネル式のディスプレイなどの機器が操作性を考慮して運転席の近傍に集約的に配置されており、さらに、これらの機器や杭打機11の動作検出手段などと電気的に接続された施工管理装置が設置されている。
【0023】
施工管理装置は、本発明の制御システムの一構成要素として機能し、各種工法制御のための施工管理プログラムを実行して、オーガ28の駆動制御、データ処理や判定などの演算処理を行うCPU(制御部)を中心に構成されており、施工管理プログラムを記憶するFLASH ROMや処理中の各種データを一時的に記憶するRAM、さらには、施工現場における施工予定位置、当該位置に対する目標深度、施工用の部材構成(例えば杭構成、ロッド構成)及び部材継ぎ深度(例えば杭継ぎ深度、ロッド継ぎ深度)もしくはロッド掴み替え深度などを設定した施工計画データ、並びに施工管理プログラムの実行により作成された実施工データの各種データを記憶するハードディスク(記憶部)や、オペレータが施工管理プログラムの実行結果を表示画面で確認したり、タッチパネル操作でデータの入力、変更を行ったりするディスプレイ(表示部)、制御部の指令を受けて部材継ぎの作業開始を促すスピーカ(報知部)などを備えている。
【0024】
ここで、オーガ28の動作検出手段を構成する複数のセンサにはトルクセンサや深度センサ、回転センサなどが挙げられる。トルクセンサは、オーガ28に把持された施工用部材のトルクを測定するセンサであって、オーガ駆動用油圧モータの油圧回路の供給側と電磁比例弁の油圧回路の二次側とにそれぞれ圧力センサを設け、各圧力センサによってオーガ駆動用油圧モータの作動圧力及び制御圧力を検出している。検出された信号は制御部に伝達され、圧力及びオーガ駆動用油圧モータの容量に基づき、施工負荷として施工トルクが算出される。
【0025】
深度センサは、ラックピニオン式昇降機構に組み込まれたロータリーエンコーダで検出している。検出された信号は制御部に伝達され、回転角度及び回転半径に基づいて深度が算出される。ロータリーエンコーダの検出信号は、制御部においてオーガ昇降量及び昇降速度の算出にも使用される。回転センサは、減速機構の歯車の歯を近接センサで検出し、そのパルス信号をカウントしている。検出された信号は制御部に伝達され、累計カウントに基づいて積算回転数及び回転速度が算出される。
【0026】
また、施工管理装置は、通信接続によって施工管理プログラムや施工計画データなどをダウンロードすることが可能である。施工計画データは、施工現場におけるボーリング調査(地盤調査の一例)の結果などを踏まえて作成した施工計画書に基づき、あらかじめ事務所内のコンピュータに入力されるもので、杭番号の他、該杭番号に関連付けられた施工順序や、目標深度、フィード速度、回転数、セメントミルク流量などの各種の施工目標値が含まれる。施工計画データの入力作業は、施工図面と対比して杭位置データを入力することによって行われ、具体的には、杭の埋設予定位置(施工予定位置)を、座標上の原点からの相対的位置(距離)として二次元座標で指定することになる。
【0027】
例えば、鋼管杭施工で参照される施工計画データは、施工長さとオーガストロークとの関係を考慮して設定されるものであるが、長尺施工を行う場合に、杭番号に応じた杭構成及び杭継ぎ深度について具体的に設定することが可能である。例えば、
図3に示すように、杭番号「1234」の杭構成は、継ぎ足す鋼管杭(継ぎ杭)29が、下杭「3.00m」、第1中杭(丸囲み数字1)「3.00m」、第2中杭(丸囲み数字2)「3.00m」、上杭「4.00m」の4本からなる。一方、杭継ぎ深度は、範囲指定が行えるものであって、例えば、リーダ15下端の高さ位置を基準として、作業時オーガ位置上限「1.50m」、作業時オーガ位置下限「0.50m」に設定されている。これにより、オーガストロークを逸脱しない範囲で、かつ、地上付近「1.00m」の範囲に杭継ぎ深度が設定されることになる。
【0028】
上記鋼管杭29やロッド32などの部材継ぎ深度は、良好な作業姿勢を確保する観点から、部材同士の継ぎ手段(溶接、機械的締結など)や作業者の身体的条件などに基づいて上下限が設定される。そして、現在の施工深度が作業時オーガ位置上限に達したときに、スピーカから、例えば、「杭継ぎ作業ができます。」の音声案内が発せられる。これにより、オペレータは、適時にオーガ28の運転操作をやめることができる。こうした現場の裁量を十分確保した運用では、必要に応じて施工を継続することもできるが、その場合、現在の施工深度が作業時オーガ位置下限に達したときに、油圧制御にてオーガ28の下降動作が強制的に停止される。これにより、部材継ぎ作業の作業性を低下させるような過度の押し込み動作が規制される。なお、部材継ぎ深度をピンポイントで、あるいは、ごく狭い範囲で定めてもよい。例えば、作業時オーガ位置の上限及び下限を同じ値に設定することで、現在の施工深度が部材継ぎ深度に達したときに、オーガ28の下降動作が停止されると同時に、スピーカから音声案内が発せられる。これにより、精度の高い停止・案内機能が発揮される。
【0029】
作成された施工計画データは、施工現場の住所の位置情報や施工する杭打機11の号機情報などが付加されて、ネットワーク上のデータサーバにアップロードされる。また、施工計画データに基づいて実施される施工、例えば鋼管杭施工のための施工管理プログラムや、該施工管理プログラムの設定パラメータのデータも作成され、同様にして、データサーバにアップロードされる。
【0030】
このように構成された施工管理装置は、追加的に組み込まれる制御プログラムを実行させることにより、杭打機11の運転操作を支援する制御システム、特に施工用の部材の継ぎ作業(段取り作業)に必要なオーガ移動量を最適化する制御システムを機能させる。以下では、制御システムの具体的な動作について、
図4乃至
図17に示す鋼管杭施工の各工程を参照しながら説明する。
【0031】
まず、施工現場において施工管理装置を起動すると、制御部では基本プログラムが実行され、ディスプレイにログイン画面が表示される。ここで、IDによりシステムにログインするとともに、メニュー画面から目的に応じて条件を設定すると、必要な施工管理プログラムや施工計画データなどがダウンロードされ、図示は省略するが、ディスプレイには施工計画杭配置画面(杭選択画面)が表示される。
【0032】
ここで、
図3の設定表示で示した各種条件において、杭番号「1234」を施工する場合、
図4に示すように、オーガ28に下杭を装着した状態の杭打機11を施工予定位置(杭芯)に位置合わせした後、タッチパネルの操作で1234番の杭表示体を選択する。このとき、ガイダンスに従って継ぎ杭配置のための隙間「10cm」を設定すると、オーガ上昇移動量は、各鋼管杭(継ぎ杭)29の長さPLに隙間「10cm」が考慮されるようになる。例えば、設定された杭構成のうち、第1中杭及び第2中杭の長さPLは両方とも3mであるため、杭継ぎ深度を基準として必要なオーガ上昇移動量は、3.1mとなる。一方、上杭の長さPLは4mであるため、杭継ぎ深度を基準として必要なオーガ上昇移動量は、4.1mとなる。
【0033】
そして、表示を所定の施工画面に切り替えた施工開始状態(深度=0m)で、目標深度「13.00m」に対して、実施工データを作成しながら施工が進められる。作成された実施工データは、オーガ28の運転操作に従って、施工画面に数値やグラフ形式により現在の実施工データとしてリアルタイムに表示され、これと同時に、深度毎の施工負荷を示す施工トルクと、杭番号「1234」とが関連付けられて施工管理装置の記憶部に逐次記憶されていく。
【0034】
現在の施工深度が1回目の杭継ぎ深度(深度=2m)に到達すると、
図5に示すように、オーガ28の下降動作が停止されると同時に、スピーカから音声案内「杭継ぎ作業ができます。」が発せられる。ここで、最適な作業足場を得るために押し込み量を調整した後、杭継ぎ深度の設定値(作業時オーガ位置)を最終的に確定させて、オーガ28の停止・案内機能を働かせる。
【0035】
次いで、タッチパネルの操作で施工深度を保持状態とし、所定の手順(例えばオーガ逆回転)でオーガ28と下杭とを分離可能な状態にする。そして、
図6に示すように、オーガ28の上昇運転操作に伴い、杭継ぎ深度を基準としたオーガ上昇移動量が、第1中杭(継ぎ部材)の長さPL「3m」に基づく設定移動量「3.1m」に達したときに、オーガ28の上昇動作が停止される。次いで、必要に応じて上部旋回体13を旋回させ、用意した第1中杭をロープで吊り上げ、オーガ28に対して第1中杭を装着する。そして、第1中杭を配置する動作において、
図7に示すように、下杭と第1中杭との上下間に、必要最小限の隙間S「10cm」を得て、第1中杭が下杭の上に配置される。
【0036】
次いで、オーガ28を下降して、
図8に示すように、第1中杭を下杭の上にセットした状態で、2本の鋼管杭29,29を溶接あるいは螺合によって接続する。ここで、各種接続方法のいずれにおいても、良好な作業足場が確保されるものであるが、特に、作業条件が厳格な溶接作業の場合、下杭(先行埋設杭)は、杭継ぎ深度において施工地盤GLから溶接作業がしやすい高さ(一般に、地盤又は足踏み板などから1.0~1.5m程度の高さ)Hを残して打止めされていることから、施工性及び品質を満足した確実な継手が得られる。
【0037】
1回目の杭継ぎ作業が完了すると、オペレータは、タッチパネルの操作で施工深度の保持状態を解除し、一旦保持した深度データに新たな深度を加算しながら施工を進めていく。そして、現在の施工深度が2回目の杭継ぎ深度(深度=5m)に到達すると、
図9に示すように、オーガ28の下降動作が停止されると同時に、スピーカから音声案内が発せられる。これにより、オペレータは、操作レバーを中立に戻してオーガ28の運転操作を終了させることができる。
【0038】
次いで、タッチパネルの操作で施工深度を保持状態とし、1回目と同様の手順でオーガ28と第1中杭とを分離可能な状態にする。そして、
図10に示すように、オーガ28の上昇運転操作に伴い、杭継ぎ深度を基準としたオーガ上昇移動量が、第2中杭の長さPL「3m」に基づく設定移動量「3.1m」に達したときに、オーガ28の上昇動作が停止される。次いで、用意した第2中杭をロープで吊り上げ、オーガ28に対して第2中杭を装着する。そして、第2中杭を配置する動作において、
図11に示すように、第1中杭と第2中杭との上下間に、必要最小限の隙間S「10cm」を得て、第2中杭が第1中杭の上に配置される。
【0039】
次いで、オーガ28を下降して、
図12に示すように、第2中杭を第1中杭の上にセットした状態で、2本の鋼管杭29,29を接続する。ここで、2回目の杭継ぎ作業においても、1回目と同じ作業条件が得られる。すなわち、第1中杭(先行埋設杭)は、施工地盤GLから作業がしやすい高さHを残して打止めされていることから、施工性及び品質を満足した確実な継手が得られる。
【0040】
2回目の杭継ぎ作業が完了すると、オペレータは、タッチパネルの操作で施工深度の保持状態を解除し、一旦保持した深度データに新たな深度を加算しながら施工を進めていく。そして、現在の施工深度が3回目の杭継ぎ深度(深度=8m)に到達すると、
図13に示すように、オーガ28の下降動作が停止されると同時に、スピーカから音声案内が発せられる。そして、施工深度を保持状態とし、オーガ28と第2中杭とを分離可能な状態にした後、
図14に示すように、オーガ28の上昇運転操作に伴い、杭継ぎ深度を基準としたオーガ上昇移動量が、上杭の長さPL「4m」に基づく設定移動量「4.1m」に達したときに、オーガ28の上昇動作が停止される。
【0041】
次いで、用意した上杭をロープで吊り上げ、オーガ28に対して上杭を装着する。そして、上杭を配置する動作において、
図15に示すように、第2中杭と上杭との上下間に、必要最小限の隙間S「10cm」を得て、上杭が第2中杭の上に配置される。
【0042】
次いで、オーガ28を下降して、
図16に示すように、上杭を第2中杭の上にセットした状態で、2本の鋼管杭29,29を接続する。ここで、3回目の杭継ぎ作業においても、1回目及び2回目と同じ作業条件が得られる。すなわち、第2中杭(先行埋設杭)は、施工地盤GLから作業がしやすい高さHを残して打止めされていることから、施工性及び品質を満足した確実な継手が得られる。
【0043】
3回目の杭継ぎ作業が完了すると、オペレータは、タッチパネルの操作で施工深度の保持状態を解除し、一旦保持した深度データに新たな深度を加算しながら施工を進めていく。ここで、制御プログラムの処理では、現在の施工深度(例えば10mに達した状態)に基づいて、杭番号「1234」に対応する継ぎ杭が全て用いられた状態であると判断し、オーガ28の下降動作の停止タイミングについて、下限値(作業時オーガ位置下限)の設定をクリアし、目標深度到達時に再設定する。そして、現在の施工深度が目標深度(深度=13m)に到達すると、
図17に示すように、オーガ28の下降動作が停止されると同時に、スピーカから「施工が完了しました。」の音声案内が発せられる。このような一連の工程を経て、杭番号「1234」に対する鋼管杭施工が完了する。そして、後続の施工予定位置においても同様にして、必要な杭継ぎ作業を行いながら目標深度に対して計画通りに施工が進められる。
【0044】
このように、本発明の杭打機の制御システムの第1の構成では、例えば、施工用部材として杭を使用する場合、現在の施工深度が杭継ぎ深度に達したときに報知部(例えばスピーカ)を作動させるので、施工の最適時にオペレータに対して杭継ぎの作業開始を促すことができる。しかも、オーガ28の上昇移動量が継ぎ杭の長さに基づく設定移動量に達したときにオーガ28の上昇動作を停止させるので、オーガ移動量の最適化が図れ、例えば、地中に鋼管杭29を埋設する鋼管杭施工において、オペレータの経験や勘に頼ることなく、効率よく施工を進めることができる。
【0045】
図18及び
図25は、本発明の制御システムが適用される杭打機の第2形態例を示している。なお、以下の説明において、前記形態例に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0046】
第2形態例における杭打機の制御システムでは、基本的に、前記形態例の構成をそのまま有しており、杭打機11では、施工用部材としてロッド32を使用した地盤改良仕様とされ、施工管理装置では、地盤改良施工のための施工管理プログラムを実行するものである。
【0047】
地盤改良施工で参照される施工計画データは、施工長さとオーガストロークとの関係を考慮して設定されるものであるが、長尺施工を行う場合に、杭番号に応じたロッド構成及びロッド掴み替え深度について具体的に設定することが可能である。例えば、
図18に示すように、杭番号「5678」のロッド構成は、掴み替え対象のロッド32が、アッパ「5.35m」、アンダ「7.65m」の2本からなる。また、当該2本を連結してなるロッド32の掴み位置間距離CLは、ロッド32のチャック溝部32aの位置情報に基づいて「6.00m」に設定される。つまり、ロッド掴み替え深度を基準として必要なオーガ上昇移動量は、6.00mとなる。
【0048】
一方、ロッド掴み替え深度は、範囲指定が行えるものであって、例えば、リーダ15下端の高さ位置を基準として、作業時オーガ位置上限「1.50m」、作業時オーガ位置下限「0.50m」に設定されている。これにより、オーガストロークを逸脱しない範囲で、かつ、地上付近「1.00m」の範囲にロッド掴み替え深度が設定されることになる。
【0049】
以下では、制御システムの具体的な動作について、
図19乃至
図25に示す地盤改良施工の各工程を参照しながら説明する。まず、
図18の設定表示で示した各種条件において、杭番号「5678」を施工する場合、所定の手順でオーガ28にロッド32を装着し、
図19に示すように、杭打機11を施工予定位置(杭芯)に位置合わせした後、タッチパネルの操作で5678番の杭表示体を選択する。
【0050】
そして、表示を所定の施工画面に切り替えた施工開始状態(深度=0m)で、目標深度「12.00m」に対して、実施工データを作成しながら施工(掘削工程)が進められる。作成された実施工データは、オーガ28の運転操作に従って、施工画面に数値やグラフ形式により現在の実施工データとしてリアルタイムに表示され、これと同時に、深度毎の施工負荷を示す施工トルクと、杭番号「5678」とが関連付けられて施工管理装置の記憶部に逐次記憶されていく。
【0051】
現在の施工深度がロッド掴み替え深度(深度=6.9m)に到達すると、
図20に示すように、オーガ28の下降動作が停止されると同時に、スピーカから音声案内「ロッド掴み替え作業ができます。」が発せられる。ここで、最適なオーガ下降停止位置を得るために押し込み量を調整した後、ロッド掴み替え深度の設定値(作業時オーガ位置)を最終的に確定させて、オーガ28の停止・案内機能を働かせる。これにより、既知の掴み位置間距離CLに基づいて、ロッド掴み替え深度となるオーガ下降停止位置と、オーガ上昇停止位置との両方が設定される。
【0052】
次いで、タッチパネルの操作で施工深度を保持状態とし、振止装置25の固定手段を作動させて、ロッド掴み替え作業が可能な状態にする。そして、
図21に示すように、オーガ28の上昇運転操作に伴い、ロッド掴み替え深度を基準としたオーガ上昇移動量が、ロッドの掴み位置間距離CL「6.00m」に基づく設定移動量「6.00m」に達したときに、つまり、オーガ上昇停止位置に至ったときに、オーガ28の上昇動作が停止される。ここで、ロッド32に対するチャック装置28dの係合状態を確認した後、振止装置25の固定手段を解除することでロッド掴み替え作業が完了する。
【0053】
掘削工程におけるロッド掴み替え作業が完了すると、オペレータは、タッチパネルの操作で施工深度の保持状態を解除し、一旦保持した深度データに新たな深度を加算しながら施工を進めていく。そして、現在の施工深度が目標深度(深度=12m)に到達すると、
図22に示すように、オーガ28の下降動作が停止されると同時に、スピーカから「目標深度に到達しました。」の音声案内が発せられる。これにより、オペレータは、オーガ28を上昇及び回転(逆転)させながら、ロッド32を掘削孔から引き上げる施工(引上工程)を進めることができる。
【0054】
引上工程では、オーガ28が上昇停止位置(深度=6.9m)に到達すると、
図23に示すように、オーガ28の上昇動作が停止されると同時に、スピーカから「ロッド掴み替え作業ができます。」の音声案内が発せられる。次いで、振止装置25の固定手段を作動させて、ロッド掴み替え作業が可能な状態にする。そして、
図24に示すように、オーガ28が下降停止位置に至ったときに、オーガ28の下降動作が停止される。ここで、ロッド32に対するチャック装置28dの係合状態を確認した後、振止装置25の固定手段を解除することでロッド掴み替え作業が完了する。
【0055】
引上工程におけるロッド掴み替え作業が完了すると、オペレータは、オーガ28を上昇及び回転させながら、ロッド32を引き上げる施工を進め、オーガ28が上昇停止位置(深度=0m)に到達すると、
図25に示すように、オーガ28の上昇動作が停止されると同時に、スピーカから「施工が完了しました。」の音声案内が発せられる。このような一連の工程を経て、杭番号「5678」に対する地盤改良施工が完了する。そして、後続の施工予定位置においても同様にして、ロッド掴み替え作業を行いながら目標深度に対して計画通りに施工が進められる。
【0056】
このように、本発明の杭打機の制御システムの第2の構成では、現在の施工深度がロッド掴み替え深度に達したときに報知部(例えばスピーカ)を作動させるので、施工の最適時にオペレータに対してロッド掴み替えの作業開始を促すことができる。しかも、オーガ28の上昇移動量がロッド32の掴み位置間距離CLに基づく設定移動量に達したときにオーガ28の上昇動作を停止させるので、オーガ移動量の最適化が図れ、例えば、地中に柱状の改良体を構築する地盤改良施工において、オペレータの経験や勘に頼ることなく、効率よく施工を進めることができる。
【0057】
なお、本発明は、前記各形態例に限定されるものではなく、制御プログラムは、既存の施工管理装置にアドオンして機能させる簡易な構成であればよく、杭打機の仕様や施工用部材の種類などに応じて適宜変更することができる。また、部材継ぎ深度やロッド掴み替え深度、継ぎ部材配置のための隙間などの各種設定は任意であり、例えば、機械学習によって最適値を提供してもよい。さらに、報知部は、音声以外にもランプやモニタ表示、ブザー鳴動などによって構成することができる。加えて、第1形態例(部材継ぎ)では、鋼管杭施工に適用したが、コンクリート杭施工などを含む各種既製杭施工に適用でき、さらには、地盤改良施工にも適用することができる。そして、地盤改良施工の場合には、施工用の継ぎ部材がロッドとされ、該ロッドを複数本継ぎ足して、より一層の長尺施工を行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
11…杭打機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…起伏シリンダ、17…リーダサポート、18…配管案内アーム、19…ジャッキ、20…カウンタウエイト、21…基本リーダ、22…上部リーダ、23…下部リーダ、24…トップシーブ、25…振止装置、26…ラックギヤ、27…ガイドパイプ、28…オーガ、28a…ガイドギブ、28b…オーガ本体、28c…オーガ駆動用油圧モータ、28d…チャック装置、29…鋼管杭、30…ドライブシャフト、31…ロッドキャップ、32…ロッド、32a…チャック溝部、33…掘削ヘッド、33a…掘削刃、33b…撹拌羽根、34…注入ホース、35…スイベルジョイント、36…運転室