(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064371
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】長尺物の外観検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
G01N21/892 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172916
(22)【出願日】2022-10-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】591114641
【氏名又は名称】株式会社ヒューテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久森 康正
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA44
2G051AB02
2G051CA04
2G051CA06
2G051CB01
2G051CC11
2G051DA06
(57)【要約】
【課題】高性能な撮像装置を用いて、撮像性能を落とすことなく、それが設けられた装置の価格を抑えることができる長尺物の外観検査装置を提供する。
【解決手段】長尺物の外観検査装置10は、長尺物11の外周の画像を撮像する撮像部12を含んで構成されている。この撮像部12は、撮像装置20と、撮像装置20が長尺物11の外観を撮像するために、複数の反射鏡によって撮像装置20から長尺物11に到る一つの光路を構成するように組み合わされた反射鏡セットと、を有している。そして反射鏡セットの撮像装置20から長尺物11に到る光路の長さが、いずれの反射鏡セットにおいてもあらかじめ定められた範囲内である。この構成により、高価な撮像装置1台により、長尺物の外観の軸心回り360度すべてを検査することができるので、検査装置のコストを抑制することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心方向に動作させられている長尺物の外観検査装置であって、
前記長尺物の外周の画像を撮像する撮像部を含んで構成され、
前記撮像部は、
撮像装置と、
該撮像装置が前記長尺物の外観を撮像するために、複数の反射鏡によって前記撮像装置から前記長尺物に到る一つの光路を構成するように組み合わされた反射鏡セットと、を有し、
前記反射鏡セットは、複数設けられており、
前記反射鏡セットを構成する反射鏡は、前記長尺物の軸心に垂直な一平面内に配置され、
前記反射鏡セットの前記撮像装置から前記長尺物に到る光路の長さが、いずれの反射鏡セットにおいてもあらかじめ定められた範囲内である、
ことを特徴とする長尺物の外観検査装置。
【請求項2】
前記反射鏡セットの少なくとも1つは、
前記光路において前記長尺物に最も近い検査対象用反射鏡と、
前記光路において前記撮像装置に最も近い撮像装置用反射鏡と、
前記光路の長さを調整するための光路長調整用反射鏡と、を含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の長尺物の外観検査装置。
【請求項3】
前記長尺物の外観検査装置は、
前記撮像部からの画像を受信する制御部を有し、
該制御部は、前記反射鏡セットを用いた画像のみを用いて前記長尺物の外観検査を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の長尺物の外観検査装置。
【請求項4】
前記反射鏡は、表面で光が反射する構成である、
ことを特徴とする請求項1に記載の長尺物の外観検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺物の外観検査装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、長尺物の軸心に垂直な面における外観の全周を検査することができる長尺物の外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電線、鋼線などの長尺の外観を検査する装置として、特許文献1に長尺物の外観検査装置が開示されている。特許文献1の長尺物の外観検査装置は、長尺物をその軸心方向に動作させる移動機構と、複数の撮像装置とを備え、この複数の撮像装置により、長尺物の軸心に垂直な面における外観の全周を撮像して外観検査を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
長尺物の外観検査では、長尺物は例えば1分間に100m以上の速度で送られている。この場合、長尺物の外観を高精度に撮像しようとすると、高解像度かつサンプリング周期の短い高性能な撮像装置および制御装置を用いる必要がある。しかるに高性能な撮像装置および制御装置は高価であるため、複数の撮像装置を検査装置に設けると、検査装置自体が高価となるという問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、高性能な撮像装置を用いて、撮像性能を落とすことなく、それが設けられた装置の価格を抑えることができる長尺物の外観検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の長尺物の外観検査装置は、軸心方向に動作させられている長尺物の外観検査装置であって、前記長尺物の外周の画像を撮像する撮像部を含んで構成され、前記撮像部は、撮像装置と、該撮像装置が前記長尺物の外観を撮像するために、複数の反射鏡によって前記撮像装置から前記長尺物に到る一つの光路を構成するように組み合わされた反射鏡セットと、を有し、前記反射鏡セットは、複数設けられており、前記反射鏡セットを構成する反射鏡は、前記長尺物の軸心に垂直な一平面内に配置され、前記反射鏡セットの前記撮像装置から前記長尺物に到る光路の長さが、いずれの反射鏡セットにおいてもあらかじめ定められた範囲内であることを特徴とする。
第2発明の長尺物の外観検査装置は、第1発明において、前記反射鏡セットの少なくとも1つは、前記光路において前記長尺物に最も近い検査対象用反射鏡と、前記光路において前記撮像装置に最も近い撮像装置用反射鏡と、前記光路の長さを調整するための光路長調整用反射鏡と、を含んで構成されていることを特徴とする。
第3発明の長尺物の外観検査装置は、第1発明において、前記長尺物の外観検査装置は、前記撮像部からの画像を受信する制御部を有し、該制御部は、前記反射鏡セットを用いた画像のみを用いて前記長尺物の外観検査を行うことを特徴とする。
第4発明の長尺物の外観検査装置は、第1発明において、前記反射鏡は、表面で光が反射する構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、長尺物の外観を撮像するための反射鏡セットが複数設けられていることにより、撮像装置1台のみでも、長尺物の外観の軸心回り360度すべてを検査することができるので、検査装置のコストを抑制することができる。また、反射鏡が長尺物の軸心に垂直な一平面内に配置されていることにより、その軸心方向へ検査装置が大きくなることがなく、長尺物の外観検査装置の大きさを小さくすることができる。
第2発明によれば、反射鏡セットが、光路の長さを調整する光路長調整用反射鏡を含んでいることにより、反射鏡セットそれぞれの光路長を任意に設定することができ、被写界深度内に光路長を収めることができる。
第3発明によれば、制御部が、反射鏡セットを用いた画像のみを用いて外観検査を行うことにより、直接長尺物を見た場合を含む場合と比較して、光路の長さの差を小さくすることができ、外観検査の精度が向上する。
第4発明によれば、反射鏡は、表面で光が反射する構成であることにより、光路の長さの調整が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る長尺物の外観検査装置を構成する撮像部の正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る長尺物の外観検査装置の概略構成図である。
【
図3】
図1の長尺物の外観検査装置の撮像部を構成する反射鏡セットの説明図である。(A)は撮像装置側を撮像するための反射鏡セットの説明図、(B)は反撮像装置側を撮像するための反射鏡セットの説明図である。
【
図4】
図1の長尺物の外観検査装置の撮像装置で得られる画像の説明図である。(A)はマスター画像の説明図、(B)は得られる画像のサンプルの説明図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る長尺物の外観検査装置を構成する撮像部の正面図である。
【
図6】
図5の長尺物の外観検査装置の撮像部を構成する反射鏡セットの説明図である。(A)は撮像装置側を撮像するための反射鏡セットの説明図、(B)は反撮像装置側を撮像するための反射鏡セットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための長尺物の外観検査装置を例示するものであって、本発明は長尺物の外観検査装置を以下のものに特定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0010】
(第1実施形態)
図2には、本発明の第1実施形態に係る長尺物の外観検査装置10の概略構成図を示す。
図2に示すように、本実施形態に係る長尺物の外観検査装置10は、検査対象である長尺物11を、その軸心方向に動作させる動作部と、長尺物11の外周の画像を撮像する撮像部12と、を含んで構成されている。
【0011】
検査対象である長尺物は、例えば鋼線、電線など、長尺物の軸心方向の長さが、軸心に対して垂直な面における長さよりも長いものが該当する。すなわちその軸心方向の長さが、その軸心に垂直な方向の長さよりも長い柱状体が該当する。軸心に垂直な断面の形状は、円、楕円、四角などの多角形など特に限定されない。また長尺物は、中実の柱形状のものだけでなく、鋼管、銅管、樹脂チューブなど、筒形状のものも該当する。長尺物は、電線のように容易に曲折できるものであっても問題ない。
【0012】
本実施形態の長尺物の外観検査装置10の動作部は、複数のローラ15を含んで構成されている。これらのローラ15は、2つずつがセットになっている。そして本実施形態では3セットが長尺物の外観検査装置10に設けられている。これらのローラ15は、長尺物11をセットで挟み込み、
図2に示す黒矢印の方向にローラ15がそれぞれ回転することで、長尺物11をその軸心方向である白抜き矢印の方向、すなわち
図2の紙面において右から左へ動作させる。なお、本実施形態では長尺物の外観検査装置10は動作部を含む構成で説明したが、これに限定されない。例えば、長尺物の外観検査装置10の前後に配置されているいずれかの装置が動作部を有し、長尺物の外観検査装置10が動作部を含まない場合もある。
【0013】
本実施形態の長尺物の外観検査装置10は、撮像部12を含む。撮像部12には、後述する撮像装置20、複数の反射鏡セットなどを含んで構成されている。
【0014】
本実施形態の長尺物の外観検査装置10は、光源13を含む。光源13は、長尺物11の外周面に向かって光を照射する。本実施形態において、光源13はLEDであるが、特にこれに限定されない。例えば、光源13は蛍光灯またはハロゲン光源であっても問題ない。
【0015】
本実施形態の長尺物の外観検査装置10は、撮像部12を構成する撮像装置20と電気的に接続された制御部14を有する。この制御部14は、撮像装置20により撮像された画像から、長尺物11の表面に存在する欠陥または汚れを判別する。
【0016】
図1には、本発明の第1実施形態に係る長尺物の外観検査装置10を構成する撮像部12の正面図を示す。この正面図は、
図2において、長尺物11の軸心方向である右から撮像部12を見た図である。また、
図3には、
図1の長尺物の外観検査装置10の撮像部12を構成する反射鏡セットの説明図を示す。
図3(A)は撮像装置側を撮像するための反射鏡セットの説明図、(B)は反撮像装置側を撮像するための反射鏡セットの説明図である。なお、
図1および
図3では、撮像部12の構造をわかりやすく説明するために、必要な部品のみを図面で示している。
【0017】
本実施形態の長尺物の外観検査装置10は、撮像装置20と反射鏡セットと、を有している。この反射鏡セットは、撮像装置20が長尺物11の外観を撮像するために、複数の反射鏡によって撮像装置20から長尺物11に到る一つの光路を構成するように組み合わされたものである。
図1では本実施形態において、撮像部12に4組の反射鏡セットが設けられている。なお反射鏡セットの数は、特に限定されない。反射鏡セットは、3組であっても5組以上であっても問題ない。しかし長尺物11の全周を2以上に分割して測定できるように、2組以上である必要がある。
【0018】
また長尺物11の断面形状が大きくなる場合、例えば長尺物11の断面形状が丸の場合で考えるときに、その径が長くなると、撮像装置20の被写界深度が同じであるため、反射鏡セットの数を増やす必要がある。これは反射鏡セットの数に応じて、長尺物の外周の測定可能な角度の範囲が決定されるからである。例えば、反射鏡セットが2つの場合、測定可能な角度の範囲は180度であり、反射鏡セットが4つの場合、測定可能な角度の範囲は90度になる。測定可能な角度の範囲が180度の場合、半径分の被写界深度が必要となるところ、測定可能な角度の範囲が90度の場合、「半径-半径×√2/2」の被写界深度で足りるためである。
【0019】
反射鏡セットを構成する反射鏡は、いずれも長尺物11の軸心に垂直な一平面内に配置されている。具体的には撮像装置20は長尺物11の軸心方向に、あらかじめ定められた画角を有している。この画角を軸心方向画角とすると、「反射鏡が一平面内に配置されている」というのは、そのあらかじめ定められた軸心方向画角の範囲内に反射鏡の反射部分が配置されていることを意味する。
【0020】
また、本実施形態では、反射鏡はいずれもその表面で光が反射する構成となっている。例えば、ガラス等の表面にアルミニウムが蒸着された構成が好ましい。反射鏡は、表面で光が反射する構成であることにより、光路の長さの調整が容易になる。なお、反射鏡の構成は、この構成に限定されない。反射鏡の、長尺物11の軸心に垂直な平面内の長さは、その平面内の長尺物11の像を、欠けることなく反射できるだけの長さであることが好ましい。また、本実施形態では、反射鏡の反射面は平面であるがこれに限定されない。反射鏡の反射面を、長尺物11の軸心に垂直な平面内で曲面とし、長尺物11の画像を拡大または縮小することもある。
【0021】
本実施形態では、4組の反射鏡セットが設けられている。すなわち、本実施形態では、長尺物11の全外周の360度を90度ずつ測定するように反射鏡セットが配置されている。
図1および
図3において、長尺物11の軸心に垂直な面における撮像装置20の水平方向画角を、符号Sを付した点線で表し、各反射鏡セットの光路を2点鎖線で示している。なお、反射鏡セットを構成する反射鏡は、光路における位置関係で、以下のように分類することができる。すなわち光路において、長尺物11に最も近い反射鏡は、検査対象用反射鏡と、光路において、撮像装置20に最も近い反射鏡は、撮像装置用反射鏡と、この検査対象用反射鏡および撮像装置用反射鏡以外の、光路の長さを調整するための光路長調整用反射鏡と、分類される。
【0022】
第1反射鏡セット(
図3(A)にも図示)は、第1A反射鏡21aと、第1B反射鏡21bと、を含んで構成されている。この第1反射鏡セットは、
図1の紙面において、撮像装置側の右側を撮像するための反射鏡セットである。この第1反射鏡セットでは、第1A反射鏡21aは撮像装置用反射鏡であり、第1B反射鏡21bは検査対象用反射鏡である。
【0023】
第2反射鏡セット(
図3(B)にも図示)は、第2A反射鏡22aと、第2B反射鏡22bと、第2C反射鏡22cとを含んで構成されている。この第2反射鏡セットは、
図1の紙面において、反撮像装置側の右側を撮像するための反射鏡セットである。この第2反射鏡セットでは、第2A反射鏡22aは撮像装置用反射鏡であり、第2B反射鏡22bは光路長調整用反射鏡であり、第2C反射鏡22cは検査対象用反射鏡である。
【0024】
第3反射鏡セットは、第3A反射鏡23aと、第3B反射鏡23bと、を含んで構成されている。この第3反射鏡セットは、
図1の紙面において、撮像装置側の左側を撮像するための反射鏡セットである。この第3反射鏡セットでは、第3A反射鏡23aは撮像装置用反射鏡であり、第3B反射鏡23bは検査対象用反射鏡である。
【0025】
第4反射鏡セットは、第4A反射鏡24aと、第4B反射鏡24bと、第4C反射鏡24cとを含んで構成されている。この第4反射鏡セットは、
図1の紙面において、反撮像装置側の左側を撮像するための反射鏡セットである。この第4反射鏡セットでは、第4A反射鏡24aは撮像装置用反射鏡であり、第4B反射鏡24bは光路長調整用反射鏡であり、第4C反射鏡24cは検査対象用反射鏡である。
【0026】
本実施形態では、各反射鏡セットにおける光路の長さに特徴がある。この点について
図3により説明する。なお、本実施形態では、
図1において、長尺物11の中心と、撮像装置20の焦点とを結んだ直線を対称軸として、反射鏡セットの構成は、左右で同じ構成であるので、
図3においては、第1反射鏡セットおよび第2反射鏡セットについて示している。
【0027】
図3(A)に示すように、第1反射鏡セットにおける第1光路長LAは、撮像装置20の焦点と第1A反射鏡21aとの間の距離L1と、第1A反射鏡21aと第1B反射鏡21bとの間の距離L2と、第1B反射鏡21bと長尺物11の表面との間の距離L3により、以下の式1のように表される。そして本実施形態において、この第1光路長LAは、あらかじめ定められた範囲内にある。例えばあらかじめ定められた基準として200mmを取り上げた際に、第1光路長LAは、200mm±5mmの間に入っている。このあらかじめ定められた範囲は、撮像装置20の被写界深度など複数のパラメータによって定められる。
【0028】
[数1]
LA=L1+L2+L3・・・(式1)
【0029】
また
図3(B)に示すように、第2反射鏡セットにおける第2光路長LBは、撮像装置20の焦点と第2A反射鏡22aとの間の距離L4と、第2A反射鏡22aと第2B反射鏡22bとの間の距離L5と、第2B反射鏡22bと第2C反射鏡22cとの間の距離L6と、第2C反射鏡22Cと長尺物11の表面との間の距離L7により、以下の式2のように表される。そして本実施形態において、この第2光路長LBは、あらかじめ定められた範囲内にある。このあらかじめ定められた範囲は、撮像装置20の被写界深度など複数のパラメータによって定められる。
【0030】
[数2]
LB=L4+L5+L6+L7・・・(式2)
【0031】
本実施形態では、第1反射鏡セットから第4反射鏡セットのいずれにおいても、その光路の長さが、あらかじめ定められた範囲内である。このように光路の長さがいずれの反射鏡セットにおいてもあらかじめ定められた範囲内にあることで、撮像装置20から長尺物11の表面までの光路の距離がほぼ同じになり、いずれの反射鏡セットにおいても焦点がほぼ同じになるので、高価な撮像装置20の1台により、長尺物11の外観の軸心回り360度すべてを検査することができる。これにより検査装置のコストを抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態では、反撮像装置側の外観を検査する第2反射鏡セットおよび第4反射鏡セットの光路長調整用反射鏡が、撮像装置20の焦点と撮像装置用反射鏡とを結ぶ光路よりも、撮像装置20の焦点と長尺物11とを結ぶ線分に近く配置されている。このように配置されていることにより、撮像部12の大きさを小さくすることができる。
【0033】
図4には、本実施形態の長尺物の外観検査装置10で得られる画像の説明図を示す。
図4(A)はマスター画像の説明図、
図4(B)は得られる画像のサンプルの説明図である。
図4(A)は、4つの撮像装置用反射鏡に、それぞれの角度から長尺物11の外観が映し出されている図であり、図中のドット密度が濃い部分は、撮像装置20の焦点が合っていない部分を示している。
図4(A)の右側から第1反射鏡セットの第1A反射鏡21a、第2反射鏡セットの第2A反射鏡22a、第4反射鏡セットの第4A反射鏡24a、第3反射鏡セットの第3A反射鏡23aが示されている。そして、マスター画像では、これらの反射鏡に映るそれぞれの角度からの長尺物11の外観が示されている。
図4(B)では、長尺物11の外観に表れる傷F1および汚れF2を例示的に示している。
【0034】
本実施形態では、
図4に示すように、撮像装置20は、4つの反射鏡セットを用いた画像のみが鮮明に表されているので、撮像部12と電気的に接続している制御部14は、この4つの反射鏡セットを用いた画像のみを用いて長尺物の外観検査を行っている。
【0035】
本実施形態では反射鏡セットの光路の長さが、いずれの反射鏡セットにおいてもあらかじめ定められた範囲内であるので、上記の4つの撮像装置反射鏡に表された長尺物11の外観は、焦点があっており、精度よく外観の検査を行うことが可能である。
【0036】
また、反射鏡セットの少なくとも一つ、すなわち本実施形態では第2反射鏡セットと第4反射鏡セットが光路の長さを調整するための光路長調整用反射鏡を有していることにより、反射鏡セットそれぞれの光路長を任意に設定することができ、被写界深度内に光路長を収めることができる。
【0037】
制御部14が、反射鏡セットを用いた画像のみを用いて外観検査を行うことにより、直接長尺物11を見た場合を含む場合と比較して、光路の長さの差を小さくすることができ、外観検査の精度が向上する。
【0038】
なお、本実施形態では制御部14は、反射鏡セットを用いた画像のみを用いて長尺物11の外観検査を行っていたが、これに限定されない。
【0039】
(第2実施形態)
図5には、本発明の第2実施形態に係る長尺物の外観検査装置を構成する撮像部12の正面図を、
図6にはその長尺物の外観検査装置の撮像部12を構成する反射鏡セットの説明図を示す。
図6(A)は撮像装置側を撮像するための反射鏡セットの説明図、
図6(B)は反撮像装置側を撮像するための反射鏡セットの説明図である。
【0040】
第1実施形態と第2実施形態との相違点は、反射鏡セットを構成する反射鏡の位置関係である。その他の点については、第1実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0041】
本実施形態では、第1実施形態と同様、4組の反射鏡セットが設けられている。すなわち、本実施形態では、長尺物11の全外周の360度を90度ずつ測定するように反射鏡セットが配置されている。
図5および
図6において、長尺物11の軸心に垂直な面における撮像装置20の水平方向画角を、符号Sを付した点線で表し、各反射鏡セットの光路を2点鎖線で示している。なお、反射鏡セットを構成する反射鏡は、光路における位置関係で、以下のように分類することができる。すなわち光路において、長尺物11に最も近い反射鏡は、検査対象用反射鏡と、光路において、撮像装置20に最も近い反射鏡は、撮像装置用反射鏡と、この検査対象用反射鏡および撮像装置用反射鏡以外の、光路の長さを調整するための光路長調整用反射鏡と、分類される。
【0042】
第5反射鏡セット(
図6(A)にも図示)は、第5A反射鏡31aと、第5B反射鏡31bと、を含んで構成されている。この第5反射鏡セットは、
図5の紙面において、撮像装置側の右側を撮像するための反射鏡セットである。この第5反射鏡セットでは、第5A反射鏡31aは撮像装置用反射鏡であり、第5B反射鏡31bは検査対象用反射鏡である。
【0043】
第6反射鏡セット(
図6(B)にも図示)は、第6A反射鏡32aと、第6B反射鏡32bと、第6C反射鏡32cとを含んで構成されている。この第6反射鏡セットは、
図5の紙面において、反撮像装置側の右側を撮像するための反射鏡セットである。この第6反射鏡セットでは、第6A反射鏡32aは撮像装置用反射鏡であり、第6B反射鏡32bは光路長調整用反射鏡であり、第6C反射鏡32cは検査対象用反射鏡である。
【0044】
第7反射鏡セットは、第7A反射鏡33aと、第7B反射鏡33bと、を含んで構成されている。この第7反射鏡セットは、
図5の紙面において、撮像装置側の左側を撮像するための反射鏡セットである。この第7反射鏡セットでは、第7A反射鏡33aは撮像装置用反射鏡であり、第7B反射鏡33bは検査対象用反射鏡である。
【0045】
第8反射鏡セットは、第8A反射鏡34aと、第8B反射鏡34bと、第8C反射鏡34cとを含んで構成されている。この第8反射鏡セットは、
図5の紙面において、反撮像装置側の左側を撮像するための反射鏡セットである。この第8反射鏡セットでは、第8A反射鏡34aは撮像装置用反射鏡であり、第8B反射鏡34bは光路長調整用反射鏡であり、第8C反射鏡34cは検査対象用反射鏡である。
【0046】
本実施形態では、各反射鏡セットにおける光路の長さに特徴がある。この点について
図6により説明する。なお、本実施形態では、
図5において、長尺物11の中心と、撮像装置20の焦点とを結んだ直線を対称軸として、反射鏡セットの構成は、左右で同じ構成であるので、
図5においては、第5反射鏡セットおよび第6反射鏡セットについて示している。
【0047】
図6(A)に示すように、第5反射鏡セットにおける第5光路長LEは、撮像装置20の焦点と第5A反射鏡31aとの間の距離L8と、第5A反射鏡31aと第5B反射鏡31bとの間の距離L9と、第5B反射鏡31bと長尺物11の表面との間の距離L10により、以下の式3のように表される。そして本実施形態において、この第5光路長LEは、あらかじめ定められた範囲内にある。このあらかじめ定められた範囲は、撮像装置20の被写界深度など複数のパラメータによって定められる。
【0048】
[数3]
LE=L8+L9+L10・・・(式3)
【0049】
また
図6(B)に示すように、第6反射鏡セットにおける第6光路長LFは、撮像装置20の焦点と第6A反射鏡32aとの間の距離L11と、第6A反射鏡32aと第6B反射鏡32bとの間の距離L12と、第6B反射鏡32bと第6C反射鏡32cとの間の距離L13と、第6C反射鏡32Cと長尺物11の表面との間の距離L14により、以下の式4のように表される。そして本実施形態において、この第6光路長LFは、あらかじめ定められた範囲内にある。このあらかじめ定められた範囲は、撮像装置20の被写界深度など複数のパラメータによって定められる。
【0050】
[数4]
LF=L11+L12+L13+L14・・・(式4)
【0051】
本実施形態では、第5反射鏡セットから第8反射鏡セットのいずれにおいても、その光路の長さが、あらかじめ定められた範囲内である。このように光路の長さがいずれの反射鏡セットにおいてもあらかじめ定められた範囲内にあることで、撮像装置20から長尺物11の表面までの光路の距離がほぼ同じになり、いずれの反射鏡セットにおいても焦点がほぼ同じになるので、高価な撮像装置20の1台により、長尺物11の外観の軸心回り360度すべてを検査することができる。これにより検査装置のコストを抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態では、反撮像装置側の外観を検査する第6反射鏡セットおよび第8反射鏡セットの光路長調整用反射鏡が、撮像装置20の焦点と撮像装置用反射鏡とを結ぶ光路よりも、撮像装置20の焦点と長尺物11とを結ぶ線分から遠くに配置されている。このように配置されていることにより、撮像装置20が直接長尺物11の外観を撮像することも可能となる。
【符号の説明】
【0053】
10 長尺物の外観検査装置
11 長尺物
12 撮像部
14 制御部
20 撮像装置
21a 第1A反射鏡
21b 第1B反射鏡
22a 第2A反射鏡
22b 第2B反射鏡
22c 第2C反射鏡
LA 第1光路長
L1 撮像装置の焦点と第1A反射鏡との間の距離
L2 第1A反射鏡と第1B反射鏡との間の距離
L3 第1B反射鏡と長尺物の表面との間の距離
LB 第2光路長
L4 撮像装置の焦点と第2A反射鏡との間の距離
L5 第2A反射鏡と第2B反射鏡との間の距離
L6 第2B反射鏡と第2C反射鏡との間の距離
L7 第2C反射鏡と長尺物の表面との間の距離
【手続補正書】
【提出日】2023-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心方向に動作させられている長尺物の外観検査装置であって、
前記長尺物の外周の画像を撮像する撮像部を含んで構成され、
前記撮像部は、
撮像装置と、
該撮像装置が前記長尺物の外観を撮像するために、複数の反射鏡によって前記撮像装置から前記長尺物に到る一つの光路を構成するように組み合わされた反射鏡セットと、を有し、
前記反射鏡セットは、複数設けられており、
前記反射鏡セットを構成する反射鏡は、該反射鏡の反射部分が、前記長尺物の軸心に垂直な一平面内に存在するように、かつ、前記撮像装置の前記軸心方向の画角の範囲内に存在するように配置され、
前記反射鏡セットの前記撮像装置から前記長尺物に到る光路の長さが、いずれの反射鏡セットにおいてもあらかじめ定められた範囲内である、
ことを特徴とする長尺物の外観検査装置。
【請求項2】
前記反射鏡セットの前記撮像装置から前記長尺物に到る光路の長さが、いずれの反射鏡セットにおいても、前記撮像装置の被写界深度を考慮してあらかじめ定められた範囲内である、
ことを特徴とする請求項1に記載の長尺物の外観検査装置。
【請求項3】
前記反射鏡セットの少なくとも1つは、
前記光路において前記長尺物に最も近い検査対象用反射鏡と、
前記光路において前記撮像装置に最も近い撮像装置用反射鏡と、
前記光路の長さを調整するための光路長調整用反射鏡と、を含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の長尺物の外観検査装置。
【請求項4】
前記長尺物の外観検査装置は、
前記撮像部からの画像を受信する制御部を有し、
該制御部は、前記反射鏡セットを用いた画像のみを用いて前記長尺物の外観検査を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の長尺物の外観検査装置。
【請求項5】
前記反射鏡は、表面で光が反射する構成である、
ことを特徴とする請求項1に記載の長尺物の外観検査装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
第1発明の長尺物の外観検査装置は、軸心方向に動作させられている長尺物の外観検査装置であって、前記長尺物の外周の画像を撮像する撮像部を含んで構成され、前記撮像部は、撮像装置と、該撮像装置が前記長尺物の外観を撮像するために、複数の反射鏡によって前記撮像装置から前記長尺物に到る一つの光路を構成するように組み合わされた反射鏡セットと、を有し、前記反射鏡セットは、複数設けられており、前記反射鏡セットを構成する反射鏡は、該反射鏡の反射部分が、前記長尺物の軸心に垂直な一平面内に存在するように、かつ、前記撮像装置の前記軸心方向の画角の範囲内に存在するように配置され、前記反射鏡セットの前記撮像装置から前記長尺物に到る光路の長さが、いずれの反射鏡セットにおいてもあらかじめ定められた範囲内であることを特徴とする。
第2発明の長尺物の外観検査装置は、第1発明において、前記反射鏡セットの前記撮像装置から前記長尺物に到る光路の長さが、いずれの反射鏡セットにおいても、前記撮像装置の被写界深度を考慮してあらかじめ定められた範囲内であることを特徴とする。
第3発明の長尺物の外観検査装置は、第1発明において、前記反射鏡セットの少なくとも1つは、前記光路において前記長尺物に最も近い検査対象用反射鏡と、前記光路において前記撮像装置に最も近い撮像装置用反射鏡と、前記光路の長さを調整するための光路長調整用反射鏡と、を含んで構成されていることを特徴とする。
第4発明の長尺物の外観検査装置は、第1発明において、前記長尺物の外観検査装置は、前記撮像部からの画像を受信する制御部を有し、該制御部は、前記反射鏡セットを用いた画像のみを用いて前記長尺物の外観検査を行うことを特徴とする。
第5発明の長尺物の外観検査装置は、第1発明において、前記反射鏡は、表面で光が反射する構成であることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
第1発明によれば、長尺物の外観を撮像するための反射鏡セットが複数設けられていることにより、撮像装置1台のみでも、長尺物の外観の軸心回り360度すべてを検査することができるので、検査装置のコストを抑制することができる。また、反射鏡の反射部分が、長尺物の軸心に垂直な一平面内に存在するように、かつ、前記撮像装置の前記軸心方向の画角の範囲内に存在するように配置されていることにより、その軸心方向へ検査装置が大きくなることがなく、長尺物の外観検査装置の大きさを小さくすることができる。
第3発明によれば、反射鏡セットが、光路の長さを調整する光路長調整用反射鏡を含んでいることにより、反射鏡セットそれぞれの光路長を任意に設定することができ、被写界深度内に光路長を収めることができる。
第4発明によれば、制御部が、反射鏡セットを用いた画像のみを用いて外観検査を行うことにより、直接長尺物を見た場合を含む場合と比較して、光路の長さの差を小さくすることができ、外観検査の精度が向上する。
第5発明によれば、反射鏡は、表面で光が反射する構成であることにより、光路の長さの調整が容易になる。