IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIシバウラの特許一覧

<>
  • 特開-農業用トレーラ 図1
  • 特開-農業用トレーラ 図2
  • 特開-農業用トレーラ 図3
  • 特開-農業用トレーラ 図4
  • 特開-農業用トレーラ 図5
  • 特開-農業用トレーラ 図6
  • 特開-農業用トレーラ 図7
  • 特開-農業用トレーラ 図8
  • 特開-農業用トレーラ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064339
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】農業用トレーラ
(51)【国際特許分類】
   A01B 73/00 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
A01B73/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172850
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIアグリテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 泰孝
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真之
(72)【発明者】
【氏名】松倉 崇博
【テーマコード(参考)】
2B041
【Fターム(参考)】
2B041AA03
2B041AB05
2B041AC17
2B041BA01
2B041BA05
(57)【要約】
【課題】本発明は、床材の耐久性の向上を課題とする。
【解決手段】本発明は、機枠と床材と押さえ部材を備え、機枠は、床材を支えるものであり、床材は、機枠上に密に並べられており、押さえ部材は、床材の端部を押さえる押さえ部を有し、機枠に直接または間接的に着脱可能に固定されていることを特徴とする農業用トレーラとすることで課題を解決した。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機枠と床材と押さえ部材を備え、
機枠は、床材を支えるものであり、
床材は、機枠上に密に並べられており、
押さえ部材は、床材の端部を押さえる押さえ部を有し、機枠に直接または間接的に着脱可能に固定されていることを特徴とする農業用トレーラ。
【請求項2】
当接部が押さえる床材の端部は、端部上面または端部上側のへり部であることを特徴とする請求項1記載の農業用トレーラ。
【請求項3】
押さえ部材は、機枠と固定される本体部を有し、本体部に押さえ部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の農業用トレーラ。
【請求項4】
押さえ部は、本体部の両側に設けられている両側押さえ部材、または、本体部の片側に設けられている片側押さえ部材であることを特徴とする請求項1記載の農業用トレーラ。
【請求項5】
床材は、金属製と木製があり、
金属製床材は、
機枠に固定されており、
木製床材は金属製床材で仕切られていることを特徴とする請求項1記載の農業用トレーラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用トレーラに関する。
【背景技術】
【0002】
農作分野では、トラクタなどの走行車両に取り付ける、農業用トレーラが使われている。農業用トレーラの荷台には、コンバインなどの農作業機や収穫物が載せられ、一般道を走って運ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7098492号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
農業用トレーラにおいて、床材として木製床材が用いられることが多かった。木製床材は、濡れたときにも滑らないなど、金属製や樹脂製の床材にない利点を多く備えている。
これまで、木製床材は、タッピングネジを使って農業用トレーラのフレームを構成する横桟などに固定されていた。搬送物の重量が不均一にかかるため、木製床材がわずかに反るなどするとタッピングネジの周辺にある床材部分に負荷がかかり、木製床材の締結部周囲が劣化してくる。経年劣化の末、木製床材のタッピングネジの周囲はボロボロになり、タッピングネジの利きが完全に消失する。そうなると、木製床材は、浮き上がり、剥がれたり割れたりするトラブルが起きていた。
【0005】
また、木製床材は、乾燥吸湿等による変形や、前述の搬送物の重量などによる変形を起こしやすく、タッピングネジが破断することもあった。
このような場合、木製床材を交換することが行われるが、剥がれたり割れたりしていない床材でも、大概、締結部周辺が痛んでおり、大幅な修理が求められることが多かった。
本発明は、床材の耐久性の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、機枠と床材と押さえ部材を備え、機枠は、床材を支えるものであり、床材は、機枠上に密に並べられており、押さえ部材は、床材の端部を押さえる押さえ部を有し、機枠に直接または間接的に着脱可能に固定されていることを特徴とする農業用トレーラとすることで課題を解決した。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、床材の耐久性が向上した。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施例の農業用トレーラの説明図であり、図1(A)は農業用トレーラの斜視図、図1(B)は側面図である。図1(C)は、荷台から床材と床材を取り付けるための部材を取り除き、機枠だけを残した状態の平面図である。
図2図2は、歩み板回動軸付近の部材の説明図である。図2(A)は、後側から観た歩み板回動軸付近の拡大図である。図2(B)は、図2(A)に付した枠A領域の拡大図である。図2(C)は、図2(B)に付した枠B領域の拡大図と開閉板連動板平面図である。
図3図3は、図2(B)に付したa-a間の断面図であり、テンション装置を表す図である。
図4図4は、床材の説明図である。図4(A)は荷台2の平面図であり、歩み板とベースは説明のため図示していない。図4(B)は図4(A)のb-b間の断面図である。
図5図5図4(B)に付した枠Cの拡大図と分解図であり、荷台前側の片側押さえ部材を図示している。
図6図6図4(B)に付した枠Eの拡大図と分解図であり、荷台後側の片側押さえ部材を図示している。
図7図7図4(B)に付した枠Dの拡大図と分解図であり、荷台中央の両側押さえ部材を図示している。
図8図8は、両側押さえ部材の第1変形例の説明図である。
図9図9は、両側押さえ部材の第2変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0010】
[実施例]
実施例の農業用トレーラ1は、搬送物23(コンバイン)などを搬送する搬送用の農業用トレーラ1であり、トラクタなどの走行車両15に牽引されるものである。
なお、実施例の搬送用の農業用トレーラ1は、説明のための例にすぎず、本発明は、収穫した作物を搬送する農業用トレーラ1に対しても適用できる技術である。
【0011】
図1は実施例の農業用トレーラ1の説明図であり、図1(A)は農業用トレーラ1の斜視図、図1(B)は側面図、図1(C)は平面図である。
農業用トレーラ1の前部には、ベース13があり、トラクタなどの走行車両15と接続できるようになっている。農業用トレーラ1の後部には、搬送物23(コンバイン)を荷台2に搭載する際に使用する、歩み板3(開閉板)が後枠253C(機枠25)の外側に向かって開く開状態に回動できるように設けられている。
【0012】
図1(B)に図示されているように、ベース13と荷台2との間にダンプシリンダ12が取り付けられている。実線で描いたダンプシリンダ12は、作動していない状態を示しており、点線で描いたダンプシリンダ12は、荷台2を傾けている状態を示している。荷台2は、ダンプシリンダ12により、2つあるタイヤ11の間に設けられた回動軸(図示せず)を中心に後部が低くなるように傾けることができる。
【0013】
荷台2後部の歩み板3は、歩み板回動軸321を軸に開閉し、搬送物23(コンバイン)を荷台2に搭載する際に使われる。
図1(B)に図示するように、荷台2の後部下面にガススプリング312が配置されている。ガススプリング312の働きは、後述する。
【0014】
図1(C)は、荷台2から床材5と床材5を取り付けるための部材を取り除き、機枠25だけを残した状態の平面図である。機枠25は、大きく分けて荷台2を形成する荷台フレーム253(機枠)と主フレーム材252(機枠)で構成されている。荷台フレーム253(機枠)は、2つあるタイヤ11の間に設けられた回動軸(図示せず)を中心に傾動する。主フレーム材252(機枠)は、荷台2の下面側の左右に2本取り付けられている。主フレーム材252(機枠)は、前側と後側で2つに分割されており、後側の主フレーム材252(機枠)は、荷台2と一緒に傾動することができる。前側の主フレーム材252(機枠)は、タイヤ11の機台に連結されている。前側と後側の主フレーム材252(機枠)は、前述した2つあるタイヤ11の間に設けられた回動軸(図示せず)で繋がれており、ダンプシリンダ12により荷台2と共に後側の主フレーム材252(機枠)が動くことを許容する。
【0015】
(荷台フレーム)
荷台フレーム253(機枠)は、左右一対の側枠253Aと前枠253Bと後枠253Cで構成された矩形のフレームと横桟254で構成されている。多数の横桟254が、左右一対の側枠253Aの間に固定されている。横桟254は、上に床材5が載せられ、床面を支える役割を果たす。
【0016】
(歩み板(開閉板)の回動軸付近の部材)
実施例の歩み板3は、開閉板の例として示されている。トラックの荷台2のように、側面に開閉板を取り付けてもよく、歩み板3は開閉板の1例である。
歩み板3(開閉板)の下端部は、歩み板回動軸321が後枠253Cとの間に取り付けられており、後枠253Cに対して、歩み板3(開閉板)が開閉する。
図2は、歩み板回動軸321付近の部材の説明図である。図2(A)は、後側から観た歩み板回動軸321付近の拡大図である。図2(B)は、図2(A)に付した枠A領域の拡大図である。図2(C)は、図2(B)に付した枠B領域の拡大図と開閉板連動板333平面図である。
図2(A)は、荷台2の後ろに取り付けられた歩み板3(開閉板)の一つの下部を図示したものである。
歩み板回動軸321は、歩み板3(開閉板)の下端に3箇所設けられている。一方の回動金具32Aは、歩み板側の回動金具32Aであり、歩み板3(開閉板)の下端に固定されており、他方の回動金具32Bは、後ろ枠側の回動金具32Bであり、後枠253Cに固定されている。歩み板3側の回動金具32Aと後枠253C側の回動金具32Bは、歩み板回動軸321により回動自在に連結されている。
歩み板回動軸321は、3カ所あり、右側の歩み板回動軸321は上述した構造になっている。
【0017】
(ガススプリング)
中央にある歩み板回動軸321は、前述の基本的な歩み板回動軸321に金具31が追加されており、金具31は歩み板3の回動と連動して共に動く。ガススプリング312は、一端が機枠25の適宜箇所に取り付けられている。図示していないが、ガススプリング312の一端は、荷台2の下側にあり、機枠25の横桟254に取り付けられている。ガススプリング312の他端は、図2(B)に図示されているように、金具31の下端に取り付けられている。歩み板3は重量物であり、作業者が歩み板3を開くと、金具31は歩み板3の動きと連動しガススプリング312を圧縮する方向に動く。ガススプリング312は圧縮されることで、歩み板3の重量の一部を支え、作業者は歩み板3が軽くなったように感じ楽に開くことができる。歩み板3(開閉板)を開くことで圧縮されたガススプリング312は力をため込み、ため込まれた力は、歩み板3(開閉板)を閉じる(持ち上げる)ときのアシストに使われる。
【0018】
(固定装置)
図2(A)に図示した左側の歩み板回動軸321は、他の歩み板回動軸321より複雑である。
図2(C)は固定装置33の説明図であり、図2(B)に図示されたテンション装置34は、説明のため図示していない。歩み板回動軸321の基本的構造は、他の歩み板回動軸321と同じである。歩み板3の下端に歩み板側の回動金具32Aが取り付けられている。後枠253C側の回動金具32Bは、左片が固定装置33の左機枠固定板331Lとテンション装置34の機枠側取付部342を兼用している。左機枠固定板331Lの下端には、テンション装置34の機枠側取付部342の一部を構成する係合ロッド346が固定されている。
また、後枠253C側の回動金具32Bの右片は、固定装置33の右機枠固定板331Rにもなっている。
【0019】
固定装置33は、歩み板3(開閉板)が閉じられた状態に固定する作用を主とする装置である。実施例の固定装置33は、歩み板3(開閉板)が開いたとき、つまり、搬送物23(コンバイン)を荷台2上に搭載する傾斜路として使うときにも、固定できるようになっている。固定装置33は、農業用トレーラ1の使用目的により、開閉板を開いたときに限らず、中間位置で固定できるように構成してもよい。
【0020】
固定装置33は、左機枠固定板331L(テンション装置34の機枠側取付部342を兼用)と右機枠固定板331Rと開閉板連動板333と固定ピン332で構成されている。
左機枠固定板331Lと右機枠固定板331Rは、後枠253C側の回動金具32Bを兼用しており、後枠253Cに溶接されている。左機枠固定板331Lには、第3孔部3313が設けられており、右機枠固定板331Rには、第4孔部3314が設けられており、固定ピン332が第3孔部3313と第4孔部3314に挿通されている。
【0021】
固定ピン332は、ねじ部3321が中間部に設けられている。固定ピン332は、回転することで進退する。
固定ピン332の端部は、曲折されており、固定ピン332を回転させるときの把持部3322となっている。作業者は、把持部3322掴んで固定ピン332を回転させることで、開閉板連動板333のある方向に、固定ピン332の先端部3323を進めることができる。
【0022】
開閉板連動板333は、上部が歩み板3(開閉板)に溶接されており、歩み板3の回動と連動して動く部材である。開閉板連動板333は、固定ピン332を挿通するための第1孔部3331と第2孔部3332が設けられている。第1孔部3331は、歩み板3(開閉板)を閉状態(立ち上げ状態)にしたときに、固定ピン332の先端部3323を挿通できる位置に設けられている。第2孔部3332は、歩み板3(開閉板)を開いたとき固定ピン332の先端部3323を挿通できる位置に設けられている。
【0023】
歩み板3(開閉板)を閉状態(立ち上げ状態)にしたとき、作業者は、固定ピン332を回転させ、開閉板連動板333の第1孔部3331に挿通させることで歩み板3(開閉板)を閉状態(立ち上げ状態)のまま固定することができる。
また、歩み板3(開閉板)を開状態(倒伏状態)にしたとき、作業者は、固定ピン332を回転させ、開閉板連動板333の第2孔部3332に挿通させることで歩み板3を開状態(倒伏状態)のまま固定することができる。
【0024】
(テンション装置)
前述したように、固定装置33は、固定ピン332を第1孔部3331、第3孔部3313及び第4孔部3314に挿通することで歩み板3(開閉板)を閉状態(立ち上げ状態)にしたまま固定できる。
一見すると、歩み板3(開閉板)は固定装置33によりしっかりと固定されたように見える。
しかしながら、従来技術で説明したように固定装置33は、機械的な遊びが不可欠であり、農業用トレーラ1の走行時に振動の影響を受ける。
【0025】
歩み板3(開閉板)は、重量物であり、閉状態(立ち上げ状態)という不安定な状態で固定される。歩み板3(開閉板)の上端を力点と考え、歩み板回動軸321を支点と考えれば、固定装置33の開閉板連動板333に設けられた第1孔部3331は作用点となる。走行中に起きる歩み板3(開閉板)の上端の揺れは、テコの原理で強い力となって増幅される。機械的な遊びがあるため機枠25(後枠253C)と共に動く固定ピン332と第1孔部3331は、振動に伴う動きにより互いに衝突し、次第に第1孔部3331の孔径を広げて行く。
さらに、機枠25(後枠253C)の動きは、路面の凹凸などにより生じるため、方向性は無く、あらゆる方向に動く。
走行中に起きる歩み板3(開閉板)の上端の動き(前後方向)に起因する第1孔部3331の動きと機枠25(後枠253C)の(あらゆる方向の)動きに連動する固定ピン332の動きが、異なる動きとなるため、第1孔部3331は方向性なく広がることとなる。
【0026】
(テンション装置)
図3は、図2(B)に付したa-a間の断面図であり、テンション装置34を表す図である。
テンション装置34は、開閉板側取付部341と機枠側取付部342を備えている。そして、テンション装置34は、開閉板側取付部341と機枠側取付部342の間を、弛緩緊張自在なテンション部材で繋ぐ構造をしている。実施例のテンション部材は、ターンバックル344であり、ターンバックル344(テンション部材)を回転させることで緊張状態にすることも、弛緩状態にすることもできる。また、開閉板側取付部341と機枠側取付部342のいずれか一方とターンバックル344(テンション部材)を取り外すことで、一挙に緊張状態から弛緩状態にすることもできる。
【0027】
前述したように、ターンバックル344(テンション部材)の機枠側取付部342は、固定装置33の左機枠固定板331Lと歩み板回動軸321を取り付ける機枠側の回動金具32Bを兼用している。機枠側取付部342は、機枠側取付部342の一部を構成する係合ロッド346が取り付けられている。また、歩み板3(開閉板)は、開閉板側取付部341が溶接により強固に固定されている。開閉板側取付部341は、上下に2ヶ所あり、上の開閉板側取付部341は、歩み板3(開閉板)を開いたとき(倒伏したとき)に使う。歩み板3(開閉板)を閉じたとき(立ち上げたとき)に使う開閉板側取付部341は、図3に図示されているように下にある。
開閉板側取付部341は、ターンバックル344(テンション部材)のチェーン343が係合する部位である。
【0028】
開閉板側取付部341と機枠側取付部342(係合ロッド346)の間は、ターンバックル344(テンション部材)で繋がれている。蝶ネジ345は、ターンバックル344(テンション部材)緩み止めであり、蝶ネジ345を回転させ緊止することで、強い緊張状態を維持することができる。また、ターンバックル344(テンション部材)の本体部を回動させて緊張状態を強めたり、緊張状態を弱めることができる。
【0029】
歩み板3(開閉板)と機枠25(後枠253C)は、歩み板回動軸321で連結されている。
歩み板3(開閉板)を閉じたとき(立ち上げたとき)とき、テンション装置34は、機枠25(後枠253C)と歩み板3(開閉板)の間を緊張状態で繋ぎ、あたかも両者を一体化するように働く。つまり、歩み板回動軸321にわずかな遊びがあったとしても、テンションがかけられているため、歩み板回動軸321は走行中に振動によりに対して動くことが無く、常に同じ位置に拘束される。
【0030】
また、走行中、固定装置33の機枠25(後枠253C)に間接的に支持されている固定ピン332は、歩み板3(開閉板)に間接的に支持されている開閉板連動板333の第1孔部3331に挿入された状態にある。テンション装置34は、固定ピン332と第1孔部3331の間に遊びがあろうとも、全く動かないように拘束する。このようにテンション装置34は、走行中に振動があっても固定ピン332と第1孔部3331の動きを拘束する。
これにより、テンション装置34は、固定装置33の第1孔部3331と固定ピン332の動きを抑え、互いに衝突することで生じる第1孔部3331の孔径が広がるトラブルを防ぐことができる。
【0031】
また、テンション装置34は、固定装置33のみならず、歩み板回動軸321の動きも拘束し、双方の装置が本来的に有する機械的な遊びを殺す。テンション装置34により、歩み板3(開閉板)は、振動を受けても機枠25(後枠253C)に対して動くことができなくなり、固定装置33を保護する。
【0032】
これまで、実施例を用いて、テンション装置34が、振動により固定装置33に起きるトラブルを防ぐことを説明してきた。
固定装置33は、機枠25と歩み板3(開閉板)を固定するものである。
原理的に固定装置33の機枠25側の部材と固定装置33の歩み板3(開閉板)側の部材間の機械的な遊びを無くすことはできない。
しかし、本発明のテンション装置34は、原理的に如何なる形式や機構を有する固定装置33であろうとも、固定装置33の機枠25側の部材に対して、歩み板3(開閉板)側の回動部材を動かなく固定することができる。
したがって、実施例で示した固定装置33とは異なるタイプの固定装置33に対しても、テンション装置34は有効である。
【0033】
(テンション装置のバリエーション)
テンション装置34は、開閉板側取付部341と機枠側取付部342の間を弛緩緊張自在に繋げる装置であればよく、ターンバックル344に限られない。たとえば、バネカンは、部材間を緊張弛緩自在に繋げることができる。また、油圧シリンダをテンション装置34として使えば、固定装置33で固定したことを契機として自動的に開閉板側取付部341と機枠側取付部342の間を緊張状態にすることもできる。
固定装置33とテンション装置34は、原理が実施例と異なっていても有効に機能する。
【0034】
(床材)
図4は、床材5の説明図である。図4(A)は荷台2の平面図であり、歩み板3とベース13は説明のため図示していない。図4(B)は図4(A)のb-b間の断面図である。
床材5は、機枠25を構成する横桟254の上に密に並べられている。
床材5は、木製床材54と金属製床材55がある。金属製床材55は、荷台2の前後方向の全長にわたって設けられた1枚の板材である。金属製床材55(5)は、耐久性が高いため、横桟254(機枠25)に直接に締結されている。
金属製床材55(5)は、床の幅方向の位置を規制する役割があり、横桟254(機枠25)と締結されているため、機枠25の一部にもなっている。後述する態様では、金属製床材55(5)は、木製床材54を取り付ける押さえ部材(両側押さえ部材51A・片側押さえ部材51B)を固定部材57で固定する機枠25としても使われる。
【0035】
木製床材54(5)は、前側の木製床材54(5)と後側の木製床材54(5)に分割されて、荷台2の床面を覆っている。前側の木製床材54(5)と後側の木製床材54(5)の間に両側押さえ部材51Aが取付けられ、木製床材54(5)の端部を押さえている。前側と後側のそれぞれの木製床材54(5)は、前枠253Bと後枠253Cに近接して取り付けられた片側押さえ部材51Bにより端部56が押さえられている。
【0036】
木製床材54(5)は、金属製床材55(5)に比べ耐久性が劣るため、片側押さえ部材51Bや両側押さえ部材51Aにより荷台2に取り付けられる。なお、樹脂製床材は材質により耐久性が様々であり、耐久性により木製床材54(5)のように取り付けるか、金属製床材55(5)のように取り付けるか選択できる
【0037】
図5図4(B)に付した枠Cの拡大図と分解図であり、荷台2前側の片側押さえ部材51Bを図示している。
実施例の床材5の端部を押さえる押さえ部材は、2種類あるが、床材5の端部を押さえる押さえ部511が片側だけにあるのが片側押さえ部材51Bである。
【0038】
(荷台前側の片側押さえ部材)
実施例の片側押さえ部材51Bで取り付けられる床材5は、木製床材54である。以下、床材5を木製床材54として説明する。
荷台2上の木製床材54は、機枠25を構成する複数の横桟254の上に密に並べられている。
木製床材54は、前後に2分されており、荷台前側の木製床材54の端部56を押さえるのが、図5に図示された荷台2前側の片側押さえ部材51Bである。木製床材54の端部56を「押さえる」とは、木製床材54を固定するために押さえるものであり、実施例では木製床材54を下にある機枠25に向けて押さえている。木製床材54の端部56の上面や、床材の端部56のへり部561などが下にある機枠25に向けて押さえるのに適している。
押さえ部511で押さえられる部位を含む周辺が端部56である。もちろん、実施例の押さえ部511が直接覆っている木製床材54の上面も端部56である。しかし、木製床材54の上面だけでなく、上面の下側の領域も機枠25に当接することで木製床材54の固定に寄与している。
したがって、端部56が木製床材54のどこまで含むのかを厳密に考察することに技術的意義はない。実施例の木製床材54の端部56は、木製床材54の上面に限らずその周辺も含んでいる。
【0039】
押さえ部511は、機枠25に直接または間接的に固定される。実施例の片側押さえ部材51Bは押さえ部511の他に、本体部512と立上り部513を有している。本体部512は、押さえ部511を機枠25に固定する固定部材57が取付けられる部分である。実施例の固定部材57はボルト571である。
立上り部513は、本体部512と押さえ部511を分けている。木製床材54の端部56は、立上り部513を超えて前に行かない。木製床材54の端部56は、立上り部513と当接させて配置させることができる。荷台2の横桟254の上に多数並べられ木製床材54は、端部56が立上り部513と当接することで一列にきれいに並ぶ。
【0040】
(荷台前側の片側押さえ部材が固定される機枠)
図5において、横桟254と前枠253Bは、共に機枠25の一部である。支持部58は、横桟254の真横に位置する曲折部を有する板材であり、一端が曲折され溶接部581になっている。溶接部581は横桟254に対して溶接され横桟254と一体化することで機枠25の一部になっている。支持部58の他端は、実施例では前枠253Bと当接している。支持部58の他端を前枠253Bと溶接してもよい。
機枠25の一部となった支持部58は、ボルト571を通す挿通孔が設けられている。ナット572またはボルト571のいずれか一方は回り止めされている。締結は、もう一方の回り止めされていないナット572またはボルト571を回すことで完了する。
実施例は、ボルト571が支持部58に溶接固定されており、溶接によりボルト571の回り止めを行っている。
実施例は、ボルト571が支持部58に溶接固定されているため、作業者はナット572を回動させることで、本体部512と支持部58を簡単に締結固定することができる。
着脱可能な固定部材57であるナット572により、本体部512に設けられた押さえ部511は、支持部58を介して機枠25に対して固定される。
【0041】
実施例は、固定部材57としてボルト571とナット572を用いたが、固定は実施例に示したものに限られない。押さえ部511を機枠25に固定できるならば、形式は問わない。
【0042】
また、機枠25と押さえ部511の固定は、直接または間接的でよく、実施例では、横桟254に溶接した支持部58を介して間接的に横桟254(機枠25)に固定している。直接的に横桟254や前枠253Bに押さえ部511を固定してもよい。
【0043】
木製床材54の端部56は、押さえ部511と支持部58の間にできた空間に呑み込まれるだけで、機枠25と固定されており、直接木製床材54に締結材などが打ち込まれることはない。
木製床材54に締結材を打ち込む孔などが設けられないので、従来技術で述べたような木製床材54の締結材周囲が劣化するなどの不都合は起きない。このため、実施例の木製床材54できた荷台2は、従来技術より耐久性が向上している。
【0044】
さらに、実施例は、木製床材54の一部が損傷した場合でも、片側押さえ部材51Bを固定しているナット572を緩めるだけで交換ができる。
さらに、すべての木製床材54を交換する場合、従来のような固定手段では、木製床材54の1枚1枚に打ち込まれた多数の締結部材(ボルト571及びナット572やタッピングネジ)をすべて外す必要があった。実施例の片側押さえ部材51Bは、多数の木製床材54をまとめて固定することができるものであり、本体部512の固定に従来のような多くの締結部材(ボルト571及びナット572やタッピングネジ)を必要としない。
以上のように、実施例の片側押さえ部材51Bを用いた荷台2は、木製床材54の交換作業効率を著しく向上させることができた。
【0045】
(荷台後側の片側押さえ部材)
図6図4(B)に付した枠Eの拡大図と分解図であり、荷台2後側の片側押さえ部材51Bを図示している。
荷台2後側の片側押さえ部材51Bの構造形状は、前述した荷台2前側の片側押さえ部材51Bと実質的に同じである。また、荷台2後側の片側押さえ部材51Bが固定される機枠25の構造も、実質的に荷台2前側と同じである。
両者の違いは、片側押さえ部材51Bの向きが異なるだけである。
【0046】
(荷台中央の両側押さえ部材)
図7図4(B)に付した枠Dの拡大図と分解図であり、荷台2中央の両側押さえ部材51Aを図示している。
荷台2中央の両側押さえ部材51Aは、2つの片側押さえ部材51Bを、本体部512が向き合うように向かい合わせ、本体部512同士を連結した形状をしている。両側押さえ部材51Aを構成する個々の部材の機能や構造は、片側押さえ部材51Bと同じである。
両側押さえ部材51Aが固定される機枠25は、片側押さえ部材51Bのそれと若干異なっている。両側押さえ部材51Aを固定する支持部58は、前後の両側に、曲折した一対の曲折部が設けられている。一対の曲折部は、それぞれ隣接する前後一対の横桟254(25)に溶接されて溶接部581となっており、強固な機枠25を構築している。両側押さえ部材51Aの近くには、荷台回動軸(図示せず)がある。ダンプシリンダ12の作動により傾動を始めた荷台2は、その荷重が両側押さえ部材51Aとその下の支持部58付近にかかる。両側押さえ部材51Aと支持部58は、荷台2を補強する役割も担っている。
【0047】
(押さえ部材が固定される機枠の変形例)
実施例は、両側押さえ部材51Aと片側押さえ部材51Bは、その下方にある機枠25と固定する態様であった。両側押さえ部材51Aと片側押さえ部材51Bは、機枠25に固定されていればよい部材である。例えば、荷台2後側の片側押さえ部材51Bは、後枠253Cと固定されていてもよい。
さらに、金属製床材55は、横桟254(25)と締結されて機枠25と一体化しているため、機枠25の一部を構成しているともいえる。例えば、金属製床材55の上面に両側押さえ部材51Aの本体部512を延ばし、本体部512と金属製床材55の上面を締結することで両側押さえ部材51Aを機枠25に固定することができる。また、両側押さえ部材51Aと片側押さえ部材51Bを側枠253Aに固定することもできる。
以上のように、両側押さえ部材51Aと片側押さえ部材51Bが固定される機枠25は、直接または間接的でもよく、機枠25を構成する部材であればどのような部材と固定されてもよい。
【0048】
(押さえ部材の第1変形例)
図8は、両側押さえ部材の第1変形例の説明図である。
第1変形例は、木製床材54(5)のへり部561に当接する両側押さえ部材51Aの例である。両側押さえ部材51Aは、ボルト573とナット572を固定部材57とし、機枠25を構成する支持部58と固定されている。木製床材54(5)の端部56を押さえる押さえ部511は、木製床材54(5)のへり部561を端部56として押さえるものであってもよい。
なお、図8の両側押さえ部材51Aの上側は、図示しないカバーで覆われ、床に段差ができないようになっている。
この例は、片側押さえ部材51Bにも適用可能である。
【0049】
(押さえ部材の第2変形例)
図9は、両側押さえ部材の第2変形例の説明図である。
第2変形例は、略T字型をした両側押さえ部材51Aの例である。両側押さえ部材51Aは、内部が中空になっておらず、堅牢なアルミニウム合金を材料とした成形部材である。上面はザグリ加工され皿ネジ574が締結されたとき、平坦になるように構成されている。皿ネジ574とナット572は、併せて固定部材57となり、支持部58(25)と両側押さえ部材51Aを固定する。
この例は、片側押さえ部材51Bにも適用可能である。
【0050】
(SDGsへの貢献)
実施例の固定装置33を保護するテンション装置34の態様は、固定装置33の劣化を防ぐとともに、事故を未然に防ぐことができる。この態様は、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)の目標12の「作る責任・使う責任」に寄与する。
また、実施例の床材5の端部56を押さえる押さえ部材(両側押さえ部材51A・片側押さえ部材51B)の態様は、床材5の劣化を防ぎ、床材5を長持ちさせるとともに、交換を容易にする。この態様は、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)の目標12の「作る責任・使う責任」に寄与する。
【0051】
(態様の組み合わせ)
出願人は、実施例に加え、随所で変更し得る例や変形例を説明してきた。その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 農業用トレーラ
11 タイヤ
12 ダンプシリンダ
13 ベース
15 走行車両

2 荷台
23 搬送物(コンバイン)
25 機枠
252 主フレーム材(機枠)
253 荷台フレーム(機枠)
253A 側枠
253B 前枠
253C 後枠
254 横桟

3 歩み板(開閉板)
31 金具
312 ガススプリング
32A 歩み板側の回動金具
32B 後枠側の回動金具
321 歩み板回動軸

33 固定装置
331L 左機枠固定板(機枠側取付部)
331R 右機枠固定板
3313 第3孔部
3314 第4孔部
332 固定ピン
3321 ねじ部
3322 把持部
3323 先端部
333 開閉板連動板
3331 第1孔部
3332 第2孔部

34 テンション装置
341 開閉板側取付部
342 機枠側取付部
343 チェーン
344 ターンバックル(テンション部材)
345 蝶ネジ
346 係合ロッド
5 床材
51A 両側押さえ部材
51B 片側押さえ部材
511 押さえ部
512 本体部
513 立上り部
54 木製床材
55 金属製床材
56 端部
561 へり部
57 固定部材
571 ボルト
572 ナット
573 ボルト
574 皿ネジ
58 支持部
581 溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9