(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064345
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】遮光フィルム、並びに、これを用いて形成した遮光部材、レンズユニット及びカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20240507BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20240507BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20240507BHJP
【FI】
G02B5/00 B
G03B30/00
G02B7/02 A
G02B7/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172862
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000108454
【氏名又は名称】ソマール株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂爪 直樹
【テーマコード(参考)】
2H042
2H044
【Fターム(参考)】
2H042AA09
2H042AA15
2H042AA22
2H044AA18
2H044AD01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フレア・ゴーストを抑えつつ、目視での表裏の判別が可能な遮光部材を得るための遮光フィルムを提供する。
【解決手段】入射角度60°の光に対する光沢度を(A)、波長550nmの光に対する反射率を(B)、SCE方式によるCIELAB表色系でのL値を(C)、とする。このとき、遮光フィルム100は、光学機器用の遮光部材を得るための遮光フィルムであって、第一遮光層21、及び第二遮光層31を少なくとも備える。第一遮光層21及び第二遮光層31は、各層が形成された面の最表面の、(A)、(B)、及び(C)が、それぞれ、2%以下、4.5%以下、及び26以下である。第一遮光層21が形成された面の最表面と第二遮光層31が形成された面の最表面の、(C)の差、及び光学濃度の差が、それぞれ、4以上、及び0.5以上1.5以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学機器用の遮光部材を得るための遮光フィルムであって、
第一遮光層、及び第二遮光層を少なくとも備え、
前記第一遮光層及び前記第二遮光層は、各層が形成された面の最表面の、(A)、(B)、及び(C)が、それぞれ、2%以下、4.5%以下、及び26以下であり、
前記第一遮光層が形成された面の最表面と前記第二遮光層が形成された面の最表面の、前記(C)の差が4以上であり、
前記第一遮光層が形成された面の最表面の、(D1)が2.0以上、前記第二遮光層が形成された面の最表面の、(D2)が1.5以下、前記(D1)と前記(D2)の差が0.5以上1.5以下である、遮光フィルム。
(A)入射角度60°の光に対する光沢度
(B)波長550nmの光に対する反射率
(C)SCE方式によるCIELAB表色系でのL値
(D1)光学濃度
(D2)光学濃度
【請求項2】
前記第一遮光層が形成された面の最表面と前記第二遮光層が形成された面の最表面の、前記(A)の差が0.5%以下である、請求項1に記載の遮光フィルム。
【請求項3】
光軸方向に積み重ねられた複数のレンズからなるレンズ群をホルダー内に備えたレンズユニットに用いられる遮光部材であって、請求項1又は2に記載の遮光フィルムから形成された遮光部材。
【請求項4】
光軸方向に積み重ねられた複数のレンズからなるレンズ群をホルダー内に備えたレンズユニットにおいて、少なくとも一対のレンズ間に、請求項3に記載の遮光部材が介在してあるレンズユニット。
【請求項5】
請求項4に記載のレンズユニットと、前記レンズユニットを通して被写体を撮像する撮像素子と、を有するカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光フィルム、並びに、これを用いて形成した遮光部材、レンズユニット及びカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット端末、デジタルカメラ等の電子機器には、被写体を撮影して画像信号に変換するためのカメラモジュールが内蔵されている。カメラモジュールには、撮像素子上への被写体画像の結像に不要な入射光や反射光等の散乱光(以下単に「不要光」ともいう。)を除去し、ハレーション、レンズフレア、ゴースト等(以下「フレア・ゴースト」と略記する。)の発生を防ぎ、撮像画像の画質を向上させることが求められる。そのため、カメラモジュールに用いられるレンズユニットに、不要光を除去するための遮光部材を組み込むことが行われている。
この種の遮光部材として、フィルム基材の両面に、カーボンブラック、滑剤、微粒子、及びバインダー樹脂を含有する遮光層を形成した遮光フィルムを所望形状に加工して作製したもの(例えば特許文献1)が知られている。
【0003】
遮光フィルムから所望形状の遮光部材を作製する際に、又は、作製した遮光部材をカメラモジュールに組み込む際に、遮光フィルムや遮光部材の表裏面の判別がつかないと、組み込み不良等の製造故障の原因となり得る。従来、表裏面の判別をつけるため、遮光フィルムの一方の遮光層上に、該遮光層の光学特性に影響を与えない程度の厚み(例えば1μm未満)で、水系インクによる塗膜を目印として印刷していた。しかしながら、この水系インクによる塗膜は、遮光フィルムや遮光部材の搬送やカメラモジュールへの組み込みの際、接触等の僅かな刺激で、形成した一方の遮光層から脱落等して汚染物(コンタミ又はコンタミネーションと呼ばれる)となり得る。
遮光層上への目印の印刷を行わずにこの問題を解決すべく、例えば特許文献2では、一方の遮光層と他方の遮光層の光沢度をともに10%未満とし、かつ一方の遮光層と他方の遮光層の間で光沢度の差をつける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2006/16555号公報
【特許文献2】特許第6368445号公報(段落0030)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の技術では、遮光層上に目印としての印刷を有さないため、上述した汚染物の問題は解消し得る。しかしながら、特許文献2の技術による遮光フィルムや遮光部材は、遮光層双方の光沢度が10%未満と高いため、両遮光層間で光沢度の差をつけても、不要光の除去が十分でないこともあり得る。不要光の除去が十分でない遮光フィルムや遮光部材をレンズユニットに組み込んだカメラモジュールでは、フレア・ゴーストが発生し、その結果、撮像画像の画質低下を生じさせやすい。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものである。本発明は、レンズユニットに組み込んだカメラモジュールにおけるフレア・ゴーストの発生が抑制され、かつ目視での表裏の判別が可能な遮光部材を得るための遮光フィルム、並びに、これを用いて形成した遮光部材、レンズユニット及びカメラモジュール、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、以下の要件を満たすことによって、レンズユニットに組み込んだカメラモジュールにおけるフレア・ゴーストの発生を抑えつつ、遮光部材及び遮光フィルムの目視での表裏の判別に有効であることを見出した。
【0008】
・層最表面が複数の所定の光学特性(特に2%以下の極低光沢と4.5%以下の低反射率)を備える特定の第一遮光層と第二遮光層を少なくとも有する。
・第一遮光層及び第二遮光層として、各層最表面の、光学濃度が所定範囲で、かつ所定の光学特性(特にL値と光学濃度)の差が所定範囲のものを用いる。
【0009】
本発明者は、こうした新たな知見に基づき、以下に提供される発明を完成させ、上記課題を解決した。
以下では、入射角度60°の光に対する光沢度を(A)、波長550nmの光に対する反射率を(B)、SCE方式によるCIELAB表色系でのL値を(C)、光学濃度(OD)を(D1)及び(D2)、と略記する。
【0010】
本発明によれば、
光学機器用の遮光部材を得るための遮光フィルムであって、
第一遮光層、及び第二遮光層を少なくとも備え、
前記第一遮光層及び前記第二遮光層は、各層が形成された面の最表面の、(A)、(B)、及び(C)が、それぞれ、2%以下、4.5%以下、及び26以下であり、
前記第一遮光層が形成された面の最表面と前記第二遮光層が形成された面の最表面の、前記(C)の差が4以上であり、
前記第一遮光層が形成された面の最表面の、(D1)が2.0以上、前記第二遮光層が形成された面の最表面の、(D2)が1.5以下、前記(D1)と前記(D2)の差が0.5以上1.5以下である、遮光フィルム
が提供される。
【0011】
上記の遮光フィルムは、以下の態様を含みうる。
・第一遮光層が形成された面の最表面と第二遮光層が形成された面の最表面の、前記(A)の差が0.5%以下、であってよい。
【0012】
本発明によれば、光軸方向に積み重ねられた複数のレンズからなるレンズ群をホルダー内に備えたレンズユニットに用いられる遮光部材であって、上記の遮光フィルムから形成された、遮光部材
が提供される。
【0013】
本発明によれば、光軸方向に積み重ねられた複数のレンズからなるレンズ群をホルダー内に備えたレンズユニットにおいて、少なくとも一対のレンズ間に、上記の遮光部材が介在してある、レンズユニット
が提供される。
【0014】
本発明によれば、上記のレンズユニットと、上記のレンズユニットを通して被写体を撮像する撮像素子と、を有する、カメラモジュール
が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レンズユニットに組み込んだカメラモジュールにおけるフレア・ゴーストの発生が抑制され、かつ目視での表裏の判別が可能な遮光部材を得るための遮光フィルム、並びに、これを用いて形成した遮光部材、レンズユニット及びカメラモジュール、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一形態に係る遮光フィルムを模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一形態に係る遮光部材が組み込まれるレンズユニット及びカメラモジュールを模式的に示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し、適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲のものである。
【0018】
本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
【0019】
<遮光フィルム>
図1に示すように、本発明の一形態に係る遮光フィルム100は、基材フィルム11と、この基材フィルム11の一方の主面11a側に設けられた第一遮光層21と、他方の主面11b側に設けられた第二遮光層31とを少なくとも備える。遮光フィルム100は、遮光層21、基材フィルム11、及び遮光層31が、少なくともこの順に配列された積層構造(3層構造)を有するものとなっている。
【0020】
「基材フィルムの一方(他方)の主面側に設けられた」とは、基材フィルム11の表面(例えば主面11aや主面11b)に遮光層21,31が直接載置された態様のみならず、基材フィルム11の表面と遮光層21,31との間に任意の層(例えばアンカー層、接着層等)が介在した態様を包含する意味である。また、第一遮光層21、及び第二遮光層31を少なくとも備える積層構造とは、第一遮光層21及び第二遮光層31のみが直接積層した構造のみならず、上述した3層構造、及び、3層構造に任意の層をさらに設けた構造を包含する意味である。
【0021】
-基材フィルム-
遮光フィルム100の一要素としての基材フィルム11は、遮光層21,31を支持可能なものである限り、その種類は特に限定されない。寸法安定性、機械的強度及び軽量化等の観点から、合成樹脂フィルムが好ましく用いられる。合成樹脂フィルムの具体例としては、ポリエステルフィルム、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。また、アクリル系、ポリオレフィン系、セルロース系、ポリスルホン系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリエーテルスルホン系、ポリエーテルエーテルケトン系のフィルムを用いることもできる。これらの中でも、基材フィルム11としては、ポリエステルフィルムやポリイミドフィルムが好適に用いられる。とりわけ、一軸又は二軸延伸フィルム、特に二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的強度及び寸法安定性に優れるため、特に好ましい。また、耐熱用途には、一軸又は二軸延伸ポリイミドフィルムが特に好ましい。これらは1種を単独で用いることができ、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0022】
基材フィルム11の厚みは、要求性能及び用途に応じて適宜設定でき、特に限定されない。軽量化及び薄膜化の観点からは、基材フィルム11の厚みは、0.5μm以上、50μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上、25μm以下、さらに好ましくは4μm以上、10μm以下、特に好ましくは5μm以上、7μm以下である。なお、遮光層21,31との接着性を向上させる観点から、必要に応じて、基材フィルム11表面にアンカー処理やコロナ処理等の各種公知の表面処理を行うこともできる。
【0023】
基材フィルム11の外観は、透明、半透明、不透明のいずれであってもよく、特に限定されない。例えば発泡ポリエステルフィルム等の発泡した合成樹脂フィルムや、カーボンブラック等の黒色顔料や他の顔料を含有させた合成樹脂フィルムを用いることもできる。含有させてもよい顔料は、特に限定されず、樹脂系粒子、及び無機系粒子のいずれを用いることもできる。樹脂系粒子としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン/メラミン/ホルマリン縮合物、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。無機系粒子としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、マグネタイト系ブラック、銅・鉄・マンガン系ブラック、チタンブラック、カーボンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。これらの顔料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
顔料を基材フィルム11中に含有させる場合の含有割合は、要求される性能等に応じて適宜設定でき、特に限定されない。基材フィルム11に対して、例えば0.3質量%以上、好ましくは0.4質量%以上、例えば15質量%以下、好ましくは12質量%以下、程度とされる。
【0025】
基材フィルム11の表面と遮光層21,31を設ける前に、基材フィルム11の表面と遮光層21,31との接着性を向上させるために、アンカー層を設けることもできる。アンカー層としては、尿素系樹脂層、メラミン系樹脂層、ウレタン系樹脂層、ポリエステル系樹脂等を適用することができる。例えばウレタン系樹脂層は、ポリイソシアネートとジアミン、ジオール等の活性水素含有化合物を含有する溶液を基材フィルム11の表面に塗布して、硬化させることにより得られる。また、尿素系樹脂、メラミン系樹脂の場合は、水溶性尿素系樹脂又は水溶性メラミン系樹脂を含有する溶液を基材フィルム11の表面に塗布し、硬化させることにより得られる。ポリエステル系樹脂は、有機溶剤(メチルエチルケトン、トルエン等)にて溶解又は希釈した溶液を基材フィルム11の表面に塗布し、乾燥させることにより得られる。
【0026】
-遮光層-
遮光フィルム100の一要素としての遮光層21,31は、それぞれの層表面が、2%以下の(A)、4.5%以下の(B)、及び26以下の(C)を有する遮光膜である。
【0027】
ここで、遮光層21,31が最表面に露出している構成であれば、文字どおり、それぞれの層表面が、上記規定の(A)、(B)、及び(C)を有すればよい。一方、遮光層21,31の上に他の層が被覆されている場合には、その他の層の表面(すなわち遮光フィルム100の最表面)が、上記規定の(A)、(B)、及び(C)を有すればよい。以下これらの表面を合わせて「層最表面」という。
【0028】
遮光フィルム100の一要素としての遮光層21,31は、それぞれの層最表面が、2%以下の(A)、4.5%以下の(B)、及び26以下の(C)を有する遮光膜であり、遮光層21の層最表面と遮光層31の層最表面の、(C)の差が4以上、遮光層21の層最表面の(D1)が2.0以上、遮光層31の層最表面の(D2)が1.5以下、(D1)と(D2)の差が0.5以上1.5以下となるように設定されている。必要に応じて、さらに、遮光層21の層最表面と遮光層31の層最表面の、(A)の差が0.5%以下、となるように設定されてよい。
【0029】
-(A)入射角度60°の光に対する光沢度-
本明細書において、(A)は、JIS Z8741に準拠し、グロスメータ(VG 7000:日本電色工業社)を用い入射受光角60°における遮光層21,31のそれぞれの層最表面の光沢度(鏡面光沢度)を測定して得られた値とする。光の乱反射によるフレア・ゴースト現象を効果的に防止する観点から、遮光層21と遮光層31の層最表面は、それぞれで、1.5%以下の(A)を有することが好ましく、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.7%以下、である。不要光によるフレア・ゴーストの発生を抑制する観点から、遮光層21の層最表面は、1%以下の(A)を有することが好ましく、より好ましくは0.5%以下であり、さらに好ましくは0.3%以下、である。一方、不要光によるフレア・ゴーストの発生を抑制する観点から、遮光層31の層最表面は、1.5%以下の(A)を有することが好ましく、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.7%以下、である。
【0030】
-(B)波長550nmの光に対する反射率-
(B)は、JIS Z8722に準拠し、分光測色計(CM-5:コニカミノルタ社)を用い波長550nmの光に対する、遮光層21,31のそれぞれの層最表面の反射率を測定して得られた値とする。光の乱反射によるフレア・ゴースト現象をさらに効果的に防止する観点から、遮光層21と遮光層31の層最表面は、それぞれで、4.4%以下の(B)を有することが好ましく、より好ましくは4.2%以下、さらに好ましくは4.0%以下、である。不要光によるフレア・ゴーストの発生を抑制する観点から、遮光層21の層最表面は、上限として2.4%以下の(B)を有することが好ましく、より好ましくは2.2%以下であり、さらに好ましくは2%以下、である。下限としては特に限定されないが、例えば、0.8%以上の(B)を有することが好ましく、より好ましくは1.0%以上であり、さらに好ましくは1.1%以上である。一方、不要光によるフレア・ゴーストの発生を抑制し、かつ目視での表裏の判別をし易くする観点から、遮光層31の層最表面は、2.8%以上4.4%以下の(B)を有することが好ましく、より好ましくは3.0%以上4.2%以下であり、さらに好ましくは3.1%以上4.0%以下、である。
【0031】
-(C)SCE方式によるCIELAB表色系でのL値-
(C)は、黒色度を表す指標であり、層最表面の、SCE方式による、CIE 1976 L*a*b*(CIELAB) 表色系での明度L*値のことである。SCE方式とは、正反射光除去方式のことであり、正反射光を除去して色を測定する方法を意味する。SCE方式の定義は、JIS Z 8722(2009)に規定されている。SCE方式では、正反射光を除去して測定するため、実際の人の目で見た色に近い色となる。
CIEは、Commission Internationale de l‘Eclairageの略称であり、国際照明委員会を意味する。CIELAB表示色は、知覚と装置の違いによる色差を測定するために、1976年に勧告され、JIS Z 8781(2013)に規定されている均等色空間である。CIELABの3つの座標は、L*値、a*値、b*値で示される。L*値は明度を示し、0~100で示される。L*値が0の場合は黒色を意味し、L*値が100の場合は白の拡散色を意味する。a*値は赤と緑の間の色を示す。a*値がマイナスであれば、緑寄りの色を意味し、プラスであれば赤寄りの色を意味する。b*値は黄色と青色の間の色を意味する。b*がマイナスであれば青寄りの色を意味し、プラスであれば、黄色寄りの色を意味する。
この(C)は、JIS Z8781-4:2013に準拠し、分光測色計(CM-5:コニカミノルタ社)を用い遮光層21,31のそれぞれの層最表面の、SCE方式による、CIE 1976 L*a*b*(CIELAB)表色系での明度L*値を測定して得られた値とする。
不要光によるフレア・ゴーストの発生を抑制する、黒さを際立たせデザイン性を向上させる観点から、遮光層21と遮光層31の層最表面は、それぞれで、25以下の(C)を有することが好ましく、より好ましくは23以下、である。不要光によるフレア・ゴーストの発生を抑制する、黒さを際立たせデザイン性を向上させる点から、遮光層21の層最表面は、12以上18以下の(C)を有することが好ましく、より好ましくは13以上17以下であり、さらに好ましくは14以上16以下、である。一方、不要光によるフレア・ゴーストの発生を抑制し、かつ目視での表裏の判別をし易くする観点から、遮光層31の層最表面は、17以上25以下の(C)を有することが好ましく、より好ましくは18以上24以下であり、さらに好ましくは19以上23以下、である。
【0032】
-(D1)及び(D2)光学濃度-
(D1)及び(D2)は、光学濃度計(X-rite 361T(オルソフィルタ):日本平版機材社)を用い、遮光層21,31のそれぞれの層最表面側に垂直透過光束を照射し、遮光層21,31がない状態との比をlog(対数)で表して算出した値とする。目視での表裏の判別をし易くする観点から、遮光層21の層最表面は、2.0以上の(D1)を有し、遮光層31の層最表面は、1.5以下の(D2)を有する。不要光によるフレア・ゴーストの発生を抑制し、かつ目視での表裏の判別をし易くするとともに、遮光層の高い遮光性と良好な基材密着性とを実現させる観点から、遮光層21の層最表面は、好ましくは2.0以上2.4以下の(D1)を有するとよい。一方、不要光によるフレア・ゴーストの発生を抑制し、かつ目視での表裏の判別をし易くするとともに、遮光層の高い遮光性と良好な基材密着性とを実現させる観点から、遮光層31の層最表面は、好ましくは1.0以上1.5以下の(D2)を有するとよく、より好ましくは1.0以上1.4以下、である。
また、遮光層21と遮光層31を積層させた場合、その積層体全体の光学濃度は、3.0以上5.0以下が好ましく、より好ましくは3.5以上4.0以下、である。このとき、例えば(D1)が2.0以上の遮光層21と(D2)が1.0以上1.5以下の遮光層31とを用いて合計で光学濃度が3.0以上5.0以下の積層体を構成し、積層構造体の表裏面で異なる光学濃度にすると、積層構造体の表裏の判別がより明確になる。
【0033】
-組成例-
このような特性を有する遮光層21,31の構成成分としては、樹脂成分、粒子及び着色・導電剤を含むことができる。
【0034】
-樹脂成分-
樹脂成分は、粒子及び着色・導電剤のバインダーとなる。樹脂成分の材料は特に限定されず、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれを用いることもできる。具体的な熱硬化性樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アルキド系樹脂等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリアクリルエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ブチラール樹脂、スチレン―ブタジエン共重合体樹脂等が挙げられる。耐熱性、耐湿性、耐溶剤性及び表面硬度の観点からは、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。熱硬化性樹脂としては、柔軟性及び被膜の強靭さを考慮すると、アクリル樹脂が特に好ましい。
【0035】
遮光層21,31の構成成分として硬化剤を添加することにより、樹脂成分の架橋を促進させることができる。硬化剤としては、官能基をもつ尿素化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物等を用いることができる。これらの中でも、特にイソシアネート化合物が好ましい。硬化剤の配合割合は、樹脂成分100質量%に対して、10~50質量%とすることが好ましい。上記範囲で硬化剤を添加することにより、より好適な硬度の遮光層が得られ、他部材と摺動する場合であっても、長期にわたり遮光層21,31表面の光学特性が維持され得る。
【0036】
硬化剤を用いる場合は、その反応を促進するために、反応触媒を併用することもできる。反応触媒としては、アンモニアや塩化アンモニウム等が挙げられる。反応触媒の配合割合は、硬化剤100質量%に対し0.1~10質量%の範囲であることが好ましい。
【0037】
-粒子及び着色・導電剤-
遮光層21,31には、粒子及び着色・導電剤を含有させることができる。例えば、粒子及び着色・導電剤として、粒径及び粒度分布の異なる2以上の粒子群を用いることにより、遮光層21,31のそれぞれの層最表面の上記所定の光学特性を本発明の規定範囲に好適に制御することができる。
例えば、大きさの異なる2の粒子群を用いる場合、大きい粒子群の粒径は、小さい粒子群の粒径の10倍~40倍であることが好ましい。なお、3以上の粒子群を用いる場合には、最も大きい粒子群の粒径と最も小さい粒子群の粒径とが上記の関係になるよう調整すればよい。
以下では、大きい粒子群を大粒子1、小さい粒子群を小粒子2として説明する。
一形態に係る遮光層21,31は、粒子群として、平均粒径が2μm~6μmの大粒子1と平均粒径0.06μm~0.4μmの小粒子2を含むことが好ましい。大粒子1の平均粒径は、3μm~5μmであることがより好ましく、3μm~4μmであることがさらに好ましい。小粒子2の平均粒径は、0.06μm~0.4μmであることが好ましく、0.1μm~0.3μmであることがより好ましい。
このような粒径の大粒子1と小粒子2を組み合わせることにより、凹部の大粒子1の間に小粒子2が埋め込まれ、遮光層21,31のそれぞれの層最表面の上記所定の光学特性を本発明の規定範囲により好適に制御することができる。
【0038】
粒子の含有量は、粒子群の平均粒径、粒度分布及び遮光層21,31の膜厚や基材フィルム11の表面形状にもよるが、遮光層21,31全体を100体積%として、20体積%~50体積%であることが好ましい。また、大粒子1と小粒子2の混合比は、遮光層21,31のそれぞれの層最表面の上記所定の光学特性を本発明の規定範囲に調整できれば特に限定されないが、1.5:1~3.5:1(大粒子1の占める体積:小粒子2の占める体積)であることが好ましい。なお、遮光層21,31中の粒子の体積含有率(体積占有率)は、遮光層21,31の断面写真から画像解析等により算出した面積占有率に換算して求めることができる。
【0039】
大粒子1としては、樹脂系粒子及び無機系粒子のいずれを用いることもできる。樹脂系粒子としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン/メラミン/ホルマリン縮合物、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。一方、無機系粒子としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、炭素等が挙げられる。これらは単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0040】
より優れた特性を得るためには、大粒子1は無機粒子を用いることが好ましい。大粒子1として無機系粒子を用いることにより、より低光沢で高光学濃度の遮光フィルム100を得ることができる。大粒子1として用いる無機系粒子としては、シリカが好ましい。大粒子1の形状は特に限定されないが、本発明の規定範囲に遮光層21,31のそれぞれの層最表面の上記所定の光学特性を制御するためには、粒度分布がシャープな粒子群を用いることが好ましい。
また、(A)をより低減するためには、不定形の粒子群を用いることが好ましい。これらの中でも、特に多孔質の不定形シリカ粒子を用いることが好ましい。このような粒子群を用いることにより、大粒子1の表面及び内部で光が屈折を繰り返すことにより、さらに(A)を低減することができる。
光の反射を抑制するために、有機系又は無機系着色剤により大粒子1を黒色に着色することもできる。このように着色した材料としては複合シリカ、導電性シリカ、黒色シリカ等が挙げられる。
複合シリカとしては、例えば、カーボンブラックとシリカをナノレベルで合成し複合化したものが挙げられる。導電性シリカとしては、例えば、シリカ粒子にカーボンブラック等の導電性粒子をコーティングしたものが挙げられる。黒色シリカとしては、例えば、珪石の中に黒鉛を含有している天然鉱石が挙げられる。
【0041】
一方、小粒子2の材質も特に限定されず、樹脂系粒子及び無機系粒子のいずれを用いることもできる。樹脂系粒子としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン/メラミン/ホルマリン縮合物、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。一方、無機系粒子としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、炭素等が挙げられる。これらは単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
小粒子2としては、例えば、着色・導電剤として添加されるカーボンブラック等を用いることもできる。小粒子2として、カーボンブラックを用いることにより、遮光層21,31が着色するため、反射防止効果が向上し、かつ良好な帯電防止効果が得られる。
【0042】
-任意成分-
一形態においては、遮光層21,31の構成成分として、必要に応じて、さらに、レベリング剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、分散剤、消泡剤等を添加することができる。
【0043】
遮光層21,31の厚さは、特に限定されないが、平均膜厚が、2μm以上20μm以下であることが好ましい。また、遮光層21,31の平均膜厚の上限は、15μmであることがより好ましく、10μmであることがさらに好ましい。本発明では、遮光層の厚さを5μm以下としても低光沢性、高光学濃度、低反射率でかつ黒色度が高い遮光フィルム100を得ることができる。なお、遮光層21,31の平均膜厚は、基材フィルム11表面から遮光層21,31の大粒子1及び小粒子2により突出している部分を含む高さのことである。遮光層21,31の上記平均膜厚は、JIS K7130に基づいて測定することができる。
【0044】
なお、軽量化及び薄膜化の観点からは、遮光フィルム100の総厚みは、0.5μm以上50μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。
【0045】
-(C),光学濃度の差、調整方法-
本発明の一形態に係る遮光フィルム100においては、それぞれの層最表面が、2%以下の(A)、4.5%以下の(B)、及び26以下の(C)を有する遮光層21と遮光層31において、遮光層21の層最表面と遮光層31の層最表面の、(C)の差が4以上、遮光層21の層最表面の(D1)が2.0以上、遮光層31の層最表面の(D2)が1.5以下、(D1)と(D2)の差が0.5以上1.5以下である構成を採用したことに特徴がある。このように特定の光学特性をそれぞれの層最表面に備える遮光層21,31において、遮光層21と遮光層31の各層最表面の、(C)と光学濃度を異ならしめることで、そのマット感や外観の黒々しさの差に基づいて、非接触すなわち目視で、遮光フィルム100の表裏の判別が可能となる。
【0046】
遮光層21と遮光層31の各層最表面の、(C)の差は、目視での表裏の判別をし易くする観点から、好ましくは4.5以上、より好ましくは5以上、である。このような(C)の差を設けるには、例えば、上述したように、遮光層21の層最表面の(C)を12以上18以下とし、遮光層31の層最表面の(C)を17以上25以下とすればよい。
【0047】
遮光層21と遮光層31の各層最表面の(C)の調整方法としては、例えば、遮光層21と遮光層31とで黒色粒子の含有量を相違させる方法、遮光層21と遮光層31とで形状の異なる粒子群を用いる方法、遮光層21と遮光層31とで粒径の異なる粒子群を用いる方法、遮光層21と遮光層31とで粒度分布の異なる粒子群を用いる方法、遮光層21と遮光層31とで材質(例えば有機、無機の違い等。以下同じ。)の異なる粒子群を用いる方法、遮光層21と遮光層31とで厚みを相違させる方法、遮光層21及び遮光層31の一方のみに粒径の異なる複数の粒子群を含有させる方法、遮光層21及び遮光層31の一方のみに材質の異なる複数の粒子群を含有させる方法、遮光層21及び遮光層31の一方のみに形状の異なる複数の粒子群を含有させる方法、等があるが、これらに特に限定されない。これらの調整方法は、各種の方法をそれぞれ単独で又は適宜組み合わせて行うことができる。
【0048】
遮光層21と遮光層31の各層最表面の、光学濃度の差、つまり遮光層21の層最表面の(D1)と遮光層31の層最表面の(D2)との差は、目視での表裏の判別をし易くする観点から、好ましくは0.55以上1.4以下、より好ましくは0.6以上1.3以下、である。このような(D1)と(D2)の差を設けるには、例えば、上述したように、遮光層21の層最表面の(D1)を好ましくは2.0以上2.4以下とし、遮光層31の層最表面の(D2)を好ましくは1.0以上1.5以下とすればよい。
【0049】
遮光層21と遮光層31の各層最表面の光学濃度の調整方法としては、例えば、遮光層21と遮光層31とで黒色粒子の含有量を相違させる方法、遮光層21と遮光層31とで粒径の異なる粒子群を用いる方法、遮光層21と遮光層31とで材質の異なる粒子群を用いる方法、等があるが、これらに特に限定されない。これらの調整方法は、各種の方法をそれぞれ単独で又は適宜組み合わせて行うことができる。
【0050】
-(A)の差、調整方法-
遮光層21と遮光層31の各層最表面の、(C)の差と光学濃度の差に加え、遮光層21と遮光層31の各層最表面の、(A)を異ならしめる場合、遮光層21と遮光層31の各層最表面の、(A)の差は、不要光によるフレア・ゴーストの発生の抑制を考慮して適宜設定すればよく、特に限定されないが、好ましくは0.45%以下、である。このような(A)の差を設けるには、例えば、上述したように、遮光層21の層最表面の(A)を1%以下とし、遮光層31の層最表面の(A)を1.5%以下とすればよい。
【0051】
遮光層21と遮光層31の各層最表面の(A)の調整方法としては、例えば、遮光層21と遮光層31とで黒色粒子の含有量を相違させる方法、遮光層21と遮光層31とで形状の異なる粒子群を用いる方法、遮光層21と遮光層31とで粒径の異なる粒子群を用いる方法、遮光層21と遮光層31とで粒度分布の異なる粒子群を用いる方法、遮光層21と遮光層31とで材質の異なる粒子群を用いる方法、遮光層21と遮光層31とで厚みを相違させる方法、遮光層21及び遮光層31の一方のみに粒径の異なる複数の粒子群を含有させる方法、遮光層21及び遮光層31の一方のみに材質の異なる複数の粒子群を含有させる方法、遮光層21及び遮光層31の一方のみに形状の異なる複数の粒子群を含有させる方法、等があるが、これらに特に限定されない。これらの調整方法は、各種の方法をそれぞれ単独で又は適宜組み合わせて行うことができる。
【0052】
遮光層21,31は、十分な帯電防止性能を具備させる観点から、1.0×108Ω未満の表面抵抗率を有することが好ましく、より好ましくは1.0×105Ω未満、さらに好ましくは5.0×104Ω未満である。なお、本明細書において、表面抵抗率は、JIS-K6911:1995に準拠して測定される値とする。
【0053】
<遮光フィルムの製造方法>
一形態に係る遮光フィルム100の製造方法は、上述した構成のものが得られる限り、特に限定されない。基材フィルム11上に遮光層21,31を再現性よく簡易かつ低コストで製造する観点からは、ドクターコート、ディップコート、ロールコート、バーコート、ダイコート、ブレードコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、スピンコート等の従来公知の塗布方法が好適に用いられる。
【0054】
例えば、上述した構成成分(樹脂成分、粒子及び着色・導電剤)、並びに必要に応じて配合される任意成分を溶媒(有機溶剤又は水)中に含有する塗布液を、基材フィルム11の主面上に塗布し、乾燥させた後、必要に応じて熱処理や加圧処理等を行うことにより、基材フィルム11上に遮光層21,31を製膜できる。塗布液の溶媒に用いる有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等を用いることができる。なお、基材フィルム11と遮光層21,31との接着を向上させるため、必要に応じてアンカー処理やコロナ処理等を行うこともできる。さらに、必要に応じて、基材フィルム11と遮光層21,31との間にプライマー層や接着層等の中間層を設けることもできる。なお、圧縮成形、射出成形、ブロー成形、トランスファ成形、押出成形等の各種公知の成形方法により、所望形状を有する遮光フィルム100を簡易に得ることもできる。また、一旦シート状に成形した後、真空成形や圧空成形等を行うこともできる。
【0055】
一形態に係る遮光フィルム100においては、それぞれの層最表面が、2%以下の(A)、4.5%以下の(B)、及び26以下の(C)を有する遮光膜であり、遮光層21の層最表面と遮光層31の層最表面の、(C)の差が4以上、遮光層21の層最表面の(D1)が2.0以上、遮光層31の層最表面の(D2)が1.5以下、(D1)と(D2)の差が0.5以上1.5以下、となるように設定された、第一遮光層21及び第二遮光層31を採用している。そのため、これをレンズユニットやカメラモジュール等の遮光部材として用いることで、不要光を十分に除去することができ、フレア・ゴーストの発生を防止でき、撮像画像の画質を向上させることができる。
【0056】
しかも、上述した積層構造(すなわち、層最表面が特定の光学特性を備える遮光層21と遮光層31)において、遮光層21の層最表面と遮光層31の層最表面の、(C)の差が4以上、遮光層21の層最表面の(D1)が2.0以上、遮光層31の層最表面の(D2)が1.5以下、(D1)と(D2)の差が0.5以上1.5以下、となるように調整されているため、そのマット感や外観の黒々しさの差に基づいて、非接触すなわち目視で、表裏面の判別を容易に行うことができる。
【0057】
なお、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で、任意に変更して実施することができる。例えば、上述した実施形態では、基材フィルム11の表裏に遮光層21及び遮光層31を設けた態様を示したが、基材フィルム11を設けることなく、遮光層21及び遮光層31の積層構造(2層構造)としてもよい。また、2以上の遮光膜から遮光層21,31を形成してもよい。例えば遮光膜21a及び遮光膜21bが積層された積層遮光層を遮光層21として適用することができる。遮光層31についても同様である。このとき、遮光膜21a及び遮光膜21bの積層体として、遮光層21の層最表面に求められる上述した各種性能・物性を満たせばよい。遮光層31についても同様である。
【0058】
<カメラモジュール、レンズユニット、遮光部材>
図2に示すように、本発明の一形態に係るカメラモジュール1は、レンズユニット2を有する。レンズユニット2は、光軸方向Xに積み重ねられた5枚のレンズ41,43,45,47,49からなるレンズ群を有する。レンズ群を構成するレンズ枚数は、5枚に限定されない。本例では、レンズ群を構成する5枚のレンズ41,43,45,47,49のうち、三対のレンズ(レンズ41及び43、レンズ43及び45、並びに、レンズ47及び49)間には、遮光部材61,63,65が介在してある。レンズ群と遮光部材61,63,65はともに、樹脂や金属等で構成される、多段円筒状のホルダー(鏡筒)8内に載置される。本例のホルダー8は、内周部に、3つの段差部81,83,85が設けられており、これらの段差部81,83,85を利用して、レンズ群と遮光部材61,63,65が、同一光軸上に配置して積み重ねられた状態で、ホルダー8内の所定位置に収納配置されている。レンズ41,43,45,47,49は、種々のレンズ(凸レンズや凹レンズ等)であってよい。その曲面は、球面、非球面を問わず、またその材質も、樹脂(例えば、環状オレフィン系樹脂(COCやCOP)、ポリカーボネート系樹脂、液晶ポリマー、等)、ガラスを問わない。
カメラモジュール1は、レンズユニット2とともに、撮像素子9を有する。撮像素子9は、レンズユニット2の光軸上に配置され、レンズユニット2を通して被写体を撮像する。撮像素子9は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等で構成される。
【0059】
本例の遮光部材61,63,65は、平面視した場合、円環状(リング状)の外形を有し、かつ断面視した場合、中央部分に円柱状の中空部を備えた形状を有する遮光板であり、
図1に示す遮光フィルム100をリング状に打ち抜くことで形成されたものである。そのため、遮光部材61,63,65は、
図1に示す遮光フィルム100と同様の積層構造を有する。なお、遮光部材63,65は、外径のサイズ及び中空部の外径のサイズがそれぞれ相違すること以外は、遮光部材61と同様の構成を有するものである。
【0060】
一形態に係る遮光部材61,63,65においても、それぞれの層最表面が、2%以下の(A)、4.5%以下の(B)、及び26以下の(C)を有する遮光膜であり、遮光層21の層最表面と遮光層31の層最表面の、(C)の差が4以上、遮光層21の層最表面の(D1)が2.0以上、遮光層31の層最表面の(D2)が1.5以下、(D1)と(D2)の差が0.5以上1.5以下、となるように設定された、第一遮光層21及び第二遮光層31を採用している。そのため、これをレンズユニットやカメラモジュール等の遮光部材として用いることで、不要光を十分に除去することができ、フレア・ゴーストの発生を防止でき、撮像画像の画質を向上させることができる。
【0061】
しかも、上述した積層構造(すなわち、層最表面が特定の光学特性を備える遮光層21と遮光層31)において、遮光層21の層最表面と遮光層31の層最表面の、(C)の差が4以上、遮光層21の層最表面の(D1)が2.0以上、遮光層31の層最表面の(D2)が1.5以下、(D1)と(D2)の差が0.5以上1.5以下、となるように調整されているため、そのマット感や外観の黒々しさの差に基づいて、非接触すなわち目視で、遮光部材61,63,65の表裏面の判別を容易に行うことができる。そのため、これら遮光部材61,63,65を用いたレンズユニット2及びカメラモジュール1は、その保管時や組み込み時においても、表裏面の誤認に基づく組み込み不良等の製造故障が抑止される。
【0062】
なお、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で、任意に変更して実施することができる。例えば、遮光フィルム100(遮光部材61,63,65)の外形形状は、例えば平面視で長方形状、正方形状、六角形状等の多角形状、楕円形状、不定形状等の任意の形状を採用することができる。また、遮光部材61,63,65の中空部の形状も、本実施形態では平面視で円状に形成されているが、その外形は特に限定されない。例えば平面視で長方形状、正方形状、六角形状等の多角形状、楕円形状、不定形状等の任意の形状を採用することができる。
【符号の説明】
【0063】
100… 遮光フィルム
11… 基材フィルム
11a… 表面(主面)
11b… 表面(主面)
21… 遮光層(第一遮光層)
31… 遮光層(第二遮光層)
1… カメラモジュール
2… レンズユニット
41,43,45,47,49… レンズ
61,63,65… 遮光部材
8… ホルダー
9… 撮像素子
【手続補正書】
【提出日】2023-08-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
上記の遮光フィルムは、以下の態様を含みうる。
・第一遮光層が形成された面の最表面と第二遮光層が形成された面の最表面の、前記(A)の差が0.5%以下、であってよい。
・第一遮光層が形成された面の最表面は、2.4%以下の前記(B)を有してもよい。
・第二遮光層が形成された面の最表面は、2.8%以上の前記(B)を有してもよい。
・第一遮光層が形成された面の最表面は、18以下の前記(C)を有してもよい。
・第二遮光層が形成された面の最表面は、17以上25以下の前記(C)を有してもよい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
-(B)波長550nmの光に対する反射率-
(B)は、JIS Z8722に準拠し、分光測色計(CM-5:コニカミノルタ社)を用い波長550nmの光に対する、遮光層21,31のそれぞれの層最表面の反射率を測定して得られた値とする。光の乱反射によるフレア・ゴースト現象をさらに効果的に防止する観点から、遮光層21と遮光層31の層最表面は、それぞれで、4.4%以下の(B)を有することが好ましく、より好ましくは4.2%以下、さらに好ましくは4.0%以下、である。不要光によるフレア・ゴーストの発生をさらに効果的に抑制し、かつ目視での表裏の判別をよりし易くする観点から、遮光層21の層最表面は、上限として2.4%以下の(B)を有することが好ましく、より好ましくは2.2%以下であり、さらに好ましくは2%以下、である。下限としては特に限定されないが、例えば、0.8%以上の(B)を有することが好ましく、より好ましくは1.0%以上であり、さらに好ましくは1.1%以上である。一方、目視での表裏の判別をよりし易くする観点から、遮光層31の層最表面は、2.8%以上の(B)を有することが好ましく、より好ましくは3.0%以上であり、さらに好ましくは3.1%以上、である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
-(C)SCE方式によるCIELAB表色系でのL値-
(C)は、黒色度を表す指標であり、層最表面の、SCE方式による、CIE 1976 L*a*b*(CIELAB) 表色系での明度L*値のことである。SCE方式とは、正反射光除去方式のことであり、正反射光を除去して色を測定する方法を意味する。SCE方式の定義は、JIS Z8722:2009に規定されている。SCE方式では、正反射光を除去して測定するため、実際の人の目で見た色に近い色となる。
CIEは、Commission Internationale de l‘Eclairageの略称であり、国際照明委員会を意味する。CIELAB表色系は、知覚と装置の違いによる色差を測定するために、1976年に勧告され、JIS Z8781:2013に規定されている均等色空間である。CIELABの3つの座標は、L*値、a*値、b*値で示される。L*値は明度を示し、0~100で示される。L*値が0の場合は黒色を意味し、L*値が100の場合は白の拡散色を意味する。a*値は赤と緑の間の色を示す。a*値がマイナスであれば、緑寄りの色を意味し、プラスであれば赤寄りの色を意味する。b*値は黄色と青色の間の色を意味する。b*がマイナスであれば青寄りの色を意味し、プラスであれば、黄色寄りの色を意味する。
この(C)は、JIS Z8781-4:2013に準拠し、分光測色計(CM-5:コニカミノルタ社)を用い遮光層21,31のそれぞれの層最表面の、SCE方式による、CIE 1976 L*a*b*(CIELAB)表色系での明度L*値を測定して得られた値とする。
不要光によるフレア・ゴーストの発生を抑制する、黒さを際立たせデザイン性を向上させる観点から、遮光層21と遮光層31の層最表面は、それぞれで、25以下の(C)を有することが好ましく、より好ましくは23以下、である。不要光によるフレア・ゴーストの発生を抑制する、黒さを際立たせデザイン性をより向上させる点から、遮光層21の層最表面は、18以下の(C)を有することが好ましく、より好ましくは17以下であり、さらに好ましくは16以下であり、さらに好ましくは15以下であり、さらに好ましくは14以下であり、最も好ましくは13以下である。一方、不要光によるフレア・ゴーストの発生を抑制し、かつ目視での表裏の判別をよりし易くする観点から、遮光層31の層最表面は、17以上の(C)を有することが好ましく、より好ましくは18以上であり、さらに好ましくは19以上、である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
-(D1)及び(D2)光学濃度-
(D1)及び(D2)は、光学濃度計(X-rite 361T(オルソフィルタ):日本平版機材社)を用い、遮光層21,31のそれぞれの層最表面側に垂直透過光束を照射し、遮光層21,31がない状態との比をlog(対数)で表して算出した値とする。目視での表裏の判別をし易くする観点から、遮光層21の層最表面は、2.0以上の(D1)を有し、遮光層31の層最表面は、1.5以下の(D2)を有する。不要光によるフレア・ゴーストの発生を抑制し、かつ目視での表裏の判別をし易くするとともに、遮光層の高い遮光性と良好な基材密着性とを実現させる観点から、遮光層21の層最表面は、好ましくは2.0以上2.4以下の(D1)を有するとよい。一方、不要光によるフレア・ゴーストの発生を抑制し、かつ目視での表裏の判別をし易くするとともに、良好な基材密着性を実現させる観点から、遮光層31の層最表面は、好ましくは1.4以下の(D2)を有するとよい。また、不要光によるフレア・ゴーストの発生を抑制し、かつ目視での表裏の判別をし易くするとともに、遮光層の高い遮光性を実現させる観点から、遮光層31の層最表面は、好ましくは1.0以上の(D2)を有するとよい。
また、遮光層21と遮光層31を積層させた場合、その積層体全体の光学濃度は、3.0以上5.0以下が好ましく、より好ましくは3.5以上4.0以下、である。このとき、例えば(D1)が2.0以上の遮光層21と(D2)が1.0以上1.5以下の遮光層31とを用いて合計で光学濃度が3.0以上5.0以下の積層体を構成し、積層構造体の表裏面で異なる光学濃度にすると、積層構造体の表裏の判別がより明確になる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
-粒子及び着色・導電剤-
遮光層21,31には、粒子及び着色・導電剤を含有させることができる。例えば、粒子及び着色・導電剤として、粒径及び粒度分布の異なる2以上の粒子群を用いることにより、遮光層21,31のそれぞれの層最表面の上記所定の光学特性を本発明の規定範囲に好適に制御することができる。
例えば、大きさの異なる2の粒子群を用いる場合、大きい粒子群の粒径は、小さい粒子群の粒径の10倍~40倍であることが好ましい。なお、3以上の粒子群を用いる場合には、最も大きい粒子群の粒径と最も小さい粒子群の粒径とが上記の関係になるよう調整すればよい。
以下では、大きい粒子群を大粒子1、小さい粒子群を小粒子2として説明する。
一形態に係る遮光層21,31は、粒子群として、平均粒径が2μm~6μmの大粒子1と平均粒径が0.06μm~0.4μmの小粒子2を含むことが好ましい。大粒子1の平均粒径は、3μm~5μmであることがより好ましく、3μm~4μmであることがさらに好ましい。小粒子2の平均粒径は、0.06μm~0.4μmであることが好ましく、0.1μm~0.3μmであることがより好ましい。
このような粒径の大粒子1と小粒子2を組み合わせることにより、凹部の大粒子1の間に小粒子2が埋め込まれ、遮光層21,31のそれぞれの層最表面の上記所定の光学特性を本発明の規定範囲により好適に制御することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
より優れた特性を得るためには、大粒子1は無機粒子を用いることが好ましい。大粒子1として無機系粒子を用いることにより、より低光沢で高光学濃度の遮光フィルム100を得ることができる。大粒子1として用いる無機系粒子としては、シリカが好ましい。大粒子1の形状は特に限定されないが、本発明の規定範囲に遮光層21,31のそれぞれの層最表面の上記所定の光学特性を制御するためには、粒度分布がシャープな粒子群を用いることが好ましい。
また、(A)をより低減するためには、不定形の粒子群を用いることが好ましい。これらの中でも、特に多孔質の不定形シリカ粒子を用いることが好ましい。このような粒子群を用いることにより、大粒子1の表面及び内部で光が屈折を繰り返すことによって、さらに(A)を低減することができる。
光の反射を抑制するために、有機系又は無機系着色剤により大粒子1を黒色に着色することもできる。このように着色した材料としては複合シリカ、導電性シリカ、黒色シリカ等が挙げられる。
複合シリカとしては、例えば、カーボンブラックとシリカをナノレベルで合成し複合化したものが挙げられる。導電性シリカとしては、例えば、シリカ粒子にカーボンブラック等の導電性粒子をコーティングしたものが挙げられる。黒色シリカとしては、例えば、珪石の中に黒鉛を含有している天然鉱石が挙げられる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
一方、小粒子2の材質も特に限定されず、樹脂系粒子及び無機系粒子のいずれを用いることもできる。樹脂系粒子としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン/メラミン/ホルマリン縮合物、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。一方、無機系粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、炭素等が挙げられる。これらは単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
小粒子2としては、例えば、着色・導電剤として添加されるカーボンブラック等を用いることもできる。小粒子2として、カーボンブラックを用いることにより、遮光層21,31が着色するため、反射防止効果が向上し、かつ良好な帯電防止効果が得られる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
遮光層21,31の厚みは、特に限定されないが、平均膜厚が、2μm以上20μm以下であることが好ましい。また、遮光層21,31の平均膜厚の上限は、15μmであることがより好ましく、10μmであることがさらに好ましい。本発明では、遮光層の厚みを5μm以下としても低光沢性、高光学濃度、低反射率でかつ黒色度が高い遮光フィルム100を得ることができる。なお、遮光層21,31の平均膜厚は、基材フィルム11表面から遮光層21,31の大粒子1及び小粒子2により突出している部分を含む高さのことである。遮光層21,31の上記平均膜厚は、JIS K7130に基づいて測定することができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
-(C)の差、及び(D1)と(D2)の差、調整方法-
本発明の一形態に係る遮光フィルム100においては、それぞれの層最表面が、2%以下の(A)、4.5%以下の(B)、及び26以下の(C)を有する遮光層21と遮光層31において、遮光層21の層最表面と遮光層31の層最表面の、(C)の差が4以上、遮光層21の層最表面の(D1)が2.0以上、遮光層31の層最表面の(D2)が1.5以下、(D1)と(D2)の差が0.5以上1.5以下である構成を採用したことに特徴がある。このように特定の光学特性をそれぞれの層最表面に備える遮光層21,31において、遮光層21と遮光層31の各層最表面の、(C)と光学濃度を異ならしめることで、そのマット感や外観の黒々しさの差に基づいて、非接触すなわち目視で、遮光フィルム100の表裏の判別が可能となる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
遮光層21と遮光層31の各層最表面の、(C)の差は、目視での表裏の判別をし易くする観点から、好ましくは4.5以上、より好ましくは5以上、である。このような(C)の差を設けるには、例えば、上述したように、遮光層21の層最表面の(C)を18以下とし、遮光層31の層最表面の(C)を17以上25以下とすればよい。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
遮光層21,31は、十分な帯電防止性能を具備させる観点から、1.0×108Ω未満の表面抵抗率を有することが好ましく、より好ましくは1.0×105Ω未満、さらに好ましくは5.0×104Ω未満である。なお、本明細書において、表面抵抗率は、JIS K6911:1995に準拠して測定される値とする。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
一形態に係る遮光フィルム100においては、それぞれの層最表面が、2%以下の(A)、4.5%以下の(B)、及び26以下の(C)を有する遮光膜であり、遮光層21の層最表面と遮光層31の層最表面の、(C)の差が4以上、遮光層21の層最表面の(D1)が2.0以上、遮光層31の層最表面の(D2)が1.5以下、(D1)と(D2)の差が0.5以上1.5以下、となるように設定された、第一遮光層21及び第二遮光層31を採用している。そのため、これをレンズユニットやカメラモジュール等の遮光部材として用いることで、不要光を十分に除去することができ、フレア・ゴーストの発生を抑制でき、撮像画像の画質を向上させることができる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
<カメラモジュール、レンズユニット、遮光部材>
図2に示すように、本発明の一形態に係るカメラモジュール1は、レンズユニット2を有する。レンズユニット2は、光軸方向Xに積み重ねられた5枚のレンズ41,43,45,47,49からなるレンズ群を有する。レンズ群を構成するレンズ枚数は、5枚に限定されない。本例では、レンズ群を構成する5枚のレンズ41,43,45,47,49のうち、三対のレンズ(レンズ41及び43、レンズ43及び45、並びに、レンズ47及び49)間には、遮光部材61,63,65が介在してある。レンズ群と遮光部材61,63,65はともに、樹脂や金属等で構成される、多段円筒状のホルダー(鏡筒)8内に載置される。本例のホルダー8は、内周部に、3つの段差部81,83,85が設けられており、これらの段差部81,83,85を利用して、レンズ群と遮光部材61,63,65が、同一光軸上に配置して積み重ねられた状態で、ホルダー8内の所定位置に収納配置されている。レンズ41,43,45,47,49は、種々のレンズ(凸レンズや凹レンズ等)であってよい。その曲面は、球面、非球面を問わず、またその材質も、樹脂(例えば、環状オレフィン系樹脂(COCやCOP)、ポリカーボネート系樹脂、液晶ポリマ
ー等)、ガラスを問わない。
カメラモジュール1は、レンズユニット2とともに、撮像素子9を有する。撮像素子9は、レンズユニット2の光軸上に配置され、レンズユニット2を通して被写体を撮像する。撮像素子9は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等で構成される。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
一形態に係る遮光部材61,63,65においても、それぞれの層最表面が、2%以下の(A)、4.5%以下の(B)、及び26以下の(C)を有する遮光膜であり、遮光層21の層最表面と遮光層31の層最表面の、(C)の差が4以上、遮光層21の層最表面の(D1)が2.0以上、遮光層31の層最表面の(D2)が1.5以下、(D1)と(D2)の差が0.5以上1.5以下、となるように設定された、第一遮光層21及び第二遮光層31を採用している。そのため、これをレンズユニットやカメラモジュール等の遮光部材として用いることで、不要光を十分に除去することができ、フレア・ゴーストの発生を抑制でき、撮像画像の画質を向上させることができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学機器用の遮光部材を得るための遮光フィルムであって、
第一遮光層、及び第二遮光層を少なくとも備え、
前記第一遮光層及び前記第二遮光層は、各層が形成された面の最表面の、(A)、(B)、及び(C)が、それぞれ、2%以下、4.5%以下、及び26以下であり、
前記第一遮光層が形成された面の最表面と前記第二遮光層が形成された面の最表面の、前記(C)の差が4以上であり、
前記第一遮光層が形成された面の最表面の、(D1)が2.0以上、前記第二遮光層が形成された面の最表面の、(D2)が1.5以下、前記(D1)と前記(D2)の差が0.5以上1.5以下であり、
前記第一遮光層が形成された面の最表面は、前記第二遮光層が形成された面の最表面とは異なる(B)を有し、
第一遮光層と第二遮光層は、ともに、粒径が異なる複数の粒子群を含んで構成してあり、前記粒子群は、平均粒径2μm~6μmの粒子群と平均粒径0.06μm~0.4μmの粒子群を含む、遮光フィルム。
(A)入射角度60°の光に対する光沢度
(B)波長550nmの光に対する反射率
(C)SCE方式によるCIELAB表色系でのL値
(D1)光学濃度
(D2)光学濃度
【請求項2】
前記粒子群のうち、最大の粒径を有する粒子群は、無機系粒子からなる無機系粒子群である、請求項1に記載の遮光フィルム。
【請求項3】
前記各遮光層での平均粒径2μm~6μmの粒子群の占める体積比は、平均粒径0.06μm~0.4μmの粒子群の占める体積比:1に対して、1.5~3.5である、請求項1又は2に記載の遮光フィルム。
【請求項4】
平均粒径2μm~6μmの粒子群は着色剤により黒色に着色した複合シリカを含み、平均粒径0.06μm~0.4μmの粒子群はカーボンブラックを含む、請求項1又は2に記載の遮光フィルム。
【請求項5】
前記第一遮光層が形成された面の最表面と前記第二遮光層が形成された面の最表面の、前記(A)の差が0.5%以下である、請求項1又は2に記載の遮光フィルム。
【請求項6】
光軸方向に積み重ねられた複数のレンズからなるレンズ群をホルダー内に備えたレンズユニットに用いられる遮光部材であって、請求項1又は2に記載の遮光フィルムから形成された遮光部材。
【請求項7】
光軸方向に積み重ねられた複数のレンズからなるレンズ群をホルダー内に備えたレンズユニットにおいて、少なくとも一対のレンズ間に、請求項6に記載の遮光部材が介在してあるレンズユニット。
【請求項8】
請求項7に記載のレンズユニットと、前記レンズユニットを通して被写体を撮像する撮像素子と、を有するカメラモジュール。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
上記の遮光フィルムは、以下の態様を含みうる。
・第一遮光層が形成された面の最表面と第二遮光層が形成された面の最表面の、前記(A)の差が0.5%以下、であってよい。
・第一遮光層が形成された面の最表面は、2.4%以下の前記(B)を有してもよい。
・第二遮光層が形成された面の最表面は、2.8%以上の前記(B)を有してもよい。
・第一遮光層が形成された面の最表面は、18以下の前記(C)を有してもよい。
・第二遮光層が形成された面の最表面は、17以上25以下の前記(C)を有してもよい。
・第一遮光層が形成された面の最表面は、第二遮光層が形成された面の最表面とは異なる前記(B)を有してもよい。
上記の遮光フィルムを構成する第一遮光層及び第二遮光層は、以下の態様を含みうる。
・構成成分として、樹脂成分、粒子及び着色・導電剤を含んでよい。
・樹脂成分として、熱硬化性樹脂を含んでよく、この場合、さらに硬化剤を添加してもよい。
・粒子及び着色・導電剤として、粒径及び粒度分布の異なる2以上の粒子群を含んでよい。この複数の粒子群は、平均粒径2μm~6μmの粒子群と平均粒径0.06μm~0.4μmの粒子群を含んでよい。
・前記粒子群のうち、最大の粒径を有する粒子群は、無機系粒子からなる無機系粒子群であってよい。
・各遮光層での平均粒径2μm~6μmの粒子群の占める体積比は、平均粒径0.06μm~0.4μmの粒子群の占める体積比:1に対して、1.5~3.5であってよい。
・平均粒径2μm~6μmの粒子群は着色剤により黒色に着色した複合シリカを含んでよく、平均粒径0.06μm~0.4μmの粒子群はカーボンブラックを含んでよい。