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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064436
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】眼科用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/07 20060101AFI20240507BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240507BHJP
   A61K 31/4402 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240507BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 31/23 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A61K31/07
A61P43/00 121
A61P27/02
A61K47/34
A61K31/4402
A61K31/135
A61K31/4164
A61K47/10
A61K47/38
A61K31/19
A61K47/32
A61K31/197
A61K31/198
A61K31/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173021
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 浩
(72)【発明者】
【氏名】栗岡 昌利
(72)【発明者】
【氏名】時久 航一
(72)【発明者】
【氏名】内野 峻介
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD09Q
4C076DD37Q
4C076DD39Q
4C076EE06Q
4C076EE16Q
4C076EE23Q
4C076EE32Q
4C076EE49Q
4C076FF36
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC38
4C086GA14
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA58
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZA33
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA10
4C206DA14
4C206DB04
4C206DB06
4C206DB51
4C206FA05
4C206FA44
4C206FA53
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA78
4C206NA03
4C206NA05
4C206ZA33
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】下記(A)~(D)成分を含有する眼科用組成物の、ビタミンAの保存安定性と、外観保存安定性とを両立させる。
【解決手段】(A)ビタミンAを含む脂溶性ビタミン、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
(C)クロルフェニラミンマレイン酸塩及びジフェンヒドラミン塩酸塩から選ばれる1種以上、
(D)塩酸テトラヒドロゾリン、
(E)ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種以上、
(F)グリチルリチン酸二カリウム、及び
(G)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールから選ばれる1種以上
を含有する眼科用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビタミンAを含む脂溶性ビタミン、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
(C)クロルフェニラミンマレイン酸塩及びジフェンヒドラミン塩酸塩から選ばれる1種以上、
(D)塩酸テトラヒドロゾリン、
(E)ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種以上、
(F)グリチルリチン酸二カリウム、及び
(G)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールから選ばれる1種以上
を含有する眼科用組成物。
【請求項2】
(A)成分のビタミンAが、レチノールパルミチン酸エステル及びレチノール酢酸エステルから選ばれる1種以上である、請求項1記載の眼科用組成物。
【請求項3】
(C)成分と(D)成分との合計量に対する、(F)成分と(G)成分との合計量の質量比[((F)+(G))/((C)+(D))]が、1~110である請求項1記載の眼科用組成物。
【請求項4】
(G)成分が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールから選ばれる1種以上である、請求項1記載の眼科用組成物。
【請求項5】
さらに、(H)イプシロンアミノカプロン酸及びアスパラギン酸カリウムから選ばれる1種以上を含有する、請求項1記載の眼科用組成物。
【請求項6】
pHが6.9以下である、請求項1記載の眼科用組成物。
【請求項7】
(B)成分以外のノニオン性界面活性剤が、0.005w/v%以下である、請求項1~6のいずれか1項記載の眼科用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンAを含む脂溶性ビタミンを含有する眼科用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脂溶性ビタミンであるビタミンAは、上皮細胞の増殖・分化に必須な物質として知られており、ムチン産生を促進する作用、角膜創傷を治癒する作用が知られている。しかしながらビタミンAは、空気、光、熱、酸、金属イオン等に非常に敏感であり、特に、眼科用組成物に安定に配合することが課題となっていた。
【0003】
ビタミンAやビタミンE等の脂溶性ビタミンの乳化のためには界面活性剤が必要であり、ビタミンAの安定性と、乳化安定性とを両立させ、透過率が高く、白濁が抑制され、外観安定性に優れた脂溶性ビタミンを含有する眼科用組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/183778号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ビタミンAと、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとを組み合わせると、ビタミンAによるムチン産生促進作用や角膜修復力を高めることができる。本発明者らは、かすみやかゆみ、充血等の複合症状に対処する目的で、クロルフェニラミンマレイン酸塩及びジフェンヒドラミン塩酸塩から選ばれる1種以上と、塩酸テトラヒドロゾリンとを併用してさらに含有した場合、一定期間加温条件保存後に低温下で保存すると、エマルションが合一して眼科用組成物が白濁するという課題が生じることを知見した。ビタミンAを含有する組成物の外観安定性を向上させる技術としては、配合する油性成分の減量、ノニオン性活性剤の増量、機械力による乳化粒子の微細化、増粘剤による連続層の高粘度化が知られているが、ビタミンAの保存安定性と、一定期間加温条件保存後に低温下で保存した場合の透過率及び外観保存安定性(外観保存安定性と記載する場合がある)との両立は困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)ビタミンAを含む脂溶性ビタミン、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)クロルフェニラミンマレイン酸塩及びジフェンヒドラミン塩酸塩から選ばれる1種以上、及び(D)塩酸テトラヒドロゾリンを含有する眼科用組成物が、(E)ブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種以上、(F)グリチルリチン酸ジ二カリウム、及び(G)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールから選ばれる1種以上を含有することで、上記課題を解決できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は下記眼科用組成物を提供する。
1.(A)ビタミンAを含む脂溶性ビタミン、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
(C)クロルフェニラミンマレイン酸塩及びジフェンヒドラミン塩酸塩から選ばれる1種以上、
(D)塩酸テトラヒドロゾリン、
(E)ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種以上、
(F)グリチルリチン酸二カリウム、及び
(G)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールから選ばれる1種以上
を含有する眼科用組成物。
2.(A)成分のビタミンAが、レチノールパルミチン酸エステル及びレチノール酢酸エステルから選ばれる1種以上である、1記載の眼科用組成物。
3.(C)成分と(D)成分との合計量に対する、(F)成分と(G)成分との合計量の質量比[((F)+(G))/((C)+(D))]が、(F)成分と(G)成分との合計量の質量比[((F)+(G))/((C)+(D))]が、1~110である1又は2記載の眼科用組成物。
4.(G)成分が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールから選ばれる1種以上である、1~3のいずれかに記載の眼科用組成物。
5.さらに、(H)イプシロンアミノカプロン酸及びアスパラギン酸カリウムから選ばれる1種以上を含有する、1~4のいずれかに記載の眼科用組成物。
6.pHが6.9以下である、1~5のいずれかに記載の眼科用組成物。
7.(B)成分以外のノニオン性界面活性剤が、0.005w/v%以下である、1~6のいずれかに記載の眼科用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、(A)ビタミンAを含む脂溶性ビタミン、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)クロルフェニラミンマレイン酸塩及びジフェンヒドラミン塩酸塩から選ばれる1種以上、及び(D)塩酸テトラヒドロゾリンを含有する眼科用組成物の、ビタミンAの保存安定性と、外観保存安定性とを両立させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
本発明の(A)成分は、ビタミンAを含む脂溶性ビタミンであり1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。脂溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンA及びビタミンEが挙げられ、類縁体であれば特に制限はない。ビタミンAとしては、ビタミンAそれ自体の他に、ビタミンA油等のビタミンA含有混合物、ビタミンA脂肪酸エステル等のビタミンA誘導体等が挙げられる。具体的には、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノール、レチノイン酸、レチノイド等が挙げられ、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。中でも、ビタミンAの安定性の点からレチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノイン酸が好ましい。レチノールパルミチン酸エステルは、通常100万~180万国際単位(以下、I.U.と略記する)のものが市販されており、具体的には、DSM(株)製レチノールパルミチン酸エステル(174万I.U.)等が挙げられる。
【0010】
ビタミンAの含有量は、眼科用組成物中5,000~150,000単位/100mL(0.0029~0.086w/v%(g/100mL、以下同様))が好ましく、10,000~100,000単位/100mL(0.0057~0.057w/v%)がより好ましく、30,000~80,000単位/100mL(0.017~0.046w/v%)が特に好ましい。上記下限値以上とすることで、ビタミンAによるムチン産生促進作用や角膜修復効果がより得られ易くなり、上記上限値以下とすることで、白濁・浮遊がより生じ難くなり、外観保存安定性をより高めることができる。
【0011】
ビタミンEとしては、トコフェロール、トコトリエノール、これらの塩、誘導体(エステル)を総称する意味で使用される。中でも、ビタミンAの安定性の点からトコフェロール酢酸エステルが好ましい。トコフェロール酢酸エステルは、酢酸d-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロールのいずれであってもよい。
【0012】
ビタミンEを含有する場合、ビタミンEの含有量は、眼科用組成物中0.005~0.5w/v%が好ましく、0.01~0.3w/v%がより好ましく、0.03~0.1w/v%がさらに好ましい。上記下限値以上とすることで、角膜修復効果がより得られ易くなり、ビタミンAの保存安定性をより高めることができる。上記上限値以下とすることで、白濁・浮遊がより生じ難くなり、外観保存安定性をより高めることができる。
【0013】
(A)成分の含有量は、ビタミンEを含有する場合、0.0079~0.59w/v%が好ましく、0.015~0.36w/v%がより好ましく、0.047~0.15w/v%がさらに好ましい。この範囲で、ビタミンA保存安定性をより高めることができる。また、ビタミンEを含有する場合における、ビタミンE含有量に対するビタミンA含有量の質量比(ビタミンAとEの比率)は、0.2~3が好ましく、0.3~1がより好ましい。上記下限値以上とすることで、ビタミンAによるムチン産生促進作用や角膜修復効果がより得られ易くなり、上記上限値以下とすることで、ビタミンAの安定性がより向上する。
【0014】
[(B)成分]
本発明の(B)成分は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールであり、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、医薬品添加物規格(2018)に記載されたものを好適に用いることができる。エチレンオキシドの平均重合度は3~200が好ましく、20~200がより好ましく、プロピレンオキシドの平均重合度は5~100が好ましく、17~70がより好ましい。ブロック共重合体でもランダム重合体でもよいが、ブロック共重合体が好ましい。具体的には、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコールが挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、ビタミンAの安定性及びビタミンA、ビタミンEによる角膜修復力がより得られ易くなることから、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコールが好ましい。市販品としては、例えば、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコールは、商品名:Kolliphor P407[BASFジャパン(株)]、商品名:プロノン#407P[日油(株)];ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコールは、商品名:Kolliphor P237[BASFジャパン(株)]の他、医薬品添加物事典2021(日本医薬品添加物協会編、薬事日報社発行)に記載されている市販品が挙げられる。
【0015】
(B)成分の含有量は、眼科用組成物中0.1~3w/v%が好ましく、0.2~1w/v%がより好ましく、0.4~0.8w/v%がさらに好ましい。上記下限値以上とすることで、白濁、浮遊物がより生じ難くなり、外観保存安定性をより高めると共に、ビタミンAによるムチン産生促進作用や角膜修復効果をより高めることができる。上記上限値以下とすることで、ビタミンAの保存安定性をより高めることができる。
【0016】
[(C)成分]
本発明の(C)成分は、クロルフェニラミンマレイン酸塩及びジフェンヒドラミン塩酸塩から選ばれる1種以上であり、抗ヒスタミン、鎮痒効果を有する。(C)成分は、1種単独で又は2種組み合わせて用いることができる。
【0017】
(C)成分の含有量は、眼科用組成物中0.005~0.5w/v%が好ましく、0.01~0.1w/v%がより好ましく、0.01~0.05w/v%がさらに好ましい。上記下限値以上とすることで薬効の発現(抗ヒスタミン、鎮痒効果)がより好適となる。上限値以下とすることで、白濁・浮遊がより生じ難くなり、外観保存安定性をより高めることができる。
【0018】
[(D)成分]
本発明の(D)成分は、塩酸テトラヒドロゾリンである。塩酸テトラヒドロゾリンは充血除去効果を有する。(D)成分の含有量は、眼科用組成物中0.005~0.5w/v%が好ましく、0.01~0.1w/v%がより好ましく、0.01~0.05w/v%がさらに好ましい。上記下限値以上とすることで薬効の発現(充血除去効果)がより好適となり、上限値以下とすることで、白濁・浮遊がより生じ難くなり、外観保存安定性をより高めることができる。
【0019】
本発明においては、(A)ビタミンAを含む脂溶性ビタミン、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)クロルフェニラミンマレイン酸塩及びジフェンヒドラミン塩酸塩から選ばれる1種以上、及び(D)塩酸テトラヒドロゾリンを含有する眼科用組成物が、(E)ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種以上、(F)グリチルリチン酸二カリウム、及び(G)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールから選ばれる1種以上をさらに含有することで、上記眼科用組成物中のビタミンAの保存安定性と、外観保存安定性とを両立させることができる。
【0020】
[(E)成分]
本発明の(E)成分は、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種組み合わせて用いることができる。(E)成分の含有により、ビタミンAの保存安定性をより高めることができる。
【0021】
(E)成分の含有量は、眼科用組成物中0.0005~0.05w/v%が好ましく、0.001~0.01w/v%がより好ましく、0.003~0.006w/v%がさらに好ましい。上記下限値以上とすることで、ビタミンAの保存安定性をより高めることができ、上限値以下とすることで、角膜修復効果をより高めることができる。
【0022】
[(F)成分]
本発明の(F)成分は、グリチルリチン酸二カリウムであり、抗炎症作用を有する。(F)成分の含有量は、眼科用組成物中0.01~3w/v%が好ましく、0.05~1w/v%がより好ましく、0.1~0.5w/v%がさらに好ましい。上記下限値以上とすることで、白濁・浮遊がより生じ難くなり、外観保存安定性をより高めることができる。上記上限値以下とすることでビタミンAの保存安定性をより高めることができる。
【0023】
[(G)成分]
本発明の(G)成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールから選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。(G)成分の重量平均分子量は5,000~5,000,000が好ましく、10,000~2,500,000がより好ましい。なお、重量平均分子量の測定はGPCカラムを用いた液体クロマトグラフィーによる測定で求めることができる。
【0024】
中でも、白濁・浮遊抑制効果による外観保存安定性の点から、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールが好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンがより好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースがさらに好ましい。ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンは、第十八改正日本薬局方に記載されたものを好適に用いることができる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、第十八改正日本薬局方ではヒプロメロースの名称で記載され、メトキシ基及びヒドロキシプロポキシ基の置換度により数種類の置換度タイプが存在する。具体的に例示すると、ヒドロキシプロピルメチルセルロース1828、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910が挙げられる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの粘度は、40~140,000mPa・sが好ましく、600~14,000mPa・sがより好ましく、3,000~5,600mPa・sがさらに好ましい。なお粘度の測定は、第十八改正日本薬局方「ヒプロメロース」の粘度に記載された方法が例示される。ポリビニルピロリドンのK値は、10~120が好ましく、81~97.2がより好ましい。K値とは、分子量と相関する粘度特性値であり、その測定は、第十八改正日本薬局方「ポビドン」のK値に記載されている。ポリビニルピロリドンを具体的に例示すると、ポビドンK25、ポビドンK30、ポビドンK90が挙げられる。(G)成分の市販品としては、具体的には、医薬品添加物事典2021(日本医薬品添加物協会編、薬事日報社発行)に記載されているものが挙げられる。
【0025】
ムチン産生促進作用や角膜修復効果の点から、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース系水溶性高分子化合物と、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールのビニル系水溶性高分子化合物との併用が好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとポリビニルピロリドンとの併用が好ましい。セルロース系水溶性高分子化合物と、ビニル系水溶性高分子化合物とを併用する場合、セルロース系:ビニル系の質量比は、3:1~6:1が好ましく、4:1~5:1がより好ましい。
【0026】
(G)成分の含有量は、眼科用組成物中0.05~1w/v%が好ましく、0.1~0.5w/v%がより好ましく、0.2~0.3w/v%がさらに好ましい。上記下限値以上とすることで、白濁・浮遊がより生じ難くなり、外観保存安定性をより高めることができる。上記上限値以下とすることで、点眼直後の視界ぼやけが生じにくくなる、ねばついた使用感が生じにくくなり、眼科用組成物の使用感がより好適となる。
【0027】
(F)/((C)+(D))で表される(C)成分と(D)成分との合計量に対する(F)成分の質量比(w/v%と同じ値の比、以下同様)の下限値は、0.3以上が好ましく、2.5以上がより好ましい。上記下限値以上とすることで、白濁・浮遊がより生じ難くなり、外観保存安定性をより高めることができる。(F)/((C)+(D))の上限値は、60以下が好ましく、25以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。上記上限値以下とすることで、ビタミンAの保存安定性をより高めることができる。また、上記の理由から、(F)/((C)+(D))の質量比は、0.3~25が好ましく、2.5~10がより好ましい。
【0028】
(G)/((C)+(D))で表される(C)成分と(D)成分との合計量に対する(G)成分の質量比の下限値は、1以上が好ましく、2.5以上がより好ましい。上記下限値以上とすることで、白濁・浮遊がより生じ難くなり、外観保存安定性をより高めることができる。(G)/((C)+(D))の上限値は、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。上記上限値以下とすることで、点眼直後の視界ぼやけが生じ難くなる、ねばついた使用感が生じにくくなり、眼科用組成物の使用感がより好適となる。また、上記の理由から、(G)/((C)+(D))の質量比は、1~20が好ましく、2.5~10がより好ましい。
【0029】
(C)成分と(D)成分との合計量に対する、(F)成分と(G)成分との合計量の質量比[((F)+(G))/((C)+(D))]の下限値は、1以上が好ましく、4以上がより好ましく、7以上がさらに好ましい。上記下限値以上とすることで、白濁・浮遊がより生じ難くなり、外観保存安定性をより高めることができる。[((F)+(G))/((C)+(D))]の上限値は、110以下が好ましく、70以下がより好ましく、26以下がさらに好ましく、16以下が特に好ましい。上記上限値以下とすることで、ビタミンAの保存安定性をより高めることができ、点眼直後の視界ぼやけが生じ難くなる、ねばついた使用感が生じにくくなり、眼科用組成物の使用感がより好適となる。また、上記の理由から、[((F)+(G))/((C)+(D))の質量比は、1~110が好ましく、4~26がより好ましく、7~16がさらに好ましい。
【0030】
[その他の成分]
本発明の眼科用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、眼科用組成物に配合されるその他の成分を適量配合し含有することができる。その他の成分としては下記のものが例示され、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0031】
[(H)成分]
本発明の眼科用組成物には、ビタミンAの保存安定性の点から、さらに(H)成分を含有することが好ましい。(H)成分は、イプシロンアミノカプロン酸及びアスパラギン酸カリウムから選ばれる1種以上である。イプシロンアミノカプロン酸は消炎・収斂効果を有し、アスパラギン酸カリウムは、涙本来の働きを補う(酸素補給)効果を有する。アスパラギン酸カリウムは、D体、L体のいずれでもよいが、L体が好ましい。また、アスパラギン酸カリウム・マグネシウム(等量混合物)であってもよい。(H)成分は、1種単独で又は2種組み合わせて用いることができる。
【0032】
(H)成分を含有する場合、(H)成分の含有量は、眼科用組成物中0.3~5w/v%が好ましく、0.5~3w/v%がより好ましく、1~2w/v%がさらに好ましい。上記下限値以上とすることで、ビタミンAの保存安定性をより高めることができる。上記上限値以下とすることで、浸透圧による目の刺激感が生じにくくなり、眼科用組成物の使用感がより好適となる。
【0033】
[(B)成分以外のノニオン性界面活性剤]
(B)成分以外のノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンヒマシ油(POEヒマシ油)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)等が挙げられる。
【0034】
ポリオキシエチレンヒマシ油(POEヒマシ油)は、ヒマシ油に酸化エチレン(EO)を付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレンヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、3~60モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレンヒマシ油3(EO平均付加モル数3)、ポリオキシエチレンヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレンヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレンヒマシ油35(EO平均付加モル数35)、ポリオキシエチレンヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレンヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレンヒマシ油60(EO平均付加モル数60)等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレンヒマシ油35が好ましい。
【0035】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)は、水添したヒマシ油に酸化エチレンを付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、5~100モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5(EO平均付加モル数5)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油30(EO平均付加モル数30)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(EO平均付加モル数60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80(EO平均付加モル数80)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100(EO平均付加モル数100)等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60が好ましい。
【0036】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)としては、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)が挙げられる。中でも、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)が好ましい。
【0037】
(B)成分以外のノニオン性界面活性剤の含有量は、眼科用組成物中0.01w/v%以下が好ましく、0.005w/v%以下がより好ましく、検出限界以下がさらに好ましい。上記上限値以下とすることで、ビタミンAの保存安定性をより高めることができる。
【0038】
(A)成分、(C)成分、(D)成分、(F)成分及び(H)成分以外の薬物(薬学的有効成分)としては、例えば、充血除去成分(例えば、エピネフリン、塩酸エピネフリン、エフェドリン塩酸塩、ナファゾリン塩酸塩、ナファゾリン硝酸塩、フェニレフリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩等)、消炎・収斂剤(例えば、アラントイン、アズレンスルホン酸ナトリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、リゾチーム塩酸塩等)、水溶性ビタミン類(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム等)、ベルベリン又はその塩、アミノ酸類(例えば、L-アスパラギン酸マグネシウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等)、ヒアルロン酸ナトリウム、サルファ剤(スルファメトキサゾールやスルフイソキサゾール及びこれらの塩)等が挙げられる。これら上記の薬物を含有する場合、その含有量は、各薬物の有効な適性量を選択することができるが、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0039】
糖類としては、例えば、グルコース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。なお、これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。糖類を含有する場合の含有量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0040】
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸又はその塩(ホウ砂等)、トロメタモール、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等)、リン酸又はその塩(リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等)、酒石酸又はその塩(酒石酸ナトリウム等)、グルコン酸又はその塩(グルコン酸ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸ナトリウム等)、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム等)、各種アミノ酸類(アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム)等が挙げられる。中でも、ホウ酸、ホウ砂、トロメタモールが好ましい。緩衝剤を含有する場合の含有量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.001~3w/v%がより好ましく、0.001~2.5w/v%がさらに好ましい。
【0041】
pH調整剤としては、例えば、無機酸又は無機アルカリ剤が挙げられる。具体的には、無機酸としては(希)塩酸が挙げられる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。後述するpHとなるよう、適量を配合する。
【0042】
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。涙液油層不安定化が引き起こす諸症状をより改善する点から、塩化ナトリウム又は塩化カリウムを配合し、等張化されていることが好ましい。組成物の対生理食塩水浸透圧比は、0.60~2.00が好ましく、0.60~1.55がより好ましく、0.83~1.20が最も好ましい。なお、浸透圧の測定は、25℃で自動浸透圧計(A2O、アドバンスドインストルメンツ社)を用いて行う。
【0043】
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、シクロデキストリン、亜硫酸塩(亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等)等が挙げられる。ビタミンAの安定性の観点からエデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、亜硫酸塩を配合することが好ましい。安定化剤を含有する場合の含有量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0044】
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロール等が挙げられる。d体、l体又はdl体のいずれでもよい。清涼化剤を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.0001~0.2w/v%が好ましい。
【0045】
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。多価アルコールを含有する場合の含有量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0046】
(G)成分以外の粘稠剤としては、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。粘稠剤を配合する場合、その配合量は眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0047】
防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ソルビン酸、チメロサール、フェニルエチルアルコール、アルキルアミノエチルグリシン、クロルヘキシジングルコン酸、パラオシキ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等が挙げられる。また本発明の眼科用組成物は、ホウ酸、トロメタモール、エデト酸又はその塩から選ばれる2種以上を含有することで、上記防腐剤の含有量を減らすことができる。エデト酸塩としては、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物等が挙げられる。上記防腐剤を含有する場合の含有量は、眼科用組成物中0.01w/v%以下が好ましく、0.001w/v%以下がより好ましく、0.0001w/v%以下がさらに好ましく、検出限界以下が特に好ましく、配合しなくてもよい。
【0048】
油成分としては、流動パラフィン、ヒマシ油、大豆油、オリーブ油、ゴマ油、コーン油、ヤシ油、アーモンド油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、白色ワセリン、流動パラフィン、ワックスエステル、ステロールエステル等が挙げられる。油成分を含有する場合、その含有量は眼科用組成物中0.001~1w/v%が好ましい。
【0049】
水としては、精製水、滅菌水等を用いることができ、水の含有量は、組成物の残部とすることができる。具体的には、眼科用組成物中90~99.9w/v%が好ましく、93~98w/v%がより好ましい。
【0050】
[製造方法]
本発明の眼科用組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、(A)成分及び(E)成分等の油性成分と(B)成分等の界面活性剤成分との混合溶液を、緩衝剤等を含む水溶液と混合して乳化し、これに(G)成分等の高分子化合物を加えて冷却し、(C)成分、(D)成分、(F)成分及び(H)成分等の水性成分を加え、pHを調整後、総体積を水により調整することにより得ることができる。各成分の混合方法は、一般的な方法でよく、パルセーター、プロペラ羽根、パドル羽根、タービン羽根等を用いて適宜行われるが、回転数は特に限定されず、激しく泡立たない程度に設定することが好ましい。各成分の混合温度は特に限定しないが、油性成分と界面活性剤成分が共に融解温度以上であることが好ましく、具体的には40~95℃の範囲から適宜選定される。
【0051】
[透過率]
本発明の眼科用組成物の透過率は85~100%が好ましく、90~100%がより好ましい。本発明の透過率は、分光光度計(例えば、UV-1800、(株)島津製作所)を用いて測定した波長600nmの透過率をいう。
【0052】
[pH]
本発明の眼科用組成物のpHは、8.0以下が好ましく、6.9以下がより好ましく、6.8以下がさらに好ましい。また、3.5以上が好ましく、5.0以上がより好ましく、6.5以上がさらに好ましい。上記下限値以上及び上限値以下とすることで、ビタミンAの保存安定性をより高めることができる。また、上記上限値以下とすることで、白濁・浮遊がより生じ難くなり、外観保存安定性をより高めることができる。上記の理由から、眼科用組成物のpHは、3.5~8.0が好ましく、5.0~6.9がより好ましく、6.5~6.8がさらに好ましい。なお、pHの測定方法としては、25℃でpHメータ、例えば、HM-25R、東亜ディーケーケー(株)を用いて行うことができる。
【0053】
本発明の組成物は目への適応を容易にする点から液体が好ましく、25℃における粘度は、20mPa・s以下が好ましく、10mPa・s以下がより好ましく、5mPa・s以下がさらに好ましい。なお、粘度の測定方法はコーンプレート型粘度計(DV2T、英弘精機(株))を用いて行う。
【0054】
本発明の眼科用組成物は、そのまま液剤としてもよく、ゲル剤等に調製してもよい。使用形態としては、具体的には点眼剤(例えば、一般用点眼剤、コンタクトレンズ用点眼剤等)、コンタクトレンズ装着液、コンタクト取り出し液等が挙げられる。中でも、点眼剤として好適である。上記のコンタクトレンズとしては、ハードコンタクトレンズ、O2ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ(非イオン性、イオン性)、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ等特に限定されない。本発明の眼科組成物は、(A)成分~(G)成分を含有するため、一般用点眼剤の場合、(A)成分により角膜の傷が修復され、目の疲れやかゆみ等全ての症状を緩和することができる。目の疲れ、結膜充血、眼病予防(水泳のあと、ほこりや汗が目に入ったとき等)、紫外線その他の光線による眼炎(雪目等)、眼瞼炎(まぶたのただれ)、ハードコンタクトレンズを装着しているときの不快感、目のかゆみ、目のかすみ(目やにの多いとき等)に有用である。
【0055】
本発明の眼科用組成物は、点眼剤又はコンタクトレンズ用点眼剤として使用する場合、1回につき10~100μLを1~3滴、1日につき1~6回点眼することが好ましく、1回につき10~50μLを1~3滴、1日につき1~6回がより好ましい。1回につき10~30μLを1~3滴1日につき1~6回がさらに好ましい。
【0056】
[方法]
本発明は、(A)ビタミンAを含む脂溶性ビタミン、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
(C)クロルフェニラミンマレイン酸塩及びジフェンヒドラミン塩酸塩から選ばれる1種以上、及び
(D)塩酸テトラヒドロゾリン
を含有する眼科用組成物に、
(E)ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種以上
(F)グリチルリチン酸二カリウム、及び
(G)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールから選ばれる1種以上
を配合する、上記眼科用組成物の外観保存安定化方法及び(A)成分中のビタミンAの安定化方法を提供する。上記方法において、好適な成分及び量等は上記と同じである。
【実施例0057】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。組成の「%」はw/v%(g/100mL)、比率は質量比(w/v%と同じ値の比)を示す。
【0058】
[実施例、比較例、参考例]
(A)成分及び(E)成分の油性成分と、(B)成分、(B)成分以外の界面活性剤成分との混合溶液を85℃に加熱し、同様の温度に加熱した緩衝剤等を含む水溶液と混合して乳化した。これに、(G)成分を加えて40℃以下に冷却し、(C)成分、(D)成分、(F)成分及び(H)成分等の水性成分を加え、pHを調整後、総体積を水により調整して眼科組成物(点眼剤)を調製した。得られた眼科用組成物をフィルター滅菌したのち、点眼容器(材質:キャップ:ポリプロピレン、中栓:ポリエチレン、ボトル:ポリエチレンテレフタレート)に充填し、脱酸素剤と共にピロー包装した。
得られた眼科用組成物(点眼剤)について、50℃・1カ月保存した後、ビタミンA(VA)保存安定性を測定し、さらに5℃・2週間保存し、眼科用組成物の透過率及び外観を以下の基準に従って評価した。結果を表中に併記する。なお、ビタミンA 50,000単位/100mLは0.029g/100mLである。
【0059】
[透過率]
眼科用組成物(点眼剤)について、波長600nm、光路長1cmおける透過率を測定(測定温度25℃)した。85%以上を合格とする。
【0060】
[外観]
下記評価基準で示す。
◎:眼科用組成物が透明で、合一したエマルションの浮遊物が認められない
〇:眼科用組成物が透明だが、合一したエマルションの浮遊物が認められる
×:眼科用組成物は白濁しており、合一したエマルションの浮遊物が認められる
【0061】
[ビタミンA(VA)保存安定性]
眼科用組成物(点眼剤)について、製造直後と、50℃・1カ月保存後について、液体高速クロマトグラフィーを用いて、ビタミンA量を測定した。結果を、製造直後に対するビタミンAの量の割合(%)で示す。
・HPLC測定条件
移動相:メタノール/2-プロパノール/水/テトラヒドロフラン混液(35:6:5:4)
測定波長:280nm
カラム温度:約40℃
カラム:ODSカラム(φ4.6mm×3cm,3μm)
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
【表9】
【0071】
【表10】
【0072】
【表11】
【0073】
【表12】
【0074】
上記参考例1~3と比較例4との結果から明らかであるように、(A)ビタミンAを含む脂溶性ビタミン及び(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有する眼科用組成物に、(C)クロルフェニラミンマレイン酸塩及びジフェンヒドラミン塩酸塩から選ばれる1種以上、及び(D)塩酸テトラヒドロゾリンを併用して配合すると、眼科用組成物の透過率が低下し、エマルションが合一して眼科用組成物が白濁した。この(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有する眼科用組成物に、(E)ブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種以上、(F)グリチルリチン酸二カリウム、及び(G)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールから選ばれる1種以上を配合することで、ビタミンAの保存安定性と、外観保存安定性とを両立させることができた。
【0075】
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。なお、以下の「日局」、「局外規」、「薬添規」との記載は、それぞれ第十八改正日本薬局方規格、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格(2018)に適合した原料であることを意味する。
レチノールパルミチン酸エステル(商品名:レチノールパルミチン酸エステル174万I.U.、BHA/BHT添加、DSM(株)、日局)
酢酸d-α-トコフェロール(商品名:理研Eアセテートα、理研ビタミン(株)、局外規)
ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(商品名:Kolliphor P407、BASFジャパン(株)、薬添規)
ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール(商品名:Kolliphor P237、BASFジャパン(株)、薬添規)
モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)(商品名:レオドールTW-O120V、花王(株)、日局)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(商品名:HCO-60(医療用)、日本サーファクタント工業(株)、薬添規)
ポリオキシエチレンヒマシ油(商品名:ユニオックスC-35、日油(株)、薬添規)
クロルフェニラミンマレイン酸塩(商品名:マレイン酸クロルフェニラミン(クロルフェニラミンマレイン酸塩)、金剛化学(株)、日局)
ジフェンヒドラミン塩酸塩(商品名:ジフェンヒドラミン塩酸塩、金剛化学(株)、日局)
塩酸テトラヒドロゾリン(商品名:塩酸テトラヒドロゾリン、日本バルク薬品(株)、局外規)
ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(商品名:ジブチルヒドロキシトルエン、富士フィルム和光純薬(株)、薬添規)
ブチルヒドロキシアニソール(BHA)(商品名:ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、富士フィルム和光純薬(株))
グリチルリチン酸二カリウム(商品名:局外規グリチルリチン酸二カリウム、丸善製薬(株)本社工場、局外規)
ヒドロキシプロピルメチルセルロ-ス(ヒプロメロース)(商品名:メトローズ60SH-4000、信越化学工業(株)、日局)
ポビドン(商品名:ポビドンK90(Kollidon 90F)、BASFジャパン(株)、日局)
イプシロンアミノカプロン酸(商品名:ε-アミノ-n-カプロン酸 EKD、積水メディカル(株)局外規)
L-アスパラギン酸カリウム(商品名:L-アスパラギン酸カリウム、アルプス薬品工業(株)、局外規)
ネオスチグミンメチル硫酸塩(商品名:ネオスチグミンメチル硫酸塩、シオノギファーマ(株)、日局)
ピリドキシン塩酸塩(商品名:ピリドキシン塩酸塩 塩酸ピリドキシン、BASFジャパン(株)、日局)
タウリン(商品名:タウリン、(株)スリーF、日局)
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム(商品名:局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム、マルハニチロ(株)、局外規)
ベルベリン塩化物水和物(商品名:日本薬局方 ベルベリン塩化物水和物、アルプス薬品工業(株)、日局)
ホウ酸(商品名:ホウ酸、関東化学(株)、日局)
トロメタモール(商品名:2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、関東化学(株)、局外規)
エデト酸ナトリウム水和物(EDTA)(商品名:エデト酸ナトリウム水和物「製造専用」、富士フィルム和光純薬(株)、日局)
プロピレングリコール(商品名:日本薬局方プロピレングリコール、(株)ADEKA、日局)
l-メントール(商品名:l-メントール(薄荷脳)、鈴木薄荷(株)、日局)
dl-カンフル(商品名:日本薬局方 dl-カンフル、日精バイリス(株)、日局)
d-ボルネオール(商品名:特沸龍脳(d-ボルネオール)、(株)柳沢正巳商店、薬添規)
ユーカリ油(商品名:日本薬局方 ユーカリ油、小川香料(株)、日局)
脱酸素剤(商品名:エージレスZ-20PKヤ、三菱ガス化学(株))