IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エヌ・ティ・ティ・データの特許一覧 ▶ 学校法人 岩手医科大学の特許一覧

特開2024-6441大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム
<>
  • 特開-大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム 図1
  • 特開-大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム 図2
  • 特開-大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム 図3
  • 特開-大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム 図4
  • 特開-大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム 図5
  • 特開-大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム 図6
  • 特開-大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム 図7
  • 特開-大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム 図8
  • 特開-大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム 図9
  • 特開-大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム 図10
  • 特開-大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム 図11
  • 特開-大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム 図12
  • 特開-大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム 図13
  • 特開-大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム 図14
  • 特開-大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム 図15
  • 特開-大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム 図16
  • 特開-大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006441
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240110BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240110BHJP
【FI】
A61B6/03 360J
A61B6/03 360Q
A61B6/03 360G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107306
(22)【出願日】2022-07-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔1〕集会 開催日 令和3年7月3日 集会名、開催場所 第93回日本心臓血管放射線研究会 Web開催 <資料> 「第93回日本心臓血管放射線研究会プログラム」資料 〔2〕集会 開催日 令和3年8月27日 集会名、開催場所 ESC Congress 2021国際会議 Web開催 <資料> 「ESC Congress 2021国際会議プログラム」資料 〔3〕集会 開催日 令和3年11月28日 集会名、開催場所 RSNA 2021 Redefining Radiology Web開催 <資料> 「Abstract Archives of the RSNA,2021」資料
(71)【出願人】
【識別番号】000102728
【氏名又は名称】株式会社NTTデータグループ
(71)【出願人】
【識別番号】507148456
【氏名又は名称】学校法人 岩手医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 健太
(72)【発明者】
【氏名】安東 諒人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 寛祥
(72)【発明者】
【氏名】小山田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 朝香
(72)【発明者】
【氏名】藤原 純平
(72)【発明者】
【氏名】折居 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 邦浩
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA18
4C093CA23
4C093DA02
4C093FD09
4C093FF16
4C093FF22
4C093FF35
4C093FF42
4C093FF45
4C093FG13
4C093FG14
(57)【要約】
【課題】部位に応じた判定基準で大動脈瘤の候補を検出することができる大動脈瘤画像診断支援装置を提供すること。
【解決手段】生物をコンピュータ断層撮影した画像から、複数の部位に分類された大動脈を検出する大動脈検出部と、複数の部位各々に応じた大動脈瘤の判定サイズに関する条件を用いて、検出した大動脈から大動脈瘤候補を検出する大動脈瘤候補検出部とを備える、大動脈瘤画像診断支援装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物をコンピュータ断層撮影した画像から、複数の部位に分類された大動脈を検出する大動脈検出部と、
前記複数の部位各々に応じた大動脈瘤の判定サイズに関する条件を用いて、前記検出した大動脈から大動脈瘤候補を検出する大動脈瘤候補検出部と
を備える、大動脈瘤画像診断支援装置。
【請求項2】
前記検出した大動脈を細線化する細線抽出部を備え、
前記大動脈瘤候補検出部は、
前記大動脈の断面であって、前記細線抽出部による細線化で得られた線に対して垂直な断面を抽出する垂直断面抽出部と、
前記大動脈の断面に対して、前記条件を適用して大動脈瘤候補を検出する条件判定部と
を備える、請求項1に記載の大動脈瘤画像診断支援装置。
【請求項3】
前記細線抽出部による細線化で得られた線に対して、髭除去処理を行う髭除去部を備え、
前記髭除去部において、除去対象とするか否かの判定条件は、前記複数の部位に応じている、請求項2に記載の大動脈瘤画像診断支援装置。
【請求項4】
前記細線抽出部による細線化で得られた線に沿った軸方向に、前記大動脈の太さを表す値をプロットしたグラフと、前記大動脈をコロナル面に投影した画像と、前記大動脈の中心線に対して垂直な断面の画像とを並べて表示する検出結果表示部を備える、請求項2に記載の大動脈瘤画像診断支援装置。
【請求項5】
生物をコンピュータ断層撮影した画像から、複数の部位に分類された大動脈を検出する過程と、
前記複数の部位各々に応じた大動脈瘤の判定サイズに関する条件を用いて、前記検出した大動脈から大動脈瘤候補を検出する過程と
を有する、大動脈瘤画像診断支援方法。
【請求項6】
コンピュータを、
生物をコンピュータ断層撮影した画像から、複数の部位に分類された大動脈を検出する大動脈検出部、
前記複数の部位各々に応じた大動脈瘤の判定サイズに関する条件を用いて、前記検出した大動脈から大動脈瘤候補を検出する大動脈瘤候補検出部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理技術を用いてCT(Computer Tomography;コンピュータ断層撮影)画像データから大動脈瘤を判定するにあたり、CT画像の水平方向の断面(Axial断面)で大動脈のセグメンテーションを実施し、各断面で認識した大動脈の短径のピーク位置を大動脈瘤の候補として検出する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017-047819号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、CT画像データから大動脈瘤の診断を行う方法においては、大動脈の部位(胸部、腹部、腸骨など)によって判定基準(たとえば、サイズ)が異なるため、検出した大動脈瘤の候補各々に対して、その部位に対応した診断を行うのに時間を要することがあるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、部位に応じた判定基準で大動脈瘤の候補を検出することができる大動脈瘤画像診断支援装置、大動脈瘤画像診断支援方法、およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様は、生物をコンピュータ断層撮影した画像から、複数の部位に分類された大動脈を検出する大動脈検出部と、前記複数の部位各々に応じた大動脈瘤の判定サイズに関する条件を用いて、前記検出した大動脈から大動脈瘤候補を検出する大動脈瘤候補検出部とを備える、大動脈瘤画像診断支援装置である。
【0007】
また、本発明の他の一態様は、上述した大動脈瘤画像診断支援装置であって、前記検出した大動脈を細線化する細線抽出部を備え、前記大動脈瘤候補検出部は、前記大動脈の断面であって、前記細線抽出部による細線化で得られた線に対して垂直な断面を抽出する垂直断面抽出部と、前記大動脈の断面に対して、前記条件を適用して大動脈瘤候補を検出する条件判定部とを備える。
【0008】
また、本発明の他の一態様は、上述した大動脈瘤画像診断支援装置であって、前記細線抽出部による細線化で得られた線に対して、髭除去処理を行う髭除去部を備え、前記髭除去部において、除去対象とするか否かの判定条件は、前記複数の部位に応じている。
【0009】
また、本発明の他の一態様は、上述した大動脈瘤画像診断支援装置であって、前記細線抽出部による細線化で得られた線に沿った軸方向に、前記大動脈の太さを表す値をプロットしたグラフ、前記大動脈をコロナル面に投影した画像と、前記大動脈の中心線に対して垂直な断面の画像とを並べて表示する検出結果表示部を備える。
【0010】
また、本発明の他の一態様は、生物をコンピュータ断層撮影した画像から、複数の部位に分類された大動脈を検出する過程と、前記複数の部位各々に応じた大動脈瘤の判定サイズに関する条件を用いて、前記検出した大動脈から大動脈瘤候補を検出する過程とを有する、大動脈瘤画像診断支援方法である。
【0011】
また、本発明の他の一態様は、コンピュータを、生物をコンピュータ断層撮影した画像から、複数の部位に分類された大動脈を検出する大動脈検出部、前記複数の部位各々に応じた大動脈瘤の判定サイズに関する条件を用いて、前記検出した大動脈から大動脈瘤候補を検出する大動脈瘤候補検出部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、部位に応じた判定基準で大動脈瘤の候補を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の一実施形態による大動脈瘤画像診断支援装置100の構成を示す概略ブロック図である。
図2】同実施形態における大動脈検出部101の構成例を示す概略ブロック図である。
図3】同実施形態における大動脈データの例を説明する図である。
図4】同実施形態における細線抽出部113による細線化の例を説明する図である。
図5】同実施形態における髭除去部114の処理を説明する図である。
図6】同実施形態における髭除去部114における判定条件の例を示す表である。
図7】同実施形態における大動脈瘤候補検出部102の構成例を示す概略ブロック図である。
図8】同実施形態における垂直断面抽出部121の動作を説明する模式図である。
図9】アキシャル断面のCT画像の例を示す図である。
図10】同実施形態における大動脈の中心線に対して垂直な断面のCT画像の例を示す図である。
図11】同実施形態における条件判定部122の動作を説明するCT画像の例を示す図である。
図12】同実施形態における条件判定部122の動作を説明するグラフである。
図13】同実施形態における条件判定部122が用いる大動脈瘤の判定サイズに関する条件(閾値)を示す表である。
図14】同実施形態における検出結果表示部103による表示例G1、G2を示す図である。
図15】同実施形態における検出結果表示部103による表示例G3を示す図である。
図16】同実施形態における検出結果表示部103による表示例G4を示す図である。
図17】同実施形態における学習済モデル生成装置200の構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明の一実施形態による大動脈瘤画像診断支援装置100の構成を示す概略ブロック図である。大動脈瘤画像診断支援装置100は、人体を含む生物のCT画像データから、大動脈瘤の候補位置を検出する装置である。医師は、大動脈瘤画像診断支援装置100が検出した大動脈瘤の候補位置およびその付近のCT画像を見て、大動脈瘤の診断を行うことができる。大動脈瘤画像診断支援装置100は、タブレット端末、ノート型コンピュータ、デスクトップ型コンピュータ、サーバマシンなどの1台以上のコンピュータがソフトウェアを実行することで実現される。
【0015】
図1に示すように大動脈瘤画像診断支援装置100は、大動脈検出部101、大動脈瘤候補検出部102、検出結果表示部103を備える。大動脈検出部101は、生物をコンピュータ断層撮影した画像から、複数の部位に分類された大動脈を検出する。生物をコンピュータ断層撮影した画像は、輝度値を持つボクセル(voxel)が3次元に配置されたCT画像データであり、例えば、体軸方向に対して垂直な断面(横断面、アキシャル断面)の画像の集合である。大動脈検出部101は、CT画像データに含まれるボクセルのうち、複数の部位各々の大動脈に分類されたボクセルを検出する。
【0016】
大動脈瘤候補検出部102は、複数の部位各々に応じた条件を用いて、大動脈検出部101が検出した大動脈から大動脈瘤候補を検出する。検出結果表示部103は、大動脈瘤候補検出部102が検出した大動脈瘤候補を表示する。
【0017】
図2は、本実施形態における大動脈検出部101の構成例を示す概略ブロック図である。図2に示す例では、大動脈検出部101は、全大動脈検出部111と、腸骨大動脈検出部112と、細線抽出部113と、髭除去部114とを備える。全大動脈検出部111は、学習済のニューラルネットワークを用いて、CT画像データから、上行部の大動脈と、弓部の大動脈と、下行部の大動脈と、腹部の大動脈と、腸骨部の大動脈を検出する。腸骨大動脈検出部112は、学習済のニューラルネットワークを用いて、CT画像データのうち、全大動脈検出部111が腸骨部の大動脈を検出したアキシャル断面のデータから、腸骨部の大動脈を検出する。腸骨部の大動脈は、その他の部位の大動脈に比べて、複雑な構造をしているが、腸骨部の大動脈のみを検出するニューラルネットワークを用いることで、精度良く検出することができる。また、全大動脈検出部111および腸骨大動脈検出部112における検出は、例えば、Ozgun Cicek他の3D U-Net:Learning Dense Volumetric Segmentation from Sparse Annotation(https://arxiv.org/pdf/1606.06650.pdf)に記載の方法を用いることができる。
【0018】
全大動脈検出部111が検出した上行部の大動脈と、弓部の大動脈と、下行部の大動脈と、腹部の大動脈とを表すデータと、腸骨大動脈検出部112が検出した腸骨部の大動脈を表すデータとを合わせたものを、以降、大動脈データという。すなわち、大動脈データは、CT画像データに含まれるボクセルのうち、上行部の大動脈、弓部の大動脈、下行部の大動脈、腹部の大動脈、腸骨部の大動脈の各々に対応するボクセルを表すデータである。例えば、各ボクセルの画素値が、上行部の大動脈、弓部の大動脈、下行部の大動脈、腹部の大動脈、腸骨部の大動脈、大動脈以外のうちのいずれかを表す値を持つデータであってもよい。
【0019】
細線抽出部113は、大動脈データが表す大動脈を細線化する。この細線化とは、二値画像を幅1ピクセルの線画像に変換する処理であり、ここでは、大動脈であるか否かを表す3次元の二値画像を幅1ピクセルの線画像に変換する。細線化には、Hilditch、田村、Zhang Suenなどの公知の方法を用いることができる。髭除去部114は、細線抽出部113による細線化の結果に含まれる髭と呼ばれる部分を除去して、細線データを生成する。細線データは、大動脈の中心線を表すボクセルのデータである。なお、髭除去部114は、細線抽出部113による細線化の結果をグラフ構造に変換して、髭部分を検出する。
【0020】
図3は、本実施形態における大動脈データの例を説明する図である。図3は、大動脈データを、コロナル面に投影した図であり、上行部の大動脈P1と、弓部の大動脈P2と、下行部の大動脈P3と、腹部の大動脈P4と、腸骨部の大動脈P5とを含む。大動脈データは、上行部の大動脈P1と、弓部の大動脈P2と、下行部の大動脈P3と、腹部の大動脈P4と、腸骨部の大動脈P5との各々に対応する画素値を持つボクセルから成るデータである。
【0021】
図4は、本実施形態における細線抽出部113による細線化の例を説明する図である。図4は、図3の大動脈データを、細線抽出部113による細線化の結果を、コロナル面に投影した図である。図4に示すように、細線化の結果、大動脈の中心線とともに、中心線から分岐している髭と呼ばれる部分が得られる。
【0022】
図5は、本実施形態における髭除去部114の処理を説明する図である。図5は、細線抽出部113による細線化の結果の一部をグラフ構造に変換した結果である。グラフ構造では、細線化の結果は、図5に丸印で示すノード(頂点)と、ノードとノードとを結ぶエッジの集合で表される。髭除去部114は、図5に示すように、中心線から分岐している除去対象D、いわゆる髭を除去する。髭除去部114は、除去対象Dとする髭か否かの判定条件を、部位に応じていてもよい。図6は、本実施形態における髭除去部114における判定条件の例を示す表である。図6の例では、髭除去部114は、分岐している部分の長さが閾値以下であるときは、除去対象Dであると判定するが、その閾値を腸骨部以外では値BTh1とし、腸骨部では値BTh2としている。なお、値BTh2は、値BTh1よりも小さな値とである。腸骨部の大動脈は、その他の部位の大動脈に比べて、分岐があるなど複雑な構造をしているが、このように腸骨部の閾値を、腸骨部以外よりも小さくすることで、腸骨部においても髭除去を行うことができる。なお、図6の例では、腸骨部以外と、腸骨部とで閾値が異なるようにしたが、部位ごとに閾値が異なるようにしてもよい。また、髭除去部114は、腸骨部以外では、分岐しているうちの短い方を除去対象Dであると判定するようにしてもよい。
【0023】
図7は、本実施形態における大動脈瘤候補検出部102の構成例を示す概略ブロック図である。図7に示す例では、大動脈瘤候補検出部102は、垂直断面抽出部121、条件判定部122を備える。垂直断面抽出部121は、細線データが示す中心線に沿って、一定間隔毎に、大動脈データが示す大動脈の断面であって、細線データが示す中心線に対して垂直な断面を抽出する。条件判定部122は、垂直断面抽出部121が抽出した大動脈の断面に対して、複数の部位各々に応じた大動脈瘤の判定サイズに関する条件(判定基準)を適用して大動脈瘤候補を検出する。
【0024】
図8は、本実施形態における垂直断面抽出部121の動作を説明する模式図である。垂直断面抽出部121は、細線データが示す大動脈の中心線Clに対して垂直な面Csを抽出する。図9は、アキシャル断面のCT画像の例を示す図である。図10は、大動脈の中心線に対して垂直な断面のCT画像の例を示す図である。大動脈は、必ずしも体軸に沿った方向となっていないため、アキシャル断面のCT画像では、図9の大動脈A1のように、大動脈を斜めに切ったような形状になってしまうことがある。しかし、垂直断面抽出部121では、中心線に対して垂直な面を抽出するため、図10の大動脈A2のように、大動脈の垂直断面を捉えることができる。
【0025】
図11は、本実施形態における条件判定部122の動作を説明するCT画像の例を示す図である。条件判定部122は、垂直断面抽出部121が抽出した各断面における大動脈に対して、図11の楕円Eのように楕円フィッティングを行う。楕円フィッティングには、例えば最小二乗法など、公知の方法を用いることができる。条件判定部122は、大動脈の太さを表す値として、フィッティングした楕円Eの短径Dmを取得する。なお、条件判定部122は、大動脈の太さを表す値として、例えばフィッティングした円の直径など、該短径以外の値を用いるようにしてもよい。
【0026】
図12は、本実施形態における条件判定部122の動作を説明するグラフである。図12のグラフは、条件判定部122が取得した短径を、中心線方向にプロットしたグラフである。図12において、グラフGp1は、上行部の短径をプロットしたグラフである。グラフGp2は、弓部の短径をプロットしたグラフである。グラフGp3は、下行部の短径をプロットしたグラフである。グラフGp4は、腹部の短径をプロットしたグラフであるグラフGp5は、腸骨部の短径をプロットしたグラフである。また、値Th1、Th2、Th3、Th4、Th5は、それぞれ、上行部、弓部、下行部、腹部、腸骨部における閾値である。条件判定部122は、図12に示したように短径を、大動脈の中心線方向にプロットしたときのピークであり、かつ、該ピークの値が、該ピークの位置が属する部位に応じた閾値を超えているときは、該ピークの中心線方向の位置を、大動脈瘤候補ACと判定する。なお、条件判定部122は、複数の位置を大動脈瘤候補として判定してもよい。
【0027】
図13は、本実施形態における条件判定部122が用いる大動脈瘤の判定サイズに関する条件(閾値)を示す表である。条件判定部122が用いる条件は、上行部、弓部、下行部、腹部、腸骨部の各々に対応した閾値である。図12でも示した例では、上行部の閾値Th1は、弓部の閾値Th2よりも大きい値である。また、弓部の閾値Th2は、下行部の閾値Th3と同じ値である。下行部の閾値Th3は、腹部の閾値Th4よりも大きい値である。腹部の閾値Th4は、腸骨部の閾値Th5よりも大きい値である。
【0028】
図14図15図16は、本実施形態における検出結果表示部103による表示例G1、G2、G3、G4を示す図である。表示例G1は、体軸に沿って大動脈の太さを表す値をプロットしたグラフである。表示例G2は、大動脈の中心線に沿って大動脈の太さを表す値をプロットしたグラフである。表示例G3は、大動脈をコロナル面に投影した画像である。表示例G4は、大動脈の中心線に対して垂直な断面の画像である。検出結果表示部103は、例えば、表示例G2とG3とG4など、これらの一部もしくは全てを並べて表示する。
【0029】
図14の表示例G1において、縦軸は、体軸に沿ったスライス番号であり、横軸は、条件判定部122が取得した短径である。また、図14の表示例G2において、縦軸は、中心線に沿った軸方向のスライス番号であり、横軸は、条件判定部122が取得した短径である。表示例G1と表示例G2に付された丸印は、大動脈瘤候補として検出された箇所であり、丸印に付された数字は、スライス番号と、短径である。また、直線Sl1と直線Sl2は、表示例G1と表示例G2とともに表示する、表示例G4に示すようなCT画像のスライス位置を示す。直線Sl1と直線Sl2は、マウス、キーボードなどの入力手段により、上下に動かすことが可能であり、移動された直線Sl1と直線Sl2に応じたスライス番号のCT画像を、検出結果表示部103は表示する。
【0030】
図15の表示例G3は、大動脈データが示す大動脈とその部位を、コロナル面に投影した画像である。表示例G3における直線Sl3は、図14の直線Sl1および直線Sl2と同様である。図16の表示例G4は、直線Sl1、Sl2、Sl3に対応するスライス番号におけるCT画像である。このCT画像は、中心線に対して垂直な断面のCT画像であるが、検出結果表示部103は、アキシャル面のCT画像を表示してもよい。図16の楕円E4は、条件判定部122が、大動脈に対してフィッティングした楕円であり、短径Dm4とその値(58mm)も、表示例G4に表示されている。
【0031】
図17は、本実施形態における学習済モデル生成装置200の構成を示す概略ブロック図である。学習済モデル生成装置200は、全大動脈検出部111と、腸骨大動脈検出部112のそれぞれで用いられるニューラルネットワークを、学習済モデルとして生成する。学習済モデル生成装置200は、タブレット端末、ノート型コンピュータ、デスクトップ型コンピュータ、サーバマシンなどの1台以上のコンピュータがソフトウェアを実行することで実現される。
【0032】
学習済モデル生成装置200は、大動脈指定部201、部位境界指定部202、教師データ生成部203、全大動脈学習済モデル生成部204、腸骨大動脈学習済モデル生成部205を備える。大動脈指定部201は、CT画像データの各アキシャル断面における大動脈の領域の指定を受け付ける。この指定は、アキシャル断面の画像各々に対して、マウス、タッチパッドなどの入力手段を用いて行う。部位境界指定部202は、CT画像データの大動脈の部位の境界の指定を受け付ける。ここで部位の境界は、上行部と弓部の境界、弓部と下行部の境界、下行部と腹部の境界、腹部と腸骨部の境界である。この境界の指定は、いずれのスライス番号のアキシャル断面が、境界であるかを、マウス、キーボードなどの入力手段を用いて行う。なお、一例として、下行部と腹部との境界位置を腹腔動脈と指定する。
【0033】
教師データ生成部203は、部位境界指定部202が受け付けた部位の境界に基づき、大動脈指定部201が受け付けた大動脈の領域がいずれの部位の大動脈であるかを示すデータ生成する。教師データ生成部203は、このデータを、CT画像データと組み合わせて、全大動脈学習済モデル生成部204用の教師データとする。また、教師データ生成部203は、腸骨部の大動脈を示すデータと、CT画像データのうち腸骨部の大動脈を含むアキシャル断面のデータとを組み合わせて、腸骨大動脈学習済モデル生成部205用の教師データとする。全大動脈学習済モデル生成部204は、教師データ生成部203が生成した全大動脈学習済モデル生成部204用の教師データを用いて、ニューラルネットワークを学習させ、CT画像データから上行部と、弓部と、下行部と、腹部と、腸骨部の大動脈を検出する学習済モデルを生成する。腸骨大動脈学習済モデル生成部205は、教師データ生成部203が生成した腸骨大動脈学習済モデル生成部205用の教師データを用いて、ニューラルネットワークを学習させ、腸骨部の大動脈を含むアキシャル断面のデータから腸骨部の大動脈を検出する学習済モデルを生成する。全大動脈学習済モデル生成部204が生成した学習済モデルは、全大動脈検出部111で用いられ、腸骨大動脈学習済モデル生成部205が生成した学習済モデルは、腸骨大動脈検出部112で用いられる。
【0034】
このように、大動脈瘤画像診断支援装置100は、生物をコンピュータ断層撮影した画像から、複数の部位に分類された大動脈を検出する大動脈検出部101と、複数の部位各々に応じた条件を用いて、検出した大動脈から大動脈瘤候補を検出する大動脈瘤候補検出部102とを備える。これにより、大動脈瘤画像診断支援装置100は、部位に応じた判定基準で大動脈瘤の候補を検出することができる。
【0035】
大動脈瘤画像診断支援装置100は、検出した大動脈を細線化する細線抽出部113をさらに備え、大動脈瘤候補検出部102は、大動脈の断面であって、細線抽出部113による細線化で得られた線に対して垂直な断面を抽出する垂直断面抽出部121と、大動脈の断面に対して、複数の部位各々に応じた条件を適用して大動脈瘤候補を検出する条件判定部122とを備える。これにより、大動脈瘤画像診断支援装置100は、大動脈の中心線に対して垂直な断面に条件を適用して大動脈瘤候補を検出するため、誤検出を抑えることができる。
【0036】
大動脈瘤画像診断支援装置100は、細線抽出部113による細線化で得られた線に対して、髭除去処理を行う髭除去部114をさらに備え、髭除去部114において、除去対象とするか否かの判定条件は、複数の部位に応じている。これにより、大動脈瘤画像診断支援装置100は、部位の構造に応じた判定条件を適用し、髭除去をより正確に行うことができる。
【0037】
大動脈瘤画像診断支援装置100は、細線抽出部113による細線化で得られた線に沿った軸方向に、大動脈の太さを表す値をプロットしたグラフを表示する検出結果表示部103を備える。これにより、大動脈瘤画像診断支援装置100は、この装置の使用者に、大動脈の太さの変化を直観的に把握させて、診断を支援することができる。
【0038】
また、図1図17における大動脈瘤画像診断支援装置100、学習済モデル生成装置200の各々もしくはその一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより大動脈瘤画像診断支援装置100、学習済モデル生成装置200を実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0039】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0040】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0041】
100 大動脈瘤画像診断支援装置
101 大動脈検出部
102 大動脈瘤候補検出部
103 検出結果表示部
111 全大動脈検出部
112 腸骨大動脈検出部
113 細線抽出部
114 髭除去部
121 垂直断面抽出部
122 条件判定部
200 学習済モデル生成装置200
201 大動脈指定部
202 部位境界指定部
203 教師データ生成部
204 全大動脈学習済モデル生成部
205 腸骨大動脈学習済モデル生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17