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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064395
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】コーティング装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/02 20060101AFI20240507BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240507BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240507BHJP
   B41F 23/08 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B05C1/02 102
B05C11/00
B05C11/10
B41F23/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172954
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】504025918
【氏名又は名称】株式会社ユウコス
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道井 博夫
(72)【発明者】
【氏名】宮本 茂雄
【テーマコード(参考)】
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
4F040AA02
4F040AB04
4F040AC01
4F040BA17
4F040BA26
4F040CB06
4F040CB14
4F040CB16
4F040CB19
4F040CB27
4F040CB34
4F040CB38
4F040DA02
4F040DA04
4F040DA12
4F040DA14
4F040DA17
4F040DB16
4F040DB18
4F040DB22
4F042AA02
4F042BA06
4F042BA08
4F042BA25
4F042CB20
4F042CC02
4F042CC07
4F042CC30
4F042DB41
4F042DF17
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】不所望な位置にコーティング剤を付着させず、かつワークの無駄を生じさせることなくシート状物の表面にコーティング剤を塗布することができるコーティング装置を提供する。
【解決手段】周面に溝2111が形成された円筒状の部材であって水平方向に回転軸を有する第1ローラ部材211と、該第1ローラ部材と平行に配置され、シート状物又は板状物であるワークを該第1ローラ部材との間に挟みこんで送出する第2ローラ部材221を有し、一方のローラ部材の周面が弾性を有するローラ対と、第1ローラ部材の周面に線状に当接する部材であって、該当接する位置から該第1ローラ部材の回転方向の手前側に位置する周面との間で下方に閉じた空間を形成する板状部材23と、前記空間に液状のコーティング剤を供給するコーティング剤供給部27とを備えるコーティング装置1。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に溝が形成された円筒状の部材であって水平方向に回転軸を有する第1ローラ部材と、該第1ローラ部材と平行に配置され、シート状物又は板状物であるワークを該第1ローラ部材との間に挟みこんで送出する第2ローラ部材を有し、一方のローラ部材の周面が弾性を有するローラ対と、
前記第1ローラ部材の周面に線状に当接する部材であって、該当接する位置から該第1ローラ部材の回転方向の手前側に位置する周面との間で下方に閉じた空間を形成する板状部材と、
前記空間に液状のコーティング剤を供給するコーティング剤供給部と
を備えることを特徴とするコーティング装置。
【請求項2】
さらに、
前記一方のローラ部材よりも径が大きく、剛性を有する材料から成り、該一方のローラ部材の両側方に設けられたローラ部であって、該一方のローラ部材と一体的に回転して他方のローラ部材の周面と当接する剛性ローラ部
を備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項3】
さらに、
前記一方のローラ部材及び前記他方のローラ部材の間の距離を変更する距離変更部
を備えることを特徴とする請求項2に記載のコーティング装置。
【請求項4】
さらに、
前記ワークの前端及び/又は後端の位置を検知するセンサ
を備え、
前記距離変更部が、前記センサによる検知結果に基づいて、予め決められた長さだけ前記ワークが進入するまでの間は前記第1ローラ部材と前記第2ローラ部材を離間させておき、その後、前記ワークの後端から予め決められた長さに達するまでの間は該第1ローラ部材と該第2ローラ部材で前記ワークを挟み込んで送出する
ことを特徴とする請求項3に記載のコーティング装置。
【請求項5】
さらに、
前記第1ローラ部材と前記板状部材が線状に当接する部分の両端に設けられた側壁部材
を備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項6】
前記側壁部材に貫通孔が形成されており、さらに、
該貫通孔の外側に該貫通孔から流出するコーティング剤を前記コーティング剤供給部へと送出する循環流路
ことを特徴とする請求項5に記載のコーティング装置。
【請求項7】
さらに、
前記第1ローラ部材と前記板状部材の当接部の両端部のそれぞれの下方に設けられ、かつ該第1ローラ部材の回転方向の前方において該第1ローラ部材と当接する漏れ掻き取り部
を備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物などのシート状物や板状物であるワークの表面にコーティング処理を施す装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物の印刷面を保護したり、該印刷面に光沢を出したりするために、紫外線硬化樹脂材料を主成分とするニス(UVニス)などのコーティング剤で印刷面を被覆する処理が行われている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、枚葉紙である印刷物の印刷面を以下のようにしてコーティング剤で被覆する装置が記載されている。まず、印刷面を上にした状態で印刷物を給紙コンベアに送出する。給紙コンベアの下流側には、該給紙コンベアから送出される印刷物を挟持して搬送する一対のローラ(搬送路の上側に位置する第1ローラと、搬送路の下側に位置する第2ローラ)が設けられている。また、第1ローラの横には液状のコーティング剤が収容された容器が配置されており、底部が該コーティング剤に浸漬された第3ローラが前記第1ローラと周面同士が当接するように配置されている。
【0004】
これら3つのローラを備えたロールコータにより、容器内で第3ローラの周面に付着したコーティング剤を第1ローラの周面へと移動させ、続いて該第1ローラと第2ローラで搬送される印刷物の印刷面に該第1ローラの周面を当接させてコーティング剤を塗布する。続いて、コーティング剤を塗布した印刷物を搬送コンベアに送出し、該搬送コンベアの上方から供給される、紫外光を透過する樹脂フィルムを印刷物のコーティング剤塗布面(印刷面)に重ね合わせて上下から加圧ローラで挟みこむ。これにより、樹脂フィルムが印刷物の印刷面に貼り付けられ、樹脂フィルムと印刷物の間に存在する空気(特に、コーティング剤の硬化を阻害する酸素ガス)が排出される。その後、紫外線照射装置により、樹脂フィルムが貼り付けられた印刷物に紫外線を照射してコーティング剤を硬化させ、最後に樹脂フィルムを剥す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-278847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のようなロールコータを用いる場合、コーティング剤の粘度等によって異なるものの、概ね20~25μm程度の厚さでコーティング剤が印刷面に塗布される。こうした厚さでコーティング剤が塗布されると、その後の搬送工程や樹脂フィルムの貼り付け工程で印刷面に塗布されたコーティング剤が印刷物と樹脂フィルムの間からはみ出て、搬送コンベアなどに付着する。搬送コンベアなどにコーティング剤が付着すると、それ以降に搬送コンペアに送出される印刷物の裏面などの不所望な位置にコーティング剤が付着してしまう。印刷面の周縁部に余白(非印刷領域)を設けてコーティング剤を塗布しないようにすれば、コーティング剤が搬送コンベアなどに付着するのを防止することができる。しかし、その場合には、樹脂フィルムを剥がした後に印刷物の余白部分をカットしなければならず、その分の工程が増えるとともに印刷用紙が無駄になる。
【0007】
ここでは典型的な一例として、印刷物の印刷面にコーティング剤を塗布する場合を説明したが、印刷物以外のシート状物や板状物であるワークの表面にコーティング剤を塗布する場合にも上記同様の問題があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、不所望な位置にコーティング剤を付着させず、かつワークの無駄を生じさせることなくワークの表面にコーティング剤を塗布することができるコーティング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係るコーティング装置は、
周面に溝が形成された円筒状の部材であって水平方向に回転軸を有する第1ローラ部材と、該第1ローラ部材と平行に配置され、シート状物又は板状物であるワークを該第1ローラ部材との間に挟みこんで送出する第2ローラ部材を有し、一方のローラ部材の周面が弾性を有するローラ対と、
前記第1ローラ部材の周面に線状に当接する部材であって、該当接する位置から該第1ローラ部材の回転方向の手前側に位置する周面との間で下方に閉じた空間を形成する板状部材と、
前記空間に液状のコーティング剤を供給するコーティング剤供給部と
を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るコーティング装置では、第1ローラ部材と第2ローラ部材によりシート状物又は板状物であるワークを挟み込んで送出する際に、該ワークの表面にコーティング剤を塗布する。第1ローラ部材の周面と板状部材は線状に当接しており、これらによって形成される、下方に閉じた空間にコーティング剤供給部から液状のコーティング剤を供給する。コーティング剤は、いったん第1ローラ部材の周面と該周面に形成された溝に付着し、続いて板状部材との当接部で溝の外に付着したコーティング剤の多くが掻きとられて溝の内部にコーティング剤が残留する。その後、第1ローラ部材と第2ローラ部材によってワークを挟み込むと、前記一方のローラ部材が弾性変形してワークが他方のローラ部材に押し当てられる。これにより、第1ローラ部材の周面の溝に残留したコーティング剤が、該溝から流出してワークのコーティング面に塗布される。コーティング剤が塗布されたワークには、例えば、その後、紫外光透過フィルムを貼り付けて紫外線を照射することによりコーティング剤を硬化させるなどの適宜の処理が行われる。
【0011】
本発明に係るコーティング装置では、第1ローラの周面全体ではなく、該周面に形成された溝の内部に残留させた少量のコーティング剤をワークの表面(コーティング面)に塗布する。従って、コーティング面には従来よりも薄くコーティング剤が塗布される。そのため、その後のワークの搬送等の工程でコーティング剤がワークからはみ出して搬送コンベアなどに付着することがない。また、ワークのコーティング面に余白を設ける必要がないため、追加の工程は不要でありワークの無駄も生じない。
【0012】
本発明に係るコーティング装置では、さらに、
前記一方のローラ部材よりも径が大きく、剛性を有する材料から成り、該一方のローラ部材の両側方に設けられたローラ部であって、該一方のローラ部材と一体的に回転して他方のローラ部材の周面と当接する剛性ローラ部
を備えることが好ましい。
【0013】
上記態様のコーティング装置は、上記一方のローラ部材よりも径が大きく剛性を有し、該一方のローラ部材と一体的に回転する剛性ローラ部を備えている。この態様のコーティング装置では、剛性ローラ部を他方のローラ部材と当接させる。これによりワークを挟んでいない状態では一方のローラ部材と他方のローラ部材を離間させて上記一方のローラ部材の周面にコーティング剤が付着するのを防止し、また、ワークを挟み込んだ状態では前記一方のローラ部材の弾性を有する周面を弾性変形させてワークを他方のローラ部材の周面に押しあて、溝の内部にあるコーティング剤をより確実にワークのコーティング面に塗布することができる。
【0014】
また、剛性ローラ部を備えた上記態様のコーティング装置では、さらに、
前記一方のローラ部材及び前記他方のローラ部材の間の距離を変更する距離変更部
を備えることが好ましい。
【0015】
上記距離変更部を備えた態様のコーティング装置では、ワークの厚さや硬さに応じて2つのローラ部材の間の距離を変更することができる。
【0016】
本発明に係るコーティング装置は、さらに、
前記第1ローラ部材と前記板状部材が線状に当接する部分の両端に設けられた側壁部材
を備えることが好ましい。
【0017】
側壁部材を備えた上記態様のコーティング装置では、第1ローラ部材と板状部材と側壁部材で囲まれた空間が形成され、その空間を、コーティング剤を供給する液溜まりとして使用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るコーティング装置を用いてワークのコーティング面をコーティング剤で被覆することにより、不所望な位置にコーティング剤を付着させず、かつワークの無駄を生じさせることなくワークの表面にコーティング剤を塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るコーティング装置の一実施形態の全体構成を示す斜視図。
図2】本実施形態におけるニス硬化部の構成を示す模式図。
図3】本実施形態におけるコート部の斜視図。
図4】本実施形態におけるコート部の上部ローラ部材と下部ローラ部材の近傍の構成を示す模式図。
図5】本実施形態におけるコート部の上部ローラ部材と下部ローラ部材の近傍の構成を示す正面図。
図6】本実施形態において溝ローラ部に設けられる溝の形状を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るコーティング装置の実施形態について、以下、図面を参照して説明する。本実施形態のコーティング装置1は、枚葉紙2の表面をUVニスでコーティングする処理を行う装置である。
【0021】
図1は、本実施形態のコーティング装置1の全体の斜視図である。コーティング装置1は、被処理物である枚葉紙2が搬送される上流側から順に、給紙部10、コート部20、副搬送部40、主搬送部50、及びニス硬化部60を備えている。各部はそれぞれユニット化されており、各ユニットを順に接続することによりコーティング装置1が構成される。また、これらの各部の動作を制御する制御部80を備えている。以下の説明では、便宜上、枚葉紙2の搬送方向を「前」、該方向に対して左右をそれぞれ「左」、「右」と呼ぶ。
【0022】
給紙部10は、その後段に位置するコート部20へと枚葉紙2を供給する。給紙部10は、集積部11と搬送機構12を備えている。集積部11には、予め、被処理面(コーティング面)が上になるように処理前の枚葉紙2が集積される。搬送機構12は、集積部11に集積された枚葉紙2を1枚ずつ取り込んでコート部20に供給する。
【0023】
コート部20は、給紙部10から供給される枚葉紙2の上面(被処理面)にUVニスを塗布する装置である。コート部20は、本発明に係るコーティング装置の一実施形態である。コート部20の構成は後述する。
【0024】
副搬送部40は、コート部20においてUVニスが塗布された枚葉紙2を、その後段に位置する主搬送部50に搬送する装置である。副搬送部40は、搬送台41と該搬送台41に巻回された穴あきのベルト42と、該ベルト42に設けられた穴から空気を吸引する吸引部(図示略)と、該ベルト42を回転させる駆動部(図示略)を備えている。
【0025】
主搬送部50は、副搬送部40から搬送される枚葉紙2をニス硬化部60に搬送する装置である。主搬送部50は、2つの搬送台51と、それぞれの搬送台51に巻回されたベルト52と、該ベルト52を回転させる駆動部(図示略)を備えている。
【0026】
ニス硬化部60は、主搬送部40から搬送される枚葉紙2に塗布されたUVニスを硬化させる装置である。図2に、ニス硬化部60(集積部66を除く)の構成を模式的に示す。図1及び図2に示すように、ニス硬化部60は、樹脂フィルム供給ローラ部材61、樹脂フィルム押し当て第1ローラ対62、樹脂フィルム押し当て第2ローラ部材63、樹脂フィルム回収ローラ部材64、UV光源65、及び集積部66を備えている。樹脂フィルム押し当て第1ローラ対62は、枚葉紙2の搬送路の上部に位置し、弾性を有する材料で構成された(例えばゴム製の)上部ローラ部材621と、該搬送路の下部に位置し、剛性を有する材料で構成された(例えばステンレス製の)下部ローラ部材622を有する加圧ローラである。
【0027】
樹脂フィルム供給ローラ部材61は、長尺の樹脂フィルムを巻回したものである。樹脂フィルム押し当て第1ローラ対62は、搬送路(図2において一点鎖線で示す経路)に沿って枚葉紙2を挟み込んで搬送する。樹脂フィルム押し当て第1ローラ対62によって枚葉紙2が挟み込まれる際に、樹脂フィルム供給ローラ部材61から供給される樹脂フィルムを枚葉紙2の上面に押し当てる。樹脂フィルム供給ローラ61はこれに従動して回転する。これにより、樹脂フィルムが枚葉紙2の上面に気密に貼り付けられ、樹脂フィルムと枚葉紙2の間に存在する空気(特に、コーティング剤の硬化を阻害する酸素ガス)が排出される。樹脂フィルム回収ローラ部材64は、UVニスを硬化させた後に、枚葉紙2から樹脂フィルムを巻き取って回収する。UV光源65は、樹脂フィルム押し当て第1ローラ対62と樹脂フィルム押し当て第2ローラ部材63の間の位置に設けられており、樹脂フィルムが気密に貼り付けられた枚葉紙2のUVニス塗布面に紫外光を照射する。樹脂フィルムには、紫外光を透過するものが用いられており、樹脂フィルムを透過してUVニスに紫外光が照射されることにより、枚葉紙2の表面に塗布されたUVニスが硬化する。樹脂フィルムが剥された後の枚葉紙2は、集積部66に送出されて集積される。ここでは樹脂フィルムを用いたが、光源65から照射される光を透過し、枚葉紙2の上面に気密に貼り付け可能なものであれば他のものを用いてもよい。
【0028】
制御部80は、記憶部81を備えている。記憶部81には、被処理物に関する情報(被処理物の種別(枚葉紙、シート等)、大きさ、厚さなど)、処理モードの情報(全面コーティング、余白ありコーティング)、UVニスの情報(粘度等)などが保存されている。また、制御部80は、機能ブロックとして、モード選択部82と、処理実行部83を備えている。制御部80は、例えば一般的なパーソナルコンピュータで構成することが可能であり、該コンピュータに予めインストールされた専用のソフトウェアをプロセッサで実行することにより上記の機能ブロックが具現化される。また、制御部80には、使用者が適宜に情報を入力するための入力部84(例えば、マウスやキーボード)と、各種の情報を表示するための表示部85(例えば、液晶ディスプレイ)が接続されている。
【0029】
次に、コート部20の構成を説明する。図3は、コート部20のユニットを前方(枚葉紙2が排出される側)から見た斜視図である。ただし、図3では、内部の構造を分かりやすく示すために、手前に位置する側壁やモータなど、いくつかの部材の図示を省略している。図4は、コート部20のうち、上部ローラ部材21及び下部ローラ部材22の近傍の構成の模式図である。図5は、上部ローラ部材21及び下部ローラ部材22の近傍の構成を模式的に示す正面図(枚葉紙の搬送路の前方から見た図)である。
【0030】
コート部20は、給紙部10から搬送される枚葉紙2の経路を挟んで上下に上部ローラ部材21と下部ローラ部材22を備えている。上部ローラ部材21は、周面の幅方向のうち、枚葉紙2にUVニスを塗布する幅に相当する幅を有し、周面に溝2111が形成された、剛性を有する材料から成る溝ローラ部211と、その両側部に配置され周面に実質的に溝がなく、剛性を有する材料から成る溝なしローラ部212で構成されている。言い換えれば、1本の剛性ローラ部材の周面のうち、枚葉紙2にUVニスを塗布する幅に相当する部分に溝2111を形成したもの(本発明における第1ローラ部材に相当)であり、例えばグラビアロッドを好適に用いることがる。上記剛性を有する材料として、例えばステンレス材を用いることができる。また、そうしたステンレス材に硬質クロムメッキなどの処理を施したものを用いることが好ましい。これにより周面をより硬質にして使用時の摩耗を抑えることができる。特に、溝ローラ部211については、摩耗により溝2111の容積が変化するのを抑制することができる。
【0031】
図6に実際の溝2111の形状を示す。図6に示すように、上部ローラ21の回転方向に対して傾いた方向に延びる多数の溝2111が設けられている。本実施形態のように溝ローラ部211と溝なしローラ部212の境界線に対して傾いた方向に延びる溝2111を形成すると、その境界付近に不完全な溝が形成されうる。そうした場合には、溝なしローラ部212に不完全な溝が存在し、溝ローラ部211には完全な溝2111が形成されるようにする。本実施例では一方向に延びる溝2111を形成した溝ローラ部211を使用するが、二方向に延びる(例えば格子状に設けられた)溝を形成したものなど、適宜の形状の溝を形成したものを用いることができる。
【0032】
下部ローラ部材22は、枚葉紙2にUVニスを塗布する幅に相当する幅を有し、少なくとも周面が弾力性を有する材料(ゴムなど)から成る弾性ローラ部221(本発明における第2ローラ部材に相当)と、その両側部に配置され剛性を有する材料(ステンレス鋼など)から成る剛性ローラ部222で構成されている。弾性ローラ部221の径は、剛性ローラ部222よりもわずかに小さい。弾性ローラ部221の半径と剛性ローラ部222の半径の差を、枚葉紙2の厚さよりも小さくすることにより、枚葉紙2を挟み込んでいない状態では溝ローラ部211の周面と弾性ローラ部221の周面を離間させてUVニスが弾性ローラ部2211の周面に付着するのを防ぎ、枚葉紙2が挟み込まれた状態では枚葉紙2を溝ローラ部211の周面に当接させて該枚葉紙2の表面にUVニスを塗布することができる。
【0033】
上部ローラ部材21と下部ローラ部材22はいずれも水平方向に回転軸を有している。上部ローラ部材21の回転軸はモータ213に接続されており、該モータ213を動作させて上部ローラ部材21を回転させる。また、下部ローラ部材22は、上部ローラ部材21とともに枚葉紙2を挟み込んで搬送するように構成されている。下部ローラ部材22は、上部ローラ部材21の回転と同期して回転するように構成されている。例えば、下部ローラ部材22の回転軸と上部ローラ21の回転軸をギア等で連結することによって上部ローラ部材21と下部ローラ部材22を連動させて回転させることができる。下部ローラ部材22はピストンロッド223(図3参照)によって上下動することが可能である。
【0034】
上部ローラ部材21の周面のうち、上部ローラ部材21の回転方向において下部ローラ部材22との当接部よりも手前の位置には、該上部ローラ部材21の周面と線状に当接する板状の部材であるドクターブレード23(本発明における板状部材に相当)が配置されている。また、上部ローラ部材21とドクターブレード23が線状に当接する部分の両端には上部ローラ部材21の周面とドクターブレード23の表面に挟まれた空間の側方を塞ぐように板状の側壁部材24が設けられている。上部ローラ部材21、ドクターブレード23、及び側壁部材24で囲まれた空間は、ニス溜まり25として用いられる。側壁部材24には貫通孔241が設けられており、ニス溜まり25に供給されるニスが貫通孔241の高さに達すると、UVニスが貫通孔241から流出する。これによって、過剰量のUVニスが供給された場合でも、ニス溜まり25からUVニスが溢れ出ることがない。さらに、貫通孔241の出口には後記するニス供給部27へとつながる循環流路242が設けられている。これによって、貫通孔241から流出したUVニスをニス供給部27に循環させて無駄なく使用することができる。
【0035】
ニス溜まり25の上方には、ニス供給部27が設けられている。ニス供給部27は、ニス注入口271と、ニス貯留部272と、該ニス貯留部272に一端が接続された蛇腹状のニス供給管273を有している。ニス注入口271は2つ設けられており、一方には液状のニスを供給するニス供給源が接続され、他方には環状流路242が接続される(図3ではいずれも図示略)。ニス供給管273の出口端からニス溜まり25へとUVニスが供給される。
【0036】
上部ローラ部材21の周面の、上部ローラ部材21と下部ローラ部材22の当接部と、上部ローラ部材21とドクターブレード23の当接部の間の位置には、該上部ローラ部材21の周面の幅方向の両端に、漏れニス掻き取りブレード28が配置されている。漏れニス掻き取りブレード28は、矩形板状の底面部材281と、該底面部材281のうち上部ローラ部材21と当接する短辺のうちの1つを除く3辺に立設された板状の側壁部材282で構成されている。また、底面部材281には孔283が形成されており、その孔283の下方にはニス溜めトレイ26が位置している。漏れニス掻き取りブレード28は、上部ローラ部材21と当接する部分から反対側に向かって下方に傾斜して配置されており、掻き取られたUVニスは底面部材281を伝って反対側へと流れ、該底面部材281に設けられた孔283からニス溜めトレイ26に落下する。従って、ニス溜まり25の両端部(側壁部材24の近傍)から下方にUVニスが漏れた場合でも、漏れニス掻きとりブレード28によってそのUVニスが掻き取られ、下部ローラ部材22などにUVニスが付着することが防止される。
【0037】
また、上部ローラ部材21と下部ローラ部材22を挟んで枚葉紙2の搬送経路の前方の側部には第1センサ291が設けられ、後方の側部には第2センサ292が設けられている。第1センサ291は枚葉紙2の前端を検知し、第2センサは枚葉紙2の後端を検知する。第1センサ291及び第2センサ292には、例えば光源と光検出器を組み合わせたもの(枚葉紙2によって光が遮られることにより枚葉紙2の通過を検出するもの)を用いることができる。
【0038】
次に、本実施形態のコーティング装置1により枚葉紙2の表面全体をUVニスでコーティングする処理の流れを説明する。なお、以下ではソフトウェア的に各部を制御する場合を一例として説明するが、以下の工程の一部又は全部を、ソフトウェア制御ではなく、使用者が自ら各部材の適否を確認したり、上部ローラ部材21と下部ローラ部材22の離間距離を手動で調整したりすることにより行ってもよい。
【0039】
枚葉紙2は、予め、被処理面を上にした状態で給紙部10の集積部11に集積される。
【0040】
使用者が入力部84を通じた所定の入力操作によって枚葉紙2のコーティング処理を指示すると、モード選択部82は表示部85に、枚葉紙2の種類を選択する画面を表示する。枚葉紙2の種類とは、例えば印刷物に使用される各種の規格である。使用者が枚葉紙2の種類を選択すると、モード選択部82は、選択された種類の枚葉紙の情報を記憶部81から読み出す。この情報には、枚葉紙2のサイズや厚さの情報が含まれる。あるいは、枚葉紙2の大きさや厚さの情報を数値で入力するようにしてもよい。
【0041】
続いて、モード選択部82は、選択された枚葉紙2に対するコーティング処理の範囲を選択する画面を表示部85に表示する。本実施形態では、コーティング処理の範囲として、全面コーティングと、余白ありコーティングを選択することができる。また、余白ありコーティングを選択する際には、四辺に設ける余白の大きさを設定することができる。
【0042】
使用者がコーティング処理の範囲を選択すると(ここでは全面コーティングを選択)、処理実行部83は、選択された枚葉紙2の種類及びコーティング処理の範囲の組み合わせに対応する上部ローラ部材21及び下部ローラ部材22の情報を記憶部81から読み出して表示部85に表示する。ここでは全面コーティングを選択しているため、枚葉紙2と同じ幅を有する溝ローラ部211及び弾性ローラ部221を持つ上部ローラ部材21及び下部ローラ部材22の情報が読み出される。この情報は、例えばローラの型番であってもよく、あるいは上部ローラ部材21の溝ローラ部211の幅や、下部ローラ部材22の剛性ローラ部222の径といったパラメータの値であってもよい。また、下部ローラ部材22の回転軸の高さの情報(例えば基準位置からの上下移動量)も併せて表示される。
【0043】
使用者は、表示部85に表示された情報が、この時点でコーティング装置1のコート部20に装着されている上部ローラ部材21と下部ローラ部材22のものと一致していることを確認し、両者が相違している場合には、表示された情報に合致したローラ部材と交換する。また、ピストンロッド223によって下部ローラ部材22の高さを調整する。
【0044】
適切に上部ローラ部材21及び下部ローラ部材22が取り付けられていることを確認した後、使用者が所定の入力操作を行うと、処理実行部83は以下のようにして枚葉紙2のコーティング処理を実行する。
【0045】
給紙部10では、集積部11に集積された枚葉紙2を、上から1枚ずつコート部20に送出する。コート部20では、ニス溜まり25に貯留されたUVニスが上部ローラ部材21の周面全体に付着する。続いて、ドクターブレード23によって、上部ローラ部材21の周面からUVニスが除去され、溝ローラ部211の周面に形成された溝2111の内部に入り込んだUVニスのみが残留する。上部ローラ部材21と下部ローラ部材22は、給紙部10から送出される枚葉紙2を挟みこんで前方に送出する。このとき、剛性を有する材料から成る上部ローラ部材21と下部ローラ部材22の両端に位置する剛性ローラ部222は変形せず当接する。一方、弾性ローラ部221は、上部ローラ部材21との当接時に圧縮されて弾性変形する。これによって枚葉紙2が上部ローラ部材21に押し当てられ、UVニスが溝ローラ部211の溝2111から流出して枚葉紙2の上面に付着する。
【0046】
コート部20から送出された枚葉紙2は、その後、副搬送部40及び主搬送部50によって順に搬送されてニス硬化部60に進入する。ニス硬化部60では、上記の通り、樹脂フィルム押し当て第1ローラ対62(上部ローラ部材621と下部ローラ部材622)によって枚葉紙2を挟み込んで搬送するとともに、樹脂フィルム供給ローラ部材61から供給される樹脂フィルムを枚葉紙2の上面に押し当てて、樹脂フィルムを枚葉紙2のUVニス塗布面に気密に貼り付ける。これによってUVニス塗布面から空気(特に酸素)が除去されるとともに、該塗布面に塗布されたUVニスが表面全体に均一に広げられる。続いて、UV光源65から紫外光が照射されることによりUVニスが硬化する。その後、UVニス塗布面に貼り付けられた樹脂フィルムが樹脂フィルム回収ローラ部材64に回収され、UVニスコーティング後の枚葉紙2は集積部66に送出される。
【0047】
従来のコーティング装置では、1つのローラ(第3ローラ)の周面にUVニスを付着させた後、それを別の1つのローラ(第1ローラ)の周面に移動させ、残りの1つのローラ(第2ローラ)とともに枚葉紙を挟みこんで送出することによりUVニスを塗布していた。この場合、第1ローラの周面に付着した厚さのUVニスがそのまま枚葉紙に塗布されることになる。また、第1ローラの周面に付着するUVニスの厚さは、第1ローラと第3ローラの離間間隔によって決まる。そのため、例えば4μmという薄さで枚葉紙の表面にUVニスを塗布するには2つのローラの離間間隔を4μmにする必要があるが、そのような精度で2つのローラを配置することは極めて困難である。そのため、従来のコーティング装置では20~25μm程度の厚さでUVニスが塗布されていた。こうした厚さでコーティング剤が塗布されると、その後の搬送工程や樹脂フィルムの貼り付け工程で印刷面に塗布されたコーティング剤が印刷物と樹脂フィルムの間からはみ出て、搬送コンベアなどに付着し、それがコーティング装置の各所に移動して印刷物の裏面などの不所望な位置に付着してしまうという問題があった。枚葉紙の周縁部に余白(非印刷領域)を設けてUVニスを塗布しないようにすればこの問題は解消できるものの樹脂フィルムを剥がした後に印刷物の余白部分をカットしなければならず、その分の工程が増えるとともに印刷用紙が無駄になるという問題があった。
【0048】
これに対し、本実施形態のコーティング装置1では、上部ローラ部材21の周面とドクターブレード23が線状に当接しており、これらによって形成される下方に閉じた空間であるニス溜まり25にニス供給部27から液状のUVニスを供給する。このUVニスは、いったん上部ローラ部材21全体の周面と、溝ローラ部211の周面に形成された溝2111に付着し、続いてドクターブレード23との当接部で溝2111の外に付着したUVニスの多くが掻きとられて溝2111の内部にコーティング剤が残留する。その後、上部ローラ部材21と下部ローラ部材22によって枚葉紙2を挟み込むと、弾性ローラ部221が弾性変形して枚葉紙2を溝ローラ部211に押し当てる。これにより、溝ローラ部211の周面の溝2111に残留したUVニスが、該溝2111から流出して枚葉紙2の表面に塗布される。このように、本実施形態のコーティング装置1では、溝ローラ部211に形成された溝2111の内部にUVニスを収容して枚葉紙2に塗布する。即ち、枚葉紙2に塗布されるUVニスの量は溝2111の容積で決まるため、例えば4μmという薄さで枚葉紙の表面にUVニスを塗布する場合でも、弾性ローラ部221を溝ローラ部211に押し当てさえすればよく、ローラ部材を高精度で配置する必要はない。
【0049】
本発明に係るコーティング装置では、上部ローラ部材21の周面全体ではなく、溝ローラ部211周面に形成された溝2111の内部に残留させた少量のUVニスを枚葉紙2の表面に塗布する。そして、ニス硬化部60において該表面に樹脂フィルムを気密に貼り付けることによりUVニスを枚葉紙2の表面全体に薄く均一に拡げる。本実施形態のコーティング装置1では、コーティング剤が枚葉紙2からはみ出すことがない。また、枚葉紙2に余白を設ける必要がないため、追加の工程は不要であり枚葉紙2の無駄も生じない。
【0050】
上記の例は、枚葉紙2の表面全体にUVニスのコーティング処理を施すものであるが、意図的に余白を設けたり、敢えてコーティング剤を厚く塗布したりする場合には、枚葉紙2の四辺に余白を設けてUVニスをコーティングすることもできる。その場合の処理を以下に説明する。
【0051】
上記の例と同様に、使用者は、枚葉紙2の種類とコーティング処理の範囲(余白あり)を選択し、続いて余白の大きさを設定する。
【0052】
使用者がコーティング処理の範囲を選択すると、処理実行部83は、選択された枚葉紙の種類及びコーティング処理の範囲に対応する上部ローラ部材21及び下部ローラ部材22の情報を記憶部81から読み出して表示部85に表示する。ここでは余白ありのコーティングを選択しているため、枚葉紙2の幅から余白分を差し引いた幅を有する溝ローラ部211及び弾性ローラ部221を持つ上部ローラ部材21及び下部ローラ部材22の情報が読みだされる。また、下部ローラ部材22の回転軸の高さの情報(例えば基準位置からの上下移動量)も併せて表示される。
【0053】
使用者は、表示部85に表示された情報が、この時点でコーティング装置1のコート部20に装着されている上部ローラ部材21と下部ローラ部材22のものと一致していることを確認し、両者が相違している場合には、表示された情報に合致したローラ部材と交換し、また、下部ローラ部材22の高さを調整する。
【0054】
適切に上部ローラ部材21及び下部ローラ部材22が取り付けられていることを確認した後、使用者が所定の入力操作を行うと、処理実行部83は以下のようにして枚葉紙2のUVニスコーティング処理を実行する。
【0055】
給紙部10では、集積部11に集積された枚葉紙2を、上から1枚ずつ、順にコート部20に送出する。コート部20では、処理実行部83による制御の下で、処理開始時には下部ローラ部材22を下方に移動させて上部ローラ部材21との間に空間を形成しておく。その後、第1センサ291によって枚葉紙2の前端が検知されると、給紙部10から送出された枚葉紙2の前方に設けられる余白に相当する長さだけ、上部ローラ部材21及び下部ローラ部材22よりも前方に枚葉紙2が進入したと判断し、下部ローラ部材22を上方に移動させて上部ローラ部材21とともに枚葉紙2を挟み込む。これにより、前方に余白部分を設けた状態でUVニスの塗布が開始される。その後、第2センサ291によって枚葉紙2の後端が検知されると、枚葉紙2の後方に設けられる余白部分との境界に達するまで枚葉紙2にUVニスが塗布されたと判断し、再び下部ローラ部材22を下方に移動させて上部ローラ部材21との間に空間を形成する。なお、第1センサ291及び第2センサ292の、搬送方向における位置(即ち枚葉紙2の前端及び後端の検出位置)は、枚葉紙2に形成する余白の大きさに応じて適宜に変更すればよい。
【0056】
副搬送部40では、ベルト42に設けられた穴から吸気する。これによって、UVニスが塗布された枚葉紙2がベルト42に引き寄せられ、該ベルト42の移動によって前方に搬送される。主搬送部50及びニス硬化部60における処理は全面コーティングする際と同じであるため説明を省略する。
【0057】
本例のように余白を設けるために上部ローラ部材21と下部ローラ部材22の間に空間を設けると両ローラ部材による枚葉紙2の挟持が解除される。そのため、UVニスの粘性が高いと上部ローラ部材21の回転とともに、UVニスを塗布した後の枚葉紙2が上方に巻きとられてしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、副搬送部40による吸気によって枚葉紙2を上部ローラ部材21の周面から剥して副搬送部40に引き寄せる。これによって余白を設ける場合でもUVニスを塗布した枚葉紙2を適切に搬送することができる。
【0058】
上記の実施形態は好ましい一構成例であって、本発明の趣旨に沿って適宜に変更することができる。
【0059】
上記実施形態は枚葉紙2の表面にUVニスをコーティングするものとしたが、枚葉紙に限らず、シート状の紙や、紙以外のシート状物の表面にコーティング処理を施すこともできる。また、シート状物に限らず板状物の表面にもコーティング処理を施すことができる。また、UVニス以外の液状のコーティング剤を用いたコーティング処理を行うこともできる。
【0060】
上記実施形態では、全体コーティングと余白ありコーティングの両方を実行可能な構成としたが、いずれか一方のみを行うものとしてもよく、全体コーティングのみを行う場合には、副搬送部40を使用せず、コート部20に主搬送部50を接続してもよい。また、副搬送部40を使用して全体コーティングを行う場合に、副搬送部40のベルト42に設けられた穴から吸気しても良い。
【0061】
上記実施形態では、剛性を有する材料から成る溝ローラ部211と弾性を有する材料から成る弾性ローラ部221を当接させて、枚葉紙2を溝ローラ部211に押し当てる構成とした。溝2111の容積を一定にし、枚葉紙2に塗布するUVニスの量を制御することができるため、剛性を有する材料から成る溝ローラ部211を用いることが好ましいが、弾性を有する材料から成る溝ローラ部を、剛性を有する材料から成るローラ部に当接させてもよい。あるいは、弾性を有する材料から成る溝ローラ部に弾性を有するローラ部に当接させて両者を弾性変形するようにしてもよい。
【0062】
上記実施形態では、UVニスを塗布するコーティング面を上にして給紙部10から枚葉紙2を送出したが、コーティング面の向きは適宜に変更可能である。例えば、コーティング面を下にする場合でも、ドクターブレードを上部ローラ部材の周面に線状に当接させ、該当接する位置から該上部ローラ部材の回転方向の手前側に位置する周面との間で下方に閉じた空間を形成するように構成すればよい。なお、下面にコーティング剤を塗布する場合には、該塗布後のワークを上下反転させる構成を追加することにより上記実施形態と同様に、ワークを下方から支持して搬送する主搬送部及び副搬送部を用いることができる。あるいは、コーティング面を下方にしたまま、上面を吸気により保持して搬送する搬送機構を用いてもよい。
【0063】
[態様]
上述した例示的な実施形態が以下の態様の具体例であることは、当業者には明らかである。
【0064】
(第1項)
本発明の一態様に係るコーティング装置は、
周面に溝が形成された円筒状の部材であって水平方向に回転軸を有する第1ローラ部材と、該第1ローラ部材と平行に配置され、シート状物又は板状物であるワークを該第1ローラ部材との間に挟みこんで送出する第2ローラ部材を有し、一方のローラ部材の周面が弾性を有するローラ対と、
前記第1ローラ部材の周面に線状に当接する部材であって、該当接する位置から該第1ローラ部材の回転方向の手前側に位置する周面との間で下方に閉じた空間を形成する板状部材と、
前記空間に液状のコーティング剤を供給するコーティング剤供給部と
を備える。
【0065】
第1項に係るコーティング装置では、第1ローラの周面全体ではなく、該周面に形成された溝の内部に残留させた少量のコーティング剤を、シート状物又は板状物であるワークに塗布する。従って、コーティング面には従来よりも薄くコーティング剤が塗布される。そのため、その後のワークの搬送等の工程でコーティング剤がワークからはみ出して搬送コンベアなどに付着することがない。また、ワークに余白を設ける必要がないため、追加の工程は不要でありワークの無駄も生じない。
【0066】
(第2項)
第2項に係るコーティング装置は、第1項に係るコーティング装置において、さらに、 前記一方のローラ部材よりも径が大きく、剛性を有する材料から成り、該一方のローラ部材の両側方に設けられたローラ部であって、該一方のローラ部材と一体的に回転して他方のローラ部材の周面と当接する剛性ローラ部
を備える。
【0067】
第2項に係るコーティング装置は、上記一方のローラ部材よりも径が大きく剛性を有し、該一方のローラ部材と一体的に回転する剛性ローラ部を備えている。この態様のコーティング装置では、剛性ローラ部を他方のローラ部材と当接させる。これによりワークを挟んでいない状態では2つのローラ部材を離間させて上記一方のローラ部材の周面にコーティング剤が付着するのを防止し、また、ワークを挟み込んだ状態では前記一方のローラ部材の弾性を有する周面を弾性変形させてワークを他方のローラ部材の周面に押しあて、溝の内部にあるコーティング剤をより確実にワークのコーティング面に塗布することができる。
【0068】
(第3項)
第3項に係るコーティング装置は、第2項に係るコーティング装置において、さらに、
前記一方のローラ部材及び前記他方のローラ部材の間の距離を変更する距離変更部
を備える。
【0069】
第3項に係るコーティング装置では、ワークの厚さや硬さに応じて、異なる径を有する剛性ローラ部を交換して使用する場合に、該剛性ローラ部が他方のローラ部材と当接するように2つのローラ部材の間の距離を変更することができる。
【0070】
(第4項)
第4項に係るコーティング装置は、第3項に係るコーティング装置において、さらに、
前記ワークの前端及び/又は後端の位置を検知するセンサ
を備え、
前記距離変更部が、前記センサによる検知結果に基づいて、予め決められた長さだけ前記ワークが進入するまでの間は前記第1ローラ部材と前記第2ローラ部材を離間させておき、その後、前記ワークの後端から予め決められた長さに達するまでの間は該第1ローラ部材と該第2ローラ部材でワークを挟み込んで送出する。
【0071】
第4項に係るコーティング装置では、余白を設けてコーティング処理を施すことができる。
【0072】
(第5項)
第5項に係るコーティング装置は、第1項から第4項のいずれかに係るコーティング装置において、さらに、
前記第1ローラ部材と前記板状部材が線状に当接する部分の両端に設けられた側壁部材
を備える。
【0073】
第5項に係るコーティング装置では、第1ローラ部材と板状部材と側壁部材で囲まれた空間が形成され、その空間を、コーティング剤を供給する液溜まりとして使用することができる。
【0074】
(第6項)
第6項に係るコーティング装置は、第5項に係るコーティング装置において、
前記側壁部材に貫通孔が形成されており、さらに、
該貫通孔の外側に該貫通孔から流出するコーティング剤を前記コーティング剤供給部へと送出する循環流路
を備える。
【0075】
第6項に係るコーティング装置では、第1ローラ部材と板状部材と側壁部材で囲まれた空間を液溜まりとして使用する際に、コーティング液が過剰に供給された場合でも、該液溜の外にコーティング剤を排出することによって、第2ローラ部材などにコーティング剤が付着するのを防止することができる。また、循環流路によって排出されたコーティング剤をコーティング剤供給部へと循環させることにより、コーティング剤を無駄なく使用することができる。
【0076】
(第7項)
第7項に係るコーティング装置は、第1項から第5項のいずれかに係るコーティング装置において、さらに、
前記第1ローラ部材と前記板状部材の当接部の両端部のそれぞれの下方に設けられ、かつ該第1ローラ部材の回転方向の前方において該第1ローラ部材と当接する漏れ掻き取り部
を備える。
【0077】
第7項に係るコーティング装置では、第1ローラ部材と板状部材の当接部の両端からコーティング剤が漏れ出た場合でも、それを掻き取って他の箇所にコーティング剤が付着するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0078】
1…コーティング装置
10…給紙部
11…集積部
12…搬送機構
2…枚葉紙
20…コート部
21…上部ローラ部材
211…溝ローラ部
2111…溝
212…ローラ部
213…モータ
22…下部ローラ部材
221…弾性ローラ部
222…剛性ローラ部
223…ピストンロッド
23…ドクターブレード
24…側壁部材
241…貫通孔
242…循環流路
25…ニス溜まり
26…ニス溜めトレイ
27…ニス供給部
271…ニス注入口
272…ニス貯留部
273…ニス供給管
28…漏れニス掻き取りブレード
281…底面部材
282…側壁部材
283…孔
291…第1センサ
292…第2センサ
40…主搬送部
40…副搬送部
41…搬送台
42…ベルト
50…主搬送部
51…搬送台
52…ベルト
60…ニス硬化部
61…樹脂フィルム供給ローラ部材
62…樹脂フィルム押し当て第1ローラ対
621…上部ローラ
622…下部ローラ
63…樹脂フィルム押し当て第2ローラ部材
64…樹脂フィルム回収ローラ部材
65…UV光源
66…集積部
80…制御部
81…記憶部
82…モード選択部
83…処理実行部
84…入力部
85…表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6