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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064388
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】動力機構制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/26 20060101AFI20240507BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20240507BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240507BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G01L1/26 Z
G01L5/00 Z
G05B23/02 302R
B25J19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172944
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】小谷 明弘
【テーマコード(参考)】
2F051
3C223
3C707
【Fターム(参考)】
2F051AA11
2F051BA07
3C223AA12
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB02
3C223EB05
3C223FF04
3C223FF05
3C223FF13
3C223FF24
3C223FF45
3C223GG01
3C223HH04
3C223HH08
3C223HH29
3C707BS09
3C707KS21
3C707KS36
3C707MS14
(57)【要約】
【課題】動力機構に関する測定値の精度を向上できるとともに、動力機構を安定して稼働させ続けることができる。動力機構制御装置を提供する。
【解決手段】動力機構制御装置は、動力機構に関する測定値を取得する取得部と、動力機構に関する複数の過去の測定値に基づいて、動力機構に関する現在の測定値の推定値を推定する推定部と、取得部が取得した測定値が異常値であるか否かを判定する判定部と、取得部が取得した測定値が異常値であると判定部が判定する場合、当該測定値を推定値に更新する更新部とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力機構の動作を制御する動力機構制御装置であって、
前記動力機構に関する測定値を取得する取得部と、
前記動力機構に関する複数の過去の測定値に基づいて、前記動力機構に関する現在の測定値の推定値を推定する推定部と、
前記取得部が取得した前記測定値が異常値であるか否かを判定する判定部と、
前記取得部が取得した前記測定値が異常値であると前記判定部が判定する場合、当該測定値を前記推定値に更新する更新部と、
を備えることを特徴とする動力機構制御装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記動力機構に関する測定値、及び当該測定値に対応する誤り検出符号を取得し、
前記判定部は、前記誤り検出符号を参照することによって、前記誤り検出符号に対応する前記測定値が前記異常値であるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の動力機構制御装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記取得部が取得した前記測定値と前記推定値との差が所定値以上である場合に当該測定値が前記異常値であると判定し、前記差が前記所定値未満である場合に当該測定値が前記異常値でないと判定することを特徴とする請求項1に記載の動力機構制御装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記動力機構に関する過去の測定値から近似関数を算出し、前記近似関数によって前記推定値を推定することを特徴とする請求項1に記載の動力機構制御装置。
【請求項5】
前記取得部が取得した前記測定値を当該測定値に対応する暫定測定値として記憶する記憶部をさらに備え、
前記判定部は、前記取得部が取得した前記測定値が前記異常値であり、かつ当該測定値が2回以上連続して前記異常値でないか否かを判定し、
前記更新部は、前記測定値が前記異常値でありかつ当該測定値が2回以上連続して前記異常値でないと前記判定部が判定する場合、前記取得部が取得した前記測定値を前記推定値に更新し、前記取得部が取得した前記測定値が前記異常値でありかつ当該測定値が2回以上連続して前記異常値であると前記判定部が判定する場合、2回以上連続して前記異常値である前記測定値を対応する前記暫定測定値に更新することを特徴とする請求項1に記載の動力機構制御装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記取得部が取得した前記測定値が2回以上連続して前記異常値でないか否かを判定し、
前記取得部が取得した前記測定値が2回以上連続して前記異常値であると前記判定部が判定する場合、前記動力機構の動作を停止させるように制御する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の動力機構制御装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力機構の動作を制御する動力機構制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、動力機構を制御する動力機構制御装置が知られている。
【0003】
これに関し、特許文献1には、複数の検出部により車両(動力機構)の位置推定に必要な観測量(測定値)と観測量の予測値とに基づいて当該観測量が異常であるか否かを識別し、異常でないと識別した観測量と当該観測量の予測値との差分に基づいて車両の位置に関する予測値を補正することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-18112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、検出部によって測定された測定値が異常値でない場合には動力機構に関する処理に対して補正を行うものの、測定値が異常値である場合、測定値を当該補正に用いず破棄するため、測定値の精度が低下してしまうという問題があった。また、測定値が異常値の場合に動力機構を停止させる制御が知られているが、当該技術では、測定値が異常値であるが動力機構の稼働を停止させる必要がない場合に動力機構の稼働を停止させると作業効率が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、動力機構に関する測定値の精度を向上できるとともに、動力機構を安定して稼働させ続けることができる動力機構制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の動力機構制御装置は、動力機構の動作を制御する動力機構制御装置であって、前記動力機構に関する測定値を取得する取得部と、前記動力機構に関する複数の過去の測定値に基づいて、前記動力機構に関する現在の測定値の推定値を推定する推定部と、前記取得部が取得した前記測定値が異常値であるか否かを判定する判定部と、前記取得部が取得した前記測定値が異常値であると前記判定部が判定する場合、当該測定値を前記推定値に更新する更新部とを備える。
【0008】
また、前記取得部は、前記動力機構に関する測定値、及び当該測定値に対応する誤り検出符号を取得し、前記判定部は、前記誤り検出符号を参照することによって、前記誤り検出符号に対応する前記測定値が前記異常値であるか否かを判定する。
【0009】
また、前記判定部は、前記取得部が取得した前記測定値と前記推定値との差が所定値以上である場合に当該測定値が前記異常値であると判定し、前記差が前記所定値未満である場合に当該測定値が前記異常値でないと判定する。
【0010】
また、前記推定部は、前記動力機構に関する過去の測定値から近似関数を算出し、前記近似関数によって前記推定値を推定する。
【0011】
また、本発明の動力機構制御装置は、前記取得部が取得した前記測定値を当該測定値に対応する暫定測定値として記憶する記憶部をさらに備え、前記判定部は、前記取得部が取得した前記測定値が前記異常値であり、かつ当該測定値が2回以上連続して前記異常値でないか否かを判定し、前記更新部は、前記測定値が前記異常値でありかつ当該測定値が2回以上連続して前記異常値でないと前記判定部が判定する場合、前記取得部が取得した前記測定値を前記推定値に更新し、前記取得部が取得した前記測定値が前記異常値でありかつ当該測定値が2回以上連続して前記異常値であると前記判定部が判定する場合、2回以上連続して前記異常値である前記測定値を対応する前記暫定測定値に更新する。
【0012】
また、前記判定部は、前記取得部が取得した前記測定値が2回以上連続して前記異常値でないか否かを判定し、前記取得部が取得した前記測定値が2回以上連続して前記異常値であると前記判定部が判定する場合、前記動力機構の動作を停止させるように制御する制御部をさらに備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、動力機構制御装置は、動力機構に関する測定値の精度を向上できるとともに、動力機構を安定して稼働させ続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る動力機構制御装置を備える動力機構制御システムの構成を概略的に示す図である。
図2図1に示す動力機構制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図1に示す動力機構制御装置における機能的構成を、センサ及び動力機構とともに概略的に示す図である。
図4図1に示す動力機構制御装置の一連の処理の流れを示すフローチャートの一例である。
図5図1に示す動力機構制御装置による測定値の判定及び推定値の算出の過程で算出される各種データの一例を示す図表である。
図6図1に示す動力機構制御装置による推定値の算出の過程で算出される近似関数を示すグラフの一例である。
図7図1に示す動力機構制御装置の一連の処理の流れを示すフローチャートの他の例である。
図8図1に示す動力機構制御装置による測定値の判定及び推定値の算出の過程で算出される各種データの他の例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素及びステップに対しては可能な限り同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0016】
<全体構成>
図1は、本実施形態に係る動力機構制御装置30を備える動力機構制御システム1の構成を概略的に示す図である。図1に示すように、動力機構制御システム1は、例えば、動力機構10と、センサ20と、動力機構制御装置30とを含んで構成される。
【0017】
動力機構10は、例えば、多関節型アーム11を備えるロボットであり、動力機構10は、動力機構制御装置30によって動作が制御される。また、動力機構10は、動力機構制御装置30の制御に従って、動力機構10に関する種々の情報を動力機構制御装置30に対して既知の手段により送信する。動力機構10は、多関節型アーム11の先端に作業ユニット12が設けられており、作業ユニット12によって所定の作業を行う。所定の作業とは、作業対象の把持・移動・回転や、作業対象の物理的特性の測定、物質の注入又は塗布、研磨、ネジ締め、加熱などである。なお、作業ユニット12には、作業ユニット12の測定面に加わる圧力を検知するためのセンサ20が設けられている。
【0018】
センサ20は、例えば、力センサであり、動力機構10における作業ユニット12に設けられている。センサ20は、作業ユニット12の測定面に対して加わる圧力を測定する。また、センサ20は、測定した測定値を含む測定信号を生成し、生成した測定信号を動力機構制御装置30に送信する。なお、測定信号は、例えば、測定値に加えて、送信時のノイズなどによって測定値に誤りが発生した場合に当該誤りを検出するための誤り検出符号を含んでいても良い。測定信号に含まれる誤り検出符号は、例えば、巡回冗長検査(CRC:Cyclic Redundancy Check)である。
【0019】
動力機構制御装置30は、動力機構10と通信可能に構成されており、動力機構10に対して動作を制御するための制御命令を送信する。また、動力機構制御装置30は、動力機構10から動力機構10に関する種々の情報を取得し、取得した情報を記憶する。動力機構制御装置30は、記憶した情報を動力機構10の動作の制御に反映させたり、画面表示や音声出力などによって動力機構制御システム1の管理者やユーザに知らせたりする。
【0020】
また、動力機構制御装置30は、センサ20から送信される測定信号を取得する。動力機構制御装置30は、取得した測定信号に含まれる測定値が異常値でない場合に測定値を記憶する一方で、他方、当該測定値が異常値である場合に当該測定値を更新し、更新した測定値を記憶する。また、動力機構制御装置30は、動力機構10における所定の動作の制御において、記憶している測定値を当該制御に反映させる。
【0021】
<ハードウェア構成>
図2は、図1に示す動力機構制御装置30のハードウェア構成の一例を示す図である。図2に示すように、動力機構制御装置30は、例えば、記憶装置31と、CPU(Central Processing Unit)32と、メモリ33と、通信装置34とを含んで主要部が構成される。
【0022】
記憶装置31は、ハードディスク等で構成される。この記憶装置31は、CPU32における処理の実行に必要な各種プログラムや各種の情報、及び処理結果の情報を記憶する。
【0023】
CPU32は、メモリ33或いは記憶装置31等に格納された所定のプログラムを実行することにより、各種の機能手段として機能する。この機能手段の詳細については後述する。
【0024】
メモリ33に、所定のプログラムや、CPU32が所定のプログラムを実行する際に必要なデータなどが一時的に記憶される。
【0025】
通信装置34は、外部の装置と通信するための通信インターフェース等で構成される。通信装置34は、例えば、動力機構10とセンサ20などとの間で各種の情報を送受信する。
【0026】
なお、動力機構制御装置30は、専用又は汎用のコンピュータなどの情報処理装置を用いて実現することができる。また、動力機構制御装置30は、単一の情報処理装置より構成されるものであっても、複数の情報処理装置より構成されるものであってもよい。また、図2は、動力機構制御装置30が有する主要なハードウェア構成の一部を示しているに過ぎず、動力機構制御装置30は、コンピュータが一般的に備える他の構成を備えても良い。
【0027】
<機能的構成>
図3は、図1に示す動力機構制御装置30の機能的構成の一例を、センサ20、動力機構10とともに示す図である。図3に示すように、動力機構制御装置30は、機能的構成として、例えば、取得部301と、判定部302と、推定部303と、更新部304と、制御部305と、記憶部306とを含んで構成される。記憶部306以外の機能的構成は、CPU32がプログラムをメモリ33上に展開して実行することにより実現される。記憶部306は、記憶装置31又は/及びメモリ33により実現される。
【0028】
取得部301は、動力機構10に関する測定値を取得する。また、センサ20から送信される測定信号に測定値に対応する誤り検出符号が含まれている場合、取得部301は、当該誤り検出符号を取得する。
【0029】
判定部302は、取得部301が取得した測定値が異常値であるか否かを判定する。また、判定部302は、取得部301が取得した測定値が少なくとも2回以上連続して異常値であるか否かを判定する。判定部302による測定値が異常値であるか否かの具体的な判定方法については、追って図4図5図7及び図8を参照しつつ説明するため、ここではその説明を省略する。
【0030】
推定部303は、動力機構10に関する過去の測定値に基づいて、動力機構10に関する現在の測定値の推定値を推定する。具体的には、推定部303は、動力機構10に関する過去の測定値から近似関数を算出し、近似関数によって推定値を推定する。具体的には、推定部303は、記憶部306を参照することによって過去の測定値、例えば3つ以上の測定値を取得する。なお、推定部303による近似関数及び推定値の具体的な算出方法については、追って図4図6を参照しつつ説明するため、ここではその説明を省略する。
【0031】
更新部304は、取得部301が取得した測定値が異常値である場合、当該測定値を推定値に更新する。具体的には、更新部304は、取得部301が取得した測定値が判定部302によって異常値であると判定される場合、推定部303が推定した推定値に当該測定値を更新する。
【0032】
制御部305は、記憶部306に記憶されている制御プログラムや動力機構制御装置30の外部から入力される制御命令などに従って、動力機構10の動作の制御を行う。また、制御部305は、取得部301が取得した測定値が少なくとも2回以上連続して異常値である場合、動力機構10の動作を停止させるように制御する。
【0033】
記憶部306は、動力機構制御装置30において必要な各種値や判定結果などを記憶する。具体的には、記憶部306は、例えば、取得部301が取得した測定値、判定部302による測定値が異常値であるか否かの判定の結果、当該判定の基準として用いる所定値、及び更新部304によって更新された測定値を記憶する。
【0034】
<一連の処理の流れの一例>
以上、動力機構制御装置30の機能的構成について説明した。次に、動力機構制御システム1において、センサ20が動力機構制御装置30に送信する測定信号が誤り検出符号を含む場合における動力機構制御装置30の一連の処理の流れについて詳しく説明する。図4は、図1に示す動力機構制御装置30の一連の処理の流れを示すフローチャートの一例である。なお、以下の処理の順番及び内容は、適宜変更することができる。
【0035】
(ステップSP10)
動力機構制御装置30は、取得部301によって、センサ20から送信される測定信号から測定値、及び当該測定値に対応する誤り検出符号を取得する。また、動力機構制御装置30は、取得部301が取得した測定値及び誤り検出符号を判定部302に送信する。そして、処理は、ステップSP12の処理に移行する。
【0036】
(ステップSP12)
動力機構制御装置30は、判定部302によって、取得部301から送信された誤り検出符号を参照し、取得部301から送信された測定値に誤りがあることを誤り検出符号が検出したか否かを判定する。そして、処理は、ステップSP14の処理に移行する。
【0037】
(ステップSP18)
動力機構制御装置30は、判定部302によって、取得部301から送信された測定値が異常値であるか否かを判定する。具体的には、動力機構制御装置30は、判定部302によって、誤り検出符号が測定値の誤りを検出した場合、測定値が異常値であると判定し、誤り検出符号が測定値の誤りを検出していない場合、測定値が異常値でないと判定する。動力機構制御装置30は、判定部302によって、判定結果を記憶部306に記憶するとともに、判定結果を推定部303及び更新部304に送信する。そして、当該判定が肯定判定である場合、処理はステップSP16の処理に移行し、当該判定が否定判定である場合、処理はステップSP24の処理に移行する。
【0038】
(ステップSP16)
動力機構制御装置30は、判定部302によって、記憶部306に記憶されている判定部302による過去の判定結果を参照し、取得部301が取得した測定値が少なくとも2回(好ましくは3回)以上連続して異常値でないか否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定である場合、処理はステップSP20の処理に移行し、当該判定が否定判定である場合、処理はステップSP18の処理に移行する。
【0039】
(ステップSP18)
動力機構制御装置30は、制御部305によって、動力機構10の動作を停止させるように制御する。そして、図4に示す一連の処理は、終了する。
【0040】
(ステップSP20)
動力機構制御装置30は、推定部303によって、測定値の推定値を推定する。具体的には、動力機構制御装置30は、推定部303によって、記憶部306から少なくとも3つ以上の過去の測定値を取得する。動力機構制御装置30は、推定部303によって、取得した3つ以上の過去の推定値に基づいて近似関数を算出する。さらに、動力機構制御装置30は、算出した近似関数によって、取得部301が取得した測定値の推定値を推定する。なお、推定部303は、例えば、最小二乗法を用いた回帰分析などを行うことによって近似関数を算出する。そして、処理は、ステップSP22の処理に移行する。
【0041】
図5及び図6を用いて、推定部303による推定値の推定の詳細について説明する。図5は、図1に示す動力機構制御装置30による測定値の判定及び推定値の算出の過程で算出される各種データの一例を示す図表である。また、図6は、図1に示す動力機構制御装置30による推定値の算出の過程で算出される近似関数を示すグラフの一例である。なお、図5及び図6において、推定部303は、近似関数を算出するにあたって、近似関数のモデルとして、ax+bx+cという関数を用いるものと仮定する。なお、変数xは、時刻を示す。
【0042】
図5に示すように、時刻3ms、4ms及び5msにおいて、測定値は、それぞれ5.00、5.00及び6.00であり、いずれも誤り検出符号による判定が正常判定となっている。また、時刻6msでは、測定値は、値なしとなっており、誤り検出符号による判定が異常判定となっている。時刻6msにおいて、推定部303は、時刻3ms、4ms及び5msという値と、時刻3ms、4ms及び5msのそれぞれにおける測定値(すなわち、5.00、5.00及び6.00)とを最小二乗法を用いた回帰分析に代入することによって、近似関数ax+bx+cにおける係数a、b及びcを算出する。推定部303は、それぞれ係数aを0.0714、係数bを-0.3286、係数cを5.6と算出する。これにより、推定部303は、図6に示すような近似関数0.0714x-0.3286x+5.6を算出する。さらに、推定部303は、算出した近似関数の変数xに時刻6msの値を導入することによって、推定値として6.20という値を算出する。
【0043】
(ステップSP22)
図4に戻って、動力機構制御装置30は、更新部304によって、推定部303が推定した推定値に取得部301が取得した測定値を更新する。また、更新部304は、更新した測定値を記憶部306に送信する。そして、処理は、ステップSP24の処理に移行する。
【0044】
(ステップSP24)
動力機構制御装置30は、記憶部306によって、測定値を記憶する。更新部304によって測定値が更新されている場合、記憶部306は、更新された測定値を記憶することとなる。また、更新部304によって測定値が更新されていない場合、記憶部306は、取得部301が取得した測定値を記憶することとなる。そして、図4に示す一連の処理は終了する。
【0045】
<効果>
以上、本実施形態では、動力機構制御装置30は、動力機構10に関する測定値が異常値である場合に、測定値の推定値を算出し、算出した推定値で測定値を更新する。したがって、動力機構制御装置30は、動力機構10に関する測定値の精度を向上できるとともに、動力機構10を安定して稼働させ続けることができる。
【0046】
また、動力機構制御装置30は、測定値に対応する誤り検出符号によって、測定値が異常値であるか否かを判定する。したがって、動力機構制御装置30は、取得部301が測定値、及び当該測定値に対応する誤り検出符号を取得する場合においても、動力機構10に関する測定値の精度を向上できる。
【0047】
また、動力機構制御装置30は、過去の3つ以上の測定値に基づいて算出される近似関数によって推定値を推定する。したがって、動力機構制御装置30は、動力機構10の現在の状態が不明であっても、動力機構10に関する測定値の精度を向上できる。
【0048】
また、動力機構制御装置30は、測定値が2回以上連続して異常値である場合、動力機構10の動作を停止させる。したがって、動力機構制御装置30は、動力機構10の異常を判定し、動力機構10が異常である場合に動力機構10の動作を停止できる。
【0049】
<一連の処理の流れの他の例>
続いて、動力機構制御システム1において、センサ20が動力機構制御装置30に送信する測定信号が誤り検出符号を含まない場合における動力機構制御装置30の一連の処理の流れについて詳しく説明する。図7は、図1に示す動力機構制御装置30の一連の処理の流れを示すフローチャートの他の例である。また、以下の処理の順番及び内容は、適宜変更することができる。
【0050】
(ステップSP40)
動力機構制御装置30は、取得部301によって、センサ20から送信される測定信号から測定値を取得する。動力機構制御装置30は、取得部301が取得した測定値を暫定測定値として記憶部306に記憶する。また、動力機構制御装置30は、取得部301が取得した測定値を判定部302に送信する。そして、処理は、ステップSP42の処理に移行する。
【0051】
(ステップSP42)
動力機構制御装置30は、推定部303によって、測定値の推定値を推定する。具体的には、動力機構制御装置30は、推定部303によって、記憶部306から少なくとも3つ以上の過去の測定値を取得する。動力機構制御装置30は、推定部303によって、取得した3つ以上の過去の推定値に基づいて近似関数を算出する。さらに、動力機構制御装置30は、算出した近似関数によって、取得部301が取得した測定値の推定値を推定する。なお、推定部303は、例えば、最小二乗法を用いた回帰分析などを行うことによって近似関数を算出する。また、推定部303による推定値の推定の詳細については、測定信号が誤り検出符号を含む場合と同様であるため、その説明を省略する。そして、処理は、ステップSP44の処理に移行する。
【0052】
(ステップSP44)
動力機構制御装置30は、判定部302によって、取得部301が取得した測定値、及び推定部303によって推定された推定値の大きさを比較する。具体的には、動力機構制御装置30は、判定部302によって、測定値及び推定値の差を算出することによって、値同士の大きさを比較する。そして、処理は、ステップSP46の処理に移行する。
【0053】
(ステップSP46)
動力機構制御装置30は、判定部302によって、取得部301が取得した測定値が異常値であるか否かを判定する。具体的には、動力機構制御装置30は、判定部302によって、取得部301が取得した測定値及び推定部303が推定した推定値の差が所定値以上である場合に測定値が異常値であると判定し、当該差が所定値未満である場合に測定値が異常値でないと判定する。そして、当該判定が肯定判定である場合、処理はステップSP48の処理に移行し、当該判定が否定判定である場合、処理はステップSP54の処理に移行する。
【0054】
図8を参照しつつ、判定部302による測定値が異常値であるか否かの判定の方法について説明する。図8は、図1に示す動力機構制御装置30による測定値の判定及び推定値の算出の過程で算出される各種データの他の例を示す図表である。時刻5msでは、測定値が6.00であり、推定値が6.00であるため、判定部302は、測定値及び推定値の差を0.00と算出する。また、時刻5msにおける測定値及び推定値の差が所定値である50よりも小さいため、判定部302は、測定値が異常値でない(OK)と判定する。時刻6msでは、測定値が9985.00であり、推定値が6.20であるため、判定部302は、測定値及び推定値の差を9978.80と算出する。また、時刻6msにおける測定値及び推定値の差が所定値である50以上であるため、判定部302は、測定値が異常値である(NG)と判定する。
【0055】
(ステップSP48)
図7に戻って、動力機構制御装置30は、判定部302によって、記憶部306に記憶されている判定部302による過去の判定結果を参照し、取得部301が取得した測定値が少なくとも2回(好ましくは3回)以上連続して異常値でないか否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定である場合、処理はステップSP54の処理に移行し、当該判定が否定判定である場合、処理はステップSP50の処理に移行する。
【0056】
(ステップSP50)
動力機構制御装置30は、更新部304によって、2回以上連続して異常値である測定値を対応する暫定測定値に更新する。具体的には、動力機構制御装置30は、更新部304によって、記憶部306に記憶されており、連続して異常値と判定された時刻に対応する暫定測定値をそれぞれ取得する。動力機構制御装置30は、取得した暫定測定値を対応する時刻の測定値として記憶部306に記憶することによって、記憶部306に記憶されている測定値を更新する。そして、処理は、ステップSP52の処理に移行する。
【0057】
(ステップSP52)
動力機構制御装置30は、制御部305によって、動力機構10の動作を停止させるように制御する。そして、図7に示す一連の処理は、終了する。
【0058】
(ステップSP54)
動力機構制御装置30は、更新部304によって、推定部303が推定した推定値に取得部301が取得した測定値を更新する。また、動力機構制御装置30は、更新部304によって、更新した測定値を記憶部306に送信する。そして、処理は、ステップSP56の処理に移行する。
【0059】
(ステップSP56)
動力機構制御装置30は、記憶部306によって、測定値を記憶する。更新部304によって測定値が更新されている場合、記憶部306は、更新された測定値を記憶することとなる。また、更新部304によって測定値が更新されていない場合、記憶部306は、取得部301が取得した測定値を記憶することとなる。そして、図7に示す一連の処理は、終了する。
【0060】
<効果>
以上、本実施形態では、動力機構制御装置30は、動力機構10に関する測定値の推定値を算出し、測定値及び推定値の差が所定値以上であるか否かで測定値が異常値であるか否かを判定する。したがって、動力機構制御装置30は、測定値の異常を検出するための誤り検出符号などが測定値に対応付けられていない場合でも、動力機構10に関する測定値の精度を向上でき、さらに動力機構10を安定して稼働させ続けることができる。
【0061】
また、本実施形態では、動力機構制御装置30は、判定部302によって、取得部301が取得した測定値が異常値であり、かつ当該測定値が2回以上連続して異常値でないか否かを判定する。さらに、動力機構制御装置30は、更新部304によって、測定値が異常値でありかつ当該測定値が2回以上連続して異常値でないと判定部302が判定する場合、取得部301が取得した測定値を推定値に更新し、取得部301が取得した測定値が異常値でありかつ当該測定値が2回以上連続して異常値であると判定部302が判定する場合、2回以上連続して異常値である測定値を対応する暫定測定値に更新する。したがって、動力機構制御装置30は、測定値が2回以上連続して異常値である場合に、測定値を推定値に更新せずに暫定測定値に更新するため、動力機構10の動作に関する異常の検出の精度を向上しつつ、動力機構10に関する測定値の精度を向上でき、さらに動力機構10を安定して稼働させ続けることができる。
【0062】
<変形例>
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0063】
例えば、本実施形態では、動力機構制御装置30は、センサ20から送信される測定信号が誤り検出符号を含まない場合における測定値が異常値であるかの否か判定において、記憶部306に予め記憶されている所定値を用いるが、これに限られるものではない。動力機構制御装置30は、判定部302によって、所定数の過去の測定値に基づいて所定値を決定し、測定値が異常値であるかの否か判定において決定した所定値を用いても良い。なお、判定部302は、例えば、所定数の過去の測定値に所定係数を乗じることによって所定値を決定する。
【0064】
この構成によれば、動力機構制御装置30は、過去の測定値に基づいて所定値を決定し、決定した所定値によって測定値が異常値であるか否かを判定するため、動力機構10に関する測定値の精度をさらに向上できる。
【0065】
また、本実施形態では、動力機構制御装置30は、センサ20から送信される測定信号が誤り検出符号を含む場合、判定部302によって測定値が異常値であると判定された場合に、推定部303によって当該測定値の推定値を推定するがこれに限られるものではない。動力機構制御装置30は、センサ20から送信される測定信号が誤り検出符号を含む場合、判定部302による判定の結果に関わらず、当該判定の前、後又は同時に推定部303によって測定値の推定値を推定し、当該推定値を記憶部306に記憶しても良い。
【0066】
この構成によれば、動力機構制御装置30は、動力機構10に関する測定値、及び当該測定値の推定値を記憶するため、記憶した測定値及び推定値を推定部303の推定の精度のフィードバックなどに活用できる。
【0067】
また、本実施形態では、センサ20は、動力機構10おける作業ユニット12に設けられている力センサであるが、これに限られるものではない。センサ20は、動力機構10とは別の場所に設けられていても良い。センサ20は、例えば、センサ20と作業対象との間の距離を測定する距離センサであっても良い。また、センサ20は、例えば、多関節型アーム11における各関節分に設けられていて、対応する関節部の回動の角度を測定するエンコーダなどの角度センサであっても良い。さらに、センサ20は、動力機構10とは別の位置に設けられていてもよく、例えば、動力機構10を含む空間の画像を撮像する視覚センサであっても良い。
【0068】
この構成によれば、動力機構制御装置30は、距離センサが検出する距離や、角度センサが検出する角度、資格センサが検出する画像データに関する値などの測定値の精度をさらに向上できる。
【符号の説明】
【0069】
10…動力機構、30…動力機構制御装置、301…取得部、302…判定部、303…推定部、304…更新部、305…制御部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8