IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本自動車部品総合研究所の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-水電解システム 図1
  • 特開-水電解システム 図2
  • 特開-水電解システム 図3
  • 特開-水電解システム 図4
  • 特開-水電解システム 図5
  • 特開-水電解システム 図6
  • 特開-水電解システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064381
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】水電解システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20240507BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240507BHJP
   C25B 9/13 20210101ALI20240507BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20240507BHJP
   C25B 9/19 20210101ALN20240507BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B9/13
C25B15/08 304
C25B9/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172936
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 育康
(72)【発明者】
【氏名】藤田 敬祐
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC02
4K021BC03
4K021BC04
4K021CA11
4K021DB06
4K021DB16
4K021DB53
(57)【要約】
【課題】水電解効率を向上させることができる水電解システムを提供する。
【解決手段】水の電気分解によって酸素と水素を生成する水電解システムであって、膜電極接合体を含み、水を電気分解する水電解セルと、前記水電解セルに水を供給する水供給部と、生成された水素を排出する水素排出部と、生成された酸素を排出する酸素排出部と、を備え、前記水素排出部において、水電解により生成された水蒸気を含んだ水素から水蒸気を取り除く乾燥装置と、生成された水素を加圧する加圧ポンプと、前記加圧された水素を貯蔵する水素加圧タンクと、を備え、さらに、前記水電解セルの水素極流路上流部に乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給部を備えることを特徴とする水電解システム。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の電気分解によって酸素と水素を生成する水電解システムであって、
膜電極接合体を含み、水を電気分解する水電解セルと、前記水電解セルに水を供給する水供給部と、生成された水素を排出する水素排出部と、生成された酸素を排出する酸素排出部と、を備え、
前記水素排出部において、水電解により生成された水蒸気を含んだ水素から水蒸気を取り除く乾燥装置と、生成された水素を加圧する加圧ポンプと、前記加圧された水素を貯蔵する水素加圧タンクと、を備え、
さらに、前記水電解セルの水素極流路上流部に乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給部を備えることを特徴とする水電解システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水電解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水電解システムに関して様々な技術が提案されている。
例えば特許文献1には、高電流密度で水電解するときには、水不足による効率の低下や劣化が懸念されるため、電気分解される水量を推定することにより水不足を発生させないように水の供給量を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-143346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、水不足発生状態に対して水不足を発生させない時の水電解効率の向上を示している。しかしながら、より高電流密度で高効率に水電解し、且つ、小型化したいという要求に対して、水不足無しの状態からの水電解効率の向上ができていない。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、水電解効率を向上させることができる水電解システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示においては、水の電気分解によって酸素と水素を生成する水電解システムであって、
膜電極接合体を含み、水を電気分解する水電解セルと、前記水電解セルに水を供給する水供給部と、生成された水素を排出する水素排出部と、生成された酸素を排出する酸素排出部と、を備え、
前記水素排出部において、水電解により生成された水蒸気を含んだ水素から水蒸気を取り除く乾燥装置と、生成された水素を加圧する加圧ポンプと、前記加圧された水素を貯蔵する水素加圧タンクと、を備え、
さらに、前記水電解セルの水素極流路上流部に乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給部を備えることを特徴とする水電解システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の水電解システムは、水電解効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の水電解システムの一例を示すシステム構成図である。
図2】本開示の水電解セルの一例を示す概略模式図である。
図3】本開示の水素極セパレータを平面視したときの一例を示す概略模式図である。
図4】電源21にて水電解に必要な水電解スタック20の両極間にかける電流量と、電圧との関係の一例を示すグラフである。
図5】本開示の水電解システムの別の一例を示すシステム構成図である。
図6】本開示の水電解システムの別の一例を示すシステム構成図である。
図7】従来の水電解システムの一例を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示による実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本開示の実施に必要な事柄(例えば、本開示を特徴付けない水電解システムの一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
また、図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0010】
本開示の水電解システムは、水素流路の上流側から乾燥ガスを追加供給することにより水電解効率を向上させることが特徴である。
本研究者らは、固体高分子型の水電解セルにおいて、水電解効率向上に向けた種々解析から水素極流路の上流側から乾燥ガスを供給することで、電解質膜の両極間の水濃度差による水透過量が増大し、膜抵抗が減少し水電解効率が向上することを見出した。
【0011】
第1実施形態
本開示の第1実施形態においては、水の電気分解によって酸素と水素を生成する水電解システムであって、
膜電極接合体を含み、水を電気分解する水電解セルと、前記水電解セルに水を供給する水供給部と、生成された水素を排出する水素排出部と、生成された酸素を排出する酸素排出部と、を備え、
さらに、前記水電解セルの水素極流路上流部に乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給部を備えることを特徴とする水電解システムを提供する。
【0012】
第1実施形態によれば、水素極上流側から乾燥ガスを供給することにより両極間の水濃度差による水移動を促進し、膜抵抗を下げ、水電解効率を向上できる。
【0013】
第2実施形態
本開示の第2実施形態においては、第1実施形態において、前記乾燥ガス供給部において、乾燥ガスタンクを備え、前記乾燥ガスタンク内のガスを乾燥ガスとして供給するものであってもよい。乾燥ガスタンク内のガスは、乾燥窒素ガスであってもよい。
【0014】
第3実施形態
本開示の第3実施形態においては、第1実施形態において、前記水素排出部に水電解により生成された水蒸気を含んだ水素から水蒸気を取り除く乾燥装置を備え、前記乾燥ガス供給部において、乾燥装置により乾燥された水素を乾燥ガスとして前記水電解セルに供給する循環ポンプを備えてもよい。
乾燥ガスとして生成された水素を活用することで、システムをよりコンパクトな構成とすることができる。
乾燥装置は、除湿器、ドライヤ等であってもよい。水電解により生成された水蒸気を含んだ水素をドライヤに通した後、一部を循環ポンプで循環して水電解セルに供給してもよい。
【0015】
第4実施形態
本開示の第4実施形態においては、水の電気分解によって酸素と水素を生成する水電解システムであって、
膜電極接合体を含み、水を電気分解する水電解セルと、前記水電解セルに水を供給する水供給部と、生成された水素を排出する水素排出部と、生成された酸素を排出する酸素排出部と、を備え、
前記水素排出部において、水電解により生成された水蒸気を含んだ水素から水蒸気を取り除く乾燥装置と、生成された水素を加圧する加圧ポンプと、前記加圧された水素を貯蔵する水素加圧タンクと、を備え、
さらに、前記水電解セルの水素極流路上流部に乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給部を備えることを特徴とする水電解システムを提供する。
【0016】
第4実施形態によれば、水電解により生成された水蒸気を含んだ水素から水蒸気を取り除く乾燥装置と、生成された水素を加圧する加圧ポンプと、前記加圧された水素を貯蔵する水素加圧タンクと、を備えることにより、加圧された水素をそのまま乾燥ガスとして水電解セルに供給することができ、コンパクト、且つ、低コストでシステムを構成することができる。
【0017】
第5実施形態
本開示の第5実施形態においては、第4実施形態において、前記乾燥ガス供給部において、前記水素加圧タンク内に貯蔵されている水素を乾燥ガスとして供給してもよい。
本開示おいては水素加圧タンク内の水素を循環して水電解セルに供給してもよい。
【0018】
図1は、本開示の水電解システムの一例を示すシステム構成図である。
図1に示す水電解システム100は、複数の水電解セル11が積層されて成る水電解スタック20と、酸素極側の水供給系、酸素と水の排出系、水素極側の乾燥ガス供給系、水素と水の排出系から成る。
酸素極側の水供給系としては、イオン交換器22、水タンク23、水ポンプ24、酸素極側の排出系としては、酸素極気液分離器25から成る。
水素極側の乾燥ガス供給系としては、窒素ボンベ30を有し、水素極側の排出系としては、水素極気液分離器26、除湿器27、水素分離膜28、水素タンク29から成る。
水電解スタック20の両極間に電源線を介して電源21が接続されている。
【0019】
図2は、本開示の水電解セルの一例を示す概略模式図である。
図2に示す水電解セル11は、電解質膜1を挟んで水素極触媒層2、酸素極触媒層3、水素極拡散層4、酸素極拡散層5、水素極ガス流路8および冷却水流路10が形成された水素極セパレータ6、酸素極ガス流路9および冷却水流路10が形成された酸素極セパレータ7が積層され形成される。
【0020】
図3は、本開示の水素極セパレータを平面視したときの一例を示す概略模式図である。
図3に示すように、水素極セパレータ6には、水素極入口マニホールド12、水素極出口マニホールド13、酸素極入口マニホールド14、酸素極出口マニホールド15、冷却水入口マニホールド16、冷却水出口マニホールド17、水素極ガス流路8が形成されている。
【0021】
図4は、電源21にて水電解に必要な水電解スタック20の両極間にかける電流量と、電圧との関係の一例を示すグラフである。
電源21は、水電解スタック20の両極間に図4に示すような電流量と、電圧をかけ、水電解が実行される。
酸素極側の水供給系では、市水がイオン交換器22に通し水タンク23に送られる。水タンク23内の水は水ポンプ24にて水電解スタック20の酸素極入口マニホールド14に供給され、酸素極入口マニホールド14を介して、各水電解セル11の酸素極に供給される。
酸素極側の酸素と水の排出系では、水電解スタック20の酸素極出口マニホールド15から水電解により生成された酸素と余剰分の水が排出される。酸素と水は酸素極気液分離器25にて気液分離され、酸素は排気され、水は水タンク23に戻される。
水素極側の乾燥ガス供給系では、窒素ボンベ30から窒素ガスが水電解スタック20の水素極入口マニホールド12に供給され、水素極入口マニホールド12を介して、各水電解セル11の水素極に供給される。
水素極側の水素と水の排出系では、水電解スタック20の水素極出口マニホールド13から水電解により生成された水素と、酸素極から電解質膜1を透過してきた水と、水素側の乾燥ガス供給系より供給された窒素が排出される。水素と窒素と水は水素極気液分離器26にて気液分離され、水素は除湿器27を通り水蒸気成分を除去され、その後、水素分離膜28を通り窒素成分を除去され、水素のみが水素タンク29に供給される。一方、水素極気液分離器26で分離された水は、水タンク23に戻される。
水素極側の乾燥ガス供給系から供給された窒素は、水素極側の水を水蒸気として持ち去るため、乾燥ガスを供給しない通常の場合に比べ、より多くの水分量を排出する。また、水素のみの場合に比べてガス量が増えること、ガスの質量が増えることで、液水状態での排出量も増える。水素極側の水分の排出量が増えることで電解質膜1の両極間の水濃度差が大きくなり、水の透過量が増えることで、電解質膜1の抵抗が下がり、過電圧も下がり(図4のA→B)、水電解効率が向上する。
【0022】
図5は、本開示の水電解システムの別の一例を示すシステム構成図である。
図5に示す水電解システム200は、水素極側の乾燥ガス供給系として、水素循環ポンプ31を有し、水素極側の排出系としては、水素極気液分離器26、除湿器27、水素タンク29から成る。その他は図1と同様である。
水素極側の乾燥ガス供給系では、水素循環ポンプ31により、水電解により生成された乾燥水素が水素タンク29の手前から一部引き込まれ、水電解スタック20の水素極入口マニホールド12に供給され、水素極入口マニホールド12を介して、各水電解セル11の水素極に供給される。
水素極側の水素と水の排出系では、水電解スタック20の水素極出口マニホールド13から水電解により生成された水素と、酸素極から電解質膜1を透過してきた水と、水素側の乾燥ガス供給系より供給された水素が排出される。水素と水は水素極気液分離器26にて気液分離され、水素は除湿器27を通り水蒸気成分を除去され、水素のみが水素タンク29に供給される。一方、気液分離器26で分離された水は、水タンク23に戻される。
水素極側の乾燥ガス供給系から供給された水素は、水素極側の水を水蒸気として持ち去るため、乾燥ガスを供給しない通常の場合に比べ、より多くの水分量を排出する。また、生成した水素のみの場合に比べてガスの流量が増えることで、液水状態での排出量も増える。水素極側の水分の排出量が増えることで電解質膜1の両極間の水濃度差が大きくなり、水の透過量が増えることで、電解質膜1の抵抗が下がり、過電圧も下がり(図4のA→B)、水電解効率が向上する。
【0023】
図6は、本開示の水電解システムの別の一例を示すシステム構成図である。
図6に示す水電解システム300は、水素極側の排出系として、水素極気液分離器26、除湿器27、水素加圧ポンプ32、水素加圧タンク33から成り、水素極側の乾燥ガス供給系としては、水素加圧タンク33から加圧された水素ガスを供給する構成となる。その他は図1と同様である。
水素極側の乾燥ガス供給系では、水電解により生成され加圧された乾燥水素が、水素加圧タンク33から水電解スタック20の水素極入口マニホールド12に供給され、水素極入口マニホールド12を介して、各水電解セル11の水素極に供給される。
水素極側の水素と水の排出系では、水電解スタック20の水素極出口マニホールド13から水電解により生成された水素と、酸素極から電解質膜1を透過してきた水と、水素側の乾燥ガス供給系より供給された水素が排出される。水素と水は水素極気液分離器26にて気液分離され、水素は除湿器27を通り水蒸気成分を除去され、水素のみが水素加圧ポンプ32により加圧され加圧水素タンク33に供給される。一方、気液分離器26で分離された水は、水タンク23に戻される。
水素極側の乾燥ガス供給系から供給された水素は、水素極側の水を水蒸気として持ち去るため、乾燥ガスを供給しない通常の場合に比べ、より多くの水分量を排出する。また、生成した水素のみの場合に比べてガスの流量が増えることで、液水状態での排出量も増える。水素極側の水分の排出量が増えることで電解質膜1の両極間の水濃度差が大きくなり、水の透過量が増えることで、電解質膜1の抵抗が下がり、過電圧も下がり(図4のA→B)、水電解効率が向上する。
【0024】
図7は、従来の水電解システムの一例を示すシステム構成図である。
図7に示す水電解システム400は、水素極側の乾燥ガス供給系を有さず、水素極側の排出系としては、水素極気液分離器26、除湿器27、水素タンク29から成る。その他は図1と同様である。
乾燥ガスを供給しない通常の場合、水素極側の水分の排出量が増えないため、電解質膜1の両極間の水濃度差が小さく、水の透過量が増えないため、電解質膜1の抵抗が高く、過電圧も下がらず(図4のA)、水電解効率が低い。
【符号の説明】
【0025】
1)電解質膜
2)水素極触媒層
3)酸素極触媒層
4)水素極拡散層
5)酸素極拡散層
6)水素極セパレータ
7)酸素極セパレータ
8)水素極ガス流路
9)酸素極ガス流路
10)冷却水流路
11)水電解セル
12)水素極入口マニホールド
13)水素極出口マニホールド
14)酸素極入口マニホールド
15)酸素極出口マニホールド
16)冷却水入口マニホールド
17)冷却水出口マニホールド
20)水電解スタック
21)電源
22)イオン交換器
23)水タンク
24)水ポンプ
25)酸素極気液分離器
26)水素極気液分離器
27)除湿器・ドライヤ
28)水素分離膜
29)水素タンク
30)窒素ボンベ
31)水素循環ポンプ
32)水素加圧ポンプ
33)水素加圧タンク
100)水電解システム
200)水電解システム
300)水電解システム
400)水電解システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7