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  • 特開-外接歯車ポンプ 図1
  • 特開-外接歯車ポンプ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064335
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】外接歯車ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/18 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
F04C2/18 311B
F04C2/18 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172844
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトフルードパワーシステム
(72)【発明者】
【氏名】大野 明浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 義宜
(72)【発明者】
【氏名】大鶴 諒
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 絢哉
【テーマコード(参考)】
3H041
【Fターム(参考)】
3H041AA01
3H041AA02
3H041BB02
3H041CC07
3H041CC13
3H041CC19
3H041DD02
3H041DD33
3H041DD34
(57)【要約】      (修正有)
【課題】吸入吐出する液体が、水等の潤滑性が低い液体であっても、ケーシングと歯車との間の良好な潤滑が得られる外接歯車ポンプを提供する。
【解決手段】ケーシング1の歯車収納孔8に互いに噛合い対をなす駆動歯車11と従動歯車12とを回転自在に収納し、両歯車11、12の回転駆動で液体を吸入吐出する。ケーシング1は両歯車11、12と摺接する第1本体部材2、第2本体部材3をガラス繊維入りのポリフェニレンスルファイド樹脂から形成した。また、両歯車11、12は表面をDLC(Diamond-LikeCarbon)コーティンングで被覆した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの内部に互いに噛合い対をなす駆動歯車と従動歯車とを回転自在に収納し、両歯車の回転駆動で液体を吸入吐出する外接歯車ポンプであって、ケーシングは両歯車と摺接する部分を樹脂材から成したことを特徴とする外接歯車ポンプ。
【請求項2】
前記両歯車は前記ケーシングと摺接する部分を固体のみで潤滑される固体潤滑性のある材質から成したことを特徴とする請求項1に記載の外接歯車ポンプ。
【請求項3】
前記固体潤滑性のある材質は、前記両歯車の表面を被覆するDLCコーティンングであることを特徴とする請求項2に記載の外接歯車ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに噛合い対をなす駆動歯車と従動歯車とを回転駆動して液体を吸入吐出する外接歯車ポンプに関し、特に、水等の潤滑性が低い液体を吸入吐出するのに好適な外接歯車ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の外接歯車ポンプは、互いに噛合い対をなす駆動歯車と従動歯車とをケーシングの内部に収納し、両歯車の回転駆動で液体を吸入流路より吸入して吐出流路より吐出している。そして、両歯車の側面が摺接するケーシングの摺接面にはショットブラストにより形成された凹部が設けられ、この凹部に吸入吐出する液体を導いてケーシングと歯車との間の潤滑を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-169718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来の外接歯車ポンプでは、ケーシングの摺接面に設けた凹部に吸入吐出する液体を導いて潤滑を図っているため、吸入吐出する液体が水等の潤滑性が低い液体の場合には、ケーシングと歯車との間の良好な潤滑を得られ難かった。
【0005】
本発明の課題は、吸入吐出する液体が、水等の潤滑性が低い液体であっても、ケーシングと歯車との間の良好な潤滑が得られる外接歯車ポンプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
ケーシングの内部に互いに噛合い対をなす駆動歯車と従動歯車とを回転自在に収容し、両歯車の回転駆動で液体を吸入吐出する外接歯車ポンプであって、ケーシングは両歯車と摺接する部分を樹脂材から成したことを特徴とする外接歯車ポンプがそれである。
【0007】
この場合、前記両歯車は前記ケーシングと摺接する部分を固体のみで潤滑される固体潤滑性のある材質から成してもよい。また、前記固体潤滑性のある材質は、前記両歯車の表面を被覆するDLCコーティンングであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、ケーシングは両歯車と摺接する部分を樹脂材から成した。このため、ケーシングは両歯車と摺接する部分が樹脂材で摩耗や凝着を低減することができるから、吸入吐出する液体が、水等の潤滑性が低い液体であっても、ケーシングと歯車との間の良好な潤滑を得ることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、両歯車はケーシングと摺接する部分を固体のみで潤滑される固体潤滑性のある材質から成した。このため、両歯車は摺接するケーシングの樹脂材を摩耗することが低減できるから、ケーシングは両歯車と摺接する部分の摩耗や凝着をより低減することができ、ケーシングと歯車との間のより一層良好な潤滑を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態を示し、図2の線B-Bに沿った外接歯車ポンプの断面図である。
図2図1の線A-Aに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1および図2において、1はケーシングで、第1本体部材2と第2本体部材3とフランジ部材4と蓋部材5から構成している。第1本体部材2は、樹脂材としてガラス繊維入りのポリフェニレンスルファイド樹脂(通称、PPS)から形成している。6は第1貫通孔、7は第2貫通孔で、両貫通孔6、7は第1本体部材2に径方向へ離間して軸方向へ平行に貫通形成している。8は歯車収納孔で、第1本体部材2の軸方向一端面を窪み形成して設け、図2に示す如く、横断面を略8字状に形成している。歯車収納孔8の底面には両貫通孔6、7が開口している。
【0012】
第2本体部材3は、第1本体部材2と同一の材質で、ガラス繊維入りのポリフェニレンスルファイド樹脂から形成して板状に設け、自身の軸方向他端面を第1本体部材2の軸方向一端面に接合して歯車収納孔8を閉塞している。フランジ部材4はアルミニウム合金等の金属材から形成し、第1本体部材2の軸方向一端面と対向する軸方向他端面に接合し、両貫通孔6、7を閉塞している。フランジ部材4には軸方向に挿通孔9を貫通形成し、挿通孔9は第1貫通孔6より大径に形成して第1貫通孔6と同芯に接続している。
【0013】
蓋部材5は、機械構造用炭素鋼等の金属材から形成し、第2本体部材3の軸方向他端面と対向する軸方向一端面に接合している。10は4個のボルト部材で、蓋部材5の外方から第2本体部材3、第1本体部材2を挿通してフランジ部材4に螺合し、第1本体部材2、第2本体部材3、フランジ部材4、蓋部材5を一体的に結合している。
【0014】
11は駆動歯車、12は従動歯車で、外周に相いに噛合う複数の外歯11A、12Aを有する同一形状で対をなし、歯車収納孔8に収納して各外歯11A、12Aの歯先を歯車収装孔8の内周面と摺接可能に設け、自身の軸方向一側面を第2本体部材3の軸方向他端面と摺接可能に設け、自身の軸方向一側面と対向する軸方向他側面を歯車収納孔8の底面と摺接可能に設けている。両歯車11、12は表面をDLC(Diamond-Like Carbon)コーティンングで被覆し、ポンプハウジング1と摺接する部分を固体のみで潤滑される固体潤滑性のある材質としている。図2に示す如く、13は液体を吸入する吸入流路で、第1本体部材2に形成し、歯車収納孔8の径方向一方側に接続している。14は液体を吐出する吐出流路で、第1本体部材2に形成し、歯車収納孔8の両歯車11、12の両外歯11A、12Aが噛合う噛合個所を介して径方向一方側と対称となる径方向他方側に接続している。
【0015】
15は金属材から形成の駆動軸で、駆動歯車11とキー16で回転方向に係合し、第1貫通孔6、挿通孔9を挿通して先端を外部に露呈し、この先端を図示しない電動機と結合して駆動歯車11を回転駆動する。17は第1貫通孔6に圧入したブッシュで、駆動軸15と摺接して回転自在に軸支している。18は挿通孔9に設けたシール部材で、駆動軸15に摺接してポンプハウジング1内部を密閉している。19は挿通孔9のシール部材18の軸方向外方に設けた玉軸受けで、駆動軸15を回転自在に軸支している。駆動軸15は駆動歯車11の軸方向一方側でブッシュ17、玉軸受け19により軸支している。
【0016】
20は金属材から形成の従動軸で、従動歯車12とキー21で回転方向に係合し、第2貫通孔7に挿通している。22は第2貫通孔7に圧入したブッシュで、従動軸20と摺接して回転自在に軸支している。従動軸20は従動歯車12の軸方向一方側でブッシュ22により軸支している。
【0017】
次に、かかる構成の作動を説明する。
駆動軸15により駆動歯車11を矢印C方向に回転駆動すると、駆動歯車11と噛合う従動歯車12が矢印C方向と反対の方向に回転駆動され、低圧側の液体は吸入流路13を流れ、駆動歯車11の各外歯11A間および従動歯車12の各外歯12A間に吸入されて歯車収納孔8内周に沿って吐出側に搬送され、吐出流路14を流れて吐出される。
【0018】
かかる作動において、ケーシング1は両歯車11、12と摺接する第1本体部材2、第2本体部材3をガラス繊維入りのポリフェニレンスルファイド樹脂から成した。このため、ケーシング1は両歯車11、12と摺接する部分が樹脂材で摩耗や凝着を低減することができるから、吸入吐出する液体が、水等の潤滑性が低い液体であっても、ケーシング1と歯車11、12との間の良好な潤滑を得ることができる。
【0019】
また、両歯車11、12は表面をDLC(Diamond-Like Carbon)コーティンングで被覆し、ケーシング1と摺接する部分を固体のみで潤滑される固体潤滑性のある材質とした。このため、両歯車11、12は摺接するケーシング1の樹脂材を摩耗することが低減できるから、ケーシング1は両歯車11、12と摺接する部分の摩耗や凝着をより低減することができ、ケーシング1と歯車11、12との間のより一層良好な潤滑を得ることができる。
【0020】
なお、前述の一実施形態では、ケーシング1の両歯車11、12と摺接する部分の樹脂材として、第1本体部材2、第2本体部材3をガラス繊維入りのポリフェニレンスルファイド樹脂(通称、PPS)で形成したが、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(通称、PEEK)やフェノール樹脂でもよい。また、駆動軸15、従動軸20は両貫通孔6、7に圧入したブッシュ17、22で軸支したが、両軸15、20の表面をDLC(Diamond-Like Carbon)コーティンングで被覆し、両貫通孔6、7を形成した樹脂材から成る第1本体部材2で直接に軸支してもよい。さらにまた、駆動軸15、従動軸20は両歯車11、12の軸方向一方側で軸支したが、両軸15、20を両歯車11、12の軸方向両側に突出して軸支してもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0021】
1:ケーシング
2:第1本体部材(両歯車と摺接する部分)
3:第2本体部材(両歯車と摺接する部分)
4:フランジ部材
5:蓋部材5
11:駆動歯車
12:従動歯車
図1
図2