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特開2024-64399酸素供給装置、小動物用ケージ内の酸素濃度及び/又は二酸化炭素濃度を制御する方法、並びに小動物用ケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064399
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】酸素供給装置、小動物用ケージ内の酸素濃度及び/又は二酸化炭素濃度を制御する方法、並びに小動物用ケージ
(51)【国際特許分類】
   A61D 7/04 20060101AFI20240507BHJP
   A61M 16/10 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A61D7/04
A61M16/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172963
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】青木 宥里
(57)【要約】
【課題】適切な換気を行うことができる酸素供給装置の提供である。
【解決手段】(1)小動物用ケージと、(2)酸素濃縮器と、を含む、酸素供給装置であって、(1)前記小動物用ケージは、前記小動物が収容されるケージ本体と、前記ケージ本体と、前記酸素濃縮器とを接続する酸素濃縮器接続部と、前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体に外気を送風する外気送風部と、前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体の内外を連通する通孔部と、を有し、(2)前記酸素濃縮器は、前記ケージ本体に40%濃度~95%濃度の酸素を供給する、前記酸素供給装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)小動物用ケージと、(2)酸素濃縮器と、を含む、酸素供給装置であって、
(1)前記小動物用ケージは、
前記小動物が収容されるケージ本体と、
前記ケージ本体と、前記酸素濃縮器とを接続する酸素濃縮器接続部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体に外気を送風する外気送風部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体の内外を連通する通孔部と、
を有し、
(2)前記酸素濃縮器は、
前記ケージ本体に40%濃度~95%濃度の酸素を供給する、
前記酸素供給装置。
【請求項2】
前記外気送風部が、外気を7リットル/分~30リットル/分で前記ケージ本体に供給する、請求項1に記載の酸素供給装置。
【請求項3】
前記外気送風部が、外気を7リットル/分~15リットル/分で前記ケージ本体に供給する、請求項1に記載の酸素供給装置。
【請求項4】
前記酸素濃縮器が、40%濃度~95%濃度の酸素を0.5リットル/分~7リットル/分で前記ケージ本体に供給する、請求項1~3のいずれか一項に記載の酸素供給装置。
【請求項5】
前記酸素濃縮器が、75%濃度~95%濃度の酸素を1.5リットル/分~5.5リットル/分で前記ケージ本体に供給する、請求項1~3のいずれか一項に記載の酸素供給装置。
【請求項6】
(1)小動物用ケージと、(2)酸素濃縮器と、を含む、酸素供給装置であって、
(1)前記小動物用ケージは、
前記小動物が収容されるケージ本体と、
前記ケージ本体と、前記酸素濃縮器とを接続する酸素濃縮器接続部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体に外気を11リットル/分~13リットル/分で供給する外気送風部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体の内外を連通する通孔部と、
を有し、
(2)前記酸素濃縮器は、
前記ケージ本体に85%濃度~95%濃度の酸素を2リットル/分~4リットル/分で供給する、
前記酸素供給装置。
【請求項7】
小動物用ケージ内の酸素濃度及び/又は二酸化炭素濃度を制御する方法であって、
(工程1)酸素濃縮器から、85%濃度~95%濃度の酸素を2リットル/分~4リットル/分で、前記小動物用ケージにおいて前記小動物が収容されるケージ本体に供給する工程と、
(工程2)前記ケージ本体の換気を行うための、前記本体に外気を供給する外気送風部から、外気を11リットル/分~13リットル/分で前記ケージ本体に供給する工程と、
を含み、前記小動物が収容された前記ケージ内の酸素濃度を30%~40%濃度、且つ二酸化炭素濃度を0.5%以下に維持するよう制御する、前記方法。
【請求項8】
小動物用ケージであって、
前記小動物が収容されるケージ本体と、
前記ケージ本体と、前記ケージ本体に酸素を供給する酸素濃縮器とを接続する酸素濃縮器接続部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体に外気を供給する外気送風部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体の内外を連通する通孔部と、
を有する、
前記小動物用ケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬、猫等の小動物に酸素を供給するための酸素供給装置、小動物用ケージ内の酸素濃度及び/又は二酸化炭素濃度を制御する方法、並びに小動物用ケージに関する。
【背景技術】
【0002】
在宅酸素療法(HOT:Home Oxygen Therapy)とは、血液中の酸素が不足した患者が、病院等の医療機関以外の自宅等において、酸素濃縮器、酸素ボンベ等の酸素供給装置から酸素吸入する治療法のことであり、これまでは主にヒトを対象として実施されてきた。
【0003】
近年、その対象は拡大しており、ヒトのみならず、呼吸器疾患等に罹患している犬、猫等の小動物に対しても、酸素濃縮器、酸素ボンベ等の酸素供給装置を用いたHOTが実施されてきている。この普及により、小動物のクオリティ・オブ・ライフの向上をもたらすと共に、飼い主や獣医師、動物看護師にとっても多大な恩恵をもたらしている(非特許文献1、特許文献1)。例えば、特許文献1等においては、小動物用にカスタマイズされた酸素濃縮器(即ち、比較的低濃度の酸素を高流量で供給する酸素濃縮器)を含む、酸素供給装置が開示されている。
【0004】
一方、ヒトに対して使用される酸素濃縮器については、一般的に、製品寿命よりも短い耐用年数を定めており、耐用年数を過ぎた機器については、その性能に拘らず廃棄しているのが現状である。そのため、耐用年数を過ぎた機器であっても、その性能に問題がなければ、例えば、小動物用として再利用することができ、この場合、環境の面からも非常に好ましい状況が生まれることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5130307号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】城下幸仁著「在宅酸素療法に導くためには」infoVets No.147 2010.9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的にヒトに対して使用される酸素濃縮器等の酸素供給装置を、小動物に対してそのまま使用すると、小動物を収容するケージ内の換気が適切に行われないため、当該小動物の呼気による二酸化炭素(炭酸ガス)が蓄積してしまう、という問題を有している。このように、ケージ内に二酸化炭素が蓄積してしまうと、小動物の身体に悪影響を与えてしまう。これは、ヒト用の酸素濃縮器等の供給装置は、高濃度の酸素を低流量で供給する形態であることに起因する。そのため、ヒトに対して使用される酸素濃縮器等の酸素供給装置を、小動物に対してそのまま使用したとしても、小動物を収容するケージ内が適切に換気されるような換気構造が当該ケージに求められている。
【0008】
本発明は、上記問題を解消するためのものである。
従って、本発明の課題は、小動物用ケージ内の適切な換気を行うことができる、酸素供給装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決する目的でなされたものであり、以下の構成よりなる。
[1]
(1)小動物用ケージと、(2)酸素濃縮器と、を含む、酸素供給装置であって、
(1)前記小動物用ケージは、
前記小動物が収容されるケージ本体と、
前記ケージ本体と、前記酸素濃縮器とを接続する酸素濃縮器接続部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体に外気を供給する外気供給部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体の内外を連通する通孔部と、
を有し、
(2)前記酸素濃縮器は、
前記ケージ本体に40%濃度~95%濃度の酸素を供給する、
前記酸素供給装置。
[2]
前記外気供給部が、外気を7リットル/分~30リットル/分で前記ケージ本体に供給する、[1]に記載の酸素供給装置。
[3]
前記外気供給部が、外気を7リットル/分~15リットル/分で前記ケージ本体に供給する、[1]に記載の酸素供給装置。
[4]
前記酸素濃縮器が、40%濃度~95%濃度の酸素を0.5リットル/分~7リットル/分で前記ケージ本体に供給する、[1]~[3]のいずれか一に記載の酸素供給装置。
[5]
前記酸素濃縮器が、75%濃度~95%濃度の酸素を1.5リットル/分~5.5リットル/分で前記ケージ本体に供給する、[1]~[3]のいずれか一に記載の酸素供給装置。
[6]
(1)小動物用ケージと、(2)酸素濃縮器と、を含む、酸素供給装置であって、
(1)前記小動物用ケージは、
前記小動物が収容されるケージ本体と、
前記ケージ本体と、前記酸素濃縮器とを接続する酸素濃縮器接続部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体に外気を11リットル/分~13リットル/分で供給する外気供給部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体の内外を連通する通孔部と、
を有し、
(2)前記酸素濃縮器は、
前記ケージ本体に85%濃度~95%濃度の酸素を2リットル/分~4リットル/分で供給する、
前記酸素供給装置。
[7]
小動物用ケージ内の酸素濃度及び/又は二酸化炭素濃度を制御する方法であって、
(工程1)酸素濃縮器から、85%濃度~95%濃度の酸素を2リットル/分~4リットル/分で、前記小動物用ケージにおいて前記小動物が収容されるケージ本体に供給する工程と、
(工程2)前記ケージ本体の換気を行うための、前記本体に外気を供給する外気送風部から、外気を11リットル/分~13リットル/分で前記ケージ本体に供給する工程と、
を含み、前記小動物が収容された前記ケージ内の酸素濃度を30%~40%濃度、且つ二酸化炭素濃度を0.5%以下に維持するよう制御する、前記方法。
[8]
小動物用ケージであって、
前記小動物が収容されるケージ本体と、
前記ケージ本体と、前記ケージ本体に酸素を供給する酸素濃縮器とを接続する酸素濃縮器接続部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体に外気を供給する外気供給部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体の内外を連通する通孔部と、
を有し、
ここで、前記酸素濃縮器により供給される酸素濃度が40%濃度~95%濃度である、
前記小動物用ケージ。
更に、本発明は、以下の構成をとってもよい。
[9]
(1)小動物用ケージと、(2)酸素濃縮器と、を含む、酸素供給装置であって、
(1)前記小動物用ケージは、
前記小動物が収容されるケージ本体であって、前記ケージ本体の容積が100L~350Lである前記ケージ本体と、
前記ケージ本体と、前記酸素濃縮器とを接続する酸素濃縮器接続部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体に外気を11リットル/分~13リットル/分で供給する外気供給部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体の内外を連通する通孔部と、
を有し、
(2)前記酸素濃縮器は、
前記ケージ本体に85%濃度~95%濃度の酸素を2リットル/分~4リットル/分で供給する、
前記酸素供給装置。
[10]
(1)小動物用ケージと、(2)酸素濃縮器と、を含む、酸素供給装置であって、
(1)前記小動物用ケージは、
前記小動物が収容されるケージ本体であって、前記ケージ本体の容積が123L~324Lである前記ケージ本体と、
前記ケージ本体と、前記酸素濃縮器とを接続する酸素濃縮器接続部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体に外気を11リットル/分~13リットル/分で供給する外気供給部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体の内外を連通する通孔部と、
を有し、
(2)前記酸素濃縮器は、
前記ケージ本体に85%濃度~95%濃度の酸素を2リットル/分~4リットル/分で供給する、
前記酸素供給装置。
[11]
(1)小動物用ケージと、(2)酸素濃縮器と、を含む、酸素供給装置であって、
(1)前記小動物用ケージは、
前記小動物が収容されるケージ本体であって、前記ケージ本体の容積が123L又は324Lである前記ケージ本体と、
前記ケージ本体と、前記酸素濃縮器とを接続する酸素濃縮器接続部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体に外気を11リットル/分~13リットル/分で供給する外気供給部と、
前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体の内外を連通する通孔部と、
を有し、
(2)前記酸素濃縮器は、
前記ケージ本体に85%濃度~95%濃度の酸素を2リットル/分~4リットル/分で供給する、
前記酸素供給装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小動物用ケージ内の適切な換気を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の酸素供給装置を示す図である。
図2】本発明の酸素供給装置を示す図である。
図3】本発明の酸素供給装置を示す図である。
図4】実施例1により得られた、酸素濃度の推移を示す図である。
図5】実施例1により得られた、二酸化炭素濃度の推移を示す図である。
図6】実施例2により得られた、酸素濃度の推移を示す図である。
図7】実施例2により得られた、二酸化炭素濃度の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<酸素供給装置>
本発明の酸素供給装置は、(1)小動物用ケージと、(2)酸素濃縮器と、を含む、酸素供給装置であって、(1)前記小動物用ケージは、前記小動物が収容されるケージ本体と、前記ケージ本体と、前記酸素濃縮器とを接続する酸素濃縮器接続部と、前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体に外気を送風する外気送風部と、前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体の内外を連通する通孔部と、を有し、(2)前記酸素濃縮器は、
前記ケージ本体に40%濃度~95%濃度の酸素を供給することを特徴とするものである。
【0013】
[小動物用ケージ]
本発明の小動物用ケージは、小動物が収容されるケージ本体(以下、本発明にかかるケージ本体と略記する場合がある)と、前記ケージ本体と、酸素濃縮器とを接続する酸素濃縮器接続部(以下、本発明にかかる接続部と略記する場合がある)と、前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体に外気を送風する外気送風部(以下、本発明にかかる外気送付部と略記する場合がある)と、前記ケージ本体の換気を行うための、前記ケージ本体の内外を連通する通孔部(以下、本発明にかかる通孔部と略記する場合がある)と、を有するものである。
以下、本発明の小動物用ケージについて、図(図1~3)も参照にしつつ、説明する。
尚、本発明の小動物用ケージは、図(図1~3)の形態に限定されるものではない。
【0014】
[小動物]
本発明にかかる小動物は、本発明の酸素供給装置によって酸素が供給される対象の動物のことを意味しており、所謂、愛玩動物やペットと称される動物のことを指す。具体的には、例えば、犬、猫、フェレット、ウサギ、ハムスター、マウス、モルモット、ラット、リス、ヤマアラシ、ヤマネ、インコ、ハト等が挙げられ、犬又は猫が好ましい。
【0015】
また、本発明にかかる小動物については、健常状態であっても、循環器疾患、呼吸器疾患、代謝性疾患等の疾患に罹患している状態であってもよい。上記循環器疾患としては、具体的には、例えば、高血圧、心疾患、脳血管疾患、動脈瘤等が挙げられる。上記呼吸器疾患としては、具体的には、例えば、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺癌等が挙げられる。また、上記代謝性疾患としては、具体的には、例えば、糖尿病、脂質異常症、脂肪肝、高尿酸血症、肥満症等が挙げられる。
【0016】
[本発明にかかるケージ本体]
本発明にかかるケージ本体3は、図1に示す通り、上記小動物が収容される箱型のケージ本体のことである。本発明にかかるケージ本体3は、収容する上記小動物の数及び大きさに応じて適宜選択されるものであるが、具体的には、容積としては、例えば、100L~350L、好ましくは、123L~324Lである。また、その横幅は、例えば、60cm~90cm、高さは、例えば、45cm~60cm、奥行は、例えば、45cm~60cmとすることができる。例えば、本発明にかかるケージ本体3の容積を上記(例えば、123L~324L、或いは123L又は324L)に設定すると、後述の本発明にかかる外気送風部5や実施例等において説明する、酸素濃度や二酸化炭素濃度の調整を効率よく実施することができる。
【0017】
本発明にかかるケージ本体3の材質は、具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポロプロピレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン等のプラスチック、金属、木、ガラス等からなるものを使用することができる。これらの中でも、耐久性の観点から、アクリル樹脂からなるものであることが好ましい。また、本発明にかかるケージ本体3は、透明であることが好ましい。これにより、本発明の小動物用ケージ2内の小動物の観察が容易となる。
【0018】
[本発明にかかる接続部]
本発明にかかる接続部4は、図1に示す通り、本発明にかかるケージ本体3と、後述する酸素濃縮器1とを接続するために存在する部分のことであり、本発明にかかるケージ本体3の内外を連通している。
本発明にかかる接続部4は、本発明にかかるケージ本体に設けられるものであり、その上面(天井)又は側面(例えば、側面の上部又は下部)のいずれに設けてもよいが、例えば、小動物の居心地の観点から、本発明にかかるケージ本体3の上面(天井)又は側面上部に設けてもよい。
本発明にかかるケージ本体3(具体的には、本発明にかかる接続部4)と、上記酸素濃縮器1とは、図1に示す通り、パイプ7を介して接続する。そのため、本発明にかかる接続部4の形状は、上記パイプ7の断面形状に応じて、適宜設定することができる。
尚、上記パイプとしては、通常この分野で使用されるものであればいずれでもよく、具体的には、例えば、呼吸回路用ガス供給用チューブ等が挙げられる。かかるチューブとしては、具体的には、例えば、内径6mm~7mm程度の塩化ビニル樹脂からなるものであればよく、より具体的には、例えば、延長チューブ(フォルテグロウメディカル株式会社)等が挙げられる。
【0019】
[本発明にかかる外気送風部]
本発明にかかる外気送風部5は、図1に示す通り、本発明にかかるケージ本体3に外気を供給(送風)するものであり、本発明にかかるケージ本体3の換気を効率よく行うことができる。また、本発明にかかる外気送風部5は、前述の換気に加えて、本発明にかかるケージ本体3の室温や湿度等もそれぞれ適切な値(例えば、室温:例えば、15℃~30℃、湿度:例えば、20%~80%)となるよう調整することもできる。
【0020】
本発明にかかる外気送風部5は、本発明にかかるケージ本体に設けられるものであり、その上面(天井)、側面(例えば、側面の上部又は下部)又は底面(床面)のいずれに設けてもよいが、例えば、小動物の居心地の観点から、本発明にかかるケージ本体3の上面(天井)又は側面上部に設けてもよい。また、一実施形態として、例えば、本発明にかかる外気送風部5は、本発明にかかる接続部4に隣接する位置に設けてもよい。これは、本発明にかかる接続部4と本発明にかかる酸素濃縮器1とはパイプ7を介して繋がれることとなる。そして、当該パイプ7が存在することにより、ユーザー(例えば、小動物の飼い主、医療機関の医療関係者等)は、当該パイプ7の周辺には立ち入らず、また、私物や酸素濃縮器以外のその他の機器等を置くこともしない。結果として、本発明にかかる接続部4に隣接する本発明にかかる外気送風部5が塞がれてしまう可能性を低減することができる。よって、一実施形態として、上記位置関係を採用することができる。
【0021】
本発明にかかる外気送風部5は、外気を、通常、7リットル/分~30リットル/分で供給し、7リットル/分~15リットル/分で供給することが好ましく、11リットル/分~13リットル/分で供給することがより好ましい。これにより、本発明の小動物用ケージ2内の換気を適切に行うことができる。より具体的には、本発明の小動物用ケージ2における、小動物の呼気による二酸化炭素の上昇を抑制することができる。
尚、上記外気とは、本発明の小動物用ケージ2外の空気であることは言うまでもない。
【0022】
本発明にかかる外気送風部5においては、二酸化炭素吸着材を含まないものが好ましい。これは、本発明によれば、当該二酸化炭素吸着材を使用せずとも、効率よく換気を行うことができるためである。このように、二酸化炭素吸着材を必要としないため、結果として、本発明の酸素供給装置は、コスト面で優れており、当該二酸化炭素吸着材に含まれ得る有害物質等による小動物への悪影響を回避することができるため、多大な貢献をもたらすものとなっている。
【0023】
本発明にかかる外気送風部5としては、上述の流量(供給量)を供給することができるものであればいずれでもよく、具体的には、例えば、DCファン(日本電産コパル電子:F17HA-05MC)、DCファン(日本電産コパル電子:F17HA-05HC)、DCファン(日本電産コパル電子(フジソク):F16EA-03LLC/E)、超小型USB扇風機(タイムリー:ChibiFAN20U)等が挙げられる。
【0024】
[本発明にかかる通孔部]
本発明にかかる通孔部6は、図1に示す通り、本発明にかかるケージ本体3の内外を連通するものであり、本発明にかかるケージ本体3の換気を効率よく行うことができる。また、本発明にかかる通孔部6は、前述の換気に加えて、本発明にかかるケージ本体3の気温や湿度等もそれぞれ適切な値となるよう調整することもできる。
【0025】
本発明にかかる通孔部6は、図1に示す通り、本発明にかかるケージ本体3の上面(天井)、側面(例えば、側面の上部又は下部)のいずれに設けてもよい。また、その形状は、例えば、丸、三角、四角等のいずれでもよく、耐久性の観点から、角がない形状、例えば、丸、楕円であってもよい。また、本発明にかかる通孔部6は、一実施形態として、例えば、換気の効率の観点から、その少なくとも1つは、本発明にかかる接続部4及び/又は外気送風部5とは同じ面でなく、ある程度の距離を有する位置(例えば、対面の位置)に設けられてもよい。
【0026】
本発明にかかる通孔部6の大きさとしては、収容される小動物の上顎が入らない程度のものであればよく、例えば、直径2~4cm程度の丸(円)であることが好ましい。また、本発明にかかる通孔部6の数としては、1~5個程度、好ましくは2~3個である。これは、本発明の小動物用ケージ2においては、本発明にかかる外気送風部5による積極的な換気が行われるため、必要以上に通孔部を設ける必要がないためである。このように、通孔部6の数を減らすことにより、結果として、小動物用ケージ2の耐久性を大幅に向上させることができる。また、通孔部6の数を減らすことができるため、製造上のコスト面においても多大な貢献をもたらすこととなる。
【0027】
[計測部]
本発明の小動物用ケージ2においては、さらに、その内部における酸素濃度及び/又は二酸化炭素濃度を計測する計測部(以下、本発明にかかる計測部と略記する場合がある)を有していてもよい。
本発明にかかる計測部は、本発明にかかるケージ本体に設けられるものであり、その上面(天井)、側面又は底面(床面)のいずれに設けてもよいが、一般的に、酸素は上部へ、二酸化炭素は下部へ滞留する傾向があるため、これらを考慮して設けることもできる。また、一形態として、例えば、本発明の小動物用ケージに収容される小動物の鼻の高さの位置に設けることもできる。
【0028】
本発明にかかる計測部は、さらに、本発明の小動物用ケージにおける酸素濃度及び/又は二酸化炭素濃度が所定の濃度範囲を逸脱した場合にアラートを発する警報部(以下、本発明にかかる警報部と略記する場合がある)を有していてもよい。かかる所定の濃度範囲としては、酸素濃度の場合、例えば、30%~40%、35%~40%としてもよく、二酸化炭素濃度の場合、例えば、0.5%超、0.35%超としてもよい。また、かかるアラートとしては、具体的には、例えば、振動、発音、発光等のいずれの態様であってもよい。
尚、上記の酸素濃度30%~40%とは、例えば、一般的な小動物用ケージにおいて、呼吸器疾患等に罹患した小動物に酸素を供給する場合における理想的な酸素濃度であると言われている。また、上記の二酸化炭素濃度0.5%超については、例えば、通常この分野において、二酸化炭素濃度が0.5%以下であると、小動物に対する毒性が十分に低いと言われているため、この観点から設定した値である。
【0029】
また、本発明にかかる警報部は、さらに、本発明の小動物用ケージにおける酸素濃度及び/又は二酸化炭素濃度が所定の濃度範囲を逸脱した場合に、本発明にかかる酸素濃縮器及び/又は外気送風部を作動させ、当該酸素濃度及び/又は二酸化炭素濃度が所定の濃度範囲に含まれるよう調整する調整部(以下、本発明にかかる調整部と略記する場合がある)を有していてもよい。
【0030】
上述のように、本発明の小動物用ケージにおいて、本発明にかかる計測部、警報部及び/又は調整部を備えることにより、当該ケージにおける、酸素濃度、二酸化炭素濃度の観点に基づく理想な環境を維持させることができる。
【0031】
尚、上述の本発明にかかる計測部、警報部、調整部においては、酸素濃度及び二酸化炭素濃度の計測の他、温度、湿度等を計測する、警報する、調整する機能を設けてもよい。
【0032】
[扉]
本発明の小動物ケージにおいては、さらに、扉を有していてもよい。本発明にかかる扉については、本発明にかかるケージ本体に取り付けられるものであり、その側面、上面のいずれに取り付けてもよい。また、その形式は、開閉式のものであっても、スライド式のものであってもよい。本発明にかかる扉を設けることにより、本発明の小動物ケージに小動物を収容する際に簡便に行うことができる。
【0033】
また、本発明にかかる扉には、必要に応じて、ロック機構を備えてもよい。これにより、本発明の小動物ケージに収容された小動物の脱走等を防ぐことができる。
【0034】
上述の本発明にかかる扉は、例えば、図2~4に示すような構成が挙げられる。即ち、図2に示すように、本発明にかかるケージ本体3の一側面において、出し入れ部8を設け、図3に示すように、当該出し入れ部8を覆うようなシャッター9を設けることにより、本発明にかかる扉を構成することができる。このようなシャッター形式(スライド形式)を採用することにより、小動物の収容がより簡便になり、且つ当該小動物の飼い主の生活スペースを確保できる等、種々の利益がもたらされる。尚、図2~4においては、縦方向のシャッター形式の扉を例示したが、横方向のシャッター形式の扉であってもよい。また、出し入れ部8については、本発明にかかるケージ本体3の側面に設けるものを例示したが、出し入れ部8を、本発明にかかるケージ本体3の上面(天井)に設けてもよい。
【0035】
本発明にかかる接続部4、外気送風部5、通孔部6の位置関係については、上述の通り、適宜設定することができるが、具体的な組合せとしては、例えば、以下の2パターンが挙げられる。
即ち、パターン1としては、図1のように、本発明にかかる接続部4を、本発明にかかるケージ本体3の上面(天井)に設け、本発明にかかる外気送風部5を、本発明にかかるケージ本体3の側面の上部に設け、本発明にかかる通孔部6を2つ設け、そのうちの一方を、本発明にかかるケージ本体3の側面(上記外気送風部5が設けられた面に隣接する側面)の下部に設け、もう一方を、当該側面の対面に位置する側面の下部に設ける、ものである。
また、パターン2としては、本発明にかかる接続部4を、本発明にかかるケージ本体3の側面の上部に設け、本発明にかかる外気送風部5を、本発明にかかる接続部4の横(例えば、真横)に設け、本発明にかかる通孔部6を2つ設け、そのうち一方を、本発明にかかるケージ本体3の側面(上記外気送風部5及び接続部4が設けられた面に隣接する側面)の上部に設け、もう一方を、本発明にかかるケージ本体3の上面(天井)に設ける、ものである。
【0036】
[酸素濃縮器]
本発明にかかる酸素濃縮器とは、空気中の窒素ガスと酸素ガスとを分離して窒素ガスを排除して高濃度の酸素ガスのみを供給する装置のことであり、例えば、図1図1における1が酸素濃縮器に相当する)に示す外観のようなものが挙げられる。また、窒素ガスと酸素ガスとを分離する方式としては、分子膜を応用した比較的低濃度の酸素濃度が得られる「膜式」と称されるものと、高濃度の酸素が得られるゼオライトを備えた「PAS方式」と称されるものと、があり、本発明においては、いずれの方式でも採用することができる。
【0037】
本発明にかかる酸素濃縮器から供給される酸素濃度は、通常、40%~95%であり、75%~95%が好ましく、85%~95%がより好ましい。また、本発明にかかる酸素濃縮器から供給される酸素の流量としては、通常、0.5リットル/分~7リットル/分であり、1.5リットル/分~5.5リットル/分が好ましく、2リットル/分~4リットル/分がより好ましい。
【0038】
本発明にかかる酸素濃縮器としては、上述の特性を備えていればいずれでもよいが、具体的には、例えば、一般的に、ヒトに対して使用されている酸素濃縮器である、ハイサンソ(登録商標)3S(帝人ファーマ(株))、ハイサンソ(登録商標)3R(帝人ファーマ(株))、ハイサンソ(登録商標)i(帝人ファーマ(株))、ハイサンソ(登録商標)5S(帝人ファーマ(株))、ハイサンソ(登録商標)7S(帝人ファーマ(株))等が挙げられる。本発明においては、ヒトに対して使用される酸素濃縮器を小動物用としてカスタマイズする必要がなく、そのまま使用する(転用する・再利用する)ことができるため、環境の面からも非常に優れている。
【0039】
本発明の酸素供給装置によれば、本発明にかかる酸素濃縮器から新鮮な酸素含有空気が、本発明にかかるケージ本体3に供給される。これにより、酸素リッチな環境が、本発明にかかるケージ本体3に提供されることとなる。また、本発明にかかる外気送風部5及び通孔部6により、本発明にかかるケージ本体3内の換気を効率良く行うことができる。これは、先ず、本発明にかかる外気送風部5によって、本発明にかかるケージ本体3内に外気が供給される。次いで、本発明にかかるケージ本体内3が陽圧になることにより、本発明にかかるケージ本体3から、小動物の呼気によって発生する二酸化炭素が、本発明にかかる通孔部6を通じて排出されるためである。
【0040】
上述の効率的な換気については、本発明にかかる外気送風部5から、外気が上述の特定の流量(例えば、11リットル/分~13リットル/分)で供給され、本発明にかかる酸素濃縮器から、酸素含有空気が上述の特定の濃度(例えば、85%濃度~95%濃度)及び流量(例えば、2リットル/分~4リットル/分)で供給されることにより実現される。具体的には、これにより、本発明の小動物用ケージ2(例えば、容積123L~324L)において、上述の理想の酸素濃度(30%~40%)及び二酸化炭素濃度(0.5%以下)が実現される。
【0041】
本発明のような酸素濃縮器と、小動物用ケージとを含む、酸素供給装置において、理想の二酸化炭素濃度を実現すべく本発明にかかる外気送風部5の流量や本発明にかかる通孔部6を改善しようとすると、酸素濃度が理想の値から離れてしまうという問題があった。即ち、理想の二酸化炭素濃度と理想の酸素濃度の実現は、トレードオフの関係であった。本発明は、このトレードオフの関係を解消することができるため、多大な貢献をもたらすものである。これは、後述の実施例等の記載からも明らかである。
【0042】
本発明の酸素供給装置において、小動物を収容する期間については、当該小動物の状態(例えば、罹患している疾患、症状等)に応じて適宜選択することができる。例えば、非特許文献1等を参考にして、1日あたり12時間~24時間、或いは1日6時間以内、又は入室自由等としてもよい。
【0043】
<小動物用ケージ内の酸素濃度及び/又は二酸化炭素濃度を制御する方法>
本発明の小動物ケージ内の酸素濃度及び/又は二酸化炭素濃度を制御する方法(以下、本発明の制御方法と略記する場合がある)は、(工程1)酸素濃縮器から、85%濃度~95%濃度の酸素を2リットル/分~4リットル/分で、前記小動物用ケージにおいて前記小動物が収容されるケージ本体に供給する工程(以下、本発明にかかる工程1と略記する場合がある)と、(工程2)前記ケージ本体の換気を行うための、前記本体に外気を供給する外気送風部から、外気を11リットル/分~13リットル/分で前記ケージ本体に供給する工程(以下、本発明にかかる工程2と略記する場合がある)とを含み、前記小動物が収容された前記ケージ内の酸素濃度を30%~40%濃度、且つ二酸化炭素濃度を0.5%以下に維持するよう制御するものである。
【0044】
本発明の制御方法における小動物用ケージについては、上述の本発明の小動物用ケージと同様であり、その具体例、好ましい例等も同じである。また、本発明の制御方法における酸素濃縮器については、上述の本発明にかかる酸素濃縮器と同様であり、その具体例、好ましい例等も同じである。
【0045】
本発明にかかる工程1については、上述の本発明の小動物ケージ、本発明にかかる酸素濃縮器の項を参照することができ、具体例、好ましい例等も同じである。また、本発明にかかる工程2については、上述の本発明の小動物用ケージの項を参照することができ、具体例、好ましい例等も同じである。
【0046】
本発明の制御方法により、小動物が収容された小動物用ケージにおける酸素濃度を30%~40%濃度、且つ二酸化炭素濃度を0.5%以下に維持することができる。また、当該濃度範囲については、酸素濃度を35%~40%濃度且つ二酸化炭素濃度を0.35%以下に維持するようにしてもよい。上述の本発明にかかる工程1及び2を実施すると共に、必要に応じて、上述の本発明にかかる計測部、警報部、調整部を小動物用ケージに搭載することにより、上記維持を達成することができる。
【実施例0047】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
【0048】
<実施例1:本発明にかかる外気送風部の適正送風量の検討>
本発明にかかる外気送風部の適正送風量の検討を行った。具体的には、上述の、小動物用ケージにおける理想の酸素濃度及び二酸化炭素濃度を実現することができる適正な外気送風量を特定すべく、検討を行った。
【0049】
本検討においては、小動物用ケージにおける理想の酸素濃度(酸素濃度30%~40%)及び二酸化炭素濃度(0.5%以下)を実現することができる適正な外気送風量を、以下に示すザイデル式により算出した。
尚、当該ザイデル式とは、室内における必要な外気送風量(換気量と表記する場合もある)を求める際に使用されるものであり、この分野において通常用いられている(例えば、特開2021-131219、特開2004-101058、WO18/021142等)。
本検討においては、以下の式により、外気送風部からの適正な外気送風量を算出した。
【0050】
【数1】
【0051】
上記式中、各値の意味は、それぞれ以下の通りである。
C:外気送風部による外気送風及び酸素濃縮器からの酸素供給後の小動物用ケージにおける酸素濃度(ppm)又は二酸化炭素濃度(ppm)
:小動物用ケージへ供給する酸素濃度(ppm)又は小動物用ケージにおいて小動物が吐き出す二酸化炭素濃度(ppm)
:外気送風部による外気送風及び酸素濃縮器からの酸素供給前の小動物用ケージにおける酸素濃度(ppm)又は二酸化炭素濃度(ppm)
V:小動物ケージの容積(m
M:汚染物質生量(kg/h)
Q:送風量(m/h)
但し、上記Qについては、酸素濃縮器からの送風量(即ち、0.18(m/h)と外気送風部からの外気送風量(下記試験1~34の通り)を含むものである。
t:時間(h)
【0052】
本検討においては、上記式を用い、外気送風部からの外気送風量を変化させた時の小動物用ケージにおける酸素濃度及び二酸化炭素濃度をそれぞれ算出し、酸素濃度が30%~40%且つ二酸化炭素濃度が0.5%以下になる外気送風部からの外気送風量を探索した。
酸素濃度に関する算出は、以下表1及び2の数値をそれぞれ用いた(試験1~17)。また、最終的な各試験の結果については、以下の図4(最上のグラフからそれぞれ試験1~17の結果を示す)の通りである。
一方、二酸化炭素濃度に関する算出は、以下表3及び4の数値をそれぞれ用いた(試験18~試験34)。また、最終的な各試験の結果については、以下の図5(最上のグラフからそれぞれ試験18~34の結果を示す)の通りである。
尚、上記算出において、実際に現場(家庭や医療機関等)で使用される小動物用ケージ内の酸素濃度及び二酸化炭素濃度を参考にして、C(酸素濃度)は218000ppmに設定すると共に、C(二酸化炭素濃度)は300ppmに設定した。また、Mは暫定的な値として、0.1とした。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
上記図4から明らかな通り、酸素濃度に関しては、外気送風部における外気送風量を8リットル/分(試験9)、9リットル/分(試験10)、10リットル/分(試験11)、11リットル/分(試験12)、12リットル/分(試験13)、13リットル/分(試験14)、14リットル/分(試験15)及び15リットル/分(試験16)とした場合に、小動物用ケージにおける理想の酸素濃度である30%~40%を実現可能であることが分かった。
【0058】
一方、図5から明らかな通り、二酸化炭素濃度に関しては、外気送風部における外気送風量を7リットル/分(試験25)、8リットル/分(試験26)、9リットル/分(試験27)、10リットル/分(試験28)、11リットル/分(試験29)、12リットル/分(試験30)、13リットル/分(試験31)、14リットル/分(試験32)、15リットル/分(試験33)及び30リットル/分(試験34)とした場合に、小動物用ケージにおける理想の二酸化炭素濃度である0.5%以下を実現可能であることが分かった。
【0059】
上記より、酸素濃度及び二酸化炭素濃度の双方の結果を考慮すると、小動物用ケージにおける理想の酸素濃度及び二酸化炭素濃度を実現可能とする外気送風部における外気送風量は、8リットル/分、9リットル/分、10リットル/分、11リットル/分、12リットル/分、13リットル/分、14リットル/分及び15リットル/分であることが分かった。この中でも、より好ましい値としては、酸素濃度がおよそ35%程度であり、且つ二酸化炭素濃度もおよそ0.4%を下回る11リットル/分、12リットル/分及び13リットル/分であることが分かった。
【0060】
<実施例2:小動物を用いた際の本発明にかかる外気送風部の適正送風量の検討>
実施例1によって得られた、外気送風部からの適正な外気送風量について、実際に小動物が存在する環境下においても理想の酸素濃度及び二酸化炭素濃度を実現できるのか否か、検証を行った。
【0061】
本実施例2に用いた小動物及び機器等は、以下の通りである。
・小動物:猫(4齢、ミックス、3.6kg)及び犬(8齢、シーズー、5.9kg)
・酸素濃縮器:ハイサンソ3R(帝人ファーマ(株))
(酸素濃縮器による酸素供給量:90%濃度の酸素を3リットル/分)
・小動物用ケージ:ペット・オキシ・ホテル(Mサイズ)(株式会社ユニコム)
・外気送風部:DCファン(F17HA-05MC、日本電産コパル電子(株))
(外気送風部による外気送風量:12リットル/分)
・酸素濃度計:高濃度酸素濃度計(1-1561-01、JICKO)
・二酸化炭素濃度計:高精度CO2測定器モデルII(Kimwood)
【0062】
あらかじめ、小動物用ケージ内の酸素濃度を35%(±3%)、二酸化炭素濃度を0.3%以下に調整させた上で、小動物を投入した際の酸素濃度及び二酸化炭素濃度を経時的(0分~30分)に確認することにより実施した。
【0063】
図6に酸素濃度の結果を、図7に二酸化炭素濃度の結果をそれぞれ示す。
図6から明らかな通り、酸素濃度については、小動物をケージ内に投与したとしても、その影響を受けずに理想の濃度を保つことが分かった(猫の結果:図6中の実線グラフ、犬の結果:図6中の点線グラフ)。
【0064】
また、図7から明らかな通り、二酸化炭素濃度については、小動物を投入したとしても、理想の濃度以下を保つことが分かった(二酸化炭素濃度については、猫のみで実施)。
【0065】
以上より、実施例1によって得られた、外気送風部からの適正な外気送風量について、実際に小動物が存在する環境下においても理想の酸素濃度及び二酸化炭素濃度を実現可能であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、小動物用の酸素供給装置に関する産業に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1:酸素濃縮器
2:小動物用ケージ
3:ケージ本体
4:接続部
5:外気送風部
6:通孔部
7:パイプ
8:出し入れ部
9:シャッター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7