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特開2024-64428車載装置、車載システム、制御方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064428
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】車載装置、車載システム、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20240507BHJP
   B60R 16/023 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
B60R16/023 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173011
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓也
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA09
5K033BA06
5K033DB14
5K033DB25
(57)【要約】
【課題】パーシャルネットワーク機能に対応していない通信I/Fが搭載された車載装置において、パーシャルネットワーク機能の利用を可能とする。
【解決手段】
車載装置は、通信インタフェースと、動作モードを切り替えるための切替条件が成立したか否かを判定する第1判定部と、前記切替条件が成立したと判定された場合に、前記動作モードをスリープモードから低消費電力モードへ切り替える第1切替部と、前記動作モードが前記低消費電力モードである間に、前記通信インタフェースが前記通信線を通じて受信したフレームにおいて、前記車載装置を起動対象として指定する指定情報が含まれているか否かを判定する第2判定部と、前記第2判定部によって前記受信したフレームにおいて前記指定情報が含まれていると判定された場合に、前記動作モードを、前記低消費電力モードから通常モードへ切り替える第2切替部と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象を制御する車載装置であって、
通信線に接続された通信インタフェースと、
前記車載装置の動作モードを、前記制御対象の制御が不能なスリープモードから、前記車載装置における消費電力が前記スリープモードよりも高い低消費電力モードへ切り替えるための切替条件が成立したか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部によって前記切替条件が成立したと判定された場合に、前記動作モードを前記スリープモードから前記低消費電力モードへ切り替える第1切替部と、
前記動作モードが前記低消費電力モードである間に、前記通信インタフェースが前記通信線を通じて受信したフレームにおいて、前記車載装置を起動対象として指定する指定情報が含まれているか否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部によって前記受信したフレームにおいて前記指定情報が含まれていると判定された場合に、前記動作モードを、前記低消費電力モードから、前記車載装置における消費電力が前記低消費電力モードよりも高く且つ前記制御対象の制御が可能な通常モードへ切り替える第2切替部と、
を備える、
車載装置。
【請求項2】
前記車載装置は、前記動作モードが前記低消費電力モードである間に、前記通信インタフェースが前記通信線を通じてフレームを受信せずに設定期間が経過した場合に、前記動作モードを、前記低消費電力モードから前記スリープモードへ切り替える第3切替部をさらに備える、
請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記設定期間は、前記車載装置が属するクラスタに応じて設定される、
請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記設定期間は、前記車載装置が搭載される車両の状態に応じて設定される、
請求項2に記載の車載装置。
【請求項5】
前記設定期間は、前記車載装置がユーザに提供するサービスに応じて設定される、
請求項2に記載の車載装置。
【請求項6】
前記切替条件は、前記通信インタフェースが信号を受信したことである、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項7】
前記切替条件は、予め設定された前記スリープモードの実行期間が満了することである、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項8】
前記スリープモードの実行期間は、前記車載装置が属するクラスタに応じて設定される、
請求項7に記載の車載装置。
【請求項9】
前記スリープモードの実行期間は、前記車載装置が搭載される車両の状態に応じて設定される、
請求項7に記載の車載装置。
【請求項10】
前記スリープモードの実行期間は、前記車載装置がユーザに提供するサービスに応じて設定される、
請求項7に記載の車載装置。
【請求項11】
前記低消費電力モードは、前記制御対象の制御が不能な動作モードである、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項12】
前記スリープモードは、前記通信線を通じて受信したフレームの処理が不能な動作モードであり、
前記低消費電力モードは、前記通信線を通じて受信したフレームの処理が可能な動作モードである、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項13】
前記低消費電力モードは、前記通常モードよりも動作クロックが低い動作モードである、
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項14】
前記低消費電力モードは、前記通信インタフェースがフレームを送信不能な動作モードであり、
前記通常モードは、前記通信インタフェースがフレームを送信可能な動作モードである、
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項15】
前記請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の車載装置と、
前記通信線と、
前記通信線に接続され、前記通信線に前記フレームを出力する車載制御装置と、
を備える、
車載システム。
【請求項16】
制御対象を制御する車載装置によって用いられる制御方法であって、
前記車載装置の動作モードを、前記制御対象の制御が不能なスリープモードから、前記車載装置における消費電力が前記スリープモードよりも高い低消費電力モードへ切り替えるための切替条件が成立したか否かを判定するステップと、
前記切替条件が成立したと判定された場合に、前記動作モードを前記スリープモードから前記低消費電力モードへ切り替えるステップと、
前記動作モードが前記低消費電力モードである間に、通信インタフェースが通信線を通じて受信したフレームにおいて、前記車載装置を起動対象として指定する指定情報が含まれているか否かを判定するステップと、
前記受信したフレームにおいて前記指定情報が含まれていると判定された場合に、前記動作モードを、前記低消費電力モードから、前記車載装置における消費電力が前記低消費電力モードよりも高く且つ前記制御対象の制御が可能な通常モードへ切り替えるステップと、
を含む、
制御方法。
【請求項17】
制御対象を制御する車載装置によって用いられる制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記車載装置の動作モードを、前記制御対象の制御が不能なスリープモードから、前記車載装置における消費電力が前記スリープモードよりも高い低消費電力モードへ切り替えるための切替条件が成立したか否かを判定するステップと、
前記切替条件が成立したと判定された場合に、前記動作モードを前記スリープモードから前記低消費電力モードへ切り替えるステップと、
前記動作モードが前記低消費電力モードである間に、通信インタフェースが通信線を通じて受信したフレームにおいて、前記車載装置を起動対象として指定する指定情報が含まれているか否かを判定するステップと、
前記受信したフレームにおいて前記指定情報が含まれていると判定された場合に、前記動作モードを、前記低消費電力モードから、前記車載装置における消費電力が前記低消費電力モードよりも高く且つ前記制御対象の制御が可能な通常モードへ切り替えるステップと、
を実行させるための、
制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載装置、車載システム、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、エンジン、トランスミッション等を制御する制御系ECU(Electronic Control Unit)、ヘッドライト、パワーウインドウ等を制御するボディ系ECU、ナビゲーション装置、マルチメディア機器等の情報系ECU等、多種の車載装置が搭載される。近年、各車載装置をバスネットワークにて接続する車載システムにおいて、機能(サービス)毎に車載装置をPNC(Partial Network Cluster)と呼ばれるクラスタに分け、サービスの実行に用いられるPNCの車載装置をウェイクアップさせ、その他のPNCの車載装置をスリープさせるパーシャルネットワーク機能が発展してきた。パーシャルネットワーク機能は、ISO(International Organization for Standardization) 11898-6において規格化されている。
【0003】
非特許文献1には、ネットワークマネジメントメッセージ(NMメッセージ)を用いて、ECU間のパーシャルネットワーククラスタ(PNC:Partial Network Cluster)の要求及び開放情報を通信する技術が開示されている。
【0004】
特許文献1には、通信に異常が発生した場合にスリープ中のECUをウェイクアップさせる技術として、通常時は通信路経由でウェイクアップ信号を受信し、通信に異常が発生している場合には管理ECUから自ECU宛に電力供給路経由で送信される起動パルス信号を受信するECUが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-107672号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】AUTOSAR Layered Software Architecture,[online],[令和4年10月4日検索],インターネット<https://www.autosar.org/fileadmin/user_upload/standards/classic/4-3/AUTOSAR_EXP_LayeredSoftwareArchitecture.pdf> p.161-p.165
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
各車載装置は、通信線(バス)と接続する通信インタフェース(以下、「通信I/F」ともいう)を有する。通信I/Fは、パーシャルネットワーク機能に対応している通信I/F(以下、「対応I/F」ともいう)と、パーシャルネットワーク機能に対応していない通信I/F(以下、「非対応I/F」ともいう)とに分けられる。
【0008】
対応I/Fは、自装置が属するPNCが指定されたフレームを受信した場合、自装置をウェイクアップさせる。一方で、非対応I/Fは、通信線にブロードキャストされるフレームを受信すると、指定されているPNCにかかわらず、自装置をウェイクアップさせる。このように、非対応I/Fを含む車載装置の場合、自装置がサービスに用いられない場合であってもウェイクアップして電力を消費してしまう場合がある。
【0009】
例えば全ての車載装置に対応I/Fを搭載すると、車載装置の台数増加に伴ってパーシャルネットワーク機能の導入コストが増大する。対応I/Fの導入コストを削減するために非対応I/Fが搭載されたECUを併用すると、上記のとおりシステム全体における消費電力が増大する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に係る車載装置は、制御対象を制御する車載装置であって、通信線に接続された通信インタフェースと、前記車載装置の動作モードを、前記制御対象の制御が不可能なスリープモードから、前記車載装置における消費電力が前記スリープモードよりも高い低消費電力モードへ切り替えるための切替条件が成立したか否かを判定する第1判定部と、前記第1判定部によって前記切替条件が成立したと判定された場合に、前記動作モードを前記スリープモードから前記低消費電力モードへ切り替える第1切替部と、前記動作モードが前記低消費電力モードである間に、前記通信インタフェースが前記通信線を通じて受信したフレームにおいて、前記車載装置を起動対象として指定する指定情報が含まれているか否かを判定する第2判定部と、前記第2判定部によって前記受信したフレームにおいて前記指定情報が含まれていると判定された場合に、前記動作モードを、前記低消費電力モードから、前記車載装置における消費電力が前記低消費電力モードよりも高く且つ前記制御対象の制御が可能な通常モードへ切り替える第2切替部と、を備える。
【0011】
本開示は、上記のような特徴的な構成を備える車載装置、前記車載制御装置を含む車載システム、前記車載装置における特徴的な処理をステップとする制御方法、及び前記車載制御装置に特徴的な処理を実行させるための制御プログラムとして実現することができるだけでなく、前記車載制御装置の一部又は全部を半導体集積回路として実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、パーシャルネットワーク機能に対応していない通信I/Fが搭載された車載装置において、パーシャルネットワーク機能を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る車載システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係る非対応I/Fを有する統合ECUの構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施形態に係る非対応I/Fを有するECUの構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、クラスタテーブルの一例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係るECUの動作モードを説明するための図である。
図6図6は、実施形態に係る非対応I/Fを有するECUの機能の一例を示す機能ブロック図である。
図7図7は、CANのフレームフォーマットを示す模式図である。
図8図8は、データフィールドの各ビットとクラスタとの紐付けを例示する図である。
図9図9は、NMフレームに含まれるデータフィールドの一例を示す図である。
図10図10は、非対応I/Fを有するECUにおける動作モードの遷移の例を示す図である。
図11図11は、実施形態に係るECUの動作モードの切り替えを説明するための状態遷移図である。
図12図12は、実施形態に係るECUの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
【0015】
(1) 本実施形態に係る車載制御装置は、制御対象を制御する車載装置であって、通信線に接続された通信インタフェースと、前記車載装置の動作モードを、前記制御対象の制御が不可能なスリープモードから、前記車載装置における消費電力が前記スリープモードよりも高い低消費電力モードへ切り替えるための切替条件が成立したか否かを判定する第1判定部と、前記第1判定部によって前記切替条件が成立したと判定された場合に、前記動作モードを前記スリープモードから前記低消費電力モードへ切り替える第1切替部と、前記動作モードが前記低消費電力モードである間に、前記通信インタフェースが前記通信線を通じて受信したフレームにおいて、前記車載装置を起動対象として指定する指定情報が含まれているか否かを判定する第2判定部と、前記第2判定部によって前記受信したフレームにおいて前記指定情報が含まれていると判定された場合に、前記動作モードを、前記低消費電力モードから、前記車載装置における消費電力が前記低消費電力モードよりも高く且つ前記制御対象の制御が可能な通常モードへ切り替える第2切替部と、を備える。これにより、通信インタフェースがパーシャルネットワーク機能に対応していない場合でも、車載装置においてパーシャルネットワーク機能を利用することができる。
【0016】
(2) 上記(1)において、前記車載装置は、前記動作モードが前記低消費電力モードである間に、前記通信インタフェースが前記通信線を通じてフレームを受信せずに設定期間が経過した場合に、前記動作モードを、前記低消費電力モードから前記スリープモードへ切り替える第3切替部をさらに備えてもよい。これにより、低消費電力モードが長時間継続することによる電力消費を抑制することができる。
【0017】
(3) 上記(2)において、前記設定期間は、前記車載装置が属するクラスタに応じて設定されてもよい。これにより、車載装置が属するクラスタに応じた適切な期間において、車載装置が、指定情報を含むフレームの受信を低消費電力モードで待機することができる。
【0018】
(4) 上記(2)において、前記設定期間は、前記車載装置が搭載される車両の状態に応じて設定されてもよい。これにより、車両の状態に応じた適切な期間において、車載装置が、指定情報を含むフレームの受信を低消費電力モードで待機することができる。
【0019】
(5) 上記(2)において、前記設定期間は、前記車載装置がユーザに提供するサービスに応じて設定されてもよい。これにより、車載装置がユーザに提供するサービスに応じた適切な期間において、車載装置が、指定情報を含むフレームの受信を低消費電力モードで待機することができる。
【0020】
(6) 上記(1)から(5)のいずれか1つにおいて、前記切替条件は、前記通信インタフェースが信号を受信したことであってもよい。これにより、ユーザへのサービスの提供のために他の装置が信号を送信したことに応じて、車載装置の動作モードをスリープモードから低消費電力モードに切り替えることができる。
【0021】
(7) 上記(1)から(5)のいずれか1つにおいて、前記切替条件は、予め設定された前記スリープモードの実行期間が満了することであってもよい。これにより、一定の期間に応じて、車載装置の動作モードをスリープモードから低消費電力モードに切り替えることができる。
【0022】
(8) 上記(7)において、前記スリープモードの実行期間は、前記車載装置が属するクラスタに応じて設定されてもよい。これにより、車載装置が属するクラスタに応じた適切な期間において、車載装置がスリープモードで待機することができる。
【0023】
(9) 上記(7)において、前記スリープモードの実行期間は、前記車載装置が搭載される車両の状態に応じて設定されてもよい。これにより、車両の状態に応じた適切な期間において、車載装置がスリープモードで待機することができる。
【0024】
(10) 上記(7)において、前記スリープモードの実行期間は、前記車載装置がユーザに提供するサービスに応じて設定されてもよい。これにより、車載装置がユーザに提供するサービスに応じた適切な期間において、車載装置がスリープモードで待機することができる。
【0025】
(11) 上記(1)から(10)のいずれか1つにおいて、前記低消費電力モードは、前記制御対象の制御が不可能な動作モードであってもよい。これにより、低消費電力モードにおける電力消費を抑制することができる。
【0026】
(12) 上記(1)から(11)のいずれか1つにおいて、前記スリープモードは、前記通信線を通じて受信したフレームの処理が不可能な動作モードであり、前記低消費電力モードは、前記通信線を通じて受信したフレームの処理が可能な動作モードであってもよい。これにより、スリープモードにおいてフレームの処理のための電力消費を抑制することができ、低消費電力モードにおいて、必要とされるフレームの処理を実行することができる。
【0027】
(13) 上記(1)から(12)のいずれか1つにおいて、前記低消費電力モードは、前記通常モードよりも動作クロックが低い動作モードであってもよい。これにより、低消費電力モードにおける電力消費を抑制することができる。
【0028】
(14) 上記(1)から(13)のいずれか1つにおいて、前記低消費電力モードは、前記通信インタフェースがフレームを送信不可能な動作モードであり、前記通常モードは、前記通信インタフェースがフレームを送信可能な動作モードであってもよい。これにより、低消費電力モードにおいてフレームの送信のための電力消費を抑制することができ、通常モードにおいて、必要とされるフレームの送信を実行することができる。
【0029】
(15) 本実施形態に係る車載システムは、上記(1)から(14)のいずれか1つの車載装置と、前記通信線と、前記通信線に接続され、前記通信線に前記フレームを出力する車載制御装置と、を備える。これにより、車載装置の通信インタフェースがパーシャルネットワーク機能に対応していない場合でも、車載システムにおいてパーシャルネットワーク機能を利用することができる。
【0030】
(16) 本実施形態に係る制御方法は、制御対象を制御する車載装置によって用いられる制御方法であって、前記車載装置の動作モードを、前記制御対象の制御が不可能なスリープモードから、前記車載装置における消費電力が前記スリープモードよりも高い低消費電力モードへ切り替えるための切替条件が成立したか否かを判定するステップと、前記切替条件が成立したと判定された場合に、前記動作モードを前記スリープモードから前記低消費電力モードへ切り替えるステップと、前記動作モードが前記低消費電力モードである間に、通信インタフェースが通信線を通じて受信したフレームにおいて、前記車載装置を起動対象として指定する指定情報が含まれているか否かを判定するステップと、前記受信したフレームにおいて前記指定情報が含まれていると判定された場合に、前記動作モードを、前記低消費電力モードから、前記車載装置における消費電力が前記低消費電力モードよりも高く且つ前記制御対象の制御が可能な通常モードへ切り替えるステップと、を含む。これにより、通信インタフェースがパーシャルネットワーク機能に対応していない場合でも、車載装置においてパーシャルネットワーク機能を利用することができる。
【0031】
(17) 本実施形態に係る制御プログラムは、制御対象を制御する車載装置によって用いられる制御プログラムであって、コンピュータに、前記車載装置の動作モードを、前記制御対象の制御が不可能なスリープモードから、前記車載装置における消費電力が前記スリープモードよりも高い低消費電力モードへ切り替えるための切替条件が成立したか否かを判定するステップと、前記切替条件が成立したと判定された場合に、前記動作モードを前記スリープモードから前記低消費電力モードへ切り替えるステップと、前記動作モードが前記低消費電力モードである間に、通信インタフェースが通信線を通じて受信したフレームにおいて、前記車載装置を起動対象として指定する指定情報が含まれているか否かを判定するステップと、前記受信したフレームにおいて前記指定情報が含まれていると判定された場合に、前記動作モードを、前記低消費電力モードから、前記車載装置における消費電力が前記低消費電力モードよりも高く且つ前記制御対象の制御が可能な通常モードへ切り替えるステップと、を実行させる。これにより、通信インタフェースがパーシャルネットワーク機能に対応していない場合でも、車載装置においてパーシャルネットワーク機能を利用することができる。
【0032】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0033】
[1.車載システム]
図1は、本実施形態に係る車載システムの構成の一例を示すブロック図である。車載システム10は、車両に搭載される。
【0034】
本実施形態に係る車載システム10は、統合ECU200と、ECU300A,300B,300C,400A,400B,400Cとを含む。車載システム10は、統合ECU200,ECU300A,300B,300C,400A,400B,400C及びそれらを繋ぐ通信ケーブル(通信バス)によって構成される車載ネットワークである。
【0035】
複数のECU300A,300B,300C,400A,400B,400Cは、車両の各部に配置される。ECU300A,300B,300C,400A,400B,400Cは、車両の各部のハードウェアを個別に制御したり、車両の各部のハードウェアの状態を監視したりする。例えば、ECU300A,300B,300C,400A,400B,400Cは、制御系、ボディ系、情報系のECUである。なお、以下の説明では、ECU300A,300B,300Cを総称して「ECU300」ともいい、ECU400A,400B,400Cを総称して「ECU400」ともいう。
【0036】
統合ECU200は、ECU300A,300B,300C,400A,400B,400CのそれぞれとCAN(Controller Area Network)バスのような車載バス500A,500Bを介して接続されている。具体的には、統合ECU200は、通信インタフェース(通信I/F)210A,210Bを備える。通信I/F210Aは、車載バス500Aに接続されている。車載バス500Aには、ECU300A,300B,400A,400Bが接続されている。通信I/F210Bは、車載バス500Bに接続されている。車載バス500Bには、ECU300C,400Cが接続されている。統合ECU200は、ECU300A,300B,300C,400A,400B,400Cのそれぞれと相互に通信することができる。以下、統合ECU200を、「ECU200」ということがある。
【0037】
ECU300A,300B,300Cのそれぞれは、車載バスに接続された通信I/F310を備える。ECU400A,400B,400Cのそれぞれは、車載バスに接続された通信I/F410を備える。
【0038】
図1において、斜線ハッチングで示す310は、パーシャルネットワーク機能に対応する対応I/Fであり、無模様の通信I/F210A,210B,410は、パーシャルネットワーク機能に対応していない非対応I/Fである。すなわち、車載システム10は、対応I/Fを有するECU300と、非対応I/Fを有するECU200,400とが混在している。ECU200,400は、「車載装置」の一例である。
【0039】
ECU200,300,400は、パーシャルネットワーク機能に対応した通信プロトコルを使用する。通信プロトコルは、例えば、CAN、CAN FD(CAN with Flexible Data Rate)、又はCAN PN(CAN with Partial Networking)である。
【0040】
統合ECU200は、ECU300A,300B,300C,400A,400B,400C間の通信を中継するゲートウェイとしての機能を有する。ECU300,400は、フレームを送信することができる。フレームの一例は、ネットワーク管理用のNM(Network Management)フレームである。統合ECU200は、異なるバスに接続されたECU間のフレームを中継する。例えば、統合ECU200は、車載バス500Aに接続されたECU300Aと、車載バス500Bに接続されたECU400Cとの間でフレームを中継することができる。これにより、例えば、車載バス500Aに接続されたECU300A,300B,400A,400Bと、車載バス500Bに接続されたECU300C,400Cとの間で、フレームの送受信が可能である。
【0041】
[2.統合ECUの構成]
本実施形態では、非対応I/Fを有する統合ECU200及びECU400において、パーシャルネットワーク機能を利用可能とする。以下、統合ECU200のハードウェア構成について説明する。
【0042】
図2は、本実施形態に係る非対応I/Fを有する統合ECUの構成の一例を示すブロック図である。統合ECU200は、マイクロコントローラ220と、通信I/F210A,210Bとを含む。
【0043】
マイクロコントローラ220は、例えば1チップの半導体集積回路であり、プロセッサ201と、不揮発性メモリ202と、揮発性メモリ203と、周辺回路204と、入出力インタフェース(I/O)205とを含む。
【0044】
揮発性メモリ203は、例えばSRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリである。不揮発性メモリ202は、例えばフラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の半導体メモリである。
【0045】
プロセッサ201は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。ただし、プロセッサ201は、CPUに限られない。プロセッサ201は、GPU(Graphics Processing Unit)であってもよい。プロセッサ201は、コンピュータプログラムを実行可能に構成される。ただしプロセッサ201は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を一部に含んでもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを一部に含んでもよい。
【0046】
不揮発性メモリ202には、コンピュータプログラムである制御プログラム206及び制御プログラム206の実行に使用されるデータが格納される。制御プログラム206は、フラッシュメモリ、ROM、CD-ROMなどの記録媒体に記憶させることができる。プロセッサ201は、制御プログラム206によって、統合ECU200においてパーシャルネットワーク機能を利用可能とする。
【0047】
不揮発性メモリ202には、クラスタテーブル207、クラスタ情報208及び低クロック期間情報209が格納される。クラスタテーブル207、クラスタ情報208及び低クロック期間情報209については後述する。
【0048】
周辺回路204は、マイクロコントローラ220に種々の機能を実現させるための回路である。例えば、周辺回路204は、汎用入出力ポート(GPIO)、アナログ/デジタル変換器、タイマ、シリアル通信等の回路を含む。シリアル通信回路は、例えば、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)、I2C(Inter-Integrated Circuit)、SPI(serial peripheral interface)等の規格に準拠している。
【0049】
I/O205は、通信I/F210A,210Bに接続されている。I/O205は、通信I/F210A,210Bとの入出力に使用されるポートである。
【0050】
通信I/F210A,210Bは、上述した車載ネットワーク用の通信プロトコルに準拠した通信インタフェースである。上述したように、通信I/F210A,210Bは、パーシャルネットワーク機能に対応していない非対応I/Fである。
【0051】
通信I/F210Aは、制御回路211A及びPHY212Aを含む。制御回路211Aは、送受信するフレームの処理を実行するための回路である。制御回路211Aは、スリープ期間情報213Aを格納したメモリを有している。制御回路211Aは、スリープ期間情報213Aを使用したタイマ機能を実行可能である。スリープ期間情報213Aについては後述する。
【0052】
PHY212Aは、車載バス500Bに接続されており、車載バス500B側のアナログ信号と、制御回路211A側のデジタル信号とを相互変換する。PHY212Aは、パーシャルネットワーク機能に対応しておらず、フレームにおいてウェイクアップ対象として指定されたPNCを解釈することはできない。
【0053】
通信I/F210Bは、制御回路211B及びPHY212Bを含む。制御回路211Bは、制御回路211Aと同様の構成を有する。ただし、制御回路211Aがスリープ期間情報213Aを使用したタイマ機能を実行可能であるため、制御回路211Bは、同様のタイマ機能を実行しなくてもよい。つまり、制御回路211Bは、スリープ期間情報を記憶していなくてもよい。
【0054】
PHY212Bは、車載バス500Cに接続されており、車載バス500C側のアナログ信号と、制御回路211B側のデジタル信号とを相互変換する。PHY212Aと同様に、PHY212Bは、パーシャルネットワーク機能に対応していない。
【0055】
[3.ECUの構成]
以下、パーシャルネットワーク機能に対応していないECU400のハードウェア構成について説明する。
【0056】
図3は、本実施形態に係る非対応I/Fを有するECUの構成の一例を示すブロック図である。ECU400は、マイクロコントローラ420と、通信I/F410とを含む。
【0057】
マイクロコントローラ420は、上述した統合ECU200のマイクロコントローラ220と同じ構成を有する。つまり、マイクロコントローラ420は、プロセッサ401と、不揮発性メモリ402と、揮発性メモリ403と、周辺回路404と、I/O405とを含む。
【0058】
不揮発性メモリ402には、コンピュータプログラムである制御プログラム406及び制御プログラム406の実行に使用されるデータが格納される。制御プログラム406は、フラッシュメモリ、ROM、CD-ROMなどの記録媒体に記憶させることができる。プロセッサ401は、制御プログラム406によって、ECU400においてパーシャルネットワーク機能を利用可能とする。
【0059】
不揮発性メモリ402には、クラスタ情報408及び低クロック期間情報409が格納される。クラスタ情報408及び低クロック期間情報409については後述する。
【0060】
周辺回路404は、例えば、UART、I2C、SPI等の規格に準拠したシリアル通信回路を含む。周辺回路404の当該シリアル通信回路は、ECU400の制御対象のデバイス又はセンサに接続されており、センサから出力された信号を受信したり、制御対象へ制御信号を送信したりすることができる。
【0061】
I/O405は、通信I/F410に接続されている。I/O405は、通信I/F410との入出力に使用されるポートである。
【0062】
通信I/F410は、上述した車載ネットワーク用の通信プロトコルに準拠した通信インタフェースである。上述したように、通信I/F410は、パーシャルネットワーク機能に対応していない非対応I/Fである。
【0063】
通信I/F410は、制御回路411及びPHY412を含む。制御回路411は、送受信するフレームの処理を実行するための回路である。制御回路411は、スリープ期間情報413を格納したメモリを有している。制御回路411は、スリープ期間情報413を使用したタイマ機能を実行可能である。スリープ期間情報413については後述する。
【0064】
PHY412は、車載バス500A又は500Cに接続されており、車載バス側のアナログ信号と、制御回路411側のデジタル信号とを相互変換する。PHY412は、パーシャルネットワーク機能に対応しておらず、フレームにおいてウェイクアップ対象として指定されたPNCを解釈することはできない。
【0065】
[4.クラスタ]
クラスタについて説明する。ECU200,300,400のそれぞれは、少なくとも1個のクラスタに属している。統合ECU200の不揮発性メモリ202は、ECU200,ECU300,400と、ECU200,300,400のそれぞれが属するクラスタとを紐付けたクラスタテーブル207を格納する(図2参照)。
【0066】
クラスタは、例えば、ユーザに提供されるサービス毎に定められてもよい。サービスは、1つ又は複数のECU200,300,400によって実行される。
【0067】
複数のECUによって実行されるサービスの例として、ヘッドライトのオートハイビーム制御、オートクルーズ走行、ドアロック解除、エアコンの遠隔制御、盗難防止アラーム通知、電気自動車における走行用バッテリ(高圧バッテリ)の充電、走行用バッテリから補機バッテリ(低圧バッテリ)への充電等がある。
【0068】
ヘッドライトのオートハイビーム制御は、ヘッドライトを制御するヘッドライトECUと、車両走行用のECU(エンジンECU、ブレーキECU等)とによって実行される。このため、ヘッドライトECUと車両走行用のECUとは同じクラスタに属する。
【0069】
オートクルーズ走行は、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems) ECUと、レーダの検知結果を処理し、車両外部の物体を検知するレーダECUと、車両走行用のECUとによって実行される。このため、ADAS ECUとレーダECUと車両走行用のECUとは同じクラスタに属する。
【0070】
ドアロック解除は、例えば、車両のボディの可動部(ドアロック、パワーウインドウ、ドアミラー等)を制御するボディECUと、スマートキー(キーフォブ)から送信されるコードを認証する認証ECUとによって実行される。このため、ボディECUと認証ECUとは同じクラスタに属する。
【0071】
エアコンの遠隔制御は、例えば、エアコンを制御するエアコンECUと、エンジンを制御するエンジンECUとによって実行される。このため、エアコンECUとエンジンECUとは同じクラスタに属する。
【0072】
盗難防止アラーム通知は、例えば、警報を発するアラームECUと、車外の装置(例えば、警備会社のサーバ)と通信する車外通信ECUとによって実行される。このため、アラームECUと車外通信ECUとは同じクラスタに属する。
【0073】
走行用バッテリの充電は、例えば、走行用バッテリ及び補機バッテリの充電を制御する充電ECUと、走行用バッテリを管理するバッテリ管理ECUとによって実行される。このため、充電ECUとバッテリ管理ECUとは同じクラスタに属する。
【0074】
補機バッテリの充電は、充電ECUと、バッテリ管理ECUと、走行用バッテリから出力される直流電圧を変換するDC/DCコンバータを制御する電力変換ECUとによって実行される。このため、充電ECUと、バッテリ管理ECUと、電力変換ECUとは同じクラスタに属する。
【0075】
1つのECUによって実行されるサービスもある。したがって、1つのECUのみを含むクラスタも設定可能である。1つのECUによって実行されるサービスの例として、ワイパー駆動、ステアリングの自動調整、シートの自動調整等がある。
【0076】
ワイパー駆動は、ワイパーを制御するワイパーECUによって実行される。このため、ワイパーECUのみが、1つのクラスタに属する。
【0077】
ステアリングの自動調整は、パワーステアリングを制御するパワステECUによって実行される。このため、パワステECUのみが、1つのクラスタに属する。
【0078】
シートの自動調整は、パワーシートを制御するシートECUによって実行される。このため、シートECUのみが、1つのクラスタに属する。
【0079】
図4は、クラスタテーブルの一例を示す図である。図4に示すクラスタテーブル207では、8個のクラスタPNC1~PNC8に、それぞれどのECU200,300,400が属しているかを示している。なお、図4におけるクラスタ数は例示であり、9個以上のクラスタが用意されてもよいし。8個未満のクラスタが用意されてもよい。テーブル中において、「1」はその行のクラスタにECU200,300,400が属していることを示し、「0」はその行のクラスタにECU200,300,400が属していないことを示している。
【0080】
例えば、クラスタPNC1には、ECU300A,300B,400A,400B,200が属している。クラスタPNC2には、ECU300B,300C,400C,200が属している。クラスタPNC3には、ECU300A,300B,300C,400A,400B,200が属している。クラスタPNC8には、ECU200,300,400が属しておらず、いわゆる「空き」のクラスタとなっている。以下の説明では、「クラスタPNC1に属するECU300A,300B,400A,400B,200をウェイクアップさせる」ことを、単に「クラスタPNC1をウェイクアップさせる」とも表現する。他のクラスタPNC2~PNC8についても同様の表現を用いる。
【0081】
[5.動作モード]
パーシャルネットワーク機能に非対応のECU200,400の動作モードの説明に先立ち、パーシャルネットワーク機能に対応したECU300の動作モード及びウェイクアップ動作について説明する。
【0082】
ECU300の動作モードには、通常モード及びスリープモードが含まれる。通常モードは、ECU300が稼働している状態であり、制御対象を制御し、他のECU200,300,400と通信することが可能である。スリープモードは、通信I/F110A,110B,310の一部の機能を除いてECU300が停止した状態である。
【0083】
CANでは、パーシャルネットワーク機能によって一部のクラスタをウェイクアップさせる場合、ウェイクアップ対象のクラスタを指定したフレーム(管理制御フレーム。以下、「NMフレーム」ともいう)が通信バス400A,400B,400C上を送信される。ウェイクアップの要求、すなわち、ウェイクアップ対象のクラスタを指定したNMフレームは、例えば、統合ECU200によって送信される。統合ECU200の場合、クラスタテーブル207を用いてNMフレームが作成される。ただし、NMフレームの送信元は、統合ECU200に限られず、ECU300,400がNMフレームを送信してもよい。
【0084】
スリープモードにあるECU300の通信I/F110A,110B,310は、NMフレームを受信し、当該NMフレームにおいて自装置が属するクラスタが指定されているか否かを判断する。自装置が属するクラスタが指定されていない場合、ECU300はそのままスリープモードを維持する。自装置が属するクラスタが指定されている場合、通信I/F110A,110B,310はプロセッサに割り込みをかけ、スリープモードから通常モードへの切り替えを指示する。これにより、指定されたクラスタに属するECU300がウェイクアップする。
【0085】
次に、パーシャルネットワーク機能に非対応のECU200,400の動作モードについて説明する。
【0086】
ECU200,400の動作モードには、通常モード、低クロックモード、及びスリープモードが含まれる。図5は、実施形態に係るECUの動作モードを説明するための図である。
【0087】
具体的には、ECU200,400の動作モードとは、マイクロコントローラ220,420の動作モードである。動作モードによって、プロセッサ201,401の動作状態、通信I/F210A,210B,410の動作状態、及び周辺回路204,404の動作状態が異なる。
【0088】
通常モードでは、プロセッサ201,401が高クロックで動作する。低クロックモードでは、プロセッサ201,401が低クロック(すなわち、通常モードよりも低いクロック)で動作する。スリープモードでは、プロセッサ201,401が停止される。
【0089】
通常モードでは、通信I/F210A,210B,410が動作する。低クロックモードでも、通信I/F210A,210B,410はフレームの送信機能を除き動作する。つまり、通常モードでは、通信I/F210A,210B,410はフレームの送受信を含む処理が可能である。低クロックモードでは、通信I/F210A,210B,410はフレームの受信を含む処理が可能であるが、フレームの送信が不可能である。スリープモードでは、通信I/F210A,210B,410は一部の機能を停止する。具体的には、スリープモードにおいて、通信I/F210A,210B,410は後述するドミナントの検出機能と、タイマ機能とを実行し、その他の機能は停止する。つまり、スリープモードでは、通信I/F210A,210B,410はフレームの送受信を含む処理が不可能である。
【0090】
通常モードでは、周辺回路204,404が動作する。つまり、通常モードでは、ECU200,400は、センサから出力された信号を受信したり、制御対象を制御したりすることができる。低クロックモードでは、周辺回路204,404は停止される。スリープモードでも、周辺回路204,404は停止される。つまり、低クロックモード及びスリープモードでは、ECU200,400は、センサから出力された信号を受信したり、制御対象を制御したりすることができない。
【0091】
上記のような通常モードでは、ECU200,400による消費電力は大きい。スリープモードでは、ECU200,400による消費電力は小さい。低クロックモードにおけるECU200,400による消費電力は、通常モードでの消費電力よりも小さく、スリープモードでの消費電力よりも大きい。
【0092】
[6.ECUの機能]
図6は、本実施形態に係る非対応I/Fを有するECUの機能の一例を示す機能ブロック図である。ここでは、代表してECU400の機能を説明するが、統合ECU200の機能も同様である。
【0093】
ECU400は、第1判定部421と、第1切替部422と、第2判定部423と、第2切替部424と、第3切替部425と、第3判定部426と、第4切替部427との各機能を有する。第1判定部421及び第1切替部422は、制御回路411の機能である。第2判定部423、第2切替部424、第3切替部425、第3判定部426、及び第4切替部427は、プロセッサ401の機能である。第2判定部423、第2切替部424、第3切替部425、第3判定部426、及び第4切替部427の各機能は、プロセッサ401が制御プログラム406を実行することにより実現される。
【0094】
第1判定部421は、ECU400の動作モードを、スリープモードから低消費電力モードへ切り替えるための切替条件が成立したか否かを判定する。
【0095】
切替条件の一例は、通信I/F410が信号を受信したことである。
【0096】
図7は、CANのフレームフォーマットを示す模式図である。図7には、CANの標準フォーマットのデータフレーム構造が示される。図中の上側の線はリセッシブを、下側の線はドミナントを示す。図7に示すように、CANのデータフレームには、SOF(Start Of Frame)、CAN ID、RTR(Remote transmission Request)、コントロールフィールド、データフィールド、CRC(Cyclic Redundancy Check)シーケンス、CRCデリミタ、ACK(Acknowledgement)スロット、ACKデリミタ、EOF(End Of Frame)の各フィールドが含まれる。SOFはフレームの開始を示す。CAN IDは、ECU及びフレームの種類を識別するために用いられる。RTRはデータフレームとリモートフレームとを識別するために使用される。データフレームの場合、RTRはドミナントである。コントロールフィールドには通信制御に用いられる情報が格納される。データフィールドには、最大8バイトの実データ(ペイロード)が格納される。CRCシーケンス及びCRCデリミタは合わせてCRCフィールドと呼ばれ、CRCフィールドには一種の誤り検出符号が格納される。ACKスロット及びACKデリミタは合わせてACKフィールドと呼ばれ、ACKフィールドにはCRCフィールド部分までを正常に受信できたか否かを示す情報が格納される。EOFはフレームの終わりを示す。
【0097】
フレームは、ドミナントで開始される。切替条件の具体的な例は、通信I/F410がドミナントを検出したことである。第1判定部421は、スリープモードにおいて機能する。上述したように、スリープモードでは、通信I/F410はフレームの受信は不能であるが、ドミナントの検出は可能である。他のECUがフレームを送信したときに、通信I/F410はそのフレームの先頭のドミナントを検出する。第1判定部421は、通信I/F410によってドミナントが検出されたか否かを判定する。
【0098】
切替条件の他の例は、スリープ期間が満了することである。スリープ期間は、スリープモードの実行期間である。図3に示すように、制御回路411はスリープ期間情報413を記憶している。スリープ期間情報は、スリープ期間を示す情報である。
【0099】
一例では、スリープ期間は、ECU400が属するクラスタに応じて設定される。例えば、PNC1ではスリープ期間が第1期間に設定され、PNC2ではスリープ期間が第1期間とは異なる第2期間に設定される。このように、クラスタ毎にスリープ期間を設定することができる。
【0100】
他の例では、スリープ期間は、ECU400が搭載される車両の状態に応じて設定される。例えば、車両状態として、IG(イグニッション)オン状態、ACC(アクセサリ)状態、走行状態、停車中であり且つ乗員が乗車していない状態(以下、「非乗車停止状態」ともいう)、停車中であり且つ乗員が乗車している状態(以下、「乗車停止状態」ともいう)、電気自動車では走行用バッテリを充電している充電状態等がある。このように、車両状態毎にスリープ期間を設定することができる。
【0101】
さらに他の例では、スリープ期間は、ECU400がユーザに提供するサービスに応じて設定される。例えば、ECU400がヘッドライトのオートハイビーム制御を提供するヘッドライトECUである場合、オートハイビーム制御に対応したスリープ期間が設定される。例えば、ECU400がドアロック解除を提供するボディECUである場合、ドアロック解除に対応したスリープ期間が設定される。
【0102】
サービスには、即時性が要求される即時性サービスと、即時性が要求されない非即時性サービスとが含まれる。即時性サービスとは、サービスの実行が要求されてから即時に実行する必要があるサービスである。具体的には、即時性サービスとは、サービスの実行を要求するフレームをECUが受信してから、ECUにおいて当該サービスのための処理が実行されるまでの許容時間が、基準値未満のサービスである。非即時性サービスとは、サービスの実行が要求されてから即時に実行する必要がないサービスである。具体的には、非即時性サービスとは、サービスの実行を要求するフレームをECUが受信してから、ECUにおいて当該サービスのための処理が実行されるまでの許容時間が、基準値以上のサービスである。
【0103】
ECU400が提供するサービスが即時性サービスである場合、ECU400が長期間スリープモードにあると、サービスを即時に実行できない可能性がある。このため、ECU400が提供するサービスが即時性サービスである場合、スリープ期間は短期間に設定される。これに対して、ECU400が提供するサービスが非即時性サービスである場合、スリープ期間は、即時性サービスを提供するECUのスリープ期間よりも長く設定される。
【0104】
上述したように、クラスタはサービス毎に定めることができる。例えば、ワイパー駆動は、即時性サービスである。このため、ワイパー駆動に対応するクラスタに属するワイパーECUには、短いスリープ期間が設定される。即時性サービスの他の例は、ヘッドライトのオートハイビーム制御、オートクルーズ走行、ドアロック解除、ステアリングの自動調整、シートの自動調整である。これらのサービスに対応するクラスタに属するECUには、短いスリープ期間(例えば、所定の基準値未満のスリープ期間)が設定される。なお、即時性サービスの全てで同一のスリープ期間が設定されてもよいし、即時性サービスによって異なるスリープ期間が設定されてもよい。
【0105】
例えば、エアコンの遠隔制御は、非即時性サービスである。このため、エアコンの遠隔制御に対応するクラスタに属するエアコンECU及びエンジンECUには、長いスリープ期間が設定される。非即時性サービスの他の例は、盗難防止アラーム通知、電気自動車における走行用バッテリの充電、走行用バッテリから補機バッテリへの充電である。これらのサービスに対応するクラスタに属するECUには、長いスリープ期間(例えば、所定の基準値以上のスリープ期間)が設定される。なお、非即時性サービスの全てで同一のスリープ期間が設定されてもよいし、非即時性サービスによって異なるスリープ期間が設定されてもよい。
【0106】
サービスは、車両状態毎に分類することができる。IGオン状態に対応するサービスは、例えば、ワイパー駆動及びヘッドライトのオートハイビーム制御である。走行状態に対応するサービスは、例えば、オートクルーズ走行である。停車乗車状態に対応するサービスは、例えば、ドアロック解除、ステアリングの自動調整、シートの自動調整である。停車非乗車状態に対応するサービスは、例えば、エアコンの遠隔制御、盗難防止アラーム通知である。電気自動車の充電状態に対応するサービスは、走行用バッテリの充電、走行用バッテリから補機バッテリへの充電である。
【0107】
IGオン状態、走行状態、停車乗車状態では、即時のサービス実行が求められる。すなわち、IGオン状態、走行状態、及び停車乗車状態のそれぞれに対応するサービスは、即時性サービスである。このため、IGオン状態、走行状態、及び停車乗車状態のそれぞれに対応するサービスを実行するECUには、短いスリープ期間が設定される。
【0108】
停車非乗車状態及び充電状態では、即時のサービス提供は必ずしも求められない。すなわち、停車非乗車状態及び充電状態のそれぞれに対応するサービスは、非即時性サービスである。このため、停車非乗車状態及び充電状態のそれぞれに対応するサービスを実行するECUには、長いスリープ期間が設定される。
【0109】
なお、全てのECU200,400に対して、共通のスリープ期間を設定してもよい。
【0110】
図6に戻り、切替条件は、通信I/F410がドミナントを検出したことと、スリープ期間が満了したこととの両方を含んでもよい。すなわち、通信I/F410がドミナントを検出した場合、又は、スリープ期間が満了した場合に、第1判定部421は切替条件が成立したと判定してもよい。
【0111】
第1切替部422は、第1判定部421によって切替条件が成立したと判定された場合に、ECU400の動作モードをスリープモードから低クロックモードへ切り替える。具体的には、切替条件が成立した場合、第1切替部422はプロセッサ401へ割り込みをかけ、低クロックモードへの移行を指示する。これにより、ECU400(マイクロコントローラ420)の動作モードがスリープモードから低クロックモードへ切り替わる。
【0112】
低クロックモードでは、プロセッサ401が低クロック動作する。プロセッサ401の機能である第2判定部423は、ECU400の動作モードが低クロックモードである間に、通信I/F410が車載バス500を通じて受信したフレーム(NMフレーム)において、ECU400を起動対象として指定する指定情報が含まれているか否かを判定する。なお、ここでいう「起動」とは、ECU400が通常モードでの動作を開始することをいい、「ウェイクアップ」を含む。
【0113】
上述したように、NMフレームでは、ウェイクアップ対象のクラスタが指定される。指定情報は、ウェイクアップ対象のクラスタを指定する情報である。具体的な一例では、NMフレームには、複数のクラスタPNC1~PNC8のうちウェイクアップさせるクラスタを指定するデータフィールドF1が含まれている。
【0114】
図8は、データフィールドF1の各ビットとクラスタPNC1~PNC8との紐付けを例示する図である。データフィールドF1は、例えば8ビットで構成され、各ビットにクラスタPNC1~PNC8が割り当てられている。例えば、1番目のビット(Bit0)にクラスタPNC1が割り当てられている。
【0115】
図9は、NMフレームに含まれるデータフィールドF1の一例を示す図である。データフィールドF1における各ビットは、ウェイクアップ対象であるか否かを示すフラグである。対応するクラスタがウェイクアップ対象でない場合、ビットは「0」に設定される。対応するクラスタがウェイクアップ対象である場合、ビットは「1」に設定される。例えば、図9のデータフィールドF1では、Bit0が「1」となっており、Bit1~7は「0」となっている。つまり、クラスタPNC1がウェイクアップ対象として指定されている。
【0116】
以下では、NMフレームのデータフィールドF1において、ビットを「1」に設定することを、そのビットに対応するクラスタを「有効にする」と適宜表現し、ビットを「0」に設定することを、そのビットに対応するクラスタを「無効にする」と適宜表現する。
【0117】
各ECU200,400は、不揮発性メモリ202,402にクラスタ情報208,408を格納している(図2及び図3参照)。クラスタ情報208,408は、自装置が属するクラスタを示す情報である。例えば、ECU400Aの場合、図4に示すクラスタテーブル207において、左から4列目(ECU400Aが属するクラスタを示す列)と同じ情報をクラスタ情報408として不揮発性メモリ402に記憶している。ECU400Bの場合、クラスタテーブル207において、左から5列目と同じ情報をクラスタ情報408として不揮発性メモリ402に記憶している。
【0118】
図6に戻り、低クロックモードにあるECU400が、データフィールドF1を含むNMフレームを車載バス500を介して受信すると、第2判定部423は、不揮発性メモリ402に格納されているクラスタ情報408とデータフィールドF1とが適合するか否かを判断する。具体的には、第2判定部423は、クラスタ情報408のビットと、データフィールドF1のうち対応するビットとの積を1ビットごとに算出する。算出後に「1」となるビットがある場合には、クラスタ情報408とデータフィールドF1とが「適合する」、すなわち、NMフレームにおいて、ECU400を起動対象として指定する指定情報が含まれていると判定する。
【0119】
図4図8及び図9の例では、クラスタ情報408は「101・・・0」という8ビットのパターンを有しており、データフィールドF1は「100・・・0」という8ビットのパターンを有している。図8により、クラスタ情報408のnビット目が、データフィールドF1のnビット目に対応している。この例では、クラスタ情報408の1ビット目とデータフィールドF1の1ビット目の積が「1」となるため、NMフレームにおいて、ECU400Aを起動対象として指定する指定情報が含まれている。
【0120】
図6に戻り、第2切替部424は、第2判定部423によってNMフレームにおいて自装置をウェイクアップ対象として指定する指定情報が含まれていると判定された場合に、ECU400(マイクロコントローラ420)の動作モードを、低クロックモードモードから通常モードへ切り替える。
【0121】
第3切替部425は、ECU400の動作モードが低クロックモードである間に、通信I/F410が車載バス500を通じてフレームを受信せずに低クロック期間が経過した場合に、ECU400の動作モードを、低クロックモードからスリープモードへ切り替える。低クロック期間は、「設定期間」の一例である。
【0122】
低クロック期間は、低クロックモードの最短実行期間である。つまり、ECU400の動作モードが低クロックモードに切り替わってから、フレームを受信せずに低クロック期間が経過した場合、低クロックモードからスリープモードへECU400の動作モードが切り替わる。低クロックモードの間にECU400がフレームを受信すると、低クロック期間はリセットされる。この場合、ECU400が最後にフレームを受信してから低クロック期間経過後に、動作モードがスリープモードへ移行する。
【0123】
図3に示すように、不揮発性メモリ402は低クロック期間情報409を記憶している。低クロック期間情報409は、低クロック期間を示す情報である。
【0124】
一例では、低クロック期間は、ECU400が属するクラスタに応じて設定される。例えば、PNC1では低クロック期間が第3期間に設定され、PNC2では低クロック期間が第3期間とは異なる第4期間に設定される。このように、クラスタ毎に低クロック期間を設定することができる。
【0125】
他の例では、低クロック期間は、ECU400が搭載される車両の状態(IGオン状態、ACC状態、走行状態、非乗車停止状態、乗車停止状態、充電状態等)に応じて設定される。
【0126】
さらに他の例では、低クロック期間は、ECU400がユーザに提供するサービスに応じて設定される。例えば、ECU400がヘッドライトECUである場合、オートハイビーム制御に対応した低クロック期間が設定される。例えば、ECU400がボディECUである場合、ドアロック解除に対応した低クロック期間が設定される。
【0127】
図10は、非対応I/F410を有するECU400における動作モードの遷移の例を示す図である。上側の例では、低クロックモードが短期間である。下側の例では、低クロックモードが短期間である。ECU400の動作モードがスリープモードである場合に、ドミナントが検出されると、動作モードがスリープモードから低クロックモードに切り替わる。低クロックモードが満了すると、動作モードは低クロックモードからスリープモードに切り替わる。低クロック時間が短い上側の例では、動作モードが頻繁に切り替わる。このため、スリープモードの総期間が増え、消費電力を抑えることができる。一方、低クロック時間が長い下側の例では、期間全体に対して低クロックモードの期間が占める割合が高い。したがって、NMフレームにおいてウェイクアップが指されると即座に動作モードを通常モードに切り替えることができる。
【0128】
ECU400が提供するサービスが即時性サービスである場合、ECU400が頻繁にスリープモードに切り替わると、サービスを即時に実行できない可能性がある。このため、ECU400が提供するサービスが即時性サービスである場合、低クロック期間は長期間に設定される(図10の下側の例)。これに対して、ECU400が提供するサービスが非即時性サービスである場合、低クロック期間は、即時性サービスを提供するECUの低クロック期間よりも短く設定される(図10の上側の例)。これにより、短い低クロック期間が満了するとスリープモードに切り替わるため、消費電力を抑えることができる。
【0129】
上述したように、クラスタはサービス毎に定めることができる。例えば、即時性サービスであるワイパー駆動に対応するクラスタに属するワイパーECUには、長い低クロック期間が設定される。上述したように、即時性サービスの例として、ヘッドライトのオートハイビーム制御、オートクルーズ走行、ドアロック解除、ステアリングの自動調整、シートの自動調整がある。これらのサービスに対応するクラスタに属するECU400には、長い低クロック期間(例えば、所定の基準値以上の低クロック期間)が設定される。なお、即時性サービスの全てで同一の低クロック期間が設定されてもよいし、即時性サービスによって異なる低クロック期間が設定されてもよい。
【0130】
例えば、非即時性サービスであるエアコンの遠隔制御に対応するクラスタに属するエアコンECU及びエンジンECUには、長い低クロック期間が設定される。上述したように、非即時性サービスの例として、盗難防止アラーム通知、電気自動車における走行用バッテリの充電、走行用バッテリから補機バッテリへの充電がある。これらのサービスに対応するクラスタに属するECUには、短い低クロック期間(例えば、所定の基準値未満の低クロック期間)が設定される。なお、非即時性サービスの全てで同一の低クロック期間が設定されてもよいし、非即時性サービスによって異なる低クロック期間が設定されてもよい。
【0131】
サービスは、車両状態毎に分類することができる。即時性サービスであるIGオン状態、走行状態、及び停車乗車状態のそれぞれに対応するサービスを実行するECUには、長い低クロック期間が設定される。
【0132】
非即時性サービスである停車非乗車状態及び充電状態のそれぞれに対応するサービスを実行するECUには、長い低クロック期間が設定される。
【0133】
なお、全てのECU200,400に対して、共通の低クロック期間を設定してもよい。
【0134】
図6に戻り、第3判定部426は、ECU400の動作モードが通常モードである間に、予め設定されたスリープ条件が成立したか否かを判定する。スリープ条件は、ECU毎に設定される。
【0135】
第4切替部427は、第3判定部426によってスリープ条件が成立したと判定された場合に、ECU400の動作モードを、通常モードからスリープモードへ切り替える。
【0136】
上述したようなECU400の機能により、ECU400の動作モードは、スリープモード、低クロックモード、及び通常モードの間で遷移する。図11は、実施形態に係るECUの動作モードの切り替えを説明するための状態遷移図である。スリープモードにおいて、切替条件が成立すると、ECU400の動作モードは低クロックモードに切り替わる。
【0137】
低クロックモードにおいて、自装置が属するクラスタがNMフレームにおいてウェイクアップ対象に指定されている、つまり、NMフレームにおいてウェイクアップ対象に指定されたクラスタが、自装置が属するクラスタに適合する場合、ECU400の動作モードは通常モードに切り替わる。
【0138】
低クロックモードにおいて、フレームを受信せずに低クロック期間が満了した場合、ECU400の動作モードはスリープモードに切り替わる。
【0139】
通常モードにおいて、スリープ条件が成立した場合、ECU400の動作モードはスリープモードに切り替わる。
【0140】
[7.ECUの動作]
以下、本実施形態に係る非対応I/Fを有するECUの動作を説明する。ここでは、代表してECU400の動作を説明するが、統合ECU200の動作も同様である。
【0141】
図12は、本実施形態に係るECUの動作の一例を示すフローチャートである。
【0142】
ECU400がスリープモードにある場合に、制御回路411は、切替条件が成立したか否かを判定する(ステップS101)。切替条件が成立していない場合(ステップS101においてNO)、制御回路411はステップS101を再度実行する。
【0143】
切替条件が成立した場合(ステップS101においてYES)、制御回路411は、プロセッサ401に割り込みをかけ、低クロックモードへの切り替えを指示する(ステップS102)。割り込み信号によってプロセッサ401が起動し、ECU400の動作モードがスリープモードから低クロックモードに切り替わる。
【0144】
プロセッサ401は、NMフレームを受信したか否かを判定する(ステップS103)。NMフレームを受信していない場合(ステップS103においてNO)、プロセッサ401はステップS105へ進む。
【0145】
ECU400がNMフレームを受信した場合(ステップS103においてYES)、プロセッサ401は、NMフレームにおいてウェイクアップ対象として指定されたクラスタが、自装置が属するクラスタに適合するか否かを判定する(ステップS104)。
【0146】
NMフレームにおいてウェイクアップ対象として指定されたクラスタが、自装置が属するクラスタに適合していない場合(ステップS104においてNO)、プロセッサ401は、ステップS105に進み、低クロック期間が満了したか否かを判定する(ステップS105)。
【0147】
低クロック期間が満了していない場合(ステップS105においてNO)、プロセッサ401は、ステップS103に戻る。
【0148】
低クロック期間が満了している場合(ステップS105においてYES)、プロセッサ401は、ECU400の動作モードを低クロックモードからスリープモードへ切り替える(ステップS106)。動作モードがスリープモードに切り替わると、ステップS101に戻る。
【0149】
NMフレームにおいてウェイクアップ対象として指定されたクラスタが、自装置が属するクラスタに適合している場合(ステップS104においてYES)、プロセッサ401は、ECU400の動作モードを低クロックモードから通常モードへ切り替える(ステップS107)。
【0150】
通常モードにおいて、プロセッサ401は、スリープ条件が成立したか否かを判定する(ステップS108)。スリープ条件が成立していない場合(ステップS108においてNO)、プロセッサ401は、ステップS108を再度実行する。
【0151】
スリープ条件が成立した場合(ステップS108においてYES)、プロセッサ401は、ECU400の動作モードを通常モードからスリープモードへ切り替える(ステップS109)。動作モードがスリープモードに切り替わると、ステップS101に戻る。
【0152】
[8.変型例]
上記の実施形態で説明した低クロックモードは、「低消費電力モード」の一例である。つまり、低消費電力モードは、低クロックモードに限定されない。例えば、低消費電力モードは、通信I/F410が動作し、周辺回路が停止するが、通常モードと同じクロックでプロセッサ401が動作するモードであってもよい。このような動作モードであっても、周辺回路が停止しているため、通常モードよりも消費電力を低くすることができる。他の例では、低消費電力モードは、通信I/F410が動作し、プロセッサ401の動作クロックが通常モードよりも低いが、周辺回路が動作するモードであってもよい。このような動作モードであっても、プロセッサ401の動作クロックが低いため、通常モードよりも消費電力を低くすることができる。
【0153】
[9.補記]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的ではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及びその範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0154】
10 車載システム
200 統合ECU
500A,500B,500C,500 車載バス
201,401 プロセッサ
202,402 不揮発性メモリ
203,403 揮発性メモリ
204,404 周辺回路
205,405 入出力インタフェース(I/O)
206,406 制御プログラム
207 クラスタテーブル
208,408 クラスタ情報
209,409 低クロック期間情報
210A,210B,410 通信インタフェース(通信I/F)
211A,211B,411 制御回路
212A,212B,412 PHY
213A,413 スリープ期間情報
220,420 マイクロコントローラ
421 第1判定部
422 第1切替部
423 第2判定部
424 第2切替部
425 第3切替部
426 第3判定部
427 第4切替部
PNC1~PNC8 クラスタ
F1 データフィールド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12