IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-組立治具、及び組立方法 図1
  • 特開-組立治具、及び組立方法 図2
  • 特開-組立治具、及び組立方法 図3
  • 特開-組立治具、及び組立方法 図4
  • 特開-組立治具、及び組立方法 図5
  • 特開-組立治具、及び組立方法 図6
  • 特開-組立治具、及び組立方法 図7
  • 特開-組立治具、及び組立方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064366
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】組立治具、及び組立方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
E04B1/348 U
E04B1/348 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172909
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 勇
(72)【発明者】
【氏名】阿部 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】利根川 大
(72)【発明者】
【氏名】森崎 雄貴
(57)【要約】
【課題】さらに容易かつ短時間で構造物を組み立てることが可能な組立治具、及び組立方法を提供する。
【解決手段】組立治具は、4つの角部に配置された上側柱状部を有する上側構造物、及び4つの下側柱状部を有する下側構造物を接続するための組立治具であって、先端から上下方向に延びるとともに、上側柱状部が下側柱状部に上方から突き合わされる際に、先端同士が直線状に揃うように上側柱状部の位置をガイドするガイド部と、ガイド部に嵌合する嵌合部と、を備え、ガイド部の上下方向における寸法は、4つの角部における互いに隣接する一対のガイド部同士の間で異なっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びるとともに4つの角部に配置された上側柱状部を有する上側構造物、及び前記上側柱状部に上下方向から接続される4つの下側柱状部を有する下側構造物を接続するための組立治具であって、
前記上側柱状部、及び前記下側柱状部のいずれか一方の先端から上下方向に延びるとともに、前記上側柱状部が前記下側柱状部に上方から突き合わされる際に、先端同士が上下方向に直線状に揃うように前記上側柱状部の位置をガイドするガイド部と、
前記上側柱状部、及び前記下側柱状部のいずれか他方の先端に設けられ、前記ガイド部に嵌合する嵌合部と、
を備え、
前記ガイド部の上下方向における寸法は、前記4つの角部における互いに隣接する一対の前記ガイド部同士の間で異なっている組立治具。
【請求項2】
複数の前記ガイド部の少なくとも一部は、前記上側柱状部、及び前記下側柱状部のいずれか一方から他方に向かうに従って次第に先細りとなる尖頭部材である請求項1に記載の組立治具。
【請求項3】
複数の前記ガイド部の少なくとも一部は、筒状をなすとともに、前記上側柱状部、及び前記下側柱状部のいずれか一方から他方に向かうに従って次第に拡径する拡径管部材である請求項1又は2に記載の組立治具。
【請求項4】
前記拡径管部材は、周方向に複数に分割可能である請求項3に記載の組立治具。
【請求項5】
前記ガイド部の上下方向における寸法の差は、前記4つの角部における対角線上に位置する前記ガイド部同士の間で最も大きくなっている請求項1又は2に記載の組立治具。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の組立治具を用いて前記上側構造物と前記下側構造物とを組み立てる組立方法であって、
前記下側構造物を準備するステップと、
前記上側柱状部、及び前記下側柱状部の少なくとも一方に前記ガイド部を取り付けるステップと、
前記上側構造物を飛行体で吊架して前記下側構造物の位置まで移送するステップと、
前記上側構造物を下方に移動させて、前記ガイド部によってガイドしながら前記上側柱状部と前記下側柱状部とを接続するステップと、
前記飛行体を前記上側構造物から退避させるステップと、
を含む組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組立治具、及び組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設作業を行う際に、建築物の外壁や柱に沿って足場を組むことが一般的に行われている。足場は、複数のパイプを互いに組み合わせて構築される。また、近年では、予めブロック状に一体に組み立てた足場構造物を、上下方向に順次接続して、高層の足場を構築する例も増えている。
【0003】
ここで、上記の足場構造物同士を上下方向に接続する場合、下側の構造物の柱と上側の構造物の柱とを正確に位置決めして互いに突き合わせる必要が生じる。例えば4つずつの柱同士を接続する場合でも、位置決め作業に相応の精度が要求される。そこで、下記特許文献1に示されるように、下側の柱を囲う漏斗状のガイド部材を取り付ける方法が提唱されている。これにより、上側の柱の先端が当該ガイド部材の内面によってガイドされて、下側の柱に対して当該上側の柱が直線状に揃うように突き合わせることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2587033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のガイド部材を用いた場合であっても、少なくとも4つの柱を上下方向から同時にガイド部材に挿入するという作業には依然として時間と精密さが要求されるという課題がある。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、さらに容易かつ短時間で構造物を組み立てることが可能な組立治具、及び組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る組立治具は、上下方向に延びるとともに4つの角部に配置された上側柱状部を有する上側構造物、及び前記上側柱状部に上下方向から接続される4つの下側柱状部を有する下側構造物を接続するための組立治具であって、前記上側柱状部、及び前記下側柱状部のいずれか一方の先端から上下方向に延びるとともに、前記上側柱状部が前記下側柱状部に上方から突き合わされる際に、先端同士が上下方向に直線状に揃うように前記上側柱状部の位置をガイドするガイド部と、前記上側柱状部、及び前記下側柱状部のいずれか他方の先端に設けられ、前記ガイド部に嵌合する嵌合部と、を備え、前記ガイド部の上下方向における寸法は、前記4つの角部における互いに隣接する一対の前記ガイド部同士の間で異なっている。
【0008】
本開示に係る組立方法は、上記の組立治具を用いて前記上側構造物と前記下側構造物とを組み立てる組立方法であって、前記下側構造物を準備するステップと、前記上側柱状部、及び前記下側柱状部の少なくとも一方に前記ガイド部を取り付けるステップと、前記上側構造物を飛行体で吊架して前記下側構造物の位置まで移送するステップと、前記上側構造物を下方に移動させて、前記ガイド部によってガイドしながら前記上側柱状部と前記下側柱状部とを接続するステップと、前記飛行体を前記上側構造物から退避させるステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、さらに容易かつ短時間で構造物を組み立てることが可能な組立治具、及び組立方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第一実施形態に係る構造物としての足場の構成を示す模式図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る組立治具の構成を示す図である。
図3】本開示の第一実施形態に係るガイド部の寸法関係を示す斜視図である。
図4】本開示の第一実施形態に係る組立方法の各ステップを示すフローチャートである。
図5】本開示の第二実施形態に係るガイド部の構成を示す断面図である。
図6】本開示の第二実施形態に係るガイド部の構成を示す分解図である。
図7】本開示の各実施形態に共通する組立治具の第一変形例を示す斜視図である。
図8】本開示の各実施形態に共通する組立治具の第二変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
(構造物の構成)
以下、本開示の第一実施形態に係る組立治具1、及び組立方法について、図1から図4を参照して説明する。本実施形態に係る組立治具1、及び組立方法は、建設現場で足場として用いられる構造物2(以下、単に「構造物2」と呼ぶ。)を組み立てるために用いられる。
【0012】
図1に示すように、この構造物2は、上側構造物11と、下側構造物12と、ジョイントピン13と、組立治具1と、を備えている。上側構造物11、及び下側構造物12は、鉄パイプを格子状、又は筋交い状に組み合わせることでそれぞれ直方体のブロック状に形成されている。
【0013】
上側構造物11は、ブロック状の上側構造物本体31と、この上側構造物本体31の4つの角部から上下方向における下方に向かって延びる4つの上側柱状部32と、を有する。下側構造物12は、ブロック状の下側構造物本体41と、この下側構造物本体41の4つの角部から上方に向かって延びる4つの下側柱状部42と、を有する。
【0014】
高層の建築物に対応するために、下側構造物12の上に上側構造物11を順次接続していく場合がある。本実施形態に係る組立治具1とジョイントピン13は、このような場合に、上側柱状部32と下側柱状部42とを接続するために用いられる。
【0015】
(組立治具の構成)
図2に示すように、組立治具1は、ガイド部5としての尖頭部材51と、嵌合部6と、を有する。尖頭部材51は、下側柱状部42の上端に、ジョイントピン13を介して取り付けられている。ジョイントピン13は、下側柱状部42よりも小径の柱状をなしており、パイプ状の上側柱状部32に挿入されることで、これら下側柱状部42と上側柱状部32とを接続することが可能である。なお、ジョイントピン13には、不図示のロック機構が設けられており、これら柱状部が接続固定された状態と、分離された状態とを切り替えることが可能とされている。
【0016】
尖頭部材51は、ジョイントピン13の先端から上方に向かって突出している。尖頭部材51の断面形状は一例として円形である。尖頭部材51は、上方に向かうに従って次第に先細りとなる形状を有している。言い換えれば、尖頭部材51の外径は、上方に向かうに従って次第に小さくなっている。なお、このように先細り形状とされている限りにおいて、尖頭部材51の断面形状が矩形や多角形をなしていてもよい。
【0017】
図3に示すように、4つの角部に設けられた尖頭部材51の上下方向における寸法は、互いに隣接する一対の尖頭部材51同士の間で異なっている。より具体的には、1つの尖頭部材51の長さを1とした場合、当該尖頭部材51の対角線上に位置する尖頭部材51の長さは2である。また、その残余の2つの尖頭部材51の長さは1.5である。さらに具体的には、最も長い尖頭部材51と最も短い尖頭部材51の長さの差は、3cm~50cmであり、より望ましくは10cm~30cmである。最も望ましくは、長さの差は15cm~20cmとされる。つまり、これら尖頭部材51の長さの差は、製造誤差や組付け誤差ではなく、製造時に恣意的に設定されるものである。
【0018】
図2に示すように、上部柱状部の下端は、嵌合部6を形成している。嵌合部6は、パイプ状の上部柱状部の先端を含む一部の部分である。この嵌合部6の内側の空間に尖頭部材51が下方から挿入される。詳細には、まず4つの尖頭部材51のうち最も長い尖頭部材51に対して、対応する角部の嵌合部6を挿通する。これにより、4つの角部のうちの1つの位置決めがなされたことになる。なお、この時、尖頭部材51は嵌合部6に完全には挿入されない。
【0019】
次いで、対角線上に位置する2番目に長い尖頭部材51を対応する角部の嵌合部6に挿入する。これにより、2つの角部の位置決めがなされたことになる。続いて、残余の2つの尖頭部材51をそれぞれに対応する嵌合部6に挿入する。この時、4つの尖頭部材51を全て嵌合部6に完全に挿入する。これにより、4つの角部における上側柱状部32と下側柱状部42の接続作業が完了する。
【0020】
(組立方法)
次に、上述した組立治具1を用いて構造物2を組み立てる方法(組立方法)の詳細について説明する。図4に示すように、この組立方法は、下側構造物12を準備するステップS1と、ガイド部5としての尖頭部材51を下側柱状部42に取り付けるステップS2と、予め準備された上側構造物11を下側構造物12の上方に飛行体を用いて移送するステップS3と、下側柱状部42と上側柱状部32とを接続するステップS4と、上側構造物11から飛行体を退避させるステップS5と、を含む。
【0021】
ステップS1では、上述したように複数のパイプを組み合わせて、所定の寸法体格を有する下側構造物12を組み立てる。この時、下側柱状部42も同時に形成される。ステップS2では、下側柱状部42のそれぞれに上記の尖頭部材51を取り付ける。この時、4つの角部では、互いに隣接する一対の角部同士の間で、長さの異なる尖頭部材51が取り付けられる。望ましくは、上述したように、対角線上に位置する一対の角部同士の間で尖頭部材51の長さの差を最も大きくする。
【0022】
続いてステップS3では、ドローン等の無人の飛行体を用いて、上側構造物11を吊架した状態で下側構造物12の上方に移送する。上側構造物11が下側構造物12の上方に位置した状態で飛行体をホバリングさせる。その後、上述した手順で、4つの尖頭部材51と嵌合部6とを順次位置決めして接続する(ステップS4)。最後に、上側構造物11から飛行体を切り離して所定の位置まで退避させる(ステップS5)。以上により、構造物2の組立方法に係る全てのステップが完了する。
【0023】
(作用効果)
ここで、従来は、4つの上側柱状部32、及び下側柱状部42を接続するに当たって、4つ全てを同時に位置決めして接続する必要があった。このため、作業に精度と時間を要し、工期の長期化やコストの増大につながる虞があった。このような課題を解決するために、本実施形態では、上述の組立治具1、及びこれを用いた組立方法を採用している。
【0024】
上記構成によれば、4つの角部における互いに隣接する一対のガイド部5(尖頭部材51)の寸法が異なっている。これにより、最初にいずれか1つのガイド部5と嵌合部6とを位置決めした後、残余のガイド部5、及び嵌合部6の位置を調整することができる。つまり、4つの角部で、位置決めを行うための時間に差を設けることが可能となる。このため、4つの角部で同時に位置決めを行う場合に比べて、1か所の角部で要求される位置決め作業の精度が緩和される。したがって、これら残余のガイド部5と嵌合部6とをさらに容易に接続することができる。その結果、構造物2の組立に要するコストや時間を大きく削減することが可能となる。
【0025】
さらに、上記構成によれば、ガイド部5が先細りとなる尖頭部材51であることから、当該尖頭部材51の先端の一部のみに嵌合部6を挿通させた状態では、当該嵌合部6と尖頭部材51との間に径方向の遊び(隙間)が形成される。これにより、1つのガイド部5と嵌合部6との位置決めがなされた状態で、上記の遊びを利用して残余のガイド部5、及び嵌合部6の位置をさらに精緻に調整することができる。したがって、例えば上側柱状部32と下側柱状部42の組立精度にばらつきがある場合であっても、これら誤差を吸収して、効率よく構造物2の組み立てを行うことが可能となる。
【0026】
また、上記構成によれば、1つのガイド部5と嵌合部6の位置決めをした後、次に当該1つのガイド部5の対角線上に位置する他のガイド部5と嵌合部6とが位置決めされる。このように、最も遠く離間したガイド部5と嵌合部6の対を初めに位置決めすることで、残余のガイド部5、及び嵌合部6の位置がずれる余地を小さくすることができる。このため、4つのガイド部5、及び嵌合部6の位置決めをさらに容易かつ短時間で行うことが可能となる。
【0027】
さらに、上記方法によれば、組立治具1が用いられることから、飛行体(ドローン)のように空中での姿勢や位置の安定性維持が比較的難しい装置を用いた場合であっても、上側柱状部32と下側柱状部42とを容易かつ短時間で位置決めして接続することが可能となる。他方で、クレーン等の楊重機器を用いる場合には、このような姿勢や位置の制御が相対的に容易である一方で、作業コストの増大や占有スペースの大型化が問題となってしまう。これに対して、飛行体を用いる場合には、このような課題を生じることなく、低コストで効率的に組立作業を進めることが可能となる。
【0028】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成・方法に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第一実施形態では、4つの角部を有する上側構造物11、及び下側構造物12を接続する例について説明した。しかしながら、構造物2の仕様に応じて、複数の上側構造物11に、複数の下側構造物12を接続することで構造物2を構成してもよい。また、上記第一実施形態では、下側柱状部42に尖頭部材51が設けられている例について説明した。しかしながら、上側柱状部32に尖頭部材51を取り付ける構成を採ることも可能である。つまり、尖頭部材51は、上側柱状部32、及び下側柱状部42のいずれか一方に設けられていればよい。
【0029】
<第二実施形態>
続いて、本開示の第二実施形態について、図5図6を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図5に示すように、本実施形態では、ガイド部5として下側柱状部42に拡径管部材52が設けられている。
【0030】
拡径管部材52は、基部53と、拡径部54と、を有する。基部53は、下側柱状部42の先端(ジョイントピン13の中央部)から下方に向かって延びている。基部53は、下側柱状部42を外周側から囲う直管状をなしている。つまり、基部53の内径寸法は、下側柱状部42の外径寸法よりもわずかに大きく設定されている。拡径部54は、基部53と一体に設けられた漏斗状をなしている。具体的には、拡径部54の内周面、及び外周面は、基部53の上端から上方に向かうに従って次第に拡径している。したがって、拡径部54の内側には、円錐状の空間が形成される。ジョイントピン13の先端は、この空間内で上方に突出している。
【0031】
図6に示すように、拡径管部材52は、周方向に複数(一例として2つ)に分割できるように構成されている。つまり、1つの拡径管部材52は、2つの分割体55を有する。それぞれの分割体55は、上記の基部53と拡径部54の半分を形成する分割体本体56と、この分割体本体56に一体に設けられた複数の接続部57と、を有する。接続部57は、分割体本体56の端縁から外側に向かって突出している。図6の例では、上下方向に間隔をあけて2つずつの接続部57が各端縁に設けられている。一対の分割体55同士を突き合せた状態で、接続部57にボルトを挿通してボルト締めすることで拡径管部材52が構成される。
【0032】
なお、本実施形態においても、上記第一実施形態と同様に、4つの角部同士の間で、ガイド部5としての拡径管部材52の長さが互いに異なっている。より具体的には、上記の基部53の上下方向における寸法を違えることによって、拡径管部材52の長さに差を持たせる例が考えられる。他方で、拡径部54の上下方向における寸法を違えることで拡径管部材52の長さに差を持たせてもよい。
【0033】
(作用効果)
【0034】
上記構成によれば、上側柱状部32、及び下側柱状部42のいずれか一方の先端を拡径管部材52に挿入する際に、挿入が進むに従って先端が拡径管部材52の内面に沿ってガイドされる。つまり、図5の例では、下方に向かうに従って、下側柱状部42と上側柱状部32の先端同士が直線状に揃うように位置決めされる。その後、先端が基部53の下端まで完全に挿入されると、下側柱状部42と上側柱状部32の先端同士が直線状に揃いつつ、ジョイントピン13を介して互いに接続された状態にすることができる。これにより、上記第一実施形態と同様に、上側構造物11と下側構造物12の接続作業を容易かつ短時間で行うことが可能となる。特に、当初の位置決めに裕度を持たせることができるため、飛行体を用いて上側構造物11を吊架している場合であっても、過度な位置や姿勢の正確さが要求されることがない。これにより、さらに効率的に組立作業を進めることができる。
【0035】
さらに、上記構成によれば、拡径管部材52が、複数の分割体55によって構成されている。このため、上側柱状部32と下側柱状部42の接続が完了した後に、拡径管部材52を周方向に分割することで、事後的に当該拡径管部材52を取り外すことができる。これにより、拡径管部材52が残置されることによる作業スペースの縮小が回避され、作業の安全性を向上できる。また、取り外された拡径管部材52を他の箇所や他の作業現場で再利用することが可能となる。これにより、作業に要するコストを削減することができる。
【0036】
以上、本開示の各実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば各実施形態に共通する第一変形例として、図7に示す構成を採用することも可能である。同図の例では、ガイド部5として、2つの角部に尖頭部材51が用いられ、残余の2つの角部に拡径管部材52が用いられている。また、第二変形例として図8に示すように、上側柱状部32に尖頭部材51を設けつつ、下側柱状部42に拡径管部材52を設ける構成を採ることも可能である。この場合、下側柱状部42の先端を含む一部が嵌合部6を形成する。さらに、反対に、下側柱状部42に尖頭部材51を設けつつ、上側柱状部32に拡径管部材52を設ける構成を採ることも可能である。これらの構成によっても、上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
<付記>
各実施形態に記載の組立治具1、及び組立方法は、例えば以下のように把握される。
【0038】
(1)第1の態様に係る組立治具1は、上下方向に延びるとともに4つの角部に配置された上側柱状部32を有する上側構造物11、及び前記上側柱状部32に上下方向から接続される4つの下側柱状部42を有する下側構造物12を接続するための組立治具1であって、前記上側柱状部32、及び前記下側柱状部42のいずれか一方の先端から上下方向に延びるとともに、前記上側柱状部32が前記下側柱状部42に上方から突き合わされる際に、先端同士が上下方向に直線状に揃うように前記上側柱状部32の位置をガイドするガイド部5と、前記上側柱状部32、及び前記下側柱状部42のいずれか他方の先端に設けられ、前記ガイド部5に嵌合する嵌合部6と、を備え、前記ガイド部5の上下方向における寸法は、前記4つの角部における互いに隣接する一対の前記ガイド部5同士の間で異なっている。
【0039】
上記構成によれば、4つの角部における互いに隣接する一対のガイド部5の寸法が異なっている。これにより、いずれか1つのガイド部5に嵌合部6を接続した後、残余のガイド部5、及び嵌合部6の位置を調整することができる。したがって、これら残余のガイド部5と嵌合部6とを容易に接続することができる。
【0040】
(2)第2の態様に係る組立治具1は、(1)の組立治具1であって、複数の前記ガイド部5の少なくとも一部は、前記上側柱状部32、及び前記下側柱状部42のいずれか一方から他方に向かうに従って次第に先細りとなる尖頭部材51である。
【0041】
上記構成によれば、ガイド部5が先細りとなる尖頭部材51であることから、当該尖頭部材51の先端の一部のみに嵌合部6を挿通させた状態では、当該嵌合部6と尖頭部材51との間に遊び(隙間)が形成される。これにより、1つのガイド部5と嵌合部6との位置決めがなされた状態で、上記の遊びを利用して残余のガイド部5、及び嵌合部6の位置を調整することができる。
【0042】
(3)第3の態様に係る組立治具1は、(1)又は(2)の組立治具1であって、複数の前記ガイド部5の少なくとも一部は、筒状をなすとともに、前記上側柱状部32、及び前記下側柱状部42のいずれか一方から他方に向かうに従って次第に拡径する拡径管部材52である。
【0043】
上記構成によれば、上側柱状部32、及び下側柱状部42のいずれか一方の先端を拡径管部材52に挿入する際に、挿入が進むに従って先端が拡径管部材52の内面にガイドされる。完全に先端が挿入されると、下側柱状部42と上側柱状部32の先端同士が直線状に揃った状態にすることができる。
【0044】
(4)第4の態様に係る組立治具1は、(3)の組立治具1であって、前記拡径管部材52は、周方向に複数に分割可能である。
【0045】
上記構成によれば、上側柱状部32と下側柱状部42の接続が完了した後に、拡径管部材52を周方向に分割することで、事後的に当該拡径管部材52を取り外すことができる。これにより、作業現場の安全性を向上できるとともに、拡径管部材52を他の箇所や作業現場で再利用することが可能となる。
【0046】
(5)第5の態様に係る組立治具1は、(1)から(4)のいずれか一態様に係る組立治具1であって、前記ガイド部5の上下方向における寸法の差は、前記4つの角部における対角線上に位置する前記ガイド部5同士の間で最も大きくなっている。
【0047】
上記構成によれば、1つのガイド部5と嵌合部6の位置決めをした後、次に当該1つのガイド部5の対角線上に位置する他のガイド部5と嵌合部6とが位置決めされる。このように、最も遠く離間したガイド部5と嵌合部6の対を初めに位置決めすることで、残余のガイド部5、及び嵌合部6の位置決めをさらに容易に行うことが可能となる。
【0048】
(6)第6の態様に係る組立方法は、(1)から(5)のいずれか一態様に係る組立治具1を用いて前記上側構造物11と前記下側構造物12とを組み立てる組立方法であって、前記下側構造物12を準備するステップと、前記上側柱状部32、及び前記下側柱状部42の少なくとも一方に前記ガイド部5を取り付けるステップと、前記上側構造物11を飛行体で吊架して前記下側構造物12の位置まで移送するステップと、前記上側構造物11を下方に移動させて、前記ガイド部5によってガイドしながら前記上側柱状部32と前記下側柱状部42とを接続するステップと、前記飛行体を前記上側構造物11から退避させるステップと、を含む。
【0049】
上記方法によれば、組立治具1が用いられることから、飛行体(ドローン)のように姿勢や位置の安定性維持が比較的難しい装置を用いた場合であっても、上側柱状部32と下側柱状部42とを容易かつ短時間で位置決めして接続することが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1…組立治具
2…構造物
5…ガイド部
6…嵌合部
11…上側構造物
12…下側構造物
13…ジョイントピン
31…上側構造物本体
32…上側柱状部
41…下側構造物本体
42…下側柱状部
51…尖頭部材
52…拡径管部材
53…基部
54…拡径部
55…分割体
56…分割体本体
57…接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8